輸血用血液等の遡及調査に関するガイドライン
(1) | 遡及調査期間 病原体はその種類によって生体内での増殖速度、ウインドウ期間、検査法によって陽性になる期間がそれぞれ異なる。したがって、病原体の種類及び検査法による陽性時期等に基づいて遡及調査期間を設定した(資料添付)。
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(2) | 検体及び記録の保管 本ガイドラインに示す遡及調査措置がとれるよう、献血血液の検体、原料血漿の保管を行うこととする。また、献血者、輸血用血液、原料血漿の供給及び使用に関する記録等を保管することとする。なお、献血血液の検体及び記録の保管期間は、法令等の規定によるものとする。 | |||||||||||||||||||||||||
(3) | 感染・伝播拡大防止のための通知 遡及調査が必要となる事実を知り得た時点で、当該輸血用血液の供給を中止するなど、当該輸血用血液の使用による感染・伝播の拡大防止を講ずることとする。 また、遡及調査対象となった輸血用血液や原料血漿が供給されている関連医療機関や分画製剤製造業者には、速やかに通知することとする。 | |||||||||||||||||||||||||
(4) | 感染に係る検査方法 保管検体を使用した感染に係る検査及びその評価は、その時機における最新の適切な技術を用いて行わなければならない。 | |||||||||||||||||||||||||
(5) | プライバシーの保護 遡及調査を行うにあたり、献血者、輸血用血液を投与した受血者(患者)に係る情報等の取扱いに関し十分に配慮し、そのプライバシーの保護を確保することとする。 | |||||||||||||||||||||||||
(6) | 遡及調査の記録と保存 遡及調査の結果はすべて記録し、保存しなければならない。 なお、記録の保管期間は、法令等の規定に準ずるものとする。 | |||||||||||||||||||||||||
(7) | 遡及調査体制の整備 本ガイドラインの実施にあたり適切な体制を整備することとする。 |
資料1-1 |
病原体 | 50プールNAT陽転時 | 血清学的検査陽転時 |
HBV | (1)HBc抗体(EIA法等)が検出された場合 可能な限り過去に遡り、保管検体の個別NATが陰性と判定されるまですべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。 (2)HBc抗体(EIA法等)が検出されない場合 遡及期間は125日以内とする。遡及期間内の過去の直近(前回)及び前回から過去92日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。 |
(1)HBc抗体のみが陽転した場合 可能な限り過去に遡り、保管検体の個別NATが陰性と判定されるまですべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。 (2)HBs抗原またはHBs抗原とHBc抗体が陽転した場合 可能な限り過去に遡り、過去の直近(前回)及び前回から過去92日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。 |
HCV | 遡及期間は192日以内とする。 遡及期間内の過去の直近(前回)及び前回から過去50日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。 |
可能な限り過去に遡り、過去の直近(前回)及び前回から過去50日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。 |
HIV | 可能な限り過去に遡り、過去の直近(前回)及び前回から過去58日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。 | 可能な限り過去に遡り、過去の直近(前回)及び前回から過去58日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。 |
梅毒 | 可能な限り過去に遡り、過去の直近(前回)及び前回から過去35日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する(ただし、4日以上冷蔵保存されていた全血・赤血球製剤を除く)。 |
注) | 前回検体が2000年2月以前(50プールNAT開始前)の場合は、保管検体のNAT陰性時点から、そのウインドウ期間(HBV:68日、HCV:46日、HIV:52日)まで遡る。 |
資料1-2 |
資料1-3 |
資料1-4 |
資料1-5 |
資料-2 |
資料3 |
資料4 |
個別 NAT |
個別NAT (-) |
50プール NAT |
50プール NAT(-) |
血清学的検査 | 50プール NAT(+) |
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WP | 遡及期間 | WP | 遡及期間 | WP | 遡及期間 | |
HBV | 34日*1 | 68日 | 46日 | 92日 | 80(44〜125)日*2 | 125日 |
HCV | 23日*1 | 46日 | 24.8日 | 50日 | 82(54〜192)日*1 | 192日 |
HIV | 11日*1 | 52日*3 | 14日 | 58日*3 | 22(6〜38)日*1 | 68日*3 |
梅毒 | 21〜35日*4 | 35日 |
*1 | Schreiber GB et al. The risk of transfusion-transmitted viral infection.N Engl J Med. 1996;334:1685-90. |
*2 | 50-pool NAT陽性者の追跡調査結果に基づくRPHAのウインドウ期の推定値 |
*3 | 感染性ウインドウ期間を考慮した遡及期間、今井光信.ヒト免疫不全ウイルス.改訂版 日本輸血学会認定医制度指定カリキュラム.日本輸血学会認定医制度審議会カリキュラム委員会編.2003:285-288. |
*4 | Orton S. Shyphilis and blood donors: what we know, what we do not know, and what we Need to know. Transfusion Medicine Reviews 2001;15:282-91. |
資料5 |
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病原体 | 倍加時間 | 50倍増殖時間 | 個別NAT(+) | 50-pool NAT WP | ||||
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HBV | 2.0日 | 12日 | 34日 | 46日 | ||||
HCV | 0.3日 | 1.8日 | 23日 | 24.8日 | ||||
HIV-1 | 0.5日 | 3日 | 11日 | 14日 | ||||
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個別NAT(+)時点の日数にウイルスが50倍以上に増殖する日数を加算したものが、50-pool NATの検出時期に相当する。その期間未満が50-pool NAT WPと推定される。 |
遡及調査概要フロー |
献血者から始まる遡及調査
(血清学的検査陽性)
○過去に献血された血液について調査する |
献血者から始まる遡及調査
(50プール核酸増幅検査【NAT】陽性)
○過去に献血された血液について調査する |
献血者から始まる遡及調査
(献血者等から感染症情報が得られた場合)
○過去に献血された血液について調査する |
医療機関からの感染情報(輸血用血液の使用)
に基づく遡及調査(HBV・HCV・HIV)
○過去に献血された血液について調査する |