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障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する議論の整理


 昨年4月より、障害者の自己決定を尊重し、利用者本位のサービス提供を基本とする支援費制度がスタートした。本検討会では、このような支援費制度が目指す理念を実現し、障害者(児)の地域生活支援の充実を図るための方策について、昨年5月以降、19回に渡り検討を進めてきた。以下は本検討会における主な議論の整理である。


1 地域生活を支えるサービス体系の在り方

(1)地域生活を支えるサービス体系(住・生活・活動等)の基本的な視点

  ○ 21世紀の共生社会では、障害のある人もない人も、地域で共に暮らし、共に働く社会を目指すべきである。

  ○ 障害者が地域で生活を送るためには、地域社会が障害のある人との共生を志向し、そのための施策の充実を含む様々な環境の整備を図りながら、障害者自身が主体性を持って生活を送るための力をつけていくことが必要である。
 また、障害者が主体性を持って力をつけていくことを促す観点から周囲の人々の理解が重要となる。

  ○ 障害者が地域で暮らす上でのニーズは、住まいの確保、生活支援、就労等の活動支援、社会参加、相談支援、権利擁護など広範な領域にわたるものであり、施設の在り方も含め、地域生活を軸にサービス体系全体を再検討することが重要である。その際、障害別に分立している福祉法制の総合化や、所得保障の確立、扶養義務の範囲の見直しや、障害の定義の見直しなど、基本的な課題の解決が重要であるとの意見があった。

  ○ 地域性や専門性等に応じて市町村域、障害保健福祉圏域、都道府県域ごとに、適切なサービスや障害種別を越えて総合的に相談支援を行う機能を重層的に整備することが必要である。

  ○ 障害者の地域での暮らしを推進するため、地域生活の体験の場など施設から地域生活への円滑な移行を支援するための施策の充実を図るとともに、地域生活を安定的に継続、維持するため、入所施設サービスから地域生活支援サービスへと財源の比重を移すことが必要である。

  ○ 今般の障害者基本法の改正を踏まえ、都道府県や市町村は障害者計画等に障害者の地域生活支援を進めるための具体的計画を明記することが必要である。

(2)住居支援

  ○ 入所施設やグループホーム等からの移行先として、希望する者には、民間アパートや公営住宅で安心して暮らすことができるよう、本人や家主に対し緊急時に対応できる地域の支援体制を推進すべきである。
 また、必要な戸数の公営住宅を整備していくことが必要であるとの意見があった。

  ○ 現行のグループホームでは、軽度の障害者から介護が必要な重度障害者まで、様々な障害レベルの障害者が暮らしている。そのため、より多様な障害者のサポートが可能となるよう障害程度やライフステージなどに応じて必要なサービスを提供できる新しいタイプのグループホームの類型を検討すべきである。

(3)居宅生活支援

 (1) ホームヘルプサービス

  ○ 支援費制度において、ホームヘルプサービスについては、障害者が地域で暮らすに当たって重要なサービスであると位置づけられる。

  ○ ホームヘルプサービスの利用量については、現在、市町村間に大きな地域格差があることから、サービスの底上げを図る必要がある。その際、デイサービス等他のサービスとの役割分担の見直しや国・都道府県の適切な支援が求められる。

  ○ 人口当たり利用者数や一人当たりサービス利用量が大きく増加しており、例えば、児童ホームヘルプサービスの利用量の増加については、デイサービスやショートステイ等がうまく使えていないことが原因であるという面もある。このため、例えば、地域の特性に応じて柔軟な対応が可能となるよう、児童デイサービスについて中高生の利用を認める等の規制緩和を検討するなど、ホームヘルプサービスと他のサービスとを適切に選択できる体制を整えることが必要である。

 (2)ガイドヘルプサービス

  ○ ガイドヘルプサービスの範囲については、障害特性を考慮するとともに、サービス提供の公平性や社会通念上の相当性を踏まえた上で、検討すべきとの意見があった。
 なお、「社会通念上の相当性」については、「社会通念」とは何かということについてのコンセンサスや「相当性」についてのもの差しを作って行くことが重要であるとの意見や、1975年の国連の障害者の権利宣言(注)を踏まえて検討すべきであるとの意見があった。

  ○ ガイドヘルプサービスの単価については、身体介護の有無で大きな単価差があるが、有無の基準が必ずしも明確ではないため、区分の是非も含め、その在り方の見直し及び長時間利用に係る加算単価の見直しを検討すべきである。

  ○ 事前に支給決定が必要な支援費制度によるガイドヘルプサービスでは、視覚障害者等のあらかじめ予期できないニーズに臨機応変に応えられない面があることを踏まえ、社会参加を支援する事業者の活用などにより、障害特性に応じたニーズにも柔軟に対応できる仕組みへの移行の在り方を検討すべきである。

  (注)障害者の権利宣言(抄) 1975年12月9日 国連総会決議3447
 障害者は、人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有している。障害者は障害の原因、特質及び程度にかかわらず、同年齢の市民と同等の基本的権利を有する。このことは、まず第一に、可能な限り通常のかつ十分に満たされた、相当の生活を送ることができる権利を意味する。

 (3)視覚・聴覚障害者等の情報・コミュニケーション支援

  ○ ノーマライゼーションの理念の下、生活のあらゆる場面で、情報・コミュニケーションが保障されることが重要であり、対人サービスとしての福祉施策での取組みにとどまらず、あらゆる公的分野をはじめ、民間を含めた取組みが期待される。

  ○ 情報・コミュニケーション支援については、就労・就学・在宅での支援を一層推進すべきであり、視覚・聴覚障害者に対する手話、要約筆記、音訳、点訳、代筆、代読等の拡充と、支援を行う人材の育成・確保が重要である。

  ○ 情報・コミュニケーション支援にあっては、技術革新により、利便性が飛躍的に向上する可能性と、その反面、障害者に情報格差が生じるおそれの両面があり、情報化・電子化の進展に伴い、支援の内容を絶えず更新していく工夫とともに、ユーザー自身の力を育てることが必要である。

(3)就労支援

  ○ 障害者が、社会を支える一員となり、誇りを持って生きていけるようにすることは非常に重要であり、障害者が働くことを、行政の力のみならず、障害者の就労支援を行う事業者と企業の協働により支援する体制整備を推進すべきである。

  ○ 授産施設等から企業等での就労への円滑な移行が可能となるよう、地域における就労支援機能の一層の充実、企業等へ就労した場合のジョブコーチ等による継続的支援、離職した後の再訓練など一連の就労支援システムの構築について検討すべきである。

  ○ 障害者の多様な働き方の一つとして、在宅就労を活用することが重要であり、このため、障害者の仕事の受発注や技能の向上に係る援助を行う支援機関の育成や、支援等の充実を図ることが必要である。

  ○ 障害者が社会経験の機会を持ち、知識・情報を得ることが就労支援につながる面があることから、このような障害者をエンパワメントする施策の充実について検討するとともに、その一環として、障害者がホームヘルパーの資格を取得し働くための支援などについて検討すべきである。



2 サービスを適切に供給するシステムの在り方

(1)ケアマネジメントの必要性

  ○ 地域生活を総合的に支援するため、障害者のサービス利用を促進するとともに、本人のニーズを的確に把握し適切なサービスを提供し、また効果的な社会資源の開発などサービス基盤の充実を促すシステムとして、ケアマネジメントの制度化の方向で検討を進める必要がある。その際、本人の主体性や自立性を尊重したものとしていかなければならず、ケアマネジメントを制度化した場合でもその利用を義務付けず、本人に強制することがあってはならない。
 なお、ケアマネジメントの実施主体としては、例えば、市町村障害者地域生活支援事業、障害者(児)地域療育等支援事業の実施者、在宅介護支援センターなどが適当であるとの意見があった。

  ○ 障害者の場合、ケアマネジメントの範囲としては、重点的に介護を必要とする高齢者と異なり、支援費等の公的サービスのみならず、就労などの広い分野を対象とするため、ケアマネジメントを担う者の専門性を制度的に担保する仕組みについて、人材育成も含め検討すべきであるとの意見や、ケアマネジメントの概念については、必ずしも明らかになっていないため、例えばソーシャルケースワークとの概念的な整理が必要であるとの意見があった。

  ○ 地域の資源を効果的かつ公正にマネジメントするためには、ケアマネジメントについて、客観性・中立性があることが第三者からも明らかであり、マネジメントのプロセスをチェックできる仕組みが必要である。

  ○ 障害者自らがケアマネジメントする方が適切である場合もあることから、セルフケアマネジメントができる仕組みも導入すべきである。

(2)権利擁護等の在り方について

  ○ 障害者の地域での暮らしを支援するため、地域で暮らす障害者の権利擁護を必要とするケースや、その解決方策等の知識の普及を図るとともに、地域福祉権利擁護事業や成年後見制度などの事業について一層の利用の促進を図るための方策を検討すべきである。
 さらに地域や施設で暮らしている障害者の虐待等様々な権利侵害に対する防止や、救済の仕組みについて、検討する必要がある。



3 サービス供給を支える基盤の在り方

(1)人材の育成・確保について

  ○ 支援費制度の事業者については、今後の更なるサービス利用に応えるため、参入促進が必要である一方、事業者の質と効率性の向上を図るため、第三者評価や苦情解決の仕組みの強化を検討すべきである。

  ○ 高齢者のサービスにはないガイドヘルプ、日常生活支援などは、地域によっては不足しているが、専門性の必要な分野とそうでない分野を分けた上で、公費である支援費の支給先としての透明性を確保しつつ、多様な主体によるサービスの提供や多様な支払方式も検討すべきである。

(2)財源・利用者負担等の在り方

  ○ 支援やサービスの充実は重要であるが、どのような支援が障害者には必要で、そのためにはどれくらい費用が必要なのかについて、社会的合意を図る必要がある。

  ○ 支援費制度については、その運営状態を十分踏まえた上で、利用条件や単価設定を見直し、より効率的にサービスが提供できる仕組みを検討すべきである。

  ○ その上で、国は国庫補助金の所要額の確保に最大限努力すべきである。また、都道府県や市町村においても、所要額の確保に最大限配慮することが求められる。

  ○ 利用者負担については、成人障害者の扶養義務者負担の見直しを含め、利用者本人を中心とするものへの変更を検討する一方で、現行の障害基礎年金等の給付水準など障害者の負担能力に配慮しつつ、施設入所の場合と地域で暮らす場合の負担のバランスや受けたサービスの量とのバランスを踏まえた適正な負担の在り方を検討すべきである。



照会先
[障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会事務局]
  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課企画法令係
TEL 03−5253−1111(内線3043)
FAX 03−3591−8914


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