04/07/23 日本脳炎に関する専門家ヒヤリング会議議事録                  日本脳炎に関する専門家ヒアリング会議 議事録                   開催日時:平成16年7月23日(金)9:30〜12:30                            於:経済産業省別館920号室                   議事次第 1.開会 2.議題   (1)日本脳炎ワクチンの在り方について   (2)その他 ○江崎課長補佐  それでは、定刻でございますので、ただいまより「日本脳炎に関する専門家ヒアリン グ会議」を開催させていただきます。  開催に当たりまして、結核感染症課の牛尾課長よりごあいさつさせていただきます。 ○牛尾結核感染症課長  おはようございます。結核感染課長の牛尾でございます。  本日は、大変お忙しい中、早朝よりお集まりいただきまして、ありがとうございま す。 また、先生方には平素より、予防接種行政の推進に御尽力いただいておりますこ とを改めて御礼申し上げます。  私の方からは、本日の会議の経緯及び背景につきまして、簡単に御説明させていただ きたいと思います。  去る6月4日に、厚生科学審議会の感染症分科会が開催されました。その中におきま して、日本脳炎の予防接種について御説明させていただいたところでございます。  具体的には、まず1番としまして、平成15年度に日本脳炎ワクチン接種後に6件のA DEM、急性散在性脳脊髄炎の症例が報告されたということ。これにつきましては、地 域的、あるいはロットの偏りがないかということは調べさせていただきましたが、それ はなかったということが判明しております。  ただ、同時に現在の日本脳炎のワクチンの安全性と有効性に関する科学的知見に照ら せば、今後も定期的な予防接種において使用を継続することが妥当というふうに一旦は 考えたわけでございますが、同時により安全性の高いとされている開発中の組織培養ワ クチンへの切り替えを早急に図っていく必要があるのではないかなというふうに考えた ところでございます。  本日の会議でございますけれども、専門家の皆様方にお集まりいただきまして、この 際と申しますか、改めて日本脳炎ワクチンの在り方について御意見を伺う機会を設けた いということを感染症分科会の場で申し上げた次第でございます。そして、今日のヒア リング会議に至ったわけでございます。  今日はそういう意味で非常に広範な分野の先生方から御報告をいただくことにしてお りまして、それに基づきまして、今後の行政判断の参考とさせていただきたいというふ うに思っております。  最後に、先生方からのフリーディスカッションをさせていただきたいというふうに思 っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○江崎課長補佐  本日の会議の進行は、結核感染課の方が事務局としてさせていただきます。  本日の議論の内容でございますが、まず最初に参考人として出席をしていただいてい る、先生方に、本日のテーマに沿っていただいて発表していただきます。その後、フリ ーディスカッションという形で質疑、御意見等を賜りたいと思っております。どうぞよ ろくしお願いいたします。  それでは、まず最初に、感染症研究所感染症情報センター長の岡部先生から発表をお 願いしたいと思います。 ○岡部委員   (PW)  感染研情報センターの岡部です。私たちのところでは、日本脳炎は感染症発生動向調 査の対象疾患として患者数の把握をしているのと一緒に、感染症流行予測事業というの がありまして、健康者の方々の血清疫学調査をやっているのと同時に、感染源調査とい うのもありまして、ウイルスなどの存在状況チェックもやっております。日本脳炎につ きましては、血清調査とともに、ブタの日本脳炎ウイルスに対する抗体の保有状況をチ ェックしております。その結果を総合して情報センターでまとめたものがありますの で、それを御紹介致します。 (PW)  これは、長崎大学五十嵐先生からいただいたスライドで、日本脳炎の患者さんです。 非常に重症な疾患であり、基本的に治療方法はなく、予防が重要であるということが前 提にある疾患であります。(PW)  これが我が国における、1940年代からの報告症例数を記してあります。1980年代にな ると、患者数が非常に少なくなっています。報告のやり方が多少違っているのはありま すけれども、全体としては1960年代から患者数の減少が見られております。この下のカ ラムにその時々のことが書いてありますけれども、日本脳炎のワクチンは1954年から勧 奨接種になり、1967年から75年の間が特別対策といったような形での接種、そして1976 年から定期接種になっております。また、それまで使われていた中山株というのから、 1989年に北京株というものに変わって接種量も1.0mlから0.5mlに変わっております。 ちょうどこの時期になりますけれども、患者数の減少は1980年後半の方からは特に著し く、現在は大体年間に10例いかないといったようなところで落ち着いている状況にあり ます。 (PW)  年齢別にこの報告のあった患者数を1980年から2003年で見てみます。もともとが小児 の病気および高齢者の病気ということでしたが、最近では低年齢層での患者数は極めて 少なくなっておりまして、その発生数は決して多い数ではないけれども、出るとすると 主に高齢者となっております。 (PW)  次は日本脳炎ワクチン接種率及び日本脳炎中和抗体陽性率などを、感染症流行予測調 査事業からまとめたものです。全国からボランティアベースでいただいた方々の血清中 の日本脳炎の中和抗体陽性率および日本脳炎ワクチン接種率を見たものです。 (PW)  協力を得られているのは全県ではないので、サンプリングのようにして得られている 県における日本脳炎のワクチンの接種率です。接種率は、少なくとも1回以上接種した ものの割合ということにしてあります。全部の数がそんなにたくさんの検体数が得られ ていませんので、はっきりと出たものではなく、また、その中には不明というふうな記 載も多ございますので、全体の傾向はなかなかつかまりにくいということがありますけ れども、例えば、東京、香川で言えば、年齢が上がってくればワクチン接種者の数が増 えてくるということが見られております。 (PW)  これはワクチン接種歴別にみた、ワクチン接種者、ワクチン非接種者における抗体の 陽性率ということを見ています。中和抗体価で見ていますけれども、明らかにワクチン 接種者の方に高い抗体保有状況であるといえます。詳細な検討をしなくてはいけないん ですけれども、非ワクチン接種者にも、時に陽性者が出てくるということがあります。 (PW)  調査年別の日本脳炎ウイルス中和抗体陽性率が年齢別に分けてあります。ざっと見る と、各年ともに低い年齢層では比較的いい抗体保有率があり、当然のようですけれど も、ワクチン接種を受けてない年齢、かつて日本脳炎が我が国にあった時代の抗体陽性 者の動きがきれいに出ております。したがって、20代が少し減っているというのは見ら れますけれども、日本脳炎の発生として問題になるような年齢層での抗体保有状況は、 全体としてまあまあというところが言えるといいように思います。 (PW)  これは日本脳炎ウイルスの平均抗体価でありますけれども、ワクチン接種者の平均抗 体価としては高いところにあります。非接種者の場合にも、先ほど申し上げたように、 陽性者が出てくることがありますが、平均抗体価は、有意な高さを持って接種者の方が 高いということが言えると思います。 (PW)  一方、宿主でありますブタの日本脳炎ウイルスの、HI抗体で陽性率を地区別、月別 に追っていったものであります。 (PW)  それを時間系列で示したものです。 (PW)  ちょっと細かいスライドになりますけれども、1972年から、ずっと毎年毎年の状況に ついて、2002年まで置いてあります。括弧内にあるのは、患者数です。  例えば、2002年は8といったような数がここに見られておりますが、細かい数字は資 料の方をごらんになってください。いずれにしても、この赤い方が陽性の割合の高いと ころと、色が薄くなるにつれて、その抗体が低くなってくる状況。あるいは、この真っ 白けでやってあるのは調査をしていないところなので、不明であるといったようなのが ありますけれども、一言で言えば、南の方がブタの抗体陽性状況は高いといえます。現 在でもブタでは抗体陽性ブタがある。つまり、ブタの間では日本脳炎ウイルスの感染を 受けているということが証明されます。 (PW)  それを、1994年、暑夏と冷夏といったようなことで、たまたま94年、93年というとこ ろで比較してみると、暑い夏の方がブタの抗体陽性状況は高いといったようなことが、 この図からは見られます。 (PW)  これは、日本脳炎のワクチン生産状況と患者報告数の変化であります。グラフの線で 示してあるのが患者数であり、赤線の方は死亡者数であります。いずれもきれいにその 数は下がってきております。この棒グラフで示してあるのがワクチンの生産量でありま す。1989年が先ほど申し上げましたウイルス株が変わっているというのがあります。ワ クチンだけですべてを語るわけにはいかず、日本の環境状況やその他いろんな要素があ りますけれども、現在日本脳炎ウイルスは日本にはあるという証明と、疾患は少なくな っているということと、ワクチン接種がきちんと行われているのが現在の状況であると いうことが、今までの発表からおわかりいただけるのではないかというふうに思いま す。  以上です。 ○江崎課長補佐  岡部先生、どうもありがとうございました。  それでは、次には、長崎大学熱帯医学研究所の森田教授に発表していただきます。よ ろしくお願いいたします。 ○森田委員  長崎大学熱帯医学研究所の森田でございます。  日本脳炎ワクチンに関することで、最近のウイルス学的な知見ということから、お話 をさせていただきたいと思います。 (PW)  まず、日本脳炎ウイルスの生態ということで、近年明らかになってきた知見をお話し したいと思います。 (PW)  これは日本脳炎に属する日本脳炎ウイルスグループの地域分布を示しておりますけれ ども、日本脳炎ウイルスは日本を含む東アジアから東南アジア、インドの西辺りまであ りまして、こういう地域に分布しております。ほかに5つほど近縁のウイルスがありま して、近年、米国で問題になっております西ナイルウイルスはこういうアフリカ、中近 東辺りに分布しているわけであります。 (PW)  西ナイルウィルスは近年、米国に侵入して大問題となっております。ここで強調申し 上げたいのは、前半部の結論でもありますけれども、日本脳炎ウイルス、日本脳炎とい うのは、日本一国にとどまらず、アジア全域の問題として取り上げられなければならな いということでございます。 (PW)  これに関しまして、近年、非常に興味深い分子疫学的な発表がなされています。これ は、馬らによって昨年発表されたデータでありますけれども、日本脳炎ウイルスを遺伝 子解析してみますと、こういうふうに系統がわかります。日本脳炎ウイルスは先ほど申 し上げましたように、東南アジアに広く分布しておりますけれども、遺伝子を分析しま すと、大体大きく分けて5つの型に分かれます。1991年ごろまで日本の分布しておりま したのは、このG3と書いておりますけれども、遺伝子型3、ジェノタイプ3に分類さ れる群でございました。そして、ジェノタイプ1というのは、ここはわかりにくいです けれども、タイで92年に分類された型でありますけれども、東南アジア等に分布してお ると。2型、4型、あるいは5型もアジアに分布していたわけであります。  ところが、1994年以降、日本でジェノタイプ1に属する日本のウイルスが見つかりま して、よく調べてみると、ほとんど日本ではジェノタイプ1に置き換わっているという ことがわかってきたわけでございます。 (PW)  まとめてみますと、日本脳炎ウイルスというのは、この5つの遺伝子型に分かれてお りまして、2型、3型、4型というのは、こういうふうに分布しておりまして、中国を 始め、日本にはインドまで3型が広く分布をしておったんですね。我々はちょっと前ま で、こういうふうな形で安定して、日本にはこのウイルスが独自に存在して進化してい ると思っていたわけであります。 (PW)  ところが、これが1型に置き換わっていると近年わかってきたと。 (PW)  韓国を調べてみても、そうであると。我々は東南アジアで熱帯医学研究所として活動 しておりまして、ここの日本脳炎をいろいろ調べております。 (PW)  そうしますと、ベトナムでもこれが近年、1型に置き換わっていることを見つけまし た。そこで改めて、この東南アジア全域、特にベトナムを中心として日本脳炎ウイルス の遺伝子解析をやり直しました。 (PW)  これはベトナムの風景ですけれども。 (PW)  その結果、非常に興味深いことに、ここが先ほど申しておりました、ジェノタイプ1 です。ここに赤で示しておりますのが、ベトナムで近年、2001年、2002年に分離された 株でございます。この緑のところは長崎、あるいは日本の他のところで分離された株で ありますけれども、これは2002年に長崎で分離された株でありますけれども、確かに馬 らが発見しましたように、このように日本脳炎の現在の日本のウイルスはジェノタイプ 1に置き換わっているということが確認できたわけです。この辺はタイですけれども。  ところが、過去にさかのぼって見てみますと、ここは大阪で85年に分離された株で す。この赤いのはベトナムで86年に分離された株です。要するに1年差ですけれども、 こういうふうに近いところに位置しております。  こっちを見てますと、今度は90年代ですけれども、89年にベトナムに分離された株と 90年に長崎で分離された株がこういうふうに1つのクラスターになっています。 (PW)  要するに、日本脳炎ウイルスというのは、かつて思われていたように安定して存在し ているというよりは、比較的頻繁に東南アジアから、このように東アジア、韓国、日本 へと、頻繁に飛来しているということが明らかになってきたわけであります。 (PW)  ちょっと話は逸れますけれども、これは何でかということをよく考えてみますと、日 本脳炎ウイルスも鳥に感受性がありまして、鳥が運ぶということが指摘されています。 これはツバメの移動を近年、衛星、GPSとか使って調べたものですけれども、こうい うふうにツバメが移動している。水鳥になると、これは中国南部を中心にこういうふう に移動しています。今年の冬、インフルエンザで鳥のことがウイルスの運び屋として問 題になりましたけれども、やはりこの日本脳炎においても、こういう自然界の動物が運 び屋となってウイルスを移動しているのではないかなということで、我々は改めてこの 問題について、もう少し詳しく調べてみようとしているところでございます。 (PW)  これはちょっと余談になりますけれども、こういうルートで日本脳炎ウイルスは東南 アジアから比較的頻繁に運ばれているという現状がございます。 (PW)  今、西ナイルウイルスが日本に来ることをみんな心配しておりますけれども、これが 東南アジアに入っても、これは恐らくこういう日本脳炎と同じようなルートに乗って瞬 く間に日本に来るのではないかなということで、やはりこの日本脳炎という古い話題で ありますけれども、やはりその生態学というものをきちんと押さえておかなければいけ ないというふうに思っているところでございます。 (PW)  3型から1型に変わったということで、ウィルス学的に何か重要な意味があるだろう かということで、これはちょっと古いデータですけれども、こちらが3型の日本で分離 された古い株であります。こちらはタイで分離された1型の日本のウイルスでありま す。この抗血清に対して、このウイルスが中和されるかどうかということを見たわけで ありますけれども、ここを見ると10倍近くの差はございますけれども、これは1万倍ぐ らい、ホモでは中和されますけれども、ジェノタイプ3の抗血清はジェノタイプ1のウ イルスを10分の1ぐらいでありますけれども、やはり中和しているということで、ワク チンを考える上では、ワクチンにジェノタイプ3のウイルスを使っていてもジェノタイ プ1もやはり中和されると考えていいということだと思います。  しかしながら、さっき遺伝子型が置き換わったという現象を御説明いたしましたけれ ども、今、ジェノタイプ1の方が弱毒ではないかということを考えられている方々もお られます。ジェノタイプ1が弱毒だったとしても、先ほど言ったようなルートで、また ジェノタイプ3が帰ってくるかもしれないということで、ジェノタイプ1がたとえ弱毒 だとしても安心はできないということだというふうに思っております。要するに、日本 脳炎の警戒システムには東南アジアでのプロダクティブなサーベイランスが不可欠であ ろうというのが、先ほどのパート1の私の結論でございます。 (PW)  もう一つ、最近の研究成果としてワクチンに関連することとして、神戸大学の医学部 の小西先生たちが日本における日本脳炎の不顕性感染に関して、非常に興味深いデータ を出されております。 (PW)  日本脳炎ウイルスに対する抗体をはかるというのは、もう何十年も前からなされてい るわけですけれども、日本では広くワクチンが普及しておりますので、ワクチンによっ て上がってきた日本脳炎ウイルスの抗体なのか、あるいは自然感染なのかということを 明確に区別しなければなりません。これは日本脳炎ウイルスの遺伝子構造を示しており ますけれども、5’末端に構造タンパクの遺伝子がございまして、5、3’末端に非構 造たんぱく、エンザイムとかの遺伝子がございます。 (PW)  これが感染した細胞の中で翻訳されてプロセスを受けまして、こういうふうに個々の ばらばらのタンパクになります。そして、この3つがウイルス粒子を形成しています。 (PW)  これがヒトに感染した場合に、抗体を誘導するわけですけれども、自然感染ではここ にありますNS1という非構造タンパク質も抗体を誘導します。しかし、ワクチンでは これ(Eタンパク)に対する抗体しかできません。これは日本脳炎ワクチンは不活化ワ クチンですので。ところが、自然感染では、抗NS1抗体というものができます。した がって、これを特異的にはかれれば、自然界の中における日本脳炎ウィルスへの曝露と いうものをワクチンの影響なく評価することができるというわけでございます。 (PW)  そこで、小西先生たちは、このNS1タンパクを独自に遺伝子、工学的な手法で精製 いたしまして、組換えタンパクをつくりまして、これを調べてみました。これは論文に なっているところだけでありますけれども、95年、ちょっと年代がさかのぼりますけれ ども、都市部、農村部ということで、このNS1抗体で見る限りでは、大体10%近くの 都市部のヒトが抗体を保有していると。農村部では大体20%のヒトが抗体を保有してい る。この時期においては、やはり日本脳炎ウイルスに一般市民は曝露されているという ことが明らかになったというふうに思うわけであります。 (PW)  ヒトのみならず、ウマも日本脳炎ウイルスに対して、非常に感受性を持っております ので、小西先生たちはこの競走馬における日本のウイルス抗NS1抗体というのを調べ ておられます。これは非常に理にかなっておりますけれども、このウイルスの活動が活 発な九州地区に行くほど、このNS1抗体の保有率が高くなっているという状況でござ います。 (PW)  例えば、1回蚊に刺されて日本脳炎に不顕性感染した場合に、このNS1抗体という のはできるわけですが、これは何年ぐらいもつのかと、検出できるのかということにつ いて、小西先生たちはいろいろ調べられて、2年、3年ぐらいだろうというふうに推測 されております。そこで、これを2.01年というふうに抗体保有期間を決めた場合に、自 然感染率はどのぐらいかということを計算しておられまして、これは血清バンクにある 血液を調べられたそうでありますけれども、大体、九州辺りでは3.7%、愛知辺りで1.5 %、このぐらいの人たちがやはり毎年、日本脳炎ウイルスに少なくとも曝露されている であろうというふうに結論づけられておられます。私はこの数字は若干低めではないか というふうに思っているわけでありますけれども、そういうことでこういう方法を用い まして、2001年、現在でも人々は日本脳炎ウイルスに曝露されているという事実がある ということでございます。 以上でございます。どうもありがとうございました。 ○江崎課長補佐  森田先生、ありがとうございました。  それでは、次は、富山県の衛生研究所の渡辺先生に発表をお願いいたします。 ○渡辺委員  富山県衛生研究所の渡辺です。衛生昆虫を担当しております。  これから富山県におけるコガタアカイエカ、日本脳炎ウイルスを主に媒介するコガタ アカイエカの発生状況を説明させていただきます。  富山県では、ほかの県と同じように、昭和40年、1965年から日本脳炎対策事業として ウイルスを媒介するコガタアカイエカの発生消長調査、ブタにおけるHI抗体保有調 査、それとコガタアカイエカからの日本脳炎ウイルスの分離調査などを行ってまいりま した。しかしながら、コガタアカイエカからのJEVの分離は1974年で中止いたしまし て、現在、継続して仕事をやっているのはコガタアカイエカの発生消長調査とブタにお けるHI抗体保有調査です。  日本脳炎というのは、蚊が媒介して初めて発症する病気ですから、そのコガタアカイ エカの発生状況が現在どういうふうになっているかということで、この病気の流行の成 り立ちということが考えられます。では、現在、このコガタアカイエカの発生は本当に 少なくなっているのかということが、2、3議論を呼んでいるところかと思いますけれ ども、その富山県での調査状況では一言で言うと、決して少なくなっておりません。今 でも富山市の郊外で、一晩で2万個体採れる場所もあるということを先に申し述べてお きたいと思います。そして、資料の図1でお示ししましたように、現在でも富山県では 7か所の牛舎、豚舎、厩舎などの家畜舎で蚊の捕獲調査をやっております。そうします と、少ないところもありますけれども、非常に多いところもあります。それと、蚊の数 というのは、年によって非常に多くなったり少なくなったりすることが往々に見られる ということです。  先ほど、岡部先生の1993年の冷夏と94年の暖かい夏と言われましたが、それは蚊にも 非常に影響がありまして、この図1でご覧いただけますように、93年というのは蚊が非 常に少なくなっております。それは寒い夏ということがあります。94年は、暖かくなり ましたから、蚊の数が多くなっております。ですから、今年もこのまま暑い夏で経過す れば、蚊の数は非常に多くなるのではないかというふうに、私どもは警戒しておりま す。  ということで、蚊の発生状況は、次のページでご覧いただけますように、京都市のよ うな大都市の場合、図2の折れ線グラフで示した様に、これは豚舎でのコガタアカイエ カの調査成績で、87年から2001年まで図示してありますが、京都市では確かにコガタア カイエカは少なくなって来ております。その下に埼玉県、滋賀県を示しましたが、埼玉 県でも少なくなってきております。しかしながら、滋賀県では富山県と同じように少な くなってきている状況ではありません。ですから、大都市近郊では確かにコガタアカイ エカの発生源である水田の減少、コガタアカイエカの繁殖に非常に重要な家畜の数及び 畜舎の数が減少してきておりますから、蚊の数は減るのは当然だと思います。しかしな がら、地方都市ではそんなにコガタアカイエカは減ってはいないということでございま す。  では、次に、コガタアカイエカの発生消長はどうなっているのか。私どもが今、ブタ のHI抗体陽性の状況を把握したり患者数を見てみますと、最近の患者の発生というの はどうしても秋に傾いておるように思うんです。ブタのHI上昇も秋の方に高くなって いるというふうに思います。ですから、蚊の発生はどうなっているのかということで見 ますと、蚊の発生もやはり、かつて日本脳炎の流行が多かった1960年代に比べて、現在 は8月、9月に蚊の発生が多くなっております。昔、日本脳炎患者が多かった時代に は、6月から7月に蚊の発生が多く、7月に発生の山が見られていたんです。それが今 は8月下旬から9月に入ってから見られていますよというのが図4であります。  この富山大井という地点は、富山市の郊外にありまして、すぐ近くに大型の住宅団地 があるところです。そういうところでも、2003年には一晩で2万個体を超えている場所 があるわけです。ですから、やはりコガタアカイエカに刺されるのは、まだ地方都市で はありますよということが言えるかと思います。  3つ目といたしまして、コガタアカイエカからのJEVの分離です。これは現在、定 期的に行っている地方の衛生研究所というのは残念ながらございません。今、ほとんど 中止しております。それは、やはり患者数が減ったのと、そういう人材がいなくなって しまったということだろうと思います。最後までやっていたのが、ここで示しておりま すように京都市です。京都市も2001年でやめております。私どもは、既に74年でやめて おります。この表から見ますと、1992年を境にして、蚊からのウイルス分離というのは 非常に少なくなっている。もしくは、蚊からのウイルス分離ができなくなっているとい うのが、この成績から読みとれると思います。ですから、先ほどの森田先生のお話から も、必ずそのウイルスはあるんだというけれども、蚊からのウイルスの分離状況という のは非常に悪くなってきているというのが1つあります。  ですから、蚊が多分そのウイルスを持っているのが少なくなったか、もしくはウイル スの粒子量が分離できないような状況まで低くなっているかというふうに考えておりま す。もしかしたら、遺伝子型が3から1に変わったことも影響しているのかもしれませ ん。それは多分に分離技術が昔のままでいいのか、どうなのかというのも議論のあると ころかと思います。  最後に、私どもの蚊の研究をやっている立場から見て、近年どうして日本脳炎患者が 減ったのかというのを考えてみたわけです。そうしましたら、まず1番目として、コダ カアカイエカの発生数が減少した。それは先ほど言いましたように、大都市圏では発生 数は減少したけれども、地方都市圏では発生数は減少はしておりません。  2番目。コガタアカイエカに刺される機会が少なくなったのではないか。これは確か に少なくなったと思います。それは1つには、やはり住環境、我々の住んでいる家が 1960年代に比べまして、現在は高気密、高断熱、それに伴って網戸の普及、現在90%を 超えたエア・コンディショナーの普及率。世帯普及率が今90%を超えています。我々こ こに10人おられたならば、9人の家でもうエアコンを付けていると思うんです。エアコ ンを付けると窓を閉めます。ですから、蚊は家の中に入ってまいりません。そういうこ とでコガタアカイエカに刺される機会はかなり減少してきていると思います。  また、たまたま家の中に入ってきた蚊も、現在いろんなコマーシャルが流れておりま すけれども、蚊を殺す機器というものが非常に発達しております。ですから、そういう ことで昔ほど蚊に刺される人たちは多くはないというのが現状と思います。  先ほども言いましたけれども、3番目として、コガタアカイエカの発生のピークが8 月から9月にずれたこと。これはやはり8月から9月にずれますと、コガタアカイエカ というのは変温動物ですから、日本脳炎ウイルスの蚊の体内における繁殖が低温傾向に 従うにつれて悪くなるのではないかというふうに考えております。これは後から、ウイ ルスの専門の先生方に御意見を伺いたいんですけれども、夜間の気温がやはり20度やそ こらになりますと、蚊の体内の中でのウイルスの繁殖が悪くなるのではないかというふ うに考えられます。ですから、蚊の発生のピークがずれると患者数も減るのではないか というふうに考えております。  4番目として、コガタアカイエカ自身が日本脳炎ウイルスの保有をしなくなった。も しくは保有率が低下したということが考えられます。そういうことが重なって1992年以 降、非常に患者数が少なくなったんではないかというふうに考えております。しかしな がら、今年も先ほど言いましたように、この暑い夏で富山県では今、コガタアカイエカ が非常に増えている傾向にあります。ですから、天候の状態によっては、いつ何どき、 また蚊が急激に増えるかわからない状態です。ですから、そのときに先ほど、森田先生 が言われたように、そのウイルス自身も東南アジアの方から都合よく侵入してくれば、 また再び流行が起こるという可能性は否定できないというふうに思います。  最後の6ページの資料ですけれども、これは6月から9月までのコガタアカイエカの 発生数とブタのHIを見たものです。6月、7月のコガタアカイエカ数が多いと、やは りブタのHI上昇も早いですよ、という図なんです。コガタアカイエカの発生が8月、 9月にずれては、そんなに早くからブタのHIというのは上がりませんよということな ので、やはり蚊の発生数及び発生消長というのは、この日本脳炎にとって非常に重要だ ということが言えると思います。  以上です。 ○江崎課長補佐  渡辺先生、ありがとうございました。 ○小林予防接種専門官  渡辺先生の方からは「富山県における日本脳炎流行予測調査35年間のまとめ」、富山 県の衛生研究所の方でつくられた冊子を御提供いただいておりますので、出席の先生方 にはお配りさせていただいております。 ○矢崎課長補佐  それでは、次は、感染症研究所ウイルス第一部の倉根部長に発表をお願いいたしま す。 ○倉根委員  感染症研究所の倉根です。私は、現在使われている日本脳炎ワクチンと開発中の組織 培養ワクチンについて、まとめるようにということでしたので、そのまとめを行いたい と思います。 (PW)  もうこれはあれですが、1954年に初めてワクチンが使われてから、5度ほど、何度か こういうふうに変更がされております。これは間違いでして、済みません、1989年です ね。製造株が北京−1株になった。摂取量が0.5に変更。タンパク量が80μg/mlになっ たということであります。ですから、ここまでは中山株というものを使っておりまし て、ここから北京−1株に変わったということであります。いずれもジェノタイプ、遺 伝子型は3型のであります。 (PW)  現在、日本も含めまして、世界でどういうワクチンが使われているかというのをここ に示しております。日本で開発されて使われているマウス脳由来の不活化ワクチン、日 本では北京−1株、国によっては、あるいは日本で輸出用に中山株のものもつくってお りますので、両方ですけれども、インターナショナルにアクセプトされた唯一の日本脳 炎ワクチンであると言うことができると思います。  もう一つ、中国で、やはり初代のハムスター腎細胞を用いた不活化ワクチン、これは P3株というのを使ってつくっております。もう一つ、中国で初代ハムスター腎細胞を 用いてSA14-14-2株。これは両方とも遺伝子型3型ですけれども、これも使われてお ります。ただし、これは認識としては、あくまでも中国のナショナルワクチンである と。インターナショナルワクチンであってナショナルワクチンであるということであり ます。ただ、聞くところによりますと、この中山ワクチンについては、韓国とネパール ですか。一応、認可はしているということでありますが、まだ認識として、これがイン ターナショナルではないと。つまり、現在、用いられているマウスの由来ワクチンが唯 一インターナショナルに認識されたものであるということであります。 (PW)  これがウイルス株にしては、繰り返しますけれども、89年接種のワクチンから、それ までの中山株から、免疫原性と野外分離株に対する交叉性がより高いというデータに基 づいて北京株になりました。これはどういうことかと言いますと、マウスに中山株で用 いたワクチンと、あるいは北京株で用いたワクチンそれぞれを接種すると、北京株で用 いたワクチンの方がマウスにおける抗体産生能がどうも高そうだということと、この株 によって産生された中和抗体は他の地域で分離されたウイルスをよりよく中和するとい う、両方とも遺伝子型3型ではあるけれども、交叉性が高い抗体ができるということか ら、それのみではないでしょうけれども、それが大きな理由であります。ですから、よ り交叉性が高く、他の国でも十分、より高い防御能が期待されるということから変えた ということであります。しかし、なぜ、すべての国で中山株から北京株にすべて置き換 わらなかったかということは、それぞれの国の認可のエージェンシーの国の考え方とい うのがありまして、すべて北京株に置き換わっているわけではありません。ですから、 両方使われているような形になっております。 (PW)  ちょっと次が技術論ですので、あれですが、現在用いられている生物学的製剤基準と いうのはどういうふうになっているかと言いますと、国内で使用されているワクチンは 無色透明、あるいはわずかに白濁した液状で、つまり北京株ではね、それは0.5mlある いは1mlのバイアル、または近年は2つの製造所では既にプラスチック注射筒に封入さ れております。保存は10度以下で、凍結してはならない。有効期限は国家検定を通って から1年ということになります。 (PW)  主として輸出用ワクチンとして製造されている凍結乾燥剤は、やや黄色味を帯びてい る粉末固体で、1mlあるいは10ml用量のバイアルに封入されているということ。有効期 限は5年である。 (PW)  これは500万ドースより、もう少し下、300から350万ぐらいだと思います。岡部先生 の像を示されておられます。 (PW)  どうやってつくるかと言いますと、生後3−5週の健康なマウスの脳内にウイルスを 接種し、脳炎症状を呈し死亡直前のマウス脳をとるということであります。これに緩衝 液を加えて粉砕し、遠心して上清をとって、アルコール沈殿法、これはちょっと製造所 によっても少しずつ違いますけれども、アルコール沈殿法、硫酸プロタミン処理法、高 速遠心法その他の操作を行ってウイルス浮遊液とする。 (PW)  更にホルマリン等を用いて不活化するということであります。更に原液について染色 試験、無菌試験、不活化試験を行って適合しなければならない。原液を更にこれを希釈 して最終バルクとすると。 (PW)  小分製品についてpHであるとかタンパクの含量であるとか、チメロサール含量、ホ ルムアルデヒドの含量であるとか、無菌であることの確かめ、不活化されているという ことのもう一度確かめる。異常な毒性がないかどうかを確かめるということでありま す。 (PW)  力価はマウスに2度免疫しております。そして、産生された中和抗体をベロ細胞を用 いた、ベロ細胞というのは、グリーン・モンキー・キドニー・セルラインで、既に樹立 された受毒セルラインでありますけれども、その細胞上のその細胞を用いたプラーク減 少法によってマウスにおいて誘導される中和抗体価をはかっております。そして、それ が照準審査、検定だと参照品ということになりますが、現在、用いられている参照品同 等以上でなければいけない。同等あるいはそれ以上の中和抗体価をマウスにおいて誘導 しなければならないということで行っております。 (PW)  国家検定において、物理学的性状、タンパク検定、ホルムアルデヒド、不活化、異常 毒性否定試験並びに力価を経て、すべてに合格した場合に、検定合格ということになる ということであります。 (PW)  現在用いているマウスの由来日本脳炎ワクチンの有効性というのは、幾つかのスタデ ィーもありますが、証明するものとして、十分防御が期待される程度の中和抗体を誘導 するという幾つかの報告がございます。  先ほども岡部先生もおっしゃいましたけれども、歴史的に、これを使ってから確かに 日本脳炎は、これのみではないかと思いますけれども、日本脳炎の減少に果たした役 割。公衆衛生学的に大きい、統計学的にある程度サジェストされております。  一番大きい研究と言いますか、有効性を示すデータというのは、1984年、1985年にチ ャーリー・ホークらがタイで約六万人におけるスタディーを行っています。この6万人 をまず2万人ずつに分けて、1群には中山株、このときは中山株でしたけども、2回2 週間おきに打った。2回しか打っていません。もう一群には、中山株を1回打って、北 京株をもう一回打ったと。もう一群にはコントロール、ですから、日本脳炎ワクチンは 何も打たなかった。その中で何人日本脳炎患者が出たかというスタディーがあります。 そうすると、ちょっと細かい数字は出しておりませんが、大体たしか50人ぐらい出て、 1群出ているけれども、それを統計学的に計算すると91%に減らす。つまり、ワクチン を打っている中では5人しか出なかったということであります。そういうことから、少 なくとも2週間おきの2度の接種でも91%の有効性があるというスタディーの報告であ ります。  ただ、先ほど、森田先生がおっしゃいましたように、このときのタイは1型でありま す。日本脳炎ワクチンは3型であります。ですから、100でなかった、あるいは99でな かったというのは、ひょっとするとそういうところに、これはあくまで類推の域を出て いないんですけれども、違うジェノタイプの地域でのスタディーですから、こういうこ とになったのかもしれないし、2週間おきに2度しか打っておらないということも原因 かもしれない。逆に考えますと、ジェノタイプが違っていても、日本脳炎ワクチンは少 なくともこの程度というか、90%を超す有効性は示せるだろうということであります。 現在、そのジェノタイプが違うものに対して、どこまで有効なのかという議論は幾つか あるわけですけれども、このスタディーをもって、90%以上はそれなりに有効性を示す と。あるいは、ひょっとすると同じジェノタイプで、仮にジェノタイプ1を用いてつく ったものがあって、タイで行えば、これは99になったのかもしれません。ただ、それは 何とも仮説の域ですので、わかりません。 (PW)  問題点ですが、現行日本脳炎ワクチンの問題、確かにこれまでの歴史から、現行の日 本脳炎ワクチンというのは有効性が高く、安全である、国際的にも認知されているとい うことは、ですから、日本脳炎に対して、このワクチンが果たした役割というのは大き いということは疑いのないことでありますが、ただし、あえて問題を探すとすれば、マ ウスの由来の物質の混入を種々の努力によって限りなく少なくしたとしても、マウスの 脳由来であるという事実は消せないわけですし、それをゼロだと、ないんだというとこ ろまでというのは非常に困難だろうと。限りなくなくしたとしても、ゼロは難しかろ う。アンディテクタブルでもゼロかと言われるとどうかなという部分があるかと思いま す。  もう一つは、確かに急性散在性の脊髄炎が起こった場合に、これとの因果関係が全く ないんだと、これを示すことは非常に難しかろうと思いますけれども、この絡みから考 えれば、なかなか完全に否定するのは難しいかなと。あるいは、日本ではそうでもあり ませんけれども、海外において全身性の蕁麻疹であったり血管性浮腫であったり、ショ ック等の副作用が特に欧米での諸国での報告、これは人種の問題とかいろいろあるでし ょうけれども、余り日本で率が多くないものについても報告されている。 (PW)  やはり、このワクチンは、マウスの脳からフィリファイしていきますので、手間とコ ストがかかる。そのために価格が高値となり、特に日本脳炎ワクチンを必要とする、日 本も必要ですけれども、発展途上国においてはなかなか高くて手が出ないということが あるだろうと思います。やはり、この作成に手間とコストと、つまり脳を取り出してと いう部分がどうしても出てきますので、ここの部分の働き手をどうやってプロテクトす るかという部分も出てくるだろし、もう一つは、やはり動物を使うということに対する 抵抗感と言いますか、動物の権利というか、いつまで大量のマウスを使ってつくる続け ることができるかという可脳性。もう一つは、大量のマウス自体を用いるという確保で きたとしても、それに対する抵抗感ということ。もう一つは、次に述べますけれども、 組織培養によっても同様のものはできるではないか、それをなぜつくるんだというよう な議論は当然出てくるんだろうと思います。 (PW)  組織培養ですが、これはマウスの脳の代わりに、アフリカミドリザル由来のベロ細胞 を用いてつくるということであります。WHOより製造培養の基準が示されております ので、種々の環境というものは整っておりますし、ベロ細胞を用いて実際にもうワクチ ンはできているという事実がございます。 (PW)  これは対比したものですけれども、単なる図ですが、これはマウスを用います。ベロ 細胞を用います。例えば、北京−1株、こちらは感染させる。こちらもin vitroで感染 させると。こちらは感染細胞の培養上清を用いる。こちらは脳を用いると。種々のプロ セス、細かいことは別にしまして、プロセスがありますが、いずれにしても不活化して 超遠心を行って、この場合にはカラムによる精製というのもあるでしょうし、違うやり 方の精製もあるでしょうけれども、それでワクチンの原液をつくる。しかし、できたも のに関しては、もと日本脳炎ウイルスをフィリファイした日本脳炎のフィリオンですの で、できたものは一緒であるということにはなります。 (PW)  現状ですが、ベロ細胞由来日本脳炎ワクチンは高度に精製されており、我々のところ で測定しても、メーカーさんが測定してもDNA混入値等はWHO勧告値を十分に満た しています。形状、性状、Eタンパクの抗原性についてもマウスの由来と同等である。 つまり、同じタンパク量で比較しても決して劣ることはないという結果が出ております し、抗原性、免疫原性、力価その他の安定性についても同等であったと報告されていま す。あくまで、これは動物でのデータであります。  ベロ細胞由来日本脳炎ワクチンは、既に前臨床も終わっておりますし、第I相臨床試 験も出ており、十分に満足できるものであったというふうに報告されておりまして、現 在、第III相、つまりフィールドにおける試験ではございませんけれども、現在用いら れている日本脳炎ワクチンと比較しての抗体産生ということでのIII相試験を実施して いるというふうに聞いております。データは公表されてはおらないようで、現在進行中 ということでございます。 (PW)  長所ですけれども、ベロ細胞、無血清培地を用いることにより未知の危険因子の混入 を極力抑えることができる。つまり、これはエスタブリッシュされた細胞であり、何が どこまで含まれていないということも明らかになっておりますし、ほかのワクチンもつ くっている細胞でありますので、そういう意味では品質管理が非常に簡単であるとは言 いませんが、マウスを使うというよりは、品質管理はかなり容易になるだろう。つま り、同じものが安定してつくるということは、より容易になるであろうというふうに考 えます。免疫原、不活化ウイルスという意味では、現行のワクチンと同じですので、受 け入れられやすいであろうと。つまり、プロダクトは本質的には同じものであるという ことですので、受け入れられやすいだろうというふうに思います。  問題点と言いますか、これはちょっと我々側もあるんですが、これまでマウスの脳を 使ったものでの品質管理ということを我々は行ってきました。今度はベロになりますの で、そこの点で、確かにできたものは同じものであるとしても、我々の方でチェックす べき項目というのは違うものが当然出てまいります。そういう意味では、新たな基準の 作成が当然必要かと考えております。  以上でございます。 ○江崎課長補佐  倉根先生、どうもありがとうございました。 ○倉根委員  もう一つだけ言い忘れましたが、先ほど、森田先生の方から、日本ではかなりジェノ タイプ1になっているということでございましたけれども、実は我々の方でも地方衛生 研究所の先生方と協力して分離を行っておりまして、時にやはりジェノタイプ3もとれ ますので、ということは、完全に置き換わったのではなくて、やはり混在していると。 ただ、どうもジェノタイプ1が優位になっているというような状況ではないかと思って おります。 ○江崎課長補佐  それでは、次は、立教大学社会学部教授で、立教大学診療所長の大矢先生に発表して いただきすが、その前に事務局の方から、その発表の中にあります副反応報告、健康状 況調査について説明させていただきます。 ○小林予防接種専門官  この参考資料2といたしまして「予防接種後副反応報告及び予防接種後健康状況調査 について」という紙を準備させていただいております。  これに基づいて大矢先生に発表いただく調査の趣旨について、簡単にお話をさせてい ただきます。  まず「<予防接種後副反応報告制度について>」でございますけれども、この予防接 種後副反応報告は参考資料の2ページ目にあります様式にのっとりまして、予防接種を 行った接種医あるいは主治医などから提出いただき、市町村を経由して厚生労働省に御 報告をいただくものでございます。  この調査の目的でございますけれども、予防接種後の被接種者の健康状況の変化につ いての情報を収集し、広く国民に提供すること及び今後の予防接種行政の推進に資する ことを目的として、平成6年の予防接種法の改正以降、予防接種実施要領に基づいて実 施されてきたものでございます。上がってきた報告については、厚生労働省の方で検討 会を設置いたしまして、先生方に作業をやっていただいて、とりまとめて集計し、公表 いたしております。ただ、この報告でございますけれども、2ページ目の様式にのっと って報告いただくわけなんですけれども、その報告の基準となっているのが、次の3ペ ージ目の各疾患ごとに接種後何日以内に何らかの臨床症状を呈したかということを基準 として御報告いただくものでございますけれども、この報告については、報告するかど うかの判断は報告者自らが行うということでございまして、報告件数に地域的かたより があります。また、この調査につきましては、因果関係が必ずしも確認されたものでは なく、時間的にワクチン接種が先行したということで上がっている事例もある。そうい ったことから、予防接種との因果関係がないかもしれないというものも含まれておりま して、また、報告基準の範囲外の報告についても排除せず単純に集計をいたしておりま す。  1ページ目の(4)の一番下のところ、ちょっと文字が消えております。ミスプリで ございますけれども、この制度自体は予防接種健康被害救済制度と直接結び付くもので はございません。救済措置の給付を申請する場合には、別途、各市町村でまとめた書類 の提出が必要であるということで、「提出が必要である」という文字が消えております ので、修正していただきたいと思います。  もう一つの調査が4ページ目にございます、予防接種後健康状況調査でございます。 こちらはちょっとまた細々と書いてございますが、先ほどの予防接種後副反応報告につ きましては、主として重篤な副反応に遭遇した主治医の先生方から出していただくわけ でございますけれども、予防接種後、健康影響調査につきましては、予防接種後にしば しば見られる発熱、あるいは局所反応、発疹といった、そのような比較的ありふれた臨 床症状がどの程度の率で発生するかということを確認するために都道府県、市町村並び に医師会の協力を得て行っているものでございます。これは協力をいただいております 小児科の先生方を通じ被接種児の親御さんに対してアンケート用紙を配布いたしまし て、発熱が認められたか、局所反応があったか、けいれんがあったか、蕁麻疹、発疹が あったかといったような項目について、一定の期間フォローアップをしていただきまし て、提出をいただくという調査でございます。  7ページにそのスキームが書いてございますけれども、例えば、日本脳炎につきまし ても、年間2,000〜3,000程度のアンケート用紙が都道府県経由で上がってきまして、そ れを基に発熱の発生率が何%程度であったか、発疹やけいれんが何%あったかといった ことを把握しているということでございます。この調査につきましても、予防接種副反 応の発生状況等についてデータを集め、安全かつ適切な予防接種の実施に資することを 目的として実施をしておるものでございます。  この両調査につきまして、日本脳炎の分については、これまで大矢先生に集計、解析 を行っていただいておりますので、その結果につきまして、御報告をいただきたいと思 います。大矢先生、よろしくお願いいたします。 ○大矢委員  先ほど、小林専門官から御紹介いただきました大矢でございます。 (スライド)  先ほどのイントロダクションで言われましたような状況で、2つの調査をやっている と。一番最初は副反応の報告で最初、接種後のモニタリング報告という形で、あとは変 わってきたものですね。これは先ほどの説明にもありましたように、すべてが全部医者 からというわけではなくて、あとで症例を少し説明する中に、時には母親から、要する に自治体に回して、そこから出てきたというデータも含まれていることでございます。  もう一つは、そこに書類の中のところで、参考資料のところの2番にあると思うんで すけれども、報告回数の中に第1報、第2報、第3報というふうな形で、それぞれの形 で出てきているわけですけれども、大部分は副反応に関しては第1報だけで集計してい くと。一部分は第2報もあるということでございます。したがいまして、ここから与え られたデータというのは、非常に不完全なものであります。しかし、不完全なものであ りますけれども、それを与えられた用法から、要するに、こちらが判断をして、こうい うふうなものに入るだろうというふうなことを集計したものであるということでござい ます。  まず、予防接種の副反応の形は、平成6年から今年の15年までありまして、大体約十 年間のトータルということになっております。先ほどの項目に従いまして、即時性全身 反応、アナフィラキシー、全身蕁麻疹、脳炎、脳症、けいれん、運動障害、その他の神 経障害、局所の腫脹、全身の発疹、39度の発熱、その他の異常反応、基準外の反応とい う形で、こういうふうな副反応に対する、平成6年から平成15年までのレポートがこう いうふうに集計されたということでございます。  今回、問題になりました脳炎、脳症の中で、特にADEMの問題について、これから 少しお話していきたいというふうに思います。この脳炎、脳症のを見ていただきます と、全然ないときもあります。脳炎、脳症と言われて報告されていますけれども、この 括弧内がADEMなんでございますけれども、ときどきトータルで脳炎、脳症が27、そ のうちのADEMと思われるものが集計されているということでございます。そのほか に、けいれんがございまして、これが大体トータル38、運動が3、その他の神経障害が 20というふうな形でございます。  その他の全身反応とか局所反応とか、あるいは発熱とか、そういうふうなものに関し ては、他のDPTだとかはしか、風疹で報告されているものと余り大きな大差はござい ませんので、今回はこの神経系の副反応について、もう少しまとめてみようということ でまとめてみました。 (スライド)  日本脳炎ワクチンの接種後、報告分の中で神経系の反応を分けてまいりますと、脳 炎、脳症がトータルで27あると。その中でADEMあるいはADEMの疑いが18で、そ の他、脳炎あるいは脳症と言われたものが9例あると。けいれんがトータルで38ある。 その中で、有熱性のもの、つまり熱性けいれんかと思われるものが19例、熱がなくてけ いれんを起こしたものが16例。記載ないし、あるいは不明なものが3例ございます。そ のほかに、この脳炎、脳症の中には入らないけれども、一応、運動障害と思われるもの が3例ございます。その他の神経障害として、この中に含められないもののが大体トー タルで20ございまして、そのうちの一過性のしびれとか脱力とかというふうなものは、 この最初のアナフィラキシー、あるいはそういう特定の難しい部分があるんですけれど も、一応、神経系の方がもっと関係があると思われるものが大体6例。意識消失、これ が3例。いわゆる四肢けいれんとかいうものが1例。末梢神経麻痺が4例。この中には いろいろなものがございまして、頭骨麻痺だとか、顔面麻痺だとか、あるいは眼底神経 麻痺だとかいうものがあるということですね。それの中に周期性四肢麻痺が1例ありま す。あと、失調性の歩行障害が2例と。その他、ちょっと区別ができないものが3例あ るというふうなのが、大体神経系に関する副反応ということでございます。 (スライド)  そこで、今回、今年の6例出たということでございますので、その症例について、そ こから拾い上げたものが大体どういうふうなもので、どれぐらいの不完全なデータであ るかということをお示ししたいと思いまして、症例を少し載せました。これは15歳2か 月の女の人で、接種が7月10日で、阪大衛微研のロットナンバーできています。大体、 接種後10日ぐらいから手がしびれて、夕方また足までどんどん進行してきたと。7月21 日に近所の脳外科を受診したら、MRIをとりまして、これは多発性神経炎だろうと言 われて、MSとして診断されている。その翌日に、国立病院の神経内科を受診しまし て、そこでいろいろ検査を、髄液検査とか、MRI所見とか、今までの予防接種の状況 とかということで、総合的な形でADEMと診断と、これだけしかありません。詳しい データが全然ないので、実際に客観的にこれは本物かどうかということはなかなかでき ないということです。  以上、報告されたものでございます。そういうことで、その国立の病院の神経内科の グループが、一応ADEMだという診断を付けたということで、それでステロイド内服 剤をやって改善の傾向で、これが第1報でございますので、治療中という形でしか出て きていない。その後、どうなるかというのはわかっていないということですね。 (スライド)  第2例目も、やはり15歳3か月の男の人で、これはタケダのですけれども、一応病歴 を見ますと、要するに接種後、大体13日後に尿意の低下がありまして、だんだんおしっ こが出なくなってきたということ。そして、5月2日には完全に尿閉になってきている わけでございます。その後、視力障害が出てまいりまして、そこで初めて大学の病院の 神経内科を受診しております。ここからの神経のデータは、一応右の目は一過性の光で 弁別するぐらいの視力障害がありまして、左の方は手で動かしたときだけ弁別できるぐ らいのレベルの視力障害があると。そして、体感、四肢、そういうふうに一般的な筋力 低下がありまして、感覚異常もあるという。そして、完全な尿閉の状態にあるというこ とで、MRIをとったら両側視神経、頸部から胸部にかけて広範な異常信号があるとい うことで、これを基に一応ADEMという診断を付けられていると。ステロイド、パル ス療法を行いまして、第1報で治療中というデータでございますね。 (スライド)  第3例は、5歳2か月の男の子で、これは5月29日に接種を受けております。そし て、これは非常に難しいんですけれども、6月下旬になって、やはり発熱のために近所 のお医者さんに診てもらっております。そして、そこから紹介されて、7月14日まで一 応某病院に入院をしているんですけれども、どういう診断をされたか全然不明でござい ます。7月23日にどうやらまた治らぬということで、市立の子ども病院に入院をしまし て、そこで初めてADEMと診断されている。データは何もございません。8月8日に なって、母親から保健所に被害が提出されて、それで送られてきた。その中に、子ども 病院でADEMと言われたよという形で出ている。こういうふうなものは、全然医学的 なデータはないから、母親が、ああだった、こうだったということで、これを見ている と非常にアティピカルな状況がありますので、果たしてこれはADEMかどうかわから ない。恐らく、ADEMと診断されているけれども、判定としてはADEMの疑いぐら いかなというぐらいしか言えないというデータでございます。 (スライド)  4番目、次は、やはり5歳10か月で、タケダのを受けていますけれども、7月の接種 後10日後に38度の熱があって嘔吐があったと。その翌日から38度のほかに全身けいれん が重積になりまして、某大学に緊急入院をして、MRIをとったら、異常所見があると いうことでADEMと診断されています。これはほかの臨床データは全然ありません。 したがって、これはADEMという診断しか付けようがないがないということで、治療 はどうされたか記載がありませんので、どういう治療がされたかわからないと。添記と しては、第1報では治療中というふうなデータでございますので、これも一応信じるし かようがないんですけれども、こういうふうな不完全な問題で、客観的に我々がデータ することはできないということですね。 (スライド)  5番目ですけれども、これは7歳1か月の女子で、第1回目の日本脳炎から、これが ロットナンバーで、第2回が今度は1か月も経っていませんけれども、5月30日に第2 回目をやっております。そして、それから大体1週間後ぐらい後に発熱が起こりまし て、それから随分離れてから、嘔吐、嘔気、活力低下とあったということで、初めて29 日なって近所のお医者さんに行って、どうも変だろうということで、その2日後に頭痛 が加わったために地域の医療センターに受診をしまして、ここで髄液、細胞数の淘汰が あるということ。初めは、急性髄膜炎だといって、様子を見ましょうという形だったわ けですけれども、翌日にMRIをとったら、そこに小さな病変があるということで、そ この診断は一応ADEMだろうという診断でされたということで、この人はステロイド 療法をやって、効果があったかどうかは全然ちょっとわからない。だけれども、一応あ ったのかわからぬというふうなところはあります。そこで私はクエスチョンを付けたん ですけれども、それで転記が治療中というふうな方でございます。 (PW)  第6例は、15歳のかなり高齢の接種者ですけれども、保健の形で7月24日に受けてい る。これも接種後28日後に初めて、急速に進行するところの四肢の麻痺と感覚障害があ って、大学病院の神経内科に入院して、24時間以内にすっと進んで寝たきりとなってい るということ。大脳、小脳、頸髄にMRIの所見がいっぱいあると。髄液からは、ここ では調査データがありまして、いわゆる細胞数は正常だけれども、メーリンベーシック ・プロテインが非常に上がっているということで、これはもうちょっとデータがありま すけれども、時期的な問題がありまして、ADEMというふうに診断を付けていたとい うことです。治療は不明で、治療中というふうな形ですね。  だから、ここに集められた6例というのは、我々はびっくりしたんですけれども、実 はこういうふうに不確かなデータの下に、大部分は神経の専門家が診断を付けたものだ から、信頼はできるかもわからないけれどもということですね。この今年の6例に関し て言えば、15歳という高年齢の接種者が4例、5歳の方が2例というふうな形で、これ から見ていると、少し高齢の方が起こしやすいかなという気はするんですけれども、こ れは何とも言えません。こういうふうな形で10年間まとめますと、先ほど示しましたよ うなデータが報告されているということです。まして、脳炎とか脳症とかというふうな 問題に関しては、まだADEMよりももう少し不確かでございますので、これがどこま で本物かということはわからないという、こういうふうな形が集まったデータでござい ます。 (スライド)  これはちょっとデータが違いますけれども、先ほど、小林専門官が言われた、いわゆ るこれはプロスペクティブに、大体1年を4期に分けまして、40人ケースを各それぞれ の専門医にアンケート用紙にやったもの、そのかかりつけのお医者さんの方でまとめて もらって、そのまとめたものを厚生省に集めたという、こういうデータで出されている データでごさいますけれども、プロスペクティブの部分の中で、脳炎の報告というの は、実は項目がないんですけれども、何か変わったことがありましたかというデータが ありますので、それには何も引っかかってきませんので、基本的にはこういう8年から 14年までやられたプロスペクティブなスタディーの中では脳炎は一度も報告されていな いということでございますね。唯一報告されているのは、けいれんでございますけれど も、副反応報告の中では、かなり有熱性と無熱性とが、有熱がやや多いかなというぐら いですが、明らかな差はなかったんですけれども、大体この形で見てみると、ほとんど がプロスペクティプには有熱性のものが圧倒的に多くて、無熱性のものはごくわずかで あると。だから、印象としては、どうも無熱性によるけいれんがある可能性が強いけれ ども、実際報告されたものは無熱性のものがありますので、これももう少し詳細なデー タを調べる必要があるということですね。  ちょっとここのパーセントは正しいんですけれども、ここのところの実数はパーセン トから逆算をしましたので、実際にありますと、これが実は9例でございまして、これ が8例で、これが1例ということで、ちょっともし必要だったら直してください。  あとは、3例、2例は正しいんですけれども、9例というのは間違いで、これは0.1 例は四捨五入してしまって、本当は0.05%だと思います。これが5例でございます。こ れは実際に確認をしましたら、そういうことで、ちょっとデータがこれは間違っており ますので、参考程度にということでございます。  こういうことで、プロスペクティブに見ると、余りはっきりしたことはない。ただ、 報告から見ていると、全国的に出てきているから、あるということですね。こういうふ うなものが実態で、実際にここがこれで起こったというふうなことは、やはり検証しな くてはならないという状況でございます。  接種者が大体400万前後でございますから、そこから見てみると、実際にはネグリジ ブルだと、ただものが神経の非常に重篤な疾患でございますので、大きな問題になる可 能性があると。もっと検討する必要があるというふうに思います。  以上でございます。 ○江崎課長補佐  大矢先生、ありがとうございました。  それでは、次でございますが、国家公務員共済連合会千早病院小児科医長の小林先生 に発表をお願いいたしたいと思います。 ○小林委員  小林でございます。今日は皆様とちょっと違った観点から、お話をということで「安 全性等の観点から、日本脳炎ワクチンの定期予防接種の必要性についての見解」という ことで、話してくれということで、ここの場にまいっておるわけです。  いろいろ興味深いお話を聞かせてくださいまして、ちょっと考え方が変わったんです が、まず資料の一番初めですね。ちょっと大げさな話になりますが。  はじめに  ワクチンはその必要性、有効性、安全性で評価されます。日本脳炎は近年罹患者が減 っています。特にワクチンの接種対象である子どもでは少なく、死亡者もいません。一 方、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)やアナフィラキシーなどの重篤な副作用の報告が 増え、罹患者を上回っています。  1996年の予防接種法改正では、国民に「予防接種に関する知識の普及を図る」(法第 19条1)ように決めました。国民はその知識をもとに判断をし、接種を「受けるように 努めなければならない」(法第8条)としています。ところが現状はほとんど「知識の 普及」がはかれらていません。  これは具体的には私は、一般病院の一般臨床医で一般の予防接種をしておるわけです が、患者さんから、日本脳炎ワクチンは必要なのかという質問と一緒に、日本脳炎に対 する恐怖についての話を聞いて、具体的に罹患者と副反応の報告をお話しします。それ から、接種をするようにしております。ただ、日本脳炎に関しては、具体的な説明をす るが、ほとんど御存じない、日本脳炎の現状に関しても御存じないことが多いので、か なりその説明は苦労をします。  「また、改正で日本脳炎について、『予防接種を行う必要がないと認められる区域を 指定できる』(法第3条2)としました。」  現在、北海道では接種をされておりません。ただ、他にも罹患者がいない県がたくさ んあります。具体的にはどういうふうな結論かというと、このまま定期接種を続けるこ とは、予防接種法改正の趣旨にも反しており、健康被害者をいたずらに増やすことにほ かなりません。国民に日本脳炎の現状を少なくとも知らせて、接種をする方としては、 接種をそろそろ中止していいのではないかというふうに考えております。  必要性と安全性ということで「必要性について」は、ここに書いてありますように 「罹患者は1992年から一桁に減少しています」。これは再び増えないかどうかというの は見ていたわけですけれども、やはりここ10年間、10人を超すことはありません。特に 14歳以下の予防接種をしていない年齢層はかなり減っていまして、1990年からは2人し かいません。ちょっと見にくいんですが、6ページの表と図に書かれていまして、0歳 から14歳、これは予防接種年齢です。ちょっとずれていますけれども。15歳から60歳、 61歳以降。今までの報告と同じように、1992年から全部減っているわけですね。予防接 種、ワクチン接種している年代だけでなく、全部減っているわけです。これは先ほど、 渡辺先生がお話された、蚊の減少とか刺される機会の影響の方がはるかに大きくて、ワ クチンが役割を果たしている状況というのは、大分少なくなったんだろうと思っており ます。それがワクチンをそろそろやめてもいいという一つの根拠になると思います。  次のページですが、ここはわかりやすいように、太字で県別の罹患者というのを書い ておりますが、20年間に11県、1990年以降は19県に罹患者はいないわけです。ここでも 予防接種の被害というのは出ているわけですから、少なくとも罹患者がいない県に関し ては、予防接種をする必要はないのではないかと思います。県に関しても、1つの県で くくれるのではなくて、御存じと思いますが、各県でも患者がいる地域とかいうのもあ りますので、細かく分けると、もっと詳細な検討ができるのではないかと考えておりま す。  安全性に関してです。安全性に関しては、先ほどからお話がありました、ADEMが 非常に増えております。ただ、ADEMと日本脳炎接種の関係というのが、まだ確定し ないとおっしゃる先生もおられるわけですけれども、少なくともここの予防接種後の副 反応報告がなされてから、ほかの麻疹とかインフルエンザとかでも出ていますけれど も、飛び抜けてADEMと診断されて報告する例が日本脳炎は多いということで、先ほ どの6例の患者さんについてもADEMという診断を確定していただきたいわけですけ れども、ADEMかADEMでないかという判断をしていただきたいわけですけれど も、報告を見る限りではそういう印象です。ADEMが非常に飛び抜けて多いという印 象を持っています。  特に問題になるのは、ADEMと即時型の全身反応ということで、8ページ「予防接 種後副反応報告件数」というのが書いてありますが、その例を並べております。接種者 は下の方に書いてありますが、大体、平成6年度から平成14年度までに3,800万人いて、 脳炎、脳症は19人ということで、200万人に1人ですか。12人がADEMだとすると、 317万人に1人ということで、報告数は100万人に1人よりは少ないということは言える と思いますけれども、初期の報告というのが果たして、全部が報告されているかどうか というのは、今後の報告の状況を見たいと思います。  それと「安全性について」の(1)のbですけども、厚生省の予防接種の研究班の報 告書に目に付き始めたのが昭和62年から、ぽつぽつADEMの報告が出ております。こ れは御存じだと思います。日本脳炎ワクチンに関しては、マウスの脳の成分による脱髄 性疾患というのが目下問題になっておりまして、1965年にワクチンが精製された新ワク チンができたときに、沖中先生らの報告が出ているわけですけれども、内容としては、 ほとんど同じような副反応が、やはり今も起こっているのではないかと考えておりま す。  それと、ゼラチンの問題ですけれども、海外の文献を見て問題があるのは、海外で非 常にアナフィラキシーが多いということです。1989年、90年にデンマーク、同じ1990年 にはオーストラリア、1997年にドイツからも出ています。非常に多いというところで、 デンマークのアンダーソンらの報告では、3万5,000人に1人というような報告が出て おります。 日本の報告を先ほどの予防接種後、副反応報告件数を見ますと、8ページ ですね。即時型全身反応は212名ということで、その中にアナフィラキシーと蕁麻疹が ありますが、それぞれ35万人に1人ぐらいで、決して少なくはないと思います。18万人 に1人、400万としてですね。それは増えているんだろうと思います。  そういう問題がありまして、当初はチメロサールが原因だろうということを言われて いたんですけれども、日本の感染症研究所の阪口先生らがゼラチンに問題があるのでは ないかということで、研究をされています。ただ、ここで問題がまだ残っていますの は、2種類ありまして、ゼラチンアレルギーとゼラチンアレルギーではない即時反応が あるのではないかと。非ゼラチンアレルギーによる即時反応の方が重症ではなかろうか ということで、ゼラチンはもう既に昨年度から除去されておりますが、まだ今のワクチ ンではゼラチンアレルギーでないアナフィラキシーが起こる可能性は残ったままです。  このd)で、中枢神経系の副作用の海外のものですが、日本では大滝先生らが1995年 に報告されたのが有名です。デンマークのプレズナーの報告でも、これは2例ですけれ ども、10万から15万回に1回、5万から7.5万人に1人という、非常に高頻度な報告が あります。 福田先生らは、やはりもうちょっと多いのではないかというふうに考えら れています。プレズナーはその後、日本の予防接種副反応の報告基準の脳炎、脳症の報 告期間が非常に短い、7日間になっているのも、これは問題ではなかろうかというふう に指摘をしております。特にADEMに関してですね。大体2週間前後で起こるわけで すけとれども、報告基準に関しても、日本脳炎に関してはちょっと考えていただきたいのではないかと思います。  そういう安全性と必要性の話がありまして、更にこれに「『知識の普及』について」 ということで、今「予防接種と子どもの健康」が国民に配られおるわけですけれども、 ADEMなどの報告はぜんぜん載っていないということを1つ指摘したいと思うんで す。  医師の予防接種ガイドラインは、ADEMについての記載はあるんですけれども、ア ナフィラキシーについてはほとんど記載がないということ。予防接種全体の常識にはな っておるんでしょうけれども、非常に頻度が高いということをもう一度確認をされた方 がいいのではないかと思います。  これに加えて、指摘しておきたいのは、接種事故が非常に今、多いということ。特に 日本脳炎に関しては学校で行われるので、ほとんどが学校で行う集団接種です。もとも と三種混合とか日本脳炎とかは普通でも集団接種の場合が約50%を占めていますが、学 校で行うと更に増えまして、60%を超えます。集団接種の問題というのは、インフルエ ンザの予防接種のときにありましたんですが、保護者を同伴しない学校で行う集団接種 では、やはり問診書のチェックや予診が十分できず、発熱などの禁忌者に接種をした り、希望していない子どもも連れて行くので、希望していない子どもに接種をしたり、 並んで接種をするときに間違えて2回接種をしたりというような事故が起こっておりま す。勿論、予防接種液とか量とかの問題も集団では起こるわけですね。集団接種で起こ りやすいというのは、普段予防接種をしていない医師、具体的には他科ですね。眼科と かの方も時には打っておられるみたいですから、そういう問題と、あとは保健婦さんの 知識の問題もありまして、特にこれも問題になるということです。  個別接種についても、今、予防接種をまとめて行うことが多いので、日本脳炎は接種 量が3歳未満と3歳以上は違いますので、ここで間違えることが多いということで、現 実に間違ったことがあるという人が、新潟県の小児科のアンケートによると、35%。接 種間隔の間違えが25%です。回数の間違いが5.7%。接種年齢の間違い、これも全然関 係ない、普通は3、4歳で行うんですけれども、ほかの年齢に打ってしまうというのが 17%とかいう、開業医で個別に接種をしているレベルでこのくらいあるということで す。しかも、ほとんどの人がキットを使ってそういうことになるということで、集団接 種には、これにさっき述べたような危険性が伴うということで、予防接種を考えるとき に私どもは予防接種の安全性、必要性と同じレベルで、例えば、打とうかな、やめよう かなと考えるときは、必ず接種事故に遭う可能性があるということも考えに入れて接種 をしなさいというふうに指導をしております。  再び必要性について  原因は判りませんが罹患者数は減少しています。しかも、ワクチン接種年齢層だけで はなく全体が減少しています。その中で、ワクチン被接種者は急性散在性脳脊髄炎(A DEM)、全身蕁麻疹、アナフィラキシーなどの重篤な副作用が増え、罹患を上回って います。これに加え、ワクチン被接種者は集団接種で増していく接種事故の危険性にさ らされています。以上より現時点では日本脳炎ワクチン接種の利点はなく、必要性もあ りません。  現在、日本脳炎には、昨年度の中国地方で増えたというような各県での発生状況の変 化というものもあります。ワクチンの効果や神経病原性の変化を含めたウイルスの変異 株の先ほどのお話等もあります。あと、現行ワクチンの安全性などや組織培養ワクチン 実用化の問題というのもありますが、まず、現行のワクチンを中止をしてから、このよ うな検討をしてもらいたいと思います。現行のワクチンでつないでいる間にも、被害者 は罹患者を超えて増えております。  「結論」は、大体、今、述べた内容のことです。  それと、1つ付け加えておきたいのは、ワクチンを打っていて、やはりこれはワクチ ンを打つかどうかというのは、親が判断をするわけですが、年齢別的に例えば、麻疹と かそういうふうな年少時に危険があるワクチンというのは、その必要があるかもしれま せんが、日本脳炎など、例えば、海外に行くときに必要なことも、それはあるかもしれ ませんが、それが自分で判断ができるのであれば、自分が判断をして打つような、子ど もの医療に対する意思、権利というのも非常に小児科として大事なことだろうと思いま すので、今からそこら辺はワクチンを打つ上でも重要なことになってくるだろうと思い ます。  以上です。 ○江崎課長補佐  小林先生、ありがとうございました。  それでは、最後になりますが、福岡市立西部療育センター長の宮崎先生に、次の発表 をお願いいたします。 ○宮崎委員  先ほどから、急性散在性脳脊髄炎、ADEMというのが盛んに出てまいりますけれど も、最初に一般的なADEMのお話をさせていただいて、その後、その下に小児急性神 経系疾患、AND調査を予防接種研究班の中でやらせていただいていましたので、その 中からADEMに関わる部分を少しまとめさせていただきたいというふうに思います。 (PW)  急性散在性脳脊髄炎、ADEMは、免疫性の神経疾患の中に入っています。多発性硬 化症という大人によく起こる脱髄性病変と似てはいるんですが、多発性硬化症が何度も 繰り返すのに対して、ADEMは基本的には1回きりの病気で、むしろ横断性脊髄炎や 視神経炎や急性小脳失調症と似たような病態であろうというふうに考えられています。 末梢神経に出た場合、ギランバレー症候群ということになりますけれども、中枢神経を 場とした免疫による炎症性の疾患であるということです。 (PW)  急性に発症して単相性に経過する。脳脊髄に散在性に、ばらばらに複数の脱髄の病変 が起こってきて、発熱や意識障害、麻痺、失調、けいれん、行動異常などが起こってき ます。子どもに多くて、大体諸外国の報告を見ても平均7歳前後、男女比はやや男の子 に多いようです。免疫学的な機序が考えられておりまして、原因としては、いろんな種 類のウイルスや細菌の感染の後、数日から大体3週間ぐらいが多いようですけれども、 それから予防接種の後、あるいは全然原因がよくわからないものというふうになりま す。予後は後遺症を残すケースも多々あるんですけれども、生命予後は、脳炎や脳症よ りは比較的よいというのが特徴です。 (PW)  いろんな説がありまして、1つは神経の鞘のタンパクと病原体とのタンパクの相同性 があるとか、何か感染によって非特異的にリンパ球が活性化されて、そういうことが起 こるのではないかとか、中枢神経の血管の内皮が障害されて、漏れ出て、結果的にはサ イトカイン等でやられるとか、いろんな説がありますが、まだよくわかっていません。 最終的には、活性化されたT細胞が病変部位に出てきて、いろんなサイトカインを出し たり、あるいは神経の鞘をつくっているミエリンのタンパクに対する抗体が上がってき たりします。 (PW)  先行感染として挙げられているものは、一言で言うとほとんどすべてのウイルスが原 因として報告があります。はしか、風疹、水疱瘡を始め、風邪のウイルス等々いっぱい あります。細菌でもありますし、原虫や真菌の報告もあって、最近では骨髄移植とか虫 刺されの後というのも報告として出てきております。 (PW)  ワクチンもいろいろで、日本脳炎が今、話題になっていますけれども、実は日脳ワク チンに特定せずに報告としてはございます。 (PW)  結局、今ここの神経の鞘の問題なんですね。神経細胞があって神経の軸索があって、 絶縁しているこの鞘がミエリンというところで、ここがやられるということで、神経細 胞本体がやられることが少ないので、生命予後が多分よいんだろうというふうに思いま す。 (PW)  実は、髄鞘、神経の鞘というのは、生まれたときにできあがっているものではなく て、だんだんでき上がるものです。ですから、大体1歳から数歳で完成してきますの で、ADEMが大きい子に多いというのは、そういうのもあるかもしれません。 (PW)  これは、ある例ですけれども、こういうMRIという、最近こういう器械ができてき たので、逆にADEMが診断しやすくなったというところがあると思います。CTでは ややわかりにくいんですけれども、MRIで非常によく病変はとらえられます。T2強 調画像で多発性に、ぽっぽっと白くなるところが出てきて、ですから、神経症状も多彩 になってきます。 (PW)  動物モデルというのがADEMにはございまして、20年前、私自身がやっていたんで すけれども、ラットにモルモットの脳みそとアジュバントを加えて注射しますと、大体 10日から14日目にきれいに麻痺が起こってきます。そして、亡くなるものは亡くなりま すけれども、よくなるものはそのまま元気に生き延びます。 (PW)  これは接種前の元気なラットですけれども、麻痺が起こるとしっぽが垂れて手足が麻 痺をしてきます。 (PW)  脳みそとアジュバントを混ぜると、ああいうことがきれいに起こってきます。 (PW)  その脳みその中の何が原因かということをいろいろ検索されまして、1つ、一番有名 なのが先ほど言いました、髄鞘ミエリンの塩基性タンパク、これがそのアミノ酸配列で すけれども、これは人のものですが、大体、動物種によって微妙に違うんですけれど も、かなり相同性があります。そのほかに、プレート・リピート・プロテインとかミエ リンのオリゴ・デンドロサイト・グライコプロテインとか、ミエリン・アソシエート・ グライコプロテインというようなものも抗原になり得るというふうに言われています。 (PW)  脳みそを仕込まなくても、そういうので感作したT細胞を移入しても麻痺が起こって きますので、これは抗体ではなくて、感作されたT細胞が起こしてくる病気であるとい うふうに考えられています。 (PW)  これはラットの病理なんですけれども、麻痺が起こったラットの脳をとってきます と、こういう散在性に病変が起こってきていまして、基本的には血管の周囲に単核球の 浸潤があって、ここに脱髄という鞘が壊れた像も同時に見えてくるということです。 (PW)  今日、御出席の平山先生の御指示で、小児急性神経系疾患調査というのがずっと前か ら行われていまして、最近のものを私たちが担当させていただきました。これは、15歳 未満の小児科の入院症例は大体10地区程度でやらせていただいています。疾患は脳炎、 ADEM、脳症いろんなものがありまして、合計18疾患を対象に数年置きに調査をさせ ていただいております。今日はこの中から比較的最近のものをピックアップしてADE Mをお話したいと思います。 (PW)  これが一番最近の2001年、2002年の2年間で急性の神経系疾患5,500例入院症例のど ういう疾患で小児科に入院したかの一覧表です。脳炎とか脳症は、基本的には小さい子 によく起こる病気なんですが、ADEMは少し大きい子に起こるという特徴がありま す。脳炎、脳症はやはり死亡例がありますけれども、ADEMはありませんでした。こ の21例の中で1か月以内に予防接種歴があったのは2例でした。1例がインフルエンザ でもう一例がB型肝炎でした。あとは無菌性髄膜炎が非常に多くて、新生児期とこの時 期に多いとか、細菌性髄膜炎は小さい子に多いとか、熱性けいれんはこの時期と、季節 分布とかいろんなデータがたくさんありますけれども、今日はこの程度にさせていただ きます。  実際、子どもの人口の中で、どれぐらいの頻度で起こるかというのは、なかなか調査 が難しいんですけれども。 (PW)  幾つかの県、奈良県、三重県、岐阜県、福岡に比較的報告がよく上がってくる県とよ く上がってきた年度だけピックアップして、15歳未満人口10万あたりで、どれぐらい脳 炎、脳症ADEMが出ているかを概算してみました。これは概算なので正確ではありま せんが、ADEMが10万人当たり毎年0.38人というのが出てきました。やはり、脳炎、 脳症よりは少ないです。ただ、県によって、奈良県などはかなりよく報告してくださる んですけれども、0.30程度でした。 (PW)  ADEMとして上がってきたケースをまとめますと、3年間で数十例あるんですが、 若干男の子に多いということ。予後としては、全治経過がよくて後遺症が10%弱、死亡 例は幸いにしてありませんでした。 (PW)  年齢分布なんですけれども、2歳ごとに区切ってありますが、6、7歳のところがピ ークで、平均しますとやはり6歳程度ですね。これは諸外国の報告と余り変わりませ ん。ですから、日本脳炎ワクチンの接種年齢というのは、3、4歳に1つの山があっ て、この辺にもう一つ山があって、15歳、山があるんですけれども、直接的には対応し ない感じです。 (PW)  これは季節なんですけれども、季節的には夏から秋にかけて多くて、もっと細かく月 がわかったものだけピックアップしてみますと、9、10、11月とだんだん増えてきま す。外国の報告では冬に多いという報告があります。これも日本脳炎予防接種の時期と は若干ずれてはきます。 (PW)  ワクチンによる副反応健康被害というのは、昔から種痘後脳炎とか百日咳のワクチン による脳症とかいろいろあって、それぞれに中止されたりワクチンの改良を行われて、 日本脳炎に関しては、前からADEMが問題になって、先ほど、高度精製の話とか組織 培養化のことが進んでいるということです。 (PW)  これは参考資料です。福岡市で平成13年度に何月ぐらいに日本のワクチンが打たれて いるかというデータなんですけれども、やはり6、7、8に接種が割と集中しまして、 9月以降はいわゆる接種数が減ってきますので、全体のADEMとの相関はなかなか出 てこないです。1回目のワクチン接種は大体3歳、4歳にピークがきますので、3回目 はこの1年後になるということになります。 (PW)  これは、全く独立に比較的最近、免疫性の神経疾患の研究班で、福岡県内を対象に5 年間のADEMの調査がたまたま行われました。それで、5年間で大体25例ぐらいのケ ースです。疑い例を含めて26例ぐらい。ですから、年間約五例ぐらいのADEMの発症 ということになります。 (PW)  年齢もやはり、私たちのAND調査と非常によく似ておりまして、やはりここがピー クになります。 (PW)  症状は運動麻痺、意識障害、けいれん、膀胱直腸障害、失調、構音障害等々です。M RIの病変としては、やはり皮質の下の白質が一番よく起こるということです。 (PW)  この調査では、26例中ワクチン関連が4例ありまして、日本脳炎、風疹、B型肝炎、 ポリオの報告がなされております。  これは諸外国の比較的最近の報告との比較ですけれども、大体諸外国と日本のADE Mはそう大きく違うということはなさそうです。 (PW)  まとめですけれども、ADEMは非常に種々の原因で起こり得る感染と絡んだ免疫性 の中枢神経疾患であって、小児によく起こって、人口10万あたり年間0.3〜0.6程度では ないかというふうに思われます。  原因の特定は非常に困難な場合が少なくなくて、日本脳炎ワクチンとの密接な疫学的 な相関、例えば接種が増えるとADEMが増えるというような突出は見られませんでし た。  もう一つ、なかなかはっきりしないADEMで今まで密な調査が行われたことがあり ませんので、ADEMの全国調査をしてはという話が今ありまして、計画をしておりま す。 (PW)  これは、AND調査にもならいまして15歳以下の小児で、入院施設を利用する全国の 医療機関を対象にADEM及びその周辺疾患をとらえたいというふうに思っておりま す。数県、非常に協力のいい県では是非、全数調査になるように気を付けたいというふ うに思っています。  とりあえず、後方的な調査をやって、それで前方的な調査ができれば一番いいかなと 思っております。年齢、性、発症月、先行疾患、先行予防接種、主な症状予後等を調べ たいというふうに思っております。 (PW)  こういう診断基準でやろうかなというふうに思っています。 (PW)  私のところはここまでですけれども、ワクチンが効くか効かないかということで、現 在減っているのは多分、社会的な要因が非常に大きくなってきたんだろうと思うんです けれども、昔々をずっとさかのぼると、やはり日本脳炎というのは基本的に子どもの病 気だったみたいなんです。5歳〜14歳というのが非常にたくさん病気になっていて、ち ょうど勧奨接種をした辺りから子どものケースがずっと減ってきて、ただ大人がしばら く非常に減らなかった時期があって、特別対策をやってから大人も減ったような感じが しますので、かつてはやはりワクチンがかなり制圧した部分が大きかったのではないか というふうに思っています。  今の状況というのは、先生方が先ほどから言われたように、いろんなことが絡み合っ て今の状況をつくっているんだろうというふうに思います。  以上です。 ○江崎課長補佐  宮崎先生、ありがとうございました。  ただいま、7人の参考人の方にそれぞれの立場から御発表をいただきました。  本日は、参考人の方以外に有識者の方として3人の先生方にも御出席をいただいてお ります。簡単に御紹介をいたします。  聖マリアンナ医科大学医学部の教授で、横浜市西部病院長の加藤先生でございます。  東京大学名誉教授で、日本子ども家庭総合研究所長の平山先生でございます。  日本医師会常任理事で、感染症の方をやっていただいております雪下先生でございま す。 これからは、初めにも申しましたが、フリーディスカッションという形で積極的 に御発言、質疑応答をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、ここで有識者の方に最初にコメントをお願いいたします。 ○加藤委員  それでは、私の方からお呼ばれさせていただいたので、一言だけ。  私自身は百日咳を古くから勉強していた者として、ちょっと小林先生の御意見に対し て意見を述べさせていただきますけれども、疾病というものの存在と、それからワクチ ンの行政と、それから予防接種を行うか行わないかということと、病原体が存在してい るか、していないかと。この3つの観点から予防接種を継続すべきか、またはやめるべ きかということを考えなくてはいけないということを常日ごろ考えています。  百日咳に関しては、平山先生が大先輩で大変恐縮ですけれども、1970年代のちょうど 真ん中辺りに、このADEMどころではないような、いわゆる百日咳に十分関連がある であろうと思われるような死亡例というものが日本で続きまして、その影響を受けて百 日咳に関するワクチンが一時、3か月間中止になって、しばらくの間接種がとまった。  また、すぐ、その後、再開はされたものの、非常に恐怖感があって、百日咳を含む3 種混合ワクチンの接種率が、従来80%であったものが9%まで低下したという事実があ ります。  その百日咳ワクチンをやめてしまった大きな理由は、当時、百日咳という病気が教科 書上、幻の疾患と言われたんです。もう百日咳という病気はありませんと。私の恩師が 教科書に、百日咳は幻の疾患であると書いたんです。私はそうだと思っていた。それ で、死亡者も当然なかったんです。それで皆さん、やめてしまったと。  やめてしまったところ、接種率が下がったらばどうなったかというと、それをやめた 後の5年間で何と150人の乳幼児が百日咳で死亡したんです。それで、完全に歴史が10 年間さかのぼってしまったという現実があるんです。  したがって、天然痘であるとか、これから起きるであろうと思われるポリオのように 病原体が全くなくなってしまったということが確実になった疾病に関しては行政上、十 分な責任をもって予防接種をやめても、これは大丈夫であろうというのは私の意見なん ですけれども、今日の御発表を聞いてみると、どうも病原体がまだまだありそうである というようなこと。それから、更にいろんな病気がまだ、それを絡みでジェノタイプも 変わってきたりするようなこともありそうであるというようなことも勘案してみると、 どうも病原体が駆逐されていない、また、豚の汚染度もありそうだというようなことか ら考えますと、もう病気がないからとか、病気がおさまっているから、しかも百日咳よ りももっと不完全な意味でのワクチンによる副作用との関連性。そういうものから絡め て、この日本脳炎の予防接種はもうやめようという考え方を国がすることはちょっと危 険ではないかというふうに私個人としては考えております。  以上です。 ○江崎課長補佐  ありがとうございました。  平山先生、お願いいたします。 ○平山委員  平山でございます。  今日はいろいろな、最近の日本脳炎をめぐる研究の成果などを伺いましたが、ちょう ど私が小児科医になったころに日本脳炎のワクチンについて、当時、沖中先生を班長と する研究班が動いたことがありました。これは申し上げるまでもなく、当時使われてい た狂犬病のワクチンが脳脊髄を原料にしていて副反応が問題であり、それと同じような ことで、日本脳炎のワクチンの安全性はどうなんだろうという意味で、かなり全国的に 大きな調査がされ、ケースの報告もあったと思います。  ただ、その後、日本脳炎のワクチンの精製が非常によくなったお陰で、我々も余り心 配しないでワクチンが使えるようになりました。今日、さっき倉根先生からタイの報告 を伺いましたが、私、そのころは台湾で調査をされて、それで効果が確認されたという 話を伺った記憶がございました。  最近、とにかく日本脳炎が見事に減ってきている理由は、先ほど来のお話の中にも幾 つかキーワードが入っていると思うんですけれども、とにかくワクチンが効いているこ とは間違いないにしても、それ以上に患者の発生が減っているのは、さっき渡辺先生の 言われたようないろいろなファクターがあるのかなと思います。  それから、一方で自然感染を受けている人がどのくらいあるかという話も、さっき森 田先生のお話の中にあったと思うんですが、私が学会で伺った話では、例えば兵庫県か いわいで年間、人口の1割ぐらいが新しく感染を受けているという計算をしておられま した。  年間1割の人口が感染を新しく受けているとすれば、やはり今、日本でワクチンをや めるわけにはいかないだろうと思うんですが、ただ、ジェノタイプが変わったとか、そ れから、脳炎を発生するような意味での病原性が今、日本に主にいるウイルスでは減っ ているのかどうか等々、いろいろ教えていただかなければいけないと思っております。  それと、前は日本脳炎のウイルスというのは冬の間、どこにいるんだというのが一生 懸命研究したけれどもわからないという話を、感染研に前おられた大谷先生辺りからも 伺っていました。鳥も調べた。それから、コウモリも調べた。ついには蛇からヤモリま で調べたけれども、ウイルスが見つからないと。一体、冬の間、ウイルスはどこにいる んだという話をなぞとして伺ったんですが、その後、それがわかったのかどうか。ある いは、お話の中では東南アジアから鳥が運ぶということは十分ありそうだと思うんです が、証拠があるのかどうか。その辺も教えていただけるとありがたいなと思っておりま す。  しかし、いずれにしましても、脳を使わないワクチンが3相試験まで行っているとい うことなので、是非、1日も早くそのワクチンが日の目を見て使えるようになれば、我 々、安心してワクチンが使えるというふうに期待をしているところでございます。よろ しくお願いします。 ○江崎課長補佐  ありがとうございました。  それでは、雪下先生、よろしくお願いいたします。 ○雪下委員  専門の先生方から多方面にわたる御意見を聞かせていただきまして、ありがとうござ いました。  風疹とか、麻疹とかに追われまして、日本脳炎のワクチンについては日本医師会とし ましても特別の対策を考えているところではありませんでしたが、今、まだいろんな問 題があるんだなということを自覚させていただきまして、対応していこうというように 考えております。  国内の発生がほとんどなくなったからといって、ワクチン接種をやめるかどうかとい う問題は今の動物とか、そういうものへのウイルス保有率等から見ましても、先ほど加 藤先生も言われたとおり、私はワクチン接種をやめるという段階ではないというふうに 考えてはおります。  それから、現場を預かる者としまして大変ショックでしたのは、小林先生の発言の中 に接種事故というのが私の考えている数の何倍も多いという報告でございました。これ はいつごろのデータか、はっきりわかりませんけれども、この辺については十分、日本 医師会としても現場の先生方にPRをいたしまして、こういう事故を少なくともゼロに 近づけるように持っていかなければならないというふうに考えております。  個別接種の問題、原則、私どもは集団接種はやめまして、個別接種をやるようにとい うことは法的にも決められたことでありまして、それに努力するようにしておるわけで すが、まだ半分近く集団接種があるという先生のデータを知らせていただきまして、大 変ショックでございます。この辺についても、特に今後よく調べて対策を講じていきた いというふうに考えております。  それから、子どもでの接種は、勿論、乳児と幼児については別だと思いますが、子ど もの判断に任せるべきだという、これは個人の権利等から当然、そうあるべきであると いうふうに思ってはおります。しかし、例えばインフルエンザの65歳以上の2類疾病と しての予防接種の実施に当たりましては、痴呆老人についてはどうするのかというよう なこと。それがかなり大問題で、今でも、シーズンごとに問題になるわけです。そんな ことから考えますと、個人の判断は尊重しなければいけないだろうと思いますけれど も、そこで実施されるかどうかの問題はやはり医師の裁量権に任せてもらわなければな らない部分もあり、それがなければ感染症対策はできないという部分も認めていただけ ればというふうに、いつものことながら考えております。  また、いろいろ先生方からの意見を聞かせていただきまして、参考にしていきたいと 思っております。  以上です。 ○江崎課長補佐  ありがとうございました。  それでは、時間的には12時半までの予定ということで計画しております。参考人の 方、発表された内容とか、それに関わらない部分でも結構ですので、どうぞ、活発に御 意見をお願いいたします。 ○牛尾結核感染症課長  森田先生、平山先生が聞かれましたウイルスの越冬の話は何か新たな知見はございま すか。 ○森田委員  ウイルス学的に非常に興味があることなんですけれども、日本の中でも、ある程度越 冬していることはやはり間違いないだろうと思うんですけれども、まだ何の証拠も上が ってきていません。だから、こういうふうに外国から定期的に来ているという方が、今 回証拠が明らかになったということです。  ちょっと昔のことを話せば、大谷先生は毎夏燈台に行って、渡ってくる鳥を捕まえて 何百羽と調べられたそうですけれども、全部、陰性だったというふうにおっしゃってい ますけれども、古くは1950年代に米国の軍医のシエーラーという人がサギから日本脳炎 ウイルスを分離しておりますので、やはり鳥がある程度運び屋となるのは間違いないだ ろうと思います。ですから、中国南部辺りを今後、熱帯医学研究所として調査したいと いうふうに思います。 ○牛尾結核感染症課長  済みません、併せて私の方からちょっと問題提起をさせていただきたいんですが、と いうのが、今日はマスコミも来ておりますので、実は行政的にはウエストナイルの侵入 というのがちょっと大きな問題になっておりまして、同じフラビウイルス属に属してい ますので、日本では日本脳炎接種をしているからウエストナイルが侵入しても大丈夫で はないかという質問をときどきいただくんですが、この際、改めて先生方にその辺の見 解をごちょうだいできれば、マスコミもその辺を報道していただければ誤解も解けるの かなというふうに思っておりますが、どうぞ。 ○倉根委員  まず、ちょっと森田先生がおっしゃったことに関連してよろしいですか。  森田先生の御発表で、確かにウイルスが変わって、一応、私の共同研究者で中国の研 究者がおりまして、やはり上海でも同じ件が起こっていて、もともとはジェノタイプ3 型だったんだけれども、それが1型に置き換わっている。ですから、先生おっしゃった ように上海、韓国、日本と似たようなことだろうというふうに思っております。  それから、平山先生、先ほどちょっとお示しになかった台湾のデータでございますけ れども、あれも1967年か1976年ですが、2度ずつ80%というデータがございます。た だ、ちょっと数が少ないので、私、今日、もう少し対象数が多い方を示しましたが、そ ういうデータがございます。それは80%というふうに出ております。  それから、課長の今おっしゃったウエストナイルの件ですが、一応、両方ともフラビ ウイルスで、日本脳炎抗体群、血清型群となっておりますので、大体、先ほど森田先生 が示されたEタンパクの外側のタンパクのアミノ酸が大体8割一緒というウイルスであ ります。ですから、いわゆる抗体の交差性は起こります。  ただし、中和抗体で、例えば日本脳炎で免疫したものの中和抗体。それから、逆のウ エストナイルで免疫したものの日本脳炎に対する中和抗体の率を見ると、私たちのデー タだと10分の1から100分の1ぐらいのタイターです。  ですから、例えば日本脳炎免疫のものに対して1対320のタイターがあったとすれば、 それをウエストナイルではかると1対30ぐらいの、10分の1から20分の1ぐらいです。 それは患者さんでも、アメリカのウエストナイル感染者の血清をいただいてきて、日本 脳炎ではかるとやはり20分の1とか、そこら辺の差になります。つまり、クロスはある 程度、起こります。  さて、それではプロテクトするかということですが、動物でプロテクトさせようと思 えば、ある程度します。というのは、プロトコルを考えて、こういうふうに打って、腹 腔をやって、そしていろんな投与ルートを変えてやりますと、ある程度、プロテクトは 起こすことができます。それはマウスでもそうですし、ハムスターでもそうですし、ほ かの幾つかのデータがあります。  ただし、ですから、当然プロテクトの程度はホモです。つまり、日本脳炎でやって日 本脳炎でやるとか、ウエストナイルでやって免疫しておいてウエストナイルでやるのは 低いだろうけれども、するかしないか、○か×かと言われたら、恐らく動物レベルでは ○。△と言いたい人もいるかもしれませんが。  それでは、ヒトでどうかといいますと、これは現実にはわからないわけです。そうい うデータはありません。  例えば、日本脳炎のワクチンを打った人の血清を持ってきまして、ウエストナイルを 中和するかといいますと、先ほど言いましたように10倍、20倍、ひょっとすると100倍 ぐらいの差がありますから、中和はしないというデータがアメリカから出ております。 つまり、日本脳炎のワクチンで1対1,000とか、1万のタイターが出れば、それは100分 の1になっても、ある程度ディテクトできるかもしれませんが、そこまで上がりません ので、一応中和はしないと。だから、効かないのではないかというデータといいます か、論文は当然あります。  それで現実には、先ほども言いましたけれども、日本脳炎ワクチンがウエストナイル を防御するというヒトでのデータは、類推はあるにしても、効くというデータがありま せんので、現段階では我々はやはり日本脳炎ワクチンというのはあくまで日本脳炎に対 するものであって、ウエストナイルに対してそれを打つというのはやはり尚早だと思い ます。  ただ、絶対に効かないのか、ゼロなのかと言われると、それは、もし動物のデータを 信じる、あるいはいわゆる免疫学的に考えれば、それは少しはいいかもしれません。つ まり、何人かはそれによって助かるかもしれない。しかし、だからといって100人を打 ったら100人、あるいは99人ウエストナイルをプロテクトできるかと言われたら、それ はわからないし、動物のデータを考えると、やはりそこまでは無理だろうというふうに 考えられます。 ですから、日本脳炎はあくまで日本脳炎であって、現段階でウエスト ナイルに対するワクチンは存在しないというのが私の意見でございます。 ○小林予防接種専門官  森田先生、今のお話について。 ○森田委員  私も同意見で、私はもっと強く、今の日本のワクチンは日本脳炎に非常に有効であ る。これはもう間違いない。だけれども、万が一、特に米国の西ナイルウィルス株が日 本に侵入した場合は日本の一般のポピュレーションはナイーブであるというふうに考え られます。  だから、西ナイルウイルスには西ナイルウイルスのワクチンが必要であるというふう に思います。 ○倉根委員  非常に乱暴な計算なんですが、例えば今の、先ほど小西先生のデータで10%ぐらいは 感染といいますか、感染としてNS1抗体ができているわけですから、体内でウイルス が増えていると考えるべきだと思うんです。そうすると、100万人いれば、乱暴に言う と10万人は感染していると。それで、ウイルスは体内で増える。  それで、発症率といいますか、つまり感染として成立した人の中で何人は日本脳炎は 普通発症するんだというような、これは古い、50人から1から、1,000人から1という のが出ておるんで、1,000人から1人だというふうに一番低く見積もったとしますと、 100人出てもおかしくないのかなと。  それで、小西先生のスタディーというのは、ちょっと古い血清を使っていたこともあ るし、実際には10%食われているのか、ちょっとよくわからぬということも。わからぬ と言うと失礼ですね。そのスタディーは間違いありませんが、現実に、それは場所によ っても違いましょうし、例えばそれを1%というふうに下げたとしても、100万人いた ら10人ぐらいの日本脳炎の患者が出ても、ちょっと抑え気味に考えてもおかしくないか もしれないと、現実にはそんなに出ていないということを考えると、勿論、先ほど蚊の 話が出ていまして、それから生活環境。それから勿論、30年前の子どもと今の子ども の、いわゆる免疫状態ですね。栄養の状態とかも含めたベーシックな非特異的な免疫用 途も含めた免疫ということも、確かにある程度よろしいでしょうから、それも関わると 思いますが、やはりそういう意味では、本当はもっと出てもおかしくない。ということ は、やはりワクチンがそれなりにというか、かなり防御にといいますか、日本脳炎を減 らすことに貢献しているということは、私はそういうふうに考えてよろしいのではない かと思っております。  ただし、打たなかったら幾らになるんだ。蚊の減少、あるいは先ほどデータをお示し になりましたが、蚊における感染下のパーセントの減少が何%貢献していて、ワクチン は何%貢献していて、これを一つ外したらここまで出るはずだというような、算数では ある程度出てくるのかもしれませんが、非常に地域差のあることでありますので、私自 身もそれをデータがあって言っているわけではございませんけれども、ラフに考えると そういうふうな計算ができるのではないか。ですから、やはり日本脳炎ワクチンはとめ てしまえば、こういう数の計算上ですけれども、出てきておかしくないのではないかと いうふうには考えます。ですから、やはり現実には日本脳炎ワクチンを今後、存続すべ き。  ただし、ただしといいますか、今、日本脳炎はマウス脳でつくっておりますので、今 後、それよりも更にいいものといいますか、それよりも副作用、アドバースイベントが 少ないと考えられる。あるいは、それなりのデータを持っているものがあれば、やはり 今度は積極的にそれを使っていくというのは当然のことではないかというふうには意見 としては思っております。 ○森田委員  それに関してですけれども、私の発表の中で言いましたけれども、日本脳炎というの は、やはりアジア全域という視野で考えなければいけないと思います。  アジアではまだまだ大流行中でありますし、実際、おととい中国から電話をいただき まして、日本人が熱が出て、神経症状が出て、どうも日本脳炎らしいですね。ですか ら、日本人で東南アジアに旅行している人の数が幾らであるのかということを考えてみ た場合に、何百万人になるのではないかと思います。そうする状況の下では、県単位で 減ったとか増えたとかというよりも、アジア全体の問題として考える視点もやはり必要 ではないかというふうに考えます。 ○岡部委員  今のに関連してくるんですけれども、日本はやはりうまい具合にというか、確かに日 本脳炎はかなりコントロールできてきていると思うんです。それで今、患者さんの数も 少ない。しかし、一方ではアジアではまだまだ日本脳炎は多いし、実際にはワクチンも 行き渡っていないところも多い。  我が国では、一方では非常にいいワクチンを今、改良しつつあるというのがあって、 ほかの国は余り、日本脳炎のワクチンの開発は進んでいない、あるいはそういう余裕も ない、あるいは関心がないというようなアジア地域の中で、もう一つは自分たちの住ん でいる周辺のところをきちっと押さえておくということが我々の安全性にもつながるわ けですし、あるいは貢献という問題でもつながる。今日はベロの話も出ているわけです けれども、そういう意味では早く、改良されたワクチンをアジアに向けてきちんと供給 できるような形ということもまた、日本脳炎に対して進んだ国としての役割ではないか というふうに思います。  ですから、確かに理論的な副反応のリスクの問題があって日本では早くいいワクチン に必要であるならば切り替えるべきであるという理論は、そのまま海外に向けて安全な ワクチンを供給できて、しかもそれは我々の安全保障に結びつくのではないかというふ うに思います。 ○加藤委員  私、今年の小児科学会でちょっとセミナーで発表させていただいたときに許可を得て いるので、ここでお話ししてもよろしいかとは思いますけれども、今、治験が進められ ているワクチンの件に絡んでですが、それを行うに当たって、要するに治験というのは 第1相から第4相までありまして、第1相試験というのが成人を対象として接種してい くわけなんですけれども、その効果を、中和抗体を調べる上において全採血、ワクチン を接種する前の成人の抗体がゼロのものを探さなければいけなかったという仕事があっ たようです。  それに対して、非常に莫大なお金がかかるほど、要するに、成人というのは18歳以上 になりますけれども、その方を探すのが非常に困難だと。逆に言うと、それ以上の年の 方々というのはほとんどの方々が何らかの形で日本脳炎ウイルスに汚染されていたとい うことはわかりました。  それから、一方、逆に今度は第3相試験というのは、今度は実際に子どもたちに接種 をするわけですけれども、その子どもたち、大体3歳を中心とした子どもたちなんです が、その子どもたちを中心として第3相の試験を開始したところ、前採血をしたところ が、私も非常に予想外だったんですけれども、三百何例中、1例を除いてすべてにおい て日本の子どもたちは抗体を持っていない。だから、先ほどの話にありますように、汚 染と発症とはまた別の問題かもしれないけれども、日本という国の国民たちはその年齢 の間において何らかの形で、私はすべてが大人になるまでワクチンをやっているとは思 っていないので、何らかの形で少なくてもウイルスによって感染は受けていると。感染 症を起こしている例は少ないんでしょうけれども、感染は起こしているということは、 この治験の前段階で私はちょっと興味を持ったところでございます。 ○大矢委員  ちょっと話が変わりますけれども、私、今日6例、症例を一応お出ししたわけですけ れども、それで感じたことを少し追加してお話ししたいと思います。  我々、これをやっていますと6例というのはびっくりして、今回のこの会議の始まっ たきっかけにもなったわけですけれども、実際にデータを見ますと非常に不確かな部分 でデータが出ているという部分があるということを今日は強調したかったわけですけれ ども、その中でいろいろな意見があるんですけれども、1つは、この不活化ワクチンだ から予防注射に関係するだろうというふうな形でADEMだというふうな診断が入るよ うな部分があるとか、だから、前に予防注射やっているからこれはADEMでしょうと 逆の診断が付いているとか、それから、もう一つは先ほどの宮崎先生からのお話のよう に感染症と、それから予防注射とADEMの相関関係というのは、因果関係というのは 全く決定できない、わからないものだと。  ただ唯一、このデータがある程度信頼できるというふうに思うのは、それぞれの神経 のかなり高度の医療機関で一応ADEMだという診断を付けられたという、それだけで ADEMという診断が付けられたんだろうというデータの形を私はしっかり読んでいた だきたいと。だから、ADEMがこんなにもあるんだから、すぐ予防注射のせいだとい うふうなひとり歩きを是非防がなくてはいけないと。  だから、本当の意味でADEMと、それから予防接種の関係というのはまだまだ解明 しなければならぬことがあるのではないかという印象があります。だから、一人歩きの データというのが非常に気になるということでございます。それが一つの印象でござい ます。○小林委員  いろいろ意見をお聞きしましたけれども、私がここで言いたかったことは日本脳炎の ワクチンをやめろということですが、やはり臨床医として日々ワクチンを打っているわ けです。そこで、具体的には一人ひとりから聞かれるわけですが、どのようにして答え ていっていいのか、どのように打つか打たないかの判断を、私も含めてするのかという のは非常に日々迫られた問題で、今、まさに7月というのは最中なわけですけれども、 研究も非常に大変だと思うんですが、もうちょっとスピードアップをして判断をしてい ただいたらいいかなと思うのは先ほどのADEMの正確な診断、及び今までADEMで 診断された人の予後というのが、そういうふうに発表されるのが私どもの唯一の情報源 なわけです。  だから、そこら辺をきちんとできるようにしていただきたいというのが1つと、先ほ ど小さい子どもの判断で打てるかどうかという話がありましたけれども、少なくとも国 内で慌てて打つ必要があるかどうかというのは非常に疑問だと思うんです。東南アジア に行く機会というのは今から非常に増えるんだろうと思いますが、成人してからも十分 間に合うのではなかろうかというふうに考えております。  だから、行政的に国が国全体としてやめるのが危険だということであれば、やはりき ちんと具体的な日本脳炎の今の状況および副作用の状況、効果の状況というのを一人ひ とりの国民に明らかにしていただいて、接種する医師にも十分な情報をいただいて、そ の上で判断をしたいと。判断ができるような状況をつくってほしいというのが一つの私 の中止するまでに至るお願いなわけです。  それで、やはり一律に続けるというには確かに行政、例えば一臨床医がその場で打つ かどうかというような判断には、非常に重い状況のワクチンだろうと思いますので、そ こら辺をはっきり厚労省として出していただきたいということでお願いしたいんです が。 ○森田委員  私、東南アジアのことを申し上げたのはそういう視点も必要でありますということで 申し上げたので、日本の現状を考えても西日本から九州、沖縄に至るところは、まだ私 自身はワクチンをやめる段階には達していないというふうに思います。ですから、それ は今、その地域で生活しておられる子どもたちにも、やはりまだ必要になるのではない かというふうに私は判断しています。  とはいえ、例えば現行ワクチンに非常に重篤な副作用があるとすれば、それに無感心 ではいられないわけでありますけれども、特にこのADEMの問題はマスコミに情報公 開で発表されまして6例ということで、我々の方にもいろいろ取材とかありましたけれ ども、400万人ぐらいに打って6例ということは、大体100万人に1.5人です。  先ほど宮崎先生がおっしゃった自然発生といいますか、ADEMの発症率、 3.8人/100万人ですね。これだと、本当にワクチンの因果関係というのが統計的にサイ エンティフィックには全く検討不能ですね。ですから、これに対しては最終的には結論 をもらうというのは難しいと思うんです。  とはいえ、そういう疑いがかかるというのは現行のワクチンがマウスの由来であると いうところから来ているわけで、そうでなければそんなことは普通考えなかったです ね。ですから、今、幸い、日本で組織培養によるワクチン開発が進んでいますので、こ れに切り替えることによって、その心配は払拭されるのではないかというふうに思いま す。 ○小林委員  いいですか。  それは専門家とか一部の医師の間では常識なんでしょうが、それが実際、現場の医師 及び国民に十分納得できるような今の情報の回路というのがないというのが一つの問題 ではないかと思います。だから、その上で判断されるようになったらそれは結構ですけ れども、そういうことを今、お話ししているわけで、そういうことです。 ○平山委員  先ほど来、お話が出ている中で、子ども自身に予防接種をやるかどうかの判断をさせ る方向というお話があって、私はそれは結構だと思うんですが、そのためにはやはり子 どもに予防接種がなぜ必要で、痛いけれどもやらなければならないということを理解さ せるだけの保健知識を与える必要があると思います。それは文部科学省の仕事なんです が、今の学校の状況から言えば、保健の授業なんていうのはどんどん削られる一方で、 とても子どもたちにそういう教育をする余裕があるとは思えない現状だと思うんです。  これは子どももそうだし、親たちだって本当に予防接種の必要性をどれだけ理解した 上で受ける受けないを決めているかと言われれば、そこは非常に怪しいと思いまして、 その辺の、今、親にもPRのために厚生労働省から子どもの健康というパンフレットを 配っていらっしゃいますけれども、あれをきちんと読んで理解している親というのが果 たしてどれだけいてくれるのかということすらわからない現状だと思うので、やはり保 健の教育、健康のための教育というのがもっと子どものうちからきちんとやるような方 向に、これから大人がもっと本気で考えなければいけない時期なのではないかしら。そ う思っております。 ○倉根委員  先ほどのいわゆる小児と、それから成人してからのワクチンの関係ですが、結局、特 に日本脳炎もそうですけれども、やはり感受性が高いというか、つまり同じ量のウイル スが体に入ったとしても、成人はかなり免疫応答が抗体も含めて強いので、現実にはな かなか発症しないんです。動物もそうですし、ヒトもそうでしょう。  やはり、ウイルスが入ったときに最も感受性が高い、つまり発症しやすいというのは 小さな子ども。つまり免疫が十分にできつつある状況の小さな子どもであると思いま す。ですから、そこの時期を抜かしてしまうと、一番感受性があるときに免疫せずに、 少々ウイルスが入ったと。ちょっと乱暴ですね。この場合、よくないですね。  かなり非免疫応答もできて、少々ウイルス、あるいは病原体が入ったところで十分対 応できるところに打つと。それは打っていない人には打たざるを得ないかもしれないけ れども、やはりカバーすべきは十分にウイルス感染に対して対応できないところと。そ うすると、小さい子。  それでは、今、3歳、ほぼ3歳からだと思いますけれども、先ほど加藤先生がおっし ゃったように、3歳から始めるのがいいのか。あるいは、そういう意味ではもうちょっ と前倒しがいいのか。そこら辺も検討する余地は確かにあるとは思いますが、やはり私 は小児、特に小さな子どもに免疫を付けるというのが非常に重要なことではないかとい うふうに思っております。 ○加藤委員  宮崎先生にちょっとお答えしていただきたいんですけれども、平成6年に日本脳炎ワ クチンを、同じような議論があって、継続するかやめるかという議論、全く同じような ことがありましたね。同じような議論で、結局継続することになったというふうに記憶 していますが、そのときに標準的年齢を何歳に決めるかということで、今、倉根先生の 話と全く同じになるんですけれども、それを今、3歳。標準的には3歳からにしましょ うということをたしか、科学的か経験的か忘れましたけれども、お勧めになったのは宮 崎先生だというふうに記憶しているので、あえて宮崎先生に御質問するわけですが、そ の辺のところが今、倉根先生と小林先生との、小林先生、高年齢者でいいだろうと言う と、倉根先生が低年齢者の方でいいだろうということをお答えになると思うので、お答 えをいただきたいと思っていますけれども。 ○宮崎委員  1994年、平成6年の改正の議論をしていたのは平成5年ぐらいですから、私たちが使 っていたデータというのは1980年代から90年代ぎりぎりぐらいのデータを使っていたわ けです。そうすると、まだ患者さんが数十人出ていて、小児でもまだぽつぽつ出ていた 時代です。ブタのは相変わらずウイルスが蔓延しているという状況もあって、これは当 時、やめるのは危険だろうというふうに私は考えました。  ただ、発症年齢をみると、小さい子は少なくて、現実には先ほどもデータが出ていま したけれども、ほとんど患者さんが、3歳未満では出ていなかったということと、それ から、やはりDPTからはしか、風疹に至る予防接種が2歳ぐらいまでかなり立て込む ので、それが一段落してからでも十分ではないかということがもう一つ。  それから、もう一つは、当時のワクチンの免疫の持続の考え方が大体4〜5年はもつ であろうということだったんです。  実は当時、九州では毎年、日本脳炎の予防接種を臨時でやっている県もありまして、 同じ人がずっとやっていたりしていたんですが、それは無駄であろうということで、む しろ、あのときには定期化はしましたけれども、全体の接種回数は最小限にしていくと いう考えがあって、3歳ぐらいに初回接種をするとちょうど小学校の途中で4〜5年に なって、中学でやるともう4〜5年になるということで、ちょうど免疫がうまくつなが るかなというのも、もう一つの考え方だと思います。  北京株に代わって、最近のデータですともうちょっと免疫が長く続きそうだというの も出てきていますので、またその辺のところは改めて議論をしてもいいのかもしれませ ん。 実際問題、小学校に入っていきますと、まだ集団接種がかなり残っていると小林 先生はおっしゃいましたけれども、大都会ではほとんど個別接種になっておりまして、 市町村の数では小さいところが集団接種が残る傾向が多いですけれども、やはりほとん ど都市圏では個別接種になっておりますので、そういう意味では小学校・中学校は実は 余り接種率が上がっておりませんで、そこそこに皆さん受けていらっしゃる。それでも 患者さんはきれいに減ってきて、これだけうまく減ったので、ポリオと同じようにワク チンをもう一回考え直そうというふうになったんだろうというふうに思いました。  お答えになったかどうかわかりませんけれども、そういったことです。 ○平山委員  今のお話の補足的なんですけれども、日本脳炎のワクチンをめぐるいろんな経過の中 で私が覚えているものの1つは、日本脳炎の患者さんがむしろ高齢化、お年寄りに多く なっているということで、日本脳炎のワクチンをお年寄りにもう一回追加をやるかとい う議論が出たことがかつてあったと思うんですが、そのときはお年寄りにやりたいけれ ども、やると恐らく翌日とか何日か経つうちに脳溢血やら何やら起こす方がいて、ワク チン打ったら老人また亡くなるなんていうのが新聞に出たら、ますます子どもの予防接 種の必要性に水を差すことにもなりかねないから、お年寄りにやるのはやめておこうと いう話がその昔出たことがあります。今はインフルやっているからいいんですけれど も。  それと、もう一つは、日本脳炎は要するにヒトからヒトにうつる伝染病ではないとい う理由で、接種を続けるかどうかという議論があったことがあるんですが、これはむし ろ逆にヒトからヒトにうつらない破傷風も、けが人が大勢出るような災害のときに社会 不安に陥ったりするといけないから、社会防衛という意味で、ヒトからヒトにうつる病 気ではないけれども、破傷風も定期接種に入れようということに当時なったことがあり ます。それと一緒に、日本脳炎は伝染病、ヒトからヒトにうつる病気ではないけれど も、そのまま残ったというような記憶がちょっとあります。  それと、もう一つは、日本脳炎のワクチンの接種量が3歳未満は半分になっているん ですけれども、あれは精製がよくなったときになるべく年齢によるワクチン量の違いを なくしたいということがあって基本が0.5mlにまでなったと思うんですが、今後、更に ワクチンが改良されていったときに、年齢によるワクチン量の減量というのは極力やめ る方向でお考えいただきたいというのがお願いになります。恐らく、3歳から0.5mlに したときには小さい子はもっと量が少ない、今のインフルみたいに幾つかの段階を持っ ていたのではなかったかと思うんですけれども。 ○宮崎委員  この前古い、『日本のワクチン』という本を読んでいましたら、昔の日本脳炎で1cc やっていたときに、まだ当時の精製が悪いので熱が出やすいので、小さい子にどこまで 減らせるかというスタディーが得られたみたいです。 ○平山委員  減らしたんですか。 ○宮崎委員  はい。それで、どうも半分だったら付きそうであると。それ以上減らすと、ちょっと 付きが悪いというデータで、成人は1cc、3歳以下は0.5mlになって、それが北京株に なったときにそのまま踏襲されて、大人が0.5mlなので、子どもが0.25mlというふうに なったようです。 ○平山委員  なるべく子どものワクチンは0.5mlにそろえておきたいですね。 ○宮崎委員  先ほどの接種の間違いというのは、多分そこがきいていまして、3歳未満だったんだ けれども、0.5打ってしまったというようなことが、量の違いというのが結構、  お医者さんの間で、プレフィルドワクチンは特に全量打ってしまったというようなこ とがあるんだろうというふうに思います。医学的には倍量を打っても何も起こらないだ ろうというふうに思うんですけれども、現場では接種量の問題はインフルエンザワクチ ンなどもいろんなところで問題になっています。 ○渡辺委員  直接、ワクチンの接種には関係ないのですけれども、こういう日本脳炎、それから先 ほど出たウエストナイルもそうですけれども、蚊が媒介する疾患というのは、一度蚊が 大発生してしまうと、蚊の駆除というのは非常に難しいんです。ですから、そういう意 味からおいても、そのベクターを駆除する前に防御ができれば一番よろしいと思うんで す。  それと、先ほどのウイルスの越冬説というのが出ましたけれども、このベクターであ るコガタアカイエカの越冬というのもまだ十分な答えは得られていません。我々の仲間 でも、アジア(中国大陸)の方から毎年飛んでくるだろうという説を言っている人もい ます。私も、その説を支持している者の1人です。というのは、この日本脳炎ウイルス というのは毎年九州から東北へと、北上して来ます。それはコガタアカイエカも北上し てくるし、日本脳炎もこうやって徐々に北上してくると。そういうことからすると、や はりコガタアカイエカも東南アジアの方向、もしくは台湾辺りから飛んできている可能 性が強い思います。  それの一つの証拠というのは、1982年から86年にかけてコガタアカイエカというのは 全国的に異常に発生したんです。その原因は、殺虫剤に対する抵抗性の発現なんです。 その抵抗性の発現というのは、本来の抵抗性の発現は、御存知のようにどこかの地区で 特別な殺虫剤をまいたために、それによって淘汰されて抵抗性が発現します。ですか ら、それは地域性が強いはずなんです。  ところが、このコガタアカイエカの、抵抗性というのは全国一斉に持ち上がってしま ったんです。それに対して1つ考えられる理由というのは、オリジンはどこか1か所で はないかと。それが多分、東南アジアや中国大陸において淘汰されたものが飛んできた のではないかという説が一部、我々の学界にございます、また、今、蚊が少なくなった というふうに皆さんおっしゃっておられますけれども、今年の福井の豪雨、それから新 潟の豪雨、こういう夏の豪雨のときには必ず、その後、蚊の大発生が、今までも起こっ ております。  ですから、我々も非常にそれを懸念しているんです。そういうこともありますので、 是非ワクチンの直接効果ばかりではなくて、こういうベクターが必要とする病気という のはベクターが大発生して、患者が大発生してからでは抑圧は非常に難しいということ を一つ念頭に置いていただければと思います。 ○牛尾結核感染症課長  ありがとうございました。  大分、予定の時間が近づいておりますので、まだまだ議論が尽きないかもしれません が、これぐらいで終了させていただきたいというふうに思っております。非常に活発な 御意見、ありがとうございました。  また、今日御発表いただきました内容は、これをまとめると1冊の日本脳炎に関する 最近の知見という本にでもなりそうな、非常にすぐれた内容ではないかというふうに 私、喜んでおります。今日いただきました御意見を基に、我々としては、この日本脳炎 の予防接種の問題について適切な判断を行っていきたいというふうに思っております。  それから、本日の議事内容につきましては先生方に御確認していただいた上で、厚生 労働省のホームページに掲載させていただく予定にしておりますので、御了解いただき たいというふうに思っています。  それでは、本当に早朝から長時間ありがとうございました。これで本日のヒアリング 会議を閉会させていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。                            照会先                            厚生労働省結核感染症課                            予防接種係 内線(2385)