04/09/07 労働政策審議会安全衛生分科会第10回議事録            第10回労働政策審議会安全衛生分科会 1 日時  平成16年9月7日(火)17:00〜19:00 2 場所  中央合同庁舎第5号館16階 労働基準局第1、第2会議室 3 出席者  (委員) 公益代表  櫻井委員、北山委員、内藤委員、和田委員       労働者代表 眞部委員、仲田委員、芳野委員、中桐委員、鈴木委員、             徳永委員       使用者代表 讃井委員、小島委員、加藤委員、中田委員、山崎委員  (事務局)      青木労働基準局長、小田安全衛生部長、中沖計画課長、             寺岡安全課長、阿部衛生課長、古川化学物質対策課長、             川島国際室長、高橋建設安全対策室長、中村環境改善室長、             角元化学物質評価室長 4 議題  ・ 特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令案要綱(作業環境測定関係)   について(諮問)  ・ 特定化学物質等障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱   (石綿関係)について(諮問)  ・ 労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱(産業医関係)について(諮問)  ・ 採石業労働災害防止規程案要綱について(諮問)  ・ 新規化学物質の有害性の調査結果に関する学識経験者の意見について(報告)  ・ 今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書等について(報告) 5 議事緑 ○櫻井分科会長  ただいまから第10回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。今日は今田委 員、名古屋委員、平野委員、大村委員、金子委員、伊藤雅人委員が所用のためご欠席で ございますが、労働政策審議会令第9条に規定する定足数を満たしておりますので、当 分科会が成立していることを申し上げます。  議事に入ります前に、委員の交替がございましたので紹介させていただきます。使用 者代表の伊藤輝雄委員が退任されまして、社団法人日本化学工業協会常務理事 環境安 全部長の中田三郎委員が就任されました。同じく使用者側代表の二宮委員が退任されま して、池下工業株式会社 取締役社長の小島秀薫委員が就任されました。どうぞよろし くお願いいたします。  事務局の労働基準局長が交代しておりますので紹介させていただきます。青木局長で す。 ○労働基準局長(青木)  ただいまご紹介いただきました青木でございます。どうぞよろしくお願いいたしま す。お集まりの委員の皆様方には、大変お忙しい中お集まりいただきましてありがとう ございます。平素から労働安全衛生行政に大変なご協力をいただきまして、感謝申し上 げます。  今日は3つの省令案要綱と、労働災害防止規程案要綱をご審議いただきたいというこ とでございます。昨年からずっと労働安全衛生に関する課題を、4つの検討会で専門家 の方々にご検討をいただきまして、次々とつい最近取りまとめていただきました。その 結果などについてご報告を申し上げたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い いたします。 ○櫻井分科会長  安全衛生部長をはじめ、事務局に多くの異動があったようです。安全衛生部長からご 紹介をお願いいたします。 ○安全衛生部長(小田)  安全衛生部長の小田でございます。私から安全衛生部の幹部職員を紹介させていただ きます。計画課長の中沖でございます。安全課長の寺岡でございます。計画課調査官の 森戸でございます。労働衛生課長の阿部でございます。化学物質対策課長の古川でござ います。環境改善室長の中村でございます。化学物質評価室長の角元でございます。建 設安全対策室長の高橋でございます。国際室長の川島でございます。以上です、よろし くお願いいたします。 ○櫻井分科会長  今日の議事に移ります。今日の議題は4つですが、「特定化学物質等障害予防規則の 一部を改正する省令案要綱」について、2番目に「特定化学物質等障害予防規則及び労 働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について、3番目に「労働安全衛生規則 の一部を改正する省令案要綱」について、4番目が「採石業労働災害防止規程案要綱」 についてでございます。これらはすべて厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛の諮問 案件でございまして、当分科会において審議を行うことにしたいと思います。まず事務 局から説明をお願いいたします。 ○労働基準局長  私から概要をまず説明させていただきまして、詳細は担当から説明させたいと思いま す。  1つ目の「特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令案要綱」ですが、これ は専門家の皆様方にお願いをいたしまして、管理濃度等検討会ということで、検討をし ていただきまして、その報告を踏まえて作業環境測定の結果の評価の対象物質として、 三酸化砒素を追加するというものです。  2つ目は「特定化学物質等障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令 案要綱」です。これは昨年10月に安衛法の施行令の一部改正によりまして、製造等を禁 止する物として、石綿を含有する石綿セメント円筒等の製品を追加したことに伴う、所 要の改正です。  3つ目の案件は、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」です。これは産 業医に必要な要件を備えた者として、産業医の養成等を行うことを目的とする厚生労働 大臣が指定する大学において、医学の正規の課程を修めて卒業して、厚生労働大臣が定 める実習を履修した者を追加するというものです。この3つの諮問案件については、本 日の審議会で答申をいただきたいと思っています。  4つ目は、採石業労働災害防止規程案要綱です。これは昨年3月に採石業者及び採石 業者の団体が、鉱業労働災害防止協会に加入しました。したがって新たに採石業に関す る労働災害防止規程を作成する必要が、法律上生じたというものです。厚生労働大臣が これを認可する際には、労働政策審議会の意見を聞かなければならないとされています ので、この審議会でご審議いただくというものです。これも認可により多数の採石業者 とその労働者の方々に適用されることになるものなので、是非本日の審議でご答申をい ただきたいと考えています。担当から説明をさせますので、よろしくお願いいたしま す。 ○櫻井分科会長  資料No.1−2、「特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令案要綱」につ いて、事務局から内容の説明をお願いします。 ○環境改善室長  諮問案件の1について、資料No.1−2に沿って説明をしていきたいと思います。ご 承知のように労働安全衛生法においては、法第65条におきまして、事業者に対し、労働 者に健康障害を生じさせる恐れのある化学物質等のうち、93物質については、作業環境 測定の実施を義務づけております。それらの物質のうち82物質については、法第65条の 2において、測定結果の評価を義務づけているところです。この評価に際しては、作業 環境の良否を判断するための指標として、物質ごとに管理濃度を定めて、その管理濃度 と実際の測定値とを比較評価しているということです。  この管理濃度の値は、日本産衛学会、あるいは米国産業衛生専門家会議(ACGIH )の勧告値を参考に定めています。今般、この管理濃度の値、そしてそれに付随して測 定方法について専門家からなる検討会、管理濃度等検討会を設置して開催をしたという ことです。日本産業衛生学会の許容濃度、あるいはACGIHのばく露限界、これらの いずれも濃度としては概念的には同じです。1日8時間、週40時間働きまして、繰り返 しばく露を受けて、ほとんどの労働者に健康上の被害、影響がないという濃度ですが、 その値の変更があった物質を中心に検討を行ってまいりました。  そこでの知見によりまして、管理濃度の値を21物質について見直すこととした。それ から管理濃度がなかったものですが、新たに三酸化砒素について管理濃度を設定すべき との報告が得られたということです。これを踏まえて、今般、三酸化砒素を測定結果の 評価の対象とするということで、特定化学物質等障害予防規則の一部を改正するという ものです。  改正の内容ですが、(1)三酸化砒素について、測定結果の評価の対象にするという ことで、特化則の第36条の2の第1項に追加をする。  (2)その他の所要な規定の整備で、評価の記録について。三酸化砒素は発がん物質 なので、30年間保存するものに追加をするということで、第36条の2の第3項に追加を するということです。公布日は平成16年10月1日、施行日が平成17年4月1日、いずれ も予定です。  図が書いてありますのでやや詳しい説明をさせていただきます。別添の参考の1で す。現在、先ほど申し上げた労働安全衛生法の第65条、令第21条になりますが、これに 基づきまして測定の実施が義務づけられている化学物質は93物質あります。この中には 製造許可物質であるとか、取扱い等について一定の管理を義務づけている物質、合わせ て93物質ありますが、このうち、測定結果の評価等が義務づけられている82物質、これ は要するに管理濃度が定められている物質ということになります。その右側に評価等が 義務づけられていない化学物質が11物質あります。これは現在管理濃度の定めのない物 質です。管理濃度が定められている82物質について、1つは(1)と書いてありますが、 現行の管理濃度の基となった産衛学会、またはACGIHの勧告値、これに変更のない もの。これはそのまま据え置くことにされたわけです。  (2)の管理濃度を見直す物質が21物質ということで、これは勧告値に変更がありまし て、現行の管理濃度よりも低くなって、より厳しい勧告値が出ている物質ということで す。これは管理濃度を見直すということで、21物質あります。  (3)の結果の評価が義務づけられていない化学物質が11物質ですが、これについて検 討をしたところ、勧告値が設定されていまして、管理濃度を新たに設定をする必要があ るものが1つあり、これが三酸化砒素です。  (4)として、勧告値が依然としてデータ不足だと思いますが、設定されていない10物 質、これはそのままにするということです。(2)の管理濃度を見直す21物質については、 一部、作業環境測定基準(告示)の改正をいたしたい。作業環境評価基準(告示)の改 正もしたいと考えています。  (3)に新たに管理濃度設定をする物質、三酸化砒素については、先ほど申し上げまし たように、特定化学物質等予防規則(省令)を改正する。併せて作業環境評価基準(告 示)を改正する。以上のような検討会の結果となりました。  それでは管理濃度はどうなっているかということですが、新たに設定された三酸化砒 素、それから見直しをされたもの21物質、計22物質です。ちなみにこの三酸化砒素です が、現行では管理濃度はないわけですが、砒素として0.003mg/m3、3μg/m3というこ とになります。この三酸化砒素は、別名、亜砒酸と呼ばれているもので、用途としては 触媒、ガラスの脱色用、脱硫剤、顔料等々です。製造輸入量で、はっきりした数字は分 からないのですが、大体数十トン程度の製造輸入量だろうということを把握していま す。毒性としては発がん性のほかに、粘膜の刺激性だとか神経障害などがあるというこ とです。他のものについては時間がないので省略させていただきます。以上です。 ○櫻井分科会長  ただいまの説明についてご意見・ご質問がありましたらご発言ください。 ○中桐委員  ここの項目にかかわることで、アスベストにかかわる問題です。次回の審議会でまた いろいろなことがあろうかと思いますが、先ほどの中にも出てまいりますので申し上げ たいと思います。2002年の6月に厚生労働大臣が、アスベストの原則禁止を表明されま して、この間その準備に当たってこられた厚生労働省の皆様ですとか、検討会の学識経 験者の皆様のご努力につきまして、大変感謝を申し上げたいと思います。  今日出ている資料の中の、作業環境測定の見直しに関する部分ですが、連合の友誼団 体であるNPOのグループから意見をいただいています。アスベストの管理濃度につい て、欧米を中心とした部分では0.1であるということですが、今回の日本の場合は0.15 ということです。やはり0.1まで引き下げる努力をすべきではないかという指摘、なら びにその管理濃度を遵守していれば、健康被害は生じないという安全レベルではないの ではないか、ということも懸念されていまして、ばく露が多い屋外作業管理が必要なこ とについても、警告をしているようです。10月1日がアスベストの使用の原則禁止の日 ですが、この日は実はこの問題のゴールではありませんで、新しいスタート地点だと思 っていますが、今後とも技術的な進歩を睨みながら、アスベストのリスクをさらに減少 させる取組みについて、進めていっていただくようにお願い申し上げて、今日、出てい る基準について、特に今後の要望として申し上げたいと思います。 ○櫻井分科会長  ご要望は承りました。何かご発言ありますか。 ○徳永委員  関連するのですが、いま中桐委員からありましたように、管理濃度の検討委員会は、 何回も議論を丁寧にされてきているという経過は私も知っているのですが、私ども、ち ょっと見たときに、これは0.15と0.1の関係ですが、ちょっと分からないというか、基 準といいましょうか、根拠といいましょうか。その辺のところが間違っていたら指摘を していただけばいいのですが、測定をしていく場合に技術的な問題も踏まえて、可能な かぎりのギリギリの所で、この辺でないと、測定は難しいという議論もあったように思 うのです。その辺のところはいろいろな専門家の先生方の議論を踏まえて、こういう一 定の数字が出たのだと思いますが、国際基準と言いますか、アメリカのACGIH辺り も0.1という勧告をしています。そういう意味で、流れからいくと当面0.1、そこを目指 すべきではないか。その辺で技術的な面もクリアーしながら、そこに一定の目標をもっ てやっていくべきではないかと思うのです。  今回できればそういう議論の中で、0.1ファイバーが設定できなかったのかという気 がするのです。それはそれとして議論をされたということがあるので、今日はこれ以上 申し上げられませんが、いずれにしても石綿の持っている発がん性、起因性というのも 後でまた議論になると思いますが、解体の問題を含めて。これから既存のものを含めて いろいろ問題が出てくる。これは次に議論をしていくということですが、そういった状 況、健康被害、発がんの問題と、いろいろ出てくる状況の中でいくと、スタートの所で 強めに、できるかぎりの技術的な判断、範囲も含めて設定すべきではないか。そういう 意味で0.1辺りを今後目指してほしいと思っていますので、申し上げておきたいと思い ます。 ○環境改善室長  説明、コメントをさせていただきます。石綿の管理濃度ですが、今回の改正では、先 ほど説明がありましたように、大変厳しい見直しとなっています。従来2本、2ファイ バーであったわけですが、今度は0.15と、結果として大変厳しい見直しになったと思っ ています。管理濃度等検討委員会での、この管理濃度の見直しにかかわる議論のポイン トを何点かご紹介をしたいと思うわけですが3点ほどあります。  1点は石綿は石綿肺のほか肺がんとか中皮腫、こういった重大な健康障害を引き起こ す恐れのある物質であるということから、できるだけ可能な限り低く抑えようという議 論がありました。皆さんその点で合意をされています。それからACGIHが0.15を勧 告しているわけですが、これは石綿肺を予防すれば肺がんが予防できるという考え方を 採用して、この値を設定しているようですが、今日、この考え方は否定的であるという 議論がありました。一方、日本産業衛生学会については、発がんリスクを考慮して勧告 値を設定をしているということでした。  もう1つは、石綿にかかわる測定技術上の問題で、あまりにも測定の濃度が低くなり ますと、浮遊粉じんがかなり溜まってしまって、測定そのものが難しいというような議 論もあったようです。こういった3点を考慮して、総合的に判断をして0.15と設定をし たということです。いずれにしても今後とも、国内外の最新の知見の収集に努めてまい りたいと考えています。 ○徳永委員  しつこいようでこれ以上はあまり言いたくはないのですが、科学的根拠といいます か、いまの説明その辺のところは総合的に見て判断をして、0.15にしたということです ね。それは測定技術やいろいろなことで難しいこともあるかと思いますが、私は純粋に 石綿が浮遊しているという場面だけの議論をしているのではなくて、当然いろいろな浮 遊物を含めて、その中できちんと測定をしていくという技術的な面のものがあるという のは承知していますが、だからその辺だよと、根拠があるようでない。その辺のところ というのは、今後の課題としても、限りなく低くしていくという努力というか視点とい うか、研究というか、そういうこともしてほしいなということを申し上げているわけで す。いまはこれ以上は言いませんが、サラリとそういうことをやりますのでという説明 ですが、その辺は意のあるところを汲んでほしいということを申し上げておきます。 ○加藤委員  従業員だとか労働者の健康を守るという意味では、こういった管理濃度をその時代の 科学的根拠に合わせて、下げていくのは非常に重要だと思うのですが、今回のこの管理 濃度の変更を見ると、ずいぶん厳しいというのは、私ども実感として感じています。こ れは必要なことだとは思うのですが、10月1日からの施行に合わせて、すぐにこういっ た環境対策ができるかというところも1点あろうかと思います。どうか運用の面でその 辺の技術的な指導を含めて、また国のほうからもいろいろなご支援をいただければと思 っていますので、よろしくお願いをしたいと思います。 ○櫻井分科会長  ほかに何かご発言がございますか。 ○徳永委員  これとは直接関係がないのかもしれませんが、いずれにしても、建設現場を中心に、 屋外作業の環境測定の問題というのは出てくると思うのです。ここはあまり議論がされ ていないのではないかと思うのです。ですから、ここはこれからの議論になると思うの ですが、今回厳しめだという意見もありますし、私はもう少しという気持があります が、これはこれとして、こういうふうに管理濃度を規定された。ただ、これが実際に作 業現場の中で機能をしていくかという議論になってきますと、作業環境の管理という面 との融合性はやはりもたせていくことが必要ではないか。これは次の機会にやります が、その辺の議論は作業環境問題とのリンクで議論があったのですか。 ○環境改善室長  屋外作業の関係ですか。石綿は課が違うわけです。いま石綿の対策を検討しているわ けですが、その中で屋外作業の作業環境管理ということも検討していくことになるので はないかと考えています。 ○徳永委員  いいです。これは次の機会にやります。 ○櫻井分科会長  「特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令案要綱」については、当分科会 として、妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○櫻井分科会長  では、そのようにさせていただきます。2つ目に入ります。これは「特定化学物質等 障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について、事務局か ら内容の説明をお願いいたします。 ○化学物質対策課長  私からは特定化学物質等障害予防規則、及び労働安全衛生規則の一部改正について、 その趣旨について説明させていただきます。労働安全衛生法第55条の規定により、黄り んマッチ等の有害性の高いものについては、製造、輸入、譲渡、提供又は使用の禁止措 置が定められていますが、石綿含有製品のうち、石綿セメント円筒等の建材、ブレーキ パッド等の摩擦材等の10種類の製品については、新たに製造・使用等を禁止するものと して、昨年、労働安全衛生法施行令の改正を行い、別表八の二として、追加したところ です。この改正政令については、本年10月1日から施行となります。この改正に伴っ て、特定化学物質等障害予防規則及び労働安全衛生規則について、所要の改正を行うと いうのが、本省令改正の趣旨です。  改正の内容ですが、1点目としては、特定化学物質等障害予防規則において、石綿及 び石綿を含有する製品については、第二類物質として製造、取扱い時における措置が規 定されていますが、この中には本年10月1日より禁止される石綿製品も法令上含まれて います。これらの禁止製品については、今後、製造等がなくなるわけなので、特定化学 物質等障害予防規則における石綿の定義から、これらの製品を除外するものです。  2点目ですが、労働安全衛生法においては、一定の有害な物質、あるいはその物質を 含む製品については、第57条の規定によりまして、容器に入れ、または包装をして譲 渡、提供をする場合は、その容器等に名称や取扱いの注意事項等を表示すること、ま た、第57条の2の規定により、譲渡・提供の際には名称や取扱いの注意事項等を記載し た文書、一般にはMSDSという言い方がされていますが、そういう文書を交付するこ とが義務づけられています。この表示または文書の交付等の対象物質については、今後 禁止される石綿製品が現在含まれていますので、先ほどと同じような理由により、労働 安全衛生規則における表示、MSDSの交付が必要なものから、法令上これらの製品を 除外するというものです。  3点目ですが、経過措置に係る事項です。先ほどの10の石綿製品については、施行日 以前に製造され、または輸入されたものについては、改正政令の経過措置においても、 施行日後も譲渡・提供・使用等ができるものとなっています。特化則・安衛則から、こ ういった10種類の製品を今回、除外することとしているので、施行日前に製造あるいは 輸入されたものについては、特化則等の従前の規定を適用するということで、経過措置 を設けることとしています。改正政令の施行日が平成16年10月1日となっていますの で、これと併せて本規則の改正については、10月1日から施行することとしています。 ○櫻井分科会長  ただいまの説明について、ご意見・ご質問がありましたらご発言ください。 ○徳永委員  これもいろいろ議論もあったことだろうと思うのです。議論があって1995年にクロシ ドライト、アモサイトが使用禁止となったときに、従前の例により取り扱うという部分 で適用除外といいますか、これまで輸入・製造したものは外しますよと。かつてもそう だったので今回もそういうことで、それを受けての今日の省令の改正ということなので しょうけれども、これは使うわけです。それは何千年かすれば消えるかもしれません が、現実的にはそれを使っていくわけです。そういう意味で言うと、今回こういうこと でまた禁止を決めた際、しかも1年間も経過措置もあるのでこれも含めて、本来ならば もう少し制限を厳しくするとか、禁止にするとかいう発想があってもよかったのではな いかなという気がするのです。  ここは1995年当時の議論も含めて、今後も議論が続いていく問題であると思うのです が、その辺のことについてどういうふうに。これはこういうふうに省令でしたからしよ うがないと、いや、政令でやったからしようがないよということなのかもしれません が、今までどういう議論があったか、考え方をお聞きしておきたいのです。 ○化学物質対策課長  徳永委員のご指摘のクロシドライト、アモサイト、今回の石綿の10種類の製品につい ても、政令上、施行日以前に製造されたものについては従前どおりということで、同じ ような経過措置が設けられています。ただ、施行日前に製造されたものが今後も使われ るということは、必ずしも好ましいことではないわけでして、私どもは昨年の改正政令 の公布の際には、石綿製品のメーカー・メーカー団体に対して、施行日まで在庫品を残 すようなことがないように、また、施行日後に禁止製品を販売することを目的として、 いわゆる駆け込みで増産することがないように、指導をしているところです。1年間経 過しているということからも、ご指摘の件については、今後そういう大きな問題という のは、生じないのではないかとは考えています。 ○徳永委員  それは是非、今後も注意を要していただきたい。もう1つですが、これはすでに通達 も出されて指導をされている問題なのですが、例の左官用のモルタル混和材、これはノ ーアスベストということで、これは犯罪に近い行為ですね。これを実際には販売して使 っていたということですね。ですから、今後そういう関係業者というか、私どもの関係 で言えば左官屋さんなのですが、これはショックなのです。信じてノーアスベストで買 って、仕事をしてやっているわけです。これは実は入っているのですよと、多めに入っ ているのもあるのですよという話になると、今後は健康障害の問題について、非常に不 安をもっている。  これは企業モラルということにもなるかもしれませんが、こういった問題についても きちっと指導をしていく。基本的にはこういうふうに分かってきたものは、製造中止を してしまうぐらいの行政指導をやったほうがいいのではないかと思うのです。その辺の 意気込みというか、気持というかその辺を聞かせてほしいのです。石綿を含んでいる製 品の有害性の問題とか、いろいろ技術的なことも含めて、難しい面もあるのですが、そ ういうように明らかになってくるものはきちんとしていく。基本的にはアスベスト含有 製品は使わないのだというスタンスでやってほしいなと思うのですが、いかがでしょう か。 ○化学物質対策課長  今回の10種類の製品の禁止ということで、使用量の約90パーセントぐらいが使用対象 からなくなると理解しています。ジョイントシート、シール材等残っていますが、これ については安全上、現状においてはやむを得ないということで判断したわけであり、基 本的にはいま委員ご指摘のとおり、石綿の有害性等を考えれば、速やかに代替化の措置 を行政としても、関係業界と一緒になって考え、なるべく早い時期に、全面的に石綿が 使用されないような状態にしたいと考えております。ただ、今すぐにそこまでもってい くのが現実問題としては、いろいろ問題もありますので、なるべく早い時期にそういう 形にもっていきたいと考えています。 ○櫻井分科会長  ほかに何かございますか。ほかにご発言がなければ、「特定化学物質等障害予防規則 及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」につきましては、当分科会として 妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○櫻井分科会長  ありがとうございました。では、そのようにさせていただきます。3つ目の「労働安 全衛生規則の一部を改正する省令案の要綱」について、事務局から内容の説明をお願い します。 ○計画課長  資料No.1−4に基づいて、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」について説 明いたします。趣旨はここに書いてあるとおりでして、産業医の養成・確保の必要性が 高まる中で、産業医としての目的意識を高めて、専門性の高い良質な方の養成・確保を 図るために、産業医の養成を目的とする大学において、在学中から産業医学の基礎的な 知識を習得させる。これをもって、産業医に必要な要件の一部とするというものです。  具体的な改正内容は2のとおりです。産業医に必要な要件を備えた者として、産業医 の養成等を行うことを目的とする大臣が指定する大学において、医学の正規の課程を修 めて卒業し、大臣が定める実習を履修した者を、新たな項として追加するというもので す。公布は11月で、公布即施行を予定しています。なお、注で書いているとおり、産業 医の養成等を目的とする大学には、産業医科大学があるわけです。通常の医学部を卒業 する方が、産業医の要件を満たすためには、卒業後に大臣が定める研修を終了する必要 があるわけです。産業医科大学においては、本年度からカリキュラムを改正して、これ まで卒業後に産業医学基本講座として実施してきた研修の内容の一部(講義等に係る )。したがって座学に関する部分を、卒業前の正規の過程において実施することにして います。これによりまして、医学教育の初期から、産業医、あるいは産業保険に関心の 高い学生を養成することが可能となります。以て、産業医の質の向上を図ることができ るというわけです。  今回の改正は、このような産業医学の基礎的な知識を在学中に習得できるカリキュラ ムを有する医学部を卒業した方について、必要な要件を明確化するものです。具体的に は、次頁に書いてあるとおりで、労働安全衛生規則第14条第2項に、下の改正後の◎で 書いてある部分を追加するものです。 ○櫻井分科会長  ただいまの説明について、ご意見・ご質問がありますか。特にございませんですね。 それでは労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱につきまして、当分科会として 妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○櫻井分科会長  ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。以上の審議の結果、 3つの省令案要綱について、それぞれ妥当と認めることになりましたので、当分科会と して、「特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令案要綱」、「特定化学物質 等障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」及び「労働安全衛 生規則の一部を改正する省令案要綱」、これらについては妥当と認める旨の報告を、私 から労働政策審議会会長宛に行うこととしたいと考えますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○櫻井分科会長  ありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。なお、報告文につ きましては、私に一任させていただくということでよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○櫻井分科会長  ありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。  次に「採石業労働災害防止規程案要綱」についてです。事務局から説明をお願いいた します。 ○計画課長  資料No.2−2で背景から説明をいたします。「採石業労働災害防止規程の設定につ いて」という資料です。(1)に書いているように、労働災害防止規程(災防規程) は、労働災害防止団体法(災防団体法)の第36条の規定に基づいて、各協会が自主的な 活動を行うことを目的として設定するもので、同法の第41条により協会の会員に対して は、災防規程の遵守義務が課せられています。各協会は業種別にその事業の実態に応じ て、きめ細かい具体的な基準を設定することによって、労働災害防止を図るわけです。  この災防規程の設定については、厚生労働大臣の認可を受けなければ効力を生じない ということにされています。厚生労働大臣は、認可にかかる処分を行おうとするとき は、労働政策審議会の意見を聞かなくてはならないという規定なので、本日意見を求め ているものです。  鉱業労働災害防止協会(鉱災防)は従来、定款におきまして、会員資格を鉱業法に基 づく鉱業権者及びその団体に限定していましたが、しかし、近年の災害の状況に鑑みま して、昨年定款変更を行い、採石法に基づく業者及びその団体についても鉱災防への加 入を認めたわけです。このため、採石業に係る災防規程の設定の必要が生じています。 こうしたことから、具体的な案について、災防団体法の第40条に基づいて、関係労働者 を代表する者及び学識経験者から意見を聴取しましたところ、実態に即してよく取りま とめられており内容に異存はないとの報告を受けましたので、鉱災防の通常総会におき まして、全会一致の可決を経た上で、今回災防規程の申請があったものです。  次に具体的内容です。資料No.2−1「貴会の意見を求める」と1頁にあるものの2 頁以降の規程案要綱で内容を説明します。第一は安全衛生の管理体制でして、会員は事 業場の規模に応じて、総括安全衛生管理者等を選任し、労働災害防止の措置を講ずる等 の業務を行わせるものとする。また、採石のための掘削作業主任者等を選任し、労働者 の指揮等の業務を行わせるものとする。  第二は新しい考え方ですが、労働安全衛生マネジメントシステム等です。危険予知活 動、危険予知訓練といった自主的な労働災害防止活動の実施に努めるほか、労働安全衛 生マネジメントシステムの導入によりまして、事業場における危険・有害要因の低減に 努めるものとすることとされています。  第三は教育の関係です。雇入れ時の教育等、安全衛生教育を行うものとすること。2 は就業制限です。会員は発破の場合におけるせん孔等の業務については、免許を受けた 者又は技能講習を修了した者等でなければ、その業務に就かせてはならないものとする こと。  第四は健康保持増進の関係です。1は、作業環境測定です。「常時特定粉じん作業が 行われる屋内作業場について、定期に紛じん濃度の測定を行うとともに、その測定結果 の評価を行うものとすること」また「雇入れ時の健康診断、1年以内ごとに1回の定期 健康診断等の健康診断を行うとともに、健康診断を受けた労働者に対し、その結果を遅 滞なく通知するものとすること」です。  第五は快適職場の関係です。「作業環境の管理等の措置を継続的かつ計画的に講じ、 快適な職場環境を形成するよう努めるものとする」とされています。  第六は、具体的な労働災害の防止の関係の措置です。1として「採石作業を行うとき は、その採石作業に係る地山の形状等を調査し、その結果を記録するとともに、採石作 業計画を定め、その作業計画により作業を行うものとする。」  2は、地山の崩壊等による危険を防止するための措置です。具体的には落下の危険の ある土石及び流木の除去、落盤防止の支柱等の設置等の措置が、定められています。  3は、コンベヤーによる危険を防止するための措置です。具体的には非常停止装置の 具備、覆い及び囲いの設置等の措置を定めています。  4は転倒、転落の防止で、例えば高所においては、足場の組み立てによる作業床の設 置等の措置が書かれています。  5として、機械に巻き込まれる等の危険を防止するための措置があります。  6は、車両系建設機械、ブルドーザー、パワーショベル等の関係ですが、こうしたも のを用いて作業を行うときは、労働者の危険を防止するための措置ということで、具体 的には、例えばヘッドガードの設置、作業計画の作成、制限速度の定め、接触防止のた め一定領域の立ち入り禁止などが定められています。  7は、フォークリフト等の車両系荷役運搬機械でして、やはり労働者の危険を防止す るための措置ということで、車両系建設機械と同様の措置についての定めがあります。  8は、電気による危険防止の関係で、接触感電防止の囲い、絶縁覆いの設置、漏電遮 断装置接続等の定めがあります。  9は、発破作業を行うときの関係でして、作業指揮者の設置等の措置が書かれていま す。  10は、火災予防のための措置です。  11は、交通労働災害防止の関係で、自動車等の運転を行わせるときは、対策の推進を 図る措置を講ずるようということで、具体的には交通労働災害防止のための規程の作 成、あるいは担当管理者の設置等が定められています。  12は、健康障害の防止の関係で、粉じん飛散防止のための注水、あるいは洗浄設備の 設置等が定められています。なお、こうしたことと併せまして、環境保全・公害防止に ついても規定が設けられています。  最後の頁ですが、実施を確保するための措置として、関係労働者に教育を行うなど、 この規程の実施を確保するための措置を講ずるものとすることとされています。  最後は適用でして、大臣の認可のあった日から起算して、90日を経過した日から適用 するとなっています。  本分科会において、妥当なものと認めていただければ、速やかに認可をいたしまし て、適用するようにしたいと考えています。以上です。 ○櫻井分科会長  ただいまの説明について、ご意見・ご質問がありましたら、ご発言ください。特にご 発言がないようですので、当分科会として、「採石業労働災害防止規程案要綱」につい ては、妥当と認める旨の報告を、私から労働政策審議会会長宛に行うことにしたいと思 いますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○櫻井分科会長  ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。また、報告文に つきましても、私に一任させていただくということでよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○櫻井分科会長  ありがとうございます。そうさせていただきます。労働基準局長から挨拶がございま す。 ○労働基準局長  委員の皆様方、3つの省令案要綱と、災防規程を妥当ということでお認めいただきま して、大変ありがとうございました。労働政策審議会の運営規程によりまして、この分 科会における議決が審議会の議決となることになっていますので、審議会としてご了承 いただいたということに相成るわけです。私どもとしましては、ただいまのご了承を踏 まえまして、省令案要綱に基づきまして、省令案の作成に入りまして、改正作業を行い たいと思っています。この災防規程についても、事務的な作業を進めまして速やかに認 可ということにしていきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○櫻井分科会長  次の議題に進みたいと思います。「新規化学物質の有害性の調査結果に関する学識経 験者の意見」についての報告です。本件は労働安全衛生規則第34条の17に基づく報告で すが、今回は新規化学物質の有害性調査の結果と、それに基づく事後の対応状況につい ても併せて説明をお願いいたします。 ○化学物質評価室長  新規化学物質の有害性の調査結果に関して、資料No.3により説明・報告を申し上げ ます。報告・説明に入ります前に、まず最初に新規化学物質の有害性調査制度について 簡単に説明をしたいと思います。  資料6頁、参考で、「新規化学物質の有害性調査制度の概要」というフローチャート がまとめられています。この新規化学物質の有害性調査制度は、昭和54年からスタート をした制度で、今年6月末でちょうど25年、四半世紀を刻んだ制度です。それ以前は職 場での化学物質の取り扱いは利便性を主に導入されて、問題が生じてから対応するとい うことであったわけですが、新規化学物質の有害性調査制度は、職場に新規の化学物質 を導入する際に、一定の有害性調査を事業者に義務づけまして、その結果を厚生労働大 臣へ届け出るという制度です。  フローチャートの四角の上から2番目、新規化学物質の製造・輸入事業者は、労働安 全衛生法第57条の3第1項の規定によりまして、新規化学物質について有害性調査を実 施するとともに、その結果と化学物質の物性、名称等を添えて、厚生労働大臣に届け出 ることになっています。  有害性調査の内容ですが、下に(1)として注書きがしてあります。調査項目は微生 物を用いる変異原性試験、またはがん原性試験とされています。変異原性試験というの は、化学物質が細胞の遺伝子に突然変異を起こすかどうかを調べる試験で、細胞の遺伝 子の突然変異が発がんの引き金になると言われており、発がん性との関連が強いと言わ れている比較的簡便な試験でして、大部分はこの簡便な試験のほうを、結果を添えて届 け出られています。  この試験結果が出された場合、まず1つは次のフローの箱にまいりまして、試験結果 について厚生労働大臣による「学識経験者からの意見聴取」が行われます。この試験結 果がどうであるかということを、専門家に見ていただくわけです。それと合わせて、右 のほうの箱ですが、官報による名称の公表、こういう新規化学物質が届け出られたこと を公表するわけです。これは、3カ月に1回官報で公表しています。  もう一度、左に戻ります。学識経験者の意見聴取の結果、いわゆる白になったものは 特段問題ないわけですが、黒になったもの、「強い変異原性があり」という場合、追加 試験の要請、括弧書きしてありますが、念のため追加試験をやってみようということ で、注書きの(2)ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験を行います。いわゆる菌類 ではなくて、ほ乳類という人により近いもので追加試験を実施して、それでその結果を 見て、やはり、ほ乳類でやってもかなり強い変異原性があるという場合、法令上、その 下の箱で安衛法第57条の3第4項で「厚生労働大臣による健康障害防止措置の勧告」と いうものがありますが、これまで、その右のほうで行政指導といたしまして、「健康障 害防止措置に係る指針」、労働基準局長通達ですが、発がん性物質に準じた管理を、指 導要請しているところです。  これらのいちばん下にまいりまして、本日の報告は、「労働政策審議会への報告」と いうことで、名称の公表後1年以内に労働政策審議会に報告となっています。  報告内容にまいります。1頁に戻っていただきたいと思います。今回の報告は、前回 の報告以降の平成15年9月26日から本年6月25日まで4回、官報に名称公表いたしまし た877物質の学識経験者による評価結果です。表にありますとおり、いちばん上がいわ ゆる「白物質、変異原性は認められない」というものが794、それから次に弱い変異原 性が認められるというものが55、それから強い変異原性が認められるものが28物質、こ の28物質につきましては、先ほどの「更に追加試験が必要あり」という評価、意見をい ただいております。  2頁目は、強い変異原性が認められた28物質の一覧表です。  次の3頁から4頁が弱い変異原性が認められた化学物質の一覧表です。いわゆる、白 物質は割愛させていただいております。  5頁を開けていただきたいと思います。これらの化学物質の中のいわゆる黒物質と申 しますか、強い変異原性が認められた化学物質に対する、今回だけではなくて、これま での制度発足以来25年間の措置状況です。これまでの25年間で強い変異原性が認められ た化学物質は523物質です。微生物による変異原性試験で認められたのは523、それに対 して、追加試験が行われたものが488、そのうち追加試験の結果でもかなり強い変異原 性が出て、がん原性物質に準じた管理が必要だよという意見をいただいたものが365、 それに関しては、すでに行政指導通達済みです。  追加試験の結果は、そこまでの措置は必要ない、白だという判定をいただいたものが 123、試験中35。以上のような状況です。  簡単ではありますが、ご報告とさせていただきます。 ○櫻井分科会長  この件について、ご質問等ありましたらどうぞ。  特にご発言ないようですので、当分科会として、新規化学物質の有害性の調査結果に 関する学識経験者の意見についての報告を承ったことといたします。  次の議題ですが、「今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書」等につい ての報告です。4つ報告書がありますので、それぞれについてまとめて事務局から説明 していただくことになると思います。どうぞお願いいたします。 ○調査官  まず、最初に私から「今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書」につい て、ご説明させていただきます。資料No.4−1です。まず表紙の「背景」の最初の○ にありますように、今回の検討は、爆発・火災等の重大災害が多発したということに対 応するものです。報告書の1頁を開いていただきたいと思います。下ほどエの所です が、そこにありますように、「昨年の夏以降、製鉄所における溶鋼の流出災害、ガスタ ンクの爆発災害、油槽所におけるガソリンタンクの火災災害等々、わが国を代表する企 業において、重大災害が頻発した」ところです。  この関係で下にありますように、関連する3省庁で産業事故災害防止対策推進関係省 庁連絡会議を開催したわけですが、その中で、2頁の上の所ですけども、「所要の法令 ・基準・制度の整備、ガイドライン・マニュアル等の策定による災害防止対策の推進を 確実に図ることが重要である」という報告がまとまったところです。これを受けて厚生 労働省におきましては、問題点を更に抽出するために、また1頁に戻りますが、大規模 製造事業場に対する自主点検を行ったところです。この結果、いくつかの対策の方向や 課題が把握されたところです。  表紙に戻って、その中で出てきたのが4つポツがありますけども、トップの取組が重 要であること。それから、危険・有害性の把握と対策が不十分になっているのではない かということ。それから下請との連絡調整が不十分ではないか。それから、安全知識・ 経験の伝承不足が起きているのではないかということです。  この中で最初のトップの取組が重要ということです。資料の5頁(3)アを見ていた だきたいと思いますが、ここの所に記載しておるわけです。事業場のトップが年間の安 全管理活動計画の作成に積極的に関与しているところのほうが災害発生率が低い。ある いは、事業場のトップが安全活動に関与する項目数が増えるに従って、災害発生率の低 下が見られる。こういうふうな結果になっているわけです。このようなことから、先ほ ど申し上げたような課題が浮き上がったということです。これらを解決するためです が、また表紙に戻っていただきたいのですが、背景の右側で「災害が起こらないような ツールを職場に導入する必要があるのではないか」という指摘をしているところです。  また報告書の7頁の中程をちょっと見ていただきたいのですが、「日本経済団体連合 会の分析」ということで、従来、ほとんど災害が起こらなかった工場で、大規模な事故 が頻発していることについて、この問題を現場力、すなわち、現場の人材力の低下の反 映と認識すべきとし、高度な技能や知的熟練を持つ現場の人材の減少が原因という指摘 があります。  またその下ですが、本検討会が行いました企業ヒアリングにおきましても、安全衛生 管理部門の人数が、大幅に減少している例が見られたほか、企業の安全衛生管理体制 は、従来と同様の能力を維持していないのではないかということが、懸念されたという ことです。そういうふうなことから、表紙のように、現場力の強化が必要という指摘が なされたところです。  背景の2つ目の○です。「企業、労働者を取り巻く社会経済情勢の変化」ということ ですが、これにつきましては、報告書7頁一番最後の所からです。「業務請負等のアウ トソーシングの増大、合併・分社化による組織形態の変化、企業内の組織の再編や就業 形態の多様化、雇用の流動化等が進行していることにより、所属や就業形態の異なる労 働者の混在が一般化している」という指摘をしています。それに続きまして、具体的な 数値を挙げているところです。  このようなことから表紙ですが、「社会経済情勢の変化に対応した安全衛生管理体制 が必要」なのではないかという指摘がなされているところです。  以上のような背景を踏まえまして、具体的な「取り組むべき対策の方向」が示されて いるところです。  まず(1)です。「事業者による自主的な安全衛生への取組を促進するための環境整 備」といたしまして、最初の○ですが、「危険・有害性の調査等の実施」、これが必要 なのではないかということです。  これにつきましては、報告書の10頁を見ていただきたいと思います。10頁のア(ア) の所ですが、大規模製造事業場でのいろいろな重大災害。これを見てみますと、「事業 場内における危険・有害性の調査とそれに基づく対策が十分でなかった」ということが 挙げられていることです。また、その下のほうですけども、「大規模製造事業場に対す る自主点検結果やOSHMS促進協議会の調査等によれば、リスクアセスメントを基本 とする手法を導入している事業場は、導入していない事業場と比較すると、災害の発生 率は相当に低くなっている」。こういうようなデータがあるということです。それで、 このためというふうなところですが、「重大災害が頻発した工業的業種等の事業場にお いては、事業者が危険・有害要因の特定、リスクの評価等を行う危険・有害性の調査に 取り組む仕組みを確立することが必要」なのではないかという指摘です。  表紙に戻っていただきまして2番目のポツですが、これは別の報告書ですので、後ほ ど別途説明させていただきます。  2番目の○ですが、「自主的取組の推進と普及促進のための優遇措置」ということで す。これは報告書の11頁中程のイの(ア)を見ていただきたいと思います。「危険・有 害性の調査」、これが必要だということです。しかし、これについては、先ほど経営ト ップの役割が重要ということですので、「トップの方針の下、組織として、危険・有害 要因を特定し、リスクの評価及びリスクを低減させる措置を体系的に実施し、安全衛生 水準の段階的な向上を図る仕組みの活用を図ることが必要」だとしていて、その仕組み の1つとして「労働安全衛生マネジメントシステム」としているところです。また、こ の仕組みにつきましては、事業場単位で運用されますが、経営トップの役割が重要とい うことで、「全社的な取組を進めることが望ましい」としているところです。  また表紙に戻っていただきますが、こういったものにつきましては、それを普及促進 するということですので、そのためのいろいろな措置が必要となっているところです。 11頁に戻っていただきたいと思います。これは、12頁のインセンティブ措置と関係する のですが、いろいろなインセンティブ措置を与えるためにということです。しかし、 「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」につきましては、現在、労働安全 衛生規則に基づく指針として示されているわけですが、インセンティブ措置との関係 で、労働安全衛生法体系の中の位置づけ及びその事業者の実施事項を明確にすることが 必要であるとしているところです。事業者の実施事項を明確にすることで、12頁になり ますが、「普及促進のためのインセンティブ措置」として3点事例が示されているとこ ろです。  1点目といたしましては、自律的な安全衛生管理体制が定着しておるということで、 労働安全衛生法第88条に規定されております計画届につきまして、事後チェックでいい ようにするという法令上の措置。それから2番目といたしましては、中小企業に対して は、労災保険の特例メリット制を適用する等の経済的な措置を考える。3つ目には企業 名の顕彰。そういった社会的な評価が考えられないかということです。  また表紙に戻っていただいて、3つ目の○です。これは6頁のウを見ていただきたい のです。安全衛生委員会の活動ですが、「また」の所で安全衛生委員会で活発な意見交 換が行われていることについては、年千人率が低いという結果が出ております。そうい ったことで、安全衛生委員会の活性化を図るということが必要だということです。具体 的な内容といたしましては、12頁のウですが、安全衛生委員会は、事業場のトップが制 度的に関与するというのがございます。また、ここには記載されておりませんが、よく 災害が起きたときに、事業場のトップがそのような危険性があることを知らなかったと いうコメントが出される場合もあるわけですが、ここでは先ほど申し上げました危険・ 有害性の調査の結果、こういうものをこの安全衛生委員会の中で、調査、審議すること によりまして、トップにも危険・有害性が伝わるようにし、また、安全衛生委員会も活 性化することにより、災害防止を図る必要があるのではないかということです。  それからまた表紙に戻って、4つ目の○です。これは、先ほどの現場力の強化が必要 ということに関連いたしまして、現場の安全管理者。こういった者に対しまして、リス クアセスメントというような知識、現場力を上げるための教育、その実施が必要という ことが指摘されているところです。  (2)ですが、「元方等を通じた安全衛生管理体制の実現」ということですが、これ は3点ございます。最初の○ですが、「分社化に対応し、親会社の安全管理者等が企業 グループ内の事業場の安全衛生管理を行うことを認め、一体的な管理体制を構築するこ とが必要」であるということです。  2つ目の○といたしまして、「製造業等の元方事業者による労働者の混在に対応した 安全衛生対策が必要」であるということです。  また3つ目の○ですが、これは報告書の28頁です。ここには、危険な機械設備を貸与 したり、あるいは危険性に関する情報を伝えなかったことによる災害事例が示されてい るところです。  このようなことから、14頁のウ(ア)と(イ)ですが、注文者が危険・有害性に関す る情報を請負事業者に提供する仕組みが必要であるということ。また、請負事業者に使 用させる施設・設備について注文者が安全性を確保する必要があると伝えているところ です。  表紙に戻って最後の(3)「その他安全衛生対策上検討すべき事項」ということです が、中小企業の安全衛生対策を推進するために、先ほど申し上げた対策で必要とされて おります危険・有害性の調査、低減措置を普及するための支援措置が必要であるという 指摘がなされているところです。  以上、簡単ですが報告書の概要です。 ○櫻井分科会長  ありがとうございました。それでは、引き続いて「過重労働・メンタルヘルス対策」 をお願いします。 ○労働衛生課長  労働衛生課から「過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会報告書」につ いて、ご報告を申し上げます。  まず、過重労働とメンタルヘルスについては、過重労働についてが平成14年2月に過 重労働による健康障害防止のための総合対策というのを、労働基準局長通知で示しまし て、やってまいりました。更には、このメンタルヘルスについてですが、こちらは平成 12年8月に事業場における心の健康づくりのための指針、ガイドラインを発表して、こ れに基づきまして施策を行ってきたところですが、過重労働・メンタルヘルスの現状を 見てみると、過重労働による疾患の増加、あるいは精神障害の労災認定件数の増加によ って、更に施策を強化するという目的で検討会を行ったものです。本年4月から検討を お願いして、先月報告書をいただいたところです。  最初の「報告書のポイント」というところで、ご説明をさせていただきます。  まず過重労働とメンタルヘルスの現状ですが、資料No.4-2の21頁以降にグラフそれ から数値等の変化によりまして、説明しているので後でご覧いただければと考えており ます。過重労働による脳疾患、それから心疾患の労災認定件数が、平成15年ベースで年 間310件以上あります。更に、昨今問題になっております自殺者ですが、これは年間3 万4,000人を超える状況になっておりまして、そのうち9,000人が労働者ということで す。職業生活での強いストレスの状況を感じていらっしゃる方は、平成9年以降6割を 超えるというデータが出ているわけです。  更に、精神障害の労災認定件数ですが、これも毎年増加しておりまして、平成15年に は100件に至っているわけです。更に、その中で自殺の認定件数は年間40件になってい るという状況です。これらの背景といたしまして、労働時間が長短両極2分化いたしま して、所定外労働時間の増加の傾向にあるということとともに、先ほど申し上げました ように、かなりの割合の労働者の方々が、仕事に強い不安、ストレスを持っているとい うことです。  このような背景によりまして、過重労働・メンタルヘルス対策の強化が必要であると いうことになりました。  基本的な考え方と取り組むべき対策の方向ですが、これは本文5頁以降に「基本的な 考え方」の記載があります。  まず「過重労働による健康障害防止対策」ですが、これはもちろん適正な労働時間管 理、健康管理が基本です。疲労の蓄積が生じた場合には、それに応じた健康確保措置が 必要であるということは、論をまたないわけです。メンタルヘルスにつきましては、4 つのケアによりまして、心の健康づくりを進めることが基本という考え方は、先のガイ ドラインに沿ったものとなっております。  これは何かと申しますと、セルフケア、労働者自分自身によるケアです。それと事業 場とのラインによるケア、更には事業場内の産業保健スタッフによるケア、事業場外の 様々な産業保健資源を動員したケアという4つのケアです。労働者がうつ状態になった ような場合には、早期の対応が必要とされているわけですが、実はこの4頁に記載があ りますが、家族によるケアも重視する必要がある。と申しますのは、実はこの自殺例を いろいろと分析してまいりますと、職場で自殺の兆候に気づいていたという例が極めて 少ない。むしろ、全体の8割において職場よりも家族が先に自殺の兆候に気づいている というようなデータに基づくものです。  そこで具体的な健康障害防止対策としてどうするかということですが、これが8頁以 降に記載があります。まず、医師による面接指導がございます。これは、先の通知でも 示しているところですが、まず、月100時間を超える時間外労働または2〜6か月間に 月平均80時間を超える時間外労働を行った場合には、脳・心臓疾患の発症と極めて強い 相関関係が認められるというデータに基づきまして、脳・心臓疾患の発症を抑えるため に、100時間を超える時間外労働を行った場合、また、2〜6か月間に月平均80時間を 超える時間外労働を行った場合には、医師による面接指導を制度化すべきであるという 提言がなされたわけです。  更には時間外労働が短い場合であっても、労働者が自分自身で健康に不安を感じた場 合、あるいは職場や家族も含めまして、周囲の方々が労働者の健康の異常を疑った場合 など、更にはそのほかに産業医等が健診結果データ等に目を通して必要と認めたとき は、医師による面接指導の実施が必要であるという提言がなされております。  これらの場合につきましては、各事業場におきまして、衛生委員会等の意見を聴いた 上で、自主的な基準を定め、制度化することが適当であるという提言です。この場合、 事業場における労使が自主的に取り組んでいくということが重要であるということで、 その場として衛生委員会を活用すべきである提言に至っております。  次の頁をお願いいたします。もちろん、このような健康確保については、労働者自身 も自覚と自助努力が必要とされておりまして、そのために事業者は労働者に対する教育 及び情報提供を行いまして、労働者自らが実践できることが必要であるとされておりま す。  次に、メンタルヘルス対策ですけども、この場合も上記の長時間労働を行ったような 場合には、医師の面接指導においてメンタルヘルス面もチェックすべきである、という 提言がなされました。もちろん、この前には労働者自らによるセルフチェック等の可能 性も指摘されております。もちろん、この労働者本人がメンタルヘルスの不調を疑った 場合、それから、事業場内での面接指導に繋げる仕組みに加えまして、このような特に メンタルの場合は、労働者本人が外部の医師の面接を受ける、あるいは外部の機関にい ろんな相談を持ち込む、そのような仕組みづくりが必要であるという指摘がなされてお ります。  先ほど申し上げましたように、自殺事例を見てまいりますと、上司や同僚の場合より も、家族による最初の気づきの割合が極めて高かったということからいたしまして、職 場だけではなくて、家族を含め、周囲の者が気づいた場合に、専門家による介入、ある いはご本人からしますと、専門家に対する相談の仕組みづくりが重要であるという指摘 になっています。更には、労働者、管理監督者に対する教育も必要ですし、職場内外の 専門家、ここでは事業場外の産業保健の資源のほかに、民間機関といたしまして、EA P(Employee Assistance Program)のような資源を動員して、相談体制を整備してい くのが重要である、という指摘がなされたわけです。  そのような対策を整備いたしますとともに、ちょっと下のほうになりますが、「国 は、小規模事業場に対して産業保健サービスの提供を実施している地域産業保健センタ ーの活動の充実を図ることが必要」ということでして、特に医師やいろいろな産業保健 スタッフの面接等に絡んだシステムを作るということになりますと、このような産業保 健センターを中心とする産業保健のいろいろな資源を動員しなければおそらくできない だろうという議論もありまして、そのような施策の充実を求めるという内容になってお ります。  次に、資料No.4−3「健康情報の保護に関する検討会報告書」について、ご報告を 申し上げます。これは、平成11年3月から平成12年7月までの間、「労働者の健康情報 に係るプライバシーの保護に関する検討会」というのを設置いたしまして、1度検討を していただきました。その当時、平成12年7月に中間とりまとめが行われたわけです が、その後個人情報の保護に関する法律が、平成15年に成立いたしまして、平成17年4 月から施行ということになります関係上、もう1度、個人情報保護法を踏まえまして、 労働者の健康情報の保護に関する検討をお願いしたところです。大事なことですが、健 康情報は、個人情報の中でも特に厳格に保護されるべき情報であるという認識がまずあ ります。この点で、労働者の健康情報の保護の強化が必要であるということです。この 基本的な考え方の中で、特にちょっと6頁をご覧いただきたいのですが、非常にこの検 討会で大きな議論になった部分といたしまして、この6頁の上の○の所ですが、この安 衛法による健康情報の場合は、安衛法の趣旨・目的と労働者のプライバシーの保護や選 択権と比較した場合、労働者に対する健康診断の受診の義務化は妥当か。仮に義務化が 妥当であったとしても、現行制度の義務化の方策が妥当かどうかについて、以下のよう な議論があったということで、要するに、事業者に健診の義務づけ、それから労働者に も健診を受診する義務づけがなされている関係上、ここで生じる健康情報についての取 扱いをどうするのか、という議論が非常に真剣になされたわけでして、少し検討会報告 書としては珍しいかと思いますが、この基本的な考え方の部分の所で、この両論につい て提起してあります。ちょっとそこの所だけご紹介させていただきたいと思います。次 の6頁の上から2つ目の○の所ですが、労働者に健康診断の受診を義務づけるという方 向を変えるべきとの意見としては、(1)、(2)の2つがあるということです。例えば、労 働者に健康診断の受診義務を課して、その結果として個人情報の提供を義務化している 現行の安衛法の規定は、個人情報保護の観点からは適当ではなく、別個の方法を考える べきであるということ。あるいは、一般健康診断に限り、同法第66条第5項の労働者の 受診義務を削除し、これと引き換えに事業者の健康診断の実施義務に対応する労働者の 健康診断を受ける権利を明確化する。  (2)の所では、安衛法による労働者の受診義務の規定を外し、就業規則等に明記する ことによって、事業者は労働者に対して直接受診を命ずることができるようになり、労 働者の権利と義務は一層明確になるとともに、受診率との関係でも現在の法定健康診断 の制度が実効化していくという意見がありました。  もう1つの意見は、もちろん健康診断の受診義務を変えるべきではないというもので す。6頁の下の(1)の所になりますが、自らの義務ではなく、事業者の法遵守のために 健康診断を受けなければならないということになっている。そうなりますと、事業者と して労働者に健康診断を受診させなければならない義務が重くなって、受診を望まない 労働者への説得が難しくなる。  もう1つは、この安衛法で義務づけられている一般健康診断と申しますのは、健康を 確保する目的、集団としてとらえて健康を調査する目的、あるいは、伝染性の疾患等を 全体として予防する目的の3つがあるということで、現時点で労働者の健康診断の受診 義務を外すことには危険が大きいという意見です。大勢は、その次の7頁の上にありま すように、現時点では、結局現行制度を変更することについて、消極的な見解が大勢で あったということになっているわけです。大事なことは、本人の意思にかかわらず、個 人の特に機微な情報と言われる健康情報が事業者に把握されることから、その情報保護 の措置も、国によって適切に講じられる必要があるということです。  施策の方向といたしましては、基本的には健康情報を取り扱うに際しては、利用目的 をきちんと特定することが必要である。更には、健康情報の収集、それから利用の場合 はその目的を明らかにした上で、本人の同意が必要であるということ。秘密の保持等に 関しまして、事業場から委託を受けて健康診断を実施する外部の健診機関などについて も、適正に秘密を保持させることが必要であるということです。それと大事なことです が、特殊健康診断の結果については、現在法律上、労働者本人に対する通知義務がござ いません。これについても、一般健康診断と同様に労働者本人への通知義務を規定する ことが必要とされたところです。  それから、法令に基づく場合を除いて本人の同意を得ないまま、健康情報を第三者に 提供することがあってはならないということ。それから、合併等事業継承に伴う場合 は、第三者への提供に当たらないというようなことが、検討の内容として記載されてお ります。HIVあるいはB型肝炎等の感染症あるいは遺伝に関する情報については、原 則として収集すべきでないということでして、国に対しても最後の○のすぐ下の所です が、「健康情報の保護について指針を示すことが必要である」とされております。「事 業者は、国の示す指針に依拠つつ、労働者の健康情報の取扱いについて、衛生委員会等 において労働者に事前に協議した上で、ルールを策定することが必要」というようなこ とでして、もちろん、小規模事業場への対応、配慮、それから健康情報保護のそのよう な考え方、あるいは今後示すことになると思いますが、このガイドラインの普及・啓発 等についても、きちんと重要視して進めることが重要であるとされたところです。簡単 でありますが、以上です。 ○櫻井分科会長  ありがとうございました。それでは、最後に「化学物質管理の在り方」について説明 をお願いします。 ○化学物質対策課長  報告書のポイントにつきましては、資料No.4−4にまとめてありますので、これに 従ってご説明をさせていただきたいと思います。  まず、検討に当たっての背景としての職場における化学物質管理をとりまく状況につ いてですが、何点か指摘されています。  1点目ですが、ダイオキシンによる労働者の健康問題、シックハウス問題、それから 石綿による職業がんの発生など化学物質の問題に対する社会的関心が非常に高まってき ております。  それから2点目ですが、職場で現在使用されている、あるいは過去に使用された化学 物質は、約5万7,000もあるというふうにいわれています。また更に、毎年新たに約500 の化学物質が新規化学物質として職場に導入がされてきている状況にあります。  3点目に「未規制物質による疾病が半数程度」と書いてありますけれども、私ども一 定の有害な化学物質につきましては、製造の禁止であるとか、製造の許可であるとか、 あるいは管理といった規制をやっておりますが、化学物質による職業性疾病の発生状況 を見ると、有機溶剤中毒予防規則等のいわゆる特別規則で、規制対象となっている以外 の未規制化学物質による疾病というのが、約半数程度占めている状況になっています。  それから、自律的な化学物質管理の取組が不十分ということですが、これはどういう ことかと言いますと、平成13年に、労働環境調査をやっております。その中で、化学物 質の取扱い業務のある事業所について、化学物質管理計画を策定しているかどうかにつ いて、調査したところ、化学物質管理計画を策定しているというのは、31%に留まって います。  こういったことから、事業者による自主的な化学物質管理の取組状況としては、まだ 必ずしも十分でない状況にあるということです。  一方、国際的な観点からいいますと、平成15年に国際連合から、化学品の分類及び表 示に関する世界調和システム。英語の頭文字をとってGHS勧告というふうに言われて いますが、これがなされております。この勧告の中身ですが、括弧の中に概略が書いて ありますように、それぞれの化学物質の危険・有害性について、一定の基準に基づいて その程度等を区分して、危険・有害性の程度等に応じて例えばドクロマーク等の絵表示 等を容器等に付すとともに、MSDS(化学物質等安全データシート)を交付する。お おまかに言うと、これがGHS勧告ですが、平成15年になされているところです。  以上が報告書の「化学物質管理をとりまく状況」ということですが、この状況を踏ま えて今後取り組むべき対策の方向としては、1点目にありますように、まず事業所にお いて、規則等で定められた措置、これを実施することは当然ですが、それに加えて事業 者自らが化学物質の製造、取扱い作業のばく露状況等に基づいて、自らリスク評価を行 って、その結果に基づいて、必要なばく露防止対策というのを講じていただく、一言で 言うと、自律的な化学物質管理と言えるかと思いますけども、今後は自律的な化学物質 管理というのが基本であり、これを今後とも一層促進していくことが必要であるという ことです。  2点目ですが、今言いました事業者による自律的な化学物質管理を促進させるために はどうするかということですが、ここに2つのことが書いてあります。事業者に対し て、個々の化学物質の危険性、有害性あるいは取扱い上の注意事項、そういった情報が より明確に提供がされるということ、それから、GHS国連勧告への整合性、こういっ たことが求められるということから、結論としましては、労働安全衛生法に基づく表 示、それからMSDS制度につきましては、GHS国連勧告に基づくものに改正をする ということ。それから、GHS国連勧告による表示、あるいはMSDSに基づく事業者 としての自主的な労働災害防止措置を講ずるということを、明確にすることが必要であ るとされているところです。  さらに、事業場におきまして、先ほどリスク評価というものが出てきましたが、化学 物質のリスク評価を行うためにはやはり何と言っても一定の専門的な知識あるいは能力 というものが必要になってきます。そのために、化学物質管理の専門家の育成確保とい うのが必要であるとされております。それから、リスク評価を行ったその結果について ですが、いわゆる有機則等の特別規則により規制されている物質につきましては、リス ク評価の結果いかんを問わず特別規則に定める特定のばく露防止方法というのが求めら れており、現場の状況に応じたばく露防止方法というのが今の規則上では必ずしも採用 されないということになっています。そういったことから、例えば作業環境中の化学物 質の濃度が継続的に一定程度以下になること等の条件の下、ばく露防止方法の柔軟化あ るいは性能要件化ということも併せて図っていく必要があるとされています。  それから4点目ですが、中小企業では自律的な化学物質管理と言っても、必ずしもそ の主体的能力があるということではない状況にございます。それをカバーするという意 味でも国が自ら有害な未規制の化学物質については、その物質のばく露状況等により、 リスク評価を行ってリスクが特に高い作業等については、特別規則により、規制を行う など国によるリスク管理というものを行う必要があるとされています。また、国による リスク管理を行うためには、国が事業場におけるばく露関係情報を、収集する仕組みの 整備が併せて必要であるとされています。  以上が今回の化学物質管理のあり方検討会報告書のポイントです。よろしくお願いし ます。 ○櫻井分科会長  以上で4つの報告書についての簡単なご説明がございました。今日は、その報告を承 るということがメインですが、もし何かご質問等がございましたら、ご発言いただいて 結構です。いかがでしょうか。 ○徳永委員  これからどのようになりますか。 ○計画課長  今回は4つの報告書が出たわけでして、大変多岐にわたる内容ですが、仮に制度改正 なり法令改正が必要なものがあれば、今後この審議会の場でご議論いただきたいと考え ております。  次回、アスベストのこともございますので、次回できるかどうかというのは、またご 相談したいと思います。 ○櫻井分科会長  ほかに何かございますか。特に今日のところは、ご発言ないようです。当分科会とし て今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会報告書などについての報告を承ったこ とにいたします。  それでは、今日の会議は以上をもって終了いたします。議事録への署名ですが、眞部 委員と小島委員にお願いしたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。  それでは、皆さんどうもお忙しい中ありがとうございました。               照会先:労働基準局安全衛生部計画課(内線5476)                    03−5253−1111(代表)