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労働者に長時間の時間外労働など過重な労働をさせたことにより疲労が蓄積している場合には、脳・心臓疾患発症のリスクが高まるとされていることから、このような状況となった労働者の迅速な把握が不可欠であり、また、その健康の状態を把握し、適切な措置を講じるようにするため、医師が直接労働者に面接すること及び健康確保上の指導を行うことを制度化すべきである。
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さらに、事業者は、医師による面接指導の結果に基づき、必要に応じて健康診断、労働時間の制限や休養・療養等の適切な措置を実施するようにすべきである。
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この医師による面接指導が必要な場合としては脳・心臓疾患発症との関連性が強いとされる月100時間を超える時間外労働又は2ないし6か月間に月平均80時間を超える時間外労働をやむなく行った場合が考えられる。具体的には、事務処理などの実効性を考慮すると時間外労働時間の算定は月単位での処理が適当であると考えられる。
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また、これより時間外労働時間が短い場合であっても、予防的な意味を含め健康上問題が認められる場合には面接指導を行うことが必要と考えられ、例えば、労働者が脳・心臓疾患に係る基礎疾患を有する等一定程度以上のリスクを有しているとき、労働者自身が健康に不安を感じたときや周囲の者が労働者の健康の異常を疑ったとき等であって産業医等が必要と認めた場合等には医師による面接指導を実施することが必要と考えられる。さらに、これらの対象者が事業場内の産業医等による面接を希望しない場合、自ら外部の医師の面接指導を受け、その結果を事業者に提出することができるようにすることも必要と考えられる。これらの場合に関しては、専属産業医の有無等事業場の実施体制、労働者の意見等も考慮する必要があることから、一律に基準を定めるのではなく、各事業場において、衛生委員会等の意見を聴き、自主的な基準により制度化していくことが適当である。
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なお、上記の面接指導は、月100時間を超える時間外労働を行った者等については必ず実施することが原則であるが、ハイリスクグループに集中して効果的に健康管理を進めるという観点から、労働者の健康診断結果、それまでの面接指導の結果、労働者が従事する作業内容、時間外労働時間の状況等の要素を勘案した上で医師の判断によっては、毎月連続して行わなくともよい場合もあるものと考えられる。
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上記の措置等を的確に実施するため、また、産業医等が現場の労働負荷の状況に応じて適切な助言ができるよう、時間外労働時間等の情報が産業医、衛生管理者、衛生推進者、保健師等の産業保健スタッフに適切かつ迅速に提供される必要がある。
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また、長期出張中の労働者、管理監督者、裁量労働者など一般の労働者とは労働時間管理が異なる者についても、過重労働による健康障害のリスクを考慮すると、原則として一般の労働者に準じた措置を実施する必要がある。
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なお、長時間の時間外労働により疲労が蓄積している者に対しては、適切な休養を取らせることにより蓄積した疲労を解消させるようにすることも必要である。 |