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社会保障審議会−福祉部会
生活保護制度の在り方に関する専門委員会
第16回(平成16年9月24日) 資料

説明資料

− 目次 −


 自立支援の在り方について



 生活保護制度の見直しについて

 1.現状と見直しの方向性

現状
問題点 見直しの方向性
∧被保護者∨
被保護世帯が抱える問題は多様
精神疾患等の傷病(社会的入院を含む)、DV、虐待、若年無業者(NEET)、多重債務、元ホームレス等
社会的きずなが希薄
 −相談に乗ってくれる人がいない 38.3%(平成15年)
高齢者世帯(特に単身世帯)の増加
 −平成9年度の世帯数を100とした割合(平成16年6月)
 高齢者世帯 165.8 高齢者単身世帯 164.0
保護受給期間が長期にわたる者が少なくない
 −高齢者世帯・傷病障害者世帯を除く世帯の保護受給期間別の世帯割合(平成15年度)
〜1年1〜3年3〜10年10〜15年15年〜
24.4%30.8%34.1%5.5%5.2%

 −高齢者世帯・傷病障害者世帯を除く世帯の受給期間別保護廃止世帯率(平成12年 → 14年)
12年時の受給期間2年未満2〜4年4〜6年6〜8年
2年間の廃止率22.8%20.3%18.7%15.5%
∧地方自治体の運用∨
実施体制上の問題
担当職員の配置数・その経験の不足
 −生活保護担当職員の配置状況(平成15年度)
 全国 11,408人(1,089人不足)
(参考)生活保護担当職員の不足数の年次推移
H12H13H14H15
354人576人858人1,089人

 −指導監督担当職員のうち、担当職員経験がない者
 全国平均 26.1%(平成15年度)
図



 2.具体的な取組としての自立支援プログラム

−生活保護制度に自立支援プログラムを導入し、自立・就労支援を強力に推進

自立支援プログラム
実施機関は、被保護者の自立・就労支援のために活用すべき多様かつ重層的な支援メニューを整備
実施機関は、被保護者の実情に応じた必要な支援メニューを選定して自立計画を策定し、これに基づく支援を実施
被保護者は、自立計画に基づいて自立・就労に向けた取組を実施
実施機関は、被保護者による自立支援プログラムへの取組状況を定期的に評価し、必要に応じて支援メニューの見直しを行う。被保護者の取組が不十分であると認められる場合には、最終的に保護費の減額又は保護の停廃止も考慮

(1)自立支援プログラムに多様な支援メニューを整備
→被保護者の抱える問題に適した支援メニューが選択可能
(2)自立支援プログラムを活用して早期に支援を実施
→生活保護を開始する前から地域の要援護者に対する支援が可能
→支援の早期開始と自立計画への取組状況の定期的評価により、早期自立を実現
(3)自立支援プログラムにより、システム的に自立・就労支援を実施
→支援メニューの整備 = 業務の標準化・マニュアル化
→担当職員の経験だけに頼らない組織的な対応が可能



 3.自立支援プログラムのイメージ

有子世帯(ひとり親世帯の親等)の自立支援プログラム

要保護者の職歴、資格、就労阻害要因等を踏まえ、次のようなプログラムに基づく取組を求める。

原則として就労を求めるが、適職がない場合等には、職業訓練等による職業能力開発(技能修得等)、試行雇用や福祉的就労等を求める。職業能力開発(技能修得等)等も不可能な場合には、健康管理・意欲向上支援等を実施する。

有子世帯(ひとり親世帯の親等)の自立支援プログラムの図


就労経験の少ない若年者等の自立支援プログラム

就労経験の少ない若年者等の健康状態、就労意欲、能力、学歴等を踏まえ、次のようなプログラムに基づく取組を求める。

就労経験の少ない若年者等の自立支援プログラムの図


社会的入院患者等(精神障害者等)の自立支援プログラム

社会的入院患者等(精神障害者等)の居宅生活への復帰やその維持・向上等を支援するため、
要保護者の病状、退院阻害要因等を踏まえ、次のようなプログラムに基づく取組を求める。

社会的入院患者等(精神障害者等)の自立支援プログラムの図


多重債務者の自立支援プログラム

要保護者が多重債務を抱えていることを早期に把握し、その多重債務の原因等を踏まえ、他のプログラムに優先して、次のようなプログラムに基づく取組を求める。

多重債務者の自立支援プログラムの図


ホームレスの自立支援プログラム

ホームレスの健康状態、就労意欲、職歴等を踏まえ、次のようなプログラムに基づく取組を求める。

ホームレスの自立支援プログラムの図


高齢者の自立支援プログラム

要保護者の健康状況等を踏まえ、次のようなプログラムに基づく取組を求める。

高齢者の自立支援プログラムの図



 4.自立支援プログラムの実施体制

 地方自治体による自立支援プログラムの支援メニューの策定・実施に当たっては、




(1)就労支援等に関する知識・経験を有する非常勤職員の活用
(2)社会福祉法人、民間事業者等の協力
(3)救護施設等の社会福祉施設との連携
 など、地域の様々な社会資源を活用することにより、その独自性を生かした実施体制を構築

 国においても、労働行政、福祉行政とも連携しつつ、地方自治体の取組を支援


 平成17年概算要求において、自立支援プログラムの策定・実施に必要な経費として、
生活保護費補助金の増額を要求



 諸外国における取組の例

 1 アメリカにおける取組の例

NY市の自立支援策
30代単身男性
 ・薬物や犯罪等、あらゆる悪事に手をつけて自暴自棄の生活
 ・長期にわたり生活保護を受給
→
NY市の自立支援プログラム(2年間)
専門家の指導を受けて薬物漬けの生活を改める
施設で規則正しい生活に慣れる
ゴミ清掃などを通じて働く習慣を身につける
職探しの指導
→
非営利団体で
ホームレス支援の職
 ※NY市の取組
 働く能力のある受給者は、福祉指導員が個別に作った支援計画に基づき、週に約35時間、非営利団体などが実施する様々なプログラムに参加
 プログラムへの参加を拒否すれば、支給減額等の制裁
 プログラムの例
 ・公園や施設の清掃、落書き消し、企業での実習等
 ・身体障害の場合には機能回復訓練
 ・家庭内暴力の被害者に対してはカウンセリング 等、幅広い内容
(平成16年8月30日 読売新聞から)

 NPO法人の取組

母子家庭の母
 ・高校中退、職歴なし、離婚後18年
 ・生活保護を受給
 ・自分で面接を受けるが4年間不成功
→
就労訓練・職探しサービス
就職準備訓練
小売技能プログラム
実習
→
就職

 ※NPO法人における自立支援メニュー (個々人に必要なものを組み合わせて行う)
・本人が有する技術・能力の明確化 ・履歴書の書き方指導 ・応募用紙の書き方 ・仕事探し戦略
・就職面接技術(ビデオ撮影付き模擬面接含む) ・適切な推薦 ・きちんとした服装・身なり
・自己開発 ・労働倫理の理解 ・職場定着戦略
(Goodwill Industries の資料から)


 2 ドイツにおける取組の例 (第9回布川委員提出資料から抜粋)

  (3)事例紹介と成果
 資料に、ヴァーレンドルフという小さな町の社会事務所で1998年に担当者からヒアリングした事例をあげています。

E.Eさん 母24歳、男児4歳の母子世帯、就労扶助に従事、
 収入・資産・児童手当220マルク、養育費立替支給329マルク
 5年前に妊娠のため、塗装工の職業訓練を中断。申請時は幼児を育児中のため職業斡旋不能と認定。申請から6日後に扶助支給決定。
 生活扶助基準額540マルク、医療保険料306.91マルク、就労扶助従事による増加需要218マルクを支給。その他、一時扶助として内装工事費、家具、被服費を支給。
 子供が3歳になり保育園に入ってから就労扶助で市営住宅のペンキ塗りの仕事(19条2項第2選択肢・プレミア形態の就労扶助)に従事し、仕事がうまく続いてきたので、今度は老人介護施設での調理の仕事(カリタスの老人介護施設での食事作りの補助仕事)で、協約賃金と社会保険加入が保障される就労扶助へ推薦できる。ただしこれは公募であるため、自分自身で書類を提出し応募することになる。
 市は郡からしばしば受給者の教育・職業訓練・家庭状況の報告を求められるが、郡はこの報告をもとに、郡に来ている求人と照合しながらその人に適した仕事を判断する。その時点で本人の希望も考慮する。その上で、郡が就労扶助に関して決定を行う。
 彼女が応募する就労扶助の財源は、(1)州の雇用創出プログラムから月額1080マルク、(2)郡からこれまでの社会扶助給付分、(3)カリタス(雇用主)から賃金コストの20〜25%が出される(雇用主の負担額は一人ひとり賃金額が異なるので、就労先によって異なる)。


 3 日本における取組の例 (第9回布川委員提出資料から抜粋)

生活保護と自立支援−釜ヶ崎支援機構の活動からみた生活保護の在り方−
 松繁逸夫(特定非営利活動法人釜ヶ崎支援機構事務局長)
2就労機会提供事業を軸に―釜ヶ崎支援機構の関わる事業(1)

 それでも、「高齢者清掃事業」が始まった当初や、毎年新規登録で新しく加わった人たちが、初めて実際に就労し、賃金をもらった時の表情や言葉は、本当に感動的なものです。
 「これで、久しぶりにお金出して、人間らしいものを食べられるわ」、「今日は風呂に入ってドヤに泊まろか」。就労に来たものの、体調がすぐれず、休憩していた人は、皆から病院へ行ったらと勧められたのに、「いや、このところロクなものを食べてなかったから、今日は、帰りに通天閣の下に行ってスシでも食べて栄養つけますわ」と答えていました。
 現実的な現金収入の面だけで、輪番労働者が喜び、助かっているわけではありません。輪番労働者が働く現場は、市有地や市の管理施設の除草・道路の清掃・児童遊園の美化作業、府有地や府の管理施設内の除草・府下幹線道路の河川敷の清掃などですが、定期的に「労働」することができ、仲間とわいわいできることで得られる働く人としての誇りの確認や満足、「輪番就労」という社会の中の一つのシステムに参加していることで得られるなんとはなしの安心感。これらが野宿生活者には得がたいものであるのです。

(中略)

 輪番就労で働く、労働者であるという、証明。社会的に認められた集団に、帰属していることの、証明。野宿生活者が、登録カードに見いだす意味づけは、野宿に至るまでの過程で、また、日々の野宿生活の積み重ねの中で失われたものを補填するものであるといえます。


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