資料番号 No.1−2 |
1 制定の趣旨 |
(1) | 石綿は、肺がん、中皮腫等の健康障害を発生させることが明らかになっており、職業がんとして労災の認定を受けた件数の約8割を、石綿によるがんが占めている。 | ||||||
(2) | このことから、石綿については、他の化学物質とともに労働安全衛生法、同法施行令、特定化学物質等障害予防規則等において、製品の製造等に係る規制、作業において講ずべき措置等に係る規制を設けているところであり、このうち製品の製造等に係る規制としては、既に石綿のうちアモサイト及びクロシドライトの製造等を禁止している(平成7年〜)ほか、近年では、以下のとおりその充実を図ってきたところである。
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(3) | 一方、石綿等を取り扱う作業において講ずべき措置に係る規制については、石綿がこれまで建材として多く使用されており、今後はこれらの建材が使用された建築物等の解体作業等が増加することを踏まえ、このような解体作業等に重点を置いて、石綿ばく露による労働者の健康障害防止対策の充実を図る必要がある。 具体的には、建築物等の解体作業は、
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(4) | 以上のとおり、建築物等の解体作業等に対応した対策の充実を図ることに伴い、事業者が講ずべき措置の内容が他の化学物質に係るものとは大幅に異なることになるため、特定化学物質等障害予防規則から分離し、新たに石綿障害予防規則を制定することとする。 |
2 従前の規制から変更される事項 |
(1) | 石綿含有製品の代替化の責務を明記(要綱第一の一関係) 石綿含有製品の代替化について、現行の特定化学物質等障害予防規則(以下「特化則」という。)では事業者が講ずべき必要な措置として列挙しているが、これをさらに明確化し、事業者は、石綿含有製品の使用状況等を把握し、計画的に石綿を含有しない製品に代替するよう努めなければならないこととする。 | ||
(2) | 建築物等の解体等における石綿使用の事前調査(要綱第二の一の1関係) 現行の特化則では、建築物又は工作物を解体等する時は、石綿等の使用状況を目視、設計図書等により調査することとしているが、これに加え、調査の結果、石綿等の使用の有無が明らかとならなかったときは、原則として分析による調査を行うこととする。 ただし、石綿等が使用されているものとみなして、解体等される部材等を湿潤な状態のものとし、労働者に保護具、作業衣等を使用させる等の措置を講ずるときは、分析による調査を行わなくて良いものとする。
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(3) | 建築物等の解体等における作業計画作成の義務付け(要綱第二の一の2関係) 石綿が使用されている建築物又は工作物の解体等の作業を行う場合は、石綿粉じんのばく露による労働者の健康障害を防止するため、あらかじめ作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならないこととする。 | ||
(4) | 解体工事等の作業の届出(要綱第二の一の3関係) 現行では、労働安全衛生法等に基づき、耐火建築物等に吹き付けられた石綿等の除去作業について、仕事を行う場所の状況等を届け出ることととされているが、これに準じて粉じんを発散するおそれがあるものについて、あらかじめ石綿ばく露防止対策等の概要等を労働基準監督署長に届け出させることとする。 具体的には、石綿等を使用した耐火被覆板を張り付けた建築物の解体作業など、粉じんを著しく発散するおそれがある建築物又は工作物の解体等の作業を想定。 | ||
(5) | 保温材等の除去に係る措置(要綱第二の一の5関係) 現行の特化則では、建築物に吹き付けられた石綿等の除去作業を行う作業場所を隔離することとしているが、これに準じて粉じんを発散するおそれがある石綿等が使用されている保温材、断熱材等を除去する作業について、その作業場所に関係労働者以外の者(保護具等を着用した者を除く。)が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を表示させることとする。 また、特定元方事業者は、保温材、断熱材等の除去作業と同一場所で作業を行う労働者がいるときは、除去作業開始前までに作業の実施について関係請負人に通知するとともに、作業の時間帯の調整等必要な措置を講じなければならないこととする。
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(6) | 石綿等の使用の状況の通知(要綱第二の一の6関係) 建築物又は工作物の解体等の作業を行う仕事の発注者は、当該工事の請負人に対し、当該建築物又は工作物における石綿等の使用状況等を通知するよう努めなければならないこととする。
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(7) | 建築物の解体工事等の条件(要綱第二の一の7関係) 作業を請け負った事業者が、契約条件等により必要な措置を講ずることができなくなることのないよう、建築物又は工作物の解体等の作業を行う仕事の注文者は、建築物の解体方法及びその費用等について、この省令の規定の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮することとする。 現行では、労働安全衛生法上に類似の規定があり、これを具体化するもの。 | ||
(8) | 石綿等が吹き付けられた建築物等における業務に係る措置(要綱第二の二関係) 事業者等は、その労働者を就業させる建築物に吹き付けられた石綿等が損傷、劣化等によりその粉じんを飛散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれのあるときは、当該石綿等の除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければならないこととする。 これにより、石綿等を直接取り扱う業務を行わない事業者も、石綿等が吹き付けられている建築物等で業務を行う場合には、これらの措置を講ずることとなる。 | ||
(9) | 石綿等の吹付けの全面禁止(要綱第二の三の1関係) 現行の特化則では、作業場所の隔離、送気マスクの使用等の措置を講ずることにより、石綿等を吹き付ける作業に労働者を従事させることができるが、これらの条件を削除し、当該作業に従事させることを全面的に禁止することとする。 | ||
(10) | 清掃の作業におけるばく露防止対策の充実(要綱第二の三の3関係) 現行の特化則では、石綿等の切断等の作業についてのみ、石綿等を湿潤化し、労働者に呼吸用保護具、作業衣等の使用させること等が義務付けられており、その作業により発生した石綿等の清掃作業についてはこれらの措置を講ずることが義務付けられていないことから、このような清掃作業についても、これらの措置を講ずることを義務付けることとする。 | ||
(11) | 特別教育の実施(要綱第四の三関係) 石綿を使用する建築物又は工作物の解体等を行う労働者について、必要な知識を付与するため特別教育を義務付けることとする。 | ||
(12) | 清掃の実施等(要綱第四の四及び五関係) 現行の特化則では、作業場の床について不浸透性の材料で造らなければならない旨の規定はあるが、清掃の実施の規定はないことから、作業場の床の構造を水洗によって容易に掃除できるものとし、水洗する等により毎日1回以上清掃の実施を義務付けることとする。また、休憩室の床についても同様とする。 | ||
(13) | 作業記録等の保存期間の起点の見直し(要綱第四の六の1及び第六関係) 作業の記録、特殊健康診断個人票の記録について、現行では、「労働者が作業に従事することとなった日から30年間」保存することとされているが、労働者が作業に従事することとなった日から30年間経過した時点で記録が破棄される可能性があり、この場合、その後労働者が発症した場合に、適切に作業記録等を参照できない可能性があることから、これらの記録の保存期間を「その作業又は健診の実施から30年間」とする。 なお、現行の特化則でも、作業環境測定の記録については、「記録した日から30年間」保存することとされている。 | ||
(14) | 作業衣等の持出しの原則禁止(要綱第七の二関係) 使用された呼吸用保護具、作業衣等を他の衣服等から隔離して保管するとともに、付着した物を除去した後でなければ、事業場外への持出しを原則禁止することとする。 |
(1) | 輸入量 日本の石綿輸入量は1960年代より増加し、1974年の35万トンを最高に年間約30万トン前後で推移してきたが、1990年代から年々減少傾向にあり、2001年は7万9千トンとなっている。2002年の輸入量は4万3千トンであり、前年比45%減、ピーク時の88%減となっている。 日本への主な輸入元は、カナダ(56.4%)、ジンバブエ(25.8%)、ブラジル(6.9%)である(2002年)。
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(2) | 石綿品の用途 石綿の使用量のうち9割以上が建材に使用されており、その他、化学プラント設備用のシール材、摩擦材等の工業製品等に使用されている。
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