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第2章 ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果

(注)枠内は、ネットワークから聴取した事項及びネットワークから提出された資料等により、本検証会議として認識している事実経過の概要である。

1.初動体制並びに家族への脳死判定等の説明及び承諾
 平成14年10月28日10:00頃、歯科治療中に意識を消失し、同日10:39に救急車にて臓器提供施設に搬送される。
 11月8日に、主治医は患者を臨床的に脳死と診断し、家族に病状を説明。臓器提供の意思を確認したところ、家族から臓器提供意思表示カードが提示され、ネットワークコーディネーターの説明を受けたいとの申出があったため、同日17:20に病院は西日本支部に連絡した。
 同日19:59にネットワークのコーディネーター3名及び都道府県コーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行った。
 同日20:53にネットワークのコーディネーター1名及び都道府県コーディネーター1名が家族(患者の長男、長女、実姉)に面談し、主治医同席の下、脳死判定、臓器提供の内容、手続等を文書を用いて説明したところ、家族全員で話し合い、翌日再度面談することとなった。また、その際に家族構成について十分に確認している。
 11月9日10:00に、患者の長男、長女、姉、兄及び義理の娘に対して、臓器提供についての説明を再度行った。その際、家族から病院の治療に不満があるとの発言があったため、コーディネーターは脳死判定等の承諾をいただく前に問題がないか確認することとし、一度面談をうち切っている。コーディネーターは本事例の臓器提供の可否について医療本部と相談した後、同日14:00、家族(長男、長女、姉、兄及び義理の娘)と再度面談。コーディネーターより、法的脳死判定は「現在行いうる全ての適切な治療をもってしても回復の可能性がないと判断される症例」について行うこととされている。臓器提供施設は適切な治療を行ったと判断していること等を説明した上で、再度臓器提供に対する家族の総意を十分に確認した。その後、家族が脳死判定承諾書及び臓器摘出承諾書に署名捺印。家族の総意であることを確認し、コーディネーターがこれらを受理している。

【評価】
 ○ コーディネーターは、病院から家族への臓器提供に関する説明依頼を受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を迅速かつ適切に行っている。

 ○ 家族への説明についてコーディネーターは、脳死判定、臓器提供等の内容、手続を記載した文章を手渡してその内容を説明するとともに、治療に対する家族の思い等も把握している。その上で、臓器提供の可否を独自で判断することなく医療本部と相談し、検討した内容を説明した後に家族から承諾書を受理している等、コーディネーターの家族への説明等は適正に行われたものと評価できる。


2.ドナーの医学的検査及びレシピエントの選択等
 11月9日16:05より、心臓、肺、肝臓のレシピエント候補者の選定を開始。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、同日23:29よりレシピエント候補者の選定を開始している。
 法的脳死判定が終了した後、11月10日11:00より心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓の各臓器別にレシピエント候補者の意思確認が開始された。
 心臓については、第1候補者、第2候補者、第3候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾。
 肺については、第1候補者の移植実施施設側が両肺の移植を受諾。第2候補者の移植実施施設側が片肺の移植を受諾。第3候補者は、ドナーの感染症疑いを理由に移植実施施設側が片肺の移植を辞退。第4候補者は、待機(Inactive)の申請予定であることから移植実施施設側が両肺の移植を辞退。
 肝臓については、第1候補者の移植実施施設側が肝臓の移植を受諾。第2候補者は既に死亡していたため、移植実施施設側が移植を辞退。
 膵臓・腎臓の同時移植については、第1候補者、第2候補者、第3候補者の移植実施施設側がドナーの感染症の疑いを理由に膵臓と腎臓の同時移植を辞退。膵臓移植実施施設間で検討した結果、ドナーの感染症の疑いを理由に膵臓の移植が見送られることとなった。
 左右の腎臓については、第1候補者、第2候補者、第3候補者の移植実施施設側が各候補者にドナーの状況を説明した結果、腎臓の移植を辞退。第4候補者、第5候補者、第6候補者、第7候補者については、ドナーの感染症疑いを理由に移植実施施設側が腎臓の移植を辞退。第8候補者は、候補者の決心がつかないため移植実施施設側が腎臓の移植を辞退。第9候補者は、ドナーの感染症疑いを理由に移植実施施設側が腎臓の移植を辞退し、腎臓の移植が見送られることとなった。
 また、感染症検査やHLAの検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。

【評価】
 ○ 今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続が行われたものと評価できる。

 ○ また、ドナーについて感染症が疑われたために、血液培養検査についても行い、その検査結果についても移植実施施設側に伝えるなど、ドナーの医学的検査等は適正に行われている。


3.脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 11月10日8:55に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
 また、同日、ネットワークのコーディネーターより、家族に対して、膵臓と腎臓については医学的理由のため移植が見送られることとなった旨を報告している。

【評価】
 ○ 法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。


4.臓器の搬送
 11月10日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料のとおり搬送が行われた。

【評価】
 ○ 臓器の搬送は適正に行われた。


5.臓器摘出後の家族への支援
 平成14年11月11日臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、病院関係者等とともに御遺体をお見送りしている。
 同年11月12日に都道府県コーディネーターが各臓器移植の経過を電話で報告している。
 同年11月13日に都道府県のコーディネーターより肺移植を受けた方が再手術になっていることを報告している。
 同年11月25日にネットワークのコーディネーター1名と都道府県のコーディネーター1名が厚生労働大臣の感謝状を手渡しその後の経過報告を行っている。
 同年12月5日に都道府県のコーディネーターが自宅を訪問し肺移植を受けた方が亡くなったことを長女に報告している。
 その後もレシピエントからのサンクスレター郵送等、ネットワークのコーディネーターが適宜報告を行っている。

【評価】
 ○ コーディネーターにより、ご遺体のお見送り、家族への報告等適切な対応が採られている。


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