04/07/09 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成16年7月9日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成16年7月9日(金) 14:00〜   厚生労働省専用第21会議室 2.出席委員(12名)五十音順  ◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、 岡 田 義 昭、 守 殿 貞 夫、   神 谷   齊、 後 藤   元、 田 島 知 行、 土 屋 文 人、   早 川 堯 夫、○堀 内 龍 也、 三 瀬 勝 利、 吉 田 茂 昭 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(4名) 折 笠 秀 樹、 川 嵜 敏 祐、 木 村   哲、 溝 口 昌 子 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、   岸 田 修 一(審査管理課長)、 平 山 佳 伸(安全対策課長)、   豊 島   聰(審査センター長)    赤 川 治 郎(審査センター審査第一部長)、   森   和 彦(審査センター審査第二部長)、   辻 村 信 正(審査センター審査第三部長)  他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部 会を開催させていただきたいと思います。本日はお暑いところ、お忙しい中お集まりい ただきまして、ありがとうございます。当部会の委員定数16名のうち12名の御出席を 頂いております。欠席の委員は折笠委員、川嵜委員、木村委員、溝口委員の4名でござ います。始めに委員の異動につきまして、日本薬剤師会常務理事の土屋委員におかれま しては前回御欠席でございましたので、本日御紹介申し上げたいと思います。 ○土屋委員 土屋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 それから、総合機構の方にも異動がございましたので御紹介いたしま す。新薬審査第三部長の辻村に替わりまして、牧野でございます。 ○新薬審査第三部長 牧野でございます。よろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 それでは池田先生、よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 先生方、本当にお暑いところどうもありがとうございました。それでは 早速本日の審議に入りたいと思いますけれども、その前に、いつものように事務局から 配付資料の説明と関与された委員の報告をお願いします。              ○事務局 まず資料の確認をさせていただきます。資料1と2があらかじめお送りした ものでございます。本日の席上配付資料といたしましては、本日の議事次第、当部会の 名簿、座席表。それから資料2-2といたしまして「審査結果通知書の訂正」でございま す。サンドスタチンの審査結果通知書でございますが、2.のところを見ていただきます と、網かけの部分を訂正してございます。「継続投与」となっていた部分を、投与を続 けるかどうかについての可否ということで、文字を逆にしまして「投与継続」と変えさ せていただいております。次に資料3といたしまして、「医薬品第二部会審議品目の薬 事分科会における取扱い、毒薬・劇薬の指定の要否及び生物由来製品/特定生物由来製品 の要否について(案)」でございます。また資料4といたしまして、「ゾメタ注射液4mg 専 門委員リスト」と「サンドスタチン注射液50μg、同100μg 専門委員リスト」でござい ます。  それから平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づきます資料作成に関与さた委 員の確認でありますが、本日の議題については関与された方はおられないということで ございます。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。本日は御覧のように審議事項が2議題という ことでございますので、なるべく要領良く進めたいと思います。それでは最初の議題1 について、機構の方から説明をお願いします。 ○機構 議題1、資料1、ゾメタ注射液4mgの輸入承認の可否等について、医薬品医療 機器総合機構より御説明させていただきます。本薬はスイスのノバルティス・ファーマ 社により合成・開発された新規のビスホスホン酸塩であり、これまで開発されたビスホ スホン酸塩の中で最も強い血漿中カルシウム低下作用を示す薬剤であります。悪性腫瘍 による高カルシウム血症は、骨吸収と骨形成のバランスが破綻することにより副甲状腺 ホルモン関連ペプチドが過剰に産生し、骨吸収促進が起こることが原因と考えられてい ますが、本品は生体内においては破骨細胞に対して抑制効果を示し、骨吸収の阻害によ り血液へのカルシウムの放出を抑えることにより、血漿中カルシウム値を低下させるも のとされています。  本申請効能は「悪性腫瘍による高カルシウム血症」であり、海外においては、2000年 8月以降カナダを始めとして2001年3月にEU諸国で、2001年8月に米国で承認され ております。その後本品は、EU諸国及び米国等で、本申請効能に加え「悪性腫瘍の骨 転移」を効能としても承認がなされております。いずれの効能においても、海外では、 用法・用量は4mgを15分以上の点滴静注によって行うこととされ、本邦における申請 用法・用量も同様とされました。  本申請にかかわる専門委員としては、配付資料4に記載のとおり有吉委員、小椋委員、 竹内委員、鶴尾委員、松本委員、安原委員、計6名の委員を指名しました。  規格、安定性、毒性及び一般薬理、薬効薬理には、特に大きな問題は認めませんでし た。  臨床薬理及びADMEについては、悪性腫瘍の骨転移患者を対象とした本薬の薬物動 態について海外試験2試験、及び国内試験2試験が評価資料として提出されております。 いずれの試験も本申請の高カルシウム血症患者が対象ではなく、悪性腫瘍の骨転移患者 を対象としたものであること、並びに悪性腫瘍の骨転移患者と高カルシウム血症患者と の間で本薬の尿中排泄率が異なること等から薬物動態の類似性はないと判断されたこと より、海外試験の外挿に当たっては、薬力学的効果を含めて検討することが妥当と考え ました。  臨床試験については、海外2試験及び国内1試験の成績が評価資料として提出され、 機構は、悪性腫瘍による高カルシウム血症患者を対象とした国内試験と海外試験におい て、国内外の患者での血清補正カルシウム値の低下効果について類似性を評価し、本薬 4mgの投与後の経時的な血清補正カルシウム値の推移及び低下の程度は日本人と外国 人でほぼ一致しており、本薬の有効性は認められると判断しました。  安全性については、海外の安全性プロファイルから問題となっている腎臓に関する有 害事象について、日本人での安全性プロファイルは外国人と差がないと考えましたが、 国内症例が少なく、特に腎障害患者に対する本薬の安全性及び再投与時の安全性につい て、慎重な投与等の十分な注意喚起及び市販後の全例調査により本薬の安全性の確認を 行うべきであると考えています。  以上の通り、機構での審査の結果、本剤の悪性腫瘍による高カルシウム血症に対する 有用性は認められ、承認して差し支えないと判断いたしました。なお、本剤は新有効成 分含有医薬品であることから、再審査期間を6年とすることが適当であり、原体は毒薬 に、製剤は劇薬に該当すると判断しています。また、生物由来製品及び特定生物由来製 品には該当しないと判断しています。  なお本日御欠席の折笠委員より二点御意見を頂いておりますので、ここで申し上げま す。一点目として、添付文書の臨床成績に症例数の記載がないとの御指摘を頂きました が、こちらに関しては申請者に改訂を指示し対応いたします。二点目として、本申請に おいては日本では1用量のみの検討をもって、申請者が言うところのブリッジングして いることの妥当性について御指摘を頂きました。この点に関しては本品目の専門協議の 中でも議論を行いました上で、先ほど御説明した理由から本剤4mgの有効性は認められ たと機構は判断したこと、及び今回のデータパッケージは結果的に妥当であると判断し たものの、一般的に許容されるものではなく、機構は今回のデータをブリッジングとは 判断していないということを折笠先生に事前にお伝えしております。以上です。御審議 のほど、よろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 ありがとうございました。これまであるものとは違い、より強力なビス ホスホン酸塩であるということで申請が出されたわけですけれども、先生方の御意見を 伺いたいと思います。どなたかございますでしょうか。これまでノバルティス・ファー マはパミドロン酸を実際に使っているわけですけれども、それの次の世代のより強力な ものということで、限られた数ではありますが、臨床試験が国内で行われたと。堀内委 員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 今のブリッジングの問題です。ただでさえブリッジングというのは 形骸化する傾向があると私は考えているのですけれども、そのような中でこれはやはり ブリッジング試験であるとは言えないと思います。今言えないという判断をしつつ、し かし日本でやったから承認するというところの論理性について、もう1回お話しいただ けませんか。 ○機構 まず結論から申し上げますと、先ほど御説明したとおり、機構の方はブリッジ ングが成立したとは考えておりません。4mgで承認して差し支えないとした根拠につい て再度御説明申し上げます。  本薬は骨に集積する性質を持っておりまして、薬物動態パラメーターと薬効の関係が 明確でないため、薬力学的効果、具体的には血清カルシウム値の正常化に基づいて判断 することを考えました。その結果、4mgにおいて経時的な血清補正カルシウム値の推移 や低下が国内外で一致していたこと、また国内で同薬効を持つパミドロン酸に比べ有効 性が勝っていたこと、本薬の投与対象となる患者さんがどうしても末期であることが多 く生命予後が望めない上に、高カルシウム血症を改善するということは明らかに臨床的 な意味があるということ、それから本薬は諸外国で使用経験があり、安全性プロファイ ルは国内患者において類似性があると判断できたことを踏まえまして、リスク・ベネフ ィットの観点から結果的には4mgの用量で承認して差し支えないと判断した次第です。 ○池田部会長 ここは非常にクリアにしておかなければいけない問題だと思いますの で、今皆さんの御意見もお伺いしたいと思います。堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 そうすると、それは対象患者が違っている場合でも成立するのです か。 ○機構 今回の試験のデータパッケージなのですけれども、審査報告書の39ページを御 覧になっていただけますでしょうか。こちらの真ん中に図を載せております。ここにあ りますとおり、申請者はブリッジング試験と言っているのですが、国内試験の評価対象 となった試験1201と、それと対をなす海外の試験においては、いずれも高カルシウム血 症患者を対象としております。 ○堀内部会長代理 それと、投与方法が違いますね。基本的にブリッジングというのは 同等の試験をやって、有効性、安全性が日本人において妥当かどうか評価するというこ とだろうと考えているのですけれども、そこも違いますね。 ○機構 試験が幾つかございまして非常に複雑なのですが、提示されている資料でまず 大きな違いといたしましては、薬物動態の確認対象が骨転移の患者であるというところ で、そもそも今回の申請用量でございます高カルシウム血症の患者さんをメインの対象 にしたわけではございません。その点に関してまず一点違うところがございます。また 先生御指摘のとおり、投与時間が5分間、申請に関しては15分間ということで、投与が 違うと。そういうことを含めまして、ブリッジングの成立という観点からは成立してい ないということで機構の方では審査を進めてまいりました。しかしながら先ほども申し ましたように、このお薬は体内動態に非常に特殊なところがございまして、投与されま すと骨に集積することがとても多いと。この薬の力というものに関して、血中動態との 関係がクリアでないということは世界的に知られているところでございます。  その点を踏まえますと、機構の判断としては薬力学的な判断、つまりこれが投与され た後血液中のカルシウムが低下するような形において、外国と日本の臨床試験の中でど のような一致性があるのかということを検討してまいりました。その結果、日本人で行 われた4mgというドーズは、外国で実施されております臨床試験と一致しているという 結論を下してきたわけでございます。したがいまして、申請者はブリッジングという言 葉を使っておりますが、機構といたしましては成立はしていないと判断しております。 以上でございます。 ○池田部会長 いかがでしょうか。これまでこういう形で実際に申請が議論されたこと はそれほど多くないわけですけれども、この薬剤の性格あるいは対象患者が特殊である ということも踏まえた解釈でこの申請書を理解したということになるわけです。どうで しょうか。先生方、何か御意見ございますか。 ○審議官 考え方をもう1回説明していただいた方がいいのではないかと思うのです。 要するに外国とのブリッジング試験というのは、これによって向こうの試験データを日 本に外挿できて、国内で活用できると。今度のものはブリッジング試験が成立しないと いうことですから、トータル的に見てこの薬物の評価が可能となったということで、今 までの取扱いとは違って、これについてはこのデータでもって有効性、安全性が評価で きるという考え方なのか、今までの考え方との相違でもってどう考えるのかをちょっと 説明してもらった方が先生方は分かると思うのですけれども。 ○新薬審査第一部長 ありがとうございました。今の点について追加で御説明させてい ただきます。ブリッジングに関しては先ほどからの御議論のような様々な問題がござい ますので、オーソドックスなパターンでの比較性がないということを前提にして、しか もこの薬の本体が骨に吸収されて、そこで薬効が出るということからしますと、血中濃 度を見てもしようがない。それから一応尿中排泄は測れるのですが、これは吸収されな いで残って出てきてしまった分ということなので、恐らくそれを測っても薬効との関係 はよく分からないことから、このお薬に限っては薬物動態学的なアプローチがほとんど 役に立たないというのが実情としてはございます。それがそもそも難しい点であります。  もう一点は、それであればクリニカルなエフェクト、あるいは臨床薬理のところでどう だというお話があるわけですが、その点につきましては、カルシウムを低下させるとい うことがストレートに今回の効能にもなっておりますので、その評価が一番中心的にな るということでございます。これに関しまして、できる限り下げる力の強さ、それから 下げるまでの時間の経過等を海外の成績と比較したということがございます。ただし、 これでも投与条件とか対象集団の特性といった点に関して必ずしも厳密な比較ができる というわけではないので、ここで厳重な比較ができたと言うことも恐らく難しい。しか も1点の用量しかやっていないものですから、通常言う2mgとか8mgとか、上下のドー ズの検討はできないことからしまして、1点だけで比較して合っている、合っていない と言うのは非常に危うい。こうした点から見ても、いわゆるブリッジングの考え方で海 外と比較をし、それに基づいて該当すると言うことはできないという結論になります。  ただしこのお薬の薬効の現れ方として、わずか26例という少ない症例ですが、カルシ ウム値の低下作用が非常に顕著でありまして、従来日本で使われているパミドロン酸「ア レディア」というお薬に比べてはるかに明確に作用があると。これだけ明確に出ますと、 比較をやらないと分からないような微妙な差ではないということは容易に判断ができま す。その点からしますと、国内での試験の成績だけでも十分有効性は確認できるという ふうに考え得ると思います。ただ、用量についての検討は明らかにやってありませんの で、上と下のドーズの検討の余地があるという点は残るわけです。この部分についての 議論をどうやったらできるのか。ただし、海外で既に8mgでの検討をしたデータが様々 ございまして、この中に8mgのドーズで問題ないという成績と腎障害が出てきたという データと両方ございます。  私どもの立場としましては、大丈夫だということを当てにするのはいいのですが、そ れで腎障害が8mgで多発した場合、非常に問題であります。しかも海外での用量は基本 的に4mgにセットされています。そうした点を考えますと、あえて今の時点で8mgを検 討しなければならないという強い理由は必ずしもないだろうと。翻って、では2mgはど うだということになりますが、それは4mgに比べて同等、若しくは劣ると考えるのが常 識的な考え方で、多少安全性がよくなるかもしれないけれども、その部分に関して今後 も検討の余地はあるだろうと。ただし、それを今やらないと日本人がこの4mgで使った 場合の安全性が担保できないかどうかということと、それから4mgを使った場合の血清 カルシウム値の低下の具合のベネフィットを勘案して判断したということでございま す。  現在得られている4mgの日本と海外での成績は、十分な補液管理を行いながら高カル シウム血症に対処するときにこの薬を使う場合は腎障害は問題にならないということに なっていますので、審議官がおっしゃったような総体からの判断といたしますと、本剤 4mgを使うことで現状臨床的には十分満足のいく有効性と安全性は確保し得ると判断で きると考えたわけでございます。2mgの検討の余地ということに関しては、今後の課題 として残されている部分はあるかと思いますが、それについて会社と我々も議論してい るところであります。 ○堀内部会長代理 この「審査報告書」の35ページの図を見ましても、4mgと8mgで効 果はフラットに達しているわけです。ですからやはり2mgとか、もっと下の濃度を検討 する余地は十分にあるという気がいたします。 ○池田部会長 そのほかいかがでしょうか。2mgにどれくらいの効果があるかというと ころが残りますけれども、カルシウムの低下作用について既存のものよりもはるかに強 いということ、それから薬効としても確実であるということについては先生方も余り疑 問を挟む余地はないのかと思います。   そのほか安全性の問題についても同じ考え方でよろしいのでしょうか。いわゆるカル シウムの低下作用については非常に分かりやすいと思うのですけれども、あとは問題は 安全性ということ。それについては、先ほどの説明だと海外での多数例と2年余にわた る経験からいっても余り問題はなく、腎障害のところだけ気を付ければいいのかなとい う話だったのですが、その点はどうなのでしょうか。国外と国内、特に日本人に使った 場合の安全性がこれでどのくらい担保されるかということ。 ○機構 御指摘いただいた点に関して専門協議の中でも議論をしてまいりました。安全 性に関してまず海外での状況でございますが、先ほど御紹介した一般に使われている「ア レディア」と類薬の関係にありますので、安全性に関して非常に類似したプロファイル を持っているというのが一点ございます。海外ではパミドロン酸よりも有意に効果があ り利便性もあるということから、このゾメタがかなり広く使われておりまして、いろい ろな情報が入ってきているところであります。では国内での状況はどうかということを 想像するところでございますが、本薬は確かに非常に少ない症例数で臨床試験が行われ ている点がありまして、当方では海外での状況を踏まえ、それを含めて市販後の全例調 査を実施し、添付文書にも記載しております腎障害等に関しては十分慎重に投与してい ただいて、また情報を収集するという形で対応したいと考えております。 ○池田部会長 ありがとうございました。 ○堀内部会長代理 もう一つよろしいですか。同じ会社だからということかもしれませ んけれども、今パミドロン酸との関係で話がされていますが、それ以外に強力なビスホ スホネートの第3世代がいろいろ出ています。それと比較してどのような位置付けにな るのでしょう。 ○機構 先生がおっしゃる第3世代となりますとどのものを指すのか、私の方の理解が 不足してございますが、悪性腫瘍に対する高カルシウム血症のお薬の中では現時点でゾ メタが世界的なシェアを持っているということでございます。安全性、有効性を加味し ての使用実態だと思いますが、もちろん効果に関しましても最も強いということが臨床 試験上認められておられます。 ○池田部会長 そのほかいかがですか。 ○堀内部会長代理 安全性の問題についてよろしいですか。報告の中にもありますが、 このもの自体が腎機能を悪化させるおそれがあるということは添付文書にも書いてあり ます。しかし、腎機能の悪い患者に対する投与について機構では問題にしていると思う のですけれども、その件について添付文書には全く触れられていません。やはりこれは 記載をすべきではないかと思いますが、いかがですか。少し話が違いますが、例えば5 分と15分の投与の仕方でも、5分の場合繰り返し投与すると15分よりも急性腎不全が 起こる確率が上がるので、一応15分になっています。つまり、外国では5分でやってい たのですけれども、腎障害が起こる可能性が強いので日本では15分という形でやったと 思うのですが。 ○機構 まず5分と15分の経緯について御説明させていただきます。投与時間に関して は、現在欧州、米国でも15分間という数字になっております。もともとビスホスホネー ト製剤自体が早く静注するほど腎障害を起こしやすいというのは既知の事実でございま すが、実際に米国での試験の中で5分で投与した場合に腎毒性が出るということで、15 分に変更された経緯があります。日本においては、添付文書でも腎障害のことに関して は「警告」欄と「使用上の注意」の「1.慎重投与」の欄に記載しております。 ○堀内部会長代理 そちらはいいのですけれども、逆に腎機能の悪い患者に対する投与 の問題です。 ○機構 腎機能の悪い患者さんに対する投与ですけれども、まず腎機能低下に伴ってC max及びAUCの上昇が認められるという結果は出ておりまして、御指摘のとおり腎機 能障害患者での忍容性については機構も非常に懸念を持っています。しかし、具体的な 減量基準が明らかではないということと、暴露量の増加に伴うリスクの上昇が4mg投与 付近で認められていないことから妥当というふうに判断してはおります。ただし、この 点に関しては症例数も少ないということが最大の問題ですので、市販後全例調査という 非常に厳しい形での条件を申請者に付して情報収集をさせることとしております。 ○機構 一つ補足させていただきます。本品の対象となる患者さんには往々にして腎臓 が悪い方も多いと聞いておりまして、腎障害を持たれることで、いわゆる原則禁忌等の 条件を付けることはなかなか難しいと判断してございます。腎機能が悪い場合というの は、お薬を使うこと自体に難しいところがあると思うのですが、高カルシウム血症とい う対象でございますので、かなりリスクがあるとしてもドクターの判断で投与せざるを 得ないという状態も想像されます。添付文書の「重要な基本的注意」の項では、事前に 腎臓の状況を確認していただきたいという旨は記載しておりまして、その部分は慎重に 投与していただくという位置付けでございますので、それで対応しているところはある かと思います。以上、補足させていただきました。 ○池田部会長 守殿委員、どうぞ。 ○守殿委員 同じことに関連してなのです。添付文書のことでもいいのでしたら、「重 要な基本的注意」のところの腎機能検査、これは以前の部会でも申し上げたと思うので すが、「血清クレアチニン」と「BUN」が同格に書いてあること自体がちょっと一般 的には困るといいますか、特にこういう悪性腫瘍患者さんだと食事摂取も不十分なのに、 カヘキシー状態に近いような人があれば、BUNというのは異化作用あるいは便秘、出 血等いろいろな形で血清中で上昇するわけです。腸管内の出血でも血中BUNが上昇す るということでして、腎機能障害があれば更に倍加する形で上昇します。したがって、 腎機能の検査項目値としてBUNを取り上げること自体不思議なことであり、これはも ちろん除外すべきだという気がします。国家試験などで腎機能の指標としてクレアチニ ンとBUNのどちらを用いますかというと、クレアチニンに名前を付けないと確実に答 えは誤りであります。  もう一つは、腎機能検査ということであれば、血清クレアチニンが基準値以内である というのは腎機能が30%あるということだけの保証でして、クレアチニンクリアランス が40%と100%の人は同じ血清クレアチニン値であります。そういうことがありますの で、腎機能検査として書く分には血清クレアチニンのクリアランスを測らないことには 物は言えません。しかし、そこまで厳しいことは言えないでしょうが、腎機能検査とい うものはクレアチニンを測るだけでは3割あるという保証しかありませんので、例えば 4割と9割で投与量を変えるというような配慮が必要なら、この書き方は少し訂正しな いといけないと思います。  それと同じような形で、添付文書の2ページにある「2.排泄」のところで、高カルシ ウム血症患者さんと悪性腫瘍患者さんの排泄量の差が32.6%と16.0%であったとあり ます。このことにつきましては本文26ページの一番下から5行目の「国内試験において」 というところを見ておりますと、腎のクリアランスに差があったから、この場合は高カ ルシウム血症患者において血漿中濃度の推移についても同様であったということがあっ て、初めてこういう差が出たという解釈をしておられるようです。 ○機構 御指摘ありがとうございました。今先生から御指摘いただいた26ページの記載 部分は申請者の見解を引用しているところでありまして、私どもの見解ではございませ ん。 ○守殿委員 いえ、それをそのまま採用されているような形のことと照らし合わせます と、話が少し普遍化された書き方になっていませんかということなのです。機構の方で 改めてこれを否定されるようなデータをお持ちでしたら別ですけれども、申請者の考え がそのまま普遍的なものとしての記載になっている気がいたしましたので、何かほかに その根拠があるのですかとお尋ねしているわけです。 ○機構 御指摘どうもありがとうございました。この件に関しましては文言等を含めて 申請者の方と検討し、適正な形にさせていただきたいと思います。 ○池田部会長 そのほかいかがでしょうか。上原委員、どうぞ。 ○上原委員 教えていただきたいのですが、先ほどから出ているパミドロン酸あるいは これの類薬などの投与時間は2時間、あるいはそれ以上の4時間という長い時間である のに対して、この薬は15分などと非常に短いですね。とても大きな違いだと思うのです。 これを先ほどの御説明の中で利便性というふうにおっしゃったのだと思いますけれど も、それを可能にするこの薬の根拠といいますか、特徴について教えていただきたいと 思います。 ○機構 まず投与速度の件ですけれども、パミドロン酸の承認時の用法・用量は4時間 以上掛けてということになっておりますが、ビスホスホネート製剤の投与方法というの は1分当たり1mgを目安とした投与法が一般的になっているという経緯があるようでご ざいます。本品目は4mg製剤で量が少ないということから、本薬自体の投与時間は15 分に短縮されているという状態です。しかしながら、ちょっとほかの話にもなってしま うのですが、本薬自体は15分投与なのですけれども、高カルシウム血症自体が腎機能障 害を併発していることが多いですし、高カルシウム血症に対する治療の基本である補液 はきちんとしてもらわなければ困るということは機構の方も非常に懸念いたしまして、 補液をすれば結局トータルでは15分では済みませんということは添付文書上にも反映 して、注意喚起をいたしました。 ○機構 補足させていただきます。基本的になぜ15分と短くなっているのかといいます と、やはりこの薬の薬効が非常に強く低用量で効果があるということがございます。先 ほど触れましたが、このような製剤のドーズ当たりの体に入れていく時間というのが大 体決まっておりまして、比較になるかどうか分かりませんが、パミドロン酸の場合90 mgで2時間と。これは4mgということで、非常に短い時間で対応していけるということ が開発の中でございました。臨床試験の中で初め5分というようなスタートをしたので すが、先ほどから議論になっておりますように腎毒性の問題が出てきまして、実際は15 分で臨床試験を行っております。忍容性等々を含めてリスク・ベネフィットの観点から 15分が妥当となってきているという流れでございます。 ○上原委員 大体分かりました。ただ、パミドロン酸と比べるとドーズがかなり低いと いうことで強さの比較はできますが、他の類薬では10mgや5mgでやはり4時間掛けてい ますよね。そういうことで、先ほどからの御説明ですと、短時間にこういう薬をやるの は腎毒性が強いということと、その辺の安全性がきちんと担保されているのかなという ことがちょっと気になったものですから。補液ということで注意喚起しているのであれ ばよろしいかなとは思います。 ○機構 どうもありがとうございました。 ○池田部会長 パミドロン酸は非常に良く使われている薬だと思うのですけれども、ち なみに今までそれで腎障害の報告がどのくらい挙がってきているというのはございます か。おそらく薬効のことに関しては皆さん大体納得されたと思いますが、症例数が少な いので大丈夫なのかなというところに一抹の懸念があると思うので、その辺はどうでし ょうか。例えばパミドロン酸で45mgや90mgなど、同じくらいの薬効を示す量が使われ ていますよね。過去に骨髄腫の患者や腎障害があるような患者が更に急性腎不全になっ たなどの報告は特にはないのですか。 ○機構 使用成績調査としてはデータがございます。イ-31ページでございまして、こ れは各類薬の添付文書の比較表であります。一番左が本申請品で、隣が今池田先生から 御質問がございましたパミドロン酸になっておりますが、副作用の項にあるような表記 でこの程度の割合があるということが分かっております。 ○池田部会長 パミドロン酸は「急性腎不全(1%未満)」で、ゾレドロン酸だと「(1〜 10%未満)」。「急性腎不全等の腎障害」というものだからそこになっているのですかね。 次の32ページの左上、「(1)重大な副作用」というところですが、「急性腎不全」とい う項目で書いてあって、「急性腎不全等の腎障害(1〜10%未満)」というのはちょっと 分かりづらいですね。 ○機構 御指摘ありがとうございます。検討させていただきます。 ○池田部会長 そうですね。そのほかいかがでしょうか。 ○堀内部会長代理 承認条件で一定期間全使用症例に対して市販後調査をするというの は大変結構だと思いますけれども、一定期間というのは大体どのくらいをめどにしてい るのでしょうか。また症例数はどのくらいかなど、何を基準に考えていらっしゃいます か。 ○機構 そこの部分につきましては専門協議の中でかなり議論させていただいておりま す。対象となる患者さんの大体の人数を算出いたしましたところ、平均的な値は年間に 約500例と推定されております。本件に関しては約1,000例を目途に開始するというこ とで、大体2年〜2年強と予想しています。一定期間というのは今のところこのように 考えております。 ○堀内部会長代理 それをメーカーに確認してあるのですね。 ○機構 メーカーの方には確認を取っております。 ○堀内部会長代理 この承認条件というのは添付文書には入れないのですか。大抵入っ ていると思うのですが、この案には入っておりませんけれども。 ○新薬審査第一部長 本物の添付文書には入れます。 ○池田部会長 入れるのですよね。 ○新薬審査第一部長 はい。書くことになっています。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。守殿委員、どうぞ。 ○守殿委員 特別なことではないのですけれども、可能ならば教えていただきたいと思 います。結果として悪性腫瘍患者さんの転移巣に対するトライアルが計画されているの か、あるいは悪性腫瘍患者さんの中で骨転移が非常に改善したという症例はあったかど うか、その辺をお聞きしたいのですけれども。 ○新薬審査第一部長 現在進行中でございます。そう日を経ずして骨転移の方の申請も 上がってくる予定になっております。そちらの効果に関しましては、海外の成績から90 mgの用量で使っているアレディアと大体同じくらいの効果であろうと推測されておりま す。 ○守殿委員 分かりました。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。特にございませんか。土屋委員、どうぞ。 ○土屋委員 基本的なことなのですが、効能・効果が悪性腫瘍による高カルシウム血症 と決められているにもかかわらず、添付文書の「警告」や「用法・用量に関連する使用 上の注意」のところで、「悪性腫瘍による高カルシウム血症患者に本剤を投与する場合 には」という記載をするということは、何かほかの誤解を他の人に与えるという危険性 はないのでしょうか。 ○池田部会長 いかがですか。 ○機構 御指摘ありがとうございます。当方では明確にするという位置付けでこういう 書きぶりになっておりまして、ほかの可能性ということですと、例えば骨転移などを通 常想像すると思います。実際のところ我々もそうなのですが、この位置付けとしては明 確化するということで対応させていただいております。そもそも効能・効果でございま すので、適正使用推進の位置付けとしてはいろいろな部分でのインフォメーションをせ ざるを得ないといいますか、全例調査というところも対象となる患者さんを明確にする という意味もございますので、そのような対応であって深い意図はありません。 ○土屋委員 ただ、最近添付文書の内容をコンピューターで検索するときなどに、「… の場合には」と言いますと、ではほかの場合があるのだろうなと思ったりすることが現 場でもよくあるのです。また、使っていいと暗黙の内に言っているようなことを…、現 場というのはやはりいろいろな解釈をするわけですから、そういった意味でこの場合特 別に強調しなければいけないのかどうか、素朴な疑問としてありまして。 ○機構 ありがとうございました。いろいろなデータベース等々が今現在できていると ころでございまして、利用していただくことが非常に重要だと理解できるのですが、当 方ではこの部分に関して先生御指摘のような深い内容まで考えていないというのが正直 なところでございます。ほかの添付文書等を比較しつつ記載するというのが我々の一つ の指針としてありまして、その中で出てきておりますが、この記載ぶりに関しては企業 の方とちょっと相談をさせていただき、適正に改めたいと考えております。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。このゾレドロン酸は欧米でも非常に経験があって、 薬効もかなりしっかりしているということは疑いのない事実であると。また承認条件と して1,000例の全例調査をし、その後安全性も十分にチェックできるということで、も し先生方からほかに格段の御意見がなければ、お認めいただけますでしょうか。多少異 例の処置かなという気がしないでもないのですけれども、機構の方からはなぜそういう 処置をしたかという説明もあったように思いますし、それで先生方も御納得いただけれ ば承認を可として薬事分科会への報告とさせていただきたいと思いますが、いかがでし ょうか。よろしいですか。それでは、そのようにさせていただきたいと思います。どう もありがとうございました。  続きまして議題2に移りたいと思います。これは医薬品サンドスタチンの注射液であ りまして、これもまた進行末期癌患者のということでございます。それでは、議題2に ついて総合機構から説明してください。 ○機構 議題2、資料2、サンドスタチン注射液50μg、同100μgの輸入承認事項一部 変更承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。本 薬酢酸オクトレオチドはスイスのノバルティス・ファーマ社により開発されたソマトス タチンのアナログであり、ソマトスタチンの生理活性に必須な8個のアミノ酸配列から なる合成ペプチドであります。本薬は既に二種類の効能が承認されており、即ち「消化 管ホルモン産生腫瘍に伴う諸症状の改善」及び「末端肥大症・下垂体性巨人症における 成長ホルモン、ソマトメジンC分泌過剰状態及び諸症状の改善」でありますが、今般、 「末期癌患者における消化管閉塞に伴う消化器症状の改善」の効能の追加申請がなされ ました。また、当該内容についての効能拡大の要望書が、日本緩和医療学会より提出さ れております。  末期癌患者における消化管閉塞は、癌進行による癌性腹膜炎が主因とされ、消化管閉 塞の発症に続き、血液循環の悪化、消化管からの電解質・水の吸収低下を引き起こし、 さらに、消化管膨張に伴う悪心・嘔吐、腹痛、腹部膨満等の消化器症状を呈すると考え られており、治療に当たっては消化液分泌抑制作用及び水・電解質の吸収促進作用を持 つとされる本薬が国内外の緩和医療等の教科書や治療ガイドラインに示されておりま す。 本薬は、外国においては米国を始め85か国で承認されておりますが、本申請効能 での承認は、いずれの国においても取得されておりません。しかしながら、当該申請効 能は、医学・薬学上既に一定の評価を受けているものと考えております。   本申請にかかわる専門委員としては、配付資料4に記載のとおり吉田委員、松野委 員、竹内委員、鶴尾委員、計4名の委員を指名しました。  臨床試験については、国内第I/II相、第II相追加臨床試験が評価資料として提出され ており、本薬の投与前後での悪心・嘔吐の改善効果、胃管挿入例に対する消化液排出量 減少効果、患者QOLの検討が行われ、悪心・嘔吐の改善効果については、胃管が挿入 されていない症例における嘔吐回数は有意に減少しておりました。一方、胃管が挿入さ れていた症例に対する消化液排出量減少効果については、統計学的有意差が認められな いものの、投与開始前に比べて消化液排出量の減少傾向が見られています。また、患者 QOLについては、治験開始前と調査時点を比較した嘔気・嘔吐の程度の項目で改善傾 向が見られております。   本薬は末期癌患者を対象にしており、消化管閉塞を伴う症状は進行性でありこれ以 上の改善は見込まれない中で改善傾向を認めた症例が実際に存在したこと、並びに、患 者の背景因子の統一も容易でない等の治験実施の困難性が認められることにより、機構 は、症例ごとの評価を重視することで、本薬の有効性については評価可能であると判断 いたしました。  安全性については、国内第I/II相及び追加第II相試験における安全性の検討に加え、 国内外の市販後安全性情報も勘案した上で、本薬の安全性プロファイルは申請効能にお けるリスク・ベネフィットのバランスを揺るがすものではないと判断いたしました。  また、申請効能の表現について、「末期癌患者」との表現は、患者の生命予後や進行 時期が明白となり治療を受ける患者への精神的配慮も必要であると考えることから、本 薬の効能・効果として「進行・再発癌患者の緩和医療における消化管閉塞に伴う消化器 症状の改善」との表現に改訂するよう申請者に指示を行いました。  以上の通り、機構での審査の結果、本薬の「進行・再発癌患者の緩和医療における消 化管閉塞に伴う消化器症状の改善」に対する有用性は認められ、承認して差し支えない と判断いたしました。なお、本剤は新投与経路、明らかに異質の新効能・効果の追加で あることから、再審査期間を4年とすることが適当だと判断しています。御審議のほど、 よろしくお願いいたします。  ○池田部会長 ありがとうございました。このサンドスタチンを進行・再発癌患者の消 化管閉塞、緩和医療に用いて症状を改善したいということで申請が出されたものなので すけれども、吉田先生が専門協議をされたので、ちょっと御意見を頂けますでしょうか。 ○吉田委員 まず第一に難しかったのが、有効性の評価についてでございます。今機構 から御説明もありましたように、対象患者が末期癌で緩和ケアに入っているような方と いうことで、いわゆるプラセボ・コントールを置いたり、きちんとしたスケジュールに 従って治療をすることがなかなか難しいという背景がありました。やはりこういった対 象患者であれば、患者のQOLを損なってまで試験の質を優先するのは難しいだろうと いうことで、個々の症例の有効性を判断し、少しでもあいまいなものを抜いたとして最 低でも20%以上の有効率は確認できるということから、有効性の評価については機構の 判断と同じということで支持することになりました。  もう一つ問題になりましたのは、申請のときに本薬は水電解質吸収促進作用があるた めに症状が改善するという説明になっていたのですけれども、それが非臨床試験成績が 非常に不十分であったり、臨床用量との間に乖離があったり、また臨床効果との関連が 不明などということがありまして、この点については文言を廃止するか、あるいは水電 解質吸収促進作用について再度非臨床試験を追加するかという議論になっておりまし た。最終的には非臨床試験を市販後にもう一度やるようにという注文が付いて、一応承 認という経緯になったところでございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方から御意見を伺いたい と思いますけれども、いかがでしょうか。統計学的に物を言うというか、むしろ末期癌 患者のため臨床試験が非常に難しいということで、それぞれの症例に当たってみて、あ る効果が確認できれば承認していいのではないかという考え方で進められたということ ですけれども、いかがでしょうか。堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 投与の仕方ですけれども、24時間皮下持続投与というのは患者さん にとってかなり負担になるのではないかという気がいたします。これは違う場合には 1日2、3回に分けて投与という形になっておりますが、持続投与でないと有効性がな かなか維持できないということなのでしょうか。 ○機構 投与方法に関しては24時間でないと有効性がないという記載が教科書にある ということではないのですけれども、実際に皮下注射のときに24ゲージの非常に細い針 を皮下に刺すということで、このような状態の患者さんの場合、何回も針を刺すよりは 1回細い針を刺す方がむしろQOLを損ねないと考えております。 ○池田部会長 どうでしょう。吉田先生、その辺はいかがなのでしょうか。 ○吉田委員 おっしゃるとおりで、静脈のルートがある患者さんはそれでもいいのです けれども、基本的に一番普遍的な方法論としては経皮が、麻薬もそういった使い方をす る場合もありますが、緩和医療の対象患者さんの一つのテクニックになっておりますの で…。 ○池田部会長 24時間持続でというのは、それほど患者さんにとって…。 ○吉田委員 入れる量が大量ではございませんので、それほど…。例えば足がはれたり といったことはございませんし、吸収とバランスが取れる形になっておりますので。 ○池田部会長 ありがとうございました。何かものはあるのですか。 ○機構 私どもの方でもこの部分に関しては調べております。実際のものが幾つかござ いますのでお手元にお配りいたします。このような形をしております。針が非常に細く て、留置針で体に付けておくという感じになります。やはり何回も針を刺すというのは、 緩和医療を受けられている患者さん自身にとっても周りの方々にとっても非常に心労さ れるところでございまして、現在の設定である持続皮下注というやり方も緩和医療の上 では重要視されております。 ○池田部会長 これを持っての移動は可能なわけですね。そのほか、いかがでしょうか。 おそらく用法・用量のところで、「緩和医療における」という言葉が入ったのは初めて だと思うのですけれども、これが入ったことで例えばどういう状況かということを定義 しろといったような議論はないのでしょうか。もう一般的に緩和医療といえば幅広く考 えていいと。わざわざこれを入れたというのは何かございますか。 ○新薬審査第一部長 素朴な発想ではありますが、今はだれもがインターネットなどで 添付文書を見ることができるようになっている時代でございますので、「末期癌」とい う言葉が効能・効果に書いてありますと、この薬のことを調べた患者さん若しくはその 御家族の方が御覧になった場合の精神的ダメージが相当危惧されることから、ほかにい い言葉はないかと議論いたしました。その結果、「緩和医療」というのは今かなり進行 して余命が余り長くない方々に対する治療の現場で使われているということで、この言 葉にさせていただきました。確かにどういう状態の患者さんなのかということを明確に 規定し難いという懸念がありますが、本剤の適応拡大の要望が緩和医療学会から出され ていることもございまして、私どもとしましては厚生労働本省にもお願いをして、学会 の方からも緩和医療というものの中でこれを正しくお使いいただくように呼び掛けてい ただけないかと考えております。学会も要望しているわけですから、多分御理解いただ けるのではないかと思っておりますが。 ○池田部会長 ありがとうございました。吉田先生、どうぞ。 ○吉田委員 消化管閉塞がきているいわゆるターミナルの患者さんというのは、すごく 予後が差し迫っている方とそうでもない方の二通りありまして、実際問題としては重要 臓器ではなくなりますので、すぐさま死期が来るということではなくて長期間それに苦 しめられる条件に置かれるケースもあります。一般的にはIVHを自分で管理して通院 するなどの生活を送っているのですけれども、それは栄養はとれるとしても、嘔吐など の閉塞に伴ういろいろな症状に長い間苦しめられる場合が大いに考えられますので、私 個人的には機構側が「緩和医療」というふうに言われたのは英断ではないかと思ってい ます。というのは、「末期癌患者」という言葉ですと予後が差し迫った場合しか使えな いということになって、かえってせっかくの使い道を狭める方向になるのではないかと 思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。堀内委員、どう ぞ。 ○堀内部会長代理 そういう場合に、サンドスタチンには「LAR」という徐放製剤が あると思いますが、治験をやっていないからと言えばそれまでのことなのでしょうが、 ターミナルの患者さんにしろ、今お話にあったようにある一定期間維持される患者さん にしろ、LARの方が患者さんのためにも負担がかかりません。また金銭的な面からも、 300mgやると従来の薬価で1日1万円くらいになりますね。ですから徐放製剤をやった 方がはるかに安くあがると思うのですけれども、そういう計画はなかったのですか。今 後もメーカーは考えていないのでしょうか。 ○機構 同じサンドスタチンで剤型が異なっているLARに関しましては、申請者の方 からの開発の意志はないということでございます。医療費の問題に関しては当方の範疇 ではないというところもございますが、確かに先生の御指摘どおり、かなり高いお薬で あることは間違いありません。 ○審議官 しかし、それで有効性があるのならばそちらの開発を促してもよろしいので はないかと思うのですけれども、その辺はどうなのですか。 ○新薬審査第一部長 本日の御指摘もございましたので、改めてノバルティス・ファー マに対してそういう検討の可能性を相談したいと思います。 ○池田部会長 そうですね。それではその点はノバルティス・ファーマの方にも一応伝 えておいていただきたいと思います。そのほかいかがでしょうか。 ○堀内部会長代理 添付文書に薬物動態が出ておりますけれども、現在の最新の添付文 書と比べるとかなり違っているのです。例えば100μg投与した場合、最高血中濃度が 4.80くらいになっておりますけれども、現在の添付文書ですと8.50くらいになってい ます。それからTmaxも違っております。前は4症例くらいでやっているのですけれど も、今回新しく16症例でやり直したのです。このように4症例くらいでやるとばらつき も大きく、かなりの違いが生じる可能性があります。血中濃度が倍違うというのは大き な問題だろうと思いますので、これは一般的な話としての御提案なのですが、ある程度 の症例数でやることを是非考えていただければと思います。 ○池田部会長 よろしいですか。そのほかいかがでしょうか。後藤委員、どうぞ。 ○後藤委員 この薬剤はもう既に世界85か国で承認され使われているにもかかわらず、 今回の効能に関して認めている国はないという状況にあるようです。そうすると、この 85か国では非常に難しいからできなかったということなのか、トライアルをある程度行 ったのだけれども、有効性が認められないために承認までこぎ着けられなかったのか、 海外の状況に関して情報があれば教えてください。 ○池田部会長 どうぞ、よろしく。 ○機構 まず、海外においてこの効能・効果では承認されていないというのは、先ほど も情報として御説明したとおりでございます。なぜ承認されていないのか、あるいは利 用されているか否かに関してでございますが、承認されていないというのは臨床試験が できないうんぬんというよりもやはり医療体系といいますか、医療費関係が日本と大分 異なっているからだと考えております。つまり、緩和医療の教科書に標準療法としてこ の薬が使われるという記載がある中で、海外では保険が下りるということは起こると思 われますが、国内ではなかなかないということがございます。そういう点から、会社と しては日本での開発が必要だろうと考えているところかと思います。それが一点、大き な部分だと考えております。 ○池田部会長 実際には、たしか海外のテキストブックにも載っているということでし たよね。 ○機構 そうでございます。資料の方ではイ-3ページに、海外でどのような教科書ある いはガイドラインに記載されているかということが示されております。 ○新薬審査第一部長 付け加えますと、教科書に書いてあるということは見れば分かる 話なのですが、もう一つ資料のト-51ページの「2.海外・国内臨床研究」で公文に載っ たものを表にして載せてございます。こちらを御覧いただきますと表ト-54に「海外臨 床研究報告」が載っておりまして、これは投与量にして100μg/日から最大1,200μg/日 まで幅広く検討がなされた成績でございます。これらの論文自身は一応それなりの peer-review Journalというふうに見てとれますが、その中である程度効果が認められ ているという内容になっております。効いていない等の否定的な報告を意図的に除いた といったことはないと確認してございますので、海外でも一応使用している例はあり、 それなりの効果は見られてはいるものの、やはりどこでも同じように承認を取るまでの いわゆる筋道を立てた臨床開発がなかなか困難だという事情のように思います。また、日 本のように国民皆保険で国の承認がなければ保険適用が一切ならないような、非常にス トリクトな関係にあるところと外国はちょっと違うということがございまして、実際に は保険の支払基金のような団体の個別の判断で支給されているケースもあるように推測 しております。そうした事情の違いが背景にあるのではないかということでございます。 ○池田部会長 後藤委員、よろしいでしょうか。必ずしも日本だけでやっているもので はなくて、海外でもやっている。これはNCIのガイドラインにも載っているというこ とですか。そうですね。いかがでしょうか。末期の患者さんにとってQOLが上がる手 段があるということは非常に重要だと思いますので、お金の問題も多少あるかもしれま せんけれども、それは余りここで議論することではないので、患者さんが安全にメリッ トを得られるような格好で使えるのであればよろしいのかなという先生方の御意見かと 思います。どなたかほかに追加して御意見いただける方はいらっしゃいますか。よろし いでしょうか。もし反対ということでなくて、これはこの形で承認されても妥当である と皆さんがお考えのようでしたら、承認を可とさせていただいて、これも薬事分科会へ の報告とさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございまし た。  今日の議題は2題ですので、審議事項はこれですべて終わりです。事務局から何か報 告がありますでしょうか。 ○事務局 それでは、今年の4、5月に御審議いただきましたガチフロ0.3%点眼液と タミフルカプセル75の予防効能の追加でございますが、本日付けで承認になりましたこ とを御報告いたします。  次回の日程でございますが、8月27日金曜日の午後2時からとなっておりますのでよ ろしくお願いします。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。8月27日の2時からということでよろしくお願い いたします。それでは、本日はこれで終了させていただきたいと思います。本当にあり がとうごさいました。                                                                 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 1 -