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「仕事と生活の調和に関する検討会議」報告書の概要



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背景

(1)  少子高齢化等の中で、働く者の意欲、能力が最大限発揮できることの必要性
(2)  働く者の仕事と生活に関する意識やニーズの多様化

今後のあるべき働き方

働く者一人ひとりが、職業生活における各々の段階において、「仕事」と「仕事以外の活動」(家庭、地域、学習)を様々に組み合わせ、バランスのとれた働き方を安心・納得して選択していけるようにすること、すなわち「仕事と生活の調和」の実現が重要
 
→
効果

(1)  働く者にとっては、自らが安心・納得できる働き方を選択することにより、心身ともに充実した状態で能力を発揮することができる。
(2)  企業にとっては、働く者がその意欲、能力を最大限発揮することにより、生産性の向上を図ることが期待できる。
(3)  社会全体としては、持続的成長や次世代育成支援にもつながる。
今後の施策の方向性
↓
 
個々人が仕事時間と生活時間を納得して配分できるよう
労働時間や就業場所の選択肢の整備が必要
多様な働き方の選択肢相互間において
バランスのとれた処遇の確保が必要
 
具体的な施策の提言
↓
   
(1)  労働時間について
 所定外労働の抑制
 年次有給休暇の取得促進
 労働時間規制にとらわれない働き方の実現
(2)  就業の場所について
 育児・介護等の事情を抱える在宅勤務者に対して制約なしでの「みなし労働」の適用など在宅勤務の推進
(3)  所得の確保について
 賃金についての情報提供
 表示単位期間の時間額表示への一本化など最低賃金制度の見直し
(4)  均衡処遇について
 労働時間と契約期間が異なる働き方相互間での処遇の均衡の実現に向けた対応
(5)  キャリア形成・展開について
 「職業キャリア権」を労働政策の基軸に据えること

 働く者には、人生キャリアの展開・形成について主体的に考え、責任感をもって自律的な選択と研鑽を重ねることを期待
 企業には、「仕事と生活の調和」が従業員のやる気や創造性を引き出し、生産性を長期的に向上させることに目を向けることを期待
 政府には、本報告書を基に、「仕事と生活の調和」の実現に向けた環境整備に早急に着手し、とりわけ、法的整備を要するものについては、速やかに適切な措置を講じることを期待



仕事と生活の調和に関する検討会議報告書(抄)

[平成16年6月23日公表]


総論

3 問題に対する解決の方向

(2)仕事と生活の調和を実現する上での主要な課題

(前略)
 ○  このように様々な長さや形態による労働時間の選択肢を整備し、自律的な選択を可能にしていくことが、働く者の意欲と能力の発揮のためにも、また企業にとっての有為な人材の確保や生産性の向上のためにも重要であると考えられる。したがって、今後の労働時間の短縮は、様々な労働時間の選択肢を整備する流れの中で考える必要があり、従来のように年間総実労働時間について一律に目標を掲げるのではなく、個々の働く者が生涯の各段階で希望する働き方を実現することにより、結果として社会全体で見た場合の労働時間短縮の達成が図られることを基軸に据えた取組が求められる。

(以下、略)


各論

I 労働時間について(抄)

1 「労働時間の在り方」について

 ○  個々の働く者が、いわゆる拘束度の高い正社員か拘束度の限定的な非正社員かといった二者択一をいたずらに迫られる現状を改め、すべての者が、育児・家族介護、自己啓発、地域活動への参加などの仕事以外の活動状況等に応じて、希望する生活時間を確保しつつ、生涯を通じて納得した働き方を選択できるようにするためには、現在の労働時間の在り方を見直す必要がある。

〈参考〉 「仕事と生活の調和に関する意識調査」(平成15年 厚生労働省)
 ・  労働時間について不満を感じている者(全体の22.3%)が挙げた不満の理由としては、「所定外労働時間が長い」(51.3%)、「所定労働時間が長い」(28.3%)とともに、「働く時間が選択できない」(25.2%)が多く、弾力的な労働時間制度や労働時間規制にとらわれない働き方へのニーズがうかがわれる。

*調査時点: 平成15年10月1日
*調査対象: 全国の従業員数30人以上の全業種(農林漁業を除く。)から無作為抽出し た3,000社に雇用されている9,000人(1社につき3人)
*有効回答数: 2,461人

(以下、略)


2 「労働時間の短縮」について

〈労働時間の動向等〉

 ○  労働時間については昭和62年の労働基準法改正以降、平成4年の労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の制定を含め、累次の法的措置が講じられるとともに、「労働時間短縮推進計画」、「ゆとり休暇推進要綱」及び「所定外労働削減要綱」等に基づき、完全週休二日制の普及促進、年次有給休暇の取得促進及び所定外労働の削減等の取組を政労使一体となって推進してきたところであり、平均総実労働時間も昭和62年の2,111時間から平成15年には1,846時間まで減少し、一定の効果を上げてきた。しかし、近年の状況を見ると、一般労働者、パートタイム労働者ともに横ばいとなっており、総実労働時間の減少は、全労働者に占めるパートタイム労働者の割合が高まったことによるところが大きいと考えられる。また、近年、一般労働者、パートタイム労働者ともに所定外労働時間が増加しており、年休取得率や取得日数も趨勢的な低下を経て横ばいの状況にある。

(中略)

〈年次有給休暇の取得促進〉

 ○  仕事以外の活動を行うための時間を確保する観点からは、年次有給休暇の取得が重要であるが、周りへの迷惑や職場の雰囲気などを理由に取得をためらう労働者が多く、取得率は低下している。取得促進を図るためには、労働者が取得をためらう理由の背景ともなる使用者の姿勢や取組が重要となるが、外国企業の取組例(多数の社員がいつでも一斉に年次有給休暇を取得し得る状況があるということは、これらの社員が年次有給休暇を取得し、不在となることによって事業運営計画がいつ阻害されるか分からないという状況に等しく、また、企業会計という面からみても労務供給による見返りのない不良の負債を多く抱えているに等しいという判断に立って、すべての従業員に年次有給休暇を完全に取得させている)が大きな示唆となろう。また、年次有給休暇の完全取得は、職場の要員に欠員が生じることを常態化するものであって、業務運営に支障が生じないようにするために、従業員間の情報の共有や企業内教育訓練の充実を促さざるを得なくするほか、同一業務を複数の従業員が交互にチェックする状況をもたらし、不正防止にもつながるといった効果があるとの指摘にも留意すべきである。

 ○  また、未消化の年次有給休暇を減らす方法として、現行の計画的付与制度に加えて、年次有給休暇のうち一定の日数について、労使協定に基づく計画的な付与を使用者側に義務付けることも考えられるが、この義務付けは年次有給休暇を労働者の権利として構成している現行法の基本的枠組の抜本的修正につながるため、慎重な検討が必要であると考えられる。

 ○  年次有給休暇の取得方法については、そもそも年次有給休暇は労働者に休養の機会を与え、労働力の維持培養を図るための制度であるという考え方の下、労働日単位での取得が原則とされており、半日単位での取得は一定の場合に限られている。
 この運用については、育児・介護、通学、地域活動等の仕事以外の活動を容易に行えるようにするという視点に立った上で、数人のチーム編成で仕事を行っている場合、時間単位での取得の方が他の構成員からは受け入れられやすいといった実例があることも考慮するならば、時間単位での年次有給休暇の取得について前向きに検討する必要があると考えられる。

 ○  さらに、年次有給休暇を取得する権利が2年で消滅することから、失効した年次有給休暇を活用することも考えられ、例えば、社会人大学院への通学などをはじめ仕事と生活の調和に資する一定の目的に沿う場合には、失効した分を改めて付与できる仕組みを検討する余地はある。ただし、その際、労働基準法における他の請求権の時効の在り方との均衡も検証しておく必要がある。

(以下、略)



V キャリア形成・展開について(抄)

(前略)
 ○  企業や政府については、キャリア意識を持った個人に対して、どう向き合い、あるいは側面から援助していくかが問題となる。企業に求められるのは、キャリア意識を持った従業員の多様な人生キャリアの形成・展開を認めることが、そのやる気を引き出し、生産性を長期的に向上させるとともに、優秀な従業員を企業に引き留めることにも資することに目を向け、自己啓発や生涯学習のための休暇の付与や短時間勤務の導入、労働時間管理の弾力化などを実施し、いわゆる社会人大学・大学院への通学を容易にするなど働く者の主体的なキャリア形成・展開を支援していくことである。また、政府には、例えば、キャリア意識の醸成のための教育や情報提供の強化、さらには働く者が自発的なキャリア形成を図るために要した費用を所得控除の対象とする税制措置など主体的にキャリア形成・展開をしていく個人に対する直接的な支援とともに、キャリア・コンサルティングを導入する企業に対する支援など主体的にキャリア形成・展開を図る個人に対する企業を通じた支援を含め、関連する基盤のさらなる整備を進めていくことが求められる。

(以下、略)


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