資料1−1 |
個人情報保護に関する法律は、「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)」及び「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(独立行政法人等個人情報保護法)」がある。
ここで、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(ゲノム指針)」とこれらの個人情報保護に関する法律の関係を整理すると、個人情報保護法第8条に「国は、・・・事業者等が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針の策定・・・を講ずるものとする。」とあり、国が指針を策定することが示されているが、ゲノム指針は、個人情報保護の徹底も含むものであるものの、人間の尊厳及び人権が尊重され、社会の理解と協力を得て、研究の適正な推進が図られることを目的として策定されたものであり、個人情報保護法に基づく指針ではない。
当該研究を実施する全ての研究機関等は、ゲノム指針の遵守が求められるものであるが、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法及び独立行政機関等個人情報保護法が適用されるそれぞれの研究機関等は、個人情報の取扱いにあたってはそれぞれに適用される法律を遵守する必要があることは言うまでもない。ただし、個人情報保護法の義務については、学術研究機関が学術研究の目的で個人情報を取扱う場合は、この義務の適用除外とされていることから、民間研究機関等においては、個人情報保護に関して努力義務が課せられている。
従って、ここでは、個人情報保護法の適用を受けない民間研究機関等が当該研究を行うことにも配慮し、ゲノム指針において、少なくとも個人情報保護法の趣旨を踏まえているか整理を行った。
○ | 定義 |
【個人情報の保護に関する法律】 (定義)
【行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律】
【独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律】
【指針】
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<整理すべき事項>
○ | 「個人情報」の定義について、匿名化された情報は匿名化の方法を問わず個人情報に該当しないと解釈してよいか。 |
→ | ・ | ゲノム指針の匿名化の定義では、他で入手できる情報と組み合わせることにより、その人を識別できる場合には、組合せに必要な情報の全部又は一部を取り除いて、その人が識別できないようにすることをいう。したがって情報を取り除くことが適切に行われる限り、個人情報ではないとすることが適切と考える。 |
・ | 加えて、ゲノム指針の匿名化の中で、連結可能匿名化は、必要な場合に個人を識別できるように、その人と新たに付された符号又は番号の対応表を残す方法によるものである。これは個人情報管理者以外の者にとって個人が識別されない状態にあることに変わりはない。このため、連結可能匿名化情報についても、情報を取り除くことが適切に行われている限り、個人情報管理者以外の者にとっては個人情報ではないとすることが適切と考える。 なお、ここでいう対応表は、個人情報管理者による人的管理はもとより、組織的、物理的管理等特別な管理が行われていることから、個人情報管理者以外には個人情報が識別されない状態が維持されていると考えられる。 |
○ | 指針の「個人情報」の定義では、「容易に」が含まれているが、行政機関又は独立行政法人等個人情報保護法と同様の定義とした場合には、民間事業者には個人情報保護法よりも厳しい定義が課せられることから、指針であることも考慮し、個人情報保護法と同様の定義とすることとし、現行どおりでよいか。ただし、この場合、行政機関個人情報保護法又は独立行政法人等個人情報保護法が適用される、これらの機関において混乱は生じないか。 |
○ | 利用目的の特定、利用制限、利用目的の通知について |
【個人情報保護法】 (利用目的の特定)
【指針】
第4・11 研究実施前提供試料等の利用
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<整理すべき事項>
○ | 代諾者等への同意について 法第16条では、本人の同意を得て個人情報を取り扱うことを規定しているが、指針では代諾者等の同意による利用も可能としている。 |
→ | 指針において、代諾者等の同意により個人情報の利用が可能となるには、
なお、逆に十分な判断能力を有しない本人に同意を求めることは、法第17条にも抵触する可能性が生じるのではないか。 |
○ | 利用目的変更時の本人同意について 法第15条では、個人情報保護の利用目的の特定、法第16条では、個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えた場合の利用に当たっての本人同意を、法第18条では、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、又は公表することを規定しているが、指針では、C群試料等(試料等の提供時に、研究に利用することの同意が与えられていない試料等)の利用にあたって、要件を定めて提供者等の同意を得ないで利用を可能としている。なお、この場合、指針第4・11の細則4・2)・dにおいて、研究の実施状況について情報公開を図ること、また提供者等に試料等の研究への利用を拒否する機会を保障するための措置を講じることを求めている。 |
→ | 本人の同意を得ないで試料等を利用する場合として、社会的利益の貢献が大きな研究に限定していることから、法第16条第3項第3号の例外規定の「公衆衛生の向上」に該当するものとして利用を認めることで整理してよいか。また、研究の実施状況について公表しており、変更された利用目的を公表していることで整理してよいか。 |
○ | 適正な取得 |
【個人情報保護法】 (適正な取得)
【指針】 |
<整理すべき事項>
○ | 指針において、試料等の提供を受ける場合は、インフォームド・コンセントを取得することを求めている。インフォームド・コンセントの取得にあたっては、説明文書により研究内容等について示すこととされており、当該文書は研究計画書において明記され、研究機関等の倫理審査委員会において審査され、かつ研究機関の長の許可を得るものであり、偽りその他不正の手段により個人情報を得ることは想定されず、指針において対応できていると整理してよいか。 |
○ | データ内容の正確性の確保 |
【個人情報保護法】 (データ内容の正確性の確保)
【指針】 |
<整理すべき事項>
○ | 指針に当該規定はないが、研究に用いるデータの正確性は必然のことであり、特段規定する必要はないとして整理してよいか。 |
○ | 安全管理措置 |
【個人情報保護法】 (安全管理措置)
【指針】
第2・5 研究責任者の責務
第2・6 個人情報管理者の責務
第4・12 試料等の保存及び廃棄の方法
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<整理すべき事項>
○ | 安全管理措置について、指針では研究機関の長が遺漏防止の措置を講ずること等が規定されているが、個人情報の遺漏防止は個人情報保護にあたって重要であると考えることから、どのような措置が必要であるのかを示すこととし、以下により対応することでよいか。 |
→ | (対応案)
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○ | 委託先の監督に係る規定については、指針に規定されていないことから、これらを指針の「研究機関の長の責務」に追加することでよいか。 |
○ | 第三者提供の制限 |
【個人情報保護法】 (第三者提供の制限)
【指針】
第3・9 遺伝情報の開示
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<整理すべき事項>
○ | 法第29条第3項及び政令第8条で、開示等の求めは、法定代理人または任意代理人によってすることができるとあるが、指針では任意後見人等の他に「親族またはそれらの近親者に準ずると考えられる人」というステイタスにあれば、本人の委任がなくても代諾者として開示を求めることができるとしている。 |
→ | 指針では、代諾者等は、本人にインフォームド・コンセントを与える能力がない場合に適切な者を選定できることとしており、従って、倫理審査委員会の意見を聴いた上で代諾者等に対して開示を認めることとしていること、法第23条第1項第2号及び第3号に掲げる場合であるかどうかも踏まえた審査が可能であること、また、個人情報取得の段階から、代諾者等又は本人に対し、インフォームド・コンセントが行われており、法第23条第2項に規定する条件(オプトアウトの条件)が満たされていることなどを考慮し、いわゆる「親族またはそれらの近親者に準ずると考えられる人」についても提供者の個人情報を提供することは妥当であると整理してよいか。 |
○ | また、指針では提供者の血縁者に、提供者本人の遺伝情報から導かれる遺伝的素因を持つ疾患や薬剤応答性に関する情報を伝えることができるとしている。 |
→ | この場合は、血縁者の生命に重大な影響がある可能性がある場合と規定しており、法第23条第1項第2号「人の生命・・の保護のために必要がある場合であって・・」に該当するものとして、開示を認めることで整理してよいか。 |
○ | 保有個人データに関する事項の公表等 |
【個人情報保護法】 (保有個人データに関する事項の公表等)
(保有個人データの適正な取扱いの確保に関し必要な事項)
【指針】
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<整理すべき事項>
○ | 指針では、説明文書の記載に関する細則において、一般的に記載すべき事項を示しているが、法第24条第1項第1号及び第3号に関して補足しておく必要があるか。 |
→ | ・ | 法第24条第1項第1号に関する補足事項 細則において、研究責任者の氏名及び職名について規定しているが、組織(研究機関の長)の氏名又は名称も追加するべきか。 |
・ | 法第24条第1項第3号に関する補足事項 開示等の手続き等については、「開示等の求めに応じる手続き及び手数料」の項を参照。 |
○ | 保有個人データの開示 |
【個人情報保護法】 (開示)
(個人情報取扱事業者が保有個人データを開示する方法)
【指針】
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<整理すべき事項>
○ | 法では、定められた場合を除き本人から開示要求があった場合には、開示しなければならないと規定しているが、指針では、提供者からの開示要求があった場合でも、遺伝情報を提供する意義がない場合で開示しないことを規定している。 |
→ | 指針でいう「意義」とは、予防、治療としての臨床的な意義のことと考えられる。従って、意義がないと認められる場合とは、法による不開示理由「本人または第三者の生命、身体財産その他の権利利益を害するおそれがある場合」、すなわち得られた研究結果の精度・確実性が不十分である場合、開示することにより本人に精神的負担等を及ぼす可能性が考えられることから、従来どおり開示しないとすることでよいか。 なお、「意義がない」との記載は、研究の意義がない等の誤解を招くおそれがあることから、指針においても法の規定にあわせて規定することとしてよいか。
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○ | 訂正及び利用停止 |
【個人情報保護法】 (訂正等)
【指針】
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<整理すべき事項>
○ | 研究の実施において取得したデータの取扱いにおいて、訂正等の規定を設ける必要があるか。 |
→ | 法第19条の概念と同様、研究結果の精度の問題から、特に規定がなくても、指摘された誤りが事実である場合は必然的に訂正されるものと整理してよいか。 |
○ | 法では、保有個人データの利用停止等行ったとき又は利用停止を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならないことを規定しているが、指針では、利用停止はインフォームド・コンセントの撤回であると考えられ、その場合には原則、試料等は廃棄することとしているが、本人に通知することまでは規定していない。 |
→ | 指針において、試料等を廃棄しないこと(連結不可能匿名化の場合やバンクへの提供など提供者から廃棄しないことの同意が得られている場合は除く。)又は廃棄したことについて通知することを規定しておく必要があるか。 |
○ | 開示等の求めに応じる手続き及び手数料 |
【個人情報保護法】 (開示等の求めに応じる手続)
(開示等の求めを受け付ける方法)
【指針】
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<整理すべき事項>
○ | 法では、開示等の求めを受け付ける方法を定めることができることを規定している。指針ではインフォームド・コンセント取得の際の説明文書に開示に関する事項を記載することを示している。 |
→ | 法ではあくまでも「方法を定めることができる」としていることから、インフォームド・コンセント取得の際の説明文書の記載事項において、インフォームド・コンセント撤回に関する事項に、「必要であれば撤回の求めを受け付ける方法を含む」こと及び開示に関する事項に、「必要であれば開示の求めを受け付ける方法を含む」ことを追記することで整理してよいか。 |
○ | 法では、開示にあたって、手数料を徴収することができることを規定していることから、開示手数料を徴収する場合は、インフォームド・コンセント取得時に提供者に説明することを追記することで整理してよいか。 |
○ | 理由の説明 |
【個人情報保護法】 (理由の説明)
【指針】
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<整理すべき事項>
○ | 指針において、試料等の提供を受ける場合は、インフォームド・コンセントを得ることを必要としており、利用目的を通知しないことは想定されない。 |
○ | 指針において、開示をしない場合は、インフォームド・コンセント取得時等に説明することを求めていることにより、既に対応されている。 |
○ | 提供者等からの訂正要求内容に対して訂正しない場合は、要求内容が事実でない場合が想定される。この場合、診療情報等に関する訂正要求内容が事実でないことを説明することは提供者等への精神的負担等になることがあり得るなど、慎重に配慮する必要があることから、訂正しない理由を説明することが必ずしも必要とは考えられず、指針には規定しないものとして整理してよいか。 |
○ | 指針において、インフォームド・コンセントの撤回の際に試料等の廃棄をしない場合(連結不可能匿名化の場合やバンクへの提供など提供者から廃棄しないことの同意が得られている場合は除く。)の理由については、提供者等に通知することが規定されていないことから、その理由を通知することを規定しておく必要があるか。 |
○ | 苦情処理 |
【個人情報保護法】 (個人情報取扱事業者による苦情の処理)
【指針】
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<整理すべき事項>
○ | 苦情処理については、指針においても規定されているところであるが、研究の円滑な実施のため、これ以上の詳細について規定する必要があるか。 |