04/09/24 社会保障審議会福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会第16回議事録    社会保障審議会福祉部会 第16回生活保護制度の在り方に関する専門委員会 日時:平成16年9月24日(金)13:00〜15:00 場所:厚生労働省 7階専用第15会議室 出席委員:石橋委員、岩田委員長、大川委員、京極委員、後藤委員、田中委員、根本委員、      布川委員、松浦委員        岡部委員、鈴木委員、八田委員は欠席 議題  :(1)自立支援の在り方について       (2) その他 (岩田委員長)  それでは定刻を過ぎましたので、ただいまより、第16回生活保護制度の在り方に関す る専門委員会を開催いたします。  1か月ほど空きましたが、今後は、今回、次回と実質的に2回議論していただいた 後、まとめというスケジュールになるかと思います。どうぞよろしくお願いしたいと思 います。  それでは、事務局から本日の委員の出席状況及び配付資料について御説明をお願いし ます。 (事務局)  8月20日付けで社会・援護局保護課に異動してまいりました櫻井と申します。どうぞ よろしくお願いいたします。  では、委員の御出席の状況ですが、鈴木委員、八田委員及び岡部委員からは御欠席と の御連絡をいただいております。  続きまして、資料を確認をさせていただきます。  上から順番に、  ・議事次第  ・座席表  ・説明資料  ・第15回の議事録(案)  となっております。  資料は以上でございます。お手元に以上の資料がない場合にはお知らせいただきたい と思います。事務局の方からお渡しいたします。  なお、第15回議事録(案)につきましては、これから各委員に内容を御確認いただく こととしておりますので、委員のみの配付となっておりますことを御了承願います。  以上でございます。 (岩田委員長)  よろしいでしょうか。それでは、本日の議事は、「自立支援の在り方について」及び 「その他」ということでございます。本日の新聞に既にもう決まったかのような記事が 出ておりますが、今日議論することでございます。私どもにとっては、こういう計画的 な自立支援というのをやっていこうということでは既に合意を見ていたところでござい ますが、具体的なやり方・プログラムについては、今日事務局の方で案をつくっていた だきましたものを御議論いただくということでございますので、どうぞよろしくお願い いたします。  それでは、事務局の方から、まず資料の説明をお願いいたします。 (岡田保護課長より「説明資料」に沿って説明) (岩田委員長)  ありがとうございました。それでは、ただいまの資料の説明に基づいて御議論いただ きたいと思います。幾つか大変重要な点がございます。これまでの議論でも出てきたと 思いますが、例えば2ページについて、先ほどの御説明のところで、生活保護を開始す る前から場合によっては要援護者にプログラムが適用できるのではないかとかというよ うなことです。これまでも生業扶助を少し切り離して適用できるはずだという議論があ りましたが、ここまで踏み込んだ議論はまだしておりませんでしたので、そのあたりも 含めてぜひ積極的な御議論いただきたいと思います。どうぞどなたからでも。 (布川委員)  この委員会としては、生活保護の改善として入りやすく出やすいを基本に議論をして きたと思います。今日のところは、出やすいということの具体的なとても大事な点だと 思います。そこで、今お示しになられていた資料でここが大切だなと思う点について、 今委員長がおっしゃられたこと以外で確認したいと思いますので、意見を述べさせてい ただきたいと思います。  また、ここは直した方がいいのではないかという改善の提案も併せてさせてくださ い。もう一つ、入口とのかかわりでまだ議論が残っているのですが、それはこことも大 分連動することがあるので、後ほど述べることにしたいと思います。 (岩田委員長)  私も同感です。このことは、生活保護制度をどう考えるかということと非常に連動し ています。今、布川委員がおっしゃったように、「入りやすく出やすく」は、最初私達 が掲げたスローガンです。もちろん松浦委員がおっしゃったように、入りやすくという のはなかなか難しいですが、使いやすい制度ないしはトランポリン型と申しますか、受 け止めたらはね返すというような議論は、これまでもありました。これは自然と入口論 と結びつかざるを得ません。御議論の時間は残り今日と10月の次回、実質的には2回で す。入口のところもいろいろ積み残しがありますので、今日の議論に自然につながるよ うな形で論点を少し深められれば、よろしいかと思います。とりあえずは、まずこれに 沿って御議論いただきたいと思います。 (布川委員)  今お示しいただいたもので、大切な点と確認した方がいいと思う点が4点ばかりござ います。  まず1点目として大事なことは、自立というのを単に就労による自立ということだけ ではなくて、この中には稼働能力がないとされている人たちの自立というのもあり、居 宅で生活をしていくということから始まっていく自立もあるととらえることがとても大 切であると思います。  2点目としては、就労意欲が欠如しているとか、欠如しているように見える人に対し ても、生活保護の対象としていく観点も大事であると思います。就労意欲が示せなかっ たりするひきこもり状態の若い人、「ニート」と言われている若い人たちに対しても、 生活の支援をするというのと、自立の支援をするというのが両方ここで出てきたという のはとても大事であると思います。  3点目は、稼働能力の有無を段階的にないしは可変的に捉えていくというのもとても 大事です。稼働能力のあるなしを二者択一できるのかがとても難しいですが、そうでは なくて、段階的・可変的に捉えていることがとても大事な指摘であると思います。資料 を見ますと、就労意欲がないように見えるような段階とか、社会参加が可能な段階と か、直ちに一般就労は困難であるが、何らかの就労ができるという段階とか、段階的か つ可変的なものと捉えているところがとても大事であると思いました。  4点目は3点目と関わるのですが、稼働能力を活用しているかどうかという判断もや はりその人なりの段階を追った、まずは社会参加的なことから職場体験的なもの、さら に進んで福祉的な就労、保護雇用に進み、最終的に一般的な就労につながっていくとい う、稼働能力の活用の在り方も段階的に捉えられていて、そこが大切だと思います。働 くということは、自己実現にとってとても大事で喜びにもなりますが、一方でストレス も当然大きいのです。段階のところが一直線に行くばかりではなくて、ジグザクに行っ たり来たりするのが当然で、そういうふうに捉えておくのがとても大事であると思いま した。  以上がなるほどと思ったところです。  続いて、疑問に思ったことと、こうした方がいいのではないかという提案をさせてい ただきます。  まず1点目としては、自立支援における制裁と申しますか、保護費の減額とか、保護 の停廃止等の在り方です。自立支援を基本に置く限りは、自立支援という施策の枠組み の中で、制裁と申しますか、保護費の不利益変更になると思うのですが、自立支援とい う枠組みでそれを考えるというのは、安易にできるものではないと思います。いずれに しても、自立につながるかどうかが判断のポイントになって、そうした措置をとるとい うことになると思うので、これは慎重な検討が必要です。キャリアカウンセラーの方の 専門知識とか、援助論の専門知識というのが必要ではないかと思います。その点を御議 論いただいたり、深めていただけたらと思います。  2点目としては、資料の3ページのところからずっと出てくることですが、大きな箱 の上から2番目のところに「要保護者の職歴・資格……等を踏まえ、次のようなプログ ラムに基づく取組をもとめる。」という表現になっています。誰に求めるのかというの がこの文章だとよくわかりません。明確にするには、自治体に求めるというふうに対象 をきちんと書いてもらうか、「求める」という表現じゃなくて、「プログラムに基づく 支援を強める」という2ページ目の表現に直した方がいいのではないでしょうか。細か な話ですが。  それから、同じページの具体的なプログラムの中に「社会貢献活動」というのが出て きますが、「社会参加支援」と直しておいた方がいいのではないかと思います。ひきこ もりの段階、居場所を提供し、社会的なつながりを持つような段階であり、リハビリに もなるというものではないかと思います。正確に言うと、中身的には「社会参加支援」 としていただいた方がいいと思います。精神障害者のところは「社会参加活動」になっ ていたかと思うのですが、それに近づけて直していただきたいと思います。そうしない と、このままの表現ですと、受給者の方にボランティア活動をするように指導指示し て、それに従わないならば制裁もするぞということにもなりかねません。もし、そんな ことになると、要保護者にとても早い段階で無償労働を強制してしまうことにもなりか ねないので、ここは注意が要るのではないかと思います。  それから3点目として、これは技術的なことですが、試行雇用(トライアル雇用)と いう位置づけがちょっと違うのではないかと思います。試行雇用というのは、常用雇用 を目指す人が補助金を事業主に払われる形で何か月間か働くというものです。ここのイ メージだと職場体験とか、職場適用支援というのがここに入るはずだと思うのです。あ くまでもトライアル雇用というのは、一般の企業に就労できる人がとりあえず事業主も 試してみるし、本人も試してみて、事業主の方が雇っていいなという判断があったとき に、常用雇用に移っていくものなので、位置づけが違うと思われます。試行雇用という のを置くのだったら、もっと後の方だと思います。ここに入れるとしたら、職場体験と か、職場適用訓練・支援という方がいいと思います。  それから4番目ですが、7枚目のホームレス支援について、この表を見てよく意味が わかりませんでした。ここだけ、最初は印刷のミスかなと思ったのですが、点線になっ ていて筋(実線)が通っていない。段階的にやるというのが全体の流れのはずだと思う のですが、筋が切れているところがあり、これがどんな意味かよくわかりませんでし た。段階的にやるという意味だとすると、例えば私の地元では、シェルターとか、ホー ムレス自立支援センターとかというものはありませんし、しかも公的な住宅も少ないで すから、居宅の確保、アパートの確保というところから始めないといけないのです。そ ういう観点で見ると、この点線の段階を踏まないと生活保護が始まらないと見えてしま うので、この点線のところはない方がいいのではないかと思います。東京都がアパート の確保という具体的な施策をされていらっしゃると思うのですが、この点線のところを 削って、「社会的入院患者等の自立支援プログラム」と同じように、最初に居宅生活等 への移行の支援から始まって、次の囲みが居宅生活の支援という始まり方がいいのでは ないかと思いました。  最後に、ホームレスの自立支援の一番下右側ですが、「都市雑業的な仕事の情報提供 」という欄になっています。しかし、情報提供は、意味がないと思います。当事者の方 は御自分が情報を持っていらっしゃるわけですから。ここで必要なのは、都市雑業的な 仕事の提供とか、都市雑業的な仕事の創出を支援するということだと思います。  今日の資料の最後に釜ヶ崎の事例をまた挙げていただきましたが、ここでは高齢者の 清掃事業をずっとやってきています。ただ、それが予算的に大変厳しい状況になってい ます。就労の場そのものを確保して提供するということが大事だと思います。さらに言 えば、雇用の場の確保とか、雇用の場の創出を支援するという課題になるのではないか と思います。  以上です。 (岩田委員長)  ありがとうございました。個々のかなり細かいいろんな点もそうなのですが、多分問 題となるのはこのプログラム自体の評価の前に、生活保護の最低生活保障とこの自立支 援、生活保護で言うと自立助長との関係をバーターでやるような表現がとれるかどうか ということです。  生活保護の場合は保護の申請と決定という関係にありますが、この自立支援の場合 は、多少契約的な要素を入れることができる感じもします。だから、利用者の方と福祉 事務所が合意の上である契約書を取り交わして、自分も積極的にそれに参加する。でき ないときは見直すというような、何かそういうプラスアルファ的な計画であって、実質 的には、それをエンカレッジしていくという方向に行くことになるとは思いますが、お 飾りでやるのであれば、このような議論をする必要がないわけです。しかしながら、布 川委員が先ほど少し指摘されたように、そのことと保護の停廃止というのは微妙なとこ ろがあります。つまり、生活保護の権利は、収入等が生活保護基準以下になったときに 発生するわけですから、その辺はどういうふうに解釈するのか。もしかしたら保護の停 廃止は難しいのではないかと、今伺っていて少し思いました。そのあたりを整理する必 要があると思います。はい、どうぞ。 (大川委員)  その点について、今、布川委員の御意見なんかも聞きながら、私の意見をお話しした いと思います。  1点目として、生活保護の支給と、こういった自立支援をバーターでやるかどうかは いろいろ論議があるところだと思います。それを考えるに当たって、現場の中でむしろ 一番つっかかってしまう点というのは、当事者に対して就労指導する、努力を求めると きに、その基準が明確に示せない。逆に指導される側、受給当事者の方は、自分がどこ までやれば努力したと言えるのかがよくわからない。もちろん自分がやれるだけ努力し て、将来的な生活保護を受けずにやっていくということが目標にはなるのですが、現実 にはなかなかそうはいかない面があって、生活保護は受けられるのかどうかという不安 がどうしても出てくるのです。明確な基準がないことから、どうしても恣意的な判断に 流れる、あるいは逆に御本人がいろいろ理由を申立て、就労に結びつかないということ が起きてしまう。こうした意味で、どこまで努力したかとかをもっとわかりやすくする ため、基準を決めるのもなかなか難しいとは思いますが、御本人に明示するという意味 で、契約といった要素を入れ込むということは大事と思っています。  2点目は、先ほどの保護の不利益変更との関係ですが、もしこういった制度を利用し て、それでもなおかつ努力せず生活保護の不利益変更を実施するということを制度上予 定するのであれば、こうした就労支援システムの供給と、生活保護の実施決定はある程 度第三者的な評価も入れながら分けないと、やはり混乱が起きるのではないかと思いま す。従来生活保護ケースワーカーと呼ばれる私たちのような仕事は、お金も出しながら 並行していろいろな自立支援・生活支援をしており、その中で就労支援が大きなウエー トを占めていたわけです。しかし、このように一体でやってきたことがいろいろな弊害 を生んでいるという指摘もありますし、このような就労支援の仕組みも第三者的な評価 が入る形である程度機能を分けてやる、そういう形で整理ができないか。そうすれば、 先ほど言ったなまじ生活保護のお金を出すことと引き換えに就労を強制するような勘繰 りを受けることもないのかなと考えています。  以上です。 (岩田委員長)  そこは非常に微妙なところだと思うのです。生活保護自体は、これが入口論とも関係 しますが、働けるのに働かない人に長期に保護を出すというのは、もちろん社会的に受 け入れられないところだと思います。保護の要件を定期的に見直しているわけですか ら、それはそれとして、これはプログラム自体が利用者にとってよくわかっていなかっ たとか、無理が多かったためにできないということもあります。それを分けろというこ とでしょうか。 (大川委員)  今言いました、当事者にとって、こういう約束をしたということについて、必ずしも 客観的な状況で契約や話し合いができるとは限らなくて、むしろ恣意的な判断といいま すか、あるいは本人が頑張っているのに福祉事務所は頑張っていると認めてくれないと か、こうした状況で不利益変更を絡めると、どうしても訴訟という問題になってきま す。いたずらにそういったことが起きる状態を放置した形でこのシステムをつくると、 やはり本来の目的を達しないでストレスだけが現場でたまっていくというおそれがある ので、基準の明確化とある程度の給付の部分との機能的な分離といいますか、この辺の 整理は必要ではないかと考えています。 (岩田委員長)  いかがでしょうか。 (京極委員)  こういう経済的な自立支援のプログラムを出してやっていくというのは非常にいいこ とで画期的だと思います。具体的中身については布川委員から御指摘の点もあるかもし れないですが、やること自身は大変結構です。ただ、類型化する場合に、素人考えで申 し上げますと、ホームレスとか、高齢者とかいろんなタイプがございますが、本人のや る気、働こうと思っているのか、それとも生活保護を公的年金のように考えて、それで ずっと暮らしていこうと思っているのか、思想があるでしょう。何か生活保護からどう やって脱却しようかという意欲の段階がある気がするのです。だから、ホームレスだか らこういう対策をするとかではなく、要するに被保護者として経済的自立に向けての意 欲度がもう一方の軸としてある気がします。常識的に考えれば、本人の意欲が強くて、 福祉事務所のケースワーカーの援助が適切であれば非常に脱却しやすい。それができに くい人もいる。現場のことを知らないのでわからないですが、自立への意欲度に3段階 ぐらいあって、生活保護を受けたらそのままずっと受給してしまうもともと意欲もない ような人と、自立が達成できる人と、それが失敗してまた戻ってしまうかもしれないが 一回は何かしようという少し意欲的な中ぐらいの人とがあるのではないかと思います が、その辺はどうでしょうか。 (岩田委員長)  資料にあるのは、こういう自立支援に取り組む場合の例示にしかすぎないわけです が、あるパターンをつくるときに、以前何だったとか、今どういう病気を持っていると か、そういうこととは別に、先ほど布川委員が、ある種自立とか、就労意欲というのは 可変的であるとおっしゃいました。だから、自立・就労意欲が最初から非常に強くて、 早く出てやろうと思っている人と、とりあえずそれで落ちついたところでその先のこと はしばらく考えられないという人とかいろいろいるのではないかと思います。だからプ ログラムもそういうことが加味された方がいいというようなことでしょうか。 (京極委員)  何かそのような気がします。こういう類型化と、それから意欲と。 (岩田委員長)  類型化というのはなかなか難しくて、例えば元ホームレスといっても、私の理解では 3種類ぐらいあって、やはり全然違います。つまり「元」というホームレスのさらに元 がありますから、その就労体験が非常に違う。恐らく一番効いているのは就労体験かも しれないですね。それと今の年齢というか、ですから、若くて就労体験がないとか、長 期の入院や施設入所をしていて、実社会との関係が非常に希薄であったような場合と、 割合最近まで現役で働いていたというような場合ではやり方が違うとか、それは確かに ありそうな感じがします。ですから、この辺はそれぞれの中の個別事情に応じて違うだ ろうと思います。例えば高齢層については、私たちは、就労は求められないと考えてい るわけですが、非常に意欲が高くて、社会参加の意識も高い、ぜひやりたいという人も いるかもしれません。そういう要素も入れて、その辺りを十分よく何回か話し合いなが らどういうふうに暮らしていくか、生活を再建させていくかという自発的な計画書を両 方でつくり合いましょうというニュアンスかなと私は思っています。  ですから、こういうものが出ると、これだけがひとり歩きしちゃう可能性があるの で、例示的にこうだけど、地域によっていろんなタイプの利用者の方がいらっしゃると すれば、それに応じてアレンジして契約を取り交わすという、今京極委員がおっしゃっ たような要素をどこかに入れてほしい。何か書いたものがあると、さっき大川委員が言 ったように、目安が自分は何をすればいいのかがわかるということは大事だと思うので す。それは利用者とワーカーと両方ですね。  田中委員どうぞ。 (田中委員)  私は保護施設の経験しかないものですから、どうしてもそこから外へ出るのがいつも できないのですが、先ほどありました日経の記事も今朝拝見しまして、それから送られ てまいりました説明書も拝見して幾つか感じました。一つは、これからの時代における 生活保護制度がいかにあったらいいかということも我々はいろいろ論議しているわけで ございますが、これは言うまでもないのですが、生活保護制度の中では、最低生活の保 障をするということと、自立支援というものが生活保護制度の中での大きな目指す柱で す。その中で自立支援という問題は、例えば私、保護施設の中でかなり長い間働いてき たわけですが、施設入所の例を見ても、施設の中で長い間生活をする場合に、施設その ものが必ずしも人生の場になるわけではないですが、大方人生の場、生活の場所になる のです。こうした状況の中で、利用者一人一人にどういうときに人としての喜びを感じ るかということをアンケートで直接聞いたり、面接をしたりして一つの統計をとってみ たのです。全部の施設ではないですが、例えば私どもの施設の場合に何回かやるのです が、そこでは「自分は今こうやって生活保護を受けて生活をしている。いろんな職員の 世話やら、社会の世話になっている。しかし、これは私自身の人生の中での生きがいで はありません。どうしてもなれない。」とおっしゃいます。「じゃ、どういうときにあ なたの生きがいがあるのか。」と聞くと、「今こうやってお世話になっていますが、た とえその生活の中でも、あるとき自分が今までできなかったことをできるようになる、 あるいは仲間のための仕事をする、居室の掃除をしてあげる、食堂の掃除をしてあげ る。何かができて、少しでも他者に対し役に立ったなと、こう自分が感じたとき、ある いは少しでも作業をやって、自分のつくったものを誰かが利用してくれるときに、自分 の人間としての生きがいを感じるんだ。」と答えます。これは、私は単に理屈の問題で はなくて、率直にその人が人間として生きるときに、そういう感じを持つと思うので す。施設の中で生活をしていても、「いても」という表現はちょっとどうかと思うので すが、そういう素直な感情を皆さん持っておられるのです。それが施設でない在宅、あ るいは地域の中で生活をしている被保護者の方も、基本的にはそういう考えを持ってい ると思います。ですから、私は今日の説明資料には、自立支援のために利用できるもの はできるだけ利用して、その人の自立生活を実現するということですが、私はやっぱり 就労する、あるいは仕事をする、これはかなり周りの状況によって制約される問題が現 実にあり困難な道ですが、もう少し生活保護を出る思想といいますか、生活指導といい ますか、人間の誇りは自分の足で少しでも歩いて、自分で収入を得て生活するのが一番 尊いということを積極的に教育ないし生活指導をきちんとやってくことが、遠い道のよ うですが、長期的に見ればその方が私は近道のような気もするのです。そういうこと で、ぜひ就労支援のいろんなテクニックの問題やいろいろな問題がありますが、もうち ょっと人間の尊厳といいますか、そういうものはこういうときに自分の手足で動くとい うことをもっと積極的に指導する思想を、これからの生活保護制度の中でビシッと出し ていいと思うのです。  もう一つ、実際の例を申し上げます。今私どもの救護施設で80名ほど生活しているの ですが、2人の人が健康もようやく回復して、鍼、マッサージの仕事をしています。1 人は見えなくて盲で車椅子をやっているものですから、一般の地域生活は困難なので す。しかし、施設の中から法人内にあるマッサージホーム、盲人ホームに通って鍼をす る仕事はできます。収入が月額20万近くあるものですから、救護施設によるとほとんど 収入認定されて生活保護は実は受けていないのです。脱却したのです。脱却するまでが なかなか大変なのです。これは考えようによっては、何も脱却しなくてもいいのではな いかということですが、制度は制度ですから、きちんと全額自己負担で施設生活をして いるのです。  そういう意味では、先ほどのいろんな資料の中に、福祉施設の活用ということで救護 施設の名前が幾つか出てきています。私はいつもこだわるのですが、問題は受ける救護 施設が法律上の目的が生活扶助を行う施設となっていることです。生活扶助の中で自立 支援もあると言えばそれまでですが、同じ保護施設の中で救護施設と更生施設はこのよ うな方々を受け入れて生活扶助を行う施設と、これが目的だと法律上書かれてありま す。授産施設には、このような人のところは大体似たような定義なのですが、初めて自 立を助長することをする施設と、こういう目的がはっきりあります。ですから、その辺 をきちんと整理することで救護施設等の活用もまた変わってくると思います。私は保護 施設の中で救護施設をぜひ生活扶助をすると同時に、「自立支援を行う」そういう文言 をきちっと入れてほしいと、こういうふうに前々回に資料として提出しましたが、そう いう意味では、やはりもっと受ける側の保護施設についても、それから人間全般につい ても、自立支援のためには、まず自分で少しでもいいから働くことが尊いという思想 を、これはもっと強力に指導するなり、そういうものをこの度のせっかくの機会ですか ら、生活保護制度の在り方としてきちんと表面にこれも出すことで、また自立支援に向 かう本人もその気でやることにつながっていくと思います。求められている議論とはち ょっと離れたかと思うのですが、こんな意見を述べさせてもらいました。 (岩田委員長)  施設については、前の議論のときも、例えば救護と更生を分ける必要がどこまである かというのが、この自立支援を実際にしているという田中委員の方の御発言も含めて議 論があったと思います。施設保護という在り方とは別に、最低生活保障はみんな居宅の 考えでいって、住宅扶助と生活扶助を持って施設に入る。施設のケアは自立支援に向か うという在り方もあり得るわけですね。 (田中委員)  現実は、私はそういうふうに理解しているのですが、法の文言はちゃんと38条に、こ ういう方々を入れて生活扶助を行うというふうにつくってあるのです。 (岩田委員長)  ですから、それを変えるということですね。 (田中委員)  もちろん、そうです。 (岩田委員長)  それが1つ課題になると思います、これは前の議論に。おっしゃるように、自立支援 を行うそういう施設があってもいいわけです。 (田中委員)  生活扶助プラス自立支援という文言をきちっと入れた方がいいと思います。 (岩田委員長)  文言をというか、施設保護の在り方を変えるということですね、施設の位置づけを。 はい、どうぞ。 (石橋委員)  1番目の意見は、アメリカでの自立支援のやり方についてです。ちょっと記憶が定か でないのですが、私の記憶では、アメリカにおいて、個々の受給者の自立支援ははっき り契約制度でやっていたと思います。そのとき、最初うまくいかなかった理由が幾つか ありまして、(1)専門家が担当しなくて十分アセスメントがやられなかったこと、(2)形 式的な質問票だけでやっていたこと、(3)自立支援プログラムに対する不服申立てが十 分でなかったという問題点があったのです。自立支援策をやること自体私は大賛成です が、そのやり方がかなり重要だと思います。  それから2番目はオリエンテーションの問題です。アメリカの制度では、契約という 形を導入するとすれば、こういうあなたは権利を持っています。その代わりこういう義 務があります、国側にもこういう権利と義務がありますということをはっきり示して納 得した上でやる。十分なオリエンテーションも受けられる。何もよくわからないうちに ということになってはいけませんし、本人の個人的な事情をよく把握した上でのプログ ラムを作成する義務があります。あるいは本人の希望が最大限尊重されるような交渉の 仕方とか、あるいは仮に就労を免除される場合は子どもさんが小さいとか、十分な保育 が与えられていないとか、そういう場合には就労は免除されますとか十分な説明が必要 です。確かに制裁の規定もあります。だけど、その場合にも細かに規定されていて、事 前に十分な聴聞手続を受けられますとか、母子の場合には、子どもさんの扶養のことが あるわけですから、それは一律減額とかじゃなくて、マネーマネジメントサービスみた いな、ほかの人に、関係者の方に金額を預かってもらうとか、そういうような細かな規 定がありますので、もし契約というような形をとるとすれば、納得した上でやっていた だく必要がありますし、権利・義務の内容をきちんと定めてやっていく必要があるよう に思います。  以上です。 (岩田委員長)  施設の問題も多分そうだと思います。施設入所も含めて、前にそれはちょっと議論し たことはあると思いますが、生活保護の決定と施設の入所というのはちょっと時差があ ってもいいわけで、今のような自立支援そのものを契約的な思想で、本人が十分納得し て、その代わり、それに自ら従っていくというような方策とその手続が重要です。そう すると、生活保護自体の経済保障としての生活保護の権利義務と、それとは段階の違う 自立支援の権利義務とがはっきり仕分けされて扱いやすくなるのではないかなという感 じはします。どうぞ根本委員。 (根本委員)  ちょっと戻ってしまうかもしれないですが、いずれにしても、つくられた資料はとて もよくまとまっている形で、問題点が整理されて、今後の方向についても割と明確な形 になっていて、ある意味から言うと、率直に言って何か光が見えてきたかなという感じ がします。自立につきましては、先ほど布川委員の方でも整理されたように、またこの ペーパーの中でも書き方は微妙にうまく書いておられると思うのですが、就労による自 立と健康的な自立生活というふうに2つ分けている部分、つまり、それが先ほどから田 中委員等も言われておられるように、必ずしも就労による自立がすべてではないところ があります。いろいろな意味の自立があって、それはこの場でも確認されている社会福 祉法に基づく自立という概念がここでも踏襲されているのだということをひとつ確認で きるということだと思うのですが、それでよろしいかということが1つです。  それから問題は、先ほど言われているように、自立支援のプログラムを今の実施機関 というか、今の実施体制で果たして可能かどうかという問題があると思います。そのと きに、それはどこが所管、担当するかは別にして、また前回の議論のときに、たしか京 極委員の方からも、今の実施体制について相当大胆な提案ともとれるような言い方があ ったような気がするのです。いずれにしても、どこが担当するにしても、現在の福祉事 務所に現れている方の問題状況を総合的に受ける。先ほどトランポリン、そういう言い 方があるのかと思いましたが、とにかく総合的に受け入れてアセスメントし、そしてイ ンテークしてきちんとアセスメントするような、これもこの場で確認というか議論とし ては出ていたように、場合によっては、そこにシェルター的な要素もあり、それから職 業判定、あるいは心理判定もするような機関があり、それから、必ずしも生活保護の主 訴は確かにあるかもしれないが、生活保護の主訴だけを見るのではなくて、その人の持 っているいろんな課題を全面的に受け入れて、そしてアセスメントしていくような機 関、そしてまた一時保護的な要素もあるような、そういうふうな部分というのは、1つ の機能としては大事な部分かと思います。  それともう一つは、今言われました契約に基づくプログラムを実施するに当たって は、やはり、今の現行の福祉事務所というのを実施機関の前提とするのであれば、それ をバックアップするような仕組みというのが、どこかできちんと、難しいケースはどう ぞいらっしゃいと、それについてはうちの方でやりますと。それは契約、このプログラ ムに参加している人がそこになるのかそれはわかりませんが、いずれにしても、相当困 難ケースについては、常にバックアップする意味で、場合によっては事務所の機能を少 し2つに分けていくということもあるのかもしれないと思います。  それとあともう一つは、この自立支援プログラムを今の生活保護制度の中にある各扶 助あるいは各仕組み、その中に保護施設もあると思うのですが、特に生業扶助、教育扶 助、あるいは勤労控除というような仕組みとどのように具体的に結びつけていくのかと いうことも、その一方、すごく大事な要素として考えていかなければいけないと思いま した。 (岩田委員長)  どうぞ。 (松浦委員)  私もこれを見させてもらって、最終的に保護費の減額又は保護の停廃止を考慮する と、こういう文言も入っていますから、今、根本委員が就労支援というふうに間違われ ておっしゃいましたが、自立支援ということは最終的には就労支援でしょう。ですか ら、中には親子二代、二世代に渡って生活保護から抜けきれないでいる人がいます。そ ういう人については、事情にもよりましょうが、かなり厳しいことも考えていかなけれ ばいけない。ですから、こういう文言が入っておるというのは、一つのやり方だろうと 思います。  それからもう一つ、社会貢献活動と書いてありますが、メニューをつくるときに、社 会貢献活動というのは、恐らくボランティアみたいな活動をするのでしょうが、周辺の 人たち、一緒に活動する人たちの立場といいましょうか、感覚といいましょうか、そう いうことも考えておかないといけないと思います。生活保護を受けて、ボランティアも なかろうがと、こういうようなことに感情的にとられると思うのです。口に出しては言 いませんが、中では、そういうような雰囲気があると思いますので、こういうことをや るときには、かなり慎重にやらないといけません。ただ、上辺だけがすらっと行ってし まうと、こういうようなことにも成りかねませんので、その2つです。 (岩田委員長)  最初に自立の定義ですが、これは以前にも何回かやりました。そのときに根本委員か ら社会福祉法の自立の定義を採用するのが一番リーズナブルだという意見がありまし た。これは課長さんよろしいですね。 (岡田保護課長)  いろいろなケースが実際にはあると思っています。例えば、高齢者とか障害者の方の 就労というのは現実的ではないと思います。ただ、やはり田中委員からも御指摘があり ましたが、年齢層が若い方については最終的には就労していただいて自立を目指してい くのが本筋だと思います。その方の事情によって、最終的には就労による自立までいか ないような方もいらっしゃるし、また、すぐ働けと言ってもなかなか働けないから段階 的にステップアップしていくという発想も必要だと思います。働く方については、最終 的には就労を目指す。先ほど京極先生から就労意欲についての御意見も出ましたが、就 労意欲を引き出していくという形でステップアップさせていく視点も必要なのではない かと考えております。こうした観点から、個々のケースによって、対応の仕方は違って くると考えております。 (岩田委員長)  社会福祉の他のサービスとはやや異なりまして、生活保護はやはり経済保障の制度で もあるので、「自立」といったときに、そういう広範なあるいは可変的な意味での自立 を定義するとしても、その中に経済的な自立、松浦委員や田中委員がおっしゃる生活保 護からの脱却ということはもちろん含まれていると考えざるを得ないと思います。ただ 恐らく最初から、生活保護の個別援助は、そのステップが一通りではないということが 含意されていたわけです。ただし、それがどこまでも個別的であると、福祉事務所のワ ーカー個人個人によって援助の仕方が違った場合には、すばらしい援助もあるが、もし かしてそうでない援助もあるかもしれないし、どこまでどう努力していいかがわからな い。どういうふうに意欲を出していいかわからない。そういう環境に今までいなかった という人たちをどうするかという意味で、積極的なこういうプログラムの位置づけがあ ると考えます。だから、ここでのプログラム提示はあくまで例示であって、もっと個別 性や地域性を加味したいろいろなプログラムを工夫して、そしてそれを個別計画に落し 込めるような資源として用意をしようという考えだと思います。個別は個別にプログラ ムを取り交わして見直しもかけていく、こういう趣旨だと思います。  ただ、現行の生活保護の利用者の中で、いわゆる就労自立に結びつく割合は極めて少 ないであろうと思います。恐らく先ほどのニートのようなケースも、今の制度では現実 的にはあり得ないわけです。唯一あり得るのは、さっき松浦委員がおっしゃった二世 代、三世代型といいますか、ちょうど子どもが中学、高校を卒業するときの指導です。 ここら辺は非常に大事だと思います。数としてもそんなにひとり親は多くないのです。 年齢構成からいっても圧倒的に50代以降であるということになると、恐らく社会貢献型 というのは、その辺に合致していくことになるだろうと思います。そのあたりが、先ほ ど言った可変的な労働能力の活用の見方とか、今、課長さんおっしゃった労働能力の活 用を引き出していくケースであると思います。今は労働能力を利用してできていない が、それを活用できるように、経済保障を片方である期間付けながらやっていくという ような、そこまで積極的にかなり踏み込んでいるように見えます。私も大変すばらしい と思っているのですが、これはかなりの英断で、このようになると、やはり入口の議論 がかなり重ね合わせられてきます。  例えば、先ほどの世代的再生産について、私の知っている例で言うと、中学を出たと きに自動的に生業扶助の就職支度金を出して切ってしまうというケースがあります。し かし、何もしないで生活保護を打ち切ってしまうものですから、何年かするとまた生活 保護に舞い戻ってくるという形の再生産も結構あると聞いています。ですから、むしろ 切らないで何かさせる。あるいは、そこが生活保護の受給より前からスタートする。こ れはどんなふうなイメージでしょうか。 (岡田保護課長)  いろいろなケースがあると思います。保護を開始するまでまだ資金があるから、しば らく貯金を活用してまた来てよというケースが現にあるという御指摘もあります。そう いう場合に、もうその時点で、例えば就労支援をするとか、保護に入る前にいろいろな 支援をすることによって、ちゃんと自立させるという取組も可能であると考えて提示さ せていただいたわけです。 (岩田委員長)  それは場合によって、経済給付として、例えば生業扶助のある部分を面接に行くとき の服装を整えるとか、交通費を出すとか、そういうことも含んで考えるのでしょうか。 (岡田保護課長)  私の印象としては、お金の問題よりも、むしろ、具体的な支援が十分できていない部 分が多いと思っています。具体的に就労支援として、例えば履歴書の書き方とか、面接 の受け方とか、そういう指導を被保護者に対してしている福祉事務所も実際にはあるわ けです。仕事がなかなか見つからないという方に、そういう指導をするということは十 分あり得ると考えています。  また、現実に公共職業安定所のOBの方を非常勤の就労相談員として配置していただ いている福祉事務所がありますが、「仕事が見つからない」という相談者に対して就労 指導員の方にいろいろと相談してやり方みたいなものを指導してもらうことによって、 保護の適用になる前に就職して自立につながげるというようなケースもあるというふう に聞いていますので、そういうようなことで現金で対応するというよりも、むしろそう いったいろんな具体的な支援というのが重要であるという印象を持っています。 (岩田委員長)  やっているところは、かなり法外のような使い方といいますか、法外というのも変な 言葉ですが、ああいう形で多少経済的な裏付けがないとできないかなというのと、例え ば相談に乗る方がどこまでが業務かというのがあります。もしも生活保護をつけないと なると、それは職安へ行けということだっていいわけです。職安の労働行政における指 導でもいいでしょうが、そこまできめ細かくないし、生活相談に来たのだから、やりま しょうというときに、そのあたりの期間をどういうふうに読むか、どこか頭出しして単 給で何か部分的でもかけるというような形で正規のお客さんとして見るということはあ り得ないのでしょうか。 (岡田保護課長)  そこは御議論があろうかと思いますが、例えば、しばらくこのままでいけばちょっと 危ないなというようなケースに、先ほどのような形で支援をするというようなことであ れば、今こういった自立支援プログラムというのが事務所なりに十分整っていない場合 に、ケースワーカーさんにそういう方が御相談に来られるときに、結局何を自分たちで していいのかがわからないことが多いと思うのです。ですから、こういうような支援の いろんな仕組み、プログラム、メニューみたいなものがそろうことによって、それを活 用して事前にこういうようなことをするということができるようになるのではないかな ということが1つあろうかなというふうに考えております。 (岩田委員長)  確かに資源があるというか、プログラムができていれば応用が効くということはあり ます。 (京極委員)  世代間のことで述べます。全体としては昔に比べて単身者が多いのです。私もかかわ ったのは、中国の残留孤児のことですが、相当年配の方で、向こうで多少仕事を持って いても日本で仕事が合わないので、しかも生活保護費が中国円に換算しますとすごく高 い額をもらっているわけで、こんな楽して国家から年金が下りているつもりで働かない 人が多いということもあります。ただ、問題は子どもたちあるいは孫たち、特に孫で す。この世代は、やっぱり教育だと思うのです。教育扶助をきちんとして、高校まで延 長すれば、かなりのところまで行ける。そのときに福祉事務所のケースワーカーさんが 生活指導するときに、誰に対してしているのか。親に対してしているのか、子どもはど うなるかとか、そういうときに、実際に家族といったって、それぞれ他人だというか、 違うわけで、場合によっては、せめて子どもだけでもという考え方でも、その子どもが ちゃんと勉強して将来自立して生活して、世代間の貧困の再生産をしないようにすると いうのはすごくいいことだし、また、なかなか現状では子どもまではいかないのではな いか。むしろ児童養護施設に入っていて、結構指導員の方がよく指導して、高校まで行 ってちゃんとした仕事に就くというのがいい例で、かえって生活保護をもらって居宅で やっている方の方が厳しいような気がするのです。数が少ないから、経済的な問題、財 政的な節減の問題というよりも、何か生活保護そのものの指導の在り方に問題はないの か。ちょっと私もよくわからないところがありますし、専門家じゃないので申し訳ない んですが。 (岩田委員長)  大川委員がさっき手を挙げられていましたので、大川委員、松浦委員の順序で。 (大川委員)  先ほど委員長がおっしゃった生活保護の対象の問題と、それからあと、松浦委員から も御指摘がありましたけれども、二世代、三世代の問題と両方の面があると思うのです が、今回の御提案、大変優れた処方せんかなというふうに思っているのですが、これが 一番効く人たちというのはどういう人かというのは、恐らく失業という状態に置かれて から、それほど時間が経っていなくて、それなりに就労意欲があり、就労能力のある方 にこういった支援をするということは非常に効果があるだろうなと思っています。  従来の生活保護というのは、入口のところで、稼働能力のところで大変厳しい見方が 主流でしたので、そういった意味で考えると、これを効果的に進めるためには、失業の 状態になってからできるだけ早い段階で、生活保護ですくい上げるという考え方に展開 していくという要素が入っているのではないかということを感じます。  さらに言うならば、資産の問題でも、これは前々から何回も繰り返しましたが、ある 程度の預貯金の余裕があるうちから、どのみちそれがなくなって生活保護になる前にこ ういった支援を出して、あるいは権利義務関係を明確にするという意味では、やはり私 は先ほども言いました単給とかという形で、法的な関係を維持しながら支援をする。単 に窓口でこういうのもあるかやってみたらみたいな形でもちょっと効果が上がるかどう か、その辺は疑問かと思います。ですので、そういった層も含めて生活保護の対象にし ていくというふうに考えてこの支援をつくると、実はそれ以外のさらに非常に厳しい状 況に置かれている人たちへの就労への追い風になっていくというふうに考えています。 それが1点。  あと、二世代、三世代の問題で、私も実はこの提案を読んでいて非常に気になったの は、学校とか教育の部分との連携というのがもう少し探れないかというのがあるので す。というのは、先ほど京極委員からちょっと御質問めいた御発言がありましたが、現 場のケースワーカーはやっぱり中学・高校のいわゆる進路指導になかなか入り込めない のです。というのは、学校の進路指導というのは、当然子どもの発達段階とか、教育の カリキュラムに沿ってやっていますので、私たちからすると、「まず中学卒業したらど うするの?」、「一応進学したい」、「じゃ、受験が終わって受かったら教えてくださ いね」という、そして受かればいいですが、残念ながらうまくいかなかったら、突然就 労指導に入らざるを得ない。そういった意味で学校先生と日ごろ連携をとりながら、中 学卒業後、あるいは高校卒業後の自立支援を考えているわけではなくて、結果うまくい ったら、だめだったらこうするというやり方になっているのです。  ですので、学校の中学就職、あるいは高校就職のいろんな支援システムも、長期の不 況の中でかなり崩れているというふうに聞いていますし、もっと言うならば、学校の先 生は、今ほんとに忙しくて、教室運営から不登校の子の対応、クラス運営、あるいはほ かにもいろんなごちゃごちゃで毎晩遅くまで走り回っている。私が仕事している地域で は、定期的に小中学校との連絡会というのをある地域に限定してやっているのですが、 やはりそこで課題となるのは、中学卒業後の進路の問題なのです。そこの中にかなりた くさんの、あるいは先ほど御指摘のあったような、親が保護世帯で、そのまま同じ地域 にいて保護世帯になっている非常に多問題を抱えた世帯が増えている。そういった世帯 をすぐにどうこうできるというほど実は簡単ではないのですが、ただそこにいる子ども たちに対して積極的な就労支援をしていくという意味でこれが使えないかと。そうした ときに、教育、学校との連携というのもう少しオーソライズされた形でシステムの中に 入れ込む必要があるのではないか。ですから、学校と福祉が協力をして、その子どもの 進路を考えていく。そういった意味で考えると、この間の論議で、高校の教育扶助を認 めるといったことも非常に大きな進歩になると思いますし、さらに言うならば、先ほど 委員長から指摘がありましたが、高校のアルバイト収入の収入認定問題とか、あるいは 世帯内就学の捉え方についても、この就労支援の視点から再検討をぜひしていただけれ ばというのが私の意見です。 (松浦委員)  私、これをずっと見ながら思うんですが、やはり最終的には景気がよくならぬとなか なか生活保護は減らないと思います。ただ、不景気なときに、税収も上がらぬときに生 活保護費がどんどん出ていくのも大変ですから、やはりそこにはさっきも一番初めてに 書いてあったように、減額も考えるというようなこともやらなきゃいかぬと思います。 そういうときに、システム的な対応と書いてありますけれども、こういうことでシステ ムとして対応していけるようにするためにも、自立のプログラムというものは一応もっ てやるべきだと思うのですね。そういう面では評価します。 (岩田委員長)  ですから、全く経済給付と自立支援というのが触れ合わないでというわけにはもちろ んいかない。ただ、先ほど石橋委員からの御意見は、その場合の手続が公正な形ででき ていないと非常に恣意的な形で、例えば職安へ行ったのか、行っていない、じゃ、だめ だみたいな、そういうやり方はまずいだろうということだと思うのです。  ですから、手続をきちっとつくって、このプログラムを生かしていくと。多分、大川 委員が言ったように、1つは、比較的若いひとり親世帯であるとか、あるいは今は病気 だけども、治った後とか、こういう期待が持てる場合の、就労に関する話です。就労じ ゃない場合はもちろんあらゆる人に、この場合は健康ということもあるし、やっぱり社 会的なつながりだと思うのです。だから、さっきのボランティアもそうですが、いきな りボランティアでもないだろうという感情が出るのは私もよくわかります。わかります が、逆にそういう形ででも社会と触れ合っていかないと被保護層という特殊な層ができ てしまう。それは社会にとって決してよくないことで、しかも長期にここで固定しまう というようなことを避けようと。財政状態が悪い、不況だから、当然保護申請者が増え るという状況を切り開いていくのは短期にみんなで使うという制度にどうやってしてい くかということだと思うのです。そのためには、長期的な二世代、三世代利用を打ち切 るといいますか、若い人になるべくもっといい選択枝をそこで用意する。今回は今の利 用者では非常に少ないかもしれないが、子どもに一つの照準を当てていく。教育扶助を かなり変えようということで合意を見ていますので、自立支援の特に就労のところは教 育扶助と連動させて、学校と連動させて、子どもの自立、あるいはステップアップのた めの選択枝を生活保護の枠の中でも用意しようというような形が1つあるのではないか と思います。  あとは、その状況に応じてということになりますし、入口をどういうふうにここで連 動させるか。これもかなり段階的で、単給をうまく使っていく方がいいのではないかと 思っているのですが。入口・出口のところは人によっては生業扶助だけでくっついてい る期間が半年ぐらい両方あるというような、そういう使い方ができないのでしょうか。 そういうふうにすると、保護世帯そのものは、一見増えるように見えるものの、費用は 節約できる可能性は非常に高いし、さっき言ったように、モラールが全体として上がっ てくるということはあり得ます。そういう道があるのだということが利用者にもわかっ てくる、あるいは特にワーカーがわかってくるのは大変ですけれども、ステップアップ の援助ができるということが少し納得してもらわないと、これまでのように割合長く抱 えちゃうというか、入口をぎゅっと閉めて抱えちゃう方式からの転換ということですの で、最初と最後の、さっき課長さんが言われたような方向もあると思うのです。相談に 来た方を広い意味の福祉の資源として紹介するというのは、これはもちろんあり得ると 思うのですが、その中の幾つかのケースは、生業扶助の「生業」という言葉もちょっと 変えた方がいいかもしれませんが、自立支援扶助でも名称は何でもいいですが、そこの 何かの部分だけ単給をかけていく。今、法外援助という形でやっているので、すごく地 域格差が多いわけです。その法外めぐって、これも論点の一つになりましたが、要する に地域を移動させられるという傾向があるわけです、あっち行けこっち行けみたいな。 ですから、プログラムを地域型で開発していくときのネックはそこにありますので、私 の意見としては、公式の生活保護に部分的でもいいからかけた方がよいと思います。医 療扶助でも結構です、最初は医療扶助だけかけるというのはやりますから。あれもちょ っと変は変ですけど、後ろではありますよね。前はちょっと変な感じがします。 (大川委員)  今お話のあった自立支援と別に、生活保護を単給でというのは論議として既に出され ていて、かつ論点がそれぞれ温度差といいますか、意見の違いとして出たまま残されて いますが、私はそのどちらをとるかは別として、その辺を整理しないと、この自立支援 システムというのが有効に機能しないように思うのです。ですので、とりあえず、どち らの方法でいくのかということを、次回少し時間をとって論点の整理をして、メリット ・デメリットを押さえ上で専門委員会のまとめを出すという形にしたいと思います。 (岩田委員長)  まず京極委員。 (京極委員)  入口と出口はやっぱり関係しているので、私は保護を受けている方をどうするかとい うのは、もちろん行政的には大きな問題ですが、全体の制度として考えたときに入口を どうするかというのは大事だと思います。そのとき、さっき契約問題とかいろいろあり ましたが、生活保護の基本理念の理解が、最低限保障するということにかなり軸足を置 いちゃって、可能性があれば少しは経済的な方にということなのか、そういう人が大分 増えてきたことは事実なので、戦後の失業とか、仕事がないという時代は過ぎたので、 逆になかなか働きにくい人たちが増えていることも事実です。同じウエートで左右持つ のか、これを見ていると、もう少し軸足を自立助長というところに置くのか、それで大 分違ってくると思うので、それは法の趣旨そのものなのか法解釈を現代的にどう理解し て、国民生活の実態に合わせて、国民の意識に合わせてしていくかということなので、 私は正直言いますと、やや自立に軸足を置くような方向で考えるべきだと思います。生 活保護だけで全部見るんじゃなくて、他の施策も非常に発展してきておりますから、そ ういうものをなるべく活用してというような意識が強いのです。もちろんケース・バイ ・ケースでそうもいかない人たちもたくさんいるということは重々承知していますけ ど、その辺のところの理解が報告書をまとめるときに、こういう意見もある、こういう 意見もあるということではまとまらないので。 (岩田委員長)  そうですね。ですから、それはある条件によるのではないかと思うのです。入口の条 件を非常に厳しくして、いわば合格ということになると、合格したのだから出なくても いいやということにだってなりかねないといいますか、お互い福祉事務所もほっとして しまいます。つまりそこですべて。つまり入口ですべてになってしまう。だけど、そう じゃなく、入口のところで、さっき言った可変的な要素をかなり踏み込んだ運用をしま すと、これは自立に軸足をのせないと制度が回っていかないし、むしろ、そこから何を やるかということがお互いに問われてくるということになります。今貧しいために、公 的な援助が出るものの、それを利用して、こういうふうに自立していこうねという契約 に移していけると思うのですが、それは私はやっぱりセットで考えざるを得ないのでは ないかと思っております。ですから、京極委員のおっしゃったようなことがあると思う ので、多分そこが問われると思うのです。この委員会のトーンといいますか、それをど ういうふうに生活保護を21世紀に向けて変えていくかというときのトーンをどういうふ うに出すか。この意見もあった、この意見もあったでは済まないと思うのです。ある種 どっちに行くかという、ここは最終的には、どこまでまとまるかわかりませんが、何か はっきりした方向は出せたらというふうに思います。  田中委員どうぞ。 (田中委員)  ちょっと気になるんですが、1ページに、例えば経済的な給付だけではかなり限界が あると。いろんな加算なり、こういう制度を利用して給付の問題をやる場合に、しかし それでもここに書いてありますように、経済的な給付のみでは限界があるとはっきりお っしゃっておられます。一方で2ページの自立支援計画の中で、例えば、これは真面目 に取り組んでいないとか、あるいはちょっと悪質であるとか、そうなった場合に、こう いう判断をした場合に、ここには最終的には保護費の減額又は保護の停止等を考慮する とあります。確かに給付だけでもなかなか限界があるわけですが、一方、こういう減額 とか、あるいは停止とかという判断のもとでやった場合、果してそれが第一線の実施機 関の方々が一層また問題を、かなり深刻な問題を抱え込んでしまうんじゃないかなと、 そこら辺は基準をきちんとやるとか、相当しっかりとした細かい配慮のもとで実施をし ていかないと、現場がさらに混乱してしまうようなことになりはしないかというのはち ょっと気になるところです。 (岩田委員長)  どうぞ。 (松浦委員)  今おっしゃったとおりで、9ページのところに自立支援プログラムの実施体制とあり ます。そこに「地方自治体による自立支援プログラムの支援メニュー策定・実施に当た っては」と書いてあるわけですが、プログラムをつくるのは、地方自治体が作成するの でしょうか。これは、私も困った見方をして申し訳ないですが、保護費の減額や保護の 停止ということになりますと、自立支援のプログラムのメニューをつくりあらゆる手を 打ちました、その上でこう減額するということに多分なるでしょう。そのためには、や はり私は地方自治体がつくるというのはごく限られた部分であって、全国的にきちんと した、ひょっとしたら裁判にもなりかねませんから、それに耐えられるようなものは、 一応基準と国でつくっておかないといかぬように思います。 (岩田委員長)  そこが繰り返しの論点になるところです。経済給付もさることながら、もしも自立支 援に軸足をもう一つ置くということになったときに、いかにも自治体向きのサービスで あるかのように見えるのですが、そこが切り離せないとなると、これは前にも議論した ように、全国的な国の制度としての生活保護と各自治体における工夫という間に、つま り前に八田委員がおっしゃったように、いいプログラムをつくればつくるほど、自治体 にとってはあまり好ましくない結果になるかもしれないので、やらなくなるのではない かという議論もあったように非常に難しい要素があります。ですから、そうなると自治 体とは何か、自治体のレベルの話になります。基礎自治体なのか、それとも都道府県レ ベル、せいぜいそのあたりが一つの中心になって生活保護に関してはやって、実施は市 がやるにしても、都道府県レベルがやっていく、あるいは国がある基準を出していくと いう、ここはそう単純に、全部が自治体にいくかどうかというのは生活保護制度につい てはなかなか難しいところがあります。ですから、ここも最終的には、この委員会が今 後生活保護制度のこうした改革を、特に運用をどういうふうにやっていくかというとき に、自治体というふうにいったとき、一体どこを指して言うのか、あるいはどういう裁 量が望まれているのか。特に福祉事務所単位の様々なやり方は、前、田中委員がおっし ゃっているように、なかなか移管等の問題も含めて難しい、つまり生活保護世帯を歓迎 しないという、率直言いますと、そういうことが現実にはあるわけです。ですから、そ のことも含めてどういうふうに考えていくかというのを、一応の委員会としての方向と いうのは出しておいて、もちろん異論はあると思いますので、あれば併記というような 形でまとめていきたいと思います。  今日の自立支援プログラムについては、ここまで今まで踏み込んで自立支援をやって いこうと積極的に考えたのは初めてだと思うのです。個々にはもちろん、これまでもい ろいろやられて、いい実践をしてこられた福祉事務所やワーカーの方たちがたくさんい らっしゃると思いますが、ここまでいろいろ考えて提示したというのは初めてで、その ことは恐らく委員の皆さん方、大変高い評価で今日は一致したと思うのですが、それだ けに、ここでの生活保護の改善方向のかなり中心といいますか、トーンと絡んで一体ど ういうふうに自立支援を考えるか、経済給付との関係、その前提条件をどういうふうに 考えていくか、特に入口のところや生活保護制度の利用の仕方が議論となります。それ は保護施設の問題も当然、自立支援の中でどういうふうに性格を位置づけていくかとい うような全体的な問題とかなり連動していきますので、その辺を少しまた、全体的な論 点整理の中に反映させていただいてまとめたものをまた次回議論するというふうにした いと思います。  仮に自立支援をこのように可変的な労働能力の活用というふうに持っていくとする と、入口だけそれと切り離すということもなかなか難しくなるので、入口のところはど ういうふうに考えるのか、資産も3か月というふうに申し上げましたが、もしもそれが 多いとなれば一体幾らぐらいが妥当なのか、それとも、それはここでは議論できないの か、一方、生活保護の実施責任レベルの問題はどうするのか、つまり市あるいは都道府 県それぞれの責任がどういうところにあり国が一体何をするのかについてもうちょっと 議論していただかないと少し報告書までにこぎつけないと思いますので、あとまだちょ っとあるのかもしれませんけれども、次回それらを含めて議論していただきまして、起 草委員会が一応お認めていただいていますので、また仕切り直しになりますけれども、 そちらで詰めたものを最終的にここで議論していただくというふうにしたいと思いま す。  何かほかにございますか。 (布川委員)  あと2回ということですか。 (岩田委員長)  そうですね。一応。 (岡田保護課長)  月1回と考えると、11月に終わるとなると、あと10月と11月かなということでイメー ジ申し上げたのですが、その中での議論で、もう少し回数を増やした方がいいというこ とであれば、また対応することになろうと思います。 (布川委員)  次回でも問題ないということでしょうか。 (岩田委員長)  要するに終わるということはないですが、ただ、実質的にいつまでもまとめができな いというのも困るので、一応次回10月27日かな、次回で今日の続きや今日出てもうちょ っと詰めた方がいいことや、あるいは新しい御提案があるかもしれませんので、それに ついて議論をして、そして論点をまた幾つか少しまとめたのを提示していただいた上 で、起草委員会の方で練ったものでお出しするという、場合によって回数はあれだと思 うのですが。でも、そういつまでもということです。  よろしいでしょうか、何か最後、御発言ございますか。 (後藤委員)  遅れてきてしまったので、今までの議論と、もしかしたらダブるところがあるかもし れませんが、率直に言いまして、今朝の日経新聞に取り上げられた生活保護のあの記 事、ああいうものに対して、私たちはきちんと発言していく必要があるというふうに感 じています。もう既になされた議論でしたらすみません。あの中には明確に罰則を、ペ ナルティということを行って、そして就労支援スタンスを組んでいくというふうに書い てありますが、それはまず最初に書くべきことでは決してありません。むしろ今までの 議論の中で出てきたように、就労意欲すら持てない状況にあるとしたら、その意欲をど う支えていくかということも含めた所得保障をきちんとするということをまず書くべき であったというふうに思います。  以上です。 (岩田委員長)  ペナルティ等の関係では、やっぱり手続問題等々、かなりデリケートな問題があると いう議論はしましたし、そう簡単にバーターになるかどうかという議論もしたのです が、やっぱり現実には具体論になりますので、具体的にどうやっていくかです。これは 今後の踏み切り方だと思います。ですから、絵に描いた餅じゃなくて、現実的にできる ようにするためのステップをきちんと踏んでいかなきゃなりませんので、せっかくここ までいろいろないいアイディが出ていますので、つぶさないようにうまいことやってい けたらというふうに思います。もちろん現実はなかなか厳しくて、松浦委員はらはらし ていらっしゃるのはよくわかりますけれど、ですから、現実論としてもできるようなも のでありたいというふうに思います。地方自治体ますます責任が大きくなるとは思いま す。 (後藤委員)  現実論に関して、本日いただいた資料の中で10ページのニューヨークとグッドウィル インダスタリーズの資料、非常におもしろいというふうに思って、私もこれの関係を調 べてみました。アメリカという国はいろいろ悪いところもたくさんあるし、TANF (貧困家庭一時扶助制度)自体も非常に厳しいものではあり、その意味で公的扶助シス テムは非常に厳しいものではあるのですが、ひるがえってみると、市民たちの活動とい うものがものすごく幅広く手厚くなされている。このグッドウィルインダスタリーズと いうのも、まさに就労支援を支えるためのファンドをどうやって自分たちでつくってい くか、市民たちのリサイクルをした売り上げであるとか、あるいは様々な寄付であると か、募金であるとか、そういうものを元にして、どうやって運営していくかというベー スがあります。このほかにも、イサカ市なんかで地域通貨を使って自分たちで地域保険 組合をつくっている。そういう就労を創出し、なおかつ動かしていくに必要なファンド を自分たちでつくっていくという市民活動をどうバックアップしながら就労支援を進め ていくかということが恐らく基本になってくると思います。すぐに日本にこれを持って これるかというと厳しいので、移行過程においては、やはりパブリックなグラント(補 助金)がある程度、まだまだ日本の場合は必要ではないかと思うんです。  以上です。 (岩田委員長)  よろしいでしょうか。それでは、時間になりましたので、本日の議論はここまでとい うふうにさせていただきます。  それでは、次回以降の日程についてよろしくどうぞ。 (事務局)  先ほど岩田委員長の方からも御紹介がございましたとおり、次回の委員会につきまし ては、10月27日水曜日午前10時から12時まで、同じ部屋ですけれども、厚生労働省7階 専用第15会議室にて開催を予定しております。詳細につきましては、追って御連絡を差 し上げたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。 (岩田委員長)  それでは、これをもって本日の委員会は終了いたします。どうもありがとうございま した。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)