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(障害者施策における対応)
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一方、障害者施策の観点からは、1996年(平成8年)6月の身体障害者福祉審議会の意見具申において、
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「介護に対するニーズは、年齢や障害の原因を問わず、すべての国民が・・(中略)・・共通して必要なものであり、地域における要介護者の支援体制は、高齢者・若年者にかかわることなく整備していく必要がある」とした上で、 |
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「しかしながら、障害者施策のうち、介護ニーズへの対応について介護保険制度に移行すること」については、「なお検討すべき 点も少なくなく、また、これらの点についての関係者の認識も必ずしも一致していない」ことから、さらに十分に議論を重ねていくべき課題であるとされた。 |
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(介護保険制度の優先適用)
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その後、介護保険法の制定にあわせ、身体障害者福祉法等の中に介護保険制度による給付と障害者福祉制度による給付との調整規定が設けられ、両者に共通するサービスについては、介護保険制度から給付されることとなった。これは、高齢障害者の介護サービスについては、介護サービスに関する一般制度である介護保険制度を優先して適用するという趣旨であった。
例えば、身体障害者約350万人のうち約6割(約210万人)が65歳以上であるが、これらの高齢障害者の介護サービスは介護保険制度から給付され、重複するサービスは障害者福祉制度からは給付されない。その結果、高齢障害者の大半は介護保険制度のサービスを利用している状況にある。
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ただし、介護保険制度にはない「ガイドヘルプ(外出支援)サービス」などの障害者福祉サービスを利用できるほか、全身性障害者については、介護保険制度の支給限度額を超えるサービス利用分について、引き続き障害者福祉制度から必要なサービスを提供できることとされている。 |
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(支援費制度の導入)
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障害者施策においては、2003年(平成15年)4月から支援費制度が導入された。
支援費制度は、身体障害者及び知的障害者に対するサービスについて、それまでの「措置」制度を改め、利用者とサービス提供者間の「契約」によることとし、その費用を市町村が支給する制度である。サービス利用を「契約方式」とする点において介護保険制度と理念を共通にするものであるが、制度的には、財源はすべて公費(税)としていること、要介護認定やケアマネジメントが制度化されていないこと、利用者負担は応能負担であることなどの違いがある。
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この支援費制度の施行に伴い、障害者の在宅サービスは急増し、初年度(平成15年度)の給付費は対前年度比で6割増となっている。こうした状況に対して、障害者の地域生活を支援する観点から評価する声がある一方で、財源不足をはじめ財政基盤をめぐる懸念が急速に高まっている。 |
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(支援費サービスの利用者数)
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ここで、支援費サービスの現状を見てみる。平成13年の全国調査によると、身体障害者(児)は、総数で約350万人(平成13年)、18歳以上65歳未満の者は約120万人である。また、知的障害者(児)は、総数で約46万人(平成12年調査)、18歳以上65歳未満の者は約21万人である。そのうち、支援費制度によるサービスを利用している者は、在宅・施設を合わせて約32万人(平成15年4月分、一部利用者の重複計上を含む)となっている。 |
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(利用者別にみたサービス利用状況)
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全国107市町村からの報告(平成16年1月サービス分)によると、18歳以上65歳未満の在宅の身体障害者のうち支援費サービスを利用している者は約6%(全国数で推計すると約7万人)であり、在宅サービス利用月額は平均10.7万円である。その分布状況を見ると、5万円未満の層(45.2%)や5〜10万円の層(20.6%)が多数を占めている。35万円を超える利用者は、全体の5.2%であるが、この層の利用者によって、費用総額の31.9%が使用されており、利用状況のばらつきが大きい。
同報告で、18歳以上65歳未満の在宅の知的障害者の場合は、支援費サービスを利用している者は約55%(全国数で推計すると約10万人)、在宅サービスの利用月額は平均14.6万円である。その分布状況を見ると、15〜20万円の層(43.3%)や10〜15万円の層(20.4%)が多数を占めている。35万円を超える利用者は、全体の1.0%であり、この層の利用者によって、費用総額の3.2%が使用されている。 |
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(地域格差が大きい「サービス基盤」と「サービス利用状況」)
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市町村でのサービス基盤の整備状況(平成15年4月)について見ると、身体障害者に対するホームヘルプサービスを提供した市町村は73%、デイサービスでは36%、ショートステイでは27%である。知的障害者に対するサービスに関しては、ホームヘルプサービスでは47%、デイサービスでは26%、ショートステイでは45%となっている。このようにサービスを未だに提供していない市町村が多数存在しており、全国的にみて普遍的にサービスが提供されている状況にはない。
また、人口当たりのホームヘルプサービスの利用者割合(平成15年4月)を都道府県単位で算出し最大と最小を比較すると、身体障害者ホームヘルプサービスで5.5倍、知的障害者ホームヘルプサービスで23.7倍となっており、サービス利用量の地域間格差も依然として大きい。 |
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(精神障害者・障害児福祉サービスの課題、「制度の谷間」問題)
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さらに、精神障害者は、介護保険制度のみならず、支援費制度の対象にもなっておらず、在宅サービスをはじめサービス基盤の整備は大幅に立ち遅れているのが実情である。
また、18歳未満の障害児の場合も施設サービスは、支援費制度の対象とはなっていない。このように未だ制度的には、障害種別に基づく縦割りの取扱いが残っている状況がある。
加えて、65歳未満の者の中には、要介護状態であるにもかかわらず、公的サービスを受けられないケースが存在する。例えば、高次脳機能障害や難病に伴う身体等の障害、成人期以降に発生した知能の障害を有する者については、障害福祉各法による「障害者」と認められず、福祉サービスの対象とならない場合がある。介護を必要とする理由や年齢の如何を問わず普遍的に介護サービスを提供する制度が存在しないことから、こうした「制度の谷間」の問題が生じている。 |
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