04/09/30 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会(腹部臓器部会)第5回議事録     胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会 第5回腹部臓器部会議事録 1 日時  平成16年9月30日(木) 14:30〜16:45 2 場所  厚生労働省専用第17会議室 3 出席者 医学専門家:尾崎正彦、戸田剛太郎、戸部隆吉、望月英隆 (50音順)       厚生労働省:菊入閲雄、渡辺輝生、神保裕臣、菊池泰文 他 4 議事内容 ○医療監察官(神保)  「胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会腹部臓器部会(第5回)」を始めさせて いただきます。戸田先生からは患者さんの都合で1時間ほど遅れるというご連絡をいた だいております。それでは、戸部座長、よろしくお願いいたします。 ○戸部座長  お忙しい中、どうもありがとうございます。それでは、第5回の検討会を始めさせて いただきます。討議に入る前に事務局から提出資料の確認をお願いします。 ○事務局  資料No.1「腹部臓器部会(第5回)の論点」、資料No.2「腹部臓器分野の障害認定 に関する専門検討会報告書(たたき台)(案5)」、資料No.3「膵臓の取扱い(たたき 台)(案1)」、資料No.4「肝臓の取扱い(たたき台)(素案)」、資料No.5「『労 働福祉事業における慢性肝炎に係るアフターケア実施要綱』の運用上の留意点」、資料 No.6「ひ臓の取扱い(たたき台)(素案)」、以上です。 ○戸部座長  第4回腹部臓器部会の議事録は、ご覧いただいてますね。本日は、まず前回ご論議い ただきました項目のうち、腹壁ヘルニア、鼠径ヘルニアの取扱いについて確認した後、 膵臓の取扱いについてご論議いただきたいと思います。その後、新たな課題として、肝 臓やひ臓の取扱いについて、時間の許す限り議論したいと思います。それでは、腹壁ヘ ルニア、鼠径ヘルニアの取扱いについて事務局より説明願います。 ○医療監察官  資料No.2の通し番号11頁です。前回の先生方の議論の到達点として、ヘルニアにつ いては、同一の基準で行えばいい。脱出する部位や成因は違うが、腹壁瘢痕ヘルニアと 同様の基準によって障害を評価すればよろしいのではないか、というご議論でしたの で、11頁のアンダーラインを引いている所ですが、「腹部臓器の脱出という点について はその本質は異ならないから、腹壁瘢痕ヘルニアと同様の基準により評価することが適 当である」と書きました。こちらについては、前回の議論を踏まえて書いたわけです が、こちらでよろしければ。このようにさせていただければと思っております。 ○戸部座長  よろしいでしょうか。「脱出」という言葉は、プロラップスで、ヘルニアとは違い、 ヘルニアは腹膜を被って腹部の臓器が出てくること。脱出というのは、腹膜がなくなっ て、そこから飛び出してくるという定義です。医学的に違いますから、注意致しましょ う。  議事録は皆さんに目を通していただいておりますが、よく目を通していただきましょ う。ヘルニアも何回も議論されておりますが、少しでも事務局のほうで問題があると思 われたら、ここでは納得がいくまで議論をしていただいたほうがいいですから、遠慮せ ずに何回でも出してください。それでは、腹壁ヘルニア、鼠径ヘルニアの取扱いの検討 に移りたいと思います。これでよろしいですか。 ○医療監察官  先生方にご了解をいただければ、これで。最終的にもう一度見直しをいたします。 ○戸部座長  望月先生よろしいですか。 ○望月先生  結構だと思います。 ○戸部座長  尾崎先生よろしいですか。 ○尾崎先生  はい。 ○戸部座長  それでは、次に膵臓の取扱いについて、事務局より説明願います。 ○医療監察官  3点ほどご議論をいただきたいと思います。通し番号の16頁ですが、前回、望月先生 から、膵液瘻、仮性嚢胞の取扱いについてきちんと議論の上、記載をすべきではないか という問題提起があって、それを受けて前回、各先生方で議論していただいたところ、 先生方の議論の到達点としては、膵液瘻にしても仮性嚢胞にしても、基本的に治療の対 象であるということにしようということになったかと理解しております。16頁のアンダ ーラインに書いたような表現にいたしました。  読み上げますと、「膵損傷後に生じる合併症としては、膵液瘻や仮性嚢胞がある。膵 液瘻が形成されると、多量の膵液漏出のために電解質バランスの異常、代謝性アシドー シス、蛋白喪失及び局所の皮膚びらんが生じるから、膵液ドレナージと膵液漏出による 体液喪失に対する補液、電解質の補正等の治療が必要であり、治ゆとすることは適当で ない。  一方、仮性嚢胞は外傷後に生ずる場合、感染等の合併がなければ自然に吸収されるこ とも多く、4〜6週間の経過をみることが適当であるが、自覚症状を伴う場合には治療 の対象になる」。  それを受けて17頁の(3)の上から5行目辺りで「膵液瘻についても治療が必要であ ることから治ゆとすることは適当ではないこと、さらには仮性嚢胞は症状が生じている 場合には治療の対象になることからすると、膵損傷後の後遺症状を基本的には念頭に置 いて検討すれば足りると考える」ということで、膵液瘻と仮性嚢胞については、治療の 対象で障害の評価ではないということを、このようにまとめております。  2点目は15頁です。前回の素案では、外傷による膵臓の機能低下を考えればいいのだ ということで書きましたが、望月先生からご指摘で「化学物質による膵臓の機能低下に ついて考える必要はないのか」という提起があり、次回までに調べた上で提案させてい ただきますということになっていましたが、成書などを読みますと、確かにいくつかの 物質が膵炎を起こすことが報告されております。基本的には暴露中というか、投与中に は発症することはあるが、やめると基本的には軽快しますということで、基本的には治 療の対象になることがあっても、障害の対象として検討する必要に乏しいという整理で よろしいかどうかです。これは前回ご検討いただいていませんので、議論をしていただ ければと思っております。  3点目ですが、これがいちばん肝心なところです。膵機能の低下の場合の基準とし て、どのように考えたらいいのかということです。17頁の記載は分かりにくいので、資 料No.1の1頁を見ますと、「後遺障害の評価の着眼点」は、「以下のとおりとしてよ いか」ということで、外分泌機能に関して障害を認めるとする要件はこうだ、内分泌機 能に関して障害を認めるとする要件はこうだと。前回いろいろな議論があって、1つは 膵臓を部分切除して症状があればいいという議論もあったのですが、このごろはそんな に簡単に切ることはしないのだという議論もあり、膵損傷を負ったということで機能障 害が出た場合にも認めるべきではないかということで、一応それぞれを踏まえて、アの (1)(2)ということで書いています。  内分泌機能については、前回、素案では経口糖負荷試験で境界型だけを挙げていたわ けですが、戸田先生から、「現在においてはインスリンそのものをきちんと測ることが できる。インスリン依存性のものを排除するべきだ」というご意見があって、それを踏 まえて前回は「経口糖負荷試験で境界型と判断される」ということだけを要件にしてい たのですが、今回お示ししている要件としては、インスリン自体も異常低値を示す。イ ンスリンの産出能が低下することによって内分泌機能障害が起きているという要件にし たらどうかということで、たたき台を示しています。  併せて、2の「慢性膵炎様病態」ですが、前回は時間もなく、全くご議論いただいて おりません。非代償期については、治ゆとするのは不適切、その後になれば再発という ことにするのが良いのではないか。代償期についは、治ゆとした上で、一定の障害の評 価をすべきではないか。そのときに11級ぐらいでどうかという案にしております。以上 です。 ○戸部座長  今日の問題の最初の膵液瘻と仮性嚢胞については治療の対象なので労災認定から外す ということでよろしいですか。 ○望月先生  1つだけ指摘させていただきたいのですが、16頁に書いてあるように膵液瘻から大量 の膵液が出て、電解質バランスの異常、代謝性アドーシス、体液の喪失が生じる場合に は、治ゆとするのは適当ではないと思います。しかしながら、大量のものが出なくて も、少量の膵液が持続的に出ることはあります。そういうものは必ずしも治療の対象に はならない。ヘルニアの際は手術的治療を前提として、再発したり治療がうまくいかな い場合に障害認定の対象とすることになりましたが、膵液瘻も同じようなことで、膵液 瘻を手術的に治ゆせしめることはなかなか困難なことが多いのです。 ○尾崎先生  そのまま放置という格好になりますね。 ○戸部座長  治療対象でもない、しかし障害も認定されないなどということが起こり得ると思いま す。ですから、16頁に書いてあるような、それほど大変な膵液瘻ではなくて、難治のも のは対象にしておくべきではないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。 ○尾崎先生  どのぐらいの治療をするかという判断は難しいと思います。多少滲みて、びらんがあ るぐらいだったら、何とか皮膚ボウ剤か何かで様子を見ましょうという所もあります ね。 ○望月先生  それはやはり障害が残っているわけですよね。明確に労働能力が落ちるところまでは 行かないまでも、今後の課題になる腸瘻などもそういうところがあって、腸瘻などは手 術で治してしまえばいいではないかと思われますが、手を付けると、とてつもなく大変 な手術になるから、このぐらいの腸瘻だったら放っておきましょうというのはあるわけ です。そういうものと同じような考え方でいかなければいけないのではないかと思いま す。 ○尾崎先生  話が前後してしまうかもしれませんが、そのぐらいの軽微な膵液瘻で、あまり積極的 な手術治療まで持っていかないというのは、広い意味で外分泌機能の1つだけの障害ぐ らいに入れてもいいのかもしれませんね。 ○望月先生  そういう但書が入れば、それは結構だと思います。 ○尾崎先生  11級のほうでしたか、積極的な手術治療ではないが、装具処置程度のもので、そのま ま継続してみてしまいましょうというのは11級で、外分泌機能の障害という広い意味で 考えれば、膵液が外へ漏れるという意味の、そういう要件を入れておけば、望月先生が おっしゃったところはクリアできるかと思います。 ○戸部座長  いま望月先生がおっしゃったように、グジグジと少量の液が漏れて、その辺が爛れて しまい、患者が自分でいろいろ薬を貼ったりして、通院もしないというのは膵液瘻でも 腸瘻でも確かにありますね。これは非常に厄介な不愉快な後遺症状ですね。どんどん電 解質などが喪失していくような膵液瘻もあれば、ごく少量の膵液瘻もあります。そうい うのを最終的に治療の対象だから認定しないということで、切ってしまうかどうか難し いですね。原則としてはそうでしょうが、治療の対象で、ずっと労災にしたほうがいい でしょうが、ある程度こういうところで治ゆにして障害認定しようというのも出てくる でしょうね。それを外分泌障害ということで、その中に「軽微な膵液瘻を含む」と書い ておけば済むかも分かりませんね。 ○医療監察官  認定をするほうからすると、軽微というのは、どのぐらいかというのを、いまご議論 いただけると非常に有難いのです。逆に言うと、治療しなければいけないものを障害と してしまう可能性もあるものですから、この程度だったら、ほとんどの先生は仕方がな いというレベルはどのぐらいでしょうか。 ○尾崎先生  いまのお話の中で、軽微というのは、膵液瘻そのものの治療を手術的にしようという のではなく、微量の、あるいは少量の膵液が出てきたための装具処置程度のものを言っ ていいような気がします。 ○戸部座長  望月先生がおっしゃったように、腸瘻や膵液瘻の処置というのは、簡単のようで極め て難いことも多く、誰もが簡単に引き受けられるような手術ではありません。腸瘻など の癒着などは剥がせば剥すほどどうしようもないことがあります。膵液瘻でも、膵頭十 二指腸切除をして、それがうまくいかなくて起こった場合、なかなか治らず、すごく膵 液が出て困ることもあるし、最終的にもそれがずっと長い過程の中で膵臓も萎縮してき て、膵液瘻が少なくなって、それでもこれを治療するのは非常に難しく、最終的に治療 できない形で認定する場合もあるでしょうね。 ○医療監察官  逆に言うと、膵液の漏出が少量なものに限るみたいなものが、軽微な膵液瘻だという 理解でよろしいですか。 ○戸部座長  通院を必要としない程度です。その辺が爛れるのも、自分で治療できる程度の、小さ なガーゼ1枚ぐらいで済むような小範囲のものであれば、通院しなくても患者が自分で やっている場合もあり得ますね。 ○医療監察官  膵液の漏出が少なく、びらんの程度も軽微なもの。 ○望月先生  特段の通院加療を要しない程度のものですね。 ○戸部座長  そういうことですね。 ○望月先生  カット絆を貼っているぐらいのものですね。 ○戸部座長  通院する必要がある場合には、治ゆとはみなせないわけですからね。そのような表現 でないと、なかなか書きにくいですね。例えば、出てくる量が5 cc以下或いは10cc以下 などという表現では書けないと思います。 ○望月先生  日によって違いますしね。 ○医療監察官  例示した上で、特別通院を要しない程度のものということですね。 ○望月先生  先ほど座長がおっしゃったように、通院加療が必要な膵液瘻というのもあるわけで、 ずっと経過を見ていくうちに、「もう次の通院は要らないですよ、だけど時々グジュグ ジュしてつらいですね」という人が出てくるわけです。そういう人の救済処置という か、そういう面での障害等級認定は必要ではないかと思います。ですから、「特段の通 院加療を必要としない程度の」という一言を入れば、それで整合性はつくのかなと思う のですが、いかがでしょうか。 ○戸部座長  まとめられますか。それを明記しておきましょう。 ○医療監察官  はい。 ○戸部座長  2番目の薬剤による膵障害ですが、どういう薬剤で起こるか簡単に説明していただけ ますか。 ○医療監察官  『新臨床内科学』という医学書院の文献ですが、薬剤性の膵障害として確実な薬剤と して、AEC阻害薬、アミノサルチルサン薬、抗コリンエステラーゼ薬、アスパラギナ ーゼ、アザチオプリン、クロルタリトン、クロロサイアザイト、エストロゲン、プロセ ミド、メチルドパー、スフルオンアミド、スリンダク、テトラサイクリン、バルプロサ ン、ロクメルカブトプリンという全部で15種類について確実な薬剤ということで挙げら れています。 ○戸部座長  これはこういう薬物による膵障害も報告されているが、すべて経口投与による薬剤 で、労働災害で起こり得るものではない。だから、これは省くと書いておかれたらいい かもしれません。こういうことが実際の労働や作業のうちに起こることがあり得ません ね。 ○医療監察官  考えにくいことは間違いありません。 ○戸部座長  主に交通外傷や労働災害で起こる膵臓の障害は膵損傷、膵挫滅で、薬物によるものは 報告されているが、労働災害とは考えられないので省いたぐらいを入れておけばいいか もしれませんね。肝臓の場合はいろいろな有機溶剤がありますから。起こってもおかし くないのですが。 ○補償課長(菊入)  これは治療薬ですか。 ○望月先生  これはみんな治療薬ですね。 ○補償課長  どういうものですか、労災の治療で使うようなものですか。利尿薬や鎮痛剤とか。 ○望月先生  免疫抑制剤も、ホルモン剤もあれば、利尿剤もあればいろいろですね。 ○戸部座長  労働災害とは関係ありませんね。 ○望月先生  関係ありませんね、こういう薬を扱うところで、それが原因になっているということ はあり得ませんね。 ○戸部座長  あり得ませんね。ですから、あとで誤解されないように書いておけばいいかもしれま せんね。 ○医療監察官  その趣旨の目的で経口投与をすることによって、どのような形になるか、もう少し追 加で書いておくと。 ○戸部座長  それでいいですね。3番目の外分泌障害、内分泌障害を含めて、膵臓の障害というこ とです。前回は、労働災害で、膵臓が挫滅などの障害を受けて、膵切除を受けた場合に は、障害がはっきりしているということで、最初から膵臓の部分切除ということが飛び 出しているのですが、これはあくまで労災による膵臓の損傷の結果の部分切除であっ て、ちょっと奇異な感じがします。結局はこのあとに続いていくるのですが、慢性膵炎 様の病態ということで、今度は膵炎様の病態が飛び出してくるのです。これはあくまで 労災で、落下事故や交通外傷で膵臓が挫滅を受けて、膵損傷が起こって、その経過の中 で部分切除されたり、膵炎様の症状が起こってくるということで、これをうまくまとめ たほうがいいような感じがします。  また、部分切除と言っても、膵頭部の部分切除と膵体尾部の部分切除は、このあとの 経過も障害も全く違ってくるものですから、この辺もうまくまとめたほうがいいと思い ます。 ○医療監察官  その点に関して、尾崎先生からご提起があって、いまは部分切除と膵炎様病態と分け ているのですが、座長からご指摘がありましたように、業務上の諸病によって生じ、結 果として外分泌機能に障害があるかどうか。内分泌機能に障害があるかということだけ でみるということでよろしいのかどうかというところから、先生方にご議論をお願いし たいと思います。まず形態的なところで切るべきなのか、外傷があって、それなりに機 能低下をしているというところで、あとは共通の基準で見るべきなのかどうかをご議論 いただければと思います。 ○戸部座長  膵臓を挫滅するような外傷を受けると、膵組織損傷により膵酵素が免脱し、急性の炎 症が起こり、急性膵炎様の症状が起こります。それが治ってくる過程で軽症化しで慢性 膵炎様の症状に経過して、多くの場合は治ゆするか、障害を残すかという経過をとると 思います。臨床的に多い慢性膵炎はほとんどアルコール性の膵炎で、病態に代償期があ ったり、症状が複雑になってくるものですから、外傷性の経過と違うのではないかと思 います。労働災害では膵臓が損傷され、治療の過程で治ゆするか、または、治った時点 で、どういう障害を残したか。経過の中で切除などで、それも、膵頭部と膵体尾部の切 除によって違いますが、残された結果が外分泌障害、内分泌障害ということで浮き彫り にさせたほうが、労災の認定に関してはすっきりするのではないかと思いますが、いか がでしょうか。 ○尾崎先生  慢性膵炎様という病態が、日本の慢性膵炎の診断基準などの中にはアルコール性のも のがほとんどですので、いま先生がおっしゃったとおりですが、慢性膵炎様病態という のは外傷性の主膵管狭窄や膵頭十二指腸切除の際の膵空腸部横部の狭窄によって二次的 に慢性膵炎と同様の膵の変化を来たすことを、慢性膵炎様病態としてこのように呼ぶの です。欧米では、それが慢性膵炎の診断基準の中に取り込まれているのが多いのです が、日本では取り込まれてないのです。私も素案の中で書いたのですが、膵炎の、特に 膵頭部のほうをつないだり、膵頭十二指腸切除後の膵空腸吻合あるいは手術をしなくて も、膵挫滅があって、保存的に治ったが、その部分の膵管狭窄が残ると、それより体尾 部のほうが慢性膵炎と同じような変化を来たすことがあるので、このような病態という カテゴリーを入れて考えてみたのです。  いま先生がおっしゃるように、これも結果的には外分泌あるいは内分泌障害に最終的 には集約されていくのです。ですから、1頁目ので行きますと、こういう病態もある が、それもすべて外分泌と内分泌の機能で評価してというところのほうが、確かにシン プルにまとまっていくかなという気がします。 ○戸部座長  労災の認定の場合には、そのような経過としては、確かに膵頭十二指腸切除あるいは 体尾部切除が治療の経過に出てくる、あるいはその病態の経過の中で慢性膵炎様の病態 が出てくる。しかし、最後の認定するときは外分泌障害と内分泌障害の面から取り上げ た方がすっきりするのではないでしょうか。 ○尾崎先生  そうですね、外分泌機能と内分泌機能で集約されていけばいいわけで、そうすると、 術式に関しても膵頭十二指腸切除と体尾部切除というのは、明らかに重さが違うのです が、順調に治ってくれれば、膵頭十二指腸切除でもさほど機能障害を残さずにいきま す。逆に体尾部を広範に切れば内分泌機能の障害を残しますので、すべて膵機能という ことで集約したほうが非常に判断しやすいのです。ただ、中の病態にはいろいろ術式に より、あるでしょうが、最終的にはこのクラスの病態でまとめられてしまうのかなとい う気がします。 ○戸部座長  そのほうが判断するときは判断しやすいですね。一般の方が、その人が膵頭十二指腸 を受けたとか、慢性膵炎様の症状があると言っても途中の経過です。いま私は、怪我を してリストラされ、ヤケ酒をガバガバ飲んで、ひどい膵炎を起こして、いつも痛止めを 注射しないといられないような人を1人診ていますが、これは完全にアルコール性の膵 炎です。ですから、労災認定の場合、その辺もすっきりとしておいたほうがいいかもし れません。尾崎先生、いかがでしょうか。 ○尾崎先生  おそらく膵頭十二指腸切除後に慢性膵炎様の病態も含めて障害が出るとすると、外分 泌、内分泌両方に起こる可能性が高いでしょうから、等級でいけば上のほうにランクさ れるでしょうし、体尾部切除ですと、外分泌にはさほど障害を残さずに、内分泌のほう が主体でくるでしょうから、片方だけということで、運営上は11級以後にランキングさ れるのではないかという気がします。そのほか挫滅によるものも、すべて2つの機能の 掛け合わせでやっていけば、膵臓の機能障害ということでは、ほぼ足りるのではないか という気がします。 ○戸部座長  この場合、内分泌機能のほうは、経口糖負荷検査とインスリン異常低値ですっきり し、障害等級もこれで11級、9級ですっきりするのですが、外分泌機能のほうはなかな か難しいですね。私はBT−PABA試験はやったことがないのですが、実際に普通の 所で簡単にやれますか。 ○尾崎先生  あまりやりませんね。 ○望月先生  全体的なまとめ方は、いま尾崎先生がおっしゃったように、最初の考え方と違えて、 2の「慢性膵炎様病態」というのはなくして、「外分泌、内分泌障害」とするというの には、私も大賛成です。ただ、そこの評価をどのようにしたらいいかは、いま私は考え あぐねているところです。  といいますのは、障害等級が、例えば外分泌障害1つだけだったら11級ということな のですよね。我々腹部外科医の印象からすると、例えば、膵臓を切って取り、外分泌障 害が起こるということは、かなり広範に取らなければ起こらないと思います。非常に手 術も大変だし、手術後の回復も大変だろうし。ところが14頁に胆のう摘出の等級障害が あります。胆のうを摘出しただけでも11級ということが書いてありますが、胆のうを摘 除することと、膵をかなり広範囲に切除することの障害が全く同じというのは納得しづ らい面があります。外分泌機能の判断をかなり甘くしてあげないと、非常に大きな膵臓 の手術をやったり後遺症がある人が、胆のうを取って何の障害もない人とほとんど同じ 等級になってしまうおそれがありますので、そこをどのようにしたらいいのかと考えあ ぐねています。 ○医療監察官  そこのところで内分泌のほうは境界型は障害で、正常型は障害ではありません。糖尿 病型になると治ゆではなくなるという整理をしています。外分泌で、例えば慢性膵炎の 中で重症の分類というのは、厚生労働省の研究班で作っている途中のようですが、耐糖 能異常でいくと、境界型は軽度異常で、外分泌の軽度異常は11級だが、軽度に低下して いると認められるものは治療の対象ということであれば、1ランクでもいいのかなとい うのがあります、  逆に軽度異常だと治療をしなければいけないというのがないと、外分泌のほうはいく つかグレードを設けななければいけないという話になるのです。素案の前提は内分泌が 前に出るということで、外分泌が糖尿病型になるぐらいであれば、逆に境界型ぐらいな ら、外分泌というのは、少なくとも軽度異常ぐらいにとどまっているという前提だった のですが、そうは言えないのだということなら考え直さなければいけません。 ○戸部座長  いま望月先生がおっしゃったように、胆のう摘出の障害は、ひ臓と一緒でほとんどな いと思います。しかし、ひ臓の場合は8級というように以前に認定されていることと、 大きな免疫器官で、何かあるかもしれないということで、せいぜい13級ぐらい。胆のう の場合もそこにあった臓器が取られてしまうのですから、下痢をするなどということも あり得るからということだったのですが、等級は確かに11級というのはおかしいです ね。 ○医療監察官  「11級(13級)」ということですね。ここは先生方の今までの議論を踏まえますと、 ひ臓のところでもう1度やることにしていますが、いろいろなご議論を踏まえると13級 がいいところぐらいかと思っています。  それとは別に、11級にして、もっと高度に低下しているような外分泌機能などは、内 分泌が前掲に出るからそれで治療の要否を考えればいいのだとしていたのですが、必ず しもそうではないと。 ○望月先生  そうですよね、外分泌のほうが内分泌より先に落ちますよね。 ○尾崎先生  ただ、症状としてどのぐらい現れるかですが、膵液量を含めてはそういう可能性はあ ると思います。 ○戸部座長  外科的切除では、膵臓は広範囲に切除しないとインスリンをずっと必要とするような 内分泌障害は起こりがたい。また、膵炎の場合、病期がすすんで広範囲に膵臓が荒廃し ないと、重症の内分泌障害は起こらず、内分泌は強い印象をもっています。逆に内分泌 に障害が起る場合には、外分泌の障害は必ず起こっています。内分泌の検査が比較的客 観的にとらえられるから、これを重視して、ここで提案していただいております。これ はこのとおりだと思いますが、外分泌障害のほうが症状としては大きいですね。ただ、 客観的にとらえにくいのです。セクレチンテストにしても、BT−PABAの検査も一 般的ではないですね。だから、膵炎などの途中経過に起こるようなエラスターゼやアミ ラーゼの低下などぐらいしか臨床ではとらえにくいのですが、これをどう表現するかで すね。 ○医療監察官  外分泌機能はそれ以上低下すると、もう治療の対象になるというものがあるのかどう かというところから教えていただきたいのです。外分泌能機能がある程度以上落ちる と、これは治療をしたほうがいいというか、外から積極的な治療を要するような基準み たいなものがあるのかどうかということです。 ○戸部座長  膵体尾部を切除した場合は、外分泌障害は起こりませんね。 ○尾崎先生  はい。 ○戸部座長  主膵管から膵液が分泌されていると、少しぐらいのことでは問題はありません。膵頭 十二指腸を切除した後、腸管と吻合した主膵菅が少し詰まるとか、または、慢性膵炎や 外傷で主膵管に閉塞や狭窄がきて通りにくいと、いろいろ外分泌障害が起こりやすいの です。そのときには腹が痛んだり、下痢をしたり、下痢でも特に膵液がなくなると、脂 肪便が出たり、消化不良便が出たりするという症状は、慢性膵炎や膵頭十二指腸切除後 の方の場合には、高率に出現します。糖尿病を起こすような内分泌障害はむしろ少ない です。ですから、膵臓の障害というのは、確かに胆のうやひ臓に比べると等級を高くし ておいたほうがいいと思います。 ○望月先生  監察官の質問で外分泌機能低下が起こったときに、治療等にはつながるのですかとい うことですが、下痢や脂肪便が高度に認められて体重が減少してきたということになれ ば、当然消化酵素製剤を使わなければいけません。パンクレアチンという牛の膵臓から 抽出した非常に消化酵素が濃密に入っている薬がありますが、それを経口投与するので す。それを持続的に投与しなければいけなければ治療の対象になります。 ○医療監察官  それはどのぐらいだったらするというのがあるのでしょうか。 ○尾崎先生  難しいですね、多かったら出すということはないですね。 ○望月先生  客観的な指標になるものがないのです。客観的な指標になるものがあれば、それをポ ンと持ってくればいいのですが、それがないのでどうしたらいいのか分かりません。  BT−PABA試験というのは、一般的な所ではなかなかできないのですか。試薬か 何かを打つのですよね。 ○尾崎先生  チューブを入れるのではありません。チューブを入れて出てくる膵液量を測るという のではないですね。 ○医療監察官  それがセクレチンテストですね。 ○戸部座長  これはBT−PABA(N-benzoyl-L-tyrosyl-p-aminobenzoic acid)を経口投与し て、血中と尿中のPABA(p-Benzoic acid)の濃度を測るという検査です。血中濃度 も尿中にPABAの排泄量も減少してくるという検査で、頻用はされていない検査では ないかと思います。 ○望月先生  これはPFDを経口投与して、膵のキモトリプシンによって分解されたPABAの尿 中濃度を測るわけですから、この試薬さえ入っていれば、わりと簡単にできるのです。 パンクレオザイミンセクレチンテストみたいなものとは違います。ですから、これを1 つの指標にするのはリーズナブルだとは思いますが、それ以外のことで何かいい方法は ないのかと先ほどから考えているのです。これはそんなに大変ではなかったと私は思い ます。 ○戸部座長  なさったことはありますか。 ○望月先生  私自身はやっていませんが、うちの医局員がやっているのを聞いたことがあります。 これは外来でもできる試験だと思います。 ○戸部座長  そうですか、私は長い間にこの試験をやったことがありません。これは調べたらすぐ 分かると思います。 ○医療監察官  逆に言うと、それは異常で、症状みたいな、このぐらいなら治療の対象にするという ものを除いた場合に11級なのか、それとも起点が9ぐらいなのかということですが、あ まり重いものは外分泌だけども治療の対象にするというお話で、そこは少なくともこの ぐらいだったらなるみたいなものがあれば非常に有難いのです。このぐらいだったら当 然そのようにするというのが常識なのだということがあれば、そこからは当然治療の対 象にすると言えるのです。多少アミラーゼの量などが違っているというのがあって、患 者の症状がかなりひどい、下痢が頻回だとか、脂肪便がすごいというぐらいなのでしょ うか。 ○尾崎先生  客観データで症状を表すのは難しいですよね。 ○望月先生  いちばん簡単な候補として挙げられるのは、通院あるいは入院治療によって医療を行 わなければ体重減少が止められない、特段の医療を行わないとどんどん体重減少が進行 していくなどということならば治療の対象になります。しかし治療の対象にならない、 すなわち体重減少はある程度のところではストップしているが、患者の訴えで下痢がか なり頻回で、なかなか体力の回復が得られないというのが、障害認定の対象になるので はないかと思います。評価を簡単にしようとしても、指標として体重だけでいいのかは 分かりません。実際に体重減少が止まらないものは治療の対象とする、というのは妥当 なところだと思います ○尾崎先生  先ほどの膵液瘻と同じぐらいで、通院加療を要する要さないという、そこを医者の判 断に任せるしかないのではありませんかね。 ○医療監察官  そのような人はしないと考えたときに。 ○尾崎先生  この症状があれば、もう外分泌機能は多少障害されていると。 ○望月先生  それは1つだけだったら11級、内分泌機能障害はこの程度なら9級になる。 ○尾崎先生  できれば胆摘は13級にしてもらえば。 ○望月先生  そうすると整合性が合いますね。 ○尾崎先生  ひ摘も13級にすれば膵頭十二指腸切除であれば両方くっ付くでしょうし、体尾部切除 だったら片方で、通院加療を必要としない程度だが、ちょっと症状が残るというぐらい で、そうすると、いろいろな術式も全部省いて膵機能ということだけで2段階にできる かという気がします。 ○望月先生  その場合はBT−PABA試験もなくしてしまうのですか。 ○尾崎先生  なくしてもいいのではないかと思います。 ○戸部座長  これをもし入れておけば大変ですよ。 ○尾崎先生  いまの考えでいくと、膵損傷があれば最低11級にはなるであろうということで、膵臓 の場合はほかの臓器と考え合わせれば、皆さんがおっしゃっているように、重症度から いけば、そのぐらいは細工されていいのかと思います。 ○医療監察官  当然そのぐらいのものは出ておかしくないのです。ただ、9に行くにはそれなりのも のがないと駄目だと。 ○尾崎先生  データが必要だということになります。 ○戸部座長  膵臓の外傷や膵臓の損傷で、労災で認定を求められている症例はありますか。 ○医療監察官  一時金のほうはデータとして個別に分からないのですが、年金になっているような調 べです。膵臓だけが問題になっているわけではないのですが、そういう方のは3例ぐら いはあったことはありました。ご参考にできようなもともとこちらの基準がきちんとし ていなかったこともあって、大したことを調べていません。今回のようになれば、今の ご議論でいくと、膵損傷を負ったことは画像所見で確認できるというだけで11級で、そ れに合わせて内分泌機能に障害があれば9級にしますということなら、今後はかなり認 定される例が多くなると思います。 ○戸部座長  画像診断というのが損傷されたとき、急性炎症で膵臓が腫張したり、浮腫がきたりし ているような時期、逆に完全に萎縮してしまった時期は画像診断である程度分かるかも しれませんが、認定する時期に、最初の比べる画像がなかったら難しいかもしれません ね。尾崎先生いかがですか。 ○尾崎先生  結局分からないのは「なし」として読んでいるでしょうから、有所見を損傷ありとし て読むしかなくて、やっていますので、果たして画像に現れない膵損傷がどの程度ある のかは何とも言えません。ただ、今の造影剤をきちんと入れたCTですと、かなり軽微 な膵の障害というか、病変もつかまるとは思います。昔のCTより今のCTはかなりい いですから。それでないときは「異常なし」ということで片付けています。 ○戸部座長  画像は確かに入っていましたね。 ○医療監察官  はい。 ○尾崎先生  これでいくと、アの部分が膵の一部を切除するか、画像所見から膵損傷が確認できて 症状があるということだけの1項目で外分泌機能はしてしまう。 ○戸部座長  BT−PABA試験は抜きます。 ○尾崎先生  しかも定期的通院加療を逃さない程度の症状が入っている。それであとの臓器損傷の 等級と合わせれば、膵臓に関してはその2段階でえらくすっきりはすると思います。 ○望月先生  そうですね。ファジーがいいかもしれない。 ○尾崎先生  確かに膵臓はそれだけでエントリーしてあげないとかわいそうですね。 ○戸部座長  膵臓はそれでいいですか。ちょうど戸田先生に来ていただけましたので肝臓に入りま す。この前、戸田先生からご議論のあった薬剤による膵障害をいろいろ調べていただき ましたら、治療薬として経口投与したときに、膵障害を起こす薬がいくつかあるようで す。ただ、実際に、職場でそれを吸うとか、それに触れるということによって膵障害を 起こすようなことは考えられません。一応記載はしていただいて、認定から外していい のではないかということで議論されたのですが、それでよろしいですか。 ○戸田先生  それでよろしいと思います。 ○戸部座長  それでは、次に肝臓に進みます。 ○医療監察官  肝臓ですが、資料No.1の2〜3頁についてご説明したあと、今回初めてご議論をい ただくということで、21〜27頁まで読み上げて提案をさせていただきます。肝臓の所で 主に、2〜3頁に書いてありますように4点ほどご議論をいただければと思っておりま す。  いちばんポイントになるかと思っておりますのは、1の「慢性肝炎の病態の理解と治 ゆ」です。慢性肝炎についてはウイルスを排除できれば完治ということですが、ウイル スに持続的に感染している場合については、徐々に肝機能は落ちていく。ほとんどがC 型と考えると進行が非常に遅い。20年とか30年かけて次の段階に慢性肝炎から肝硬変に なっていくし、自覚症状も通常は生じない。基本的に慢性期になってトランスアミナー ゼの値も、落ち着いたら治ゆにしてよいかどうか。  案としては、基本的に慢性期になってトランスアミナーゼの値が安定的になれば治ゆ にします。ただし例外があります。1つは、肝生検でどんどん線維化が進んでいくこと が確認できている、高齢の方が感染すると非常に急速なスピードでどんどん悪くなり肝 硬変になってしまう、というような方が確実な方は、当然症状が安定しているとは言え ないので治ゆにしません。  もう1つ、これでいいかどうかについてご議論いただきたいのです。肝生検で確実に どんどん進行する方は当然しないとして、トランスアミナーゼの値が持続的に高値の場 合に、確実に悪く肝線維化が進むというわけでもなさそうなのですが、可能性は大です と。持続的に高値の場合に5年ぐらいで肝硬変になる可能性はそれなりにありますとい うことも言われているという中で、持続的に高値の場合に治ゆにすることが適当なの か、あるいは症状が安定していないので治ゆにしないのがいいのか。あるいは、持続的 に高値の場合は治ゆにしないとしたことが適当だとした場合に、どの程度のレベルをも って持続的に高値というのだと、  流れとしては、できるだけトランスアミナーゼの値を低くしてあげたほうがいいとい うことできています。その辺を踏まえた場合に、どのレベルで持続的に高値だというの かについても、ご議論をいただければと思います。  2つ目は、1の議論を踏まえてということですが、治ゆになることがあるのです、ウ イルスに感染しているが肝機能、トランスアミナーゼの値が正常値であれば何の問題も ないのですが、正常値を超えている場合に、一定の症状を訴える人が稀にいますという ときに、どう考えるのか。基本的に急性肝炎のときにも2割か3割ぐらいしか症状は出 ません、慢性期になると極めて稀です、さらに高い人は治ゆにしますといったときに、 それでも自覚症状を訴えてきたらどうするのか。膵炎のように大体落ちてきたらほとん どの人、80%以上の人が腹痛を訴えるということであれば分かりやすいのですが、ほと んどの人は逆にいないし、訴える症状も、どこからきたのか分からないのが症状ですと いうことですので、そういったものについて障害として評価できるのかどうか。治ゆに するとした場合、ご議論をいただくと。  3つ目は、肝硬変は、現在だと慢性肝炎と基本的に連続した病態だと理解されている ようですが、非代償期のときには、治ゆにしないということでよろしいのではないかと 思っていますが、確認的にご議論をいただければと思っています。代償期の場合に急速 に悪化する場合でもない、ウイルスが排除できた場合に治ゆとすることが適当ではない かということですが、それでよろしいかどうか。治ゆとした場合にどうするのか。慢性 肝炎と同じような考え方でいいのかどうかについて、ご議論をいただくと。  4つ目は、肝臓についてはウイルス性の慢性肝炎の問題が非常に大きな話ですが、外 傷のときにどうするのだと。基本的に大きな予備能があります、半分ぐらい失っても大 体1カ月ぐらいで戻ります、8割ぐらいでも4カ月ぐらいで大体戻ります、戻らなけれ ば死んでしまいますということで、治るか死んでしまうかということで、障害として評 価しないという理解でよろしいのかどうか。この4点についてご議論をいただければ有 難いということです。  では、21頁以下を読み上げさせていただきます。 ○事務局  (資料No.4読み上げ) ○戸部座長  ありがとうございました。肝臓は大切な所ですので、戸田先生を中心によくご論議い ただきたいと思います。論点の最初、2頁「慢性肝炎の病態の理解と治ゆ」、これにつ いて、「完治した場合はもちろんのこと、GOT、GOPの値が安定しているものの、 治療効果が認められず、6カ月間持続的にその値が80以下である場合について治ゆとす る。線維化の進行が著しい場合は治ゆとしない」、こういう考え方で戸田先生、よろし いでしょうか。 ○戸田先生  治ゆの考え方をもう1回復習したいですね。例えば、眼球の損傷があって目が見えな くなったと、それも治ゆなのですね。 ○医療監察官  目が見えなくなってこれ以上やっても、失明の状態で終わりですというときは治ゆで す。慢性肝炎で難しいのは、先生に教えていただいた中の1つは、60歳ぐらいで、肝炎 になったらすぐに非常に進行が速く肝硬変になってしまう、その症状が安定していると はとても言い難い、その場合は駄目ですと。肝生検でどんどん悪くなっているのが分か れば、当然治ゆにはできないでしょうと。  もう1つは、これにはトランスアミナーゼの値しか書いていないのですが、1つの所 に着目すると、普通の肝炎よりもずっと進行度合いが激しいですと。普通なら20年ぐら いかからないと肝硬変にならない、だから一旦治ゆにします、やることもありませんか らと。しかし、すぐにどんどん線維化が進んできてしまう、1から2、2から3、3か ら4という方はしませんと。  それが肝生検で分かるという以外に、何か機能的な検査で、これは安定しているとは 言えないということが言えるのであれば、症状が安定しているという条件を満たさない ですから治ゆにしません。 ○戸田先生  「線維化の進行が著しい場合」と書いてあります。線維化の進行は肝生検で分かりま すが、肝生検は度々繰り返すわけにはいきません。線維化のマーカーは何であるかをい ちいち挙げるのはなかなか難しいわけです。だから、線維化の進行が速いと推定される 場合は治ゆとしないとか、というようにした方がよいと思います。  要するに慢性肝炎の難しいところは、例えば先ほどの失明とは違って常に進行してい るということです。進行の速さには差がありますが進行しているというところが非常に 難しい。例えばトランスアミナーゼが正常値より少し超えていても進行しているので す。組織学的に見ると慢性肝炎の活動性の所見がありますから、少しずつ、10年とか20 年経ったら肝硬変になるわけですが、そういうのも治ゆとするかどうかを、どこで手を 打つかが非常に難しい。常にAST、ALTが異常の場合は、我々の考えとしては、病 態は少しずつですが悪化していると考えていますので、どの辺で手を打つか。  一応我々が「症状は固定している」と考えるのは、やはり80というのがいい線ではな いかと思います。80IU/L以上の場合には肝硬変の出現頻度が高いという報告もあり ますから、そういう意味で80というのはいい線だと思います。では80以下だと絶対肝硬 変にいかないかと言ったら、そういうことではなく数字的に少ないということだけで。 ○医療監察官  そうしますと、原則的に測れないような、主治医が、これで見るとこの程度で治まっ ているのだけれども、ほかの数値から見ると速いと。これだと「5年ぐらいでなること もある」と書いてありますが、それと同じぐらい速いと推測されるようなものであれば 治ゆにしないのですよと。 ○戸田先生  そうです。この80IU/L、80単位以下である場合は治ゆとすることはよろしいと思 います。ただし、線維化の進行が著しいと推定される場合、いま4週間に1回ずつやっ ていますが、血小板がどんどん下がっていく人がいます。特にお年寄りで70歳を超えて いる人、この人は医師ですが、医療事故でC型肝炎ウイルスに感染した場合は非常に速 く、2年ぐらいで肝硬変になります。でも、その人はトランスアミナーゼは80以下で す。ですから、80以下である場合は一応「治ゆ」としてもいいのですが、線維化の進行 が著しいと推定される場合は「治ゆとしない」ということを入れたほうがいいと思いま す。  しかもアルブミンがどんどん減っていく、プロトルミジカも検査するたびに伸びてい くという人がいますし、しかもAST域はそんなに高くないという人はいますので、例 外という所で、そういう人たちを救うのはいいと思います。 ○戸部座長  肝硬変の場合の血小板の減少は、脾臓の腫大(splenomegaly)によるものですか。 ○戸田先生  そう言われています。スプレノメガリーで血小板がどんどんひ臓で破壊されていると 考えられています。 ○戸部座長  そうすると労災補償でひ臓がなくなった場合に、8級では高いので、ゼロにしろとい う論議もありますが、ひ臓の影響も大きいですね。 ○戸田先生  血小板が減るのはひ臓を取れば抑えられるのですが、今度はアルブミンとかプロトル ミジカがどんどん減っていきます。プロトロンビン時間は伸びるし、アルブミンは減る ということで線維化の進行を推定できます。血小板がどんどん減っている場合はひ臓を 取ると元に戻ります。 ○戸部座長  idiopathic(特発性)の血小板の減少のときは脾臓摘出は適応ですが、肝硬変のとき にひ臓を取ることは、あまり。 ○戸田先生  血小板が2万とか3万という場合、しかもアルブミンとかプロトロンビン時間が正常 というか、そんなに低くないという人は取ることあります。外科にお願いしてひ臓を取 ってくれという場合があります。そうすると血小板は元に戻ります。  だから80というのは、まあまあという線ではないかと思います。それで、それ以外 で、いまの形を入れておいたほうがいいのではないかと思います。 ○神保医寮監察官  推定されるのは、例えば血小板の減少とか、アルブミンの低下という形で例示してお くということでしょうか。 ○戸田先生  そうです。 ○戸部座長  ウイルスが生きていて、そして少しずつ進行している、進行は止まっているように見 えても進行している、それを治ゆにしてしまうことへの抵抗はどうでしょうか。 ○戸田先生  それには少し抵抗はあります。 ○医療監察官  どの辺を安定していると見るか。急激に悪くなっているときは安定しているとは見な いということですが、少しずつ悪くなっている場合は安定の中に入るのですと。それを 前提にしてというとあれなのですが、同じような議論が『障害認定必携』の318頁に 「慢性肝炎に係るアフターケア」をいま認めています。これを設けるときにも同じよう な議論がありました。  要するに持続的に感染している状態なので、少しずつ悪くなるものについて、そもそ も治ゆにしていいのかと。このときは障害の話ではなく、治ゆにした後、何も面倒を見 ないというのはいかがなものか、ということでご議論をいただきました。このアフター ケアができるまでは、そもそも慢性肝炎について治ゆがあるのかどうかということ自体 きちんとした議論をしていなかったと。このときに持続的に感染していて少しずつ悪く なることは百も承知です、そうは言っても進行が非常に遅く、しかも基本的な症状が出 ない方は、一旦治ゆにしてもいいのではないかと。ただ、そういうことがありますよと いうことしか議論していないのです。  今日ご議論いただいたように、いつから治ゆにするのか、80で切るのか、80で切って も例外的に速いと推定される場合は駄目です、といった詰めた議論はしていないのです が、以前から私どもとしては進行性のものでも、それが非常に遅ければ症状は安定して いると。速い場合は、当然治療効果がなくてもずっと見ていきますという形にしていま す。そこの線引きをどうするのかということで、今回80という線を書かせていただいた ということです。 ○戸部座長  この問題は、アフターケアの期間が3年と限られているわけですね。 ○医療監察官  必要があれば更新ができることになっています。 ○戸部座長  80以下で安定しておっても、急に悪くなったり、肝硬変になった場合、アフターケア はできるわけですね。 ○神保医寮監察官  アフターケアではなく治療に切り替えます。アフターケアだと若干制限がありますの で、治療であれば、建保の範囲内であれば何でもできますので、いくらでもやっていた だけると。 ○戸部座長  これは書いておかないといけないでしょうね。GOT、GPT値が6ヶ月安定して80 以下である場合は治ゆとする、ただし、急性増悪した場合は治ゆとしないと。 ○神保医寮監察官  その点は27頁に、急性症状が再燃した場合、これはB型になると思いますが、又はA ST、ALTが80単位を超える高値を示したときには、再発として積極的な治療を行う べきだとしていますので、当然治療の対象になってきます。 ○戸田先生  この場合は治ゆとしないということになるわけですね。 ○医療監察官  一旦治ゆになった人がまた悪くなれば、もう一度なります、また治ゆということもあ り得るのですが、ずっと80以上であれば治ゆではなくて、最後肝硬変になって、肝がん になってというところで、ずっと労災で面倒を見させていただきます。 ○戸部座長  増悪した場合は治ゆとせず、労災保険によって治療するということですね。 ○医療監察官  増悪した場合は再発で治療を認めます。 ○戸部座長  それは入れておいたほうがいいでしょうね。これで切り捨てて、面倒は見ませんよと いう印象を与えないほうがいいですね。それであれば1番の所はよろしいでしょうか。 ○戸田先生  はい。「上記の例外」という所は救うことになるので、80はいい線ではないかと思い ます。 ○戸部座長  2番目に慢性肝炎を障害として評価する必要性、慢性肝炎の多くを占めるC型慢性肝 炎の場合ほとんど自覚症状がないことから、障害として評価しない方向が適当かどうか を検討します。この場合、厚生年金の障害年金においては、100以上であって軽易な業 務に就けないときには3級、労災保険の7〜9級としていることを踏まえて検討すると いうことですが。 ○医療監察官  厚年の場合には、1つは100単位にあっても症状が出ないと駄目だというのがありま す。今回ご議論いただいたものでいきますと、100単位であれば、症状の有無にかかわ らず治ゆにしないところがまず違います。それでは80単位以下のときにどうするのかと いうことですが、こういうときだけ治療するのか、それは不定愁訴みたいなものだと考 えるのか。肝臓学会のガイドラインを拝見すると、臨床症状の有無ではなく、肝機能検 査の値で治療の要否を決めるのだと。そういうことで片づけるとご本人が大変だと言っ ても、50単位ぐらいで、私は大変なのですと言っても、それではやりましょうかという ような話にはならないでしょうと。そうすると、症状が出ているからやりましょうみた いな話になりにくいのか。B型であれば別だという話ですが。  治療が必要だと言われれば何も問題はないのですが、C型の場合に、症状が出ている からやりましょうということにもなりにくい。もう1つ問題なのは、それでは障害とし て評価すればいいではないかという話ですが、膵臓のように外分泌機能が障害されると 80%以上の方は腹痛を訴えるとか、そのようなことがあると非常に分かりやすい。とこ ろが慢性肝炎の場合は、疲れやすい、だるいといった肝炎でなくても起きるような症状 です。黄疸は治療の対象ですので問題にならない。  慢性肝炎以外の非特異的な症状しか出ていなくて、それが割合として少なく、かつ持 続的に高値の人は療養の対象にしますと言った場合、果たして障害として評価する必要 があるのかどうか。あるいは、そのようなものは見ずに、一定の進行の危険性をもった ということだけを捉えて、例えば11級なら11級と。それ以上悪くなったらするというこ ともないわけではない。100で症状があって初めて7〜9という話であって、それより も低い方と考えれば11級でも全然おかしくはないかと思うのです。ほとんど何も症状が 出ないものを障害と言っていいのかどうか。かなり出る方はいいのですが、逆にほとん ど出ないのが多いので、その辺について先生方にご議論をいただきたいのです。 ○戸田先生  やはり自覚症状はほとんどないのです。我々でも、例えばだるいとか、食欲がないと 言った場合では、それは肝炎のせいではないという見方をしています。慢性肝炎で200 とか300になりますと、それはだるいでしょうと。だけど80以下でそういう症状を訴え られた場合は、それは肝炎によるものではないです、それはありませんと言っていま す。 ○医療監察官  (1)に書いてある、極めて稀で自覚症状がないのが通常ですということで、障害とし て評価する必要はないですと。もしその後、悪くなれば当然見てあげると。 ○戸田先生  症状ある無しを障害ある無しと見ると、慢性肝炎は障害なしということになります。 ○医療監察官  逆に言うと、治療の要否のところは、今回かなり実務的な、今までの運用よりは、療 養が必要ですよという基準をずいぶん落としたつもりでいます。今までは、昔だったと いうこともあり、かなり乱暴な議論もしているのです。 ○戸田先生  昔というのは、いつごろですか。肝炎ウイルスを見つけた後か前かということで、ず いぶん違ってきますからね。 ○医療監察官  最初作ったときは前です。見直しをしたのは、C型が分かってからです。いまのアフ ターケアの要綱はですね。 ○望月先生  私は症状がなくても障害は残っていると思います、主にウイルス性のものに関してで すが。一応治ゆとしていても、肝機能障害が残っていて、それが将来的に肝硬変に進行 していく可能性を秘めているわけです。そういう意味では、胸腹部臓器に障害が残って いると思います。症状の上からだけで障害認定をするかしないかではなく、やはり機能 障害があるかないかも視野に入れて認定しなければいけないと思います。これから先は 肝硬変の話になると思いますが、症状がなくても障害認定の対象になるのではないかと いう意見です。 ○医療監察官  障害とした場合に、基本的に障害を残して労務にどれだけ支障があるのかということ です。 ○望月先生  そうです。例えば自覚症状がなくても肝硬変が出来上がっている人は、労働の能力に 制限が出ると思います。 ○戸田先生  肝硬変がありますと出ます。慢性肝炎では、日常生活あるいは労働では、ほとんど制 限ないと言ってよろしいでしょう。 ○望月先生  例えば炎天下で重労働をやったりしたときなどは。 ○戸田先生  その辺は前に議論したと思いますが、炎天下で過激な肉体疲労を伴うような労働は制 限されます。 ○望月先生  好ましくないですよね。 ○戸田先生  そうです。だから全く制限がないということではないです。 ○医療監察官  こういうものはやってはいけないという標準的な生活処方みたいなものは決まってい るのでしょうか。例えば、慢性肝炎でこのぐらいの人ならという。 ○戸田先生  それはあります。例えば土木工事に従事する方とか、要するに肉体疲労を伴うような ものです。デスクワークはいいですが、体を非常に使うことはやめなさいということは やっています。 ○医療監察官  それが分かるのでしたら入れればいいですね。 ○戸田先生  それはきりがない。この場合はどうなのかと次々に出てくるので、すべてをカバーす るのは難しいと思います。 ○医療監察官  前の職種はともかくとして、重筋労働は駄目ですというようなもの。実は、泌尿器部 会で腎機能をどのぐらいにするかというときに、腎学会の生活指導のガイドライン、こ のぐらいだったらこういうのは基本的にやってはいけません、というものが学会として 決めましたと、それを踏まえ、ここから下は治ゆにしてはいけません、このぐらいだっ たら何級にしましょうというご議論をいただいたのです。それと似たようなものが肝学 会ではないですか ○戸田先生  それはないです。前に慢性肝炎の人は食事した後、1時間は横になりなさいと言って いましたが、今は、必ずしもそれは必要ない、かえって動脈血流を増やして食道静脈破 裂を誘発するからいけないという人がいますので、そのようなフォーマットは肝臓につ いてはないです。肝臓は非常に融通がきく臓器で、それを決めるのは難しいです。 ○医療監察官  最低限のコンセンサスとして、重筋労働は駄目ですとか。 ○戸田先生  それは言えます。先ほど言ったように、非常に強い肉体疲労を伴うような労働をして はいけませんと、その程度です。 ○医療監察官  1日8時間を前提として、そういう肉体労働に就くことは制限されると。 ○戸田先生  慢性肝炎の段階ですね。例えば営業活動程度はいいでしょう。だけど肝硬変になりま すと、営業活動であまり歩いてはいけない、デスクワークをしたほうがいいですとい う。 ○望月先生  やはり労働能力に制限が生じるということですね。 ○戸部座長  望月先生が言われますように、確かに自覚症状としての障害はなくてもウイルスは生 きている。常に進行性のものですから、これを治ゆとして全く認定しないというのは何 となく抵抗があるのです。もし治ゆとして認定して、今度再燃して治療しなければいけ ないとなった場合は、その認定は取り消すわけですか。 ○補償課長  再発とやるだけです。 ○戸部座長  例えば、これが11級だと11級で再発治療することになるのですか。 ○医療監察官  等級として認定すると、積極的治療は必要なくても、自分が制限を受けていることは 評価されます。また治療が必要になったら安心して治療は受けられますという話です。 いまのご議論から、肉体労働が制約されるものが慢性肝炎で、肝硬変はそこまでいかな いとすると、試み的に言えば、慢性肝炎が11級で、例えば肝硬変が9級ぐらいですと。 ○戸田先生  治ゆとした場合は、障害何級というものは付かないということですか。 ○医療監察官  付かない場合もあります。例えば先ほどから話題になっている胆のう摘出、これも決 め方次第ですが、取っても何も影響はでないと。それとの対比だと思いますが、そこを 例えば13級としたときに、このぐらいだと少なくとも11級ぐらいにはなると思います。 ○戸田先生  目に障害を受けて0.6になったと、それが固定しているという場合は障害認定ですね。 ○医療監察官  そうです。 ○戸田先生  それと同じレベルの障害という意味では、肝臓で、いわゆる治ゆでも日常生活あるい は労働に制限を受けるわけですから等級は付くわけですね。だけど0.6で固定している 場合は治ゆと考えるわけですね。 ○医療監察官  そうです。ただ、1.5の人が0.8になっても障害はもらえないのです。0.6より悪くな らないとあげませんという話になります。例えば治ゆして異常値を示している人だけ11 級にするとか、肝機能の正常例は駄目ですというのも1つの案としてあるのかなと。治 ゆしても本当に完治すればそうですし、持続的に感染してても機能的に問題がなければ 障害ではないと。眼でいくと、1.2あった人が0.8になっても、ならないと。0.6より下 回った場合に初めて障害として評価します。そのときに40から80のときに例えば11級と いうことは十分考えられると。 ○戸田先生  先ほど80以下だと治ゆという考えを出されていますが、治ゆとしたのだけれど、だけ ど障害としては評価しない。 ○医療監察官  評価しないというのは完治した場合です。 ○戸田先生  完治した場合は、障害もなしですね。 ○医療監察官  そうです。 ○戸田先生  治ゆと、障害がある無しは別に考えないといけないですね。 ○医療監察官  そうです。それが非常に難しいのです。 ○補償課長  かき傷が残るとそれも障害です。それを全部評価してやるかというと、やはり労働能 力にどれだけの影響があるかがありますので、傷があっても幅があるからすべて対象と は認めませんということで成り立っているものですから。 ○戸田先生  傷が残って顔面が非常に醜くなったと、それが固定した場合は治ゆですね。 ○補償課長  治ゆです、それは払います。 ○戸田先生  それで障害は、何級というのはあるのですね。 ○補償課長  はい。 ○課長補佐(渡辺)  ちょっとした傷では駄目ですが、かなりひどい傷になれば払います。 ○戸田先生  そういう意味では、慢性肝炎の場合は80単位以下であっても進行するわけだし、先ほ ど言ったように重筋労働は駄目だということで仕事に就ける範囲は制限されるわけです から、そういう意味では障害ですよね。 ○課長補佐  そこが明らかであれば当然障害として評価できます。原案では、そういったものはな いだろうということを前提として、障害としては評価しないという案文になっていま す。我々の認識では、慢性肝炎の場合は80以下の人が対象ですからその症状は非常に軽 いのではないかと思っています。ウイルスを体に持っているということでは完治してい ないわけですが、非常に軽くて、健常人と何ら変わらない状態にあるのではないかと。 労働能力という意味で考えると、健常人と何ら変わらないぐらいの人しか治ゆにしない ということにしたものですから、少なくとも慢性肝炎については障害ではない、労働能 力が落ちていますとは言えないのではないか、ということを前提に案が出きています。 ○戸田先生  極めて行政的な判断ですね。 ○望月先生  肝炎は我々医療従事者が主たるものですが、我々が針刺し事故で肝炎になったことを 自分で認識しているのでしたら、忙しい診療の中で、今までは11時まで頑張っていたけ れども、9時に帰って食事をして寝なければとなりますし、労働能力には明確な制限が 加わると思います。それを何級にするかは別の問題ですが、やはり障害はあると考えな ければいけないと思います。 ○戸田先生  だから2については障害として評価する必要があります。 ○医療監察官  障害として評価するときに、いまの話ですと肝機能異常値から80までということで障 害として、それは肉体労働が制限されますということに着目して、やりますということ で次回、もう一度、提案させていただくということでよろしいでしょうか。 ○戸田先生  例えばサッカーとかラグビーをやっている人はどんどん悪くなります。大学の運動部 に属してアメフトやっている慢性B型肝炎の人は、私の知っている人で20歳の後半で肝 硬変になっています。 ○尾崎先生  インターフェロン療法を必ずやるのが前提ですか。 ○医療監察官  治す努力はしますというのが前提です。完治していただければ患者もハッピーですし 労災保険経済もハッピーですから。 ○尾崎先生  インターフェロン自体をやりたがらない人がいますよね。 ○医療監察官  それはいろいろな所で同じような話がありますね。 ○尾崎先生  例えばC型に感染してインターフェロン療法を望まない方は、インターフェロンをや ってもマイナスにならなかった群に入れていいわけですね。 ○医療監察官  そうです。 ○尾崎先生  インターフェロンをやってマイナスになっていたら、これは治ゆとして、しかも障害 としては認定しないということですね。 ○医療監察官  はい。 ○尾崎先生  プラスになった場合でも、80以下であれば治ゆとしてはいいが、アフターケアを使っ て何がしかの認定をすると。 ○医療監察官  フォローをしながら、肝機能異常値であれば。 ○尾崎先生  その中で線維化の可能性が示唆された場合は、さらにその上の80以上と同じ群に入れ て扱うということですね。 ○医療監察官  はい。 ○尾崎先生  80以上の群は、もう活動性と同じ考えで、全部治療対象にすると。 ○医療監察官  治療対象にします。 ○尾崎先生  そうすると、1つだけですよね、認定するのは。80以下で消えなかったものだけにな るのではないですか。 ○医療監察官  実際には、消えないが異常値を示していて80以下の人だけが問題になるということで す。 ○尾崎先生  その等級だけを決めれば、話は終わりますね。 ○医療監察官  慢性肝炎についてはそうです。いまのお話ですと、肝硬変はそれよりも重いという話 なので‥。 ○尾崎先生  肝硬変というのも、結局のところ80以上と同じように、慢性肝炎から肝硬変に移行す るわけですから、慢性肝炎が治療対象になっている状況の方が、そのまま肝硬変にいき ますよね。 ○医療監察官  はい。 ○尾崎先生  ですから、肝硬変というのはすべて治療対象としての群に入れたら駄目ですか。 ○医療監察官  肝硬変になったときにウイルスが陰性化する方もいると。そうすると、逆に線維化が だんだん解消されていく方が。そんなのは少ないのだと言われればあれですが。 ○戸田先生  肝硬変はインターフェロンを使ってウイルスが消えれば良くなってきます。 ○医療監察官  ウイルスが陰性化してしまえば治ゆにしていいと。 ○戸田先生  それは完全に治ゆして障害もないということになりますね。 ○医療監察官  はい。 ○戸田先生  慢性肝炎から肝硬変になって代償期にある人は、慢性肝炎とほぼ同じ扱いですが、や はり生活や労働上の制限は少し強くなりますよね、慢性肝炎の段階よりは。 ○医療監察官  病態とかに異常がありますから、正常な肝臓の構造が失われていますからね。自覚症 状がほとんどない場合がほとんどですから。 ○戸部座長  大変大事なところですから、次回、いまの議論を踏まえてもう一度よく討議いたしま しょう。事務局から何かありますか。 ○医療監察官  次回ですが、あらかじめ先生方からいただきました日程表で調整をしたところ12月16 日(木)2時半からがよろしいということでしたが、いかがでしょうか。 ○戸部座長  それでは次回はそのようにお願いします。今まで詳細な議事録を作っていただいて、 討議の論点や経過、結論をよくまとめていただいております。これは公表されるという ことですが、医学的に問題があるかどうかということで、できれば学会の長老の先生に 目を通していただいたらどうかと思うのです。例えば食道ですとずっと○○をしておら れた○○先生、膵臓ですと○○をしておられた○○先生に、大所高所から目を通してい ただいて、論点に間違いがないかどうかをチェックしていただければと思うのですが、 いかがでしょうか。折角一生懸命討議した結果を、後で学会のほうで、こういうところ はおかしい、というご指摘を受けるようではいけませんので、現在も公表されていると いうことですが、最終的なまとめまでに、長老の先生に大所高所から見ていただくとい うことで、いかがでしょうか。  ヘルニアの専門家はいないですが、現職の外科の教授でヘルニアの専門家がおれば、 目を通していただくということは、望月先生、いかがでしょうか。 ○望月先生  ○○先生や○○先生のようなお立場の方はおられないと思います。 ○戸部座長  肝臓は戸田先生がおられるからいいですよね。 ○戸田先生  皆さんの意見を聞ければ聞いたほうが。 ○戸部座長  大所高所から、もう一度、こういう経過を踏まえてこういう結果が出たということを チェックしていただければ。 ○戸田先生  納得してもらうのはなかなか難しいと思います。例えば80から治ゆとすると言った ら、医学的には明らかにおかしいわけです。だから治ゆというのはそういう意味ですよ という説明をしなければいけない。 ○戸部座長  必ず文句を言う人が出ますからね。一応そういうことで前向きに進め、また問題があ ったら考えることにいたしましょう。どうもありがとうございました。 照会先 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課障害認定係 TEL 03−5253−1111(内線5468) FAX 03−3502−6488