04/09/21 最低賃金制度のあり方に関する研究会第1回議事録          第1回最低賃金制度のあり方に関する研究会議事録                         日時 平成16年9月21日(火)                            10:00〜11:50                         場所 厚生労働省専用第21会議室 ○前田賃金時間課長  定刻となりましたので、ただ今から第1回最低賃金制度のあり方に関する研究会を開 催いたします。本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。私 は、厚生労働省労働基準局賃金時間課長の前田です。本研究会の進行につきましては、 座長が選出されるまでの間、私が務めさせていただきます。まず、事務局を代表して労 働基準局長の青木から挨拶をいたします。 ○青木労働基準局長  おはようございます。参集者の皆様方においては、大変お忙しいところをこの研究会 の参集者にご就任いただき、また、お集まりいただき、誠にありがとうございます。  ご承知のとおり、昭和34年に最低賃金法が制定され、その後昭和43年に法改正が、昭 和51年には地域別最低賃金が全都道府県に設定されました。それ以降、目安制度の改 善、産業別最低賃金制度の再編等、運用面において着実に改善が行われてきたと思って おります。  しかしながら、近年、労働者や労使関係を取り巻く環境の変化、あるいはサービス経 済化等により産業構造が変化し、最低賃金制度を取り巻く状況が変化してまいりまし た。また、産業別最低賃金については各方面からいろいろな指摘も受けています。この ため、今後、最低賃金制度が一層的確に機能していくよう現行制度を検証し、制度のあ り方について検討することが必要ではないかと考えております。そこで皆様にご議論を お願いしたいわけです。ここでの議論が実り多きものとなりますよう、格段のご配慮を お願い申し上げたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  資料の確認をお願いいたします。1枚目が座席表です。その次に議事次第があり、資 料項目を記載しております。資料1が最低賃金制度のあり方に関する研究会開催要綱で す。資料2が最低賃金制度のあり方に関する研究会参集者名簿です。資料3が会議の公 開の取扱いについて、資料4が今後の進め方について、資料5が最低賃金制度の概要、 資料6が最低賃金制度の変遷、資料7が最低賃金制度の現状、資料8が最低賃金制度の あり方に関する指摘、ここまでが今回配付された資料です。併せて机上に「最低賃金決 定要覧平成16年度版」という冊子を参考で毎回用意したいと思っております。  本日は第1回目の会合ですので、まず参集者の方々を紹介させていただきます。学習 院大学の今野教授、京都府立大学の奥田助教授、学習院大学の橋本助教授、慶應義塾大 学の樋口教授、中央大学の古郡教授、専修大学の渡辺教授です。このほかに同志社大学 の石田光男教授、大阪大学の大竹文雄教授にもこの研究会のメンバーとしてお願いして おりますが、本日は所用で欠席です。  厚生労働省側からは、先ほど挨拶を申し上げた労働基準局長のほか、審議官の橋、 総務課長の尾澤、そして私、賃金時間課長の前田、主任中央賃金指導官の上岡、副主任 中央賃金指導官の山口、課長補佐の梶野が出席しております。  続いて座長の選出ですが、それに当たって参集者の皆様にお諮りしたいと思います。 事務局としては樋口教授に座長をお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○前田賃金時間課長 今後の議事進行は樋口座長のほうでお願いしたいと思います。樋口教授、座長席にお移 りください。               (樋口座長、移動・着席) ○樋口座長  ご指名ですので議事進行役をさせていただきたいと思います。皆様のご協力をよろし くお願いいたします。  議事に入る前に、研究会の開催に当たり、会議の公開等についてどのような扱い方を するか、事務局から説明をお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  資料3「会議の公開の取扱いについて(案)」をご覧いただきたいと思います。基本 的に、この会議及び議事録、資料を公開とすることとしたいと考えております。「ただ し」ということで個人情報を保護する必要等を4点掲げており、その場合には非公開と することができることとするということですが、これは一般的な研究会と並びです。原 則としてこの会議、議事録、資料等は公開ということでお願いしたいと思います。 ○樋口座長  ただ今の説明について、質問や意見があったらお願いいたします。よろしいようです ので、会議の公開については、ただ今事務局から説明があったとおりにさせていただき ます。  研究会の目的及び今後の進め方について、事務局から説明をお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  本研究会の開催目的ということで、資料1の開催要綱をご覧ください。1でこの研究 会の趣旨・目的を記載しております。  最低賃金制度については、先ほど労働基準局長からも話があったように、最低賃金法 が昭和43年に改正され、それで骨格が形成されました。以後運用面においてさまざまな 改善が図られてきました。  この間、我が国社会経済が大きな変化を遂げ、最低賃金制度の定着状況は向上したわ けですが、一方、産業構造の変化や就業形態の多様化等、これまでにないような変化が 見られました。  産業別最低賃金制度のあり方については、規制改革・民間開放推進3か年計画におい ても指摘を受けておりますし、これまで、中央最低賃金審議会においても数度にわたっ て議論がされているところです。こういう変化に対応して、今後の労働市場の中で、最 低賃金制度が一層的確に機能していくように現行制度を検証し、あるべき姿を明らかに するという趣旨でこの研究会を開催させていただきたいということです。  2に検討事項を大きく3点掲げております。1番目が、現在の最低賃金制度が労働市 場においてどのような機能を果たしているか。2番目に、セーフティーネットとしての 最低賃金制度のあり方について。3番目に、産業別最低賃金制度のあり方を含む最低賃 金制度の体系のあり方、この3点について検討していただきたいわけです。  運営については、先ほどお諮りしたように、原則として公開で行っていきます。以上 がこの研究会の趣旨・目的です。  今後の進め方については、資料4をご覧ください。本日は第1回の研究会ということ で、主に我が国の最低賃金制度の概要や現状について説明したいと思っております。次 回以降は、最低賃金制度が労働市場等へどのような影響を与えているか、諸外国の最低 賃金に関わる制度がどうなっているか、それから、労使や学識経験者からのヒアリング を何回か行ったらどうかと考えております。その上で年内にある程度論点を整理してい ただき、年明けからそれぞれについてあり方を検討していただき、できれば来年春にこ の研究会としての報告書を取りまとめていただければと考えております。 ○樋口座長  ただ今説明のあった研究会の趣旨、目的、進め方等について質問や意見があればお願 いいたします。皆さんに十分ご理解いただけているということでよろしいでしょうか。 それでは、まず最低賃金制度の現状について事務局から説明していただき、その後自由 討議をしたいと思います。事務局、よろしくお願いいたします。 ○前田賃金時間課長  資料5、現在の我が国の最低賃金制度の概要をご覧いただきたいと思います。併せ て、要覧の164頁以下に現在の最低賃金法の条文が載っておりますので参照していただ きたいと思います。  大項目の1は最低賃金制度の趣旨・目的です。最低賃金制度は、一般的には国が法的 な強制力をもって賃金の最低額を定め、使用者は、その金額以上の賃金を労働者に支払 わねばならないという制度です。  最低賃金法は、その第1条において目的を定めております。「賃金の低廉な労働者に ついて、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することによ り、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業 の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的と する」と規定しています。  「賃金の低廉な労働者について」が1つ、「事業、職業、地域」の3つが定め方とい う意味で目的では規定されています。それに応じて賃金の最低額を保障することによ り、一義的には労働条件の改善を図る。「もって」で、労働者の生活の安定、労働力の 質的向上、事業の公正な競争の確保という3つの目的を規定しています。そして最終的 な目的が、国民経済の健全な発展に寄与するということになっています。  2番目は最低賃金の決定方式と設定方式です。現在の我が国の最低賃金の決定方式 は、大きく2つあります。1つは最低賃金審議会の調査審議に基づくものです。これは 最低賃金法第16条の規定に基づくもので、一般に「審議会方式」と言われています。も う1つが、「労働協約拡張適用」によるものです。これは最低賃金法第11条で定められ ている「一定の地域内の同種の労働者を対象とする労働協約は拡張適用する」という規 定に基づくものです。  決定方式の1つ目「最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金」は、現在我が国に おいて296件設定されています。厚生労働大臣又は都道府県労働局長が必要があると認 めるときに、最低賃金審議会に調査審議を求め、その意見を聞いて決定するというもの です。  設定方式で見ると、地域別、産業別、職種別という3つがあり得るわけですが、現在 はこのうち、地域別最低賃金と産業別最低賃金の2つが定められているところです。  地域別最低賃金は、各都道府県ごとに「○○県最低賃金」という形で定められてお り、現在当然のこととして47あります。産業や職業を問わず、原則として、その都道府 県内の事業場で働くすべての労働者、また、労働者を1人でも雇っている使用者に適用 されるものです。現在、適用労働者で見ると約5,000万人が適用されており、47都道府 県の加重平均の時間額が664円になっています。  大きな2番目が産業別最低賃金です。これは一般的には、都道府県の特定の産業ごと に「○○県○○業最低賃金」といった形で定められており、現在のところ、そういった ものが248件あります。それに全国を対象とするものとして、非金属鉱業の最低賃金が 現在1件だけあり、全体で249件設定されております。カバーされる労働者が約400万 人。その加重平均を時間額で見ると756円です。  産業別最低賃金については、後ほど変遷の中で詳しく申し上げますが、昭和56年7月 29日及び昭和61年2月14日の中央最低賃金審議会の答申において、関係労使が労働条件 の向上又は事業の公正競争の確保という2つの観点から、地域別の最低賃金よりも高い 水準の最低賃金を必要と認めたものについて、設定することとされております。これを 「新産業別最低賃金」と呼んでおり、これが現在246件設定されています。なお、それ 以前のものを「旧産業別最低賃金」と呼んでいるわけですが、これについては、新産業 別最低賃金に転換したもの以外は、平成元年度以降改正しないことになっており、地域 別最低賃金の金額水準を下回った段階で随時廃止されており、現在は3件が残っている のみです。  決定方式の大きな2番目が、「労働協約拡張方式」に基づく最低賃金ですが、これは 現在2件設定されているのみで、適用労働者数も500人ぐらいです。今、滋賀県の塗料 の製造業と広島県の同様の産業について設定されているということで、加重平均が、時 間額で868円です。  労働協約の拡張方式の要件は、一定地域内の同種の労働者及びその使用者の大部分 (3分の2程度と法律上解釈されている)に賃金の最低額に関する労働協約が適用され ている場合で、その労働協約の締結当事者である労働組合又は使用者の全部の合意によ る申請があったときに、厚生労働大臣又は都道府県労働局長が最低賃金審議会の意見を 聞いて最低賃金として決定する、というものです。以上が最低賃金の決定方式と設定方 式です。  大項目3番目の最低賃金の決定基準ですが、最低賃金法の第3条に、最低賃金の原則 として、労働者の生計維持、類似の労働者の賃金、通常の事業の支払能力、この3つの 要素を総合的に勘案して定めるとなっています。  大項目の4は最低賃金額の改定です。地域別最低賃金については、昭和53年度から、 全国的な整合性を図るという観点から、毎年、中央最低賃金審議会において金額改定の ための引上げ額の目安を提示し、地方最低賃金審議会において、その目安を参考としな がら、地域の実情に応じた地域別最低賃金額改正のための審議を行っています。  産業別最低賃金については、最低賃金法第16条第4号で、労働者又は使用者の全部又 は一部を代表する者が申出を行うことができる、という規定があります。その規定に基 づいて労働者又使用者の全部又は一部を代表する者の申出に基づいて、最低賃金審議会 が必要と認めた場合に、最低賃金審議会の調査審議を経て改正が行われることになって います。  大項目の5は最低賃金の対象となる賃金です。最低賃金法の第5条等において、最低 賃金の対象となる賃金を定めております。そして(1)〜(6)に掲げる賃金は、最低賃金の 対象から外されるというものです。1つ目が臨時に支払われる賃金で、結婚手当などで す。2つ目は1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金で賞与などです。3つ目が所定 労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金で、時間外労働に対する賃金。4 つ目が所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金で、休日労働に対する賃金。 5つ目が深夜労働に対して支払われる賃金で、通常の労働時間の賃金の計算額を超える 部分、いわゆる深夜の割増賃金です。6つ目が当該最低賃金において算入しないことを 定める賃金と規定されております。現在の最低賃金においては、いずれの最低賃金にお いても精皆勤手当、通勤手当、家族手当の3つは最低賃金に算入しないと定めておりま す。  大項目の6は最低賃金の表示単位です。現行で、すべての地域別最低賃金は時間額の みで決定されております。産業別最低賃金も、ほとんどは時間額のみですが、一部従前 どおり、日額と時間額両方で決定されているものがあります。実際に支払われる賃金が 最低賃金額以上になっているかどうかをみる場合に、時間給の場合、日給の場合、月給 の場合とあります。時間給の場合は、当然、時間額で最低賃金が定められているので、 それを上回っているかどうか。日給制の場合には、日給を1日の所定労働時間で割った 金額が最低賃金の時間額を上回っているか。ただし、日額が定められている場合には、 その日給が最低賃金の日額を上回っていることが必要です。月給制の場合には、賃金を 「時間当たりの金額」に換算して最低賃金の時間額と比較する。そのようなことで最低 賃金以上となっているかどうかをみるものです。  大項目の7は最低賃金が適用される労働者及び使用者についてです。現在の最低賃金 は、原則として、事業場で働くすべての労働者に適用されるということで、常用とか臨 時とかパートとかということを問わずに、すべての労働者に適用されます。そして、労 働者を1人でも使用しているすべての使用者にも適用されます。ただし、一般の労働者 と労働能力がかなり異なるということで、最低賃金を一律に適用することが必ずしも適 当ではないという者については、都道府県労働局長の許可を条件として、個別に適用除 外することが、最低賃金法の第8条等で認められています。  適用除外の対象は6つ規定されています。(1)は精神又は身体の障害により著しく労 働能力の低い者で、精神障害と身体障害のある方です。(2)が試用期間中の者。(3)が認 定職業訓練を受ける者のうち一定の者。(4)が所定労働時間が特に短い者です。これは、 特に日額で最低賃金を定める場合に、所定労働時間が特に短い者を除くという形がある わけですが、現在、時間額で表示されている場合には、ほとんどこれが問題になること はありません。(5)が軽易な業務に従事する者、(6)が断続的労働に従事する者。この6 つについて、許可を条件として適用除外が認められています。  大項目の8は最低賃金の効力です。最低賃金法第5条第1項で、「使用者は労働者に 対して最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」としています。仮に最低賃金 額以上の賃金を支払わなかった場合に、最低賃金法第44条で、この法第5条第1項違反 で2万円以下の罰金が課せられることになっています。以上が刑事的な効力です。  民事的な効力として、最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約は無効とされてい ます。また、無効とされた部分については、最低賃金と同様の定めをしたものとみなさ れ、民事的にもそういう契約をしたものとみなされるということが、最低賃金法第5条 第2項で定められています。  最低賃金の競合があり得るということで、最低賃金法第7条で、労働者が2つ以上の 最低賃金の適用を受ける場合には、そのうち最高のものによると定められています。  5頁は最低賃金の現在の決定手続の概要です。(1)が最低賃金審議会の調査審議に 基づく最低賃金で、大きくイの地域別最低賃金とロの新産業別最低賃金に分かれていま す。イについては、都道府県労働局長が諮問を行い、それに基づいて地方の最低賃金審 議会において調査審議を行う。その際に労使から意見書の提出や関係労使の意見聴取が なされ、地方最低賃金審議会において答申が出される。それについて公示をした後、労 使から異議の申出という手続が規定されております。それを受けた上で、最低賃金審議 会の意見を経て都道府県労働局長が最低賃金を決定して公示する。公示から一定期間後 に効力が発生するという手続です。  その下の新産業別最低賃金ですが、いちばん左上に「決定の申出」とあります。労働 者又は使用者が決定の申出を行い、それを受けて都道府県労働局長が、まず設定の必要 性があるかどうかについて諮問を行う。それを受けて最低賃金審議会で、まず設定の必 要性があるかどうかについて審議を行う。その際、関係労使の意見を聴取し、必要性の 答申を地方最低賃金審議会で行う。それを受けて更に都道府県労働局長が、実際に最低 賃金の金額をどうするかについて諮問を行い、再度地方最低賃金審議会において調査審 議をした上で答申が出される。それを公示し、更に異議申出の手続を経た上で都道府県 労働局長が決定して決定の公示を行い、その後一定期間の経過によって効力を発するも のです。  いちばん下が「労働協約の拡張方式」に基づく最低賃金です。これについても、労働 者又は使用者が決定の申請を行います。それについて公示を行い、異議の申出が手続と して規定されています。その後都道府県労働局長が諮問し、地方最低賃金審議会におけ る審議・答申を経て都道府県労働局長が決定する。これも、それを公示して一定期間後 に効力を発生するということです。  6頁が時期を含めた実際の流れです。中央最低賃金審議会においては、地域別最低賃 金の目安審議を毎年5月ごろ諮問し、6から7月に調査審議した上で7月下旬に答申を 出して目安を提示します。  地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金について、まず4から5月ごろ諮問 した上で6月から調査審議を行う。その間、中央最低賃金審議会の目安が7月に提示さ れるということも受けて、それも参考としつつ審議を行い、8月上中旬に大体地域別の 最低賃金についての答申が出され決定される。そして、毎年9月末〜10月初めに効力を 発生するといった流れになっています。  産業別最低賃金については、地域別よりも若干後で手続が行われます。毎年6から7 月に労使からの申出があり、7から8月に必要性についての諮問・審議・答申が行われ ます。それを受けて更に具体的な諮問が8月に行われ、9から10月に調査審議・答申が 出されるという場合が一般的です。以上が現在の最低賃金制度の概要です。  資料6をご覧ください。先ほど、我が国の最低賃金制度の現在の概要を説明いたしま したが、これまでの我が国における最低賃金制度の変遷について取りまとめたものが資 料6です。いちばん左の欄が主な法令の制定・改正等、真ん中の欄が中央最低賃金審議 会(最低賃金法制定以前は中央賃金審議会)の答申に基づく具体的な取組等、いちばん 右がその他の動きということで整理させていただきました。  1頁をご覧ください。我が国における最低賃金制度の最初は、昭和22年に制定された 労働基準法の中の最低賃金に関する規定です。労働基準法第28から31条に、最低賃金に 関する規定があったということです。  主な内容は、一定の事業又は職業の労働者について最低賃金を定めることができる。 その際に、賃金審議会の調査・意見を求めるといったようなことが規定されていまし た。  労働基準法の制定当初は、戦後のインフレ等による混乱あるいは疲弊ということで、 直ちに具体的な措置はとられませんでした。  その後インフレがある程度終息し、経済が安定した状況の中で、昭和25年に、労働基 準法に基づく中央賃金審議会というものが設けられ、昭和25年11月に最初の審議会が開 催されました。そこで最低賃金についての取組を議論していったということですが、昭 和26年7月の中央賃金審議会の決定事項というものがあります。  その主な内容は大きく2つあります。1つは、最低賃金は一般産業の労働者を対象と するものと、それを適用することが困難な低賃金業種の労働者を対象とするものの二本 立てを原則とするということでした。ただし、(2)にあるように、一般産業の労働者 の最低賃金についてはなお慎重な検討が必要であるということで、さしあたり、低賃金 労働者に対する最低賃金を設定するという方向性がこのとき決定されたわけです。それ に基づいて低賃金産業の概況調査等を実施し、とりあえず対象業種として11業種を選定 した上で、更に4業種に絞ってその設定を検討していったわけです。  その結果昭和29年5月に、中央最低賃金審議会で最低賃金制に関する答申が出されて おります。(1)は先ほどと同様のことで、原則としては一般労働者を対象とするもの と、低賃金を対象とするものの二本立てであるが、さしあたり低賃金労働者を対象とす る最低賃金制を実施すべきということで、ここにある絹人絹織物製造業、家具建具製造 業、玉糸座繰生糸製造業および手すき和紙製造業の4つについて最低賃金制を実施すべ きであるということが答申されました。  (2)はその際当面、当該業種の成年単身労働者の最低生活費とその業種の賃金支払 能力を合わせて考慮したものを基準とすべきであるとしています。2頁では、その最低 賃金は地域別、職種別、年齢別に設定すべきであるとしております。  (3)はこの4業種に対する最低賃金制の実施に当たっては、実効性ある措置の実現 と見合って決めるべきであるとしています。実効性ある措置というのは、いわゆる中小 企業対策、特別融資や減免税等の優遇措置を併せて実施すべきであるということです が、4業種のみに限って特別な優遇措置を設けるということが、ほかの業種との均衡上 許されず、最低賃金制の実施も困難であるということから、この答申は実現に至りませ んでした。  その後、最低賃金制度をめぐって労使あるいは政党で様々な議論がなされ、昭和30年 前後に、各政党や労働組合が最低賃金法案を発表する等、最低賃金に関する一般の関心 が高まりつつあったという状況です。  その中で、昭和31年に静岡県の缶詰協会において、業者間協定において最低賃金を設 定したという例が見られました。  昭和32年には労働問題懇談会が設置され、労働政策の重要問題について労・使・公益 の自由な意見を聞いて最低賃金に関する意見書がまとめられましたが、その中身は、業 者間協定による最低賃金方式を奨励するというものです。その後昭和34年の最低賃金法 成立までに、都道府県労働基準局の援助によって、業者間協定で最低賃金が127件設定 されました。また、法律による最低賃金の問題について、中央賃金審議会を再開して検 討することが、労働問題懇談会の意見書で決定されました。  それを受けて中央賃金審議会で最低賃金制度についての検討が行われ、昭和32年12月 18日に最低賃金制に関する答申が出されました。それは最低賃金制度の法制化に前進す べきであるということです。その基本的なあり方については、将来の問題として全産業 一律方式は望ましいものであるが、産業別、規模別に、経済力や賃金に著しい格差があ るという現状に即して、業種、職種、地域別の、それぞれの実態に応じて最低賃金制度 を実施し、それを漸次拡大していくという方式をとるべきであるということでした。  法案の内容として、次の4つの方式で最低賃金を決定すべきであるとしています。1 つが業者間協定による最低賃金として決定するというもの、2つ目が業者間協定による 最低賃金を拡張適用するような方式、3つ目が労働協約の最低賃金に関する定めを拡張 適用して最低賃金として決定するもの、4つ目が上記1つ目から3つ目の方式で決定す ることが困難あるいは不適当な場合に、最低賃金審議会の調査によって決定する方式、 この4つの方式で実施すべきであるという答申です。それを受けて昭和34年4月に最低 賃金法が制定されたのですが、中身的には、昭和32年の答申を尊重して定められたとい うことです。  最低賃金法制定以降、最低賃金制普及計画を昭和36から38年に策定しました。当初は 適用労働者250万人を目標に、業者間協定方式を中心として最低賃金制を普及拡大して いきました。  昭和38年に中央最低賃金審議会において、今後の進め方に関する答申が出され、業種 を選定し、それのよるべき目安を定めて、計画的に最低賃金の普及を進めていくことが 適当とされました。  3頁で、昭和39年10月にも、その対象業種及び最低賃金額の目安に関する答申が出て おります。このときに、特に対象業種について、中小企業対策として保護助成を行って いる業種、輸出産業としての比重が高い中小企業、あるいは重化学工業の下請や部品製 造などの中小企業、最低賃金が相当普及している業種など88業種を指定して、目安につ いては甲乙丙の3地域、業種についてはA・Bという2つのグループに分けて目安を定 めて最低賃金の普及を図っていったということです。  さらに昭和39から41年にも、最低賃金推進計画ということで、この時点では510万人 の労働者に目安に適合した最低賃金の適用を図るという計画に基づいて最低賃金の推進 が図られていきました。  昭和41年に、最低賃金の実施状況等を考慮して目安を改訂しております。こういった 取組によって、昭和42年度末においては約600万人の労働者に最低賃金が適用されると いった形で徐々に最低賃金の適用が広がっていきました。  昭和43年に最低賃金法が改正されるわけですが、その動きとしては、まずILOの第 26号条約という、最低賃金に関する条約の批准があるわけです。その条約においては、 労使が平等の立場で最低賃金の決定に参与すべきであるということが定められていま す。さらに経済状況についても、中小企業の実態や最低賃金の普及状況等から検討する ことも必要であるといったようなことも示されています。一方労働側の主張として、全 国全産業一律最低賃金といったような主張もこの頃なされるようになっております。  そのような状況の中で昭和42年に、中央最低賃金審議会において、「現段階における 最低賃金制の取扱いについての答申」が出されております。主な内容をここに4つ書い ておりますが、1つは業者間協定に基づく最低賃金を、その拡張適用も含めて廃止する こと。それがいちばん大きな中身でした。一方、最低賃金審議会の調査審議に基づく最 低賃金については、これまで他の方法で最低賃金を決定することが、困難あるいは不適 当な場合に限り設定できるとされていたわけですが、その制限を除いて、必要によっ て、最低賃金審議会の審議に基づいて設定できるという形に改められました。あとは異 議申出の手続、業者間協定に基づく最低賃金の経過措置などがこの答申で定められてい ます。  昭和42年答申を反映して、昭和43年に最低賃金法の一部を改正する法律が成立しまし た。これは内容的には昭和42年答申を反映したものですが、国会における修正で、現在 の最低賃金法第16条の4という規定「審議会方式による最低賃金の新設、改正・廃止の 決定について労使からの申出ができる」ということが追加された経緯があります。  その後さらに最低賃金制度のあり方の検討、全国全産業一律最低賃金制度の問題等が 議論され、昭和45年に中央最低賃金審議会で、「今後の最低賃金制度のあり方について 」の答申がなされました。  主な内容をここに4点書いております。まず、全国全産業の労働者があまねく最低賃 金の適用を受ける状態が実現されるように配慮されるべきであること。また、その際に は、労働市場に応じて産業別、職業別、地域別に最低賃金を決定することを基本とすべ きであること。そのために年次推進計画を作成して積極的に推進を図っていくこと。労 働協約拡張適用について使用者要件を緩和すること、そのようなことが書かれていま す。全国全産業一律最低賃金制については、なお地域間、産業間の賃金格差がかなり大 きいという現状で、その実効性は期待し得ないと45年答申ではされています。  このような答申を受けて最低賃金制が推進され、昭和45年度末では1,000万人を超え る労働者に最低賃金が適用されるようになったという状況です。  昭和46年にILOの最低賃金に関する条約(第26号条約と第131号条約)が批准され ました。またこの年に、「最低賃金年次推進計画」で、昭和50年度までに、すべての労 働者に最低賃金の適用を図るという目標をもとに、計画的に推進していくことになりま した。特にそのために、低賃金労働者が多数存在する産業あるいは職業から最低賃金を 設定する。併せて、地域別最低賃金の設定を進めるということが年次推進計画の中で定 められました。この計画に基づいて、昭和47年度末に約2,300万人の労働者が適用を受 け、昭和49年度末には3,200万人という形で適用が拡大していきました。  一方、地域別最低賃金についても各都道府県で設定が進み、昭和51年1月までに、す べての都道府県で地域別の最低賃金というものが設定されました。  昭和50年前後は、特に労働組合等を中心に、全国一律最低賃金制の確立の動きが見ら れました。2月にその要求書が提出され、3月には野党4党が全国一律最低賃金制を盛 り込んだ法案を提出するといった動きが見られました。  地域別最低賃金がすべての都道府県に設定されたということで、最低賃金がすべての 労働者に適用されました。一方、高度成長から安定成長に移る中で、今後の最低賃金制 度のあり方がどうあるべきかといったようなことが問題となり、昭和52年に中央最低賃 金審議会で、「今後の最低賃金制度のあり方について」の答申が出されております。  これは(1)にあるように、なお地域間、産業間の賃金格差が大きく存在するという ことで、当面の最低賃金制度のあり方については、地方最低賃金審議会が審議決定する 方式によることを基本とする。ただ、全国的な整合性を確保する見地から以下の措置を 講ずるということになりました。(2)の(1)にあるように、地域別最低賃金と産業別 最低賃金の性格と機能分担について整理する必要があること。そして(2)高齢者の取扱 いその他適用労働者の範囲の問題、(3)最低賃金制度の賃金額の表示単位期間の取扱い について整理することです。  5頁ですが、最低賃金額の決定について、全国的に整合性ある決定が行われるよう に、中央最低賃金審議会において目安を提示することが昭和52年の答申により決まり、 昭和53年度から、目安を提示するようになりました。  その後産業別最低賃金制度の再編に移るわけですが、産業別最低賃金について、労働 者構成や賃金実態が異なる多様な業種や業務を包含していること、地域別最低賃金が対 象とすべき労働者を包含しているということで、一部の労働者についてはその産業別賃 金が高すぎる。一方、一部の労働者については低すぎて実効性がないというような問題 も指摘される中で、産業別最低賃金制度のあり方について中央最低賃金審議会で検討が 行われました。  昭和56年7月29日に、それについて一定の結論を出して答申を取りまとめました。こ の基本的な考え方を(1)に書いております。従来の「大くくりの産業別最低賃金」は かなり大きな産業を対象にして産業分類が設定されてきたのですが、その産業別最低賃 金が果たしてきた「最低賃金の効率的な適用拡大」という措置が「経過措置的役割・機 能」であるということで、その役割を見直す必要があるということになりました。新し い産業別最低賃金については、労働協約拡張方式に基づく最低賃金(法第11条のもの) 以外のものについては、関係労使が労働条件の向上と事業の公正競争の確保という2つ の大きな観点から、地域別よりも高い最低賃金を必要とするものに限定して設定すべき であるという形で考え方を整理いたしました。  新しい産業別最低賃金の設定についての具体的な方法としては、産業の「くくり方」 として、原則としては産業分類の中で小・細分類等小さなくくりで設定していく。対象 は「基幹的労働者」を対象にするということです。「基幹的な労働者」の考え方として は、昭和57年答申の(2)で「当該産業に特有又は主要な業務に従事する者」と言って います。  産業別最低賃金制度設定の契機は、「関係労使の申出」で、関係労使が必要と認める ものについて設定していくということです。設定産業として大きく、労働協約ケースと 公正競争ケースという2つをここで定めています。労働協約ケースは、同種の基幹的労 働者の相当数に、最低賃金に関する協約が適用されている産業について設定する。もう 1つは事業の公正競争の確保の観点から、同種の基幹的労働者に最低賃金を設定する必 要が認められる産業、この2つのケースについて設定するという形に整理されました。  (3)が、従来の「大くくりの産業別最低賃金」については低賃金の業種や業務を除 外する。年齢も除外するといったような改善を図るということで、その廃止の時期と方 法は昭和60年度に決定するということが、昭和56年の答申で定められました。  その後新しい産業別最低賃金の具体的な運用方針が昭和57年に、「新しい産業別最低 賃金の運用方針について」の答申として定められました。1つは、産業のくくり方につ いて、原則として産業分類の小分類、必要に応じて細分類とすることとしています。2 以上の産業を併せて設定することも可能ということではありますが、そういうくくり方 にするということです。  基幹的労働者については、先ほど申し上げたように、当該産業に特有又は主要な業務 に従事する者ということで、具体的には、その生産工程や労働態様に即して決めるとい うことです。基幹的労働者については、該当する業務や職種を規定するポジティブ・リ ストによる方式と、該当しない職種や業務を規定するネガティブ・リストによる方式、 この2つの方式で決めようということでした。  6頁の(3)は労働協約ケースと公正競争ケースの申出要件です。まず労働協約ケー スについては、同種の基幹的労働者のおおむね2分の1以上に協約が適用され、その協 約締結当事者である労又は使の全部の合意による申出があるものということが要件とさ れました。公正競争ケースについては、公正競争確保を理由とする申出で、当該産業別 最低賃金が適用される労又は使の全部又は一部を代表する者による申出がある場合。こ の2つのタイプに申出要件が整理されました。  必要性の決定については、形式的要件(適用範囲や適用されている協約のカバレージ )を満たしている場合には原則として必要性を諮問する。公正競争ケースについては、 関連する諸条件を勘案し、企業間、地域間、組織・未組織間の産業別最低賃金の設定を 必要とする程度の賃金格差が存在するといったことを条件に設定していくということで す。そして、必要性がありということになった場合に金額を諮問するということで、そ の際に関係労使が入って審議を行うということです。こういう形で昭和56から57年に産 業別最低賃金のあり方の整理が行われたわけです。  5頁に戻ってください。こういう形で当初モデル県あるいはその他全県において小分 類の賃金実態調査を実施して改善のための検討が行われ、数件新設の申出があったわけ ですが、必要性が認められたものはなかったということで、結果として旧産業別最低賃 金の改善が進まず、新産業別最低賃金の設定がされなかったというような状況にありま した。  このような状況の中で昭和61年に、「現行産業別最低賃金の廃止及び新産業別最低賃 金への転換について」の答申が、中央最低賃金審議会で出されました。これは、旧産業 別最低賃金の中でも新産業別最低賃金として設定し得るものがあるのではないかという こと、旧産業別最低賃金が実態として民間の賃金決定過程にある程度影響を及ぼしてお り、できる限りなだらかな形で、新しい産業別最低賃金が設定可能なものについては、 その設定を行っていこうということでこの答申が出されたものです。  基本的な考え方ですが、新産業別最低賃金の考え方については昭和56年答申を踏襲す るということが1つ。2つ目に、旧産業別最低賃金を速やかに整理するということです が、急激な変化を回避し、業種によっては新産業別最低賃金への転換を準備する期間を 考慮する必要があるということで、整理に当たっての方針と手法が(2)にあるような 形で決められました。  (2)の(1)で、旧産業別最低賃金については年齢要件について、例えば18歳未満や 65歳以上を除外すること、業務については清掃・片付け等軽易なものを除くといったこ と、業種については当該業種の第1・十分位数が調査産業計よりも低く、他の特性値も 同様の傾向にあるような賃金分布が低位な業種を除くこと。このようなことで計画的・ 段階的に除外を行うことになりました。そして、(1)のような除外が行われないものに ついてはその後改正諮問を行わないということも(2)に記されています。  (3)で、新産業別最低賃金に転換することが適当なものについては、そのために必要 な準備・調整作業を行っておくということで、それを円滑に行うために意見調整の場を 設けることとなっています。  7頁ですが、計画的・段階的な適用除外、準備・調整を終えた旧産業別最低賃金につ いて申出があって新運用方針に適合する場合には、新産業別最低賃金として合理的理由 があるものとして転換できるように努力する。転換できなかった旧産業別最低賃金につ いては、昭和64年度以降凍結するといったようなことで昭和61年の答申が出されまし た。これにより、その後計画的・段階的に適用除外が、総体として円滑に進みました。 一定の要件を満たした新産業別最低賃金の申出が行われ、地方最低賃金審議会で審議を 行った結果、各県で新産業別最低賃金が、1県当たり2から10件設定されていったとい う経緯が6頁に書いてあります。  その後平成4年に、「公正競争ケース」検討小委員会報告というものが出されており ます。これは特に公正競争ケースについて、その申出要件の意味や取扱いについて具体 的な事案をめぐってやや議論があったということで、公正競争の概念等について整理を 行ったものです。平成4年3月30日のこの報告で、公正競争の概念については(1)に あるように、最低賃金法における公正競争の確保とは賃金の不当な切下げの防止によっ て達成されるものである。地域別最低賃金で一定の公正競争を確保されていることか ら、公正競争ケースは「より高いレベルでの公正競争」の確保を目的とする。申出要件 として、賃金格差の存在の疎明を行うこと。申出に当たって、おおむね3分の1以上の 合意による申し出の受理・諮問が円滑に行われるべきである、ということで要件等が整 理されています。  ただ、産業別最低賃金制度につきましては、従来から中央最低賃金審議会においても 使用者側が廃止を主張しておりまして、労働者側からはむしろそれを承継・発展させて いくべきであるという意見が出されております。その後平成7年4月28日には、産業別 最低賃金ではなく目安制度のあり方の全員協議会報告が出されまして、パートタイム労 働者も含めた賃金上昇を見るとか、労働時間の短縮による就労日数の増減等を反映して 賃金の引上げを見ていこうといった、目安制度のあり方の改善についての答申が出され ました。  8頁ですが、その後さらに産業別最低賃金につきまして使用者側からの問題提起もあ りまして、中央最低賃金審議会で全員協議会が設けられ、報告が取りまとめられており ます。ただ平成10年の段階では、基本的に考え方の変更に至るような一定の結論を得る までには達しませんでした。さらに、産業別最低賃金制度のあり方については、今後時 期を見てさらなる議論を深め、審議していくことが必要であろう。この際に(2)以下 ですが、運用面において一定の改善が図られることが必要ということで、審議に当たっ てどういったものを参考にしていくか、それから適用除外、あるいは業種のくくり方の 見直しを行う。原則として労働協約ケースへの申出に向けての関係労使の努力を期待し ていくといったようなことで、審議促進を図っていく。取扱い上の改善として、関係労 使の意見の反映や賃金格差の疎明資料の添付の徹底等が報告として取りまとめられまし た。  平成14年4月2日の中央最低賃金審議会の時間額表示問題全員協議会では、地域別最 低賃金の表示単位について、従来日額と時間額と両方で表示していたものを、時間額の みで表示する方法に移行することが報告として取りまとめられました。これによって、 現在地域別最低賃金については時間額のみの表示になっているということです。  さらに、平成14年12月6日の中央最低賃金審議会の産業別最低賃金制度全員協議会報 告ですが、平成10年の全員協議会において、時期を見てさらに検討していくことが必要 とされまして、その後また使用者側の問題提起等を受けて全員協議会が行われ、議論が なされました。基本的な考え方として、この産業別賃金最低賃金制度の趣旨として、関 係労使のイニシアティブ発揮を中心とした改善について検討を行ったことが1つ。2つ 目は、この際も使用者側は廃止論を主張し、労働者側は継承・発展論を主張したので、 労使の意見には隔たりがありました。今後、法改正を伴う事項を含めた産業別最低賃金 制のあり方について、時期を見て新たに検討の場を設け、中長期的な視点からさらに議 論を深めることが適当ということで、最低賃金のあり方については意見の一致を見ませ んでした。改善点については、関係労使のイニシアティブの発揮ということで労使間の 意思疎通をより図っていく、また「必要性審議」について当該関係産業の労使が入った 場で検討を行うこと。金額について全会一致に至るようにするといった取扱い上の改善 が行われたこと。さらにその他の改善として、これも従来から言われていることであり ますが、公正競争ケースから労働協約ケースへの一層の取組に努める。賃金格差の存在 疎明についての資料の充実。産業別最低賃金について、「相当数の労働者」をカバーし ないようなものに関しては廃止に向けて審議を行うということで、原則として1,000人 程度をカバーしないものは申出を受けて、廃止に向けての調査・審議を行うといった運 用面の改善が図られました。  次に、これまでの最低賃金制度の変遷を受けまして、それぞれの設定方式に基づいて どの程度の最低賃金が設定され、どの程度の適用労働者があったかです。当初この最低 賃金法制定後は、業者間協定に基づく最低賃金を中心に最低賃金が設定されていまし て、昭和41年辺りですと、2,000件で460万余りが業者間協定に基づく最低賃金でカバー されている形になっております。昭和43年に法改正が行われ、業者間協定が廃止されま した。その後、産業別最低賃金あるいは地域別最低賃金という形で適用が拡大され、昭 和45年には1千万、昭和48、49年辺りで3千万の労働者がカバーされました。地域別最 低賃金は、昭和51年1月の時点で47都道府県をカバーするようになりました。  一方、産業別最低賃金は、昭和61年、2年辺り旧産別から新産別への転換期で、この 辺りで340件で1,800万程度の労働者をカバーしていました。現在249件で400万強の労働 者が産業別最低賃金のカバーを受けております。以上がこれまでの最低賃金制度の変遷 です。  資料7は、最低賃金制度の現状です。1頁目は、これまでご説明申し上げた現在の最 低賃金がどのような形で設定されているかを整理したものです。2頁は、決定件数及び 適用労働者数で、これも先ほどと同じもので、現在5千万の適用労働者で、うち地域別 がすべて、産業別がその内、400万、労働協約の拡張適用が2件で、千人に満たないと いうことです。  3頁は、平成16年度に審議が行われて地域別最低賃金が改定されたわけですが、各都 道府県の一覧です。  4頁が、地域別最低賃金につきまして全国の加重平均額の推移と、その引上率の推移 です。4頁が時間額表示で、5頁は日額表示です。日額は平成13年度までで、平成14年 度からは時間額に一本化されております。6頁は、中央最低賃金審議会において目安を 示しております地域別最低賃金額の改定の金額の目安の推移で、平成13年度までは日額 いくらという形での引上げ、平成14年度以降は時間額の目安です。47都道府県を経済実 態に基づきまして4つのランクに分けて、それぞれ引上額の目安を示しております。  7頁ですが、地域別最低賃金額の一般労働者の所定内給与に対する比率がどうなって いるかを見たもので、「賃金構造基本統計調査」の企業規模10人以上における所定内給 与を所定内実労働時間で割って、所定内の時間額を計算し、それと最低賃金額の時間額 を比較したものです。これはパートタイム労働者を含んでおりませんが、一般労働者の 所定内給与に対する比率で見ますと、大体35%後半で推移してきている現状です。  8頁は、同じく所定内給与に対する比率を、都道府県別の地域別最低賃金に対する比 率で見たものです。左の方が地域別最低賃金額が高い所になっているわけですが、Aラ ンクが東京、神奈川、大阪の3つです。Aランクが30%台前半で、Bランクになります と30%台後半、Cランクは40%前後で、Dランクでは40%前半といった形で、低いラン クの所は所定内給与に対する比率が高くなっているといった現状です。  次に9頁ですが、地域別最低賃金につきまして未満率と影響率を見ているものです。 未満率というのは、この図で見ると直線が賃金分布で、未満率はその最低賃金を改正す る前に最低賃金額を下回っている労働者の割合を言っております。影響率というのは、 最低賃金を改正した後に、最低賃金額を下回った労働者の割合です。「賃金構造基本統 計調査」で、事業所規模5人以上の所で未満率や影響率を見ますと、平成13年以降1% 前後といった状況になっております。  10頁は、未満率や影響率について、製造業は100人未満でありますが、事業所規模が 30人未満の所で、小規模企業の賃金実態を最低賃金に関する基礎調査で調べているわけ ですが、それで未満率や影響率を見ますと、平成15年度で1.6%になっております。過 去、影響率は2%前後、あるいは未満率が1%前半といった形で推移しています。最近 は引上げが少ないということで未満率と影響率の差がなくなってきている状況です。11 頁は、未満率・影響率を都道府県別に最低賃金に関する基礎調査に基づいて見たもの で、特に東京などは低くなり、一方沖縄などは非常に高く、都道府県によってかなりば らつきがあります。  12頁以下が産業別最低賃金の現状です。現在249の産業別最低賃金があるわけですが、 各業種ごとにどの程度設定されているかということで、電気機械器具製造業が46でいち ばん多く設定されております。輸送用機械器具製造業が34、各種商品小売業が31です。 労働者数で見ますと、電気機械器具製造業が142万で一番多い。それから輸送用機械器 具、一般機械器具等が適用労働者数が多いという形になっております。  13頁以下は、各都道府県で現に設定されております産業別最低賃金の一覧です。17頁 は産業別最低賃金の業種別の全国の加重平均ですが、全体の加重平均が756円で、地域 別が664円と約100円高い。産業ごとに若干ばらつきがありまして、設定件数が少ないも のがあったりするので必ずしもこのとおりとは限らないのですが、道路貨物運送業が 910円になっています。塗料が825円で、この辺りが高くなっております。いちばん低い のは、家具・装備品の636円です。資料7は以上です。  最後に資料8ですが、最低賃金制度のあり方に関する様々な指摘です。中央最低賃金 審議会の議論は先ほどの変遷の中に出てきますので、ここでは省略しております。主に 労働組合、あるいは使用者団体の最近の意見・要望から拾ったものであります。  まず1頁が、規制改革・民間開放推進3か年計画ということで、今年3月に閣議決定 されたものであります。これは産業別最低賃金の見直しについて言及しておりまして、 「労働市場が産業別に形成されているわけではなく、都道府県単位とはいえ、産業別に 異なる最低賃金を設定する意義が乏しいとの考え方もある。また、最低賃金の設定が必 要な場合には、労使間の協約・協定で自主的にこれを定めればよいという考え方もあ る。こうした考え方にも留意して、産業別最低賃金制度については、その在り方を速や かに検討する。」ということで、平成16年度中に検討とされているものであります。  2頁が日本経済団体連合会の規制改革要望で、これも「産業別最低賃金は廃止すべき である」。「地域別最低賃金で最低額が保証されており、産業別最低賃金は屋上屋を重 ねるものである。経済のグローバル化による産業空洞化の中で、『ものづくり産業』が 極めて厳しい状況にあるので、もはや産業別最低賃金を維持する時代ではない」、とい うご意見です。  3頁が日本商工会議所の中小企業関係施策に関する要望で、1つは産業別最低賃金に ついて、地域別最低賃金が定着を見た中で屋上屋を重ねることになっているので廃止さ れたい。一方で、地域別最低賃金については、厳しい経済情勢やデフレに応じて引き下 げられたい、という要望2点です。4頁が、東京商工会議所の労働政策に関する要望で ありますが、これは地域別最低賃金は引き続き据え置くべきであるというのが1つ。そ れから、産業別最低賃金については存在意義が乏しく、速やかに廃止すべきというもの です。  5頁は中小企業団体中央会で、産業別最低賃金につきましては、地域別最低賃金が全 国的に整備・適用されている中で屋上屋を架すものであり、早急に廃止することが1 点。地域別最低賃金については、経済の動きと無関係に毎年改定諮問がなされ、引上げ の議論が行われる方式は不合理であるので、経済実態に合ったシステムに改めることが この要請であります。  一方、6頁は連合の2004〜2005年度の要求と提言で、最低賃金の機能強化を行うとい うことで、法定最低賃金の実効性確保に向けた審議会の運営支援や監督体制の強化。制 度の機能充実強化に向けた見直しを検討する。産業別最低賃金については、第3次産業 分野における創設に向けた活動を推進・支援する。これは組合としての運動です。  それから、最低賃金行政に関する要請として、産業別最低賃金についての適切な審議 を図るといったこと等、規制改革会議での議論がありますが、当面2004年度の産業別最 低賃金について影響を及ぼさないようにということが、2004年度の最低賃金行政に関す る要請として出されています。  7頁は、今年1月の金属労協の産業別最低賃金制度の見直しに対する見解です。基本 的に産業別最低賃金は(1)〜(3)までの役割を担っており、今後とも継承・発展を図って いくことが必要であるということで、1つは産業別の賃金相場に適合した実効性ある賃 金の下支えと、公正競争の確保に欠かせないシステムである。2つ目は、法的な規制に よって産業全体に適用される賃金の下支え、特に労使間の協約・協定については日本全 体の組織率が2割程度であり、8割は未組織であることからそのような対応が難しいこ とが指摘されております。  8頁で、金属産業の中では、600万の労働者に対して340万人以上に産業別最低賃金が 適用されているので、影響率も非常に高いので産業ごとの賃金の形成に寄与しているこ とが指摘されておりまして、こういった観点から産業別最低賃金の継承・発展を図って いくべきであるということです。以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。細かい説明をいただいたので、2つに分けて議論をしたら どうかと思います。まずは資料6までの制度について、その後資料7以降についてとい うことで、まず制度や歴史的なところに関してご質問・ご意見ございましたらお願いい たします。 ○古郡先生  働き方が多様化している中で、最近特に、例えばNPO法人で働いている人が増えて いるようですが、そのような人たちはなかなか最低賃金の適用を受けにくい。資金的な 問題もあるようですが、例えば資料5の3頁の「最低賃金の対象となる労働者」で、 「適用除外の対象となる労働者は、次のとおりである」ということで、NPO法人の人 たちが最低賃金の適用を受けにくいのは、(4)、(5)、(6)のような基準でそうなってい るのか質問です。 ○前田賃金時間課長  NPO法人で働かれている方について、その方がそもそも労働者かどうかが基本的な 原則でありまして、労働者である以上、労働基準法なり最低賃金法はすべての労働者に 適用されるべきであります。ただ、NPO法人で働かれている方はボランティアや有償 ボランティアなどさまざまな形態がありまして、その辺の労働者性が一番の問題ではな いかと思います。労働者である限りはそれを除外していくのは難しいので、実際の仕事 の仕方や報酬の支払などが問題であると思います。基本的には労働者性の問題だと認識 しております。 ○橋本先生  産業別最低賃金制度の第16条の4ですが、基幹的労働者を対象とするとありますが、 これは第11条で言う同種の労働者と同じ内容と理解してよろしいでしょうか。 ○前田賃金時間課長  基幹的労働者につきましては、先ほどの資料6の5頁から6頁にかけて基幹的労働者 の概念について言っておりまして、主要な業務に従事する者でポジティブリストなりネ ガティブリストでそれを決めていこうということになっているわけですが、昭和61年に 定められました現在の産業別最低賃金の中で、年齢面について、例えば18歳未満と65才 以上を除く。業務面については、清掃・片付けのような軽易なものを除くといった形 で、ネガティブリストによってそれ以外のものを基幹的労働者としていることが多いの が実態です。第11条の同種の労働者というのは、基本的には職業なり産業なりの面で言 うのでありまして、必ずしも基幹的労働者の概念だけには限らないことになろうかと思 います。 ○樋口座長  私も同じところを質問したかったのですが、労働態様に応じて、即して決めるとなっ ていますね。労働態様というのは、雇用形態の多様化の中でのいろいろな働き方だろう と思うのですが、これに関するものはいまのポジティブ・ネガティブの中には出てこな いと考えてよろしいですか。 ○前田賃金時間課長  基幹的労働者というのは、概念としては特に地域別最低賃金との関係で、一般労働者 ではなく基幹的労働者について設定するということで昭和56、57年で整理されたわけで すが、具体的にどういうものが基幹的労働者かがなかなか概念上、特にポジティブな形 での規定が難しかったのが現状であったと思います。そのようなことから、いま除外の 形で定められているものが多いと考えます。 ○樋口座長  新産別の最低賃金の中に、例えばパートタイム労働者などは含まれるということです か。 ○前田賃金時間課長  実態としては含まれております。 ○樋口座長  あるいは派遣労働者の場合は、派遣元の産業、要はサービス業に分類されるのです か。派遣先がたとえ製造業であったとしても、産業別最低賃金ではそうなるのですか。 ○前田賃金時間課長  派遣元に雇用されまして、派遣元から賃金を支払われますので、法律の適用上は派遣 元で適用されます。派遣先の業種に限らず派遣元は一般にはサービス業であろうと思い ます。そういう所で設定されていれば、産業別最低賃金としてはそちらが適用されるこ とになりますので、例えば製造現場に派遣されていたとしても、現在の法律上は製造業 の産業別最低賃金は適用されてはいません。 ○樋口座長  すると問題になってくるのは請負なのですが、製造専門の請負の産業分類は製造に分 類されるはずだというのが統計の担当者、あるいはハローワークにおける解釈らしいの ですが、いろいろなところの仕事を請負っている場合には、それはサービスだというこ とらしいのです。その辺りはどうなっているのでしょうか。産業格付については、私も どうもすっきりしないところがあります。 ○前田賃金時間課長  請負の産業分類については、いま直ちに答えられないので、次回までに調べさせてい ただきます。 ○渡辺先生  この冊子に北海道から各県ごとの産業別最低賃金の表がありますが、その中に適用す る労働者と除外する労働者が書いてあって、いま樋口座長のおっしゃった労働の態様は 大体労働の種類のほか技能習得中の者などネガティブリストで書いてあり、ポジティブ には課長もおっしゃったように、前号の使用者に使用される労働者のように積極的な概 念規定はされていない場合がほとんどであろうと思います。 ○樋口座長  ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。では、資料7以降についてお 願いします。 ○今野先生  資料7で、未満率と影響率の数字が出て、確か1%ぐらいだったと思うのですが、先 ほどの資料5の中で、試用期間中の者など適用除外の対象者がおりますね。この人たち を除外できないで統計を取っているはずですから、そうすると先ほどの適用除外の人の 1〜6は全労働者の何パーセントぐらいなのかわかっているのですか。つまり、下手を すると、もし1%だったら適用除外の人だけしかいないので、未満率が実情ゼロという ことも考えられるのですが、その辺りはどうなのですか。 ○前田賃金時間課長  確か、適用除外は5千何人といったレベルであったと思うのですが、5千万の労働者 の中からするとごくわずかではないかと思います。適用除外は実際に許可を受けてやっ ていますので、その許可を受けた人数ということです。 ○渡辺先生  あまり大切なことではないのですが、未満率というのは要するに違反率のことです ね。未満率という用語を当てるのは、いつごろから取り入れたのでしょうか。 ○前田賃金時間課長  いつからかはわかりません。 ○渡辺先生  私もわからないので、いつか聞こうかと思っていたのですが。 ○前田賃金時間課長  調べておきます。 ○樋口座長  7頁のところで、地域別最低賃金の所定内給与に対する比率の推移がありますが、一 般労働者に限定して平均賃金を出して、それとの比が36.5%などと出ていると思うので すが、これをパートに限定した場合、パートと比較するとこの比率は時系列的に変わっ ていないのですか。パートと一般労働者の賃金格差が拡大していると片方では言われて いるので、一般労働者との比で安定しているということは、逆にパート賃金との差で言 うと最低賃金の比率は上がっているのかな、という気がするのです。いまわからなけれ ば、また次回にでも調べていただければと思います。 ○前田賃金時間課長  パートで見たものを次回に用意させていただきますが、そんなに下がったりはしてい なかったように思います。 ○樋口座長  パートと一般労働者の格差は、平均賃金で見るとだいぶ拡大傾向が出てきています ね。  ほかにいかがですか。いろいろな要望がいろいろの団体から出ているようですが、こ れについては質問してもわからないところもあるかと思いますが。 ○奥田先生  1点だけ、統計のところで出てくるパートは決まった基準があったと思うのですが、 先ほどの基幹的労働者の話で出てきたパートも同じ概念で使われていると考えていいの でしょうか。パートを労働者の概念として、統計のほうは一定の基準がありますね。そ ちらはそうだと思うのですが、先ほどの5頁、6頁でパートタイマーが入るかどうかと いう話をしておりまして、臨時や常用とか、パートタイマーとありましたが、ここに出 てくるパートタイマーも同じ意味で使われていると、両方統一されていると理解してい いのでしょうか。 ○前田賃金時間課長  基幹的労働者と言うときにパートは必ずしも出てこないのですが、例えば7頁でパー ト労働者の賃金水準を反映させる、と言っているときのパートは、所定労働時間が短い 者で言っております。ただ、そもそも適用されるのがパートを含めてすべてと言ってい るときのパートは、呼称パートを含めて言っている場合もありまして、そこは必ずしも 定義的にすべてが統一されているわけではありません。統計では、それぞれの統計ごと にパートは定義されていると思います。 ○奥田先生  例えば、資料5の3頁の7で出てくるパートタイマーは、それほど限定されたパート タイマーではないと理解していいわけですね。 ○前田賃金時間課長  はい。 ○渡辺先生  先ほどの座長のご発言に関連するのですが、資料の136頁の最低賃金額と一般賃金水 準等との比較で、地域別最低賃金と産業別最低賃金が左2欄に出ていて、その頁のいち ばん右に女性パートタイム労働者の賃金があって、上段の括弧は地域最低賃金に対する 一般女性パートタイム労働者賃金の比率ですから、平成5年の70.1%から始まって、現 在74.4%と読んでよろしいわけですね。 ○前田賃金時間課長  はい、そうです。パートタイム労働者と比べると上昇傾向にあることは言えます。一 般労働者を全部含めると36.5%ということです。 ○樋口座長  歴史的な流れを教えて欲しいのですが、産業別最低賃金は従来地域別最低賃金を支払 うことができない、支払能力が劣るような所で低めに設定されるものだったわけです ね。 ○前田賃金時間課長  もともと地域別最低賃金がなくて、業者間協定に始まり、それは特定の産業なりでや っていて、それが産業別最低賃金で一般最低賃金のような形で設定されたということ で、地域別最低賃金が先にありきではないのです。 ○樋口座長  4業種やいくつかの業種が議論になったときはどうなのですか。 ○前田賃金時間課長  いちばん最初は、最低賃金を低賃金の産業について設定していくべしという基本的な 考え方ではあったのですが、具体的にそれ自体は定められたわけではなく、その後業者 間協定なりで定まっていったものが産業別最低賃金に変わっていったわけで、地域別最 低賃金と比べて低い所という概念は必ずしもありません。 ○樋口座長  特定の産業を指定するのが、イクセプショナルに、支払能力などを考慮してどちらか というと低く設定するという考え方が、実行されていなくてもあったと思うのです。 ○前田賃金時間課長  最低賃金制度を作ろうとしたときは、もともと一般に最低賃金制度がいわゆる苦汗産 業から設定していく考え方で、歴史的にやられてきたことはあるかと思います。ただ、 この産業別最低賃金が実際それに沿っていたかどうかは必ずしも定かではありません。 ○樋口座長  現行はむしろ、逆に地域別最低賃金より高めに、産業別最低賃金が特定の産業につい て設定されているのが現状ですね。どこかで発想が逆転したのかな、という思いがある のですが。 ○前田賃金時間課長  もともとは、できるところから最低賃金をなるだけ広げていこうということで、まず 業者間協定があったので、それを普及していこうとしました。それでだんだんカバレー ジが広がっていったわけですが、一方で全労働者に適用されるべきだと地域別最低賃金 を広げていったので、地域別最低賃金が全部できた段階で産業別最低賃金の考え方を一 定整理して、基幹的労働者などをより高いレベルのものという形に整理したわけであり ます。ただ、産業別最低賃金がもともとは低い所だったかどうかよりも、できる所から 最低賃金を広げていったわけで、低いかどうかはそんなに重視されていなかったのでは ないかと思います。 ○樋口座長  よろしいでしょうか。ご意見・ご質問が特にございませんようでしたら、少し時間が 早いですが、本日の会合はこれで終了したいと思います。事務局から次回についてお願 いいたします。 ○前田賃金時間課長  次回ですが、あらかじめ皆様のご都合をお伺いしまして、10月6日(水)午前10時か ら第2回目を開催したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。また、追 って正式に文書で送らせていただきます。  次回は、最低賃金制度の労働市場等への影響や諸外国の制度について、事務局のほう から資料を用意して、今日ご指摘いただきました資料も含めてご議論をいただければと 考えております。さらに、委員の皆様で、次回こういったことについて資料などないか という意見がございましたら、また事務局のほうにお寄せいただければ、それも含めて 対応させていただきたいと考えております。私のほうからは以上です。 ○樋口座長  皆様から何かございますでしょうか。 ○奥田先生  この研究会の検討の対象なのですが、最初に挙げられていたところでは検討事項は主 に3つ挙がっていて、かなり大きなものが網羅されているのです。例えば安全網として の最低賃金制度ということで言えば、適用除外対象そのものの制度としての考え方など もすべて含めてこの研究会でやっていくと理解しておいてよろしいのでしょうか。これ からの作業を進めるに当たって、この研究会の検討の範囲、今後をどのように念頭に置 いていらっしゃるかを最初に伺っておきたいと思います。 ○前田賃金時間課長  いまの時点でどこを除外するとは考えておりませんので、いま先生がおっしゃったこ とも含めて検討の対象になると考えております。 ○樋口座長  研究会ですから幅広にやっていただいたほうがいいと思います。なければ、本日はこ れで終了したいと思います。どうもありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省労働基準局賃金時間課政策係・最低賃金係(内線5529・5530)