04/09/28 第35回労働政策審議会労働条件分科会            第35回労働政策審議会労働条件分科会                    議事録                       日時 平成16年9月28日(火)                          10:00〜                       場所 経済産業省別館825号会議室 ○西村分科会長  ただいまより「第35回労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。本日は和 田委員、佐藤雅是委員、須賀委員、紀陸委員、佐藤みどり委員、平山委員、渡邊佳英委 員が欠席されております。須賀委員の代理として長谷川さん、紀陸委員の代理として川 本さん、平山委員の代理として伊丹さんが出席されております。佐藤雅是委員の代理と して吉田さんが出席される予定です。本日の議題に入る前に委員及び事務局の異動があ りましたので、事務局から説明をお願いいたします。 ○監督課長  前回の労働条件分科会以降、新たに労働政策審議会労働条件分科会の臨時委員にご就 任された皆様をご紹介いたします。8月6日付にて逢見直人委員、8月13日付にて松島 稔委員が辞任されました。後任として、9月1日付にて日本基幹産業労働組合連合会事 務局次長の石塚拓郎様、同じく9月1日付にてNHK関連労働組合連合会議長の新田豊 作様が労働条件分科会労働者代表の臨時委員に就任されましたのでご紹介いたします。 8月24日付にて山田洋輔委員が辞任され、後任として同日付で三井化学株式会社常務取 締役の谷川進治様が労働条件分科会使用者代表の臨時委員にご就任されましたのでご紹 介いたします。  次に当分科会の事務局をご紹介いたします。労働基準局長の青木です。勤労者生活部 長の松井です。総務課長の尾澤です。賃金時間課長の前田です。勤労者生活部企画課長 の山越です。私は監督課長の苧谷でございます。よろしくお願いいたします。ここで青 木労働基準局長よりご挨拶を申し上げます。 ○労働基準局長  労働条件分科会の委員の皆様方には、平素から労働基準行政に大変ご協力、ご指導い ただきましてありがとうございます。申すまでもなく、労働基準行政を取り巻く環境は 激変の中にあります。さまざまな人たちの思いや期待が、いろいろな意味で起きている と思っております。私も11か月ぶりで労働基準局に戻ってまいりまして、いろいろな意 味でさらに一層積極的に行政として対応していかなければならないという思いを強くい たしております。  本日は労働条件分科会ということで、取りわけ、廃止期限が迫っています時短法をど のように処理するかということもありますし、さまざまな環境変化の中で、いろいろな 観点から議論していただき、私どもの行政に的確に反映させていきたいと思っておりま すので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○西村分科会長  本日の議題は「時短促進法について」です。論点、今後のスケジュール、関連資料に ついて事務局より説明をお願いいたします。 ○企画課長  資料に従い、概括的に説明いたします。資料1ですが、今回検討をお願いする事項は 「時短促進法について」です。最初に、現下の労働時間などの状況であります。近年、 企業における人事管理が個別化していることや、短期的な業績評価などが広まっている 中で、職業生活において強い不安やストレスを感じる労働者が増加しておりますし、過 重労働による健康障害や、職場におけるストレスによる精神障害が大きな問題となって いるところです。同時に、少子高齢化の急速な進行を背景として、多様なニーズを持つ 労働者が、生涯にわたって意欲と能力を発揮できるような環境整備も求められておりま す。  このような中で労働時間について見ると、近年、労働者1人平均の総実労働時間はほ ぼ横這いということになっていますが、労働時間別の労働者の分布を見ると、長時間労 働者と短時間労働者がともに増加しています。一方で、その中間の者が減少するという 状況であり、「長短二極化」が進展しております。休日について見ると、週休2日制な どの普及率は横這いで推移しています。年次有給休暇について見ると、取得日数が減少 していますし、取得率も低下している状況です。  次は労働時間について、これまでどのような対策が講じられてきたか、その経緯で す。労働時間対策については、昭和62年の経済審議会の建議、いわゆる「新前川レポー ト」と呼ばれているものですが、この中で、国際協調と国民生活の向上の観点から労働 時間短縮の「政策目標」として、年間総労働時間を1800時間程度にするということが掲 げられ、翌昭和63年5月、この内容が盛り込まれた経済計画「世界とともに生きる日本 」が閣議決定されました。  平成4年6月に「計画期間中に年間総労働時間1800時間を達成することを目標とする 」旨を盛り込んだ「生活大国5か年計画」が、平成7年に「年間総実労働時間1800時間 の達成・定着を図る」旨を盛り込んだ「構造改革のための経済社会計画」が、平成11年 7月には「年間総実労働時間1800時間の達成・定着」を盛り込んだ「経済社会のあるべ き姿と経済新生の政策方針」が閣議決定されました。  このような政府目標の達成に向けて、労働基準行政としては、昭和62年と平成5年に それぞれ労働基準法を改正しております。そのような中で週40時間労働制を段階的に実 施するとともに、労働基準法とは別に、「労働時間短縮推進計画を策定するとともに、 事業主等による労働時間の短縮に向けた自主的な努力を促進するための特別の措置を講 ずる」時限的な法律として、平成4年に時短促進法が制定され、翌平成5年にはその一 部が改正され、「労働時間短縮支援センター」に係る規定が追加されました。時短促進 法は平成9年、平成13年に改正され、時限法である法律の廃止期限を延長する内容の改 正が行われ、労働基準法に基づく対策とともに次の対策が講じられてきたところです。  「時短法に基づく対策の概要」は4点あり、1点目が「国による労働時間短縮推進計 画の策定」です。2点目は「事業場における労働時間短縮の実施体制の整備」で、一定 の要件を満たす労働時間短縮推進委員会の決議については、労働基準法の適用の特例が 受けられる旨の規定が盛り込まれています。3点目は「同一の業種に属する二以上の事 業主による労働時間短縮実施計画の作成」、4点目は「指定法人『労働時間短縮支援セ ンター』による支援業務の実施」、こういった対策を時短促進法に基づいて実施してき たところです。  この間、労働時間短縮に向けた労使の自主的な取組とこのような対策が相まって、労 働時間短縮は着実に進んできたわけですが、近年はその流れにやや歯止めがかかってお り、また労働時間の「長短二極化」という状況の中で、新たな課題として、労働者の生 活や健康を巡る問題が生じているという状況にあります。  なお、先ほど説明した経済計画の関係ですが、「経済社会のあるべき姿と経済新生の 政策方針」は平成14年の「構造改革と経済財政の中期展望について」、「改革と展望」 と言われているものですが、この中において「終了することとする」とされており、そ の結果、政府経済計画においては1800時間の目標はなくなっております。  このようなことを踏まえて、今回の検討課題の整理としては、時短促進法は「平成18 年3月31日までに廃止するものとする」とされておりますので、時短促進法やそれに関 連する労働時間対策について、廃止期限の平成18年度以降はどうしていくかということ を検討する必要があるわけです。  その際、次のような3点を考慮して審議いただいてはどうかと考えております。1点 目は多様なニーズを持つ労働者個々人の実情に配慮した労働時間、休日及び休暇の設定 が求められているということ。例えば労働者の生活面に対する配慮として自己啓発、育 児・介護、単身赴任、地域活動といったことにどのような配慮をしていくか。あるいは 長時間労働者の健康障害が顕在化していることへの対応をどうするかなどといったこと が考慮すべきことと考えております。  2点目としては労使による自主的な労働時間などの設定の改善に向けた取組を促進し ていく必要があるということ。3点目は時短促進法制定後も改善が図られていない年次 有給休暇の問題などについて、より実効ある対策が求められているということ。そのよ うなことを考慮しつつ、時短促進法の問題について検討いただければと考えているとこ ろです。  資料2は、今回の時短促進法についての検討スケジュールですが、できれば12月末ま でに議論をまとめていただきたいと思っております。本日9月28日が第1回ですが、今 後月1回のペースで検討いただき、12月に一定の議論をまとめていただければと考えて いるところです。論点とスケジュールは以上ですが、今回の時短促進法を検討いただく にあたり、労働時間に関するデータ、法律の施行状況について資料を用意しております ので説明いたします。  資料3−1の「労働時間に関する各種データ」について説明いたします。1頁は「労 働者1人平均の年間総実労働時間の推移」です。昭和35年度は2426時間であり、時短促 進法制定時の平成3年度は2008時間と2000時間を超える状況でしたが、その後着実に減 少してきており、直近のデータである平成15年度の総実労働時間は1853時間と、目標の 1800時間に近付いてきています。しかし、最近数年間の総実労働時間は横這いで推移し ています。総実労働時間を所定内と所定外に分けたものが、点線のグラフと棒グラフに なります。所定内労働時間は減少しており、平成15年度は1706時間となっています。こ れに対して、所定外労働時間はあまり減少していない状況で、平成15年度は147時間と なっています。  2頁は「年間総実労働時間」について、一般の労働者とパートタイム労働者に分けて その推移を示したものです。一般の労働者については、直近の平成15年度は2016時間と なっています。下のグラフで▲がパートタイム労働者の総実労働時間ですが、平成15年 度は1184時間となっています。3頁に移って、1頁で説明した年間総実労働時間は減少 していますが、その背景として、パートタイム労働者の比率が高まっているということ があります。平成15年度は、30人以上の事業所でのパートタイム労働者の比率が19.63 %となっています。4頁は「週所定労働時間の推移」です。週所定労働時間についても 減少してきており、平成元年は43時間58分であったものが、平成15年は39時間21分まで 下がってきています。  5頁に移ります。冒頭の資料1で説明したように、「二極化」という現象が進んでい るところであります。これは「労働力調査」から見た資料ですが、雇用者に占める週労 働時間が「35時間未満の者」「60時間以上の者」、労働時間が短い者と長い者の割合 が、ともに時系列的に増加しているというデータです。上の折れ線グラフで○が「35時 間未満」の者の男女計のもので、経年的に増加しており、20%を超えています。下の折 れ線グラフで○が「60時間以上」の者の男女計ですが、これも時系列的に増加しており ます。労働時間の短い者と長い者の双方の割合が増えており、労働時間の分布において 「二極化」が進んでいるわけです。  6頁は「年間総労働時間」について国際的な比較を行ったものです。これは外国の資 料の制約上、製造業の生産労働者での比較を行っております。日本は、2002年は所定 内、所定外を合わせて1954時間ですが、諸外国を見ると、アメリカにおいては1952時 間、イギリスは1888時間、フランスは1539時間、ドイツは1525時間となっております。  7、8頁は「週休2日制等の普及状況」ですが、7頁は企業割合で見た週休2日制の 普及率の状況です。何らかの週休2日制を導入している企業は、平成元年では58.3%で したが、平成15年は91.5%まで増加しております。完全週休2日制のデータで見ると、 平成元年は9.6%、平成15年には35.9%となっています。8頁は週休2日制の推移を労 働者の割合で見たものを掲げております。何らかの週休2日制等を導入している企業 は、平成15年では97.1%となっています。完全週休2日制は57.1%の労働者に適用され ています。  9頁は「年次有給休暇の取得状況」についてのデータです。資料1で説明したよう に、最近、取得率は低下する傾向にあり、平成5年は56.1%ですが、平成15年には48.1 %まで下がっている状況にあります。下の棒グラフの縦縞の所が取得日数ですが、これ も時系列的に低下する傾向にあり、平成7年には9.5日でしたが、平成15年は8.8日とな っています。10頁は、年次有給休暇の取得が必ずしも進んでいない理由についてです が、労働者を対象としてアンケート調査を行ったものです。円グラフでわかるように、 年次有給休暇の取得について、「ためらいを感じる」が全体の23.4%、「ややためらい を感じる」が45.2%となっています。他方、年次有給休暇の取得について、「あまりた めらいを感じない」が22.4%、「まったくためらいを感じない」は5%に留まっていま す。左側中程の棒グラフが、「ためらいを感じる理由」を聞いたものです。その理由と して、年休を取ると、「みんなに迷惑がかかると感じる」が58.7%、「後で多忙になる 」が42.3%、「職場の雰囲気で取得しづらい」が36.4%となっております。このような ことから、年次有給休暇の取得へのためらいを感じていることがアンケート調査の結果 で判明しております。  11頁は「特別休暇制度の状況」です。特別休暇には夏季休暇、病気休暇、リフレッシ ュ休暇などがあるわけですが、夏季休暇がある企業の割合は全体の44.3%となっており ます。病気休暇については19.1%、リフレッシュ休暇は13.4%となっています。  12頁は「変形労働時間制の導入状況」です。変形労働時間制については、かなり多く の企業で採用されています。何らかの変形労働時間制を採用している企業の割合は、平 成15年は57.1%となっています。中身を見ると、1年単位の変形労働時間制を導入して いる企業は39.8%で、変形制の中では最も多くなっています。以下、「1カ月単位」は 14.5%、「フレックスタイム制」が4.9%となっています。(2)の表は、これを労働 者数割合で見たものですが、変形労働時間制の適用を受けている労働者の割合は、平成 15年では約半数の48.2%となっています。  13頁は「みなし労働時間制の導入状況」です。(1)はみなし労働時間制を導入して いる企業割合で、平成15年は8.1%となっています。その内訳は、「事業場外みなし」 が7.3%、「専門業務型裁量労働制」が1.4%などとなっております。下は適用労働者数 の割合で見たものですが、みなし労働時間制の適用を受けている労働者は全体の5.8% となっています。  14頁は現在の労働時間についての満足、不満ということについて、労働者にアンケー トしたものです。現在の労働時間について、「不満」あるいは「どちらかといえば不満 」とした労働者は全体の22.3%となっています。どこを改善してほしいかということを 聞いたものが表の右側のデータですが、「所定外労働時間が長い」が51.3%でいちばん 多く、「所定労働時間が長い」が28.3%、「働く時間を選択できない」が25.2%ありま した。「満足」「どちらともいえない」と答えた労働者の中でも、14.5%は「働く時間 を選択できない」と感じていることがこのデータからわかるところです。「所定外労働 時間の長さの不満」を年齢や職種別で見ると、性別では男性で不満の原因としている方 が多く、その割合は約6割となっています。年齢別では20代、30代にそういった不満が 多いという状況です。16頁には職種別で見たデータがありますが、専門・技術職や管理 職においてその回答が多いという状況です。  18頁は「仕事と生活の調和に関する検討会議」報告書の概要をまとめたものです。こ の検討会議は昨年からこの6月まで、仕事と生活の調和について、非常に幅広い見地か ら、学識経験者の方に検討いただいたものです。その報告の概要ですが、仕事を取り巻 く背景事情として、少子高齢化が進んでいることがあります。そのような中で、働く者 の意欲や能力が十分発揮できるようなことが必要だということが1つあります。(2)と して、働く者の仕事や生活に関する意識やニーズも多様なものになってきているという 事情があるということです。  そのような背景事情があるので、今後のあるべき働き方としては、働く人一人ひとり が職業生活、人生のさまざまな段階において、仕事と家庭生活や地域活動などの仕事以 外の活動をさまざまに組み合わせ、バランスのとれたものとしていくことが重要であ る。そういった意味では、働き方についての選択肢が増えて、それを安心・納得して選 べるようにすることが今後のあるべき働き方として重要だと提言されています。  それに対応した施策の方向性として、1点目として、個々人が仕事時間と生活時間を 納得して配分できるように、労働時間や就業場所についての選択肢を整備していくこと が必要であると提言されています。2点目として、多様な働き方相互間のバランスの取 れた処遇の確保が必要であることが提言されています。そのような対応をすることの効 果として、働く者にとっては自らが安心・納得できるような働き方を選択できることに なり、心身とも充実した状態で、十分に能力を発揮して働くことができるということで あります。企業にとっては、働く者の意欲的な働き方を享受することができる。つま り、その人の意欲や能力を最大限発揮することで、生産性の向上が期待できるわけで す。社会としても、持続的成長や次世代の育成に繋がるといったことがこの検討会で報 告されています。  23頁は自己啓発についてです。近年、自己啓発をしていくことが非常に重要であると 言われていますが、23頁のデータは自己啓発にあたっての問題点について、アンケート 調査を行ったものです。棒グラフにあるように、「自己啓発にあたっての問題点」とし ては、「忙しくて自己啓発の余裕がない」と答えた人が全体の4割、4つ目の棒グラフ ですが、「休暇取得・早退などが会社の都合でできない」が15.9%となっており、時間 的な問題でなかなか自己啓発ができにくいという回答が多くなっています。  24頁から27頁ですが、育児・介護についての「勤務時間短縮等の措置」におけるデー タです。育児についての勤務時間短縮等の措置ですが、全体で5割の事業場において何 らかの措置が実施されています。その中でいちばん多いのは「短時間勤務制度」で、 38.5%となっています。25頁は育児のための勤務時間短縮等の措置について、時系列的 にデータを取ったもので、平成8年度と平成14年度を比べると、この措置を実施してい る企業の割合は着実に増加しています。26頁は介護のための勤務時間短縮等の措置で す。これについても、全体の43.9%の企業で実施されています。27頁でわかるように、 この措置を実施する事業場は着実に増えております。  28頁は「単身赴任者の状況」についてです。単身赴任の男性を昭和62年と平成14年を 比べたデータでは、約7割増加しているわけです。下の2にあるように、単身赴任者の 大体9割が月1回以上の帰省をします。29頁には帰省に要する時間として、「2〜4時 間」が半数ぐらいとなっています。4ですが、「勤務の前日に赴任先住居に戻る」が全 体の4分の3ぐらいになっております。例えば月曜日から仕事が始まるのであれば、日 曜日に帰る人が多くなっているわけで、このような者についての時間的な配慮も必要だ と考えられるところです。  30頁は「過重労働・メンタルヘルス対策」についてです。過重労働・メンタルヘルス については、この8月に検討会の報告書が出されております。過重労働とメンタルヘル スの現状ですが、過重労働による脳・心臓疾患の労災認定件数が年間310件以上という 状況があります。また、自殺者も、労働者について年間約9,000人生じております。こ れは労働時間が長短二極分化している、あるいは6割を超える労働者が仕事について不 安やストレスを抱えているという背景で、このような状況が起こっているということで あります。  これに対応して、この報告書では「取り組むべき対策の方向」として何点かの指摘が なされております。○の2つ目、「過重労働による健康障害防止対策」として、脳・心 臓疾患発症との関連が強いとされる月100時間を超える時間外労働、2〜6か月におけ る月平均80時間を超える時間外労働を行った場合、医師による面接指導の実施を制度化 すべきであることが指摘されています。いちばん下の所ですが、このようなことを改 善、検討する場として衛生委員会を活用すべきだということが報告されております。31 頁にはメンタルヘルスについても医師の面接指導において、この面のチェックもすべき であることが指摘されております。  36頁は「労使協議機関の状況」です。時短推進委員会も労使協議機関の1つであるわ けですが、このデータは労使協議機関全体について調査を行っているものです。労使協 議機関がある事業場は、全体の41.8%ですが、これを労働組合のあり・なし別で見る と、ある所では85%の企業において労使協議機関があり、労働組合がない所では、その 割合は17%に留まっています。37頁は「労使協議機関の下部組織の専門委員会」です が、「休日・労働時間委員会」としては全体の27.9%の企業で設けられています。  資料3−2の1頁は「時短促進法の概要」についてです。この法律の目的は、事業主 等による労働時間の短縮に向けた自主的な努力を促進するための特別の措置を講ずるこ とによって、時短を進めることです。この法律は労働時間短縮推進計画の策定の根拠法 になっており、時短推進計画の中で、労働時間短縮の目標や労働時間短縮を推進するた めの事業主などに対する指導あるいは援助に関する事項を定めることとしています。  下の3つの箱が具体的な対策です。第1番目、「企業内の労働時間短縮実施体制の整 備」で、1点目は企業内での労働時間短縮推進のための委員会の設置などによって、企 業内において時短体制の整備を図っていただくということです。2点目はその一環とし て、労働時間短縮推進委員会を設けた場合は、その決議によって労働基準法の適用の特 例を受けられることになっています。例えば時間外・休日労働の労使協定といったもの は、委員会の決議をもって行うことができる仕組になっているところです。  2番目、「業種ごとの実情に応じた取組の推進」については、同一の業種に属する2 以上の事業主が、共同で自主的に時短実施計画を策定した場合、行政が承認を行う仕組 です。3番目、「労働時間短縮支援センターによる業務の実施」ですが、労働時間短縮 支援センターを指定し、時短に関する給付金の支給や時短促進のための研修といった諸 活動を行うことが定められております。  2頁は「政府経済計画と時短促進法の関係」で、先ほど資料1で説明をしたところで す。昭和63年5月に初めて経済計画が1800時間ということを取り上げ、この中で、1800 時間程度に向けてできる限り短縮していくことが盛り込まれたわけです。平成4年、平 成7年、平成11年と1800時間に関することが経済計画に盛り込まれ、それに対応する形 で平成4年に時短促進法が制定されました。その後、平成9年、平成13年と2回の延長 が行われております。そのような中で、政府経済計画のいちばん下ですが、平成14年1 月の「構造改革と経済財政の中期展望について」の中では、1800時間の規定は盛り込ま れておりません。このようなことを踏まえて、今回検討いただきたいということであり ます。  最後に13頁ですが、これは公益法人改革についての閣議決定です。閣議決定の中で、 時短促進法の関係では、「労働時間短縮促進援助事業等交付金」が取り上げられており ます。この交付金については、左から4つ目の「措置内容」の所にあるように、「平成 17年度限りで廃止する」ということが閣議決定されています。このことも踏まえて検討 の必要があると考えております。  以上が労働時間についての状況と時短促進法の施行に関する資料の説明です。 ○西村分科会長  説明された資料を基に、意見交換を行いたいと思います。ご質問を含めて自由にご発 言ください。 ○田島委員  資料1の検討事項では、平成14年1月の閣議決定で1800時間の目標が消滅したことが 前提で進められていますが、これについては実質的には到達していない。あるいは、推 移から見て二極化や短時間労働者が増える中で、労働時間が統計的に短縮されている現 状の中で、厚生労働省の施策としては1800時間という目標を、閣議決定されたのだか ら、それを前提で行うということではなくて、やはり1800時間という目標を持続的に政 策に活かすべきだろうと思います。1800時間が下りたということをあまり強調して進め ないでいただきたいと思います。  2点目は今回の1800時間との関わり合いですが、週の所定労働時間で見れば、労働基 準法第40条の特例という問題があるわけです。法律でダブルスタンダード、法の下の平 等と言われながらも、結局、サービス業や小規模事業場では週44時間という制度がまだ 残っているわけです。これを廃止していく方向性をどう打ち出していくかということは 肝心ではないかと思いますが、それが全く触れられていないことに対して、なぜかとい う疑問があります。  もう1点は、いまの報告の中で仕事と生活の調和に関する検討会議の報告書の概要が 説明されましたが、この検討会とこの分科会との関わり合いがどのようなことなのか。 概要だけの説明を受けて、この分科会で検討課題をやるから概要が説明されたのか。そ うではなくて、単なる参考資料として示されたのか。その点について伺いたいと思いま す。単なる参考資料であるならば、あの検討会の検討内容は、これからどのような形で 進めようとしているのかということも併せてお聞きしたいと思います。 ○企画課長  「仕事と生活の調和に関する検討会議」の関係ですが、本年6月に報告が出されたも ので、非常に広汎なテーマを扱っております。労働時間だけではなく、就業の場所や所 得の問題、均衡処遇、キャリア形成などといった仕事と生活の調和に関するさまざまな 問題について、今後のあるべき働き方を広汎に議論していただき、報告書に取りまとめ られたということです。  今回、この分科会はこのような幅広の問題について議論していただくのではなくて、 廃止期限が定められている時短促進法について議論していただくということでありま す。今回の時短促進法の審議にあたっては、資料1で説明したように、個々の労働者の 生活との調和をどう図っていくかという視点も入れて検討いただきたいというのが私ど もの考え方です。  1800時間と経済計画との関係ですが、今回検討いただきたいと思っていますのは、冒 頭から述べているとおり、時短促進法についてです。時短促進法の中に時短計画という ものがあり、その中で1800時間が、経済計画との関連で、先ほど説明したようにその中 に盛り込まれています。いま指摘されたように、1800時間については、「長短二極化」 という新しい状況、経済計画の中に盛り込まれなくなったという状況もあります。着実 に1800時間には近付いてきているわけですが、このような状況の変化がありますので、 それを踏まえてどうしていくかを検討いただきたいと思っております。  質問の2点目の特例の問題ですが、今回検討していただきたいと思っているのは、時 短促進法についてです。これは時短促進法の廃止期限が平成18年3月になっていること を踏まえて、いま議論することが必要であるということでお願いしているわけです。で きれば、このような問題に焦点を当てて議論していただきたいと考えております。 ○新田委員  今日の話にあった1800時間について、平成14年1月の閣議決定で消滅させたというこ とですが、時短促進をする背景、前川レポートから始まる経過についても説明がありま したが、1800時間を廃止するという閣議決定の際には、労働や生活についての考え方、 その種のことは何にも触れられていないのか、触れられているのか。1800時間をやめる 理由としてどう触れられているのか。どのような経過で1800時間が廃止、消滅と決めら れたのか、わかれば教えていただきたいと思います。 ○企画課長  経過についてはいま説明したとおりであり、資料3−2の2頁、平成14年の「構造改 革と経済財政の中期展望について」の中では、1800時間を含めて労働時間の短縮につい ての記述はなくなったということであります。また、平成14年の閣議決定の中で、平成 11年の経済計画である「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」については終了 することとされており、その中に1800時間の達成、定着ということも書かれておりま す。 ○新田委員  ほとんどここまできているからいいのだという判断なのか、どのような判断があって これをやめるのかということは表わされていないのですか。 ○企画課長  そういったことは特にこの中には記載されておりません。 ○新田委員  その他の所で、労働時間についての政府の基本方針といったものは別に出てきている のですか、何もないのですか。ただ消滅させるということだけですか。 ○企画課長  これは政府の計画というよりも、最初に昭和63年の経済計画があって、その中で1800 時間程度にすることが盛り込まれたということの関係で、時短促進法においても平成4 年に制定され2回ほど延長されてきたという経過があるわけです。主として関連を見て いくべきことは、経済計画であると考えているわけですが、その中では、いま述べた経 過で、記載はなくなっているということです。 ○新田委員  理由が理解できないということだけ申し上げておきます。 ○小山委員  いまのことに関連してですが、いまの説明はよくわからないのですが、1800時間を目 指そうというのはある意味、社会的な目標として我々労働組合員も経営側の皆さんと一 緒に進めてきたわけです。当時、国際的な経済摩擦等の中から、もう一度日本人の生活 のあり方、働き方を見直そうではないかという気運が国民的につくられてきたと思うの です。確かに、この間経済的には厳しい状況を経ながら、私などは製造業ですから、こ の数年は大変厳しい雇用問題等にも直面してきたわけですが、基本的に労働時間を短く していこうという方向はどこも変わっていないのではないかと思いますし、その施策を 進めるのが厚生労働省の基本的な役割だろうと思います。  どこで議論したか知りませんが、1800時間という目標が閣議決定で外された、そのと き厚生労働大臣がどのような立場を取ったのか、それも是非ご説明いただきたいと思い ます。厚生労働省として、労働時間の短縮をどのように進めていこうとしているのか。 実際の1800時間に近付いたという中身は、先ほど説明があったように、労働時間が短く なったのではなくて、パート労働者の数が増えたという結果であって、労働時間が短く なった結果ではないという説明でしたから、実際上もその目標に向けて成果はまだ十分 上がっていないという現状だと思います。そこで、厚生労働省としての考えをお聞きし たいわけです。 ○企画課長  今回検討をお願いしているのは、時短促進法の廃止期限が平成18年であることから、 それ以降どうするかということについてです。時短促進法は、1つには時短推進計画と いうことで、その中に1800時間ということが書かれているわけですが、時短計画を定め る法律ですので、今後どのようにしていくかを今回皆様方に検討をお願いしたいと考え ています。  論点1にありますように、こうした1800時間を取り巻く状況について議論いただけた らということですが、いくつか留意する点があります。1つは労働時間の状況を見ます と、多様化あるいは二極化が進み、経済計画の中に盛り込まれなくなってきている。そ うした中で、目標設定を今後どうしていくかをまさに検討いただきたいというのが、私 どもの考え方です。 ○奥谷委員  いまのいろいろなご意見を伺って、時短促進のお話は、むしろ産業構造が変化してソ フト化、サービス化の時代に入ってきて、いままでの時間で量る概念、時間で量る労働 がかなり縮小してきたことと、もう1つは、国内では工場に関してオートメーション化 といいますか、無人化をどんどん進めている企業が多くなってきていますし、単純な工 場労働に関しては海外移転がかなり進んできています。そういった中で考えますと、結 局時間で量る労働自体、日本の中であまり意味を持たなくなってきたのだろうと思いま す。これからは知的創造型、そういった職業に就く人たちの労働時間がどう増えていく かということのほうが重要な課題で、単純労働、工場労働を含めて、労働時間が1800時 間云々の経済政策における概念がもう必要なくなってきたのは、そういう流れではない かと考えます。 ○石塚委員  いまの論点とは違いますが、先ほどから閣議決定の1800時間と時短促進法との関係を 議論がなされていますが、形は閣議決定がなくなったから時短促進法でも扱う必要はな いのではないかという議論だと思います。ただ、振り返りますと、目標の1800時間がど こまで実現できたかという問題は別にして、ガイドラインというか、世の中全体がこう いう方向に向かっていこうという旗印的な役割は果たし、非常に大きなものがあったよ うに思います。それによって、統計的事実からすれば、若干減ってきて正社員は長く、 短時間は短くとなっていますが、1800時間をいまの状況でどのように扱うかという論点 が大きいと思っていまして、従来通り画一的にすべて含めて1800時間を何が何でもやれ ということは、多分あってないのだろうと思います。  であれば、私が強調したいのは世の中全体が何らかの労働時間の目標を掲げ続けて旗 印にして、それに向かって皆がいろいろな状況を踏まえて努力していくことが重要で、 いわゆる旗印、そういうことのもつ意味合いは大きいと思います。現状では、非常に雇 用形態も多様化し、かつ、いろいろな就業形態になっています。例えば正社員にしても パートにしても、労働時間の実態が全然違います。1800時間を維持するとかしないとい う議論よりも、現状を認識したうえで、それに合うような恰好で旗印のようなものを再 構築できないだろうかというのが、私どもの問題意識です。それぞれ是非とも個別に検 討いただきたいと思います。 ○山口委員  先ほど来の質問の中で企画課長がお答えになっている今回審議すべきことは、平成18 年3月31日に廃止される促進法をどうするかですが、いまさまざまなデータで説明い ただいた内容からしてもまだ時短促進法の果たすべき役割を果たし終えてないだろうと 思います。おっしゃるとおり新たな課題は出てきています。目標は1800時間なのです が、時短は実態として進んでいません。それはルール通りのカウントの中で労働時間が なかなか減っていないことに加え、不払残業等のルール外のことをプラスすると、大変 な後退だと思います。  それから実績としては横這い、あるいは多少効果が上がっているのはパートタイマー が増えてきた状況の中で、数値的には減っていますが、労働時間の短縮が進んでないこ とを真摯に捉えると、この法律を廃止できないのではないかと思います。それをただ廃 止しないで、いままでの延長ということではなくて。いままで延長してきた中でもそれ なりの成果が現れていると思います。先ほどから言われている1800時間というある種シ ンボライズされ、誰もが到達目標として想定できるものがあったからこそ、横這いとは いいながらそうなってきているとポジティブに捉えたいと思うのですが、そういうふう に捉えても、その水準で止まっているのなら、それについて新たにプラスした戦略とい いますか、時間短縮に繋がるようなことで、そこに盛り込むことは必要だと思います が、廃止するのか新たな法律として再構築するのかを含めて、私は継続すべきだと思っ ています。 ○勤労者生活部長  ちょっと話が途絶えましたので私から発言します。「改革と展望」で平成11年までに 閣議決定された経済計画を終了することとする、即ち経済計画に、「1800時間達成・定 着」という文言があったものを閣議決定で廃止するというときの政府内での議論が、ど こまでされたかという点については、明確に答えていない部分がありますので、そこを 中心にお話をいたします。手続的に我々事務方が加わって細かく議論した経過は、実は ないというのが事実です。「改革と展望」については、経済財政諮問会議を中心に議論 していただいて、そこでの提案を合議受けする中で作業が進んだと認識しています。  その「改革と展望」の基本的な考えの背景には、いま奥谷委員の言われたように、今 後の我が国経済社会での政策として知的な産業、知的労働をもう少しステージアップし て、今後の発展基盤を作ることにむしろ重点を置いて、そちらにシフトした考え方を打 ち出すという整理があり、決して我々は労働時間対策を無視したのではないと思います が、結局、「改革と展望」の決定スケジュールの中で処理されたと考えています。その 段階で、実はこの資料にありますように平成13年の法改正のときに、平成18年の3月31 日まで時短法は延ばす、国会での、ある意味では与野党の合意でこの法律は廃止するも のとするといった宿題が付いていましたから、そういったことも兼ね合わせて処理がな されたと考えております。  この処理の結果についてですが、現状ではこれをどうするかということを労働担当部 局は悩んでいます。つまり政府全体の経済社会を目指す政策方針では、労働時間の短縮 というテーマを殊更取り上げていない状態にある。しかし現状の問題として労働時間の 二極分化が起こっています。その中で、60時間以上働くような方が増えていて、それが 影響してメンタルヘルスや過重労働といった形で、労働者の健康を蝕んでいる状況もあ るという捉え方をするならば、労働時間の短縮、在り方を今後どのように進めていくか をしっかり議論していただいたうえで、この時短法の扱いを再度関係者の方々に方向性 を出していただきたいというのが、素直な気持ちです。  一方で、今後の我が国の経済政策上の方針として、労働時間に捉われない働き方を重 視しなければいけないということがあろうとしても、実際労働時間に関わって働くとい う問題は回避できませんし、これを考えていくうえで政府全体の流れと労働行政の方向 性を調和させる提案を是非いただきたいと思います。その際、仕事と生活の調和という ふうな形で、いろいろな問題を含めて1つの提言がありますので、そういった考え方も 咀嚼していただいたうえで、この労働時間問題の扱いに反映いただきたいという気持ち で、資料も説明しました。  それから、仕事と生活の調和の報告書全体については、場を改めて議論していただく として、ここでは主に時短法を巡っての扱い、それから殊更強調するなと言われました が、政府の政策として今後展開していくうえで、「改革と展望」との整合性を取れたも のにしていかなければ、政府全体としての仕事として成り立たないわけですから、その 点を十分認識していただきたいと思い、くどいようですが申し上げました。ですから、 議論を活発にしていただいて、何らかの対応方針、処理方法を提示していただければと いうのが我々の気持ちです。 ○廣見委員  いまの説明と関連して確認しておきたいということですが、いまそれぞれ説明があっ たように、閣議決定レベルの経済政策の中では、1800時間の目標はいま消滅する形にな っています。しかし、この時短促進法に基づく基本計画の中では、1800時間という目標 は当然そのままで、平成17年度末、即ち平成18年の3月31日までは生きています。した がって現段階で考えれば、経済計画レベルのものはないが、具体的な計画としては法律 的には1800時間の目標は現にあると確認してよろしいわけですね。 ○勤労生活部長  そうです。 ○廣見委員  ということは、今後我々としては1800時間という目標をどのように考えていくか。そ の前提として時短促進法をどうするか、計画の位置付け、内容をどうするかというとき に、1800時間みたいな目標を考えていくのかいかないのかを、もう少し個別的な状況に 対応した目標を考えたほうがいいのかという議論をしていかなければならないと理解し てよろしいわけですよね。 ○勤労者生活部長  もう少し文言を正確に申し上げますと、「改革と展望」には、政府全体で取りまとめ た「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針1800時間の達成・定着」は「終了する こととする」と書かれています。だから、いつ終えるかとは書いていませんし、いつ終 えるのかを指定するとも書いていません。ある意味では使命を達成したと読んでもいい かも分かりません。そのような決定が、平成14年1月25日にされた時点では、時短促進 法はまだ生きていまして、平成18年3月31日までには廃止するものとすると。廃止され てはいませんから、その法律に基づいた計画を閣議決定、つまり閣僚メンバーが了解し ておくこともその段階では矛盾するものではありませんでしたし、現在でも矛盾はして いないと思います。  ところが、18年3月31日に廃止するものとするというその期限がくるときに、この法 律の扱いさらには法律の子どもである閣議決定を要する計画をどうするかということ が、まさに問題となるという認識でありまして、旗印としての1800という数字を掲げる ことを平均的な像としてやっていくのか、二極分化していることも更に考慮するか。あ えて申すならば、資料の中でも週休2日制が定着している、残業を抑えればということ も多少入っていますが、単純な計算で申し上げますと、1年間のうち完全週休2日制で 土・日休むとすれば、102日働かなくていい日が出てきますし、祝祭日が17日あります。 さらに年次有給休暇の20日を完全に消化すると、所定労働日は226日、それで8時間の 法定労働時間を掛けると1808時間で、あと1日休めばすぐ1800時間になります。つまり 既存の基準法のルールを遵守するというか、権利意識もフルに行使する働き方をすれ ば、ある意味では法令遵守が同時に1800時間を達成することにもなっています。  ただ、こういったものは一方で増えているパートタイマー、非正規社員の方々には 即、あてはまるものではありませんし、いろいろなみなし労働等をやっている方につい て、いま言いました単純モデルが当たるわけではありませんので、それらを含めて知的 生産性を高める労働の在り方と、そうは言いながら、健康を害することのないようにと いった視点は重要であり、労働時間をどのように設定するか、皆さんで応用し、それを ある意味で新たな旗印にするのか、その必要性があるのか、あるいは替えるのか、そん なところを議論を深めていただきたいと思います。いずれにしても整合性の問題があら わになるのは平成18年3月31日以降ですので、いまの段階からしっかりした議論をお 願いしたいと思います。 ○田島委員  別な観点ですが、2頁の検討課題の整理の所に3つの課題が挙げられていますが、こ の課題だけでいいのだろうかという思いがあります。いまの部長や課長のお答えを聞き ながら、やはりいまの制度をきちんと守れば、1800時間に限りなく近い形になりますよ と。しかし14頁の「不満」の所を見ますと、所定労働時間が長いことに大きな不満があ り、それを削減するにはどうしたらいいか、あるいはこのような不満を汲み上げた形で 検討課題を整理しているところが(2)の中に入るのかと思いますが、もう少し具体的に 労働時間の削減について挙げていただきたいと思います。  もう1点は、40時間労働制の特例が労基法40条に基づく省令で44時間に定められてい ます。これもかつての中基審の中でもかなり激論があり、将来的には特例をなくしてい こうという流れになっていたと思いますので、今回は検討課題にはなっていないのは承 知していますが、この枠組の中で整合性を図るために、40条における特例について、現 段階で使用者側として見解があれば聞かせていただきたいと思います。 ○勤労者生活部長  いま田島委員が言われたように、特例の扱いは40時間を基本に目指して着実に実施さ れるべきです。ですから、ここでのいままでの労働時間の短縮という概念と、法定労働 時間を守ることとの兼ね合いをどのようにするかは、当然議論すべき課題だと思いま す。そのような点も、資料1の「検討課題の整理」の(2)で言っているつもりですが、 時短法が、いまの法律目的でも既に労使の自主的な議論を通じて時間を縮めましょうと いう枠組の法律ですので、あくまで労使の主体的な話し合いの中で、いま言った時間を どのように扱うか、その枠組で議論していただきたいと思います。例えばそれを外れる と、44時間労働時間制を基準法に立ち戻って措置すべきではないかという考え方も当然 ありますが、それを否定しませんが、今回の期限を迎える時短法の検討の枠組に絡め て、是非ご議論いただきたいという気持ちでやっております。 ○岩出委員  資料3−1の5頁の「二極化」の問題ですが、先ほどから出ている知的労働層の時間 をなるべく意識しないような就業環境や就労条件が求められている一方で、現実に二極 化が現れているのはどのような職層というか、知的レベルの仕事をしているのか、ブル ーカラーなのか、その辺の分類が年齢しか出ていないので教えていただけますか。 ○企画課長  5頁の資料を詳細に分析した状況ということだと思いますが、ただいまお手元に追加 の資料といたしまして平成16年版の「労働経済の分析(抄)」を配っています。先ほど 説明した資料では、35時間未満と60時間以上というところしかデータとして渡していま せんでしたが、もう少し細かく中の時間を区切ってみたのが2頁のグラフですが、真ん 中当たりに年齢別の分析があります。具体的には3頁にデータが出ていますが、上下の グラフです。これは上が男性で下が女性です。男性で見ますと、25歳から49歳ぐらいの 方は60時間以上の労働をされている方が多く、なおかつ時系列でも分析できるようにし ています。ここには1993、1998、2003年のデータが出ていますが、これらの層は時系列 的にも高まっていまして、その割合は20%ぐらいです。  もう1つは2頁の本文に書いてありますが、週60時間の者の割合を産業別に見ます と、運輸業、飲食、宿泊などで多くなっています。 ○岩出委員  ホワイトカラーや研究者が多いと思いましたら、ちょっと私の印象と違って、現実に 時間的コントロールをしなければならない業種が多いということが分かりましたので、 ますます現在の規制の必要性があるのではないかという印象をもちました。 ○西村分科会長  そのほか何かご意見、ご質問はございますか。 ○吉田氏(佐藤委員代理)  この間の厚労省のいちばん良い点は、おそらく安全衛生と労働時間の問題をきちんと リンクさせてきたこと、その中でいろいろな過労死の認定基準の問題なり、あるいは総 合対策もされてきたと思います。そうすると、単に縦割というか、部や課という分け方 ではなく、厚労省全体の総合政策の中でどのように労働時間の問題を位置付けるのか、 過労死やメンタルヘルスの問題を考える場合には、その辺の観点から考えることが必要 ではないかと思います。  この前も意見がありましたように、1800時間という目標は社会的にも大きな意味をも ちましたし、我々も含めて時間短縮が進んだようなものですね。そうは言っても、おそ らくいまの段階は業種別、産業別にかなり格差があることが問題だろうと思います。ど う長いところを短縮するか。産業別、業種別あるいは特に運輸業などが長いと思いま す。そうすると、その辺の個別の対策を時短促進法の中で新たな目標を持ちつつ促進す るような施策が打ち出されなければいけないと思います。そういってもしょうがないの ですが、それをここで議論してはいけないと思いますが、36協定の適用除外の問題も含 めて議論をした中で政策を出さないと、初めから枠に嵌めた議論をしていても、出てこ ないのではないかという感じが私はします。もう少し初めから狭めるのではなく、広げ た議論から狭めていくようにお願いしたいと思います。 ○勤労者生活部長  いまのご提案は、議論を進めるうえで有効な方法だと認識しているのですが、先ほど 申しましたように、単に労働時間を縮めることのみが目標ではなく、たぶん背景には働 く人の健康や、社会政策的に言えば、健康な労働者をきちんと確保できるシステムを作 ることがマクロ経済の持続・発展につながるわけですから、それをやるいろいろな道具 立てを全体で議論しながら、そのパーツとして労働時間をどう設定するかを考えるのが 筋だということは重々承知しているつもりです。  さらに、仕事と生活の調和の話もいただけば、厚生労働行政全体としてどのようにア プローチするかも十分わかっているわけですが、それをすべてやったうえでということ になると、時間的制約もあることになりますので、当然個別に議論していただく委員の 先生方には、この場では、そういった問題意識も踏まえながら、かつそれに言及しなが ら焦点を定めている時短法の扱いにどう反映させるかの論理展開をしていただけないか と思います。そして、元の大きな問題意識については、先ほど申しましたように、ほか のテーマでもやるべきものがいろいろありますので、改めて労働政策全体を議論するよ うな場をなんとかセットするという工夫の中でやらせていただければと思います。です から、ここで提言していただくことは一向にかまいません。ただそのときに、それを踏 まえて時短法の処理はどうするべきかというところまで添えて出していただければ、有 効な議論になるのではないかと思います。 ○谷川委員  この資料を見ますと、前川レポートの書かれたころの年間の労働時間は2000時間を超 えているわけです。超えていて、そのような中での日本の産業構造なり、雇用構造ある いは労働形態の中で、世界との調和をとりながら日本がどうやっていくか、その中で大 きな指標をまとめましょうということだったのではないかと思うのです。それが実際に 実行されてきまして、2000時間を割って、ここ数年は1850時間ぐらいのところで、日本 の経済動向にも関係するのかもしれません、あるいは、世界の産業構造に多少影響もす るでしょうが、総労働時間としてはほぼこのぐらいのところで落ち着いてきているのか なと思っています。  先ほどからありますように、その中に個別に健康上の問題であったり、生活面であっ たり、もしかするともっと家庭と密着した生活面の問題がかなり生じてきていないか。 また、働きながら勉強をしたいなどのニーズが起きてきていて、労働者の意識も、いま までのようにある目標に向かってキャッチアップしていく時代とは少し変わってきてい るのではないかという気がします。そうなりますと、労使間で話し合うことも大事かも しれませんが、個々に起きている事象に対して、個別に話し合う中から何が総合化さ れ、国としての1つの方向づけをするのかという見方をしてもいいのではないかと私は 感じています。 ○新田委員  1800時間を消滅させるという政策決定のもともとの思想的なものが、いままさに部長 さんがおっしゃったようなことが受け入れられているのか、そのことはもうないよとい うことではないのかと、そのような気が強くあります。この時短推進法について、働き 過ぎではないかなどいろいろなことを言われ、前川レポートが出て、国際的にもどうか など、さまざまな関わりで目指そうと、全国的な、全体的な合意の下に進もうとしたわ けですね。そういう意味では、我々が労使交渉するときも、経営の側も経営の責任にお いて考えようということで、さまざまなことをやりながら進めてきましたが、そのよう な社会的な合意は今回の1800時間消滅の政策決定で、全部そんなことはないのですよと 言っている気がします。だから、その決定のときの理由は何ですかとお伺いしたのです が、そこがどうも払拭できないでいるのですが、これは私の感想です。しかし、言われ る問題はたくさんあるわけですから、ここでの議論がどのように生かされるかになるか と思いますが、そこがやはりまだ吹っ切れないところがあります。 ○長谷川氏(須賀委員代理)  私も新田委員と思いが共通するところがあるのですが、当時1800時間の前川レポート ができて、時短促進法などを受け、労使は自分の会社や企業が社会に通用するようにし ようと、労使で職場に労使委員会を作って、1800時間に向かって進もうと、当時は非常 に努力をしたのだと思います。その結果、俗に言う週休2日制ができて、私たちも一般 的な労働者も国内で旅行したり、海外旅行をするようになって、ある意味では、ゆとり や豊かさに国民が皆で進んできたと思います。  そのときの目標は1800時間、そしてヨーロッパやアメリカのような週休2日制。夜間 交替労働を持っている職場では、そのための要員をどのように配置しようか、効率的・ 効果的な要員配置はどうすべきかなどについて、労使がほとんど同じ思いで知恵を出し たのだと思います。私の所でも16勤という勤務形態を、例えば8・6勤務に変えるな どの、労使で知恵を出して努力をしてきたのだと思います。現時点で、2120時間から平 均で1853時間まできましたが、1800時間にはまだ到達していないわけです。  いま振り返ってみたときに何が起きているかと言いますと、本日厚生労働省からいろ いろな統計でも示されましたように、所定外労働時間が長くなっている。特にたくさん 働く人と労働時間の短い人に分かれている。一方で過労死がある、自殺者が多い、メン タルヘルスが非常に多いなど。  厚生労働省も、今回おそらく障害者の雇用で精神障害者を扱うのだと思うのですが、 企業の中でも精神障害者が非常に増加しているが、この問題をどうするか。一方、女性 たちは確かに均等法ができて職場に働きに行ったけれど、やはり子どもを産めない。1 人は産むが、2人目は絶対にいやだということで、少子化現象に歯止めがかからない。 一方で老人はどんどん増えていくわけですから、高齢者介護はしなければならない。い ろいろな制度は作ったが、まだまだそこは十分にはなっていないと、いろいろな問題が 起きていると思います。  それらに対して、仕事と生活、家庭、地域などを、自分の能力開発も含めて調和させ ようとすることは誰も否定しないし、全くそのとおりだと思います。時短促進法はある 意味では、労使でお互いに努力しますし、国も努力しましょうという法律だと思いま す。その法律を使いながら、我が国・社会がそれ以外にいろいろ起きていることに対し てどのように向かうかと考えるときに、数字は非常に達成しやすいのだと思います。い ままでは1800時間ですね。  今回、仕事と育児、仕事と介護、仕事と家庭、夕飯ぐらいは一緒に家族で食べよう、 箸も茶わんもきちんと持てるように子育てを家庭でやろう、家庭教育力をつけようなど とも言われていますが、それに対して労働時間のところでどのように政策的に誘導して いくのか、皆で目標を立てて進んでいくのかと考えるときに、いま議論になっています が、いままでは1800時間はとてもよかったと思うのです。ですから、何か出すときに、 労使はここまで頑張ろうという数値がなければ頑張り切れないのではないかと私は思い ます。  時短促進法をこれからどのようにしていくのかは、今日資料を示されましたので、私 どももゆっくり読んで考えたいと思いますが、やはり労使も国も地方自治体も、社会全 体がどうすれば我が国の労働者や皆が幸せになれるのかについて、目標をこの法律の中 で示し、それに取り組んでいくことが、この法律に課せられた課題ではないかと思いま す。 ○川本氏(紀陸委員代理)  この時短促進法は、目的の所に書いてありますように、1つは時短目標の時間を掲げ ている部分、もう1つは時短取組企業への支援策から成り立っていると思います。目標 設定そのものにつきましては、長く働いて頑張って稼ぎたい人、若いうちに頑張って成 果を上げ早くポストを上がりたい人、一方では家庭を重視したい人というふうに、いま 労働者のニーズは非常に多様化していると思います。  それからもう1つは、先ほどご指摘があったと思いますが、労働時間そのもので仕事 の成果を上げるのではない分野が重要になってきているし、増えているという構造の変 化があります。また、業種によっても偏りがある。このような中で、画一的に時間目標 を設定してどうこうすることは、時代にそぐわなくなっているのではないかと思いま す。したがって、この時短促進法で言うところの時間目標の計画の部分というのは目的 性がかなり希薄化しているのではないかと思います。  先ほどどなたからかご指摘がありましたが、所定労働時間がまだ長いという意識の方 が1割以上いるということですが、それを見ると労働時間について不満を感じている方 の中の3割が長いという感覚ですから、やはり全体としては所定についてはほぼ納得で きる状況になっているのだろうと思いますし、1800時間そのものについては、かつて前 川レポートのあと労使で議論になったところではありますが、海外比較するときにパー トの数字は入っているわけです。当然その中の問題でありまして、当時は我が国におい てはパート比率が低かったものですから、同じベースでやるのかという議論があったわ けです。いま1850時間台ぐらいで落ち着いてきているということはある程度成果が上が ってきたのだし、これはこれで数字として見るのであれば、パートが増えてきた状況も 含めて、当然結果としてみるべきものだろうと思っています。したがって、中身が変わ ってきたからと言って、もう一度中身を見直して目標を設定するのは、これも時代にそ ぐわないのではないかと。画一的にする時代ではないと思います。  一方で2つ目ですが、では時短に取り組んでいる企業の支援が必要かどうかの話で、 これは先ほど言った業種別に偏りがあるとか、規模別に偏りがあるなら、まだその必要 性があるのかないのかを議論しておいたほうがよいのではないか。必要性があるとした 場合についても、支援の中身をもう少し効率的にする、しないという議論はあり得ると 思います。私はまだ時短促進法を廃止すべきかどうかについての意見を持っていません が、いずれにしましても支援の部分はそれなりの必要性が残っていて、1800という数字 とか目的・計画という数字の画一的意味合いは非常に落ちてきているのではないかと思 います。 ○勤労者生活部長  いまのご意見は非常にわかりやすいもので、最後の支援の所ですが、これは労働政策 審議会の労災保険などの保険制度全体との絡みで、使用者の方々の中から、実はここで 出す支援が特別会計によっているところがありまして、本来の本体給付に限定して、い ろいろな支援の方には特別会計を使うなと。目的に沿うようにと言われると、その辺り の調整をしあぐねております。もう少し整理していただくと助かると思います。 ○川本氏  個人的な見解を申し上げますと、要するにここで言う支援策が必要か否かの問題と、 財源はどこから持ってくるのか、いまのままでいいのかの問題は別の議論になると思い ます。別の所から持ってくる話がそもそも難しいとなれば、ではもう支援はできないと いう話になるでしょうし、その2つは別問題かなと思います。 ○山口委員  いままでの議論の中で「画一的に」というこだわりが出てきましたが、1800時間の目 標イコール画一的ではないと認識していただきたいと思うのです。皆がすぐに行くので はなく、ターゲットに到達するために労使で知恵を絞っていこうと。実際労使では議論 ができるわけですが、先ほど法律があっても実態がなかなか進まないということは法律 が機能していないと申し上げましたが、方向性が一致していれば、労使の関係がなくて も、使の立場でも労働行政の意向がわかっていれば、それなりの成果を果たせるわけで すが、残念ながら使のほうだけでなく、労働組合の組織化がどんどん下がっていること にも影響しますが、やはり労働組合のない所ではなかなか労使協議が進まない。労組が ない所について成果が進んでいないことはどうなのか。そうすると、労使自治に委ねる 部分がありますが、まだまだ法律としての役割の部分があるのではないかということを 強調したいわけです。1800時間は画一化の象徴ではないことと、労組のない所でどのよ うに時短を進めていくのかです。  それから政府経済計画の中での1800時間の定着などについては終了することにする、 先ほど部長のご説明の中で、今後は知的労働者にシフトするとありましたが、あるべき 方向性は数年後なのか、数十年後なのかを含めて、将来の方向性については異論はない のですが、では現状はどうなのかと考えると、あるべき方向性だけを定めた中で、すべ ての労働者や生活者はカバーできない。法律はあるべきところを標榜しながらも、そこ に届かない実態があって、それをどのようにあるべき方向へ持っていくかの企業の支援 だけでなくて、労働者支援という位置づけだと思いますので、決して将来標榜すべきポ ジションを指定するわけではありませんが、もっと現実を見てくださいということを申 し上げておきたいと思います。 ○伊丹氏(平山委員代理)  先ほど谷川委員や川本委員がおっしゃったことに近いのですが、そもそも時間短縮が 直近何ゆえ進めにくくなっているのか、あるいは二極化しているのかを、本来私ども は、特に国際的な経済構造の変化の中でもう一度認識を共有化しなければならないだろ うと思います。ここ数年の雇用情勢を含めても、いまの長時間労働と、一方で短時間勤 務の流れが、ある種の必然性を持っているのではないかという気もいたします。逆に言 いますと、時短促進法で時短を促進することについては、当然限界があるという前提に 立って議論をしていきませんと、結局経営のほうからも労のほうからも、この労は組合 というより個々人から見ても、この法律が形骸化したもののように見え兼ねないと思い ます。  そのようなことを含めて、先ほど谷川委員がおっしゃいましたが、もう少し一つひと つの事象の背景を私どもなりに確認しながら、時短促進法をどうしていくのかについて 議論をしたほうがいいのではないか。1800時間は、確かに労側の問題意識としては非常 に大きな旗印がなくなる意味においては気になるところではあると思いますが、その有 無の是非よりも、もう少し職種別や業態別などで起きている事象が何故に起きているの か、運動論的にどう引っ張っていくべきかを議論していかざるを得ないのではないか。 私も、いまの時点でこの法律を続けるべきか否かについて答えは持っていないのです が、そのような経緯を踏まえなければ、意味のある法律にならないのではないかと思い ます。 ○奥谷委員  いまのご意見とかなり似ているのですが、労働者側の方は1800時間を目標にすること を頑なにお考えになっていらっしゃるかもしれませんが、反対に1800時間を掲げること がかえってマイナスになってしまうのではないか。まさに業種・業態・個人の部分で働 き方も価値観もすべて変わってくるわけですから、1800時間を掲げ、それを目標として 1つのシンボルとすれば、余計に限定された働き方になってしまうわけで、これから長 時間働きたいとか、短時間で働きたいなど、個別に選択肢が増えてくるので、1800時間 に固執すること自体が時代に合わないわけで、この法律を新しく作っていくのであれ ば、なおさら将来を見据えた法律に変えていかなければならないわけです。労基法とい う昭和22年にできた法律がなかなか変わらないわけですから、21世紀を見据えた形で、 働き方がどうあるべきかをとらえての考え方を是非持っていただきたいと思います。 ○長谷川氏  奥谷委員に申し上げたいのですが、労側は古いかびの生えたものにずっとへばりつこ うと言っているわけではないのです。むしろ先生にお聞きしたいのですが、何故過労死 が増えるのか。何故女たちは1人目は産むが2人目は産まないのか。何故家庭力が落ち ていると言われているのか。何故地域力が落ちていると言われているのか。そのような ことに対してどうしていくのかの1つに、働き方や労働時間があるのではないかと言っ ているわけです。そこをもう少し前向きに見直すことが必要なのではないですか。だか ら、時短促進法が今日まで果たした役割はこういうことですねと、では次にどのような 目標を掲げましょうか、と言っているのであって、いつまでも何年も前のことにガーッ としがみついて放さないと言っているのではないのです。そこは、もう少し私どもの意 見を汲み取って欲しいのです。  それから知的・創造的に働く人たちの働き方を是非見て欲しいのですが、私の友人に デザイナーやコンピュータソフトを開発している人たちがいますが、彼ら、彼女らも結 構自宅で仕事をしています。でも自分の住まいと作業場はきちんと分けています。絶対 一緒にしないのだそうです。例えば3階建ての家を作って、1階は事務所にして、2階 がダイニングだとすると、彼女たちは9時ぐらいに必ず1階に下りてくるのです。そし て、必ずお昼までいます。お昼になると自分の家に行って、台所でご飯を作って食べま す。1時間ぐらいすると下りてきて、また上がっていくのです。そうしなければ自分の 能力が発揮できないと言っているのです。例えば夜遅くまで働いたとしても、彼女たち も子供がいますから、家事もやります。そこについてはしっかり分けるのだそうです。 なるだけ外で働いていたときのようにしなければ、自分の能力が駄目になっていくと言 っているのです。  確かに労働時間を管理されていないようですが、自分で自己管理をしているのです。 だから、労働時間管理を自分でやるのか、それとも会社のシステムの中でやるのかの違 いがあったとしても、やはり労働時間を管理しないと、先ほども厚生労働省からありま したが、24時間の中で生活をどの時間に入れ、働く時間をどこに入れ、自分の能力アッ プや地域社会をどこに入れるかなどの分け方は変わらないと思うのです。そのときの1 つのパーツが労働時間だと思うのです。変化する中でどのようにやっていけばいいのか を考えているところは先生と同じです。だから、私たちが古くさいものにいつまでもし がみついていると思わないでいただきたい。 ○西村分科会長  よろしいでしょうか。まだご意見もあろうかと思いますが、そろそろ時間がまいりま したので、本日の分科会はこれをもって終了させていただきたいと思います。事務局に は、本日いただいたご意見を十分整理したうえで次回の審議につなげていただくように お願いいたします。                (照会先)                  労働基準局勤労者生活部企画課(内線5349)