04/09/08 第3回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会議事録   第4回ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会     第3回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会              第3回個人遺伝情報保護小委員会                    議事録 1.日時 平成16年9月8日(水) 16:00〜18:30 2.場所 厚生労働省省議室 3.出席者   (委員)垣添座長、位田座長代理、黒木座長代理、宇都木委員、江口委員、小幡委員、       勝又委員、鎌谷委員、具嶋委員、栗山委員、佐々委員、菅委員、高芝委員、       武田委員、辻委員、富永委員、豊島委員、橋本委員、廣橋委員、福嶋委員、       藤原委員、堀部委員、柳川委員、吉倉委員   (事務局)文部科学省:清水研究振興局長、小田大臣官房審議官、              安藤生命倫理・安全対策室長        厚生労働省:松谷技術総括審議官、上田厚生科学課長、高山研究企画官        経済産業省:多喜田生物化学産業課長、河内事業環境整備室長 4.議事次第   (1)遺伝情報等の個人情報保護を中心とする研究における倫理上の諸課題への対      応について   (2)その他 5.配布資料   資料1−1 個人情報保護に関して検討すべき事項について   資料1−2 個人情報保護に関して検討すべき事項について(論点)   資料2   研究の進展等に伴う見直しの論点について 6.議事 ○高山研究企画官  定刻になりましたので会議を始めさせていただきます。本日は、文部科学省「ライフ サイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会」、厚生労働省「医 学研究における個人情報保護の取扱いの在り方に関する専門委員会」、経済産業省「個 人遺伝情報保護小委員会」の第2回目の合同開催となっております。最初に、前回ご欠 席でいらっしゃいました委員の方々につきましてご紹介させていただきます。財団法人 エイズ予防財団理事の栗山昌子委員です。弁護士の高芝利仁委員ですが、少し遅れてい らっしゃるようです。財団法人愛知県健康づくり振興事業団あいち健康の森健康科学総 合センターセンター長の富永祐民委員です。埼玉県立大学学長の柳川洋委員です。国立 感染症研究所名誉所員の吉倉廣委員です。なお、本日は南条俊二委員はご欠席との連絡 を頂戴しております。それでは、以後の議事進行につきましては垣添座長にお願いいた します。 ○垣添座長  お忙しい中、暑い中をお集まりいただきましてありがとうございます。最初に、事務 局から配付資料の説明をお願いします。 ○事務局  本日の配付資料についてご確認をお願いいたします。資料1−1は、「個人情報保護 に関して検討すべき事項について」、その論点をまとめた資料1−2、資料2は「研究 の進展等に伴う見直しの論点について」、参考資料といたしましてファイルに綴じたも のがあります。これは前回もご用意させていただいたものですが、今回新たに参考資料 1−2「疫学研究に関する倫理指針」、参考資料3−9「個人情報の保護に関する法律 についての経済産業分野を対象とするガイドライン」を追加しております。なお、この 参考資料集は次回も使いますので、大変恐れ入りますが、会議終了後、机上に残してお いていただきますようお願いいたします。併せまして、前回の議事録を「未定稿」とい うことでお配りしております。これにつきましては、9月15日までにご確認いただきま して、何かありましたら、ここに書いてあります宛先までご連絡をお願いします。な お、その後、議事録を確定し公表ということにさせていただきたいと思います。よろし くお願いいたします。 ○垣添座長  それでは、本日の議事に入ります。前回の委員会で一通り問題点をご議論いただきま した。当然、本日からそれぞれの問題点に関して議論を深める予定でありましたが、個 人情報保護の観点から、個人情報保護法の規定の中で指針に取り込むべき事項がないか どうか、ということを確認する必要があるということで資料1−1をまとめてもらいま した。結構複雑なものですから、資料1−2という形でその中身を整理していただいて おります。これによって、個人情報保護法と指針を比較して整理すべき事項の洗い出し がなされています。  申し上げたいことは、2001年に3省のゲノム指針が作られたときには個人情報保護法 がなかったということです。したがって、来年4月以降、個人情報保護法が施行される にあたって、3省指針に特に法律的な観点から欠けている部分はないか。つまり、法と の整合性を見ていただくこととなりました。しかも、日程的にかなり差し迫っておりま して、内閣府との関係で9月中にその結論を出さなければなりません。  そこで座長の提案ですが、本日の進め方として、まず、3省指針と個人情報保護法と の整合性が特に法律的な面でどうかということを、資料1−1と資料1−2に沿ってご 検討いただき、その後、時間があれば前回ご議論いただいた中身に沿って、資料2の流 れに沿って順次検討を進めていきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○垣添座長  そのように進めさせていただきます。よろしくお願いします。それでは、資料につき まして、事務局からご説明いただけますでしょうか。 ○高山研究企画官  資料1−1と資料1−2についてご説明いたします。資料1−1の1枚目ですが、 「個人情報保護に関して検討すべき事項について」は、個人情報保護法とヒトゲノム・ 遺伝子解析研究に関する倫理指針について整理させていただいたものです。内容を読み 上げさせていただきます。  個人情報保護に関する法律は、「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法) 」、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)」 及び、「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(独立行政法人等個人 情報保護法)」があります。ここで、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針 (ゲノム指針)」とこれらの個人情報保護に関する法律の関係を整理すると、個人情報 保護法第8条に「国は、・・・事業者等が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るた めの指針の策定・・・を講ずるものとする。」とあり、国が指針を策定することが示さ れているが、ゲノム指針は個人情報保護の徹底も含むものであるものの、人間の尊厳及 び人権が尊重され、社会の理解と協力を得て、研究の適正な推進が図られることを目的 として策定されたものであり、個人情報保護法に基づく指針ではない。当該研究を実施 する全ての研究機関等は、ゲノム指針の遵守が求められるものであるが、個人情報保護 法、行政機関個人情報保護法及び独立行政機関等個人情報保護法が適用されるそれぞれ の研究機関等は、個人情報の取扱いにあたってはそれぞれに適用される法律を遵守する 必要があることは言うまでもない。ただし、個人情報保護法の義務については、学術研 究機関が学術研究の目的で個人情報を取扱う場合はこの義務の適用除外とされているこ とから、民間研究機関等においては、個人情報保護に関して努力義務が課せられてい る。従って、ここでは、個人情報保護法の適用を受けない民間研究機関等が当該研究を 行うことにも配慮し、ゲノム指針において、少なくとも個人情報保護法の趣旨を踏まえ ているか整理を行った。これが全体像でございます。  2頁目からは、「定義」「利用目的の特定」など、各項目に従って個人情報保護法な どの法律から引用したもの、また、ゲノム指針から引用したものを並べております。そ の後に、例えば3頁の「個人情報の定義について」以下、いくつか整理すべき事項を挙 げさせていただいて、その整理にあたっての考え方をまとめております。各項目に従っ て一つひとつ申し上げませんが、これらの中から特に整理すべき事項の論点、大きな項 目につきまして資料1−2で整理させていただいております。  資料1−2につきましては、「個人情報保護に関して整理すべき事項について(論点 )」で、「定義」「利用目的の特定、利用制限、利用目的の通知」「適正な取得」「デ ータ内容の正確性の確保」「安全管理措置」「第三者提供の制限」「保有個人データに 関する事項の公表等」「保有個人データの開示」「訂正及び利用停止」「開示等の求め に応じる手続き及び手数料」「理由の説明」「苦情処理」という形で大きな項目を挙 げ、その下に論点をまとめてあります。 ○垣添座長  冒頭、私の挨拶のところで申し上げましたように、資料1−1の中身が資料1−2に 検討すべき項目として一覧表になっております。資料1−1は、例えば定義に関して、 あるいは利用目的の特定、利用制限、利用目的の通知など、個人情報保護法と指針の内 容が対比する形でそれぞれ取り上げられています。ですから、資料1−1に沿って、そ れぞれの項目ごとに、指針の中に取り込まなければいけない項目があるかどうか、とい うことを検討していただいて整理をしたいという趣旨でございます。  具体的には、資料1−1の2頁の「定義」の部分から始まって、個人情報保護に関す る法律の中にある定義、その下に指針の規程が記載されており、機関長の責務とか情報 管理者の責務などが載っています。3頁目には、「整理すべき事項」として、個人情報 の定義について、匿名化された情報は匿名化の方法を問わず、つまり、連結可能匿名化 あるいは連結不可能匿名化の方法を問わず、個人情報に該当しないと解釈してよいかど うか。これが非常に重要なポイントだと思いますので、その辺りからご議論を始めてい ただければと思います。 ○堀部委員  座長が言われた論点に入る前に、資料1−1の1頁目の理解ですが、事務局の説明に よれば、この倫理指針と個人情報保護法の関係ということになりますと、個人情報保護 法に基づく指針ではないというように整理されています。このヒトゲノム・遺伝子解析 につきましては、国会の付帯決議、特に参議院の特別委員会における付帯決議の中で、 医療とあり、括弧しまして、遺伝子治療等先端的医療技術の確立のため国民の協力が不 可欠な分野についての研究開発利用を含む、括弧閉じとあります。そのほかに、金融信 用とかが挙がっていまして、むしろ、「個別法を早急に検討し、本法の全面施行時には 少なくとも一定の具体的結論を得ること」となっています。  いろいろな省庁で検討する場合に、現行では第6条3項なのですが、来年の4月1日 には1項、2項が削除されますが、現行の第6条3項を見ると「政府は前2項の定める もののほか、個人情報の性質及び利用方法に鑑み、個人の権利利益の一層の保護を図る ため、特にその適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報について保護 のための格別の措置が講じられるよう、必要な法制上の措置、その他の措置を講ずるも のとする」ということで、付帯決議で言う個別法に当たると理解してもいいと思うので す。その他の措置としてこれから内容について議論をしていくわけですが、この法律で 決められているものよりもよりレベルの高いきちんとした保護・措置を講ずるというこ とが第6条にあるわけです。これを根拠にするのかしないのか。全体の理解としてそこ をどうするのか。その辺りを議論していただくと、今後の議論に方向性が出てくるので はないかと思います。 ○垣添座長  事務局、何かありますか。 ○高山研究企画官  先ほど座長からお話がありましたとおり、最初に3省指針ができたときは個人情報保 護法がありませんでしたので、その関係で研究に関する指針を作ったということです。 それについて、今回、個人情報保護法ができましたので、国会決議も踏まえましてこの 場で整理をしていただいて、例えば指針の規定の所を一部修正すればこういう形を踏ま えることになるのか、あるいは、前回申し上げましたとおり、さらにそれ以上の検討が 必要なのかということもご検討いただければと思います。少し言葉足らずのところはお 許しいただければと思いますが、先生がおっしゃられたところについて、この委員会と してのご意見をいただければと思います。 ○垣添座長  堀部委員からご指摘の点に関して何かご発言ありますか。 ○宇都木委員  これは医政局でやっている診療情報そのものについての検討との関係もあると思うの ですが。 ○垣添座長  前回も議論がありましたが、結局、ほかの検討会でやっている内容とこの検討会でや っている内容との間で落ちてしまうようなことが出てくると大変具合が悪いのですが、 宇都木委員のご指摘に関して事務局からお答えいただくことはありますか。 ○高山研究企画官  医政局では、医療・介護の分野について新たに指針を作る形で検討しております。一 方、こちらにつきましては、先ほどの法律では適用除外だけれども尊重するようにと言 われている研究分野についてご検討いただいているところです。それぞれの検討をして いく中において、この部分が境界線ではないかというところにつきましては、少なくと も、私ども厚生労働省の中で行っているものですので、事務ベースでお伝えして調整を 図り、その結果は報告させていただく。あるいは、時間の関係もありますので、少なく とも一報し、意見を伺う形をとらせていただきたいと思います。 ○垣添座長  医政局で進められている検討会の内容をこちらの検討会に適宜伝えていただければ議 論を述べるのに大変参考になると思いますので、よろしくお願いします。 ○宇都木委員  堀部委員にお伺いしたいのですが、第50条で研究が法律から外されています。第6条 は総則のような形で我が国の個人情報保護全体について論じているのだと思うのです。 ここでは研究の倫理指針を問題にしているわけですが、その場合には第50条と第6条と の関係からいくとどのように位置づけられるとお考えですか。 ○堀部委員  先ほどは第50条にまで触れませんでしたが、第6条との関係で政府として特別の措置 を講ずるということだとすると、第4章の個人情報取扱事業者の義務等について適用除 外しているのが第50条です。第50条1項3号の「大学その他の学術研究を目的とする機 関若しくは団体またはそれに属するもの」が主体としてありまして、「学術研究の用に 供する目的」という目的と2つで縛りをかけています。これは、前回、経済産業省のガ イドラインでも、民間の研究機関の場合などは第50条1項3号の「大学その他の学術研 究を目的とする機関若しくは団体又はそれに属するもの」に入るのか入らないのか、非 常に微妙なのです。何を目的にしているかによっても変わってきます。  この除く所は、次の段階で考えていく必要があるのではないか。また、「学術研究の 用に供する目的」というのが、事業に役立つ情報を開発するとか、今日の資料を見てい ただくといいのですが、前回に発言した趣旨でいくと、学術研究の用に供する目的に入 るかどうかということで決まってきますので、その研究目的との関係でも出てくる。こ の辺り、全体としてどうなのか。おそらく、書くとすると最初のほうに「こういう場合 には個人情報保護法の第4章の個人情報取扱い事業者の義務等の規定は適用されない」 と、こういうことを挙げていくのではないかと思います。そういう意味では、第6条で 全般的にどうするのかということを考え、その中で除くものは除いていくという議論に なるのではないかと思います。 ○垣添座長  法律に直接かかわっていない委員にとってはなかなか難しい問題ですが、堀部委員が ご指摘の点は非常に重要だと思います。前回の議論にもありましたように、研究と診療 の境目とか、何をもってこの検討会が対象とすべき研究かということはそれ自体が議論 の多いところだと思いますので、誠に恐縮ですが、大きい概念の整理の議論に入らな で、個々の問題の検討に入っていってご発言いただければ大変ありがたいと思います。 ○堀部委員  今のような問題があるということで、どこかに書いておいたほうがいいと思いますの で、事務局でまた整理をしていただければと思います。 ○垣添座長  ご指摘のとおりだと思います。それでは、戻りまして、定義の所で個人情報保護法と ゲノム指針との間で整理すべき問題ですが、「匿名化された情報は匿名化の方法を問わ ず個人情報に該当しないと考えてよいか」という点はいかがでしょうか。 ○吉倉委員  これは論点には載っていないのですが、個人情報の法律を見ると「生存する個人に」 というのがあって指針には「生存する」というのが付いていないのです。そこのところ も議論しておいたほうがいいのではないですか。要するに、簡単に言うと、法律のほう は死者は適用外になるのかと。法律的にはそういう逆の意味に読めるのでしょうか。 ○垣添座長  資料1−1の9頁の真ん中のパラグラフを分けた数行上に、「法では個人情報は生存 する個人に関する情報であり、死者の情報は含まれていないが、指針ではこれも保護す べき対象としていることから、指針において代諾者による同意を求めることは妥当であ ると整理してよいか」という問題提起がありますので、後で議論をさせていただいてよ ろしいでしょうか。 ○藤原委員  今の点ですが、個人情報保護法は死者は明文上排除していますが、その解釈等では、 死者の情報が本人の情報でもあるときには当然のことながら保護すべきだということ で、その典型例として考えられているのが遺伝的な情報であります。ですから別段、今 の点は明文で書いていないけれども、指針には「死者」という文言が入っていて、それ を前提に整理なさっておられるので、個人情報保護法との矛盾は何ら生じないと思いま す。  それから、定義の所で4頁です。識別性で「容易」が含まれているけれども、これを 行政機関法や独立行政法人個人情報保護法と同様の定義とすると、民間事業者には個人 情報保護法よりも厳しい定義になる。それで「指針であるということも考慮し、・・・ 現行どおりでよいか」と書いてあるのですが、これはいかがなものかという感じがしま す。  それは、先ほどの堀部委員の話とも関連するのですが、これを第8条のものと見るか 第6条の指針と見るかは、大きな悩ましい問題だとは思います。しかしながら、はっき りと遺伝子という話は参議院の付帯決議に書いてありますから、考慮しないわけにはい かないだろうと。尊重しないという考え方はもちろんあり得ますが、片方で、これは研 究に関する指針であるわけです。研究というのは遺伝子にかかわることだけではないと いう立場で整理をしておられるのはよく分かります。しかしながら、付帯決議にある中 で最も特殊なもの、ある意味で、原子炉等規制法のように、ゲノム等云々という名前が 出てきてもおかしくない分野はこの分野ですので、第6条か第8条かをはっきりさせる 必要があると思います。  それとの関係ですが、個人情報保護法の適用ということで、1頁の下から4行目から 5行目で、「学術研究機関が学術研究の目的で個人情報を取扱う場合は、この義務の適 用除外となる」、これは、先ほど宇都木委員がご質問になった点です。そのことから、 直ちに「民間研究機関等においては」と書いてあるのですが、これは当然ワンクッショ ンあるわけです。民間研究機関等が、学術を主たる目的とするような所に付属してい て、主として学術研究をやっている場合には適用除外になるということです。一般的に 民間研究機関が適用除外を受ける場合があるというのは、もちろんその趣旨で書いてお られるのだと思うのですが、そこのところは注意をする必要があるので、何か、誤解を 生むような書き方ではないかという気がしました。  その2点を踏まえて、この4頁の定義です。遺伝子の問題が含まれていて、かつ民間 部門の個人情報保護法は各分野ごとに必要最小限のレベルで上乗せをやっていいという ことですので、「容易にという言葉が含まれていると、個人情報保護法よりも厳しいか ら指針であることを考慮して同様の定義」というと、全く個人情報保護法と同じレベル ということになるわけなのです。それでいいかどうかを解決するには、研究指針である ことは分かりますので、この指針の中に、個人情報の取扱いに関する部分については格 別の措置なのだということで、第6条の格別の措置的要素、つまり、機微にわたるセン シティブな情報、遺伝子情報を扱っているのだという要素が現れるのであれば多分こう いう書き方にはならない。しかし、あくまでも第8条なのだとすると、これは研究指針 の中の個人情報保護のことを書いてある所にすぎないのだ、ということを強調するなら ばこの書き方になる。この定義の中で、匿名化というのは分かるのですが、この「容易 に」というのは今のような問題を含んでいるということだけ申し上げておきたいと思い ます。 ○垣添座長  「他の情報と容易に照合することができる」という、その「容易」という部分につい てのご発言です。 ○小幡委員  匿名化された情報の所で、連結可能、連結不可能のところはいちばん難しいところだ と思います。3頁から4頁、特に4頁ですが、連結不可能匿名化の場合は当然よろしい のですが、連結可能であっても、それは連結可能な状態にあるところにおいてのみ個人 情報であって、そこから離れたらこれは違うという整理ですね。こういうようにできれ ば、多分、研究の現場の方は非常に楽だという感じなのではないかと思います。私は、 そちらの専門ではないのでお伺いしたいのですが、それでも連結可能匿名化にしていた いという趣旨は、ほかの機関に匿名化された状態で出されたところ、必要に応じてそれ を問い合わせてまた連結したい状態が起こり得るから連結可能匿名化にしていたいので すよね。となると、そこの時点でまた情報が個人情報に変わるという理解なのですか。 その辺りの必要性について、法律の立場の者にも分かりやすく説明していただくとよろ しいのですが。 ○垣添座長  研究現場におられる方でどなたかご発言いただけますか。 ○廣橋委員  連結可能の状態で匿名化をして研究を進めたいというのは、今お話があったように、 研究の進展によって新しい情報が必要になって、それによって大きな成果が得られるか もしれないとなったときにアディショナルな情報をもう一度得たいためです。そのため には、元に戻して、匿名管理者の所で再連結をして、個人の臨床情報を医療側でもう一 度集めてもらって、また研究専門の側に渡すときには匿名化した形で渡すということで す。その情報を個人情報として研究者に渡すのではなくて、匿名化したものに加えた情 報として戻す。ですから、個人にかかわる情報は匿名管理者の所までしか来ないという 形で運用するのです。これがどうしても研究の推進には必要だと考えています。 ○小幡委員  そういう状態は可能なのですか。要するに、いろいろな情報を問い合わせて照合し、 そしてまた出されるときには匿名化というのは可能と考えてよろしいですか。 ○廣橋委員  はい。研究現場で、この匿名化番号の症例についてこういう情報が必要であるという ことになります。それを匿名管理者の所に戻して、そこから医療に来たときには、医療 側では個人の特定される形で検索をします。それがまた個人情報管理者の所に来て、個 人情報管理者は元の匿名化の作業と同じことをもう一度繰り返して、匿名化された情報 として研究者に渡すということで、できると思います。 ○豊島委員  今のご説明と同じことですが、基本的には、例えば生活習慣病をフォローアップして いかなければいけないとき、あるいは薬の効き方をフォローアップしなければいけない とき、これはどうしても連結可能匿名化にしておかないとフォローアップができないわ けです。そのために必要なのです。そのときに、連結可能匿名化であっても、一度、病 院なり何なりの現場で連結可能匿名化になります。それが、その情報と遺伝情報とを引 き合わせるところで違う形のナンバーが与えられる。そうすると、実際に解析する人 は、人の名前を知らずに番号だけで解析することになります。ですから、二重のランダ マイズが入りますので、基本的には、名前付きの医療情報は現場の人しか見ないという ことになります。 ○小幡委員  氏名は番号になっているから分からない状態で、また新たに番号が振られるというこ とですね。個人情報保護法制定の議論のところでこういう議論をなさいましたか。 ○堀部委員  いろいろしてきています。この場で議論をするのは、個人情報になるかならないかと いうところもあるし、その辺りはどのようにしていくのか。匿名化されて連結可能なも のは、個人情報保護法で言う個人情報ではないけれども、倫理指針の対象として保護し ていくという、おそらく、指針ですから、そのようにつくっていくことになるのではな いでしょうか。その中で、特に、匿名化された場合には法の適用は受けなくなりますか ら、そこは比較的自由に扱えるということも考えられるかと思います。いずれにして も、個人情報をどのように定義するかというのはいろいろと議論があるところですが、 グローバルスタンダードでこうなってきているところはあります。それはどこまでのも のを結び付けてどうするのか、というのはよく議論されるところです。 ○豊島委員  比較的自由に扱えるとおっしゃいましたが、決してそうではない。その引き合わせる ところは特定の個人が識別されます。だから、それは管理者として指名された者が行っ ています。それから、もう一段外になったときでも、例えば遺伝情報だけ、医療情報だ けのところでもまだ自由ではなくて、特定の領域内だけでオープンになる。それから、 全部合成された後で、データだけになったときに初めて本当に自由に扱えるようにな る。何人がどういう病気で、その中でどういう薬が効いてどういう薬が効かない、とい うデータがパーセントになったときに初めて自由に誰でも扱えるという形になってくる わけです。 ○辻委員  連結可能の具体的な例としては、もっと前向きの研究で、例えば10年間フォローアッ プしていって、それぞれの方の臨床経過なり変化なり、そういうものとの対応づけと か、病気との関連とか、そういう解析のためには1年に1回情報が上がってきて、それ を加えていく作業をやりますよね。そういうことでは当然必要なことだと思うのです。 もう1つは、情報が除かれていれば全く自由であるというのは少し違和感を感じるので す。法律的にはそうかもしれないのですが、例えば、目の前にあるDNAの解析結果の 細かな情報はまさに個人情報であるわけだから、扱っている人間はそれなりの一定の倫 理観が求められるのではないかと思います。 ○位田座長代理  私も、小幡委員と同じような質問をしようと思ったのですが、整理の仕方として2つ あると思うのです。個人遺伝情報は連結可能であれ不可能であれ個人情報であるという 括りをしておく。しかし、連結不可能になれば対応表も何もないわけですから、そこの 部分は個人情報の適用から外れる。それから、連結可能匿名化の場合は、連結可能な措 置で、かつ個人情報であるということが漏洩しないような厳格な手続きと条件を付ける ことによって、連結されたままの匿名化されない情報と比べて条件が厳しくなるけれど も個人情報であることには間違いがないという括りをする。もちろん、連結されたまま の情報は生の個人情報ですから、完全に保護の措置がかかる。そのように考えるか、若 しくは、連結不可能匿名化はもちろんのことながら、連結可能匿名化の場合には個人情 報ではないというように切ってしまうか。そのどちらかだと思うのです。  ただ、先ほど辻委員がおっしゃったように、かなり長期間にわたって連結可能な状態 が続いて、かつ、いろいろな情報が研究の段階であるといっても、若しくは番号だけで 行き来するとしても、そういう状況は例えば対応表そのものが外に流れ出たときに個人 情報が特定される危険性があるので、最初から個人情報ではないと言ってしまうことに 対しては危惧を覚えます。むしろ、個人遺伝情報は全体として個人情報であるという括 りでいくつかに分けて対応措置の中身を変えていくほうが妥当なのではないかと思いま す。 ○垣添座長  位田委員がご指摘の点は、3省指針を作る段階でも非常に議論をしたところだと思う のです。連結不可能匿名化された遺伝子解析情報は個人情報保護の対象外ということは 皆さんに合意いただけると思います。問題は、連結可能匿名化された情報をどのように 扱うかということですが、研究の現場からすると、連結可能匿名化された情報がない と、最終的に遺伝子解析の結果を臨床経過と対比しなくては研究が進まないという状況 は数多くありますので、研究の進展を考える上ではどうしても必要である。その場合 は、個人情報との関係からすると保護の対象から外す。つまり、その場合、前提として 個人情報管理者の存在が非常に重要になってきますので、これは後ほどまた議論いただ きますが、そういう整理にするか、連結可能匿名化されている個人情報は今の指針の扱 いでは不十分であるという扱いにするか。そういう問題だと思うのですが、いかがでし ょうか。 ○栗山委員  今、小幡委員がおっしゃったようなことは私もずっと疑問に思っていたのですが、研 究に試料を提供するというけれども、その情報を提供する人は何か病気を持っている人 ですか。 ○垣添座長  必ずしも病気を持っている方だけではないと思います。 ○栗山委員  それはランダムに取られるのか、それとも、例えば私の情報を使用するということを 説明され、これをどのように使われるか知った上でイエスかノーか判断するということ ですか。 ○垣添座長  インフォームド・コンセントの段階で、こういう研究にご協力いただけますか、とい う形で研究の内容を説明することになると思います。 ○栗山委員  そうすると、自分が病気でなければフィードバックしていただく必要はないので、そ ういうものは匿名化だけで、元に戻る必要がない情報もあるのではないかという気がす るのです。研究だけに使っていただいて。 ○垣添座長  その場合は連結不可能匿名化で扱うのですね。 ○栗山委員  そうです。ですから、2種類あるということですね。 ○垣添座長  そのとおりです。だから、特に、連結可能匿名化に関しては、個人情報保護の観点か らセンシティブな問題があるので、これをどうするかということがこの検討会で出てい るのです。 ○高芝委員  今の点ですが、個人情報に当たるか当たらないかという議論の論点は、当たらないと いう結論になると法律ないし指針から外れていくという結論に結び付きやすくなります ので、この場の議論の方向としては、保護のニーズがあるということであればそちらの 観点をできるだけ入れていく。特に、指針の場合は法律とはまた別にそういう観点を入 れやすいと思います。。  それから、指針の性格として、指針ができたときは法律がない状態だったのですが、 今後は法律が施行される状態になった。そのときに、法律の適用除外、個人情報保護法 から外れたり、5,000件以下ということで外れたり、適用されない分野も一方である。そ して、個人情報保護法が適用される分野と行政機関や独立行政法人機関ということで、 少しばらつきができて、指針ができた当初のときと状況が変わってきた。その中で、こ の指針が持つ機能の1つとして、ばらつきの部分を埋めていく機能もあるのではないか と思います。  そうした場合に、この「容易性」のところですが、4頁の民間事業者の個人情報保護 法よりも厳しくするよりは、個人情報保護法と同程度、行政機関や独立行政法人とは別 ということでいいのかどうかという点について、共同研究もいろいろな機関で行われる 可能性があるという意味からすると、指針の役割として極力そろえていく機能があって もいいのかなと思いました。 ○江口委員  私は、連結可能匿名化されている情報についてはすべて個人情報だろうと思います。 連結不可能匿名化がされているものは、当然ながら、個人情報には入らない。おそら く、個人情報保護法のときも議論があるのではないかと思うのですが、住所録の一覧表 がざっとあります、それを社内で暗号化しましたと。そうすると、暗号化した同じ情報 が外にパッと出ても、それは個人情報ではないのですか。同じような議論は、個人遺伝 情報であろうと個人情報であろうと、匿名化されている、いないという議論は、何らこ の遺伝情報の研究に特化したものではなくて一般的なことだと思うのです。暗号化され ていたとしても、元に戻るような形で社内で管理されている限りにおいて、暗号化した ファイルだけは個人情報ではなくて外に出てもいいという議論は成り立たないのではな いかと思うのです。 ○藤原委員  お手元にある経済産業省のガイドラインは、個人情報保護法の解釈を法律のレベルに ブレイクダウンしたものなのですが、今おっしゃられたとおりのことで、複合される可 能性があれば、それは個人情報であることには変わりないと思います。それから、先ほ ど来のお話なのですが、特定の難病の方々については、匿名化しても追跡調査をして将 来病状を知りたくなる、というような議論が随分前にあったと思います。ドイツなどで は、がんを追跡していくときに匿名化をどう図るかという話があったのです。そういう ものを踏まえて考えると、これは第三者提供の話を念頭に置いておられるのではないか と思っているのですが、全体が個人情報ではないと言ってしまわなくてもよいのではな いでしょうか。つまり、本人の同意の問題ですよね。 ○垣添座長  いま議論されているのは、第三者提供よりは、もっと狭い範囲の研究とお考えいただ いたほうがいいのではないかと思います。 ○藤原委員  そうすると、ここで言う個人情報管理者以外の者にとっては個人情報ではないと考え るのが適切というのは、ここで言う個人情報管理者とは組織における個人を念頭に置い ておられるわけですか。 ○垣添座長  例えば病院の中に、ある個人情報管理者を設定して、その人が診療情報と研究遺伝情 報との間の唯一の仲介人という形になるということです。 ○藤原委員  ただ、5,000以上、あるいは5,000以下であっても、遺伝子にかかわる情報を一定以上 持っていて、それをどこかにいろいろと利用するときに、漏洩等の問題とか、後で出て くる安全管理措置違反の問題が出たら、個人情報管理者の責任は問われますが、管理者 が属している組織の責任がなくなるということはあり得ません。そうしますと、自由に 使えるという意味は、第三者提供というものではなくて、先ほど小幡委員からご質問が あったことですね。 ○小幡委員  個人情報でなくなるから誰が使っても自由であるというのがここでの定義の考え方だ と思います。ですから、個人情報として第三者提供するわけではなくて、連結可能であ っても、匿名化されている以上それは個人情報ではないから、という整理の仕方が1つ ここにある。  いろいろな仕切り方があると思うのですが、法律上の個人情報の定義として何を捉え るかというところで、法律にはいろいろな規定がありますが、例えば連結可能であって も匿名化された何号とかいう情報しか持たない所に利用停止をやっていくのはナンセン スな話だし、インフォームド・コンセントの話も、研究で匿名化されているものを持っ ている方にとっては無関係な話ですよね。ですから、仮に連結可能匿名化されたものに ついて個人情報と定義した場合には、連結可能でも匿名化されている情報については適 用しないという性質のものはたくさんあるわけです。それを個人情報から外す。  でも、いずれにしても、ここでの議論は指針では何かしら書く必要があるというご理 解だと思うのです。例えば、法律上の個人情報という形での整合性をとらないやり方も あれば、あるいは、個人情報保護法の立法者のサイドからすると、こういうものであっ ても個人情報だと考えたいということだと思います。その場合に、そうは言っても、連 結可能であっても匿名化されている個人情報だからそのとおりにはいかない、という書 き振りをするか。これは、どちらでも可能性はあるのではないかと思います。  ただ、私が非常に難しい問題だと思うのは、利用停止・廃棄が、情報管理者がいる所 に申し出られた場合です。使っては困るから廃棄してくれとあった場合、それについ て、もう番号化して匿名化した形で研究機関に流れているものはどうなるのか。そこ が、まさに、個人情報の定義をどう捉えるかということともかかわってくるのではない かと思います。もう完全に離れていると見れば、それには影響がないという考え方もで きるし、他方では、そうは言ってもまだ連結可能なわけですから、そちらまで追跡し て、それはもう使っては困ると言うことが、管理者に義務づけられるのか。その辺りは 定義と密接に結び付いてくるかと思います。 ○藤原委員  途中で第三者提供と申し上げたのは、個人情報には取得してから廃棄するまでのサイ クルがあるわけですね。取得してきて、利用し、提供したりして、そして最後には廃棄 してしまうというライフサイクルがあるわけです。連結可能匿名化ということで、完全 に外してしまわないと、研究がやりにくいというのが、具体的にどの場面なのかなと思 ったのです。具体的にどの場面かが分かれば、そこを外す工夫をすればいいし、そうで なくても取得の段階からライフサイクルとして全部、研究のためには連結可能匿名化 で、個人情報ではないという考え方を取らないとできないのだという意味なのか。そこ のところを教えていただきたかったのです。 ○辻委員  連結可能匿名化というのも、実際には私はさまざまなものがあると思うので、ひとま とめにはできないと思うのです。いちばん極端な例は、私たちがよくやるのですが、あ る難病の家系の方々にご協力をいただいて、その検体を家系構造の中で分析することに よって、原因を突き止める研究があります。そのときは、個人名とかは必要ないです が、解析をする段階において、家系のどういう構造の中でのサンプルかということなど は、当然理解していていないといけないのです。この検体がお母さんで、この検体がお ばあさんで、この検体は従兄弟なのだとかという、その家系の構造をもっていなければ いけないから、ある意味では非常に個人情報的なものというか、そういうものが入って くることがあるのです。連結可能匿名化をすれば、現場では番号でやっているとは言っ ても、結果を解析する段階では、やはり家系の構造の中で見ていかなければ分析になら ないというのがありますから、そういうデリケートな場合というのも少なからずありま す。  一方で非常に大規模なもので、連結可能匿名化して、個人の特定などは全然できなく て、個人情報のことをあまり意識しなくてもできる研究が多い、というのも事実だと思 います。私は研究の非常に幅が広いということを理解していただいて、全体として一定 の倫理観を持って研究をしていただくところが必要だろうと思うのです。連結可能匿名 化されていても、実際には私たちは、例えば家系構造を意識しながら限りなく個人情報 に近いところでやっているというデリケートな問題がありますから、研究は非常に幅が 広いのです。連結可能匿名化していれば相当自由度をもって何をやってもいいというこ とにはならなくて、倫理観を高く持たなくてはいけないというのは、当然のことではあ るとは思うのです。 ○黒木座長代理  すごく単純に考えて、連結可能であろうとどうであろうと、それは個人情報のポテン シャルをもっている可能性は非常に高い。だからこそ、個人情報管理者を厳密にしなけ ればならない。では、厳密にしたから連結可能匿名化の情報は個人情報でないというの は、論理的に矛盾していると思いますので、最初のポテンシャルがあるから管理をきち んとするというときの考え方は、すでに連結可能匿名化であろうと個人情報であると考 えるのが、私は正しいと思います。 ○堀部委員  今までの議論である程度理解できたところもあるのですが、ここの指針で個人情報を どういうふうに定義するか。いま黒木委員が言われたようにポテンシャルであればとい うことで定義をすれば、ここの指針の対象にはなるわけです。さらにいろいろあるので すが、江口委員が言われた暗号化の問題は、参考資料の3−9「個人情報の保護に関す る法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」を見ていただきたいので す。  これは先ほど藤原委員からも出ましたように、1頁に法の定義があって、2頁にいろ いろ説明をしていますが、1段落目の最後のほうに「暗号化されているかどうかを問わ ない」と、こういう言い方をしました。これは暗号化されている場合には識別不可能だ から、個人情報から外れるという考え方もありますが、先ほど言われたようなことで、 それを符号化すれば分かるところもあるので、ここでは暗号化されているかどうかを問 わないとまとめています。それが1つです。  今までの先生方のご議論を伺っていますと、個人情報から出発しているのですが、そ れはこの法律あるいは、今までの倫理指針からして当然なのですが、この法律は更に 「個人データ」という言葉と「保有個人データ」という言葉を使いまして、特に「個人 情報データベース等」という概念を用いて、それとの関係で個人情報取扱事業者を定義 しています。これは今後の議論の展開に非常に重要なところで、今まで触れられていな いところなものですから、この中でこういう言葉を使うのか、使わないのかを含めて議 論をしていただく必要があると思います。  参考資料3−1の1頁に「個人情報の保護に関する法律」があります。その第2条が 右下の欄にありますが、最初にこの法律において、「個人情報等」とありまして、次に 2項で「個人情報データベース等」となって、3項で「個人情報取扱事業者等は、個人 情報データベース等を事業の用に供している者をいう」。とあります。一部除かれます が、先ほどから出ている5,000件にいくかどうかは、これの3項の5号で政令で5,000件 を超えないものと定めたものです。  4項にいきますと「個人データ」という言葉が出てきます。これが個人情報データベ ース等を構成する個人情報です。そうしますと、研究のために用いるものは、個人情報 というよりもむしろ個人情報データベース等を対象にしていきますので、個人データと いう概念をこの倫理指針の中に入れるかどうか。かえって複雑になるのかどうかは分か りませんが、そういうことがあります。さらに先ほど小幡委員が言われた利用停止等の 問題になりますと、5項にある保有個人データという、また別の概念を用いていて、だ んだん狭くなっているのです。  そういうものをこの指針の中で使うのか使わないのかということも、座長と事務局で 少し詰めていただいてもいいと思うのですが、お話を伺っていて、法律との関係でいく と、その辺りもどこかで整理をしておかないといけないと思いました。できるだけ研究 が自由であるというのと、他方で個人情報をきちんと守っていこうという先生方のお話 を伺っていると、むしろ自由というよりも適切に扱っていこうということですね。そう なりますと、法律よりもレベルの高い所で指針を作っていくとなっていった場合に、用 語もそこをどうするのかということがあるかと思います。今まで出ていないところなの で、この法律の関係、この倫理指針で、そこをどう整理するか。今日でなくていいので すが、是非、整理をしておいていただきたいと思います。 ○垣添座長  連結可能匿名化された情報は、個人情報保護法との関係で、非常に重要なので、予定 をオーバーして議論をしていただきましたが、今日は資料1−1に沿って、全部を一応 見ていただかなくてはいけないので、時間的に大変厳しい状況なのです。一応、整理と しては、匿名化されれば個人情報保護法の対象外だと、自由に使っていいという整理に はならないというのが、大方のご意見だと思うのです。ただ、連結可能匿名化されてい ないと研究が進まないというところも、法律の専門家の方にもご理解をいただいたと思 うのです。その両方をとるとすると、連結可能匿名化の情報の取扱いの場合に、個人の 保護の観点から先ほど黒木委員が何と言われましたか。 ○黒木座長代理  個人情報管理者が非常に重要になってくる。 ○垣添座長  個人情報管理者の責務の重要性と、それから匿名化されているからといって決して自 由に使えるものではないというような文言を、何かこの指針の中に取り入れる形で、こ の場は整理をさせていただきたいと思いますが、いかがですか。 ○安藤生命倫理・安全対策室長  事務局で整理しているときに、ちょっと悩ましいと思いましたのは、指針の中で匿名 化の定義としては、3頁にもあるように、「その人が識別できないようにする」と書い てありまして、ここに「容易に」という言葉は入っていませんでした。個人情報保護法 の対象かどうかを考えるときに、識別できるかどうかということなので、これと比較を するときに、この指針においては匿名化といっても、つまり暗号化といったときに、い ろいろなやり方があると思うのです。  ここで言いますと、個人情報管理者を置いて、相当厳しい管理をするという前提で、 この連結可能匿名化というものを定義したのではないかと思ったものですから、この中 では、個人情報保護法との関係では、そういう厳しい特別の管理を前提にした、この指 針の連結可能匿名化であれば、個人情報保護法との関係で、個人情報にはならないので はないか。ただ、個人情報でないからといって何もしないということではなくて、それ は指針の中で特別な措置・手当が必要であれば、考えていく必要があるのではないかと 整理をしたので、このようなペーパーを作りました。 ○垣添座長  それはよく分かりますが、指針の中で特別に連結可能匿名化の情報に関して、何か加 えるべきものがあるかどうかという点だと思います。 ○安藤生命倫理・安全対策室長  いまの指針では、守秘義務のある個人情報管理者、ここですべて匿名化をするという のが義務づけられていますから、これを中心に、あるいは後に出てきますが、安全管理 措置、これは個人情報保護法の中で規定に基づいて実施されることになると思います が、そういった特別の管理がなされるということであれば、連結可能匿名化であって も、個人情報保護法でいう個人情報に当たらないのではないか、という整理をしたもの です。 ○垣添座長  分かりました。研究の現場からすると、今のようなご発言になると思います。今まで の議論を聞いていますと、特に法律の立場からすると、今のような整理では具合が悪い という議論がありました。ただ、匿名化されれば個人情報保護法の対象外という取りま とめをすると、やはりそれは認められないという委員がおられますか。 ○菅委員  実際は臨床現場で患者の臨床情報をとっていきますが、たとえ匿名化されても、それ が非常にユニークでレアなフェノタイプのゲノムという場合、最初はドクター1人し か、その症状を知らなくても、実は症例報告などのいろいろな会でプレゼンテーション されるわけです。すると、かなりの方が知ってしまう。ほかにも似たようなものがあれ ば問題はないのですが、レアのような症例報告に対応するような場合には、そこにゲノ ムが付いていますと、たとえ名前が消えても現実問題として医者には「あっ、あの人」 というのが分かるわけです。医者には守秘義務がありますが、ずっと固定して同じ場所 にいるわけではなくて、全国へローテートしていくような場合もあります。ですから、 医者の守秘義務を考えればそれでいいのですが、現実には匿名化されていても個人との 非常なタイトな関係が残ってしまうことがある。レアで例外的なケースだと思います が、問題点が起きやすいところだと私は聞いております。 ○垣添座長  ご指摘の点はごもっともです。いまの遺伝情報と非常に稀な疾患では、症例報告や論 文で両者が関連づけられ、やはり大きな問題が出てくるのではないかと思いますので、 今の問題を含めて、もし今後余裕があればそのこともご議論いただけると思います。 ○位田座長代理  先ほどの文部科学省の整理はよく分かるのですが、そういうふうな匿名化措置をやっ ていて、個人情報管理者がいて、安全措置がとられていれば、遺伝情報ではなくても、 そういう情報は全て個人情報とはしないという形で、物事が進むかどうかという問題だ と思うのです。それで全部個人情報保護法との整合性がとれれば、それでいけるかもし れませんが、それが1つです。  仮にほかの種類の情報、つまり遺伝情報ではない情報がそういう取扱いがあるとして も、個人遺伝情報について、同じような取扱いでいいのかという問題が残っていると思 うのです。つまり個人遺伝情報の性質というか特殊性からして、より厳格な、つまり全 部個人情報であるという取扱いで、初めてこの法、若しくはいろいろな措置の適用が除 外されるという形でやっていくか。私はそのほうが一貫性がとれていいと思うのです。 ○豊島委員  お話を聞いていて、ちょっと分かりにくいところがあります。いちばん分かりにくい ところは、要するにガイドラインとして個人情報として最後まで扱うのか、あるいは法 律の解釈として個人情報として扱うのか、そこの区別だけははっきりお伺いしておきた いのです。その後、ガイドラインも含めて個人情報ではないと言い切るのは難しいなと いうこと、これは完全に同意しますが、その辺の問題はどちらとして扱われるかです。 ○垣添座長  これは指針のほうが先に出来ていて、すでに研究が進んで3年ほど時間が経ったとき に、ここで新たに個人情報保護法という法律が出来ました。その時にその指針をどう見 直すかというのがこの検討会の趣旨だと思うのです。今の先生のご指摘の点は非常に重 要なのですが、これはどう扱えばよろしいのですか。  つまり今の指針の中に研究を進めていく上で、個人情報保護法が成立したときに足り ない部分をどう盛り込んでいくか、私はそういうふうに考えて座長をお引き受けしてい るのです。これまで長時間ご議論をいただいた、匿名化されれば個人情報保護法の対象 外とするかどうかということになると思うのですが、個人情報管理者の業務とその責任 をきちんと確立すれば、そういう扱いをしてよろしいというふうに、一応この場で整理 をしてもよろしいでしょうかということなのです。 ○宇都木委員  今、豊島委員の言われたことは、法律と倫理の点からいうと、法律的なサンクション があるかどうかということでしょう。それはサンクションがあるならあると、ガイドラ インに明示する。ない場合でもこうすべきだということは、十分考えられることだろう と思うのです。それが1点です。  もう1点は、私自身は位田委員の解釈の方針がいちばん良いのではないかと思うので す。基本的にはこのガイドラインは個人情報保護だけのガイドラインではなくて、ヒト 由来物質も、情報も全部を医療者が取り扱うときの在り方の問題だとすると、個人情報 保護以外にも、人間の尊厳とかいう種類の事柄はこの中に含まれるべきです。そうする と、範囲としてはたとえ非連結匿名化になったものについても、ガイドラインとしては 扱う。その中でくっきりと分けていくというほうが、在り方として適切ではないかと思 います。 ○垣添座長  委員のおっしゃるように、包括的に捉える問題提起は非常に重要だと思います。先ほ ど位田委員も言われたのは、私もよく分かるのですが、これは繰り返し申し上げている ように、議論をする時間が限られたところで、何か結論を出さなくてはいけないという ことで、遺伝子の解析に話を絞っただけです。今のような状況で、それをもし医療情報 とか、研究に付随するいろいろな情報を含めたものにまで広げて議論をするとなると、 とても管理しきれなくなります。 ○宇都木委員  私は、非連結匿名化になっているかどうかというところで分けるのではなく、取り扱 っていただきたいということです。遺伝子情報に限るということについては、別に私は 異議はないのです。 ○藤原委員  私も先ほどの位田委員のような整理に、どちらかというと賛成です。先ほどライフサ イクルと申し上げたのは、非連結匿名化にしないと、具体的にどの場面で、どういう支 障が出るかが分かれば、研究の進展及び医学研究にとって非連結匿名化が大変重要であ るというのは、全員一致していると思うのです。それが知恵を出し合って、この法律の ガイドラインとして、あるいはこの法律でなくて、いまの遺伝子の研究の指針のガイド ラインとして例外を作っていけばいいわけで、初めから包括的に出してしまうことはな いのではないかと、その立場で申し上げているのが1つです。  ガイドラインが3年前に出来て、法律が出来たということですが、法律と法律でもそ うですが、なおさらガイドラインは、指針は指針なので法律には勝てません。単純なこ とですが。 ○垣添座長  分かりました。匿名化されれば個人情報保護法の対象外と、私はまとめましたが、そ うすると個人情報管理者の責務は非常に重要で、たぶんこれは後ほどまた出てくると思 いますが、医療機関の管理者の責任にまで及ぶということは、前回も少し議論されてい ます。したがって、先ほど宇都木委員の言われたサンクションの問題は、そこに関連し てくるのではないかと考えています。  議論を先に進めるためにこの場では、一応、匿名化されていれば連結可能あるいは連 結不可能のいずれも含めて、個人情報保護法の対象外という整理にして、先に進んでよ ろしいでしょうか。                  (異議なし) ○垣添座長  次は「利用目的の特定、利用制限、利用目的の通知」についてということで、5頁か ら10頁までです。整理すべき事項としては、9頁、10頁にまとめてありますが、これに 関してご発言がありましたらお願いします。  これは指針においては「代諾者等の同意により、個人情報の利用が可能になる」とい うことで、9頁の(1)(2)(3)という状況が整理されています。個人情報保護法では、本 人の同意を得なければいけないということになっていますので、この辺りの整合性をど う取るかというところですが、何かご発言がありますか。 ○吉倉委員  個人情報の件に戻るのですが、個人情報の法律では「生存者」という言葉は入ってい るのですが、指針には入っていません。法律のときに「生存者」を入れた理由があると 思うのです。もしも同じものであれば「生存者」という言葉は入れる必要はなかったと 思うのです。いろいろ考えてみると、これが有るか無いかというのは、結構法律そのも のの取扱いの上で、少し変わるのではないか。具体的に運用上違いないと言われればそ うかもしれませんが、少し法律の目的が違うのではないかと思いますが、いかがです か。その法律を作った時、この言葉を入れた理由は何ですか。 ○堀部委員  「生存する個人」という概念は、1988年(昭和63年)の、行政機関の保有する電子計 算処理に係る個人情報の保護に関する法律で取り入れました。どういうふうに個人情報 を定義するか議論をしていく中で、イギリスの1984年のデータ保護法の中に、リビング ・インディビジュアルという概念がありまして、それを取り入れたと言ってもいいと思 います。その理由の1つは、この新しい制度の下というか、1988年の段階でもそうなの ですが、生存している者が自分の情報の開示を請求したりすることができる、というこ とになるので、開示請求権という観点からすると、まず死者は開示請求権を行使できな いので、そういうところからすると、生存する者になったいうことがあります。  ほかの理由とすると、個人情報・個人データとしていろいろ集積されているものを、 イギリスの場合にはデータ保護登録官(データ・プロテクション・レジストラー)に登 録する義務があります。日本の行政機関の電子計算処理に係る個人情報保護法でも、当 時の総務庁長官に対して、各行政機関は事前通知の形で、どういうものがあるのか通知 することを義務づけました。そうなりますと、「リビング」と入れておかないと、過去 の古いデータまで対象になるので、できるだけ最近の生存をしている者の個人情報を限 って定義したほうがいいのではないかと、こういう趣旨です。個人情報の定義としてそ ういう形で入れましたが、ここの指針ではそれをもっと広げて、生存する者に限らず対 象にしていくのだという考え方もとれると思います。 ○江口委員  ここについて私の理解では、個人情報保護法と倫理指針というのは、趣旨が少し違う のだろうなと思っています。個人情報保護法の場合には、自分の情報を制御できるとい うところが、かなり前面に出ている。この指針というのは、自分の情報が制御できると いうものよりも、むしろ前回議論があったヘリダブルという、私の子どもの遺伝情報を もとにして、私の遺伝情報が理解される、あるいは私の家族の遺伝情報が分かってくる ということで、ヘリダブルな情報に対して、何らかの尊厳性を与えようというところに あって、少し発想が違うのだと思います。そういう意味で個人情報保護法が、本人の同 意を得てというのは、当然そうだろうなと。ただ、指針の場合にはもう少し幅広く、そ の同意等、それを制御できる範囲を広げる必要があると私は思います。 ○垣添座長  その趣旨で「代諾者等」というのが入っているのだと思います。 ○鎌谷委員  死者と生存者との違いというのは、いま言われた遺伝子の場合は、遺伝法則というの が成立して、死者から生存者を完全に予測することができる、ということが違うのだと 思うのです。先ほどは言いませんでしたが、連結不可能にしても、実はある人がいて、 遺伝子を採って配列を見ればその人かどうかは完全に分かるのです。あるいはこの人の 子どもであるとか、何代離れているというのもすぐには分からないけれども、数学的方 法を使うと完全に分かるのです。なぜ完全に分かるかというと、それは遺伝法則が成立 するからで、それがヘリダブルという意味なのです。その辺を考えると非常に難しい。 ですから、連結不可能にしても、遺伝子の情報があるかぎり、遺伝法則が成立するかぎ り、ものすごく正確に分かるということは、考えておいたほうがいいと思います。 ○垣添座長  ご指摘のとおりだと思います。この「本人の同意」ということと、「代諾者等」とい うことで、この指針に関しては「代諾者等の同意により、個人情報の利用が可能となる 」という整理になっていますが、これに関してもう少しご発言をいただけますか。 ○豊島委員  5頁の法第16条の2号に「人の生命、身体又は財産の保護のため」ということと、3 号に「公衆衛生の向上又は児童の健全な育成」ということが入っています。そのことに 関して、ここでは我々としては、それを適正に進めるためのガイドラインを作るという 考え方でいいのではないでしょうか。そういう意味で、本人でない代諾者の同意を得る ときのガイドラインを考えていく、という考え方では駄目なのでしょうか。 ○垣添座長  診療の現場では、患者本人から同意を得ることができないような、例えば子どもの場 合とか、精神疾患の場合とか、いろいろな状況があるので、この指針の中では「代諾者 等」という整理になっていると思います。いま豊島委員からもご指摘のように、公衆衛 生の向上に該当するものとして、利用も認めるような整理をするということで「代諾者 による同意を認める」という整理にしておいてよろしいですか。 ○吉倉委員  個人情報保護法では、「代諾者」というものは、何か位置づけられているのですか。 ○堀部委員  代諾者という位置づけは資料の3−1の5頁に、第29条「開示等の求めに応じる手続 」の下の3項になりますが、「開示等の求めは政令で定めるところにより、代理人によ ってすることができる」、ここに「代理人」という概念が出てきます。ここに「政令で 定めるところにより」とありますが、政令は参考資料の3−2の第8条に、「法第29条 第3項の規定により開示等の求めをすることができる代理人は次に掲げる代理人とする 」ということで、1号で「未成年者又は成年被後見人の法定代理人」、2号で「開示等 の求めをすることにつき、本人が委任した代理人」という形で、代理人あるいは代諾者 というのは出てまいりますが、ほかの所には出てきませんので、法的には開示請求のと ころということになります。 ○吉倉委員  先ほど言っていたいわゆる代理人ですが、インフォームド・コンセントをエンロール するかどうかと、そういう代理人は、この代理人に該当すると考えてよろしいのです か。 ○堀部委員  それはないです。法的には開示請求のところだけです。 ○吉倉委員  要するに法的にはガイドラインにある代理人というものは存在しない、そういうこと ですね。 ○位田座長代理  倫理指針を作るときに、法律でいう「代理人」と、インフォームド・コンセントの 「代諾」とは違うというのがまずあります。インフォームド・コンセントのときに「代 理人」と書いてしまうと、法律でいう代理人と間違うので、ある意味では法律用語でな い「代諾」という言葉を使って、代わりに承諾をしてもらおうと、そういう言い方をし ているので、「代諾」という言葉は法とは関連がない。もちろん法で言っている「代理 人」と「代諾者」が同じであるケースはあり得ますが、代諾のほうがもっと広い概念だ と思います。 ○吉倉委員  そうすると、この代理人か代諾人かは知りませんが、この人の行為というのは、法的 に不安定な立場になるということですね。 ○位田座長代理  この倫理指針そのものが法には基づいていないので、法的に不安定云々という話には ならないのだろうと思います。 ○垣添座長  それでは「指針において、代諾者の同意により、個人情報の利用が可能となるには」 ということで(1)(2)(3)が挙がっていますが、こういう条件に基づいて「代諾者に同意を 認める」ということは妥当という整理にしておいてよろしいですか。もう1つ、いま吉 倉委員からご指摘の死者の情報は、個人情報保護法には含まれてはいないけれども、指 針ではこれを保護すべき対象としていることから、「指針において、代諾者等による同 意を求めることが妥当である」という整理にしてよろしいですか。                  (異議なし) ○垣添座長  次は10頁の「適正な取得」の所です。個人情報保護法では第17条にあり、指針では3 ・8に、インフォームド・コンセントとして挙がっていますが、これに関していかがで しょうか。インフォームド・コンセントというのは、取得にあたって、説明文書と口頭 で被験者に説明をすることになっていまして、当該文書は研究計画書と一緒に当該施設 の倫理審査委員会で審査されて許可されたものであり、偽りその他不正の手段によって 個人情報を得ることは想定されないので、指針において対応できているのではないかと 考えておりますが、いかがですか。よろしいですか。                  (異議なし) ○垣添座長  次は同じく10頁「データ内容の正確性の確保」についていかがですか。 ○位田座長代理  私は、文部科学省の小委員会で申し上げたと思うのですが、データバンクを作ったと きに、データの正確性若しくはそのデータの質を、当然確保しないといけないと思うの ですが、研究にもデータの正確性は必然のことであるということで済ませてしまえるも のなのか、若しくは指針の中にきちんと書かないといけないのかという問題があると思 うのです。特にデータバンクを長期間維持するということになると、国が何らかの形で そのデータの質のコントロールを考える必要があるのではないかと思うのです。私はそ のデータバンクがどういうふうに動くかは、確実に認識をしていないので間違っている かもしれませんが、何も書かなくていいというのは、ちょっと無理なのではないかと思 っているのです。 ○豊島委員  これはあって悪いものではないから、入れておいていいのではないでしょうか。非常 にひどい言い方をしますと、例えばいま『インターナショナル・ジャーナル』などで問 題になっているように、ある種の薬品のときに、故意にデータを曲げて発表していると いうことはあり得ることです。効く効かないの問題ですね。それによって効かないはず の薬品が、効いているようなデータになっているということが、ジャーナルでもかなり 問題になっています。ですから、こういう項目はあっても悪くないと思います。 ○垣添座長  どういう文言にするかということはありますが、これは事務局に一任する形にして、 何らかデータの内容の正確性を確保するような文言を、指針の中に加えるという整理に してよろしいですか。 ○堀部委員  先ほど言いましたのは、個人情報、個人データ、保有個人データを法律では区別して いまして、10頁にある法第19条になってきますと、個人情報ではなくて「個人データ」 と書いています。それはこの同じ頁で、適正な取得の第17条の場合には、個人情報でよ り広いもので、下の正確性になると「個人データ、個人情報データベース等を構成する もの」となってきます。ですから、その概念がどこかですり替わってしまってというこ とになると思いますので、それはどこかの段階で整理をしていただければと思います。 ○垣添座長  法律で、「個人情報」あるいは「個人データ」というふうに使っているわけですね。 ○堀部委員  はい、それをここではあくまでも「個人情報」という言葉で通すのだということもあ るかもしれませんが、法律との関係でいくとどうなのか。ここで「正確性の確保」とい うのは努力義務なのですが、後のほうになってくると第20条、その前にもありますが、 主務大臣が報告の徴集を始め、最終的には命令まで出す権限行使の対象にもなりますの で、正確性のところは入っていませんが、そういうものとして法的には整理をしない と、倫理指針には違反しないけれども法には違反するという問題が起こり得るので、そ の辺りの関係も是非、どこかで書いておかないとならない。従来に比べると法律が出来 たということで、事情がだいぶ変わってきたというふうに、理解をしていただくとよろ しいかと思います。 ○垣添座長  分かりました。この指針の規定の部分に盛り込むことができれば、そのことも含めて 文章を加えることにさせていただきます。  11頁から15頁までの「安全管理措置」に関して、整理すべき事項としては14頁、15頁 にまとめてありますが、これに関してはいかがですか。先ほどすでに、あるいは前回も 少し議論をしていただいていますが、個人情報を取り扱う研究機関の長の責務として、 研究内容に応じた組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置を講ずることを規定す る、ということを加えるかどうかといった整理になっています。あるいは15頁の最後に あるように、委託先の監督に係わる規定については、指針に規定されていないことか ら、これらを指針の「研究機関の長の責務」に追加するということは、いかがかという 問題提起ですが、いかがでしょうか。 ○福嶋委員  具体的にこういう項目が出てきて、指針に実効性を持たせるためには、非常に意味の あることだと思います。ただ、初めてこういう文言を見た段階では、例えば組織の整備 と言っても具体的にどうするのかなと迷うのです。ですから、具体的なことがもう少し 述べられるといいかなと、これは要望です。 ○垣添座長  分かりました。 ○藤原委員  2点あります。1点はいまのご意見と一緒というか近いのですが、安全管理措置は、 この指針でどのような位置を占めるかということで、書いていただくのは結構なのです が、その後、例えば細則とか、あるいは今、言われたような別添の形で、もう少し具体 例を入れて、こういうことをやりなさいという形で書いたほうが現場といいますか、実 際の研究に携わられる方々には親切かなという感じがしました。そうすると、これより も更に具体例が増えると詳細になってくるので、別添とかいろいろあり得るのかなと、 それを申し上げておきたいという点が1つです。  2つ目は質問ですが、事務局は15頁に「委託先の監督・・・追加することでよいか」 としか書いてないのですが、これは条文を入れるという趣旨でしょうか、それとも委託 先の監督についても、14頁にあるようなイメージで書き込むという趣旨でしょうか。 ○高山研究企画官  いま指針に規定されていませんので、何かしら条文を追加するのか、どこかの該当文 章の所に、そちらを盛り込むかということをご了解いただければ、整理をしたいと思い ます。 ○垣添座長  いま指針のほうでは何も触れていないので、福嶋委員、藤原委員からご指摘のよう に、何らかを加える必要があるだろうと思います。この場で加える必要があるというこ とだけをご了解いただいておいて、少し文案を事務局で練っていただいて、次回に議論 をすることにしたいと思います。 ○廣橋委員  この安全管理措置は、研究も元は医療の現場から出発して、いろいろな臨床情報をと って、そして個人情報管理者の所に行って、そこで完全に匿名化された場合に、その後 どう扱うかというのは先ほど議論のあったところです。そうすると、医療における安全 管理措置、当然これが考えられているだろうと思うのですが、それと一連の整合性がと れるようなもので、情報管理者の所まできちんと、こういうものが適用されて、きちん と個人情報が管理される状態をつくることが、大事ではないかなと思います。その連携 がとれていることも大事ではないでしょうか。 ○垣添座長  ご指摘のとおりだと思います。 ○佐々委員  先ほどからいろいろな情報の管理とか、匿名化というのが出ていたのですが、もし一 般の方が医者の所に行ったとき「協力をしてもらえますか」と言われて、いちばん心配 なのは、安全管理措置がきちんとできているかということです。私どもの目に触れるメ ディアの情報は、間違って出てしまったとかいうものばかりで、うまくいっていますと いう情報は着かないのです。  先ほどの匿名化についても、一度戻してまた新たな匿名化をしてという、とても複雑 なシステムが考えられているようです。別添に示す必要はないと思いますが、先ほど海 外でグローバルスタンダードになっているということでしたので、それがうまくいって いる例なども、もし次回にでも説明いただけると、イメージとして理解しやすいような 気がするのです。 ○豊島委員  言われるとおりです。たくさん扱う所では、それを当然しなくてはいけないし、特に 末端の医療機関が情報管理をしなければならない。大量に情報を扱う所と、末端の医療 機関と、何らかの形で少し区別した形で、規制を作っていただかないと。例えばいまの 医薬品のテストでも、末端は非常に少ない患者を扱う医療機関から、グループとして扱 ってやっているので、その辺の現実面も少し考えた規則を作っていただきたいと思いま す。 ○垣添座長  ご指摘のとおりです。我々、研究を進展させていく上では佐々委員が言われるよう に、一般の方の理解を得なければ進められないわけですから、疑念を持たれないような 形の規定といいますか、文章がきちんと入っていることは非常に大事だと思いますの で、いまご指摘のいくつかの点を含めて、文章化していく上で工夫をしたいと思いま す。 ○吉倉委員  先ほども代諾人の話で質問をしたのですが、この資料は上に法律がついていて指針が あるので、作り方としてはこの法律の下に、この指針を考えるという理解なのでしょう か。もしもそうだとすると、いま安全管理措置を議論していますが、試料の管理もこの 個人情報管理者の下に置くのかどうか。情報だけではなくて試料も置くとすると、これ は結構面倒な話です。この前、OECDで遺伝子診断に関するサーベイをやったのです が、国境を越えた人のサンプルの移動が頻繁に行われている。そういう状況の中で、試 料まで個人情報保護法の下に置くかどうかというのは、どうなのですか。 ○垣添座長  なかなか難しい問題ですね。 ○辻委員  議論は全く噛み合わないと思うのですが、私たちの共同研究あるいは国際的な共同研 究をいかに推進するかという視点が、大切なことであって、何か個人情報保護の法律が すべてで、それで議論を通そうとすることには無理があるのではないでしょうか。何か とても次元が違うことを議論しているように私は思うのです。実際に共同研究の現場や 国際的な共同研究では、こういう指針がいろいろな点でかえってマイナスに作用をして いるという部分も多いというか、研究の進捗がすごく遅れてしまうことも多く起こって いるわけです。視点としては個人情報保護法というだけではなくて、研究を強力に推進 して、それを国民の健康なりに還元をするというところが、とても大事だと思うので す。 ○垣添座長  それは皆さん了解されていると思うのです。ただその方式がいろいろと問題です。例 えば吉倉委員がご指摘された点は、生体試料なども個人情報の扱いですか、ということ ですが。 ○辻委員  それを扱うときに、国際共同研究としての在り方という視点をもっていないと、ただ 単に個人情報保護という視点でどう整理するかだけだと、変な方向に議論がいくと思う のです。 ○吉倉委員  誤解があるようですが、これはコマーシャルラボなのです。 ○垣添座長  この個人情報の中に生体試料まで含めるかどうかに対して、ほかに何かご意見があり ますか。 ○福嶋委員  生体試料を用いて解析したその結果は個人情報になるでしょうけれども、試料そのも のは個人情報ではないと考えていいのではないでしょうか。 ○垣添座長  それでよろしいですか。 ○位田座長代理  基本的にはそうだと思うのですが、そうはいかないのではないかというのがユネスコ の宣言の考え方です。解析してしまった後が当然情報なのですが、しかし、DNAその ものが情報をもって存在しているわけですから、個人情報保護法は情報そのものが出て くる話なのです。個人遺伝情報の場合にはDNAそのものに遺伝情報が乗っているとい うか、DNAそのものが遺伝情報でもあるので、したがって試料も含めるほうが全部カ バーできるというのがユネスコの考え方なのです。ここでそれを取るかどうかというの は別の話なのですが、そういうように出てきた結果だけを個人情報として扱って、試料 はそのように扱わないということで、個人情報の保護という観点からそれで十分なのか というのは、私にはよく分からないところがあります。 ○福嶋委員  このガイドラインは個人情報保護法と、ユネスコの宣言とに見合う形で変えようとし ているわけで、それには当然試料も含まれますが、試料は個人情報保護法の範疇ではな いと考えていいのではないでしょうか。 ○垣添座長  そうですね、私も福嶋委員のご指摘でいいのではないかと思いますが、そういう整理 でよろしいでしょうか。 ○具嶋委員  1つは辻委員が言われたように、グローバルな研究活動をやっている企業がいつも言 うのですが、日本が例えば臨床研究がやりづらいというところについて、グローバルな 観点からも考えてほしいというのと、もう1つ、15頁の委託先の監督、これは先回江口 委員が言われたように、委託先の監督と同時に、委託元の情報を遺伝子解析関係の会社 などは、もっと知りたいというのがあります。それを今回どこかに入れて頂けるとよい と思います。 ○垣添座長  本当は今日そういったことを含めて順次、前回問題提起されたことを議論する予定で したが、、個人情報保護法との関係で、いま順次ご議論をいただいているような話が入 ってしまいましたので、後ほどそれは必ず戻ってまいります。それでは何らかの文章を 含めるということで、ここの部分は整理させていただきます。次は「第三者提供の制限 」ということで、16頁から19頁までですが、いかがでしょうか。 ○小幡委員  整理すべき事項のところには記述がないのですが、この第三者提供は、12頁の「安全 管理措置」で、個人情報管理者が外部の機関への提供に対する細則があり、指針のほう ではこちらのほうに全部入っているのです。ですから、それはそれでかまわないと思い ますが、この12頁の(10)「匿名化せずに行う外部の機関への提供に関する細則」で、 この匿名化というのは連結可能と連結不可能と両方を含むということですね。  それで1つ、先ほどの確認だけをしたいのですが、利用停止の請求があった場合で す。それは個人情報管理者のほうで本人がそういう請求をしたときに手続きを取る。そ れ以降、連結可能状態で匿名化されている情報について、研究者から大本のところに問 い合わせがくる。その場合は、もはやこの情報というのは廃棄されているから、それは もはや不可能と考えてよろしいのですよね。それを確認したいのですが。 ○垣添座長  何か研究現場の方でお答えをいただくことがありますか。 ○小幡委員  戻るのは不可能だということですね。 ○豊島委員  いまのご質問は、本人がこれ以上提供したくないと申し入れた場合に戻ってきても、 それ以上答えは返らない。当然そうなります。 ○位田座長代理  いまの小幡委員のお話は、本人が提供の同意を撤回したときに、試料は例えば解析を する機関の所にいっている。これは廃棄しなくてもいいという趣旨ですか。そうではな いのですか。 ○小幡委員  廃棄するから、結局もう結び付けられなくなりますということを確認したかったので す。そして、さらにもっと言いますと、私は廃棄は原則そうなると思いますが、その試 料の話ではなくて、その場合に利用停止された情報安全管理者は、先ほどの座長の整理 ですと、もう連結可能匿名化で出ている情報については何もする必要がないということ の整理ですか。 ○豊島委員  例えばそれから情報として完全に匿名化されて出ていっている部分がありますね。そ れは例えばある人が病気でその病気も含めて調べたいためにDNAを提供した。その提 供したDNAが例えばゲノムマイドに調べられて、それも全体として組み上がっている スニップ情報というのがあるとします。それに関して遡ってそれを引き算するというこ とは、非常に問題があって難しいと思います。多分そこまではしないで、それ以降の解 析はしないし、それ以降、その人のわかっていた元に結び付くようなデータは消去する という形になるのだと思うのです。すでにある一定レベルの組み上がったデータとして 出ているものは、これはやむを得ないからそのままであると。 ○小幡委員  遡及しないけれども、そうすると、それ以降については結び付きがあると考えてよろ しいですか。となると、ちょっと前に戻って恐縮なのですが、完全に埒外に置くという のはなかなか難しいかなという感じがします。ですから、先ほどのすり合わせの話です が、試料も含めて、いままでの指針というのは連結可能匿名化も含めて書いていたわけ ですね。ですから、それをいきなり完全に外すというよりは、例えば法律上の個人情報 ではないという整理をした上で指針に残すというのが1つの解決ではないかと思いま す。そうすれば、従来の指針の連結可能匿名化というのが、いままでのいろいろなとこ ろに残っているわけですが、それを全部なくしてしまうおつもりなのか、そこまで変え ないのであれば、指針としてはやはり入れておいてというほうが自然かなと思います。 ○垣添座長  これについて事務局は、何かありますか。 ○高山研究企画官  こういう解釈でよろしいでしょうか。指針は基本的にはこの研究を進めるにあたっ て、倫理上必要なことを従来は盛り込んできて、基本的なところを変える予定はないと 思います。ただ、個人情報保護法ができたことによって、それに上乗せの関係で措置を 盛り込む必要があるか、ある場合についてどういうことを盛り込めばいいかということ を、この場でご検討いただければいいかと思いますがいかがでしょうか。 ○垣添座長  そういう趣旨でずっと議論してきたと思いますが、よろしゅうございますか。「第三 者提供の制限」ということで18頁にありますような「親族またはそれらの近親者に準ず ると考えられる人」についても、提供者の個人情報を提供することは妥当という整理で よろしゅうございましょうか。                  (異議なし) ○垣添座長  ありがとうございます。では先に進めます。20頁以降の「保有個人データに関する事 項の公表等」についてということで、21頁までですが、この点はいかがでしょうか。細 則において研究責任者の氏名及び職名について規定しているけれども、組織、つまり研 究機関の長の氏名、又は名称も追加すべきかということですが、そこまでは必要ないと いうことでしょうか。 ○廣橋委員  その研究機関の長の名前を書くというか、個人として特定するとなると、その長が交 代するときのことまで考えて対応しないといけないと思います。あるいは長として責任 を持って、それを継承するという形でやるならば、むしろ機関長として責任を持つとい うことで名前を出さなくてもいいのではないかとも考えられると思うのです。 ○垣添座長  機関長というのは次々に代わってまいりますので、機関長の責任というのをきちんと 明示しておけば、それでよろしいのではないかと思いますが、よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○垣添座長  ありがとうございます。それでは22頁から23頁、「保有個人データの開示案」という ことで、いかがでしょうか。23頁の真ん中辺りにありますように、指針でいう「意義」 とは予防、治療としての臨床的な意義のことが考えられる。従って、開示する意義がな いと認められる場合とは、法による不開示理由、すなわち得られた研究結果の精度・確 実性が不十分である場合に開示することにより本人に精神的負担を及ぼす可能性が考え られることから、従来どおり開示しない。ゲノム指針を作る段階では、こういうことを だいぶ議論しまして、必ずしもまだ情報開示することが適当でないという状況もあり得 るということで、いまのような規定になっていますが、これは特に変える必要はないで しょうか。 ○位田座長代理  ここの文章がよくわからないのですが、なお書きのところで、「意義がないとの記載 は、研究の意義がない等の誤解を招くおそれがあることから、指針においても法の規定 にあわせて規定すること」。ここはどういうように書くという趣旨なのでしょうか。 ○安藤生命倫理・安全対策室長  法第25条の1号でいえば、「本人又は第三者の生命、身体、財産、その他の権利利益 を害するおそれがある場合」、その言葉を「意義がない」という言葉に置き換えてはど うかということです。 ○位田座長代理  これは開示しない理由も説明するわけですね。そうすると、あなたの生命、身体それ ぞれに誤解を及ぼすおそれがありますからという、そういう趣旨の話をするのか、それ ともまだ今のところは研究中で、あなたからいただいたDNAを解析したところ、遺伝 情報というのは確定しないからというように説明をするのがいいのか。 ○垣添座長  やはり後者ではないでしょうか。 ○安藤生命倫理・安全対策室長  いまの理由の説明は、28頁で出てくる議論ですが、これにあたる場合は、理由の説明 は必要ないという整理ができないでしょうか。後ほどご議論していただければと思いま すので恐縮ですが、そこでもう1回説明させてください。 ○宇都木委員  この個人情報保護法の第25条と、いま問題にしている指針のところの関係というの が、まさにマテリアルから新しい方法が出てきてしまうという、個人情報保護法がもと もと想定していない事柄だと思うのです。基本的には第25条はこの問題とは違う事柄を 問題にしていると考えたほうがいいのではないかと思うのですが、それだけを申し上げ ておきます。 ○堀部委員  ここも先ほど言いました個人情報保護法でいうと第1条の「定義」とかかわってき て、第25条の開示は個人情報でも個人データでもなく、保有個人データとはまた別の概 念なのです。それがここでいう研究の中で一体どれにあたるのかということを明確にし なければならない。参考試料3−1の1頁の左上に、第2条の第5項があるのですが、 この法律において「保有個人データとは、個人情報取扱事業者が開示、内容の訂正、追 加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有 する個人データであって、その存否が明らかになることにより、公益その他の利益を害 されるものとして政令で定めるもの又は1年以内の政令で定める期間内に消去すること となるもの以外のものをいう」と。なかなか分かりにくいとは思いますが、一体ここで 議論している個人情報の中のどの部分が保有個人データなのかということで、第25条に 限って言いますと、開示の求めがあるときは開示しなければならないと、こういう規定 なのですね。ですから、どこかでいずれにしても言葉を整理しておいて、実際の研究で 使っている個人情報の中で、どの部分がこれに当たるのかということを明確にしなけれ ばならないのではないでしょうか。 ○垣添座長  分かりました。ほかにいかがでしょうか。 ○吉倉委員  このトラブルはおそらく情報とは何ぞやということに関係あるのだと思います。要す るに単なる遺伝子の並びも1つのデータではありますが、情報ではないです。そういう 個人情報という定義のところの情報とは一体何をもって情報とするかという、そこに関 係ある話だと思います。 ○栗山委員  個人情報といってもそれは個人のものではなくて、研究する方のものですよね。私が 提供したということを考えると、個人情報といっても、その情報というのは私自身のも のというより研究される方が扱うものであって、そこから元のところへ開示してほしい というような要求というのはあるのですか。 ○垣添座長  それはあると思います。 ○堀部委員  個人情報の理解の仕方というか、個人情報保護法ではどこに提供してもその本人が識 別できるものであれば、本人の情報になります。 ○栗山委員  それは自分の保有している情報ではないですよね。 ○堀部委員  言葉の使い方が難しいので、一般的に「もの」と言っておきますが、少なくとも本人 が何らかの形でコントロールできるものというように、この法律では規定しているので す。ですから、利用目的の明示や第三者への提供の同意を必要とする、また開示、自分 で自分の情報がどうなっているのかというのを見て、研究の場合におそらく訂正という のがあるのかどうか、訂正を求めることができるとか、先ほど小幡委員が言われた、そ れは使わないでくれという利用停止を求めることができる。こういう権利というと語弊 があるのですが、そういう仕組みを作っていて、これは行政機関法ですと、そこを権利 として構成しているのです。この個人情報保護法は、むしろ個人情報取扱事業者の義務 として規定しているので、これもこの場の議論の複雑なところなのですが、行政機関個 人情報保護法の適用を受ける研究機関の場合には、権利として主張できるし、独立行政 法人等のものであれば、これも権利です。しかし、そうではない一般のそれ以外のとこ ろですと、義務として構成されることになりますので、これは法律にそうなっています から、倫理指針でそれを排除するというのはやはりできないのです。最終的には法律に 基づいて求めがあれば個人情報取扱事業者としては義務として応じなければこういうこ とになります。そのように理解していただくとよろしいのではないかと思います。 ○豊島委員  先ほど吉倉委員のおっしゃった情報とデータと違うのだというのは、ちょっと哲学す ぎて分かりにくいと思うのですが、例えば生活習慣病のときに、ある遺伝情報の1つが それらしいかもしれないと特定されたとしても、解析が終わるまでは、本当にそれがそ の生活習慣病にかかわるかどうかということは、非常に多数の人に対して言えないので す。そういう状況のときに、自分のデータを聞かれても、それをただ単にそういう形で 答えるということは混乱を招くだけで、本人に対して利益にもならないし、情報を開示 したことにもならない。だから、そういうときには避けられるというのが、ここに書い てあることの趣旨だと私は思っています。 ○垣添座長  全くそのとおりだと思います。 ○栗山委員  避けられるよりも一歩進んで、そういうものは研究機関のほうで持っていて、保護し ているということなのですね。だから、個人情報といってもその人のいろいろなことが 世の中に出て、独り歩きされては困るけれども、それが研究の役に立っていて、私自身 に返ってくる必要があるかないかということなので、もともとそういうものは開示しな いということで、特定のときだけ返るということで良いかと思いますが。 ○豊島委員  例えば返ったほうがその人にとってためになることであっても、決まらないうちに、 きちんと整理されないうちに返るというのは。 ○栗山委員  むしろ返らないほうがいいのではないでしょうか。 ○勝又委員  ほとんど豊島委員がおっしゃったのと変わらないのですが、結局当初提供した個人情 報と、研究の段階で新たに生まれてくる情報があります。そういうものについて個人に 有用なものは戻す意義があるだろうと思うのですが、個人が提供した情報ではなくて、 新たに生まれてきたもので、しかもそれが研究者の財産でもあるといったような、研究 者のいろいろな研究の中で生まれてきたものについて、法律の概念が求めている開示 と、ここで言っている開示とはかなりずれていると思うのです。そこは杓子定規に解釈 しないで、倫理指針の中でいっている形を、きちんと維持すればいいのではないかと思 います。 ○辻委員  個人情報保護法とこの指針を並べて議論することに、とても違和感を感じます。現場 の感覚からすると、計画を作って、インフォームド・コンセントというか、どういう場 合にはどうするということをすべて示して、同意をいただいて、それから始まるわけで す。ですから、ここはインフォームド・コンセントのところが基本になるべきだと思う し、それよりも法律が上位だと言われてしまうと、すごく難しいなと矛盾を感じます。 研究というのはそういうものだと、つまりどういうことをして、どういうときには返し ますということを全部あらかじめ説明して理解いただくわけです。だから、インフォー ムド・コンセントが尊重されなければいけないと私は思うのですが。 ○垣添座長  先ほど来ご指摘の「返さないほうがいい情報も生じ得る」ということですね。ただ、 辻委員の疑念はよく分かりますが、そうすると、この検討会が不要になるということに なってしまいます。 ○位田座長代理  この問題は個人情報というのは自分の情報だから、最終的に自分の情報はコントロー ルできるということが原則になっていて、ただ、遺伝情報は研究をしているプロセスに おいては、まだ意義がはっきりしないかもしれないので、個人に知らせる必要がない、 若しくはそこは意義がないという言い方をしているのですが、そういうものは例外とし て個人の情報であっても、返さないでもいいことにしましょうという考え方だと思うの です。ですから原則は返す、しかし例外があって、その例外のためにはこういう条件が ありますということを決めていればいいので、個人遺伝情報といっても渡してしまえ ば、何が何でも返さなくてもいいという話でもないし、若しくはインフォームド・コン セントで返してほしいとは言いませんと言っていても、例えば新聞で遺伝情報にこんな ものがありますよと出てきたときに、やはり私は知りたいと言ったときに、「あなたは インフォームド・コンセントで、返していただかなくてもいいですと言ったではないか 」という形にはならないと思うのです。ですから、原則は一応返すのだけれども、例外 として、これこれこういう条件があれば返さなくていいという書き方をすれば、問題は あまりないのではないかと思います。 ○垣添座長  その点に関しては指針の中に書いてありますので、一応いまのご議論を聞いておりま すと、特にこれは新たに何かを付け加える、訂正する必要はないのではないかという、 そういう整理にさせていただきます。次は24頁から25頁にかけて「訂正及び利用停止」 についてということでいかがでしょうか。 ○位田座長代理  25頁の「必然的に訂正されるものとして整理してよいか」というところですが、デー タに誤りがあれば当然訂正する義務があると書いておいて、別に悪くはないのではない かと思います。先ほど豊島委員がおっしゃったようなケースもあり得ると思います。も う1点、下のほうの丸で、試料等を廃棄しないこと、又は廃棄したことについて通知す ることを規定しておく必要があるかということなのですが、原則は試料は廃棄という話 ですので、廃棄しなければ廃棄しませんよということは、本人にも通知をする必要は当 然あると思うのです。 ○垣添座長  ということは、ここに書いてあるとおりということになりましょうか。ほかにご意見 はありますか。 ○吉倉委員  試料の件なのですが、研究機関、大学等でやっているものと、いわゆるコマーシャル で遺伝子診断をやっているという2通りがあると思うのです。試料の使い方について も、この前OECDのところでも、試料の破棄について明確な規定がない、それは非常 に問題ではないか、要するに次に別のものに使えるかもしれないからと。それで、特に コマーシャルラボの場合には、日本の場合は20日でしたか、決めてあると思うのです が、そういう特定なものに限った遺伝子診断については、やはり場合によっては廃棄を することを義務づけてもいいのではないかと思います。 ○垣添座長  いま吉倉委員が言われたのは、例えば遺伝子解析が臨床試験のレベルのような形で動 いている場合のことを指しておられるわけですか。 ○吉倉委員  例えば、親子鑑定の場合のように、それだけを調べればいいというものについては、 やはり検査が終わった段階での廃棄という、別のカテゴリーとして義務づけるというの は1つのやり方で、あまり混乱しないと思います。 ○勝又委員  いまの例で親子鑑定というのが出ましたが、これは研究ではないですね。ですから、 ちょっとここの議論からは少し外れるお話だと思います。 ○垣添座長  いまの議論には立ち入らないことにします。事務局、何かありますか。 ○安藤生命倫理・安全対策室長  先ほど位田委員が言われたことについてなのですが、整理すべき事項の下の丸のほう ですが、私の理解が間違っていればご指摘いただきたいのですが、個人情報保護法では 有り体に言えば違法行為をして、不正なことで入手した場合に利用停止だということで 通知が義務づけられているわけです。指針では撤回のところ、利用停止ですから合わせ て考えれば撤回なのですが、現行の指針では通知は義務づけられていない。これは特に 違法かどうか、入手方法がどうかは全く関係なく規定されているものだと思うのです が、その点も踏まえて通知をすることを規定しておくべきかどうかということをご議論 いただければと思います。 ○垣添座長  先ほど来の議論を聞いておりますと、通知するべきであるというご趣旨の発言が多か ったと思うのですが、そういう整理でよろしゅうございましょうか。                  (異議なし) ○垣添座長  次に「開示等の求めに応じる手続き及び手数料」、26頁から27頁ですが、いかがでし ょうか。 ○吉倉委員  先ほどの勝又委員のご意見で、少し論点がずれてしまったのですが、いまは確かがん の診断とかで結構コマーシャルラボに検体を出して、それで結果をもらって終わりにし ているのが結構多いです。だから、研究というカテゴリーでも、そういうコマーシャル ラボに1回きりの検査をやっているのが結構あるのです。ですからこのようなものにつ いては、そういうことを考えたほうが、むしろスムーズにいくのではないか、混乱が少 なくなるのではないかと思います。 ○垣添座長  ほかにいかがでしょうか。 ○辻委員  いまの吉倉委員のご発言の関係なのですが、確かにそうだと私も思います。ただ現実 にコマーシャルラボで、多少技術的に問題があって後で再確認をしなければいけないと か、再検査とかいろいろなことも起こり得るので、そういうことも十分に考慮した上で の廃棄の手続きを考えたほうがいいと思います。つまり、検査して終わった、結果が出 ました、それで廃棄しますといったときに、いろいろな問題が起こる可能性を若干経験 しています。ずっと持っておく必要はないと思いますが、ただ、すぐに廃棄すると、何 らかの技術的な問題で間違ったときに、訂正が利かなくなってしまうという、そんな問 題もあり得ますので、そこは慎重に最適化されたほうがいいと思います。 ○垣添座長  廃棄すべきであるとはいっても、仕方を少し工夫すべきであるということでしょう ね。 ○位田座長代理  ディスカッションがずれていることは重々承知しているのですが、これはやはり診療 における遺伝情報の扱い方をどうするかという、そこでのルールをきちんと述べておか なければいけないことですので、厚生労働省はよろしくお願いいたします。 ○垣添座長  それは皆さんが本当に現場で求められていることですから、確かにこの場での議論と はちょっと外れるかもしれませんが、非常に重要なご指摘だと思います。 ○宇都木委員  質問なのですが、いま間違えている場合があるということをおっしゃったのですが、 基本的に研究結果というのはほかの人が追跡調査をしたいといって、試料をくれという 要求はないものなのですか。検証というのは、別の試料でも同じようにできなければい けないわけですか。同一試料をくれという要求などはないものなのですか。 ○豊島委員  多分、はっきりした遺伝病などの場合には、追試したいということはあり得ると思い ます。そのときはやはり基本的には拒否できないでしょう。 ○辻委員  それは難しいですね。確かに検証するときにポジティブコントロールというか、そう いうものとして提供を求められることもありますし、実際は非常に難しいところがあっ て、話がますます外れてしまいますが、自分たちのところではその部分だけを取り出し て、一切ほかのゲノムとは切り離して、その部分だけで提供するという工夫はしていま すが、そういうことはいろいろな場合であり得ると思います。一方で、研究者としては 事実は誰でも再現できなければいけないという問題もありますので、いろいろそういう 問題はあるかと思います。 ○垣添座長  ありがとうございます。では「開示等の求めに応ずる手続き及び手数料」の問題に移 ります。 ○位田座長代理  手数料の話なのですが、開示の手数料が要るという考え方がよく分からないのです が、試料そのものは無償で提供しているわけですね。もちろん交通費や何かはお出しす るとしても、自分の情報を開示してもらうのに手数料というのはどういう計算でするの かというのがよく分からないのです。それなりに手がかかるのはよく分かるのですが。 ○吉倉委員  簡単に言いますとコピーをほしいというとコピーは1枚10円です。しまってあるのを 探してくるというのは人を雇わないとできないですから、人件費、コピー料など、そう いう料金は要ると思います。 ○位田座長代理  それで、その開示手数料が高くなればなるほど、開示を求めにくくなるわけですか ら、それはやはり問題だろうと思うのです。 ○福嶋委員  それが研究の結果得られた個人の遺伝情報が誰のものかという、根本的なところに行 き着くのですが、位田委員はそれは試料提供者がいなければ出ないことだから、試料提 供者のものだとおっしゃいますが、試料提供者のその試料は、研究者が研究費を使って 研究して得られた情報ですから、個人の遺伝情報というのは共同産物だと思うのです。 両者の共同で得られたものですので、両者の権利というのはあるのだと思うのです。で すから、こういう場合も開示しないことを条件に研究が進められたことにルール違反、 最初の約束以外で求めるのですから、それに係るエクストラの費用というのは個人に請 求していいのではないかという考えだと思います。 ○堀部委員  手数料の問題は第31条が26頁にありますが、必ず取らなければならないのではなく て、徴収することができるのが1項の規定で、2項で、「前項の規定により手数料を徴 収する場合は実費を勘案して、合理的であると認められる範囲内において、その手数料 の額を定めなければならない」となっています。 ○堀部委員  通常、例えば信用情報機関の窓口で無料のところもあるのですが、有料のところでも 500円、郵送の場合でも900円と決めています。実際には数千円かかるそうです。やはり 個人データ主体の権利というのは国際的にはそういう考え方が採られていますから、こ の法律は権利ではないのですが、権利行使をするときの手数料ですので、できるだけ安 く押さえるというのが趣旨なのです。 ○垣添座長  一応ここの整理としては、手数料を求めることができるというくらいの書き方でよろ しいのではないでしょうか。                  (異議なし) ○垣添座長  では、「理由の説明」、28頁から29頁に関してはいかがでしょうか。 ○位田座長代理  29頁の3つ目の丸で、訂正しない理由を述べるということを指針には規定しないとい うところです。これも原則と例外の関係ですが、指針に規定しないことによって、恣意 的に訂正しないでいることがあり得るのではないかという気がするのです。あまり不信 感ばかりを持ってはいけないので、それ以上は申し上げませんが、その辺は先ほどのデ ータの質の問題と関係するかと思います。もう1点、次の4つ目の丸ですが、廃棄しな い場合に理由を通知しないでおくという手はないと思うのです。廃棄を原則とするので あれば、廃棄しない理由を通知するということではないかと思います。だから、ここに 書いてあるとおりにしたほうがいいと思います。 ○垣添座長  上の場合も規定したほうがいいのではないか、下はそのとおりということですね。ほ かに何かご意見はございませんか。よろしいでしょうか。では、上に関しては規定す る、下に関してはこのままの整理にさせていただきます。  最後、「苦情処理」、30頁はいかがでしょうか。苦情に対しては誠実に対応しなけれ ばならないという指針の扱いですが、これ以上にさらに書くべきかどうかです、よろし ゅうございましょうか。                  (異議なし) ○垣添座長  ありがとうございます。それでは、一応大変駆け足ではありますが、資料1−1と1 −2に関して、個人情報保護法と3省ゲノム指針の関係は一応整理されたものとして、 本日ご議論いただきました部分は、事務局で整理させていただきます。  今後の予定に関して事務局からお願いします。 ○高山研究企画官  非常に活発な議論を、またいろいろご教示いただきましてありがとうございました。 本日の論点に関しまして、何か他にご意見がございましたら各省の事務局の担当まで10 日(金)を目処にファックスなどでいただければありがたいと思います。次回は9月21 日(火)午後2時半から5時の予定で開催させていただきたいと思います。その際には 今日ご意見をいただいたところを事務局で整理をしたものを提出させていただきたいと 思います。よろしくお願いいたします。  ファイルに綴じてある参考資料集のほうは適宜追加して事務局で整理させていただき ますので、机上に残していただければと思います。 ○垣添座長  ありがとうございました。次回は9月21日ということですが、本日ご議論いただきま したことを整理したものでご議論いただき、本日提出いただきました資料2に沿って、 第1回で議論されました内容に沿って、さらに議論を深めてまいりたいと思います。ど うぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:鹿沼(内線3804)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171