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資料 2

研究の進展等に伴う見直しの論点について


1.基本的考え方

1 基本方針
2 本指針の適用範囲

遺伝情報(ジェネティック・データ)の定義について
<論点>
 ・遺伝情報について、その対象と定義をより明確化する必要があるか。
<対応案>
 ・基本方針の中でヒトゲノム・遺伝子解析研究は、「遺伝情報」が子孫に受け継がれ、個人の特質や体質を示すことを踏まえ実施することを、一層明確化することでよいか。

【対応のイメージの例】
1.基本方針
 本指針は、ヒトゲノム・遺伝子解析の過程を通じて得られる遺伝情報の特質を踏まえ、すべてのヒトゲノム・遺伝子解析研究に適用され、研究現場で遵守されるべき倫理指針として策定されたものである。本指針は、人間の尊厳及び人権が尊重され、社会の理解と協力を得て、研究の適正な推進が図られることを目的とし、次に掲げる事項を基本方針としている。

<注>
 本指針においては、研究の過程で得られる遺伝情報が提供者本人及び血縁者の遺伝的素因を明らかにする可能性があるという遺伝的特質、研究内容によっては提供者個人の問題にとどまらず、提供者が属する集団の性質等を特徴づける可能性があること等により、(後略)

14.用語の定義
(4)遺伝情報
 試料等を用いて実施されるヒトゲノム・遺伝子解析研究の過程を通じて得られ、又は既に試料等に付随している、子孫に受け継がれ得る情報で、個人の遺伝的特徴や体質を示すものをいう。

<関連規定>
【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

14 用語の定義
(3)ヒトゲノム・遺伝子解析研究
提供者の個体を形成する細胞に共通して存在し、その子孫に受け継がれ得るヒトゲノム及び遺伝子の構造又は機能を、試料等を用いて明らかにしようとする研究をいう。本研究に用いる試料等の提供のみが行われる場合も、含まれる。
(4)遺伝情報
試料等を用いて実施されるヒトゲノム・遺伝子解析研究の過程を通じて得られ、又は既に試料等に付随している個人の遺伝的特徴や体質を示す情報をいう。

【ヒト遺伝情報に関する国際宣言】

A.一般規定 第2条 用語の定義
(@)ヒト遺伝情報:核酸の解析又はその他の科学的解析によって得られる、個人の子孫に受け継がれ得る情報

プロテオーム情報について
<論点>
 ・プロテオーム情報について遺伝情報と同様に適正な取扱いを求める必要があるか。
<対応案>
 ・プロテオーム情報は、遺伝情報を遡ることなしに子孫に受け継がれ得ることを明らかにすることできないので、現行指針どおり、子孫に受け継がれ得るゲノム又は遺伝子に関する情報を明らかにする目的で研究が実施される場合のみ指針の適用を受けることとすることでよいか。
 ・プロテオーム情報に関する研究を実施し、偶然の事由により遺伝情報が得られた場合には、当該遺伝情報(遺伝情報を得るに当たって使用された試料を含む。)は匿名化して廃棄することとし、他の機関に提供する場合には連結不可能匿名化する手続きを規定することでよいか。

<関連規定>
【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

14 用語の定義
(3)ヒトゲノム・遺伝子解析研究
<本指針の対象とするヒトゲノム・遺伝子解析研究の範囲に関する細則>
1) 本指針の対象とするヒトゲノム・遺伝子解析研究は、提供者の白血球等の組織を用いて、DNA又はmRNAから作られた相補DNAの塩基配列等の構造又は機能を解析するものであり、その主たるものとして、いわゆる生殖細胞系列変異又は多型(germline mutation or polymorphism)を解析する研究がある。一方、がん等の疾病において、病変部位にのみ後天的に出現し、次世代には受け継がれないゲノム又は遺伝子の変異を対象とする研究(いわゆる体細胞変異(somatic mutation)を解析する研究をいい、変異の確認のために正常組織を解析する場合を含む。)、遺伝子発現に関する研究及びたんぱく質の構造又は機能に関する研究については、原則として本指針の対象としない。ただし、このような研究であっても、子孫に受け継がれ得るゲノム又は遺伝子に関する情報を明らかにする目的で研究が実施される場合には、本指針の対象とする。なお、本指針の対象としないこれらの体細胞変異、遺伝子発現及びたんぱく質の構造又は機能に関する研究においても、本指針の趣旨を踏まえた適切な対応が望まれる。

【ヒト遺伝情報に関する国際宣言】

A.一般規定 第2条 用語の定義
(@)ヒトプロテオーム情報:発現、修飾、相互作用を含む個人のタンパク質に付随する情報。

透明性の確保に関する視点
<論点>
 ・地域住民等、一定の特徴を有する集団を対象に研究を行う場合、研究の実施前及び実施中において関係者・集団の意見を聴く手続きを規定する必要があるか。
<対応案>
 ・地域住民等、一定の特徴を有する集団を対象にした研究を行うゲノム疫学研究おいては、地域及び集団の遺伝的特質を明らかにする可能性があることから、以下の内容を規定することでよいか。

【対応のイメージの例】
 研究責任者は、地域住民等、一定の特徴を有する集団を対象にした研究を行うゲノム疫学研究(※定義)を実施する場合、研究実施前に地域住民等を対象とする説明会等により、地域及び集団の遺伝的特質を明らかにする可能性や、研究の内容及び意義についてわかりやすく説明し、研究に対する理解の進展に努め、研究実施中も研究に関する情報提供を含め地域住民等との継続的な対話に努めなくてはならない。

ゲノム疫学
 生活習慣と病気の発症との関係等を探ることを目的に、地域住民等の集団(世代構造が明らかで追跡調査が可能な集団)を対象に、追跡調査を行う疫学的手法を用いたヒトゲノム・遺伝子解析研究。

国際共同研究における指針の運用の考え方について
<論点>
 ・相手国に指針がない場合や相手国の指針等と内容が異なっている場合にはおける我が国の指針適用の考え方について、見直す必要があるか。
<対応案>
 ・海外との研究のあり方(現行指針の細則の規定)について、わが国の基準に従わなくてよい例外の内容を以下の通り規定することでよいか。

【対応のイメージの例】
 海外研究の相手国で定める法令、指針等を遵守しつつ、原則として本指針の基準に従って研究を実施しなければならないが、特別の理由がある場合に限り、その理由及び相手国の研究機関において当該国の法令、指針等による倫理上の基準により以下の事項について適切な措置がとられていることについて、機関内の倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長が適当と判断した場合には、相手国の基準に従って研究を実施できる。
 (1)インフォームド・コンセントが得られていること
 (2)個人情報の保護が徹底されていること
 (3)人間の尊厳及び人権の尊重を含め、研究計画の科学的・倫理的妥当性について、相手国の国又は機関内の倫理審査委員会の承認を得ていること。

<関連規定>
【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

2 本指針の適用範囲

<細則2(海外との共同研究に関する細則)>
 1.海外研究機関と共同研究を実施する場合、海外研究の相手国においても試料等の提供の取扱い及びヒトゲノム・遺伝子解析研究の意義等に関して、本指針の定める考え方が遵守され、人間の尊厳及び人権が尊重されなければならない。
 2.海外研究の相手国で定める法令、指針等を遵守しつつ、原則として本指針の基準に従って研究を実施しなければならない。
 3.海外研究の相手国における基準が、本指針よりも厳格な場合には、その厳格な基準に合わせて研究を実施しなければならない。


2.研究者等の責務

3 すべての研究者等の基本的な責務
4 研究機関の長の責務
5 研究責任者の責務
6 個人情報管理者の責務

責任体制のあり方
 (1)研究機関の長の責務について
<論点>
 ・研究機関としての責務を規定することが必要ではないか。
<対応案>
 ・本指針は、研究に携わる人の遵守すべき内容及び各職務の責務を明らかにしており、「組織」で規定するよりも誰が責任をもって何をすべきか規定されていること、責任の観点からも最終的には研究機関(組織)の問題となることから、組織としての責務を規定する必要はないのではないか。
 ・ただし、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施に必要な責任は、細則において病院長、保健所長等と規定されている。研究機関の長の責務における「最終的な責任」とは、法人の長をイメージさせること、研究に限らず、施設整備のように他の業務にも共通する事項については、細則において例示される研究機関の長が単独で、あるいは最終的な責任を負っているとは必ずしもいえない可能性があることから、研究の的確な実施に最低限必要な責任として「全般的かつ統括的な責務」を有すると規定してはどうか。

<関連規定>
【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

4 研究機関の長の責務
(1)研究機関の長は、その機関におけるヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施に関する最終的な責任を有し、研究責任者及び研究担当者が研究計画に従って適正に研究を実施するよう監督しなければならない。(後略)

<研究機関の長に例示に関する細則>
 研究機関の長とは、例えば、以下のとおりである。
  ・病院の場合は、病院長
  ・保健所の場合は、保健所長
  ・大学医学部の場合には、医学部長
  ・企業等の研究所の場合には、研究所長

 (2)研究機関及び試料等提供機関の責務について
<論点>
 ・研究機関及び試料等提供機関の責務(匿名化作業等)分けて検討する必要があるのではないか。
<対応案>
 ・研究のための試料等の提供を行う試料等提供機関と、研究を行う機関(部門を含む)の責務を一層、わかりやすく規定することとしてはどうか。
 ・業務の外部委託は、匿名化された情報についてのみ可能とすることを原則とし、例外としては試料等提供機関において、遺伝情報等に係る個人情報を厳格に管理できる事業者による匿名化作業に限って委託できることとしてはどうか。
 ・個人情報管理者は、匿名化の対応表の遺失等によって研究の継続が不可能にならないよう、また個人情報の管理に支障が出ないよう、得られたインフォームド・コンセントの同意の書面、対応表等の保存・管理を、適切に行わなくてはならないとの規定を設けることとしてはどうか。

<関連規定>
【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

 研究機関の長の責務
(10)試料等の提供が行われる機関の長は、試料等を外部の機関(試料等の提供が行われる機関において、同時にヒトゲノム・遺伝子解析研究も行う場合は、その研究部門は外部の機関とみなす。)に提供する際には、原則として試料等を匿名化しなければならない。

<匿名化せずに行う外部の機関への提供に関する細則>
 提供者又は代諾者等が匿名化を行わずに外部の機関へ提供することに同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わずに、外部の機関に提供することが認められている場合には、試料等の匿名化を行わないことができる。


 研究責任者の長の責務
(6)研究責任者は、原則として、匿名化された試料等又は遺伝情報を用いて、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施しなければならない。

<匿名化を行わない研究に関する細則>
 提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、試料等又は遺伝情報の匿名化を行わないことができる。


(7)研究責任者は、匿名化されていない試料等又は遺伝情報を原則として外部の機関に提供してはならない。

<匿名化せずに行う外部の機関への提供に関する細則>
 提供者又は代諾者等が匿名化を行わずに外部の機関へ提供することに同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、匿名化されていない試料等又は遺伝情報を外部の機関へ提供することができる。

(6) 個人情報管理者の責務
 (1)個人情報管理者(分担管理者を含む。以下6において同じ。)は、原則として、研究責任者からの依頼に基づき、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に試料等又は遺伝情報を匿名化しなければならない。ただし、研究担当者等が補助者として匿名化作業を行う場合にあっては、それが適正に行われるよう、監督しなければならない。

<試料等の匿名化の例外に関する細則>
 提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、試料等の匿名化を行わないことができる。

 2)個人情報管理者は、匿名化の際に取り除かれた個人情報を、原則として外部の機関に提供してはならない。

<個人情報の外部の機関への提供に関する細則>
 提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、個人情報を外部の機関へ提供することができる。

 (3)個人情報管理者は、匿名化作業の実施のほか、匿名化されていない試料等を使用する研究担当者を適切に監督する等、個人情報が含まれている情報が漏洩しないよう厳重に管理しなければならない

14 用語の定義
(6)匿名化
 ある人の個人情報が法令、本指針又は研究計画に反して外部に漏洩しないように、その個人情報から個人を識別する情報の全部又は一部を取り除き、代わりにその人と関わりのない符号又は番号を付すことをいう。試料等に付随する情報のうち、ある情報だけでは特定の人を識別できない情報であっても、各種の名簿等の他で入手できる情報と組み合わせることにより、その人を識別できる場合には、組合せに必要な情報の全部又は一部を取り除いて、その人が識別できないようにすることをいう。匿名化には、次に掲げるものがある。
 連結可能匿名化
 必要な場合に個人を識別できるように、その人と新たに付された符号又は番号の対応表を残す方法による匿名化
 連結不可能匿名化
 個人を識別できないように、上記aのような対応表を残さない方法による匿名化

外部委託する際の手続きのあり方
<論点>
 ・業務の一部を外部に委託する際の手続きのあり方に関して整理する必要があるのではないか。

<対応案>
 ・業務の一部を外部に委託する場合には、委託する内容を委託側機関の機関内倫理審査委員会の承認を受けたうえで行うものとし、委託側機関の倫理審査委員会の審議結果に基づく委託であることを、受託機関側に明示することとしてはどうか。



7 倫理審査委員会の責務及び構成

多施設共同研究における対応について
<論点>
 ・共同研究等により、複数の研究機関が研究に参画する場合、機関ごとの対応(倫理審査等)を調整するための取組の必要があるか。

<対応案>
 ・複数機関が参画する共同研究やプロジェクトの場合、現行指針では各機関において独自に倫理審査を行うことが原則となっているが、特定の機関が研究全体の推進の管理の役割を担うような場合、他の参加機関の要請に応じて、特定の機関に設置された倫理審査委員会が研究計画全体について一括して審査を行い、その審査結果について、他の参加機関は、各自の機関特有の問題が無いと認める場合には、迅速審査を行えることが明らかになるよう規定することとしてよいか。

<関連規定>
【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

4 倫理審査委員会の責務及び構成
(4)研究機関の長は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究実施の可否等を審査するため、その諮問機関として、倫理審査委員会を設置しなければならない。ただし、試料等の提供が行われる機関が小規模であること等により、倫理審査委員会の設置が困難である場合には、共同研究機関、公益法人又は学会によって設置された倫理審査委員会をもってこれに代えることができる。

<細則1(倫理審査委員会の設置に関する細則)>
 研究機関に既に設置されている類似の委員会を本指針に適合する倫理審査委員会に再編成すれば、名称の如何を問わない。

<細則2(共同研究の取扱いに関する細則)>
 共同研究の場合には、研究計画についてそれぞれの研究機関において設置された倫理審査委員会の承認を得ることが原則であり、研究機関の長は、研究実施の可否の諮問に当たって、他の研究機関における研究計画の承認の状況、インフォームド・コンセントの状況、匿名化の状況等の重要な情報を得て、当該研究機関の倫理審査委員会にその情報を提供しなければならない。

【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

7 倫理審査委員会の責務及び構成
(5)倫理審査委員会は、その決定により、委員長があらかじめ指名した委員又はその下部組織による迅速審査手続を設けることができる。迅速審査の結果については、その審査を行った委員以外のすべての委員又は上部組織である倫理審査委員会に報告されなくてはならない。

<迅速審査に関する細則>
 1.迅速審査手続による審査に委ねることができる事項は、一般的に以下のとおりとする。
研究計画の軽微な変更の審査
既に倫理審査委員会において承認されている研究計画に準じて類型化されている研究計画の審査
共同研究であって、既に主たる研究機関において倫理審査委員会の承認を受けた研究計画を他の分担研究機関が実施しようとする場合の研究計画の審査


3.提供者に対する基本姿勢

8 インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセント取得等の手続きについて
(1)インフォームド・コンセント対応者の要件について
<論点>
 ・インフォームド・コンセントの取得手続きを研究責任者が全て実施することは実際上困難であり、研究責任者以外に適切に対応できる者を示しておく必要があるのではないか。

<対応案>
 ・試料等提供機関の研究責任者が、研究の内容、意義等を十分に理解し、提供者又はその代諾者等に適切に説明ができる者を研究者等から選定し、この者にインフォームド・コンセント取得にあたっての説明等を行わせることができることが明らかになるように、以下のように規定することとしてよいか。
 ・また、研修等により研究内容について知識を有する医師、看護師等医療従事者に当該説明を行わせることが可能であることを規定することとしてよいか。なお、試料等提供機関に属さない者についても契約により対応できるとしてよいか。
 ・ただし、これらの場合、研究計画書において、インフォームド・コンセント取得手続きに関わる者及びその選定理由を示し、倫理審査委員会の審査、機関の長の承認を受けることを要件とすることを規定することとしてよいか。

【対応のイメージの例】
 ・試料等提供者又は代諾者からインフォームド・コンセントを取得するにあたって、試料等提供機関の研究責任者は、自らが直接説明等を実施することが困難な場合、研究者等のうち、研究の内容、意義等について十分理解し、提供者又は代諾者等への説明が適切に行える者を選定すること。
 ・研修等により研究内容について知識を有する医師、看護師等医療従事者を、研究責任者の指導・監督の下、説明を行わせることができる。なお、これらの医療従事者が、試料等提供機関に属さない場合には、契約により当該説明を行わせることができる。
 ・なお、研究責任者が直接対応できない理由、対応者及びその選定理由、契約者の場合はその研修方法等について研究計画書に記載し、当該研究計画書は倫理審査委員会により承認され、研究機関の長に許可されなければならない。

<関連規定>
【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

第3 提供者に対する基本姿勢
8 インフォームド・コンセント
(2)研究責任者は、提供者に対して、事前に、その研究の意義、目的、方法、予測される結果、提供者が被る可能性のある不利益、試料等の保存及び使用方法等について十分な説明を行った上で、自由意思に基づく文書による同意を受けて、試料等の提供を受けなければならない。

(2)長期間継続する研究のインフォームド・コンセントのあり方について
<論点>
 ・長期間、継続的に実施する研究については、研究の継続性が機関としていかに確保されているかが、提供者にとっても関心事項であり、その点を明示すべきではないか。

<対応案>
 ・長期間継続する研究では、インフォームド・コンセント取得にあたっての説明において、通常の研究に必要とされる説明に加え、研究を継続して実施するために、必要な組織、体制等に対する研究機関としての考え方を説明することとしてよいか。



9 遺伝情報の開示

(個人情報保護法より整理)


10 遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリングの方法等について
(1)単一遺伝子疾患と多因子疾患における遺伝カウンセリングについて
<論点>
 ・遺伝子カウンセリングの対象とする疾患が、必ずしも明確になっていないのではないか。
 ・疾患を問わず、幅広く遺伝カウンセリングが求められている現状について検討すべきではないか

<対応案>
 ・単一遺伝子疾患、多因子疾患の別を問わず、遺伝性疾患であれば、遺伝情報を開示する際、診療を担当する医師との緊密な連携の下に開示するほか、必要に応じ、遺伝カウンセリングの機会を提供するという整理でよいか。

【対応のイメージの例】
 ・研究責任者は、遺伝性疾患に関する遺伝情報を開示しようとする場合には、医学的又は精神的な影響を十分考慮し、診療を担当する医師との緊密な連携の下に開示するほか、必要に応じ、遺伝カウンセリングの機会を提供しなければならない。
 ・研究責任者は、提供者又は代諾者等からのインフォームド・コンセントを受ける手続においては、提供者又は代諾者等に対し、十分な理解が得られるよう、必要な事項を記載した文書を交付して説明を行わなければならない。提供者が遺伝性疾患である場合には、遺伝カウンセリングの利用に関する情報を含めて説明を行うとともに、必要に応じて遺伝カウンセリングの機会を提供しなければならない。

遺伝性疾患
遺伝性疾患(genetic disease)は単一遺伝子病(メンデル遺伝病),染色体異常,多因子(遺伝)疾患の3群に分類するのが一般的である.病因となる遺伝子変異や染色体異常が親から子に垂直伝達される疾患群(inherited disease)だけではなく、親に遺伝子変異がなくても配偶子形成期に遺伝子変異が生じ、遺伝子変異をもつ配偶子が受精し遺伝性疾患の個体が発生する場合もある.後者の場合、遺伝子変異は親から子に垂直伝達されてはいないが遺伝性疾患である。家族性疾患という表現もあるが、これは必ずしも遺伝性を意味しない。遺伝性疾患のこともあるが、感染、催奇形因子などの外的要因が関与する場合もある。
(「遺伝学的検査に関するガイドライン」より)

<関連規定>
【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

第2 研究者等の責務
4 研究機関の長の責務
(11)試料等の提供が行われる機関の長は、必要に応じ、適切な遺伝カウンセリング体制の整備又は遺伝カウンセリングについての説明及びその適切な施設の紹介等により、提供者及びその家族又は血縁者が遺伝カウンセリングを受けられるよう配慮しなければならない。

<遺伝カウンセリング実施施設の紹介に関する細則>
 試料等の提供が行われる機関において、遺伝カウンセリング体制が整備されていない場合に、提供者及びその家族又は血縁者から遺伝カウンセリングの求めがあったときには、そのための適切な施設を紹介しなければならない。

5 研究責任者の責務
(3)研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の特殊性に十分配慮して研究計画書を作成しなければならない。特に、インフォームド・コンセントの手続及び方法、個人情報の保護の方法、研究により予測される結果及びその開示の考え方、試料等の保存及び使用の方法並びに遺伝カウンセリングの考え方については、明確に記載しなければならない。

8 インフォームド・コンセント
(6)研究責任者は、提供者又は代諾者等からのインフォームド・コンセントを受ける手続においては、提供者又は代諾者等に対し、十分な理解が得られるよう、必要な事項を記載した文書を交付して説明を行わなければならない。提供者が単一遺伝子疾患等である場合には、遺伝カウンセリングの利用に関する情報を含めて説明を行うとともに、必要に応じて遺伝カウンセリングの機会を提供しなければならない。

9 遺伝情報の開示
(4)研究責任者は、単一遺伝子疾患等に関する遺伝情報を開示しようとする場合には、医学的又は精神的な影響等を十分考慮し、診療を担当する医師との緊密な連携の下に開示するほか、必要に応じ、遺伝カウンセリングの機会を提供しなければならない。
<注>
 開示する遺伝情報がいかなる意味を持つかは、診療に属する部分が大きく、診療を担当する医師、特に遺伝医学を専門とする医師との緊密な連携が求められる。従って、診療を担当する医師が診療の一環として、研究責任者の依頼を受けて開示すること又はその医師の指示の下に研究責任者が開示すること等が考えられる。

10 遺伝カウンセリング
(1)目的
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究における遺伝カウンセリングは、対話を通じて、提供者及びその家族又は血縁者に正確な情報を提供し、疑問に適切に答え、その人たちの遺伝性疾患等に関する理解を深め、ヒトゲノム・遺伝子解析研究や遺伝性疾患等をめぐる不安又は悩みにこたえることによって、今後の生活に向けて自らの意思で選択し、行動できるように支援し、又は援助することを目的とする。

(2)実施方法
 遺伝カウンセリングは、遺伝医学に関する十分な知識を有し、遺伝カウンセリングに習熟した医師、医療従事者等が協力して実施しなければならない。

<注>
 試料等の提供が行われる機関の長に対する遺伝カウンセリング体制の整備等に関する事項は4(11)に、研究計画書における遺伝カウンセリングの考え方の記載に関する事項は5(3)に、インフォームド・コンセントを受ける際の説明事項及び遺伝カウンセリングの機会提供に関する事項は8(6)に、遺伝情報の開示の際の遺伝カウンセリングの機会提供に関する事項は9(4)に、それぞれ規定されている。


4.試料等の取扱い

11 研究実施前提供試料等の利用
12 試料等の保存及び廃棄の方法

同意撤回時の試料等の取扱いについて
<論点>
 ・同意が撤回された際の、提供者の情報・試料の取扱いについて、ユネスコの国際宣言では提供者の希望に基づいて処理することと規定されているが、これに合わせた対応とすべきか。
 ・廃棄の例外について判断するに当たって、研究責任者の判断に加え、倫理審査委員会の承認の手続きが必要とすべきか。

<対応案>
 ・現行では、同意撤回時には試料等を廃棄することが原則となっているが、提供者がその際の試料等の扱いについて廃棄以外の別の方法を求める場合には、安全面など特段の理由がないかぎり、その求めに応じてよいか。
 ・インフォームド・コンセントの撤回があった場合には、原則として当該提供者に係る試料等及び研究結果を匿名化して廃棄とするが、例外的に廃棄しないことを判断する場合には、倫理審査委員会の承認を得て、機関の長の許可の手続きを踏むこととしてよいか。

<関連規定>
【ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針】

8 インフォームド・コンセント
(5)研究責任者は、提供者又はその代諾者等からインフォームド・コンセントの撤回があった場合には、原則として、当該提供者に係る試料等及び研究結果を匿名化して廃棄しなければならない。

<廃棄の例外に関する細則>
 1.試料等及び研究結果の廃棄をしなくても差し支えない場合は、以下のとおりとする。
当該試料等が連結不可能匿名化されている場合
廃棄しないことにより個人情報が明らかになるおそれが極めて小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である場合等やむを得ない場合
 2.既に研究結果が公表されている場合は、研究結果については、廃棄しなくても差し支えない。

(6)
<説明文書の記載に関する細則(抜粋)>
 提供者又は代諾者等により同意が撤回された場合には、当該撤回に係る試料等及び研究結果が連結不可能匿名化されている場合等を除き、廃棄されること。

【ヒト遺伝情報に関する国際宣言】

C.処理 第9条【同意の撤回】
 (a)ヒト遺伝情報、ヒトプロテオーム情報又は生物学的試料が医学・科学研究のために収集される場合、そのデータが連結不可能匿名化されているときを除き、当事者は同意を撤回することができる。同意の撤回は、第6条(d)の規定に従って、当事者に対する不利益又は罰則のいずれも伴うべきではない。
 (b)当事者が同意を撤回する場合、連結不可能匿名化されているときを除き、ヒト遺伝情報、ヒトプロテオーム情報及び生物学的試料は利用されるべきではない。
 (c)連結不可能匿名化されていないデータ及び生物学的試料は、当事者の希望に従って処理されるべきである。ただし、当事者の希望が確認できない、実行に適さない、又は安全性に欠ける場合には、データ及び生物学的試料は連結不可能匿名化又は破棄されるべきである。



ヒトゲノム・遺伝子解析研究に資するバンクのあり方ついて
<論点>
 ・ヒト遺伝情報バンクの議論を現段階で進めるのは、バンクのイメージも固まっておらず、今後の研究の進捗も考えられるため、以下の点について議論するにとどめてはどうか。
(1)バンクの目的(バンクの役割、機能)
(2)インフォームド・コンセントの方法(利用目的の説明方法)
(3)バンクを運営実施するための要件(遺伝情報の管理方法等)


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