04/07/02 第2回公衆衛生医師の育成・確保のための環境整備に関する検討会議事録                    第2回             公衆衛生医師の育成・確保のための              環境整備に関する検討会 議事録           日時:平成16年7月2日(金)10:00〜11:57           場所:厚生労働省 専用第15会議室(7階) 横尾地域保健室長  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまより、第2回公衆衛生医師の 育成・確保のための環境整備に関する検討会を開会いたします。  初めに、本検討会の委員の出席状況についてでございますが、本日は8名全員がご出 席の予定と伺っております。なお、高野委員と角野委員につきましては、少しおくれる とのご連絡をいただいております。  また、第1回検討会は所用によりご欠席でしたが、今回初めてご出席された委員をご 紹介申し上げます。  小幡純子委員でございます。  末宗徹郎委員でございます。  それから、事務局におきましては、海外出張により第1回の検討会を欠席させていた だきました藤崎大臣官房参事官が出席しております。  また、7月1日付の人事異動で、坪郷室長補佐の後任として森田室長補佐が着任して おります。  また、本日は、国立保健医療科学院の曽根研修企画部長にも出席をいただいておりま す。  次に、本日の資料の確認をさせていただきます。  まず、資料1は、「第1回公衆衛生医師の育成・確保のための環境整備に関する検討 会議事録(案)」でございます。これは各委員の先生方に発言内容等をご確認いただき、 誤り等を訂正させていただきまして、厚生労働省のホームページに掲載し、公表させて いただくことといたしたいと考えております。  また、資料2は、本日の議事1の「国、地方公共団体、関係団体が取り組むべき施策 について」でございます。  資料2−1から2−8までは、委員の方々からいただいたご意見等をまとめたもので ございます。また、各委員からいただいたご意見等につきましては、分類整理し、一覧 の表としたものを資料2−9として添付してございます。  また、本日の議事2のアンケート調査素案の資料といたしまして、資料3でございま すが、「アンケート調査(素案)」でございます。  また、参考資料といたしまして、  参考資料1は、業務の種別医師数の年次推移。  参考資料2は、診療科名(主たる)別医療施設従事医師数の年次推移。  参考資料3は、へき地を含む地域における医師の確保等の推進についてでございます が、これは前回の第1回の検討会におきまして、全体としての医師数等についてご意見 をいただきましたので、参考資料として添付いたしております。また、へき地の関係の 資料につきましては、地域医療に関する関係省庁連絡会議の検討報告書についても情報 提供としてお示しをしているわけでございます。これは3省庁が集まって連絡会議を開 いておりまして、その結果をまとめたものでございます。  参考資料4は、保健所医師等の現状に関する調査報告(平成5年・全国保健所長会) 抜粋でございますが、これは平成5年に全国保健所長会が保健所医師を対象に実施した 調査報告における保健所医師等の確保についての自由記載意見の主な内容について抜粋 したものでございます。  参考資料5は、公衆衛生医師確保推進登録事業についてでございます。いわゆるマッ チング事業についてでございますが、去る6月25日に厚生労働省ホームページに掲載い たしましたので、画面をプリントアウトしたものをお示ししております。ホームページ のアドレスも記載してございますので、ぜひごご覧になっていただきたいと思います。  また、資料の最後に、第1回の検討会の資料3の一部に誤りがありましたので、訂正 箇所について資料を追加しております。  なお、前回の資料につきましては、お手元の青いハードファイルにとじてございます ので、随時ごご覧になっていただきたいと思っております。検討会終了後、今回の資料 も別途綴じておきますので、ハードファイルにつきましては机の上に置いていただきま すようお願いいたします。  それでは、この後の進行は納谷座長からよろしくお願いいたします。 納谷座長  それでは、本日の議題はお手元の議事次第にございますが、一つは、国、地方公共団 体、関係団体が取り組むべき施策についてと、アンケート調査の素案、そしてその他と なっております。  それでは、まず最初の議題でございますが、国、地方公共団体、関係団体が取り組む べき施策についてでございます。資料2−9として、各委員から提出をいただきました ご意見を事務局のほうで分類をして一覧表にしていただいておりますが、これにつきま しては、それぞれお出しいただいた資料に沿ってご説明をいただきますが、まず最初に 厚生労働省から、その後で各委員からあいうえお順でお一人ずつご説明をお願いしたい と思っております。  また、小幡委員につきましては、各委員のご発言後、別途時間を設けておりますので、 そのときにご意見をお伺いしたいと思います。  その後、まとめて質問や追加意見などをいただける時間をとりたいと思います。  時間が限られておりますので、少し時間をとってという方もおられると思いますが、 大体5分から10分の間を一応のめどでお願いをしたいと思います。  それでは、初めに、事務局の厚生労働省から口火を切っていただきたいと思います。 平子室長補佐  それでは、厚生労働省の取り組みについて、事務局からご説明させていただきたいと 思います。  厚生労働省の取り組みでございますが、ご案内のとおり、保健所長の職務の在り方に 関する検討会報告書が3月に出ましたけれど、そこでいくつかのご提言をいただいてお ります。そういったものに基づくものと、そしてさらに考えるべき要因といたしまして、 この4月から始まりました医師の臨床研修制度の必修化に伴いまして、そういった制度 の有効活用を含めまして、今後のあり方について、現在も取り組みを進めておりますが、 いくつか現在検討しているものについてご説明させていただきたいと思います。  最も大きなものとしては、この検討会を開催させていただいているというのが取り組 みだと思いますが、ご検討いただいた結果に基づいて、順次反映させていただきたいと 考えておりますが、その中で、現在既に行われつつあるものもございますので、それも あわせてご説明させていただきたいと思います。  資料2−1でございますが、5点ほど上げてございます。1枚目に箇条書きで書いて あるもの、そして、そういった取り組みについてポンチ絵にまとめたものが2枚目の資 料でございます。お手数ですが、2枚目のほうをご覧になっていただけたらと思います。  まず、1点目ですが、公衆衛生医師確保のための関係情報の収集及び情報の提供でご ざいます。これは先ほどご案内させていただきましたように、6月25日より開始してお りますが、公衆衛生医師確保推進登録事業でございまして、左側にございますように、 保健所等において公衆衛生に従事することを希望する医師の情報を厚生労働省のほうに 登録をしていただきます。そして、公衆衛生に従事する医師を必要とする地方公共団体 についても希望条件についてご登録をいただく。そういう情報をご登録いただいてマッ チングをしていくわけですが、そういったものを行う際に、それぞれに調査等も必要に 応じて定期的に行っていく必要があるのではないかと考えているところでございます。  2点目でございますが、公衆衛生医師の育成・確保のための普及啓発ということを考 えております。この点につきましては、さまざまな方法はあろうかと思いますが、例え ば、関係者に向けてリーフレット等を作成して、臨床研修病院や医育機関等に配布する ということを考えております。  3点目といたしましては、公衆衛生医師確保のネットワークという形で、公衆衛生従 事希望医師または地方公共団体等を対象とする説明会やブロック会議を開催する中で、 ネットワークをつくってまいりたいと現在検討させていただいているところでございま す。  4点目といたしましては、公衆衛生医師の育成・確保環境整備評価委員会(仮称)の 設置によって、本検討会において策定されましたガイドラインの推進をフォローアップ していく体制を常時考えていく必要があるのではないかと考えております。  5点目といたしましては、育成の観点から公衆衛生医師の研修の実施。これは現在も 国立保健医療科学院、また日本公衆衛生協会に委託するなどして行っておりますが、さ らにこのあたりについては充実・強化を図っていく必要があるのではないか。特に公衆 衛生医師の定期的なフォローアップ研修の企画・実施等については重要な点ではないか と考えているところでございます。  厚生労働省の取り組みについて、現在行っているものと現在検討中のものについてご 説明させていただきました。以上でございます。 納谷座長  ありがとうございました。  それでは、ご質問等は後からまとめてしていただくということで、引き続いて、大井 田委員からよろしくお願いいたします。 大井田委員  日本公衆衛生学会を一応代表してお話しさせていただくわけですが、学会として、委 員会を少しいじりまして、この問題を討議する形にさせていただいたわけでございます。 いろいろな意見があるわけでございますが、基本的に医師の確保というのは非常に難し い問題でございまして、例えて言うならばホームランやタイムリーヒットというのはな かなか出なくて、フォアボールとバントで少しずつやっていくしかないのではないかと 考えております。  それで、これは厚生労働省の言っていることとかなり重なる部分がありますし、また、 高野先生のところの教育協議会とオーバーラップすると思いますが、第1点としまして 卒前教育ですけれど、公衆衛生学会の取組み案の真ん中あたりをみていただきたいので すが、公衆衛生医師に関する普及啓発−−これは先ほど厚生労働省の関係者に向けたリ ーフレット等の作成ということとも同じなのですが、これを1回や2回ではなく、やり 続けるということで書かせていただきました。  それから、教育関係機関、医科大学と連携して、公衆衛生の医師を勧誘する気持ちで 教育する。単に卒業のための国家試験の知識を得るためだけの教育ではなく、入ってい ただくという考え方に基づいた教育をやっていかなければいけないのではないか。  それは2番目の卒後教育と同じなんです。2年間の卒後臨床研修制度がもう始まって おりますが、8,000人の方が地域保健あるいは地域医療でかなりの方が保健所に行かれ ると思いますので、そのときに、一番下にありますように、日本公衆衛生学会としての 取組み案ですが、保健所の所長さんに来ていただきまして、おそらくどこの大学でも、 2年終わった後に、医局制度に対する批判はいろいろあると思いますが、やはり医局と いうところに医師というのは就職することも多いわけでございますので、そのときに、 保健所の医師の方からの勧誘もどこの大学でもやっていただかなければいけないのでは ないか。  2枚目の一番下ですが、資質の向上のところでは、やはり研修というものが大事だと 思いますので、調べましたら今もかなり研修をやっておりまして、日本公衆衛生協会あ るいは保健医療科学院でそれなりの研修はやっているわけでございます。ただ、財政が 大変でございまして、地方公共団体の研修になかなか参加していただけないとか、いろ いろあるわけでございますが、やはりこういったことを充実するために、私どもの学会 としてはバックアップしていかなければいけない。具体的に申し上げますと、講師の先 生方を学会の推薦をして支援していきたいと考えております。  それから、専門医制度ですが、それは専門医だけではなく、公衆衛生学会には保健師 さんや栄養士さんやたくさんの職種の方がいらっしゃるわけですけれど、その人たちの 専門性をどう目指していくのかということです。社会学系ですと法医学は専門医制度が あるわけでございますが、そういう形にはなかなかいかないのが難しいところでござい まして、この検討にも私どもの学会では入ったわけでございます。ただ、入るというこ とは必ずやるということではなくて、結構反対する方もいらっしゃいまして、難しい部 分もあるかと思いますが、これを煮詰めていきたいと考えております。  それから、最後のところですが、これはこの前、高野先生からもご発言がありました ように、若い医師の方は留学に非常に関心が高いわけでございまして、特にアメリカの スクール・オブ・パブリックヘルスに興味を持っている方は、たとえ公衆衛生をやらな くても、臨床に戻る方でも、行きたいという方もいるわけでございまして、公衆衛生の 留学に関する情報提供を学会としてやっていかなければいけないかなと思っております。 奨学金の問題、行った学校の内容など、意外と知らないということがわかりましたので、 こういうこともやっていきたいなと思っております。また、それは当然、教育協議会の 高野委員のセクションと連携をしていきたいと考えております。 納谷座長  ありがとうございました。  続きまして、角野委員、よろしくお願いいたします。 角野委員  資料2−3でございます。表にまとめてまいりました。全国保健所長会としての考え 方を述べさせていただきます。  左上の育成というのは、卒前教育と考えていただければいいかと思いますが、保健所 においては臨床研修で医師になった人を受け入れるわけですが、それ以前に、学生の段 階から、夏期研究であるとか実習等々を積極的に受け入れるようにしていきたい。もち ろん、今現在も受け入れているところはありますが、今後、大学のほうにもそれを働き かけまして、大学としても積極的に行っていただきたいし、保健所としても受け入れて いきたいと思います。  また、大学においては、公衆衛生の講義の中でもう少し保健所の話というものがあっ てもいいのではないかということで、行政機関に勤務する医師、保健所長などが特別講 義という形で、学生に対して直接話をする時間をつくっていただきたいと思います。  次に、確保策でございますが、国におきましては、先ほど厚生労働省からもいろいろ お話がありましたけれど、それと奨学金制度をそのまままた続けていただきたい。また、 地方公共団体におきましては、定期的に募集するということが大事かなと。第1回目の 検討会のお話の中でも、医者がいなくなれば募集するというところがあったようですが、 そうではなくて、定期的に募集すること。  それから、国立保健医療科学院で研修を受けている保健所長さん、あるいはその卵の 人たちとお話をする機会がありましたが、今、無職である医師の方から、「どこの地方 公共団体が募集しているかがわからない。そういう情報が私には全然入ってこない」と いうことで、「働く気はあるけれど、一体どうしたらいいんでしょうね」というお話が ありました。そういう意味でも、各自治体の方も積極的に募集しているということを伝 えていく必要があると思います。  また、医師の複数配置ですが、これも従来から言われていることですけれど、いまだ にこれが実現しておりませんので、若手医師をどんどん入れていくということです。  続いて、大学への直接募集というのもしていただきたいし、また、こういった研修会 広報を行うための予算をしっかりと確保していく。そして、臨床研修医の保健所での今 回の研修ですが、ところによれば、保健所がただ窓口になってやっているというところ もあるようですが、やはり自治体全体としてこれを積極的に受け入れるという姿勢を示 していただきたいと思います。  そして、保健所のほうは、もちろん臨床研修医の研修を積極的に受け入れ、充実した ものにするということが一番大事だと思いますし、また、今の我々の活動というものを 公衆衛生関係の専門誌にはよく発表していますが、もちろんそれは公衆衛生だけではな く、ほかの科にも関連する部分もありますので、そういったところにも積極的に我々と しては発表していって、既に他科の臨床をしている先生の目にもとまるようにしていき たいと思います。  そして、大学では、先ほども少しお話がありましたが、学内進路説明会等で、公衆衛 生・衛生講座なども加えていくべきではないかなと思います。  そして、全国保健所長会、公衆衛生学会、あるいは国立保健医療科学院等々関係団体 でありますが、ここでは今回の臨床研修制度の中で指導する指導医の質を高めるという 講習会を継続的に実施していく。  また、いろいろな団体がこの保健所の活動というものを継続的にPRしていくという ことも必要だと思います。  そして、定着についてですが、まず、国におかれては、通知により都道府県に年1回、 下に書いてあるような内容のことを報告を求めていただければ、自治体に対するプレッ シャーがかかるのではないかなと思います。  そして、自治体では、研修計画を提示すること。もちろん募集のときに、単に募集す るだけではなく、その自治体で医者に対してどのような研修が予定されているかという ことも、示していただけるとありがたいと思います。  さらに、もともと人数の少ない職種でありますから、どうしても孤立しがちになりま す。そこで、都道府県あるいは中核政令市等々で人事交流なども考えていただければと 思います。  また、単に衛生行政の中の保健所だけではなく、本庁との交流はあるようですが、地 方衛生研究所であるとか、あるいは自治体によれば病院の中にそういった公衆衛生的な 部署を抱えているところ、そういったところとの人事交流なども盛んにしていただきた いと思います。そして、こういったことは所長のみでなく、若手医師についてもやって いただければと思います。  保健所については、同様に、本庁と保健所のローテーション等々、そして大学との共 同研究というものを進めることによって、医師のモチベーションも高まるのではないか と思います。  それから、準備された研修会への積極的な参加です。  それから、現在、研究事業というのはいくつかの保健所でされているわけですが、そ の多くが保健所長を中心としてされているわけです。しかし、そういったものはもっと 若い先生方も中心になってできるような形にしていくことも大事かと考えております。  それから、ここには書いておりませんが、積極的に外に出ていろいろな仕事をすると いう意味で、国際協力、国際保健医療活動などにも従事する場所があればいいのではな いかと思っております。  そして、大学では、保健所との共同研究や、全国保健所長会、公衆衛生学会等々が今 されておりますところの研修をさらに充実したものにしていただきたいと思います。  それから、全国の保健所長、保健所医師の個人票の作成ということですが、以前にあ るところでつくったことはありますけれど、我々は全国的なネットワークというものを 非常に大事にしておりまして、どこでどういう先生がどういう活動をされているか、そ ういうことがわかれば、日常の仕事の中でも困ったときに非常に相談がしやすいという ことがあります。そういうことで、医師の名簿作成をしていきたいと思います。  そして、最後に、今既に国立保健医療科学院のほうで一つ準備されておりますが、イ ンターネットによる情報交換なども充実させてほしいと思います。 納谷座長  ありがとうございました。  では、次に、篠崎先生、よろしくお願いいたします。 篠崎委員  資料2−4ですが、その前に、私は、この公衆衛生の医師の確保について、20年近く 仕事でやってきたのですけれど、なかなか難しかったんです。ただ、ちょっと明るい兆 しがあるのではないかなというのは、一つは、医師の絶対数が人口10万対200を数年前 に超えましたので、まだまだ地域偏在、専門分野別の偏在はあるとはいいながら、やは り絶対数が増えてきましたので、今後はアキュムレーションしていってどんどん増えて いきますので、これも一つの大きな明るい面での要素ではないかと思います。  もう一つは、昭和41年からインターン制度がなくなって、臨床研修が任意になりまし たので、それでほとんど保健所実習というものがなくなってしまったわけです。ところ が、今回、今年の4月から始まった新しい義務化された臨床研修制度では、来年からで すけれど、地域保健の中で保健所が一つの基礎研修として入りましたので、多くの医学 研修生が保健所とか公衆衛生の場で実習をすることになると思いますので、これも公衆 衛生医師の確保対策の上では明るい要素になるのではないかなと思っております。  国立保健医療科学院は今までもこの公衆衛生医師の確保については役割を果たしてま いりましたが、名前が替わりまして国立保健医療科学院になり、今年の10月1日で水道 と生活環境と病院建築などの建築衛生の3つの学部が全部和光に集まりまして、新しい キャンパスで来年4月から研修が始まるというので、来年の4月に向けて抜本的な研修 内容の改革をしたいと考えております。特に藤崎さんとか平子さんからも言われて、こ の今までの検討会の経緯を踏まえまして、今の時代に即応した魅力ある抜本的な新しい 形の研修にしていきたいと思っております。  ただ、魅力のあるものに抜本的に変えていこうと思うと、どうしても先立つものが必 要でございまして、今、まだ予算要求の途中でありますので、この予算がとれるかどう かも12月までわからないわけですが、何とかそういう方向で行きたいと思っております ので、できれば予算化をしたいし、また、もしその予算化がうまくいかなかった場合も、 研修生からもらう方向でいくべきではないか。今までは原則無料だったのですが、ただ というのは、研修の実質的な効果も上がらないですし、今のこの時代ですから、やはり それなりの費用をいただくという方向で予算化するなり、あるいは自己負担をしてもら うなりして、少し先立つものを準備したいと思っております。そうすれば、よりいいも のになるのではないかなと思っております。  それから、保健所を中心として考えると、対物サービスと対人サービスとがあります が、対物サービスについては法令的なものなどですから、講堂で聞いたりすればある程 度わかると思いますが、対人サービスのほうは、いろいろ体験をする必要があると思い ますので、対人サービスの中には、今この時代によく言われているのは、新しい感染症 と生活習慣病という2つの大きな疾病対策というものがあると思いますので、それぞれ をできうれば、感染症は開発途上国にみずから行って経験するなり、生活習慣病は、我 が国もそうですけれど、欧米の先進国に行って体験するなり、そういった海外での研修 も組み入れたらどうかなと、今の段階ではまだはっきりわかりませんけれど、そういう ことを考えているところであります。  それから、資料2−4に基づいて簡単にご説明しますと、保健所長カリキュラムコー スの抜本的見直しになっていますが、(1)でNBCやテロ対策、あるいは輸入感染症に 対応できる危機管理能力をつけるような研修に主眼を置いたものにしたいと。  (2)は、これはいずれにしても外国とのやりとりが多いわけですから、国際間との情 報交換ができる能力、平たく言えば言葉の問題ですね。ですから、研修の中身の教材は 原則英語の教材を使うようにしたいと思っておりまして、保健医療科学院にアメリカ人 の職員を雇っておりますので、そのネイティブの人に見てもらって、教材は全部英語で やろうと思っております。  (3)は、原則1年間というコースで、MasterofPublicHealthという称号を与える。 これは今までもそうでしたが、こういうものをしようと思っております。ただ、ディプ ロマとマスターは1年ですけれど、朝から晩までいすに座って1年間というのはあまり 魅力があるとは思えませんので、どのくらいになるかわかりませんが、例えば半年ぐら いの前半は和光の科学院で講堂講義を中心にやろうと。そして、残りの単位を例えば海 外でやってもらうとか、あるいは短期の課程を活用するとか、遠隔教育などで単位とし てとれるようにしようと。  保健所から出すときに、1年出すのは、今まで出していただいたこともたくさんあり ますけれど、苦しいというところもありえますので、最初はある一定期間やってその単 位を残しておいてもらって、またしばらくしたら残りの単位をとってもらうとか、いろ いろバリエーションに富んだやり方で、トータルとしてはカリキュラムを足していって、 1年コースということでマスターをとる。そういう形にしたいと思っております。  2.は今言ったことの繰り返しになりますが、今はIT時代ですから、何も同じとこ ろでずっと座って黒板を見て話を聞くということではなくても、インターネットを使っ ていくらでも情報交換はできますので、そういうIT技術を活用したものにしようとい うことで、新しい保健医療科学院はインターネットは全学生に行き渡るようになってい ますし、24時間利用できるようになっていますので、そういうものも使って指導教官と 研修生の間で、どこにいても双方向で連絡がとれる仕組みを活用していきたいと思って おります。  3.は、全体の話ですけれど、個別の時宜を得たものについて短期に、例えば1泊2 日とか2泊3日できるようなものをどんどんつくっていきたい。幸いにして、保健医療 科学院は同じ敷地に150人用の宿泊施設があります。全部バス・トイレ付きの個室が150 ありますので、それを活用してこういうものもできるのではないかと思います。  4.は、今、全国で500いくつでしょうか、そういう保健所長さんと、これもインタ ーネットで結んだネットワークをつくって、双方でいろいろ情報交換したり情報発信し たり、それが研修プログラムにも生かされるようにしていきたいと思っております。  6.は、それぞれの講義についても、ずっと同じというものではなくて、時宜に応じ てどんどん中身を評価して変えていくようなシステムを構築したい。  7.は、保健所長のコースを終わった人たちとの同窓会といいますか、あるいはもう 少し密度の濃い内容の連絡網もつくっていきたいと思っております。  8.は、検疫所を保健所と一体となったものにしたらどうかなと私は思っております。 検疫所が今随分様変わりをしてきておりまして、昔は検疫所というのは主に対人だった のですが、今は食物の検疫も多いですし、SARSのような国際的な感染症などもござ いますので、一時よりは大分違っておりますから、保健所と検疫所が一体となった形の 研修システムなり交流みたいなものが必要なのではないかなと思っております。  保健医療科学院は、主に研修という形で公衆衛生医師の確保対策に努めていきたいと 思っておりますが、一番大きいのは、こういう研修が魅力があって、これに入ってくる 人が増えてこないとまたサプライもできないということがございますので、来年の4月 に向けて、もう時間はあまりありませんけれど、今までの研修のいいところを生かして、 角野先生など保健所長会の方々、あるいは衛生部長会の方々のいろいろなご意見を伺っ て、実りのある研修をぜひ来年の4月からスタートさせたいと思っております。 納谷座長  ありがとうございました。いろいろご質問もあろうかと思いますが、先に進めさせて いただきます。  次に、末宗委員からは、総務部長というお立場でご発言いただきたいと思います。よ ろしくお願いいたします。 末宗委員  本県の実情も踏まえながら、検討項目に沿って若干意見を申し述べたいと思います。  まず、卒前教育ということで、公衆衛生医師の育成に向けて、医学部のほうと県行政 の連携というものをもっと強化する必要があるのではないかと思っております。現状を 聞いてみますと、どうやら個人的な地元大学とのつながりにとどまっておりまして、衛 生部にしても、組織的な形になっていないような気がいたしておりますので、課題を共 有する上でも、そういう連絡協議の場が常々あって、医師の育成だけではなく、いろい ろな点について議論をする場が必要なのではないかなと思っております。  もう一つは、私も今回初めてこの委員になりまして認識を改めているのですが、この 問題が衛生部の域にとどまっているような気がしておりますし、前回の議事録を拝見い たしましても、そのようなご意見があったように思います。ですから、そういう連絡協 議の場において、場合によっては総務サイドも入りながら課題を共有化していかないと、 今後の展開も広がりにくいのかなと思っております。  また、卒前実習で保健所の実習ということで、現在、県でも協力をいたしております、 あるいは保健所長さんが大学の公衆衛生学の非常勤講師を今もやっておりますが、これ もまだまだ少ないのかなと。今後の連携強化の中で充実を図っていく必要があるのでは ないかと思っております。  それから、この卒前実習のプログラムなり教育手法について、各県でもあまり足並み が違ってもいけないでしょうから、全国レベルでもう少し検討・研究が必要でありまし ょうし、その際に、保健所のいろいろな監視業務や指導業務がございますので、そうい う実践的な業務も体験できるようなことも考えていったらいいのではないかなと思いま す。県の行政においても、最近はSARSなど危機管理でも大変重要な分野となってお りますから、その辺を若いうちから知っていただくということは大事なことなのだろう なと思っております。  それから、採用後の教育でありますが、研修のほうでいいますと、一たん研修をした 後の再教育の場がどうも少ないように聞いておりますので、そのフォローアップ研修の 充実が必要なのではないかということがございます。  それから、育成に主眼を置いた人事管理についてですが、この点は自治体側も多少サ ボってきている面もあったのかなという気もいたしますし、ある意味、必置規制がかえ って、保健所長の欠員が生じたら後任を補充すればいいやというふうにもつながってい る面もあったのかなという気もいたしておりまして、もう少し若い時期から、保健所業 務以外で、例えば法令とか予算とか、行政実務も経験することが必要であろうかと思い ます。現場ももちろん足場を置く必要がありますが、そういう分野での資質向上も図る 観点から、例えば本庁でも保健予防や医療政策や障害福祉といった専門知識を生かせる 分野がありますので、ジョブローテーションをもっとやっていく必要があると思います。  さらには、保健と福祉の連携といった観点から、もう少し幅を広げた経験もしながら、 資質の向上を図っていく。すそ野を広げないとなかなか採用の範囲も広がらないので はないかなという印象を持っております。  また、本人の希望によっては、臨床分野と兼務して医療技術の保持を図れるようにす るとか、いろいろな工夫をしていく必要があるのではないかということであります。  それから、募集方法につきましては、これも県・政令市・国との間の人事交流をもっ と検討したほうがいいのではないかと思いますし、臨床医あるいは大学の研究者が県の 保健所長などを経験した後に、またもとに戻れるといった仕組みも設けてはどうかと思 っております。  それから、処遇の面でいいますと、大学院に通いたいという希望があったときに、服 務上、職務専念義務の免除等も検討する必要があるのかなとも思っております。 納谷座長  ありがとうございました。  次に、高野委員、よろしくお願いいたします。 高野委員  私は、全国の医学部を持っている大学すべてを組織しております公衆衛生学・衛生学 の教授、あるいはその教室が参加しております教育協議会というものがありまして、そ の立場から、この環境整備に関する方向性につきまして提出いたしましたこの資料2− 6に基づいてご説明をさせていただきたいと思います。  今までいろいろな委員の先生方のお話の中に、「大学との連携」という言葉がキーワ ードとして一つ出てきていると思いますが、そういう意味で、「大学との連携」という ものを大きな下敷きにして聞いていただければと思います。  ここにありますように、今、医学部は非常に大きな改革のときにありまして、また同 時に、先ほど篠崎先生が言われましたように、臨床研修の必修化ということで、それに 伴う変化というものも今劇的に起きているわけであります。  そして、臨床研修を通じて、臨床に関する働く場所については、医学部の学生にも学 生の段階からいろいろな情報が入ってくるようになってきております。これは厚生労働 省のご努力もあれば、またさまざまな団体のご努力もあるのだと思いますが、今、この 情報社会において随分速やかにその情報インフラが確立されているように思います。し かし、その点で見ますと、公衆衛生医師についての情報はほかのものと比べて相対的に 少ないように大学側からは感じております。  そこで、大学の仕組み、教育からいきますと、普通は卒前教育と卒後教育とに分けま すので、そういう順番でお話を進めさせていただきます。  卒前教育というのは、いうまでもなく医学生の教育でありまして、これが終わります と、国家試験を受けて医師になるというための教育です。ここにおきましては、今、カ リキュラムの改善がされていまして、昔ながらの教育のスキームが根本から今変わって いるというのは、前回お話ししたとおりです。その中でやるべきことは、公衆衛生学の 教育カリキュラムの充実、また、医学生がそれを勉強したいと、あるいはそういう方向 に興味を持つきっかけとなるインセンティブを与える、そういう機会が必要であろうと 思います。  また、卒後教育では、従来であれば大学を卒業してから4年間の大学院と形が決まっ ていたわけでありますが、今は社会人枠があったり、あるいはいろいろなコースを提供 することによって、各大学が工夫をして多様性を持っているという現状があります。こ こにおいてどのように公衆衛生医師の教育、専門家としての持続的な教育、あるいはリ カレント的な教育を行うのかということが重要だと思います。  それから、前書きの終わりに2行つけ足しましたのは、医師となる医学生にとってみ ますと、彼らは若いだけに、社会の雰囲気を非常に敏感に感じ取っています。そういう 面で、例えば、テレビドラマだけがすべてではありませんが、一つの具体的な例として 見れば、弁護士のドラマもあれば、いろいろなドラマがあるわけですね。研修医のドラ マもあれば、看護師さんを主役としたドラマも大変ヒットしたりもしています。ただ、 私はあまりテレビを見ないので知らないのかもしれませんが、公衆衛生医の活躍を取り 上げたテレビドラマはあまり見たことがないんですけれど(笑)、そういうものをつく れと言っているわけではありませんが、そういうところから見ると、まだ社会的な関心 として十分に浸透していないのかなという気がします。非常に重要であるにもかかわら ず、まだちょっと社会的な認識が足りないと。  そうすると、そちらのほうも環境整備ですから、社会的なそういう雰囲気といいます か、パブリックの認識に対しても、何か積極的な情報発信ができないかなというのを、 この2行で書いております。  では、具体的にはどうかということですが、卒前教育では5点、卒後教育では7点、 項目を上げました。これが私からご提案申し上げることです。  そして、1枚めくっていただきますと、資料1〜8とあって、資料のタイトルが書い てあります。8種類の資料を用意いたしました。この後についてきます資料1、資料2 と右肩に番号を振っていただいております。この資料8までが私から提出する資料です。 この資料は、ここにあるとおりにやったらいいというモデルを持ってきているわけでは 決してありません。提案することはあくまでもこの資料2−6のほうでありまして、漠 然とした提案ですと、具体的なイメージがつかみにくいと思いますので、例えばこうい う状況が現在あるということで例えとして出しているわけでありまして、実際にここで 検討する場合にはそれにふさわしいものをつくっていく必要があると思っています。  まず、1番目として、医学部の卒前教育ですが、これはいろいろな先生方から公衆衛 生教育の充実ということを言っていただきまして、大変心強い思いをしております。そ して、それはもう申すまでもなくまず第一に重要なことだと思っております。しかし、 それと同時に、むしろ医学部には早期から公衆衛生なり概念としての疾病予防、あるい は地域保健、危機管理、保健医療政策といったものに触れてもらうカリキュラムをつく る必要があると考えています。そして、公衆衛生教育の充実というときには、同時にこ の点も重視して考えていただければと思います。  もっとも、医学教育のカリキュラムの内容そのものに関して「こうしろ、ああしろ」 と言うわけにはなかなかいかないことも知っております。しかし、医師のクオリティを 管理する、あるいは公衆衛生に従事する医師の確保ということは厚生行政上非常に重要 なことでありますので、そうした立場からの考え方があってしかるべきで、それは例え ば大学のカリキュラムに反映するということになりましたら、先ほど言いました、大学 で組織しております教育協議会という団体を大いに活用していただいて、実現を図ると いう方法をとっていただければと思っております。  2番目は、それでは、外国では一体どうしているのかと。日本の国ではこの問題は非 常に困っているけれど、地域の安全であるとか公衆衛生ということであれば、どこの国 でも重要なことでありますので、ほかの国では一体どうやっているのかということが気 になります。  そうしたところでのいい点を取り入れて、今までもご提案がありましたけれど、もう 日本一国だけで公衆衛生上の安全というものも守れないわけですから、どういう具合に ほかの国々と共同してやっていくのかということは重要なわけであります。そのために も、ほかではどういう教育をしているのかということは興味があると思って、資料を用 意いたしました。  時間もありませんので、この資料をすべて細かく説明するつもりは毛頭ありません。 タイトルだけ見て追っていただければと思います。  資料1は、アメリカの医学部の教育です。これは医師となる学生への教育であります。 医師となる学生にどのように社会が教育を行っているのかという現状を昨年度調査いた しましたので、その成果をまとめたものを持ってきております。ざっと見ていただきま すと、必修となっている社会学関連科目も随分多い。アメリカのようにメディカルスク ールであってもですね。それから、スクール・オブ・パブリックヘルスが別にあっても、 メディカルスクール−−医師になる人にやはり教えているんですね。こういうことも参 考になると思います。  資料2は、イギリスではどうかと。前回もお話ししましたけれど、アメリカは基本的 には安全とか安心とかというのは自分自身で守る社会でありますから、社会保障という 面では、私は必ずしも100%お手本になることはないだろうと思っています。だからと いって、イギリスがすべてお手本になるかというと、もちろんそうではないとも思いま すが、対比して、パブリックヘルスの発祥の国ですので、イギリスの教育についても、 これは昨年度の調査であります。「揺りかごから墓場まで」という言葉が生まれた国だ けありまして、なかなか工夫をした教育が医師となる学生に施されています。  資料3は、少しユニークな例でフランスであります。ご存じのように、フランスのエ リートは、例えば他の国のエリートと違いまして、総合大学とかというところからでは なく、国の官僚のエリートとなるべき教育機関から出てくるわけですね。そうした非常 に特徴あるエリート教育が見て取れると思います。  資料4は、オーストラリアでありまして、これはお目通しいただければと思います。  こうした卒前教育のこれは昨年度の調査ですから、気がつきましたことは、ほかの国 においても今は大きく変わっているときだということです。どの国においても、公衆衛 生というものに対する社会の要求が大きく変わっているのだなと。それに応じて教育も 随分変えているな、工夫しているなというのが、総括的な印象であります。  そこで、2番目としては、こうしたものを参考にしながら、社会学あるいは公衆衛生 学の卒前教育手法もやはり開発して、魅力ある教育にしなければいけないと。公衆衛生 教育が重要だからといって、昔からあるようなものをもう一度時間を増やして公衆衛生 を教えても、それはもう学生の魅力とはならないですね。やはり今の時代に合った新し い公衆衛生教育をやらなければいけない。新しい公衆衛生学教育を身につけるには、そ の教育手法も新しくしなければいけないということであります。  それから、3点目、4点目、5点目はそこに書いてあるとおりで、今まで各委員が言 われましたように、いろいろな団体の連携を図る。そして、角野先生が絵にしてくださ いましたように、こうした連携がやはり重要だということは、大学側からもそのように 思っているということであります。  次に、卒後教育ですが、先ほど、卒後教育はどこの国でも大きく変わっているなとい う印象を先に言ってしまいましたが、卒後教育に関しての印象は、卒後教育で求められ ている教育内容というものが、昔から考えていた公衆衛生という範囲ではないなと。も っと大きく範囲が広がっているなというのが、総括的な印象です。  それで、例えば、資料6はアメリカにおいてはどのように卒後教育をやっているのか、 資料7はイギリスというように、2つの国を書きました。それは資料として提供してい るものですから、内容については説明を省略いたしますが、求めているものが随分広く なったなということに関しましては、資料8が非常にわかりやすいと思います。  資料8の1ページ目に表がありますが、これは医学部がMD(メディカル・ドクター) という資格と同時に与える資格として設定しているものです。ですから、アメリカの医 学生は、例えばMD/PhDコースであれば、卒業と同時にMDとPhDと両方がとれ るということになります。そして、随分多くの奨学金がこれに費やされていまして、こ のMD/PhDコースをとるとほとんど学費はかからないというぐらいに、手厚く応援 をされております。  そして、その後の3つですけれど、この辺が幅が広いなと思うところでありまして、 公衆衛生でありますと、MDと同時にMPH(マスター・オブ・パブリックヘルス)が とれてしまうというコースがあります。ただ、最近の学生の人気からいきますと、パブ リックヘルスには興味があっても、MPHでは満足しないという傾向があります。です から、スクール・オブ・パブリックヘルスへ進む医学生の数は減っています。  では、どういうところがさらに広がっているかというと、MD/JD(ジュリス・ド クター)です。これは医師とともに法学博士がとれてしまうというコースです。これは マスターではなくてドクターですから難しいということもあって、希望者はまだまだ少 ないのですが、アメリカで今現在非常に注目されている領域です。  そして、一番最後のMD/MBAというのは、経営のいわゆるMBAで、ご存じのと おりであります。これも増えていまして、こっちはマスターですから1年プラスでとれ るわけですが、マネジメントとか政策面で興味のある人が増えまして、大学によっては 4年間の医学教育の中にこれを取り込んでしまいまして、通常の医師も4年間、MD/ MBAも4年間でとれるような大学も最近では出現しております。一例を挙げますと、 ボストンのタフツ大学などはこれを取り入れているところであります。  そういう今の医師の卒後教育への要望というものを考えますと、資料5に戻っていた だきまして、これは一つの取り組みとして、東京医科歯科大学で行っているマスターコ ースです。これはMMA(マスター・オブ・メディカル・アドミニストレーション)で すが、与えられる称号はマスターであるにもかかわらず、医学博士を取得した方がむし ろこれに大いに希望するということがありまして、大学で考える昔ながらの、学士があ って、修士があって、その上に博士があるという、そういう順番が崩れるぐらいの新た な脅威ということになるかと思います。  今までのMPH(マスター・オブ・パブリックヘルス)なり公衆衛生教育でカバーし たものとは、どんなことがさらに広がっているかについて、ちょっと見ていただきたい と思います。  8ページをごらんいただきますと、授業科目というものがあります。左端の系名とい うのが柱でありまして、10本の柱からこのカリキュラムは成り立っております。そして、 1番目の医療政策論のようなものは昔からあります。これは従来型です。しかし、社会 保障とか社会政策とかということに関しては、4大学連合に基づきまして一橋大学の社 会保障の専門家に来ていただいてやっております。従いまして、医学部で提供する社会 保障の教育内容よりもさらに高度になる。しかし、それはあまり医学と関係のないこと を習っても仕方がないわけで、そこには当然、医学とどのように関係があるかという位 置づけをしなければいけませんし、それを支える意味で、医学部の教授もこれに参加を して一緒にやるという形になっています。  以下、皆同じです。  次の9ページをごらんいただきますと、東京外国語大学とありますが、外語大学がど うして医学と関係があるのだとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんけれど、健康 であるとか医療であるとか保健というのは文化的な側面も非常に強いわけでありまして、 そういう意味で、これも人気のある科目になっています。  柱の2番目が経営戦略と組織管理で、これはMBA的な要素で、なおかつその中から 医学に関係のあるところをピックアップしたものでありまして、戦略の立て方であると か、財務・会計であるとか、ロジスティクスというのも今非常に重要な分野です。どの ようにロジスティクスを確保するかというのは、保健医療の実施にとっても非常に重要 で、最近ではいろいろなプロジェクトにおいて半分はロジスティクスで決まるともいわ れています。これも学生の人気は大変高い科目です。  それから、3番目の柱の施設設備とか衛生管理ですが、こうなりますと今度は工学部 の専門の方の講義を聞きたいという要望が強くなります。篠崎先生のところでは当然工 学系も教えられていると思いますが、この工学関係についても公衆衛生にとっては基礎 的な知識が求められるのではないか。特に都市の中での感染症などを考えますと、都市 のインフラなどは非常に重要なことになってきます。  4番目の柱が医療の質の確保と危機管理で、リスクマネジメントであるとか、TQM であるとか、コミュニケーションであるとか、そして感染症の危機管理といったことが 入っております。  5番目の柱は、医療のグローバル化と国際的枠組みです。何といってももう日本一国 では公衆衛生も考えることがなかなかできませんので、常に国際環境の中においてこれ を考える必要があるということで、これが1本の柱になっております。  6番目の柱が、医療情報の整備とセキュリティ管理です。情報の整備あるいはセキュ リティ管理となりますと、これもまた医学部以外の学問分野の応援が必要でありまして、 このようになっているわけであります。  7番目の柱は、医療関連法規の理解と医の倫理で、メディカルスクールとロースクー ルのタイアップのエッセンスをとっているということになります。  8番目の柱は、人的資源管理と書いてありますが、これは労務管理なども入るわけで す。どうやって人を使っていくのか。医師はある意味ではそんなことを考えずに治療だ けに専念しなさいという教育もまた一方であって、それも美しい理念だと思いますが、 しかし、同時に、人をマネジメントするという能力も職種によっては必要なわけであり まして、私は、公衆衛生分野の医師はこういう労務管理であるとか人材開発の方法など も必要なのではないかと思っております。  9番目の柱は、情報発信と社会貢献です。これはどうやって社会にその重要性を訴え ていくのか。先ほどちょっと述べましたが、そういうこともここに含まれるわけであり ます。  最後の10番目の柱は、よく知られている臨床疫学であります。  こうしたものに今非常に人気があるということは、従来型の公衆衛生の専門家だけで できる教育から、公衆衛生の専門家がオーガナイズしたりファシリテートするのだけれ ど、もっと多くの分野の学問的な成果を実用面で応用するという立場で組む教育が求め られているように思います。そうした教育にアクセスできるように、例えば保健所の医 師の方、行政の医師の方、これからそういう道へ進みたいと思う医師の方、あるいは医 学部を卒業した人、そういう人たちにこういう教育へのアクセスを容易にしてあげる。 あるいは、こういう道を多く準備するというのも環境整備の重要な点だと思いますし、 これに関してどういうアプローチができるのかを考える必要があると思います。教育協 議会では、そうしたことも現在検討しております。  少し長くなりましたが、私からは以上です。 納谷座長  膨大な資料をご用意いただきまして、ありがとうございました。後ほど読ませていた だきたいと思います。  それでは、引き続きまして、土屋委員からお願いいたします。 土屋委員  第一線の医療を担っている集団として、どうあることがいいのかということについて 考えてみました。  まず、卒前教育は、今、高野先生からもお伺いしたとおり、あるいは大井田先生から もお伺いしましたが、要するに、学生時代に先生方がどのような教育をなさるかによっ て、この道へ進むドクターが、関心を持って、本当のことがわかって、志を立てて、向 上心を持って、情熱を持ってこの道を選択できるのではないかというのは、いくつかの 大学でそれなりの考えをお持ちの教授のもとからは、そういうものが際立ってこの道を 選んでいるという事実がございます。  確かに今の大学の教育の当面の目標は、国家試験を通ることに力点が置かれていまし て、なかなか公衆衛生行政について関心を持てないということがあります。そうします と、それは医学教育の日々の先生方の講義の中で、あるいはそれに伴う実習の中でこれ を植えつけていく、ナビゲーターとしての役割を果たしてもらうことが大事ではないか ということでございます。そこで、この卒前教育については思いつき的なことをここに いくつか列挙してみました。  ほとんどの学生はみんな医療機関に就職して、聴診器をぶら下げて患者を看ることが 自分たちの使命ぐらいに考えておりまして、私もこの検討会に出席させていただいて先 生方のそういうお話を伺って、なるほど、この分野はこの分野として、現状の日本なら 日本という、あるいは国際的な関係でも、そういうドクターが求められているというこ とを考えますと、大変魅力のある分野だなということを感じています。  それから、卒業教育についてでありますが、これはいろいろな場面があるのでしょう けれど、卒業してしまってから、その道を選んでくれた人ならいいのですが、一たん踏 み出してしまいますと、途中からこの分野に引き込むということも、基本的な考えがで きていないだけに、難しいのではないかなと。そこで、今考えられるのは、私ども医師 会としては、生涯教育制度という研修会をたびたび都道府県単位でしておりますけれど、 そういう中にそういうものを組み込んで充実を図るとか。あるいは、先ほどもお話に出 ていましたが、このたびの新医師臨床研修制度の中で、こういうものを一つのカリキュ ラムの中に組み込んで、保健所の果たしている役割等の重要性を理解させる機会にする ことも大事かなと思っています。  「保健所の医師というものになろうかな」なんていうのは、学生時代にはほとんどな いわけでありまして、それはごく限られた指導者がその向きの話をして、そのほうへ誘 導していただかない限り、現状では大変難しい状況にあるという考えです。  それから、普及啓発につきましては、いろいろなメディアを通じてこういうことの重 要性を説き、特に若手のドクターに対しては、機会あるたびにそれをとらえてわからし めるということも必要だろうと思います。  卒後教育その他処遇ということに関しましては、本当に意欲を持って勉強してくれれ ばいいのですが、「行くところがないから、保健所の医師にでもなるか」、「この病院 の部長なり院長なりになれなかったから、じゃあ、定年まであと何年もないけれど、保 健所長さんになってみるか」と。あるいは、周囲がそういう格好で勧めるといった、大 変ネガティブな道の選択も現実にはあります。そういうことでは、その方は今さら勉強 しようという意欲もないでしょうし、そういうことにしてしまいますと、後に続く若い 人たちの意欲をそぐことになるのではないかと思うわけです。  そこで、甘いことを言うわけではないのですが、どの道を選択しようかなというのに、 臨床系のいろいろな科目を選択すると、今、先輩たちが日常口にしていることは何かと いえば、認定医、専門医、指導医といった話ばかりです。そうすると、この道に進んで、 おれたちは何なのかなと。先ほど大井田先生が、専門医、認定医の学会としてのお考え をお述べになっていらっしゃいましたが、そうなんですね。彼らは、昔は医学博士、今 は専門医ということをふた言目には言っておりますので、あまり難しいことはわかって ないのですが、そういうものだと。そうすると、「この道に進んで、おれたちは何の専 門医になれるのかな、認定医になれるのかな、その道で認知されるのかな」と。  そういう意味からしますと、先ほどから時々出ていました、篠崎先生のところのMP Hというのは、学位をとった者がまたそのマスターコースに行くというお話ですが、こ れはまた全然違った話で、こういう道があるのだよと。これは下手な学位をとるよりも、 あるいは専門医、認定医よりも、この資格というのはもっと国際的に通じる資格なのだ ということを学生たちが知ったら、一つの道としてこういう道を優秀な人材が志してく れるのではないかなと思います。  それから、確かに保健所に勤務するドクターがいないということもございますが、そ のためにはいろいろな情報ネットワークを含むようなお話がございましたけれど、現実 には、いても就職できないと。以前から複数の保健所にはドクターを置いたほうがいい のだという考えはあったわけですが、その本当のところは何かというと、地域によって いろいろ理由はございましょうけれど、まずは人件費です。医者を1人そこにポストを 増やすということは大変な人件費がかかるのだと。だから、1人でいいじゃないかと。 ところが、そこに自分の進むべき道を見つけても、そうしようという希望を持っても、 そこには1人しかいないと。自分1人であると。そこには指導者もいなければ、全然違 った分野の勉強をしなければならない。  厚労省が2年ほど前でしたか、そういうことなので研修の機会を設けるといった通知 がございましたね。そこに行ってまずそういう研修を受けないとなれないところで、ひ とりでやらなければならないという、何かものすごく寂しい話なんですね。先ほど角野 先生がおっしゃっていたように、1人欠けたらあわてて次の人を募集するのだという、 これはそんな話ではなくて、複数いれば自然に、あるいは「自分もなりたいな」と、現 にそういう人が何人かいるのを私は知っています。ところが、ポストがないというんで すね。ポストを増やしたらどうだというと、「いや、これを1人増やすというのはもの すごい人件費なんですよ」という話なんです。でも、現実には複数のドクターを置いて いる保健所が活発な活動をしているというのも事実です。  一方では募集してもいないという話で、これは大きな差だと思います。ですから、全 国一律に一概に言えないといっても、歴史的な保健所のドクターの働き、役割を鑑み、 あるいは現状で、SARSの問題であるとか、感染症一つ取り上げても、とてもドクタ ー1人で対応できる状況ではありません。現にそういうお立場にある角野先生などは、 あと2〜3人いてくれて、その連中を指揮してやらなければならない場面というのはい くらでも起こってくるわけですね。ですから、もろもろのことを抜きにしてそれを最優 先にして、複数の医師を配置するということだけでも、今の若いドクターたちにとって は大変魅力のある分野になるのではないかと思います。  また、募集の方法については、先ほど先生方からいろいろ出ておりましたので省略し ますけれど、今の人たちは、私どもの時代とは比較になりませんけれど、それなりの考 えを持ってこの道を志している人たちがいます。その人たちは自発的にそういう一つの サークルをつくって、皆さんがお考えいただくようなことについて、「自分たちで何と かならないものか」ということを絶えず前向きにお互いに励まし合って、この道が世の 中からもっともっと認知されて、後輩がこれに続いてくれるような分野にしようじゃな いかという努力をしています。ですから、これは国もそうでしょうけれど、その地域で その人たちの活動の輪を広げられるような何か支援をしていくということも必要なので はないかなと思います。  雑駁でありますが、第一線で活躍している、あるいは現にそうしようかなという人た ちの意見を聴取して、何とか私ども医師会として、あるいはこういう検討会を通じて、 少しでもそういう人たちの意向をくみ取ってやることができたらいいなと思った次第で す。 納谷座長  ありがとうございました。  次は、順番で私ということになっておりますので、座長を離れまして、全国衛生部長 会の代表として参っておりますが、全国衛生部長会としては、毎年、国に要望を上げて おりますけれど、その中では、医師確保について今のところまとまったものはございま せん。おそらくそれぞれの自治体がそれぞれにお考えになっておられるのかなと思って おります。  ただ、今度の国が企画しておられますアンケートに乗るのか、あるいは独自に事務局 と相談させていただいて、部長職にまた聞くのかというあたりは、少し検討させていた だきたいと思います。とりあえず私が今までの全国的なお話の中で得たものと、それか ら、大阪府の担当者でディスカッションしてきたものをまとめておりますので、簡単に お話しさせていただきたいと思います。  それから、そのアンケートに関連してでございますが、前回も少しお話が出ましたけ れど、各府県でかなりばらつきがございます。各府県の経済状況とか人口規模とかいろ いろあるので当然なわけですけれど、先ほど審議官ともお話ししていましたが、各府県 の秘密に属する事項ではなくて、それぞれの府県あるいは保健所にどれだけ医師がいる かとか、どんな研修制度を持っておられるかということは、外に出てもいいのではない かなという気が私はいたしております。その辺がある程度わかれば、それぞれの自治体 の置かれている位置というものがわかりますので、それぞれの自治体の置かれている現 状の中でまた努力するということもできるのではないかなと。その辺を頭に入れて、ア ンケート調査をしていただきたいなという気がいたしております。  それから、この説明に入る前に、保健所の医師の業務内容も自治体によってかなり違 います。保健所全体を動かせる立場にある所長さんもいらっしゃれば、そうではなくて、 健診が中心の自治体もございまして、そういう意味では、保健所の医師の業務の内容、 もう少し突っ込んで言えば、「どんなイベントのときにやりがいを感じたか」といった アンケートも非常に大事ではないかという気がいたしました。  それから、医療費が毎年1兆円ずつ増大をいたしておりまして、これは大きな国家的 な問題であるわけですが、考えますと、ベッド数と医者の数が増えますと医療費を押し 上げるわけですけれど、公衆衛生医師というのが増えますと、医療費を押し上げるので はなくて、下げるのだと思います。そういう意味では、公衆衛生医師の確保というのは 医療経済的にも非常に重要な問題ではないかと考えております。  資料2−8に沿って申し上げますと、医師になる前の方々の社会見学のような場面が 必要ではないかということです。それから、研修制度につきましては、大阪府では2年 間の臨床研修の後に、若い間は週2回、もう少したちますと週1回、研修の日を設けて おりまして、結核、母子、精神、地域リハビリテーションといった研修の機会を持って もらっております。大学院に通っている者もおります。  それから、これは先ほど土屋先生もおっしゃいましたけれど、今の人たちは「保健所 にいても何も資格がとれませんね」ということを言う人がございまして、「そんなこと を考えずにもっとしっかり仕事をしろ」なんて言っておりますけれど、確かに資格とい うのは非常に大事なものなのではないかなということで、資格も魅力の一つに入れるべ きだろうと思いました。  それから、国の篠崎先生のところであるとか、特に海外研修につきましては若い医師 は、すべてではありませんが、かなり魅力を持っておりまして、数年前に「ハーバード に受かったので行かせてくれ」という者が出てまいりました。ただ、大阪府は国と違い まして海外研修の制度を持っておりませんので、休職ということで、給料なしで1年間 アメリカへ行って、帰ってきてまた勤めております。しかし、「給料はないけれど行っ てもいい」という制度は、大阪府は持っているということでございます。  それから、医師の複数配置ですが、全部3人になっていないところもありますが、大 阪府は3人を目指しておりまして、複数配置というのは非常に大事かなと。東京都は4 人という統計もございましたが、少なくとも2〜3人はいるのではないかと思います。  それから、人事評価というのは今どこも自治体でやられておりますが、そういう人事 評価に正しく反映させるといったことも必要であるということです。  それから、公衆衛生医師の魅力を持っていただく。あるいは、いろいろな出身大学の 人脈を使ってヘッドハンティングをして、従来から大阪府では、課長以上の医者がかな り他府県まで出かけていって、その学生と直にいろいろ話をして大阪府に来てもらって いるという歴史がございます。  マッチング事業は国のほうで始まって、非常に期待をいたしております。話は少しそ れますが、特に篠崎先生の科学院に、いわゆるヒモ付きではなくて、大学を出て臨床研 修を終わって、それで入る。そして、出てからゆっくりどこの自治体へ行こうかと。そ ういうこともぜひやっていただきたいと思います。現実にもう既にそういうことは始ま っているのかもしれませんが、そういうことができないだろうかという意見もございま した。  それから、今、保健所での研修は、学生の研修も既にしておりまして、今度、臨床研 修もございまして、保健所の職員の研修ではなくて、保健所を舞台にした研修という話 を持っていきますと、これ以上というのは難しいのかもしれませんが、できるだけ今度 の臨床医研修と一緒になって、学生の研修もしていく必要があるのだろうと思っており ます。  魅力のある職場づくりということでこういうことを考えておりますが、大阪府の場合 には、少なくとも中核市とか政令市との人事交流がございますが、これもそれぞれの自 治体がある程度しっかりしてきますと、「もう結構です」ということになってきますの で、医師派遣という意味で人事交流はあるのですが、そうではなくて、医師がもっと広 い視野を持つという意味での人事交流も必要ではないかと思っております。  時間が限られておりますので、私のほうからはとりあえずこれくらいにさせていただ きます。  引き続きまして、小幡委員でございますが、この検討会の前の検討会の保健所長の職 務の在り方に関する検討会でいろいろご活躍をいただきました。小幡委員からよろしく お願いいたします。 小幡委員  本日、ペーパーをお出しいたしませんで、申しわけございませんでした。前回欠席し ておりましたので、皆さんのお話を聞いてからということで、きょうは口頭でお話しさ せていただきます。  私は専門は行政法でございまして、保健行政というのは行政法においてもとても重要 な領域なのですが、前回の保健所長の職務の在り方検討会に参加して、保健所長の在り 方ということをいろいろ検討してまいりましたので、その連続で、公衆衛生医師をいか にもっと育成・確保できるかということで、この検討会に参加しているという立場にご ざいます。  その在り方検討会では、非常に地域格差がございますけれど、足りないところもある のが現状であると。つまり十分足りている都市部もある一方で、兼務状態等がございま すし、こういう状況でどうしたらいいかという非常に深刻な問題があるという認識がご ざいました。  もう1点は、保健所長というのは大変重要な仕事でして、その任務につかれている方、 あるいは将来つかれる方に対する再教育も必要ではないかということが、この検討会で 認識されたかと思います。  定期的な研修のほうは、そういうメニューももう出されておりまして、比較的対応が 可能ではないかと思いますし、前者の複数医師の配置というのがうまくいけば、そもそ もがかなり改善されるという関係にございますので、どちらかというと非常に大きな問 題は前者のほうではないかと認識しております。  それで、いかに保健所で仕事をしていただくお医者さんを増やすかと、端的に言うと そういう話になるかと思いますが、まず1点目は、保健所というのは、私は行政法をや っておりますと、非常に重要な仕事なのだということがよくわかるのですが、今、納谷 座長からお話がございましたように、医療経済という関係でも、そもそも医療費の減少 につながりえますし、大変重要なのです。ところが、先ほど高野先生から社会的関心が 薄いというお話がございましたが、保健所というイメージは、住民にとっては非常に身 近なイメージがありまして、予防接種とか、いろいろな健康相談とか、そういう行事も していますし、地域住民にとっては大変たのもしい機関なのですが、それが医学部の学 生さんにとってどう映るのかというと、それほど魅力的には感じられないのではないか という疑問です。  住民にとってはむしろなじみやすいのですが、現実には非常にいろいろ重要な仕事を している。地域の安全、あるいは医療の予防について、ここでやる仕事が実はとても重 要なのだということが、保健所という言葉からすんなりイメージできるか、医学部生が どういう価値観を持つかなというのは、私は多少疑問に思っております。今さら名前は どうしようもないのですけれど、衛生医とかというと、ややイメージがちがうかもしれ ません。いずれにせよ、保健所は権限もたくさんございますし、本当は非常に大きな重 要な任務がございますので、医学部の教育においてこの重要性というものを認識させる ことがとても大事ではないかと思います。  もう1点は、この4月から法科大学院がスタートいたしましたが、どこの法科大学院 もそうなのですけれど、お医者さん、つまり医師資格を持っていて医者としてもう4〜 5年やっているという方が、国立の法科大学院などに入ってきていらっしゃいます。人 数が非常に多いです。アメリカでももちろんロイヤーとお医者さんを兼ねるとかいろい ろございまして、日本もそうなっていくというのは、それはそれでよろしいのかもしれ ませんし、職業選択の自由がございますので、ロイヤーになるという選択ももちろんあ ると思いますが、そういう方というのは、医師資格をもっていて転身を図っていらっし ゃるわけですね。  したがって、ロースクールに入るというのも一つの転身で、その後さらに将来どうな っていくかわかりませんが、大体臨床の方が多いようですけれど、臨床の現場ではもう やりたくないと思っていらっしゃる方の転身先としてロースクールがあるとすれば、多 少医療行政にかかわるというか、保健所と公衆衛生関係に行くという道もあるのではな いかなと思いまして、その辺がうまくマッチングしていないケースについて、公衆衛生 の現場というのが魅力ある職場としてうまく提供できるかというのが、これから大事な 視点になってくるのではないかと思います。  それから、情報が行き渡るようにするというのは大変重要なことでして、医師資格が あってお医者さんを現実にやっていらっしゃらない方もおられるので、いろいろな可能 性をチャレンジしたいという方に必要な情報をしっかり与えるということはとても大事 でしょう。  それから、今、現に医学部生になかなか魅力ある職場として映らないとすれば、これ は何かしらのインセンティブを与えることが必要ですから、アメのようなものと俗には 言いますが、それは海外留学もそうでしょうし、学費等の面のメリットを与えるなど、 弾みをつけるためにはどうしても少しそういうインセンティブを与えるようなことは政 策として必要ではないかと思います。  それから、複数医師の配置というところで、非常勤のお医者さんをどのように活用し ていらっしゃるのか、その辺が私は知りたいと思います。女性の医師などはライフステ ージに応じて今の時期は毎日は難しいという場合にも、子育て等で忙しい時期には非常 勤として保健所に入って、また子育て等が終わりますと余裕ができまして当然常勤にな りうるわけですから、そういう方にも可能性を開いていけるのではないかと思います。 納谷座長  ありがとうございました。  各委員から、府県内の人事交流のあり方とか、大学との連携、研修のあり方、資格の 問題、あるいは海外留学、海外との関係、あるいはもう少しグローバルな社会全体の問 題等、いろいろなテーマで、かなり共通しているところもあったように思いますが、ご 意見をいただきました。あまり時間はありませんが、ぜひこれを聞いてみたいとか、言 い残したということがございましたら、ぜひお願いいたします。  篠崎先生、府県からのヒモ付きではなくて、1年間のコースでMPHをとられる方と いうのは大分いらっしゃるのでしょうか。 篠崎委員  曽根さん、今どうでしょうか。 曽根部長  おりますけれど、数としてはそれほど多くはありません。あるいは、大学院から派遣 という形で来られて。ただ、話を聞いてみると、卒業後は行政に就職する希望を持って いるという学生が何人か来る実績はございます。 納谷座長  その辺のマッチングが進めば、もう少し増える可能性はございますね。  小幡委員からのご提案にありましたけれど、大阪府の保健所の非常勤医師というのは 健診のときにスポットで雇っている、あるいは精神保健だけで相談に雇うということが あるのですが、例えば週3日、これこれの業務に所長のもとに働くというのは、ある意 味ではおもしろいご提案かなと思いますけれど、その辺、角野先生、どんなご感想をお 持ちでしょうか。 角野委員  そういう形で非常勤の医師を使うということは考えていませんでしたので。ですから、 おもしろいかなと思うのですが。もちろんそのときには、我々はいろいろ権限を持って 動くことがありますから、そのあたりの身分的なものとかを自治体の中では整理してお く必要があるのかなと思います。  それから、業務となった場合に、あとはコストの問題ですね。今は非常勤で来てもら っている眼科等々で、検診で来ている人の医者の賃金が、実際には勤務の時間内にちょ っと来られているだけの話ですので。ですから、所属からもらって、時間をちょっとあ けてきて、そこで謝金をもらって帰るという形になっているわけですので、半ばサービ ス的に来られているわけですが、果たして週に2〜3日来るとなった場合に、こちらと してもそれだけのお金が出せるのかどうかなというのもちょっと心配になります。 藤崎大臣官房参事官  事務局からのご質問で恐縮ですけれど、高野先生、非常に詳細な資料を提供していた だいて、ありがとうございました。この先生のペーパーの中で、卒前教育で5つほど具 体的な事項をご指摘いただいていますが、これは公衆衛生教育協議会のほうで取り組ま れればできるというふうに理解をしておいてよろしいでしょうか。それとも、何かほか の手だてとか働きかけというものが必要になるのでしょうか。 高野委員  基本的に、その内容に関しましては、現在、教育協議会で取り組んでいることを列挙 いたしました。そして、そういう方向性ということを検討しているということを書かせ ていただきました。  ただ、実際にこれをやるとなりますと、例えば、教育協議会というのはそういう予算 を持っている団体ではありませんので、実行という点では難しいわけですので、そのた めの予算ですとか、その実施のためのいろいろな方面のご協力ですとか、あるいはとも にコラボレートしていくといった実施スタイルの構築ですとか、そういうものは不可欠 になろうかと考えております。 納谷座長  ありがとうございました。  今回、かなり同じような方向のご意見が出されておりますので、事務局のほうで次回 までに大筋をまとめていただきたいと思います。  時間が押しておりますので、次の議題に進ませていただきます。アンケート調査の素 案について、事務局からご説明をお願いいたします。 野崎技官  資料3の「アンケート調査(素案)」のご説明をさせていただきます。  アンケート調査についてですが、主に関係団体に対するアンケートと公衆衛生医師に 対するアンケートの2つに分けて検討をしております。  まず、関係団体に対するアンケートでございますが、こちらの目的は2つございまし て、取り組むべき施策といたしまして、資料2−9で先生方のご意見をまとめたものを こちらにつけておりますが、こちらについての実現性の有無についての今後の議論に資 するための資料とするため、そして、またこちらの資料2−9の取り組むべき施策につ いて足りない新たな施策について追加するという、2つの目的を持っております。  対象といたしましては、全国の医科大学の衛生学、公衆衛生学教室、そして保健所を 有している127の地方公共団体を想定しております。  期間は、平成16年8月上旬に配布、8月下旬に回収と想定しております。  内容としましては、資料2−9に示されました取り組むべき施策の実施状況について、 実施、あるいは未実施をお答えいただき、未実施の場合は実現可能性について、可能で あるか、不可能であるかについてお答えいただき、また、実施が不可能である場合には、 その理由をお尋ねし、何が障害となっているかについて明らかにして、今後の議論に 資するものとしたいと考えております。  それから、公衆衛生医師の確保のためのアイデアといたしまして、資料2−9にとり まとめております以外の新しいアイデアをいただければと考えております。  続きまして、公衆衛生医師アンケートでございますが、こちらの目的といたしまして は、先ほどの取り組むべき施策に足りない部分について、新しい確保のためのアイデア をいただければと考えております。また、それぞれに対しまして公衆衛生学教室あるい は公衆衛生医師アンケート等につきましては、衛生学・公衆衛生学教育協議会と全国保 健所長会にご協力をいただければ幸いと考えております。  資料の説明につきましては以上でございます。 納谷座長  ありがとうございました。何かご質問はございますでしょうか。 土屋委員  これは保健所を有する自治体ということになっていますが、自治体でとりまとめても らうということで、保健所直接にこれを伺うということではないのですか。 野崎技官  こちらで想定しておりますのは、公衆衛生医師の処遇等について、所管しております 127自治体の本庁の地域保健担当部署にお尋ねをしまして、厚生労働省で一括してとり まとめをさせていただくということで考えております。 土屋委員  これは直接伺ったほうが生の声が聞けるのではないかと思いますが、その自治体では いわく言いがたいことがいろいろございましょうから、本当はそのほうがいいのではな いかと思います。数は増えますよね。 納谷座長  この公衆衛生医師アンケートは直接なんですね。 野崎技官  公衆衛生医師のアンケートは直接になります。それぞれのご意見というのは、本庁を 通さずに直接お聞きするということが可能になっております。 納谷座長  土屋委員のおっしゃっている直接という意味は、どういう意味でございますか。 土屋委員  そういうものを通さないで、例えば、私は角野先生にお伺いしたいのですが、角野先 生が本庁から来た者に対してご返事をなさると、そこでまとめてこちらに報告なさると いうことになりはしないかなと、こう思ったわけです。そうすると、中身が変わってし まうのではないかなと。よくある話なものですから。 納谷座長  ですけれど、所長とかスタッフの医師とか、この公衆衛生医師に対するアンケートは 直接で、本庁を通さないんですね。 野崎技官  公衆衛生医師のアンケートについては、本庁等を介さずに個人で回収させていただく ことになっております。 土屋委員  わかりました。 納谷座長  それは記名・無記名はどうなんでしょうか。 野崎技官  基本的には無記名を想定していまして、回収の方法等によってはメールを使うという ことになると思いますが、それについても個人名の公表等は一切しないという整理でご ざいます。 納谷座長  個人名はもちろん出す必要はないし、出してはいけないと思いますが、自治体名をど うするか。自治体名ももう全部内緒とするのかどうかですね。その辺はご意見はいかが でございましょうか。  小幡先生、自治体名などは出してはいけない理由はあるのでしょうか。 小幡委員  特にないはずだと思いますが、自由記述欄などで、公表されては困るけれど、本当の ことを言いたいといったものがあれば、あるいはそういうことを自由記述のところにそ の旨、書いていただいてもよろしいのかもしれませんね。それ以外は、普通は構わない と思いますけれど。 納谷座長  ただ、一般的には統計のデータはそんなに問題はないのかなと思いますが。ありがと うございました。  何かほかにご意見はございますでしょうか。  それでは、本日いろいろご意見をいただきまして、先ほど委員の皆様方から出してい ただきましたご意見を資料2−9の表にもう既にまとめていただいているわけですが、 これにつきましては、きょうの議論を踏まえて少し更新していただいて、その中で少し 不十分な点や抜けている点も表を見た場合にまだあるのかなと思いますので、その表を 見ていただきまして、あるいはきょう言い足りなかったこと、後で思いつかれた点など がございましたら、事務局にご連絡いただくなり、ファックスなりを送っていただけれ ばと思います。  そろろろ時間でございますので、次に、その他について事務局から説明をお願いいた します。 横尾地域保健室長  次回の予定でございますが、委員の方々には既にご案内しておりますとおり、7月29 日・木曜日の14時から経済産業省別館11階・1107会議室にて開催いたしますので、よろ しくお願いいたします。本日いただいたご意見を集約しまして、委員の皆様方には今度 はできるだけ事前に資料をお送りいたしたいと思っておりますので、それをもとに、次 回の検討会にて再度具体的なご意見やご議論をいただきたいと思っております。また、 アンケートの調査案につきましてもご意見をいただきたいと思っておりますので、よろ しくお願いいたします。  本日は、どうもありがとうございました。 納谷座長  ありがとうございました。アンケートの原案をもう既に配っていただけるわけでござ いますので、それができましたら見ていただいて、次回に、つけ加える点、修正点をお 聞かせ願いたいと思います。  それでは、本日は長い間ありがとうございました。これで終わりたいと思います。                                     −了− (照会先) 厚生労働省健康局総務課地域保健室 石関(2336) 須藤(2334)