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社会保障審議会−福祉部会
第11回(H16.9.27)資料1


社会福祉施設職員等退職手当共済制度について(説明資料)
(PDF:72KB)


1.退職手当共済制度の仕組みと現状
2.退職手当共済制度をめぐる課題
3.見直しに向けての論点


1.退職手当共済制度の仕組みと現状


社会福祉施設職員等退職手当共済制度の概要


 社会福祉法人の経営する社会福祉施設等の職員の待遇改善により、職員の身分の安定を図り、もって社会福祉事業の振興に寄与することを目的としている。
 公立の社会福祉施設と同等の待遇を確保する観点から、給付水準は国家公務員準拠となっており、その財源については国及び都道府県から高率の補助がなされている。

制度のポイント

制度加入対象は、社会福祉法人(経営者)の経営する社会福祉施設等の職員。

加入方式は、経営者ごとの任意・包括加入

給付水準は国家公務員に準拠。

財源方法は賦課方式

給付費については、国、都道府県、及び経 営者(社会福祉法人)が3分の1ずつ負担。

社会福祉施設等以外の施設・事業についても、経営者の任意の申し出により制度加入可能(申出施設等)。但し、公費補助は行われない。 (経営者が3分の3負担)

※申出施設等・・介護老人保健施設、指定居宅介護支援事業 等

図


参考:社会福祉施設職員等退職手当共済法の主な経緯


創設時(昭和36年)
 社会福祉事業の一翼を担う民間社会福祉施設では、その職員の給与その他の待遇面で公立の社会福祉施設の職員に比較して格差があり、必要な職員の確保や資質の高い職員の定着化が図られないという実情があった。給与については、徐々に改善が図られていたが、退職金についてはこれを積み立てる財源がなく、また、小規模な施設が多いことから、独自の制度を設置することが困難な状況であった。
 一方、昭和34年に中小企業退職金共済制度が発足したが、掛金負担が困難であることや公立施設に準じた水準の支給が困難である等の問題があった。
 これらの背景から、職員に対する待遇改善により、職員の身分の安定、質の高い人材の確保を図るため、社会福祉施設職員を対象とした退職金制度の早期実現が要請され、昭和35年より、全国社会福祉協議会の特別委員会及び厚生省において、退職手当共済制度について調査、検討。
 その結果、給付水準を国家公務員準拠とし、高率の公的補助がなされる社会福祉施設職員退職手当共済制度を創設。

平成4年改正
 ゴールドプランの推進等、在宅福祉事業の重要性が増し、在宅福祉事業におけるホームヘルパー等の人材を確保する観点から、在宅福祉事業についても対象事業に追加するなどの改正を実施。

平成12年改正
 社会福祉法人制度が成熟化し、社会福祉法人が多様なニーズに応えてサービスを展開することが求められている状況を踏まえ、社会福祉事業の主たる担い手である社会福祉法人に加入者を限定。
 併せて、共済契約対象となる施設を拡大(申出施設等)。


退職手当共済制度の実施状況


介護保険制度の施行等に伴い、社会福祉法人の経営する施設・事業が増加していることから、被共済職員数、退職者数及び給付費は増加する傾向。

年度
事項
単位 11 12 13 14 15
1 加入状況(各年4月1日現在)            
 (1)契約者数 13,407 13,774 14,201 14,613 15,098
 (2)施設等の数 25,307 27,008 30,002 32,182 34,497
    社会福祉施設等   25,307 27,008 28,607 30,226 32,094
    申出施設等(※)   1,395 1,956 2,403
 (3)被共済職員数 438,019 465,059 510,264 550,181 587,608
    社会福祉施設等   438,019 465,059 496,727 533,109 567,285
    申出施設等   13,537 17,072 20,323
 (4)平均被共済職員期間   6年10月 6年9月 6年6月 6年5月 6年4月
2 退職手当金支給状況            
 (1)給付人数 38,928 44,380 53,949 51,176 60,050
 (2)退職者の平均在職期間   5年4月 5年3月 4年11月 5年0月 5年0月
 (3)給付費 百万円 50,527 59,998 68,453 63,530 73,953
 (4)1件平均給付額 万円 130 135 127 124 123
3 国庫補助金            
  国庫補助額 百万円 16,842 19,887 22,187 20,487 23,758
平成13年4月1日より社会福祉施設等以外の施設・事業についても、
経営者が任意で申し出ることにより制度加入ができることとなっている。



○施設等の種類別にみた被共済職員数の推移

各年4月1日現在の被共済職員数 (人)
  H11 H12 H13 H14 H15
社会福祉施設等 438,019 465,059 496,727 533,109 567,285
  保護施設 4,351 4,357 4,476 4,593 4,643
児童福祉施設 169,234 175,279 182,612 191,640 199,702
老人福祉施設
 うち特別養護老人ホーム
   ケアハウス
   老人デイサービス
   老人短期入所施設
178,577
133,692
3,617
28,576
625
194,926
144,759
4,412
32,539
890
213,409
156,811
5,114
37,935
1,067
233,714
171,247
5,666
42,288
1,246
252,790
184,202
6,323
47,078
1,414
障害者施設 77,147 80,495 83,906 89,224 93,570
その他施設 516 521 556 553 551
特定社会福祉事業
 うち老人居宅介護等事業
   痴呆対応型老人共同生活支援事業
8,214
7,334
9,481
8,026
305
11,768
9,390
977
13,385
10,466
1,840
16,029
11,336
3,192
申出施設等
  うち介護老人保健施設


13,537
4,713
17,072
6,518
20,323
7,633
合計 438,019 465,059 510,264 550,181 587,608



被共済職員の加入期間の状況及び退職手当受給者の加入期間の状況

○被共済職員の加入期間の状況
平成15年4月1日現在
被共済職員期間 職員数(人) 構成比(%) 累積構成比(%)
0年 101,365 17.24 17.24
1年 82,493 14.04 31.28
2年 73,114 12.44 43.72
3年 47,507 8.08 51.80
4年 36,231 6.17 57.97
5年 29,583 5.03 63.00
6年 27,414 4.67 67.67
7年 21,963 3.74 71.41
8年 17,408 2.96 74.37
9年 17,788 3.03 77.40
10年 16,348 2.78 80.18
11年 14,009 2.38 82.56
12年 11,183 1.90 84.46
13年 9,319 1.59 86.05
14年 7,889 1.34 87.39
15年 6,516 1.11 88.50
16年 6,232 1.06 89.56
17年 5,540 0.94 90.50
18年 5,266 0.90 91.40
19年 4,857 0.83 92.23
20年 4,857 0.83 93.06
21年 5,090 0.87 93.93
22年 4,705 0.80 94.73
23年 4,893 0.83 95.56
24年 4,349 0.74 96.30
25年 4,114 0.70 97.00
26年 3,565 0.61 97.61
27年 2,819 0.48 98.09
28年 2,674 0.46 98.55
29年 2,044 0.35 98.90
30年 1,562 0.27 99.17
31年 1,250 0.21 99.38
32年 927 0.16 99.54
33年 620 0.11 99.65
34年 543 0.09 99.74
35年 358 0.06 99.80
36年 299 0.05 99.85
37年 184 0.03 99.88
38年 132 0.02 99.90
39年 101 0.02 99.92
40年 80 0.01 99.93
41年 417 0.07 100.00
587,608 100.00  
(参考)平均被共済職員期間 6年 4ヵ月
○退職手当受給者の加入期間の状況
(平成15年度)
被共済職員期間 職員数(人) 構成比(%) 累積構成比(%)
1年 13,872 23.10 23.10
2年 10,577 17.61 40.71
3年 7,454 12.41 53.12
4年 4,857 8.09 61.21
5年 4,184 6.97 68.18
6年 3,351 5.58 73.76
7年 2,434 4.05 77.81
8年 1,749 2.91 80.72
9年 1,527 2.54 83.26
10年 1,398 2.33 85.59
11年 1,165 1.94 87.53
12年 839 1.40 88.93
13年 678 1.13 90.06
14年 529 0.88 90.94
15年 434 0.72 91.66
16年 373 0.62 92.28
17年 323 0.54 92.82
18年 302 0.50 93.32
19年 310 0.52 93.84
20年 348 0.58 94.42
21年 408 0.68 95.10
22年 358 0.60 95.70
23年 339 0.56 96.26
24年 285 0.48 96.74
25年 316 0.53 97.27
26年 265 0.44 97.71
27年 227 0.38 98.09
28年 214 0.36 98.45
29年 194 0.32 98.77
30年 135 0.23 99.00
31年 115 0.19 99.19
32年 93 0.16 99.35
33年 84 0.14 99.49
34年 50 0.08 99.57
35年 49 0.08 99.65
36年 30 0.05 99.70
37年 34 0.06 99.76
38年 27 0.04 99.80
39年 22 0.04 99.84
40年 18 0.03 99.87
41年 80 0.13 100.00
42年 3 0.00 100.00
60,050 100.00  
(参考)平均被共済職員期間 5年 8ヵ月


退職手当金の算定方法

退職手当金の額
計算基礎額
×
支給乗率

計算基礎額(政令事項)
退職前6月の本俸月額の平均額に応じて設定
最低62,000円、最高360,000円で20ランク

支給乗率(法律事項)
被共済職員期間及びそれに応じて設定される支給率をもとに計算
(次ページ参照)
国家公務員に準拠
( 被共済職員期間が長くなるにつれて、支給率が上昇するとともに、11年、20年、25年になるときに、それより以前の年数分についても支給率を引き上げて計算しており、退職金額が大幅に伸びる構造となっている。)



被共済職員期間別の支給率と支給乗率


被共済職員期間
1〜10年
被共済職員
期間(年)

支給率

支給乗率
1 0.6 0.6
2 0.6 1.2
3 0.6 1.8
4 0.6 2.4
5 0.6 3
6 0.75 4.5
7 0.75 5.25
8 0.75 6
9 0.75 6.75
10 0.75 7.5
被共済職員期間
11〜19年
被共済職員
期間(年)

支給率

支給乗率
1 0.8  
2 0.8
3 0.8
4 0.8
5 0.8
6 0.8
7 0.8
8 0.8
9 0.8
10 0.8
11 0.88 8.88
12 0.88 9.76
13 0.88 10.64
14 0.88 11.52
15 0.88 12.4
16 0.88 13.28
17 0.88 14.16
18 0.88 15.04
19 0.88 15.92
被共済職員期間
20〜24年
被共済職員
期間(年)

支給率

支給乗率
1 1  
2 1
3 1
4 1
5 1
6 1
7 1
8 1
9 1
10 1
11 1.1
12 1.1
13 1.1
14 1.1
15 1.1
16 1.1
17 1.1
18 1.1
19 1.1
20 1.1 21
21 1.2 22.2
22 1.2 23.4
23 1.2 24.6
24 1.2 25.8
被共済職員期間
25年以上
被共済職員
期間(年)

支給率

支給乗率
1 1.25  
2 1.25
3 1.25
4 1.25
5 1.25
6 1.25
7 1.25
8 1.25
9 1.25
10 1.25
11 1.375
12 1.375
13 1.375
14 1.375
15 1.375
16 1.375
17 1.375
18 1.375
19 1.375
20 1.375
21 1.5
22 1.5
23 1.5
24 1.5
25 1.5 33.75
26 1.5 35.25
27 1.5 36.75
28 1.5 38.25
29 1.5 39.75
30 1.5 41.25
31 1.25 42.5
32 1.25 43.75
33 1.25 45
34 1.25 46.25
35 1.25 47.5
36 1.25 48.75
37 1.25 50
38 1.25 51.25
39 1.25 52.5
40 1.25 53.75
41 1.25 55
42 1.25 56.25
43 1.25 57.5
44 1.25 58.75
45 1.25 60









【支給乗率の計算方法】
例1:被共済職員期間が6年の場合
  6年 × 0.75 = 4.5
例2:被共済職員期間が11年の場合
  10年 × 0.8 + 1年 × 0.88 = 8.88
例3:被共済職員期間が25年の場合
  10年 × 1.25 + 10年 × 1.375 + 5年 × 1.5
  = 33.75










掛金額の推移


 社会福祉施設等職員1人あたりの掛金額(単位掛金額)は、年額42,300円(申出施設等職員1人あたり年額126,900円)。掛金額は、おおむね5年を通じ財政均衡を保つことができるものでなければならないこととされており、平成13〜17年度の額として年額39,000円に設定していたが、退職者の増加に伴い、16年度に額を引上げ。

単位掛金額の推移
年度 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16
単位掛金額 35,340 36,900 37,670 39,960 40,920 39,000 39,000 39,000 39,000 42,300
※単位は円。 額は年額。申出施設等については、3倍の額

図


2.退職手当共済制度をめぐる課題


課題1:民間の事業主体との間の対等な競争条件の確保(イコールフッティング)


 介護保険制度の対象となる高齢者関係の施設・事業への多様な主体の参入が進展する中で、退職手当共済制度については、介護保険における民間とのイコールフッティングの観点から、助成の在り方を見直すことが閣議決定等で指摘されている。

特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日閣議決定)(抄)

社会福祉・医療事業団

【社会福祉施設退職手当共済】
 平成17年を目途に行われる介護保険制度の見直しに合わせ、介護保険における民間とのイコールフッティングの観点から、助成の在り方を見直す。

(※)社会福祉・医療事業団は独立行政法人化され、平成15年10月より独立行政法人福祉医療機構となっている。

独立行政法人福祉医療機構法案等に対する附帯決議(参議院)(平成14年12月5日)

九 独立行政法人福祉医療機構については、次の措置を講ずること。

 3 社会福祉施設職員等退職手当共済事業については、介護保険における民間事業者との公平を図る観点から、助成の在り方を見直すこと。


課題2:退職手当給付費の増大への対応


退職者の増加等による給付額の増大に伴い、掛金・公費補助額ともに、今後増大するものと見込まれる。

退職手当給付費等の将来推計
  H15(2003) H18(2006) H22(2010) H27(2015) H37(2025)
被共済職員(万人) 58.8 70.2 87.6 97.3 107.9
給付者数(万人) 6.0 6.6 8.4 9.3 9.8
退職金給付総額(億円) 740 906 1128 1394 1906
1人あたり給付額(千円) 1232 1369 1347 1494 1940
退職者平均在籍期間(年) 5.00 4.46 4.50 5.24 6.24
国庫補助金(億円) 238 289 359 442 600
掛金単価(円/年)
(申出施設等)
39,000
(117,000)
43,000
(129,000)
43,000
(129,000,)
48,000
(144,000)
59,000
(177,000)
H15については実績。推計の前提については、次ページ参照
H16の掛金単価は、42,300円(年額)。



推計方法


 推計に当たっては、施設等を8つに区分((1)保育所、(2)保育所以外の児童福祉施設等、(3)介護保険制度の対象となる老人福祉施設等、(4)(3)以外の老人福祉施設等、(5)支援費制度の対象となる障害者福祉施設等、(6)(5)以外の障害者福祉施設等、(7)その他の施設、(8)申出施設等)し、以下の方法により計算した。
(1)被共済職員数
平成16(2004)年度から20(2008)年度までは、平成15年度の被共済職員数をもとに、平成7年度から11年度の被共済職員数の伸び率を使用して計算。
平成21年度〜37年度までの推計方法
保育所及び保育所以外の児童福祉施設等
  2004〜2008年度(5年間)の伸び率から、5年間かけて徐々に「日本の将来推計人口(平成14年1月)」(以下「人口推計」と言う。)(児童人口)の伸び率に推移するように推計。2014年度以降は人口推計に基づき推計。
老人福祉施設等 (1)介護保険制度の対象となる老人福祉施設等
 平成16年5月「社会保障の給付と負担の見通し」の給付費を基に、2025年度まで推計。
 (2)上記以外の老人福祉施設等2009年度以降は、2004〜2008年度(5年間)の伸び率から、5年間かけて徐々に人口推計(高齢者人口)の伸び率に推移するように推計。2014年度以降は、人口推計の高齢者人口の伸び率に基づき推計した。
支援費制度の対象となる障害者福祉施設等、それ以外の障害者福祉施設等、その他施設等
  2009年度以降、2004〜2008年度(5年間)の伸び率から、5年間かけて徐々に人口推計(総人口)に推移するよう推計。2014年度以降は、人口推計の総人口の伸び率に基づき推計
申出施設等 介護保険制度の対象となる老人福祉施設等に準じて推計
(2)退職者数
平成14年度における年齢別、経験年数別の脱退率を使用。各年度の被共済職員数に脱退率を乗じ、年次別に追跡する方式で推計。
(3)退職金給付額
(2)で求めた退職者数に、平成15年度在籍者の本俸月額に支給率を乗じて計算。本俸のベースアップの要素は織り込んでいない。
(4)退職者平均在籍期間
平成15年度は月単位も含めた数(例 3年8月)の平均であるのに対し、推計である平成18年度以降においては、月単位を切り捨てた年単位の数(2年、3年等々)の平均となっている。


3.見直しに向けての論点


(1)助成の在り方について


論点1 介護保険制度の対象となる高齢者関係の施設・事業については、社会福祉法人以外の経営者が多数参入している状況や閣議決定等の指摘を踏まえ、公費助成を行わないこととするなど、助成の在り方を見直す必要があるのではないか。

 介護保険制度の対象となる高齢者関係の施設・事業において、社会福祉法人が経営する施設・事業所数の割合は、約15%にとどまっており、多様な主体が参入している。

介護保険制度の対象となる施設・事業における経営主体別の施設・事業所数の割合(平成16年8月現在)
  施設・事業所数 割合
行政 8,113 3.2%
社会福祉法人 37,909 15.2%
社会福祉法人以外 203,901 81.6%
  営利法人 53,470 21.4%
医療法人 68,908 27.6%
民法法人 4,688 1.9%
NPO法人 3,012 1.2%
その他 73,823 29.5%
出典:WAM NETデータベース
注) 経営主体別の職員数についての直接的なデータはないが、施設サービス(特養、老健、療養型)における社会福祉法 人の職員数(常勤換算)の比率は、5割弱程度となっている。(「平成14年介護サービス施設・事業所調査」)


論点2 介護保険制度の対象となる高齢者関係の施設・事業について、助成の在り方の見直しを行うこととした場合、既加入職員の取扱いについてどのように考えるか。

 経営者としては、少なくとも既加入職員については、国及び都道府県から高率の補助が行われ、低い掛金負担のもとで退職金給付が支払われることを期待。


論点3 介護保険制度の対象となる高齢者関係の施設・事業について、助成の在り方の見直しを行うこととした場合、経営者の掛金負担が増加(仮に公費補助を廃止すれば、これまでの額の3倍)することとなるが、このような状況の中で、現在の包括加入制度をどのように考えるのか。

 仮に、経営者の期待利益の保護の観点から、既加入職員の分のみ従来通り公費補助を行うこととした場合、包括加入の原則にしたがえば、改正後に加入した職員も必ず加入しなければならないため、経営者の負担が選択の余地なく増加することとなる。(改正後の加入職員の分について、仮に公費補助を廃止すれば、これまでの額の3倍となる。)


(2)給付の在り方について


論点1 今後、退職手当給付費の増大や助成の在り方の見直しによる掛金負担の増加が見込まれる中で、給付の在り方についてどのように考えるか。

 今後の給付費の増大に伴う掛金負担増(現行 年額 42,300円 → 2025年 年額59,000円)

 助成の在り方の見直しを行う場合には、加入職員1人あたりの掛金額が増加(仮に公費補 助を廃止すれば、3倍)するとともに、仮に介護保険制度の対象となる高齢者関係の施設・事業に係る新規採用職員を任意加入とすれば、新規加入の抑制が見込まれる。


論点2 仮に給付水準の見直しを行うこととした場合、どのような考え方に基づき見直しを行うのか。また、既加入職員の取扱いをどのように考えるか。

 現行では、加入年数が長くなるにつれて退職金額が大幅に伸びる。

 仮に給付水準を見直すとした場合、経過措置として、現在の加入職員が現時点で既得している退職金額の水準(支給乗率)の確保をどのように考えるのか。


参考:退職金制度の状況


 各種調査の結果によれば、退職金制度を導入している企業は、全体の8割〜9割と高い数字を示している。

「平成15年就労条件総合調査」(平成15年厚生労働省)
 退職給付(一時金・年金)制度のある企業数割合は86.7%となっている。(うち、退職一時金のみは46.5%、一時金と年金の併用は33.9%)
「平成13年民間企業退職金実態調査」(平成14年総務省)
 退職一時金があると答えた企業は全体の92.2%に及ぶ。
「中小企業の賃金・退職金事情」(平成14年東京都)
 退職金制度があると回答した企業は全産業で88.8%に及ぶ。ただし、サービス業で見ると、80.9%となっており、全産業に比べて低くなっている。


 退職一時金の受給に必要な最低勤続年数は、3年とするところが多い。

「平成15年就労条件総合調査」(平成15年厚生労働省)
 自己都合退職の場合で、「3年〜4年未満」とする企業が全体の60%と最も多い。(支払い準備形態が社内準備採用の企業)
「中小企業の賃金・退職金事情」(平成14年東京都)
 自己都合退職の場合で、「3年」とする企業が全体の45.7%と最も多い。



退職金額の比較

(単位:千円)
  退職手当
共済
中退金 民間(1) 民間(2) 民間(3) 民間(4) 民間(5) 民間(6)
1年 96 36 56 85 92 82    
3年 315 360 163 196 237 198    
5年 570 608 326 379 425 372    
10年 1,650 1,266 900 1,045 1,201 1,107    
15年 3,100 1,950 1,874 2,117 2,444 2,487    
20年 5,880 2,667 3,266 3,621 4,186 4,693 4,623 6.986
25年 10,800 3,421 5,138 5,574 6,462 7,676 8,163 11,270
30年 14,025 4,213 7,291 7,801 8,955 11,747 11,679 18,045
35年 17,100 5,046 9,178 9,580   15,409 15,925 24,988

注1)退手共済の退職手当平均金額は、平成15年度退職者の平均本俸月額をもとに計算
注2)中退金(中小企業退職金共済)は、掛金が年額120,000円(月額10,000円)の場合
注3)民間(1)中小企業 全産業 高卒 自己都合退職  出典:「中小企業の賃金・退職金事情」(平成14年 東京都)
民間(2)中小企業 全産業 高専・短大卒 自己都合退職  出典:「中小企業の賃金・退職金事情」(平成14年 東京都)
民間(3)中小企業 全産業 大卒 自己都合退職  出典:「中小企業の賃金・退職金事情」(平成14年 東京都)
民間(4)日本経団連 全産業 高卒 女子 自己都合  出典:「2002年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」(日本経団連)
民間(5)全産業 自己都合 高卒  出典:「平成13年民間企業退職金実態調査」(平成14年 総務省)
民間(6)全産業 自己都合 大卒  出典:「平成13年民間企業退職金実態調査」(平成14年 総務省)



民間企業における退職金見直しの動向


(平成15年度就労条件総合調査(厚生労働省)より抜粋)

 退職給付(一時金・年金)制度について、「過去3年間に見直しを行った」企業数割合は14.3%、また、「今後3年間に見直しを行う」企業数割合は20.5%となっている。
 見直しの内容をみると、過去3年間では「退職一時金」についてとする企業数割合が67.1%と高く、今後3年間では「退職一時金」「年金」ともそれぞれ53.7%、52.0%と高くなっている。

○退職給付(一時金・年金)制度の見直しの時期、有無についての企業数割合 表図

(注)1)「退職一時金」には、退職一時金制度について導入又は廃止、全部又は一部を年金へ移行、算定基礎額算出方法の変更、支給率の増加又は減少を、過去3年間に行った又は今後3年間に行う企業を計上したものである。
2)「年金」には、退職給付(年金)制度について導入又は廃止、年金支給期間の延長又は短縮、算定基礎額の算出方法の変更、賃金や物価上昇率に伴う給付水準の見直し制度を導入、支給率の増加又は減少を過去3年間に行った又は今後3年間に行う企業を計上したものである。
3)「個人年金」には、労働者の個人年金(財形年金等)への援助の開始又は終了を、過去3年間に行った又は今後3年間に行う企業を計上したものである。



公務員制度における退職手当制度見直しの動向


公務員制度改革大綱(平成13年12月25日閣議決定)(抄)

II新たな公務員制度の概要
 3 適正な再就職ルールの確立

 (5) 退職手当制度の見直し
 退職手当に職員の在職中の貢献度をより的確に反映するとともに、人材の流動化を阻害することのないよう、退職手当制度について、長期勤続者に過度に有利となっている現状を是正することとし、新たな任用・給与制度の具体的内容を踏まえ、支給率カーブ、算定方式の在り方等の見直しを行う。また、民間企業の退職金の支給実態を踏まえ、全体的な支給水準の見直しを行う。


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