04/09/14 社会保障審議会医療部会第1回議事録           第1回社会保障審議会医療部会 議事録(案)                      日時 平成16年9月14日(火)                         10:00〜                      場所 厚生労働省専用18〜20会議室 ○総務課長  ただいまから社会保障審議会医療部会を開会させていただきます。私は厚生労働省医 政局総務課長の原でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。委員の皆様にお かれましては、大変お忙しい中を本日はご出席を賜りまして、心から御礼を申し上げた いと存じます。  議事に入ります前に、私から委員の皆様方をご紹介させていただきます。お手元の名 簿をご覧いただきたいと思います。まず、全国市長会(静岡県裾野市長)の大橋俊二委 員、社会福祉法人賛育会病院長の鴨下重彦委員、国立循環器病センター総長の北村惣一 郎委員、エッセイスト・青森大学教授の見城美枝子委員、社団法人全国自治体病院協議 会会長の小山田惠委員、東京SP研究会代表の佐伯晴子委員、社団法人全日本病院協会 会長の佐々英達委員、社団法人日本精神科病院協会会長の鮫島健委員、公立学校共済組 合九州中央病院長の杉町圭蔵委員、NPO法人ささえあい医療人権センターCOML代 表の辻本好子委員、社団法人日本医師会常任理事の土屋隆委員、社団法人日本医療法人 協会会長の豊田尭委員、安田健康保険組合理事長の福島龍郎委員、社団法人日本看護協 会副会長の古橋美智子委員、財団法人さわやか福祉財団理事長の堀田力委員、社団法人 日本経済団体連合会国民生活本部長の松井博士委員、社団法人日本医師会常任理事の三 上裕司委員、社団法人日本病院会副会長の村上信乃委員、全国町村会会長(福岡県添田 町長)の山本文男委員、社団法人日本薬剤師会常務理事の山本信夫委員、日本経済新聞 社論説委員の渡辺俊介委員です。  なお本日は、九州大学大学院医学研究院教授の尾形裕也委員、日本労働組合総連合会 総合政策局長の龍井葉二委員、全国知事会(三重県知事)野呂昭彦委員、社団法人日本 歯科医師会副会長の箱崎守男委員の4名の方から、ご欠席の連絡をいただいています。  続きまして事務局を紹介させていただきます。医政局長の岩尾、医政・健康担当審議 官の岡島、医政局指導課長の谷口、医政局医事課長の中垣、医政局歯科保健課長の山 内、医政局看護課長の田村、医政局経済課長の二川、医政局研究開発振興課長の安達、 医政局総務課企画官の大西です。どうぞよろしくお願い申し上げます。  本日は、本部会が新メンバーとなって再開されます初めての会合でございますので、 初めに医政局長の岩尾からご挨拶を申し上げます。 ○医政局長  委員の先生方、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。初めての 会議ということで、趣旨についてご説明をさせていただきます。我が国におきまして は、長年にわたる医療提供体制と保険制度の整備充実の努力の結果、国民の誰もがいつ でも、どこでも安心して医療を受けられる体制が実現しております。WHOの評価を待 つまでもなく、我が国の医療制度は総合的に見れば、世界最高の水準と言っても過言で はなく、今後ともこれらを守り、更に発展させていかなければならないと考えておりま す。  しかしながら、少子高齢化の進展、長引く経済の低迷、一方で医療技術のめざましい 進歩、国民の意識の変化等を背景として、我が国の医療制度については、なお、さまざ まな課題が指摘されております。医療提供体制について言えば、例えば昨今、国民の関 心の非常に高い医療事故の防止について、どのように対応し、安全で安心できる医療を いかに再構築していくか、また、医師の名義貸し問題を契機として、改めて医療の地域 格差の是正がクローズアップされています。  前回の医療部会におきましては、広告規制の緩和について重点的なご審議をいただき ました。患者の視点に立った情報提供の推進は、引き続き重要な課題であります。更に 臨床研修の必修化などによる、医療を担う人材の確保と資質の向上や、医療計画による 良質で効率的な医療提供体制の整備にも取り組んでいかなければなりません。  厚生労働省といたしましては、平成15年8月に、「医療提供体制の改革のビジョン」 をとりまとめまして、今後の医療のあるべき将来像、また、その実現に向けた当面の施 策についての考え方をとりまとめました。後ほど事務局からご説明いたしますが、現在 このビジョンに基づいて、各般の施策を取り進めているところです。昨今の医療を取り 巻く状況の変化を踏まえながら、先ほど申し上げたような、さまざまな課題に迅速にか つ適切に対応した取組が求められていると考えております。  一方医療保険制度についても、平成14年の健康保険法などの改正以降、更なる制度改 革の検討が続けられております。平成18年には制度改正が予定されており、医療提供体 制と医療保険制度は、いわば車の両輪の関係にありますので、私どもとしては、関係者 の皆様の合意が得られるようであれば、医療提供体制につきましても、医療保険制度改 革と一体となって、必要な改革に取り組んでいきたいと考えております。そのために は、来年の末を目処に、当部会としての意見のとりまとめをお願いできればと考えてい ます。  この度は、以上のような趣旨から、厚生労働省がこれから取り組んでいく21世紀に相 応しい医療提供体制の改革に関しまして、医療についての高い識見を有しておられる委 員の皆様から、幅広いご意見を頂戴したく、医療部会を再開するものでございます。ど うか、こうした医療部会開催の趣旨につきまして、ご理解を賜り、ご協力をいただきま すようお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいた します。 ○総務課長  次に本医療部会について簡単に説明いたします。社会保障審議会の医療部会につきま しては、社会保障審議会令の第6条第1項に、社会保障審議会に部会を設置できる旨が 定められています。平成13年7月13日に開催されました第3回の社会保障審議会におき まして、医療保険部会や年金部会等とともに、この医療部会の設置が決定されました。  この部会の設置目的は、一言で申し上げますと、医療提供体制の確保に関する重要事 項の調査・審議です。医療部会は平成13年9月から平成14年3月まで、8回にわたり開 催され、平成14年3月に広告規制の見直しを中心として、医療提供体制の在り方につい て、意見書をとりまとめていただいております。それを受け、その後、私どもで意見書 の内容に沿った広告規制の見直しを行ったところでございます。医療部会の設置につき ましては、以上のようなことですが、今回、メンバーを新たにいたしまして、局長から 申し上げたような趣旨で検討をお願いするということでございますので、どうぞよろし くお願いを申し上げたいと思います。  次に本医療部会の部会長の選出でございます。選出方法は、社会保障審議会令第6条 第3項の規定によりまして、部会に属する社会保障審議会の委員の互選により選任する とされていますので、社会保障審議会の委員である鴨下委員、北村委員、山本文男委 員、渡辺委員のどなたかに部会長をお願いすることになるわけでございます。私どもで 事前にこの4名の方にご相談を申し上げましたところ、鴨下委員にお願いをしたいとい うことでご回答をいただいておりますので、鴨下委員に医療部会長をお願いしたいと思 います。鴨下委員には部会長席に移動をしていただき、以降の議事運営をお願いしたい と存じます。 ○鴨下部会長  ただいま部会長に選出いただきました鴨下でございます。どうぞよろしくお願いいた します。局長のご挨拶にもございましたが、医療をめぐる状況の中で、特に安全性の確 保など、地域格差を解消しなければならないとか、大変重い課題を背負っている部会と 存じますが、私、大変苦手な領域でございますけれども、是非、各委員の先生方のご協 力によりまして、できるだけ良い意見書を作り上げたいと思っておりますので、どうぞ よろしくお願いいたします。  早速議事に入らせていただきますが、まず社会保障審議会令第6条第5項の規定によ りまして、私が不在の場合に議事の進行をお願いいたします部会長代理を、部会長が指 名するということになっておりますので、これにつきましては、北村委員にお願いをし たいと思いますが、ご了承ください。北村委員、こちらの席へお越しいただけますか。  なお、社会保障審議会運営規則に基づきまして、本医療部会は、議事録も含めて原則 公開となっていますので、ご承知おきいただきたいと思います。  本日の最初の議題である「今後の医療提供体制の改革」につきまして、ご議論をお願 いしたいと存じます。本部会の開催の趣旨は局長のご挨拶にあったとおりですが、本日 は第1回ということなので、前回の医療部会以降の動き、とりわけ厚生労働省が昨年8 月にまとめられた「医療提供体制の改革のビジョン」を中心にご説明をいただき、あと はご自由に意見交換をしていただきたいと思います。その上で当部会として、今後の議 論の進め方についてお諮り申し上げたいと思います。事務局から説明をお願いいたしま す。 ○企画官  お手元の資料に即して、医療提供体制の改革の経緯等について、説明をしたいと存じ ます。配付資料として3点、参考資料として9点付けさせていただいていますので、ご 確認の上もし不足なもの等がありましたら、ご指示をいただけたらと存じます。  資料1は「医療提供体制の改革の経緯」、資料2は「『医療提供体制の改革のビジョ ン』及び平成14年3月医療部会意見書の進捗状況について」です。これに即して説明を 差し上げたいと存じます。その中で間にブルーの本が挟まっています。これは部会長か らご紹介いただきました「医療提供体制の改革のビジョン」ですが、これの前のほうを 適宜おめくりいただくようなことでお願いしたいと思っています。  資料1です。「近年の医療提供体制の改革の経緯」をまとめました。1頁、横長の表 で年表の形にしていますが、前回の医療法等改正以降の主な経過を流れで書いていま す。前回の医療法改正の概要は後ろのほうで出てきますが、病床区分の見直し等を行う 改正法案は、平成12年11月に可決・成立いたしました。これと並行して医療保険制度の 流れも右側に書いていますが、健康保険法等の改正法案が可決・成立されています。こ の後、更に引続き、医療制度改革が必要だということで、平成13年3月、政府・与党社 会保障改革協議会において、社会保障改革大綱が策定されています。  医療保険制度においては、関係の審議会で更に健康保険法等の改正の意見が出ていま す。更に政府・与党社会保障改革協議会において、特に医療制度に焦点を当てた「医療 制度改革大綱」がまとめられています。これらのポイントは後ほどご紹介いたします。  平成14年3月になりまして、厚生労働省に医療制度改革の推進本部が大臣をヘッドと して設置されました。その中の1つのチームとして、医療提供体制に関するチームが医 政局長を主査として設置されました。以後そこの場面を中心として、部内では検討を進 め、社会保障審議会の医療部会において「医療提供体制に関する意見」を3月にいただ いたところです。  2頁目、診療報酬改定、薬価改定などを経まして、健康保険法等の改正法案が、健保 本人等の3割負担等の関係を盛り込み、成立をしています。その際にまた改正法附則に おいて、医療保険制度の更なる改革について規定がされています。その後、坂口厚生労 働大臣「私案」、厚生労働省試案、医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方 針の閣議決定、といった流れになっています。その流れを受けて、平成15年7月には、 社会保障審議会医療保険部会で、医療保険制度の改革についての議論が開始されていま す。  これと並行して、医療提供体制の改革の基本的方向、中間まとめを平成14年8月にい たしまして、更に「医療提供体制の改革のビジョン」、ブルーの本の原案ですが、それ を平成15年4月に公表しています。更にその後ヒアリング等を経て、8月に内容の修正 はありませんでしたが、「医療提供体制の改革のビジョン」ということで、改めて整理 しているという経過です。私どもとしては、医療提供体制の改革の在り方を直近にとり まとめた、総覧したものがこのビジョンという流れになっています。  3頁、「厚生労働大臣医療事故対策緊急アピール」を参考資料で付けていますが、医 療安全関係の緊急アピールを発出しております。更に規制改革・規制緩和の関係で、閣 議決定など、経済財政諮問会議でのご指摘などがありますので、それも大きなものを3 つほど年表に入れております。以上が全体の大きな流れです。  4頁、「社会保障改革大綱」、平成13年3月の政府・与党社会保障改革協議会で、改 革の基本的考え方として、1、2、3、4辺りの記述が、医療提供体制に関する記述で す。将来を通じた健康づくりや疾病・介護予防に取り組みやすくするため、情報の提供 や環境の整備を行う。医療技術などの開発や先端的な医学研究を推進する。患者の安全 を守るため、医療関係者等と連携を図る。科学的根拠に基づいて医療の推進の支援や、 カルテの電子化、レセプトの電算化などの推進といったことが記述されています。  政府・与党協議会の中で、医療制度改革大綱として、更に医療について深められたも のが5頁です。ここでは、急速な高齢化、経済の低迷、医療技術の進歩、国民の意識の 変化など、医療制度を取り巻く環境が大きく変化してきている中で、医療制度を持続可 能な制度へと再構築していくことが必要だということです。  6頁、保険医療システムの改革の(2)「医療提供体制の改革」ということで、限ら れた資源を最も有効に活用できる体制を構築し、情報の開示に基づく患者の選択を尊重 しながら、質の向上と効率化を図るということで、黒ポツで書かれているような施策の 推進が求められているわけです。  これと並行して、7頁、経済財政諮問会議が平成13年6月に、いわゆる骨太方針をま とめている中で、社会保障制度の改革について指摘がされています。その中で医療制度 の改革としては、「医療サービス効率化プログラム」を策定して、医療サービスの標準 化と診療報酬体系の見直しを行っていこうということが書かれています。  8頁、更に「患者本人の医療サービスの実現」で、患者自身が理解し納得して選択で きる患者本位の医療サービスを実現する。このため、インフォームドコンセントの制度 化、医療・医療機関に関する情報開示で、情報のデータベース化等を行うと指摘されて います。また、医療提供体制の見直し、医療機関経営の近代化、効率化といったことで す。  9頁、「消費者機能の強化」が指摘をされているわけです。このプログラムについて は、10頁に、経済財政諮問会議の本年の基本方針の中でも改めて言及がされていまし て、医療サービス効率化プログラムを早期に完全実施するといった記述があります。ま た「健康・介護予防の推進」を特記して、強調しているわけです。以上が年表の中に出 てまいりました主な文書の抜粋でした。  12頁以降は、直近の医療法改正の経緯をまとめたものです。詳細な説明は省かせてい ただきます。12頁では昭和23年に医療法が制定されてから、量的整備がほぼ達成されま して、それ以降は医療計画制度の導入ということで、昭和61年に第一次医療法改正、そ の後、高齢化が進展し、疾病構造が変化してくるというところで、平成4年第二次医療 法改正では、療養型病床群制度、特定機能病院制度といったものが創設をされてくる。 更に平成9年の第三次医療法改正では、医療機関の地域偏在の解消とか、医療施設の機 能の体系化といった視点で、診療上の療養型病床群の設置、地域医療支援病院の創設、 医療計画制度の充実が図られてきています。  更に平成12年の改正においては病床区分を見直す、臨床研修を必修化する。医療情報 提供を推進するといったことが、国民の意識の変化、更なる高齢化の進展、医療の高度 化、専門化等を受けて、盛り込まれたところです。この経過のもう少し詳しいものが13 頁、14頁に書いてありますが説明は省略いたします。  15頁には、マンパワー関係の法律として、医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師 法等の主な改正経緯を載せています。  16頁は平成12年の医療法等の一部を改正する法律案の概要です。直近の改正において は、制度改正の趣旨として、高齢化の進展等に伴う疾病構造の変化などを踏まえて、良 質の医療を効率的に提供する体制を確立するということで、入院医療を提供する体制の 整備、医療における情報提供の推進、医療従事者の資質の向上を図ることが柱でした。  そこで病床区分の見直しとして、療養病床と一般病床、それぞれの方向で基準を定め て区分をしていく。また、病院の施設のうち、外部委託の進展を受けて、一律の義務づ けの必要が薄れてきた施設、例えば臨床検査、給食、暖房、洗濯等ですが、そういうも のの必置規制を緩和したといった内容が含まれています。  17頁、そのほか「医療における情報提供の推進」ということで、その他の診療に関す る諸記録に係る情報を提供することができる。いわゆる開示をしている旨の広告規制の 緩和等がなされています。また、医療従事者の資質の向上として、臨床研修の必修化、 臨床研修の専念義務等が規定をされています。18頁は、その中で病床区分の変更につい ての概念図ですが、説明は省略いたします。  このような経緯の中で紹介したものの1つが、「医療提供体制の改革ビジョン」で す。これが直近の医療提供体制の今後の目指す方向性と、当面の施策を私どもとしてと りまとめたもので、これに平成14年にいただきました意見書の指摘事項を併せて、資料 2で進捗状況を報告させていただきます。その前にこの資料のポイントだけを説明いた します。  この資料は前の10数頁のみが本文で、後は参考資料です。目次に「医療提供体制の改 革ビジョン」として、全体で大きな3つのグループ立てになっています。まず「患者の 視点の尊重」という視点に立って、医療に関する情報提供の推進と安全で安心できる医 療の再構築を進めていく必要があるということです。次が「質が高く効率的な医療の提 供」で、大きく質の高い効率的な医療提供体制の構築、医療機関の機能分化・重点化・ 効率化、医療経営の近代化等です。  もう1つは「医療を担う人材の確保と資質の向上」ということです。更に医療の基盤 整備で、生命の世紀の医療を支える基盤の整備が掲げられています。  3頁、この大きな枠組みに沿いまして、それぞれの章において、構成としては枠囲み の部分に、将来像のイメージ、どういう方向を目指していくべきかを大きく掲げていま す。その下に当面進めるべき施策をより具体的に書いています。当面進めるべき施策 は、この後の資料で紹介いたしますので、将来像のイメージの柱だけを紹介します。  患者の視点の尊重については、医療機関情報の提供の促進、診療情報の提供の促進と いったことで、患者への治療方針や、治療法の選択肢の説明が適切に行われて、信頼関 係の下、患者の選択を尊重した医療が提供されるといったことを掲げています。そのほ か根拠に基づく医療、EBMの推進、安全で安心できる医療の再構築といったことで す。  4頁、「質の高い効率的な医療提供体制の構築」です。これは多項目にわたっている ので、見出しだけ紹介いたしますが、患者の選択を通じた医療の質の向上と効率化、医 療機関の機能分化と連携、急性期医療の効率化、重点化と質の向上、一般病床の機能分 化、長期療養のための療養環境の向上、かかりつけ医等の役割と在宅医療の推進、地域 で充足する医療、医療経営の近代化・効率化を掲げております。  9頁、「医療を担う人材の確保と資質の向上」においては、医師等の臨床研修の必修 化に向けた対応、医療を担う人材の確保と資質の向上が掲げられています。  11頁、「医療の基盤整備」については、医療分野における情報化の推進、メディカル ・フロンティア戦略の着実な推進等、新しい医療技術の開発促進、医薬品・医療機器産 業の国際競争力の強化といったことが掲げられています。これらにつきまして、その枠 外に具体的な施策を、こういうことをいつまでにやっていきたいということが整理され ているわけです。  それにつきまして資料2は、その後の進捗状況を少し細かめにした資料になっていま す。整理したものなので、概要を説明いたします。この少し前になりますが、「医療部 会意見書」としていただいた内容の進捗状況も、少しグレーのかかった部分ですが、表 として併せて掲示しています。  1頁目、患者の視点の尊重の中で、「医療に関する情報提供の推進」です。1つ目、 2つ目の枠は、いわゆる広告規制の緩和をやっていくべきだということです。これにつ いては、医療部会の意見書において、ネガティブリスト方式というご意見もありました が、「当面はポジティブリスト方式を前提として、客観的で検証可能な事項の緩和を図 る」というご指摘がありました。これについては平成14年3月に、専門医治療方法等の 緩和をする告示を出しています。更に平成16年1月に、「医療分野における規制改革に 関する検討会報告書」(参考資料)の中で、「更なる緩和について検討をすべきである 」という指摘をいただいています。  (2)、「医療に関する情報の提供」です。これも医療部会意見書でも同種のご指摘をい ただいていますが、「患者が自らの判断で、適切な医療機関を選択するために、情報提 供を進めていくことが望ましい」ということです。これについては、進捗状況として、 社会福祉・医療事業団や、都道府県の公的機関により、引き続き医療機関に関する情報 を提供していく。そのほか「規制改革に関する検討会報告書」において、「インターネ ットによる情報提供の推進等、医療の質をアウトカムで評価するための指標の研究をや ってみる」という指摘をいただいています。  (3)、「日本医療機能評価機構の評価」を促進するということで、平成18年度中に、 2,000病院が受審という目標を繰り上げて、順調に進捗をしているということです。  (2)「診療情報の提供の促進」として、個人情報保護法が成立していますが、原則 開示とされている診療記録について、今後更に環境整備に取り組むということです。進 捗としては、平成15年5月に「診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会報告書 」がとりまとめられて、関係の指針が策定されています。  2頁、部会の意見書ですが、これも同様の記述です。更に個人情報の保護に関する法 律が平成15年5月に成立をしていて、医療機関の個人情報取扱事業者として、その保有 する診療情報を原則として、本人からの開示請求に応じて開示するという法的な義務を 負うことになっています。そのために、それの適切な実施のために、いまガイドライン の策定を検討会にお願いしているところです。このほか、電子的な診療記録(電子カル テ)の標準化についても推進をしているところです。  (3)「根拠に基づく医療の推進」です。平成15年度末までに、頻度が高くニーズの 多い優先20疾患を定めて、診療ガイドラインを整備する等といった目標を定めていまし て、平成15年までに20疾患のガイドラインが作成されています。それを中立的な機関、 日本医療機能評価機構において、インターネット等を利用して、情報提供をすることが この5月より開始されています。  3頁、「安全で安心できる医療の再構築」についてです。これについては、医療安全 推進総合対策を着実に実施していくことを掲げております。進捗状況として、医療機関 等における安全管理体制の確保については、平成14年10月に医療法施行規則の一部を改 正して、全ての病院・有床診療所において、義務づけをしているところです。  2つ目の○ですが、医薬品・医療機器等の安全性の向上についても、所要の対策を講 じているところです。更に医療従事者の教育研修等についても試験問題の改善、医師の 臨床研修制度における到達目標の1つに位置付けるといったことを行っております。更 に公的な相談体制としての医療安全センターの設置の推進が行われ、平成16年5月時点 で全ての都道府県に設置されています。このほか医療機関内における診療行為に関連し た患者死亡に対して、専門的、学際的なメンバーで、因果関係等を総合的に検討するモ デル事業の概算要求等を盛り込ませています。  そのほか、医療事故の発生予防・再発防止で、医療部会の意見書でもいただいていた 指摘ですが、第三者機関での事例の収集・分析等の事業が開始される予定となっていま す。厚生労働大臣緊急事故対策アピールで、先ほどご紹介させていただいたところで す。  4頁、「質が高く効率的な医療の提供」の部分です。(1)医療機関の機能分化・重 点化・効率化で、一般病床と療養病床の区分を推進するということです。これについて は、平成15年の9月現在、第四次医療法改正による病床区分の届出の期限でしたが、届 出が必要な全ての病院について、それが受理されました。  「医療計画の見直し」です。これは現在のところ、平成15年8月から、「医療計画の 見直し等に関する検討会」において検討をされているところで、本年12月を目途に次の ようなポイントで報告書をとりまとめていく予定です。現行制度の評価と今後の在り 方、現行の医療計画に関して、ここに書いてあるような課題で検討を進めていくという ことです。医療計画に関しては、留意事項として書いていますが、「規制改革の流れに おいて、医療計画が新規参入の妨げになっている面があるとすれば、その観点でも検討 をし、措置することが求められる」という指摘がされています。  「機能分化の推進」です。これについては、医療法に基づく一般病床と療養病床の区 分を基本としつつ、患者がその病状に応じて相応しい医療を適切に受けられるという観 点で、急性期、難病、緩和ケア、リハビリ、長期療養、在宅医療といった機能分化を推 進することが掲げられていまして、上記、医療計画の見直し等に即して、検討を進める ことになっています。  5頁、療養病床、介護老人保健施設等への転換を促進する。進捗状況として、医療施 設近代化整備事業として、以下の病院に対して補助ということで、一定の病院に対して 支援をしていくこととしています。  続きまして、病診連携・地域医療連携の推進等といったことで、地域医療支援病院の 承認要件の緩和が行われています。また、地域におけるそのほか薬局や保健福祉の関係 の連携の促進が、今後の医療計画の見直しの中で位置付けられていく論点となっていま す。  (8)、「訪問看護ステーションの普及促進等」ということで、平成15年3月に「新た な看護の在り方に関する検討会報告書」がとりまとめられていて、在宅療養における看 護師等の専門性の発揮、疼痛緩和ケア推進、ALS患者の在宅療養支援ということが掲 げられています。  更に「地域における必要な医療体制の確保」で、救急医療体制の整備、救命救急セン ターの不足地域における新型救命救急センターの位置付け、救急救命士が行う気管挿管 だとか、薬剤投与の見直し、緩和です。そのほか感染症指定医療機関の充実、縦に項目 を合わせていただきましたら、このような観点についても、それぞれ進捗をみていると ころです。  7頁、小児医療についても、「地域における小児医療の確保」ということで、周産期 医療ネットワークの整備として、総合周産期母子医療センターを中核とした 周産期医 療ネットワークの整備を推進する等の進捗をしているところです。(6)、二次医療圏を 単位とした整備ということも、ここに掲げています。生育医療センター、ナショナルセ ンターの取組、女性専門外来の設置等の推進をみているところです。  8頁、そのほか「へき地医療の確保」として、現在の第9次へき地医療計画を第10次 にということで、見直していく予定にしています。がん対策についても、地域がん診療 拠点病院の整備促進を図ってきています。更に「精神医療の充実」で、障害者基本計 画、障害プランに基づいて、各種の施策を講じており、平成16年には「精神保健医療福 祉の改革ビジョン」の策定をしているところです。  9頁、「社会復帰促進策の計画的な推進」「精神科救急医療」も進捗をみているとこ ろです。更に「公的病院等の在り方」ということで、二次医療圏におきまして関係者、 公的病院等、民間医療機関、行政機関などの関係者の協議の場を設置し、必要な役割分 担、連携方策を見直し、必要に応じて病床数を削減していくといったことを掲げていま す。それについて、関係者の協議の場の設置が現在のところ14道県で設置され、7県で 設置予定の状況になっています。最後ですが、「公的病院等の会計基準の見直し」もあ ります。  10頁、「終末期医療の在り方」についても、検討をするべきだということは、医療部 会の意見書にもご指摘をいただいています。「終末期医療に関する調査等検討会」にお いて、報告書がとりまとめられたところで、ガイドラインを作成し、普及を図っていく ことが報告されています。そのほか「医療経営の近代化・効率化」については、特定医 療法人、特別医療法人について、要件を緩和して普及を促進することで、現在の取組を 記載しています。  11頁の網掛けの部分は、医療法人における営利企業の参入ということで、ご議論をい ただいた経過があります。営利企業の参入には、医療と経営の分化が進むことにより、 経営の効率化や医療の質の向上が期待できるといったメリットがあるとの指摘があった 一方、不採算部門の切り捨てや、医療費の高騰を招きかねないといったデメリットの意 見も多く、慎重な対応が必要というのが当時の意見書に記載されているところです。  次に「医療を担う人材の確保と資質の向上」です。臨床研修に関して、アルバイトを せずに専念できる処遇の確保だとか、マッチングシステムの導入などの進捗の整理をし ています。歯科医師の臨床研修についても、平成18年からということで、準備を進めて います。  12頁、国家試験の見直しの関係の記述をしています。薬剤師の資質の向上として、薬 剤師の養成を目的とする学校教育法の改正がありまして、養成課程修業年限が4年から 6年に延長されました。薬剤師の国家試験の受験資格についても、薬学の課程を修了し た者とされました。この両方の改正法とも施行日は平成18年4月です。この関係で適切 な実習等が図られるような対応の検討をされています。これに関連して、平成13年10月 には、「病院における薬剤師の人員配置基準に関する検討会」がありまして、その報告 書において、今後、薬剤師の需給、薬剤師の業務内容等を踏まえて、3年後を目途に、 人員配置基準の検討を開始すべきとされています。  次に「医師数の地域間、専門分野間のアンバランス是正」で、医師数については、地 域間、専門分野間のアンバランスが大きいということで、これについて平成17年度中を 目途に、医師の需給見通しの見直しを行うことを掲げています。  そのほか「医療を担う人材の確保・資質の向上」で、次頁の意見書とも関係します が、平成16年度より、「行政処分を受けた医師に対する再教育に係る検討会」を、立ち 上げる予定としています。また、そのほか、臨床研修制度において、基礎的な診療能力 ということで、内科、外科、救急部門、小児科、産婦人科、地域保健、精神科の各分野 を、全て履修するローテート研修を行うことが必修化されています。  (3)「時代の要請に応じた看護の在り方の見直し」についても、需給見直しに関す る検討会をこの6月に設置しています。また、必要な臨地実習の実施などの条件整備に 関しても、「新たな看護のあり方に関する検討会報告書」、「看護基礎教育における技 術教育のあり方に関する検討会報告書」等で、関連事項のとりまとめが行われていま す。  特定の領域について高度な知識・技術を有する専門看護師等の養成強化や普及の推進 についても、同じ報告書等においてご指摘をいただいていまして、この右の欄に全体を 整理し、記述しています。  看護師養成所の2年課程通信制の話も書いています。また、医療分野における労働者 派遣について医療部会の意見書でご指摘いただいていました。この意見書の時点では、 チーム医療の推進ということで、当時の派遣制度ではうまくいかないのではないかとい うご指摘でしたが、その後、紹介予定派遣という事前面接等の派遣労働者を事前に特定 できる仕組みによってなら大丈夫だろうというご指摘を、「医療分野における規制改革 に関する検討会」でいただきまして、その部分について労働政策審議会での議論を経 て、紹介予定派遣に限り解禁したところです。  15頁、「医療の基盤整備」です。まず医療分野における情報の推進で、電子カルテ・ レセプト電子請求等の推進、医療に関する用語・コードの標準化の推進、標準化された 用語・コードの普及、医療のIT化ということについて、それぞれの進捗を記述してい ます。また、電子認証システムの推進、レセプト電算処理システムについても同様で す。  17頁、メディカル・フロンティア戦略ですが、これについても健康フロンティア戦略 という形に改めまして、糖尿病対策に関する大規模戦略研究、第三次対がん10カ年総合 戦略における研究、老化・痴呆等の介護予防対策の研究などで、引き続き実施すること にしています。  「ナショナルセンターの整備」についても、国立長寿医療センターを第6番目のナシ ョナルセンターとして、平成16年3月に設置しているほか、国立循環器病センターに今 年度、ナノテクを駆使したセンターを設置したり、国立国際医療センターに、国際疾病 センターを設置する予定となっています。  18頁、「新しい医療技術の開発促進」で、画期的な医療品の開発支援、医療機器の開 発推進、治験の空洞化防止、医療基盤技術研究施設の設置、医薬品・医療機器産業の国 際競争力の強化ということが掲げられており、それぞれの進捗を記載しています。最後 に、当時の医療部会の意見書では、医療保険制度の改革について、医療部会として考え るところの記述をされている経過もありましたので、そこを最後に掲げています。  以上が医療提供体制の改革の経緯です。よろしくお願いいたします。 ○鴨下部会長  ありがとうございました。大変盛りだくさんの内容をご説明いただきましたが、ただ いまのご説明、あるいは資料に関するご質問も含めてご自由に意見交換をお願いしま す。 ○大橋委員  私的な意見ですが、救急医療について述べさせていただきます。いま患者の視点でと いうことでお話がありましたが、私がこの中でいちばん感じたのは研修医制度を2年間 やるということは、大変素晴らしいことだと感じたわけです。  自分は小児科医として40年ちょっと、実際に開業してからは30数年なのですが、現場 での救急医療でいちばん困るのは、救急の患者を夜中に受ける。時間外、深夜に患者さ んを開業医は診てやらなければ患者は困ってしまうわけですが、我々が診ても、救急の 場合、その患者を送る所がなかなかない。国立や市立病院が救急医療体制を整えてくれ れば、救急病院などは要らないのではないかと思っています。我々開業医が診て、これ は重症だというとき、どこどこの国立病院、市立病院へと言って、完全にとっていただ ければ全然困らないわけです。それと、今もまだタライ回しがある。  先ほど研修医制度がよかったという話がありましたが、我々もインターンが1年間あ ったわけです。昭和37年当時、インターンを1年間やりましたが、そのときに内科、外 科、小児科、耳鼻科、眼科と、みんな勉強させられるわけです。外科などは、最後に盲 腸を切るまで指導していただける。そうすると、ある程度何でもできるという気持にな れる。開業したとき、救急患者が来ても、何でも一応受けることができる。それで、こ れは重症だからここへ行きなさいと言うことができる。ですから、国立病院や市立病院 で、24時間、患者を診てくれる病院があればいい。私は今まで24時間やっていますが、 救急患者を診ても、大きな病院でとってもらえないという現実が今もってある程度あり ます。  研修医制度で、私の娘などは眼科をやっていますが、当直は内科や小児科をやるとい っても全然できない。「いやだ救急なんて、覚えてないよ」と。6年だけで終わってい る。いろいろなことはやっていない。ですから研修医制度で今度は2年間というのです から、非常に勉強してくるのではないかと思うのです。開業するには当直を月に2回や るとか義務づけていただけば、救急医療も困らないのではないか。夜10時から朝の6時 までは深夜料金で診療点数が高い。治療をしても24時間やっていれば患者も大勢くる。 そして税金もいっぱいかかってくるわけです。  難しいことかもしれませんが、例えば夜10時から朝6時までの深夜に診た診療点数に は、医師優遇税を採用していただいて、ある程度税金を安くしてもらう。そうすれば開 業医の皆さんで、夜中でも診てくれるドクターがいっぱい増えてくるのではないか。そ うすれば救急医療も困らないのではないかと思っています。私的意見で申し訳ありませ ん。 ○鴨下部会長  ほかにありませんか。 ○渡辺委員  先ほどの企画官のご説明を聞いて改めて感じたのです。私も前回の医療部会でも委員 として出ていたのですが、たとえて言えば今、経済財政諮問会議のほうからは、株式会 社参入の問題が出ている。ああいった方面の話を聞いてみると、医療提供体制は、今の ままでは余程の変革を与えなければ駄目だと、患者本位にならないといった思想が背景 にある。つまり、医療に市場原理を導入することによって、市場が評価するというよう な背景から、株式会社の参入という意見を持った方もいます。  私は個人的には絶対に反対です。反対ですが、それに対抗して、先ほどご説明があっ た厚労省の改革ビジョンができたのですが、これは非常によくまとまっている反面、マ スコミ的に言うと非常にインパクトが弱いというか、あまり印象が強くない。確かに良 いことを全部盛り込んであるのだけれど、まだ株式会社論に対抗できていない。率直に 言ってそんな印象を持っています。  なぜかと考えてみた場合、確かに制度、仕組みをいろいろ変えようとして、多くのこ とを盛り込んでいるのですが、この医療提供体制、特に患者にとって満足できる医療体 制といったものは、制度、仕組みももちろん大事ですが、それだけではどうしようもな い部分もあるわけです。教育や研修、あるいは臨床研修の義務化もなさったわけです が、どうして現場で患者本位の医療がなかなかできないのか、あるいは医療事故が起き るのかといった、その何かが、まだ分析が足りないのではないか。  つまり、制度、仕組みではすべてカバーできないのですが、少なくとも医師、看護 師、あるいは薬剤師、医療職の方々が、もっと患者本位にできるような環境づくりを、 それは国でも自治体でもできると思うのです。あるいは診療報酬の問題もあるかもしれ ない。どうも制度、仕組みはいいのだけれど、現場がなかなか患者のほうに回っていか ない原因の分析、環境づくり、それは医療法なのかどうかは別にして、やはりそういっ たことを少なくとも国としては、もっと分析して考えないと、いくら良い制度、仕組み を作っても、なかなかうまく機能していかないのではないかと思うのです。 ○鴨下部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○古橋委員  いま医療機関で、特に一般病床での在院日数が、本当にここ数年短縮してきました。 これはある意味で劇的な変化が起きていると思っています。私は看護職ですが、在宅医 療のあり方はどうあったらいいのかという辺りも、是非この部会で議論の土俵に上げて ほしいと願っています。  皆保険制度と診療報酬の仕組みの中で、国民の皆様は、入院依存といいますか、入院 志向の強い傾向になってしまったとも思えます。もちろん急性期医療では、そういうこ とは重要ですが、入院志向度の高い国民を、どう在宅医療や通院治療に、臆病にならず に自分の暮らし方として受け入れていっていただくかが課題と考えます。制度や意見、 通知などで出されても、在宅医療が描くような形で進まない現状があります。  それはなぜかということと、訪問看護ナースが増えていっていません。訪問看護ステ ーションも増えていかないわけですが、今後の国民の選択ということも含めて、在宅医 療、継続医療、訪問看護が、どう進んでいくことが必要かどうかわかりやすく、見えや すいものにしていくかを、是非議論していく必要があるのではないかと思っておりま す。 ○杉町委員  私は小さい病院の院長をしているのですが、先日たまたま医政局長の安全といいまし ょうか、安心した医療はどうすればいいだろうかというご講演を聞いて、大変感銘深く 思ったのです。小さな病院にいましても、ほとんど毎日、大なり小なりの、事故ではな いのですがミスは起こります。必ず起こります。なぜ起こるかというと、医療というの は、やはり人の手によってやるわけです。  交通事故が毎日起こっています。法を整備しても、あるいは道路を、信号機を整備し ても必ず起こる。これは、人が運転するから、人間が運転するから、人の手によって運 転するから事故が起こるのだと思います。医療事故も、機械でやるわけではありません から、1人ひとり人の手によってやるわけですから、必ず起こり得るわけです。  どうすればこれを減らすことができるか。非常に複雑なのですが、いろいろな背景が あるように思います。例えば、病院はどこでもいま経営が大変ですから、人手を減らそ うとか、どうにかして経営をよくするためにいろいろな節約をする。やはり、そういう ファクターも入っていますし、一方では国民の願いとして、医療の質を高めてほしいと いうこともあり、新しいものに取り組んでいくと、いろいろなミスも起こりやすい。  医療というのは安全でなくてはいけないし、国民の方々が安心して医療を受けられる ようにしなくてはいけないわけですが、なぜ現在いろいろな事故が起こるかということ を、いろいろな角度からまず分析してみる。これは1つや2つの理由ではない、いろい ろな理由が総合的に作用して起こっているわけですから、その各々に対する対策という ものを考える必要があるのではないか、というようなことを考えています。  特に最近、私の病院で見ていますと、リピーターが多いのです。具体的に言うと、あ る方がここ2年間で7回ミスを繰り返している。例えば血液型を間違って報告するな ど、そういうことまで起こします。この方については、例えば1カ月間だけ現場を外し て教育したのですが、なかなか直らない。再教育も、ドクターや看護師だけの再教育で はなく、薬剤師、検査技師、そういう方々の再教育をする場というのも是非お考えいた だきたいと思います。 ○山本(信)委員  私は薬剤師ですが、医療提供体制を作る上で環境づくりが必要だというお話がありま したが、医療専門職種の中で、私ども薬剤師だけが実は所管が医政局ではないところに あります。病院の中の薬剤師はもちろんですが、町の薬局も最近では医療提供体制の中 に組み込まれていますので、議論の中で医薬局と、局間の調整をしていただかないと、 実効ある医療提供体制がなかなか作りにくいという面があります。特に事故絡みで言え ば、医薬品が絡む事故が数も多いということがありますので、そうした意味でも是非、 この場で議論をお願いしたい。  医療提供ビジョンの中でも、薬剤師にかなり期待されている部分がありますが、所管 が違うために縦割になってしまっていることの弊害、ズレが出てきていますので、是非 そういった部分でも調整した議論を進めていただきたいと考えています。今まで医療部 会の意見として挙げられた中で、薬剤師絡み、薬局絡みで、安全を高めるという視点で かなり指摘されている部分がありますので、今後の検討の中でもそういった部分をご検 討いただきたいと考えています。よろしくお願いいたします。 ○鴨下部会長  医療事故のことが話題になっていますが、先ほどご説明がありましたが、来月から第 三者機構で報告し、それを分析したり還元したりという計画があります。それにして も、やはりゼロにはできない、これは分かり切ったことですが、少しでも少なくしなけ ればいけないということですが、いかがでしょうか。 ○村上委員  病院会の代表というよりも、現場の病院長として言わせていただきたいと思います。 1つは、いま事故か合併症か分からないケースがたくさんあるわけです。いま世論がい ろいろありますので、患者はすべて合併症でもミスだと持っていく可能性が非常にある わけです。例えば、新しい術式、患者にとって良い術式と思うものも、何かあったら事 故やミスにされてしまうのではないかというので、現場の外科医たちはかなり萎縮医療 を始めています。あの事件以来、特にそういう傾向が出ているわけです。  これは事故か合併症かということを、どこか中立的な所で評価するものを是非作って いただいて、何かあったらそこに持って行って評価していただかないと、マスコミに一 方的に叩かれるのではないかということで新しい医療が進まない、萎縮医療に陥る危険 性が、実際に私どもの病院でもあるわけですので、そういう点の検討をお願いしたいと 思います。 ○北村委員  医療事故の問題は、ここにおられるような偉くなられた先生方が起こしているのでは なくて、現場の患者と直接接している若い医師たちなのです。この問題は、医政局が広 告を認めた専門医の教育課程で十分教育し、改善していくことが必要と考えます。専門 医教育は学会に任されていますが、専門医の教育の中で、どういう事故が過去、眼科な ら眼科、耳鼻科なら耳鼻科、外科なら外科で起こり何が人を死なせているのかというこ とを検証し、試験問題の中、あるいは教育の中、実地の試験も含めて、やはり専門医の 教育の中に大きく深く、重要な課題として取り込んでいくのが大事ではないかと思いま す。  行政からの通達だけでは、実際に毎日患者を診ている人たちには伝わっていかない。 院長には伝わるのですが、毎日の教育をする人たちの中でやらなければならない。是 非、この専門医教育の中に、医療安全教育を含めるということを徹底させる。その代わ り、専門医というものを日本医師会も承認していただく、医政局のほうもそれに対し て、何らかの広告以上のものを考えていくということが必要ではないか。  事故が減ってきたという実績があれば、それは保険医療等々にも反映させていくとい う形になればと思っています。実際に死亡させるような事故を起こしているのは、非常 に高度な医療を行う若い専門医たちなのです。その人たちが一生を台無しにするような ことがたくさん起こっているわけです。専門医の教育を学会に預けている限り、学会で それを指導しなさいと、それができるのであれば、日本医師会も医政局も、専門医を承 認していこうという姿勢を出していただくことができないかと常々考えておりますの で、よろしくお願いいたします。 ○佐伯委員  私は、医療用具部会というのに出ています。いまの医療は非常に高度な技術を必要と し、そこではいろいろな道具を使うわけです。例えば内視鏡や腹腔鏡の不具合、不整備 ということも、事故に絡んでいることがあると思うのです。それをちゃんと調整するの は臨床工学技士なのですが、臨床工学技士がどれだけきちんと病院に配備されているか というと、医療機関における人員配置基準では、名称も上がってこないぐらいで、かな りそれはお寒い現状かと思います。  私は、医療はドクター1人が行っているものではなくて、チーム医療であると思いま すので、チーム医療の質を高めていく、そのためにきちんと人材も育成しなければいけ ないと思っています。医療人の育成のところにも、いまある現実で大事な調整をする人 たちが上がってきていないのが非常に残念でもあり、患者の立場として怖いという気も しています。それが1点です。  もう1点は、患者への情報の提供ということで、医療を受けようとする個々の患者に 対しては、情報提供の姿勢はわかるのですが、現実の医療はこんなことが行われていま す、こういう問題がありますというような大きなことの情報提供は、あまり国民にはな されていないような気がいたします。是非ともこういうものをアピールしていただい て、国民全体から信頼が得られるように、こちらも分かって、それで努力をしていきた いと考えております。 ○福島委員  内容のことではないのですが、先ほどのご説明のとおり、いま抱えているこの部会で 検討すべき課題は山ほどあると感じます。今後のこの部会の進め方ですが、大体どうい う課題をどういう時期に、どの程度まとめていくのか。非常に課題はありながら、休会 の期間が相当ありましたので、今後の医療部会をどういうスケジュールで、どういう形 で進めていくのかを大ざっぱで結構ですので、事務局のほうから教えていただきたいと 思います。 ○鴨下部会長  ちょうどそのような進め方をしようと考えていたところです。医療事故関係は、まだ まだご議論がおありと思いますが、それに関してはこの場では一応打ち切らせていただ きます。 ○見城委員  この中で、人材不足の問題がやはり大きいと思うのです。いろいろ拝見した中では、 「看護職員確保対策」とか、いろいろありますが、人材移入ということが大変進められ ています。有無を言わせずという状況で、これだけ看護師不足がある現状に対して、東 南アジア等からの人材移入を早急に法的に整備して受け入れるべきである、ということ が別の委員会ではもうまとめられたわけです。そういうことに対応したことは、何もこ こにはありません。別の委員会ではそういう動きで、完全に法的整備というように動い ている。それに対して、実際に専門のほうのこちらの委員会ではどうなのか。このまと めの中からは見えませんが、その点のご説明をお願いしたいというのが1点です。  患者側の立場では、足を折って入院した高齢者の方が、看護師が足らないために3日 間、縛られていてボケが始まった、ということを実際に見てしまうと、人材不足という こと、だから移入しようということに対して、早急に明快に対策を進めるべきではない かということです。  もう1つは、少子化の問題が非常に言われている中で、若い女性、未婚の女性等の性 病の問題や不妊の問題、そういう女性の状況があるのですが、「女性専門外来を設置し 」というところがあります。これは、そういったことも含んでいるのかどうか。少子化 のいろいろな要因の中の1つに、不妊が大変多いと思います。また、不妊以前の少女期 における性病や、それがまた不妊につながっていったり、そういうことが実際にある中 で、女性特有の専門外来が設置されるということは、そういう部分も含んでいるのでし ょうか。 ○鴨下部会長  お答えをお願いします。 ○総務課長  人材の確保の問題ですが、この部会でもご議論いただければと思っております。医療 の仕事の場合には、一定の技能がないと、きちんとした安全で、安心できる医療が提供 できないということ、あるいは患者に接するということで、コミュニケーションをきち んと確保する。したがって、日本語がちゃんとできるという、いろいろな制約があり、 国際化という流れはありますが、私どもとしては外国の医療技術者の方に日本で働いて いただくためには、解決すべき問題がいろいろあるのではないかと考えています。しか し一方で、FTAなど、自由貿易といった観点からの動きもあり、限定的にそうしたも のを受け入れていくことが必要です。  医療の前提として、在留資格の問題もありまして、単純労働は現在、在留資格は与え られていないということもあります。そういうことも含めて、FTAといった流れの中 で部分的に対応していくということが、実際にいま出てきています。基本的には、一定 の技能、あるいはコミュニケーションの能力をどう確保するかという観点から、この問 題については慎重に考えるべきではないかと思っています。いずれにしても論点の1つ であろうと思っています。また、専門外来の件については、不妊の問題も入っている、 当然対象にして対応するということになっています。 ○見城委員  FTAに関して、例えば経済中心に話が進められている部分と、こちらのこういう審 議会等の部分との接点が全く見られません。FTAを中心に、どう人材移入をしていく かということでは、かなりのスピードで進められています。そこにこういった医療専門 の方々のご意見がどれだけ反映しているのかが疑問でしたし、患者側、医療を受ける側 の希望や意向なども、どれだけ反映しているかというと、ほとんど窓口がないのです。 経済の効率先行、人口減少が先行で、FTAを中心に話が進められているということに 対して、こういった重要な場でもう少し皆さんのご意見が出され、国民に問いかける形 をとっていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○看護職員確保対策官  見城委員からご質問がありましたFTAの関係について、現状をご説明申し上げたい と思います。FTAですが、看護職員についても日本で働かせてほしいということで、 フィリピンやタイから要望が寄せられているという状況があります。FTA自体は、日 本の経済社会の活性化のために、なるべく他の国と結んでいこうという基本方針です。  ただ、日本における医療の現場がきちんと、最近非常に問題になっている医療安全の 確保ということも含めて考える。医療事故の中で、コミュニケーションミスが非常に大 きな問題になっています。日本人の間だけでも問題になっていますので、異文化、異な る言語という問題は、そこはしっかり確保していくというのが基本であると思っていま す。  先ほど総務課長からお話がありましたように、医療は業務独占の資格ですから、やは りきちんと日本の資格をとっていただく必要がありますし、また日本語の能力も、日本 の医療現場ですから必要であり、そこは絶対に確保することが必要だと思っています。  私どもの基本的な考え方は、現在のところ労働力が不足するから看護職員をお願いす るというようなことでは、ちょっと違うのではないかという感覚です。現在の看護職員 の需給見通しは、平成17年末でほぼ均衡するという見通しになっていますが、18年以降 どうするのかということがありますので、資料の中で触れましたとおり、それ以降の話 については、いま需給の検討をしています。その検討の中で出ていますが、日本には潜 在看護職員の数が、55万人いる。この問題をどう考えるのかというところが、私どもに はやはり先決の話なのではないか。  単純に労働力が不足しているから外国の方をお願いするということではなく、むしろ 専門職の方に、日本社会に参画いただくことによる活性化なりということを考える話で あって、労働力が不足しているから入れるということを正面から言うのはどうなのだろ う、というように考えています。いずれにしても、そのようなことを基本線にして、現 在のFTA交渉という形で協議を進めさせていただいています。日本の医療現場にとっ て良い形でまとまるようなことを目指したいと考えている次第です。 ○辻本委員  私ども15年間、電話相談ということで患者や家族の生の声を伺ってきております。特 に最近、患者側の声の中には、依存しなければならない状況と、不信感を持つという、 依存と対立という実に二律背反のジレンマの中で苦しんでいる患者たちの姿が浮かんで きます。医療は、対立や依存の中で人間関係を作っていくのではない、信頼ということ を基に作らなければならないときに、医療現場がしっかりと向き合っていただけるよう な、そうした環境にない。仕組みができていないのではないかという、その辺りがこの 社会保障審議会の中で議論し、確立していただきたい部分だと考えています。  患者の意識改革への働きかけと、医療現場の環境づくりというお話がありましたが、 私もいろいろな病院へ行かせていただくのですが、トップの意識というのが非常に病院 経営というところに大きく影響していると思います。トップの意識の中に、看護師が副 院長ということで加わり、キュアとケアがきちんとチームを構成し患者の自立支援をす るシステムづくりなど、医療人の人的配置の社会の保障という形で組織づくりなどもで きるように、話し合いを是非進めていただきたいと思っています。 ○鴨下部会長  まだいろいろご意見はおありかと思いますが、今日は最初ということもありますの で、全体的な議論はここで終わらせていただきたいと思います。先ほど福島委員からお 話がありましたように、医療供給体制の改革についての議論の進め方の大まかなところ を、事務局からご説明いただけますでしょうか。 ○総務課長  先生方のご意見を拝聴しておりまして、たくさんのことを言いたいということがひし ひしと伝わってまいります。大変時間が短くて、誠に申し訳ございません。今日は1回 目ということでお許しいただきたいと思います。  私どもとしましては、やはり先生方のほうから幅広くいろいろな問題を指摘してもら う。あるいは、我々として取り組むべき課題、論点を出してもらう必要があるのではな いかと思っており、もう少しこうした作業を続けたいと思っております。できれば来月 から、月1回程度のペースで、年内3回ほど行いたいと思いますが、3回にわたり論点 の整理といいましょうか、課題の提出といったことをご自由にしていただきたい。基本 的には今日と同じような議論をしていただきたいと思っております。  ただ、ランダムにやっていても効率的ではありませんので、私どもとしては今日ご説 明しました、昨年8月にまとめた「医療提供体制のビジョン」が、幅広い観点から課題 を網羅しておりますので、この項目に沿って年内3回ぐらいに分けて、さらに必要な資 料をお出ししたいと思いますが、そういうことも踏まえて先生方には、このビジョンに 沿って意見、論点を提示していただくことをお願いしたいと考えております。その上 で、来年1月に論点の整理、この部会として、どの問題について特に取り組んでいくか ということについて整理をしていただきたい。  もちろん、課題が山積しておりまして、この部会で対応策を全部議論するのは大変な ことです。実際に、私どもではすでにいろいろな検討会が立ち上がっており、いろいろ な場でご議論いただいております。この医療部会は、その全体を統括するような、基本 的な方向性を示してもらうような審議会だろうと思っておりますので、いろいろな検討 会などの状況も見ていただきながら、いわば対応の交通整理ということもしていただき つつ、一方でこの医療部会として、是非取り上げて意見を集約すべきであるというもの を整理していただいたらどうであろうかと考えております。  その上で、局長のほうからお願い申し上げたように、平成18年の通常国会に、医療保 険法の改正法案を提出したいという厚生労働省としての意向がありますので、議論の結 果、法律改正に及ぶようなことがあれば、せっかくの機会ですから、医療保険の改正に 合わせて、こちらのほうも医療提供体制の改革ということも合意が得られれば是非やり たいと思っております。そうしますと、どうしてもこの部会としての意見は、その前 年、平成17年の年末までにとりまとめていただきたい、という希望を持っているところ です。いかがでございましょうか。 ○鴨下部会長  以上のようなことですが、これについてはよろしゅうございますか。 ○杉町委員  いまのお話はよく分かりました。ビジョンを見てみますと3つあります。「患者の視 点の尊重」「質が高く効率的な医療の提供」「医療の基盤整備」と3つですから、やる のであれば、大まかに今回はこういうことと、例えば次回は「患者の視点の尊重」、主 にこれを中心に、次は「質が高く効率的な」というように、大まかなことを言っていた だいたほうが、私どもとしては発言しやすいような感じもいたしますが、いかがでしょ うか。 ○総務課長  事前に資料の送付と、特にどの分野を議論するかということは、先生方に早目にご連 絡を申し上げますが、一応私どもとしては、医療改革のビジョンの最初の目次に沿っ て、上から順番に3回に分けてご議論をいただきたい。したがって、次回は医療の情報 提供、あるいは安全で安心できる医療の再構築、この辺を対象にして論点の提出、意見 交換をしていただければと考えております。 ○大橋委員  今までどの部会でも、あるいはこの部会でもお話がなかった点ですが、もし時間があ れば是非医療の領域の方々のご意見をお伺いしたいことがあります。私どものような自 治体病院、過疎地域にある病院の医師は、労働過重と労働法的な位置づけに悩んでいま す。医師は、いくら労働基準局から叱られても、ひどい所では100床以下の病院では1 カ月7回ぐらいは当直をしているのです。代休が与えられない。それをしないと医療の 確保ができないのです。基準局から叱られます。これをどうすればいいのか。当然、医 師にも労働権というのはある。それを守らなければならない。そういうことを考えてい くと、病院のあり方そのものに、あるいは医療提供のあり方にまでいくのです。是非そ うした面でのご意見を、時間があったら伺いたいと思っております。 ○鴨下部会長  重要なご指摘ですので、時間がなくてもこれはやらなくてはいけないと思います。 ○松井委員  3回に分けて大枠の議論をするということについては、それで結構ですが、見城委員 から先ほどご指摘があったような点、あるいは法律改正でなくてもやれるものなどいろ いろあるかと思います。すぐやらなければいけないものについては、結論をこの医療部 会で出せるものは出し、着実に取り組んでいただく。そういうこともご検討願えればと 思います。もちろん、法改正が必要なものについて、結論を急ぐべしと申し上げている わけではございません。 ○鴨下部会長  それは、これからの議論の進め方で是非吸収していきたいと思います。もう1点、議 題として「三位一体改革について」というのがございます。時間があまりありません が、ご説明いただいて、少し議論をしていただきたいと思います。 ○総務課長  資料3「地方六団体の提案の概要」というのがあります。本年の8月20日に、地方六 団体のほうから提案があったものです。ご案内のように、平成15年6月に、「経済財政 運営と構造改革に関する基本方針2003」、いわゆる骨太方針の2003の中で「三位一体改 革」というものが、閣議決定されています。「官から民へ、国から地方へ」という考え 方のもとで、地方の権限と責任を大幅に拡大し、国と地方の明確な役割分担に基づいた 自主・自立の地域社会からなる、地方分権型の新しい行政システムを構築していくとい う目的のもとに、三位一体改革を平成16年度から3年間にわたって行うということで す。  具体的には、三位一体というのは、国庫補助負担金の改革、地方交付税の改革、税源 移譲を含む税源配分の見直し、すなわち国税を地方税のほうに移譲するという、この3 つの改革を一体となって進めるということです。こういう政府としての方針に基づき、 平成16年度は約1兆円の補助金の廃止、税源移譲が行われたのですが、17年度および18 年度の2カ年で、残り約3兆円の税源移譲、補助金の廃止ということが課題となってい ます。  そうした状況の中で、地方六団体から国に対して提案がありました。資料1頁です。 廃止対象補助金規模として3.2兆円、それに対して若干の効率化努力を差し引いて、税 源移譲として3兆円程度という提案です。具体的には、私ども厚生労働省関係では社会 保障分野で9,444億円の補助金の廃止ということの提案です。一方、(3)にあります ように、国の委託金や国家補償的性格を有するようなものについては、今回の対象にな っていないという状況です。  2頁目からは、厚生労働省関係の9,444億円の内訳です。いろいろな分野にわたって いますが、3頁目に「医療」という分野があります。ここにはいろいろなことが書いて ありますが、私どもの局で言うと国立病院の関係を除くと、1の臨床研修必修化のため の補助金が百数十億ありますが、これ以外のほとんどの補助金がリストアップされてい るということです。  4頁に、省全体のものをポンチ絵にしたものがあります。5頁に、医政局関係の提案 が出されている補助金の概況がまとめてあります。小児救急医療をはじめとする救急医 療体制の確保関係、へき地医療体制の確保関係、医療施設整備関係、6頁で看護職員確 保対策関係、歯科保健の関係、8020運動の関係、あるいは電子カルテ導入推進関係等々 ということで、ほとんどの補助金がリストアップされています。  もちろん、これは誤解があってはいけませんが、地方六団体としてもこうした事業を 廃止をするということではなく、必要な事業は引き続き地方自治体において責任をもっ てやっていただくわけですが、補助金という形でのやり方は、もう廃止してほしいと。 その代わり、それに見合う財源、税源を地方に移譲してほしいという趣旨です。  ただ、私ども国としても、国民皆保険体制の下で、すべての国民に一定以上の水準の 良質な医療を平等に提供するという責務を負っています。したがって、補助金廃止とい うことで、直ちに実際の医療の現場に支障は生じないか、あるいは特にへき地医療、小 児救急医療といった分野は地域格差が非常に大きいので、こういうやり方で国の責任が きちんと果たせるのかというのは、正直言って不安もあります。いずれにしても、これ からこの問題については政府として取り組んでいくということになっていますので、ご 議論をお願いしなければいけないわけです。  総理のほうからは、この三位一体改革については、11月半ばを目途に、政府全体とし ての全体像をとりまとめてほしいという指示が各大臣のほうになされていますので、そ のようなスケジュールもにらみながら、私どもとしては限られた時間の中で適切に対応 していくために、先生方のほうから、せっかくの貴重な機会ですので、私どもに対して ご意見を賜わればということで、議題として出させていただいた次第です。  なお、参考資料に平成17年度の概算要求の概要を付けています。時間がございません ので配付だけにさせていただきますが、この概算要求自体は、地方六団体からの提案の 直後であったこともあり、従来のような補助金を基本に、概算要求をしているというこ とです。以上です。 ○鴨下部会長  これも大変大きな問題だと思いますが、何かございましたらどうぞ。 ○土屋委員  いまご説明になったとおり、最後に課長から何か心配のようなお話がありましたが、 この地方六団体の出した改革について、税源が移譲するということは、国が今までやっ てきた事業がそのまま移るということよりも、国としては一応これは削減という形にな りますね。地方では、これはそれぞれの首長の裁量で、さらにこれを続けるのか、やる のかということになってくるわけで、果たしてその辺がきちんと担保された上での話か どうかということについては、まず税源移譲ありきで始まった話のように理解していま すので、国も地方も財源難だということですと、なかなか今までのような形では継続し ていかないのではないか。  冒頭の局長のご挨拶にもありましたように、また今、課長もおっしゃったように格差 があるわけです。その上にこういう形になると、もっと格差ができるであろう。この検 討会は、まさしく社会保障審議会ですが、決してオーバーなことを言うわけではありま せんが、憲法で国の責務として社会福祉なり社会保障なり、あるいは公衆衛生の向上・ 増進に努めなければならないと謳ってありますが、これは重大問題で、今のままでいく と、私ども素人が見ただけでも半分以上、7割から8割方は地方に税源が移譲されてし まう。それに伴う事業が、せめて今までのレベルでやれるかというと、大変心もとない という話です。  そこでお願いしたいのは、こういう状況ではありますが、国の責務でやることと、地 方でやることとをきちんとする。これは前後が逆になってしまっていると思うのです が、今からでもその辺を、国民的なコンセンサスを得るような形で、これを明確にすべ きだろうと思います。間違ってもこの結果が、国がその責務を放棄したという謗りを受 けないような形にしていただくよう、国としても相当本気で取り組んでいただかなけれ ばいけないと考えます。 ○古橋委員  今回この資料をいただき、医療という領域で、看護師養成所の運営費と、看護職員確 保特別対策事業というのが上がってきたことに、看護協会としては大変衝撃を受けてい ます。本日も話題になりましたように、医療事故防止対策等々からも、現在、看護の基 礎教育に関しては、「看護職の基礎教育における技術教育のあり方」の報告書が出さ れ、かつ新たな動きに入ったばかりです。看護の基礎教育は大きな転換点に入ったとこ ろです。  毎年国家試験を受ける人が5万人を超えている1つの大きな群ですから、その基礎教 育の改革は全国的な視野の下でなされるべきものと考えます。事故を起こさない看護 職、また看護職確保では、本日FTA絡みの問題も出てきました。看護協会は、この問 題はある危機感を持って議論を始めています。そうしたことも含めて現状を考えます と、之は都道府県単位で行われていくような段階では決してございません。国家レベル で、国のレベルで全国的な標準値やモデルを求めながら進めていく。看護職の養成教育 や確保という問題は、全国の視点で進めていただくべきものであると強く思っていま す。ここに上がってきたことは心外であり、衝撃であるという意見を述べさせていただ きます。 ○村上委員  こういう形になりますと、何のために我々はここに集まって審議しているのかと思う わけです。せっかくここでいろいろな提言をしても、国のほうで予算措置がとれない、 勧告程度しかできないものなら、この審議会そのものの意味がなくなってしまうのでは ないか。総論としてはそれを恐れるわけです。  各論としては、私は千葉県で、千葉県は赤字寸前の団体で、これをやられたら確実に こなくなる。医療の体制の格差だけではなく、県の財政の格差が大きい所は、せっかく 財源移譲をされてもいかないだろうと思いますので、この点については私は反対です。 ○見城委員  私は、仕事柄、日本全国を回っているのですが、各県のトップの方々にお会いして も、どの県からも財源が余っているというお話は伺ったことがないのです。どの県も大 変逼迫している、もう潰れる寸前かもしれないとおっしゃっている。その中で財源移譲 をされても、どのようにこれが反映するのかが本当に不安です。  これがまずあり、1つこういう三位一体の改革が動き出してはいるのですが、国民皆 保険、国民健康保険と、みんな国民が頭についているものですから、国民としてはそれ が各地域に分散されていったときのトータルイメージとして、国民皆保険、国民健康保 険、この精神はどのようにきちんと維持されるのか、ここは明確に出していただきたい し、討議されるべきですし、盛り込んでいただきたいと思います。 ○山本(文)委員  私はこの三位一体改革案を作った責任者の1人ですから、怒られるかもしれませんが 一言だけ申し上げておきます。私どもは、3兆2,000億円の補助金、交付金の地方移譲 については、事業をやめてくださいと言っているわけではないのです。国が補助金を出 して地方がやっているわけですから、もう直接、地方がやれるようにしてくださいと言 っている。  今から10年前に、地方分権は国会で決議しているのです。それがあまり進んでいな い。ですから、こういう機会に地方分権を促進するためにもこれを行う。地方分権とい うのは財源が移らなければ、本当の地方分権にはならないわけです。  したがって、今回の3兆2,000億円の税財源の移譲については、私どもでこの仕事を しますから、それをやらせてくださいと言っているわけです。私どもから発想したわけ ではありません。これは政府から、地方で3兆円の補助金、交付金の削減案を作れと言 われて、それで作ったわけです。私どもが発想して、こうしてくださいと言っているわ けではないのです。3兆円の補助金、交付金の削減を行うのは、地方で考えでほしいと いうことでしたから、この機会に地方分権の促進を図っていただくことにしようという ことを含めて、3兆2,000億円を作ったのであって、この事業を廃止してくださいとは 一言も書いておりませんし、一言も言っておりません。また、そういう考えもありませ ん。  事業は事業として進めていくべきなのですが、問題は地方自治体を国民の皆さん、住 民の皆さんが信頼するかしないかです。地方におろしたらやれない、財政格差がある、 あるいは行政格差があるから小さい所は何もやれない、大きい所はちゃんとやるかもし れない、そういう考え方があること自体が、私は間違っていると思います。地方分権が きちんと進んでいれば、そういう考え方は出てこないと思うのです。1人でできないも のは共同でやればいいのです。小さな町ではできないが、10の市町村が集まってやれば できることがたくさんある。  私どもが申し上げているのは、今度のこの3兆円の改革については、政府から頼まれ て、私どもが作って提案したものであって、地方からの発想ではないということ。もう 1つは、事業を廃止しようと言っているわけではありません。やっている仕事は、全部 地方に補助金がきて、実施をしているわけです。実施をしているのは国ではありませ ん、地方がやっている。そういう部門については、地方に直接させてください、指図 を、干渉を、関与をしないで地方にさせてくださいということなのです。その点、ご理 解いただきたいと思います。これからどうなるか分かりませんが、そういう考え方であ るということをご理解いただきますよう、お願い申し上げておきたいと思います。 ○鴨下部会長  まだまだ議論は尽きないと思いますが、今日はこれぐらいにして、いま出していただ いたようなご意見を、事務局で十分参考にして今後の対応を考えていただきたい。ま た、今後の動きについても、是非この部会にご報告をいただきたいと思いますが、よろ しゅうございますか。  本日予定しておりました議題は、一応終わりましたが、そのほか何かございますでし ょうか。もしよろしければ次回以降の日程調整等について、事務局からご説明をお願い したいと思います。 ○総務課長  次回以降の日程につきましては、調整の後、ご連絡をいたしたいと思います。どうぞ よろしくお願いいたします。 ○鴨下部会長  それでは本日はこれで閉会にしたいと思います。大変お忙しいところご参加いただき まして、長時間にわたりありがとうございました。 ┌――――――――――――――――――――――――┐ |照会先                     | |医政局総務課                  | |濱田、野崎                   | |連絡先:03−5253−1111(内線2518)| └――――――――――――――――――――――――┘