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論点3:本人からの要求・苦情等に対する対応に関する論点

論点3−1:個人データの開示原則とその例外

(1) 個人情報取扱事業者の義務の概要
(1)  事業者は、ア)本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合、イ)当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、ウ)他の法令に違反することとなる場合、を除き、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示等を求められたときは、本人に対し、書面又は本人の同意する方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならないとされている。(法 25条1項)

(2) 主な論点
(1)  「診療情報の提供等に関する指針」においては、以下のとおりとなっているが、修正を要する点はあるか。
(2)  介護分野についても、基本的にこれに準ずるものと考えてよいか。

【診療情報の提供等に関する指針(抜粋)】
7 診療記録の開示
(1) 診療記録の開示に関する原則
医療従事者等は、患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には、原則としてこれに応じなければならない。
診療記録の開示の際、患者等が補足的な説明を求めたときは、医療従事者等は、できる限り速やかにこれに応じなければならない。この場合にあっては、担当の医師等が説明を行うことが望ましい。

8 診療情報の提供を拒み得る場合
医療従事者等は、診療情報の提供が次に掲げる事由に該当する場合には、診療情報の提供の全部又は一部を提供しないことができる。
(1) 診療情報の提供が、第三者の利益を害するおそれがあるとき
(2) 診療情報の提供が、患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるとき

<(1)に該当することが想定され得る事例>
患者の状況等について、家族や患者の関係者が医療従事者に情報提供を行っている場合に、これらの者の同意を得ずに患者自身に当該情報を提供することにより、患者と家族や患者の関係者との人間関係が悪化するなど、これらの者の利益を害するおそれがある場合
<(2)に該当することが想定され得る事例>
症状や予後、治療経過等について患者に対して十分な説明をしたとしても、患者本人に重大な心理的影響を与え、その後の治療効果等に悪影響を及ぼす場合
個々の事例への適用については個別具体的に慎重に判断することが必要である。

医療従事者等は、診療記録の開示の申立ての全部又は一部を拒む場合には、原則として、申立人に対して文書によりその理由を示さなければならない。また、苦情処理の体制についても併せて説明しなければならない。



論点3−2:開示等に応じる手続き
(1) 個人情報取扱事業者の義務の概要
(1)  本人から個人データの開示等の求めがあった場合の受付等の手続きを定めることができるとともに、未成年者又は成年被後見人の法定代理人又は本人が委任した代理人による請求を認めている。(法29条、施行令8条)

(2) 主な論点
(1) 「診療情報の提供等に関する指針」においては、以下のとおりとなっているが、修正を要する点はあるか。
 特に、開示を求め得る者として、どのような整理が適切であると考えられるか。
(2)  介護分野についても、基本的にこれに準ずるものと考えてよいか。

【診療情報の提供等に関する指針(抜粋)】
7 診療記録の開示
(2) 診療記録の開示を求め得る者
診療記録の開示を求め得る者は、原則として患者本人とするが、次に掲げる場合には、患者本人以外の者が患者に代わって開示を求めることができるものとする。
(1) 患者に法定代理人がいる場合には、法定代理人。ただし、満15歳以上の未成年者については、疾病の内容によっては患者本人のみの請求を認めることができる。
(2) 診療契約に関する代理権が付与されている任意後見人
(3) 患者本人から代理権を与えられた親族及びこれに準ずる者
(4) 患者が成人で判断能力に疑義がある場合は、現実に患者の世話をしている親族及びこれに準ずる者

(3) 診療記録の開示に関する手続
医療機関の管理者は、以下を参考にして、診療記録の開示手続を定めなければならない。
(1) 診療記録の開示を求めようとする者は、医療機関の管理者が定めた方式に従って、医療機関の管理者に対して申し立てる。なお、申立ての方式は書面による申立てとすることが望ましいが、患者等の自由な申立てを阻害しないため、申立ての理由の記載を要求することは不適切である。
(2) 申立人は、自己が診療記録の開示を求め得る者であることを証明する。
(3) 医療機関の管理者は、担当の医師等の意見を聴いた上で、速やかに診療記録の開示をするか否か等を決定し、これを申立人に通知する。医療機関の管理者は、診療記録の開示を認める場合には、日常診療への影響を考慮して、日時、場所、方法等を指定することができる。  なお、診療記録についての開示の可否については、医療機関内に設置する検討委員会等において検討した上で決定することが望ましい。

(4) 診療記録の開示に要する費用
医療機関の管理者は、申立人から、診療記録の開示に要する費用を徴収することができる。



論点3−3:本人からの求めによる個人データの訂正等

(1) 個人情報取扱事業者の義務の概要
(1)  事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除を求められた場合、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならないとされている。 (法26条1項)
 また、前項の規定に基づき求められた保有個人データの内容の全部若しくは一部について訂正等を行ったとき、又は訂正等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む。)を通知しなければならないとされている。(法26条2項)

(2) 主な論点
 事実でないという理由により本人から訂正等を求められた場合にはこれに応じなければならないとされているが、診療情報における「事実」とは何か、これを踏まえ、どのように対応する必要があるか。

(参考)
 「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」では、訂正を行う必要がない事例として、「訂正等の対象が事実でなく評価に関する情報である場合」を挙げている。



論点3−4:利用停止等

(1) 個人情報取扱事業者の義務の概要
(1)  事業者は、本人から、個人データが正当な利用目的以外の目的で利用されている、不正な手段で取得されたという理由により、当該個人データの利用の停止又は消去を求められ、その理由が適切であると認められる場合は、利用停止等の措置をとらなければならないとされている。(法27条)

(2) 主な論点
 論点2により、個人情報の利用や第三者への提供等に当たって法を順守する上で必要となる対応を整理し、これに反する場合は利用停止等の措置をとることが必要。



論点3−5:苦情処理等

(1) 個人情報取扱事業者の義務の概要
(1)  事業者は、苦情の適切かつ迅速な処理に努め、必要な体制の整備に努めなければならないとされている。(法31条)

(2) 主な論点
「診療情報の提供等に関する指針」においては、以下のとおりとなっているが、どのような対応が適切と考えるか。

【診療情報の提供等に関する指針(抜粋)】
11 診療情報の提供に関する苦情処理
医療機関の管理者は、診療情報の提供に関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない。
医療機関の管理者は、都道府県等が設置する医療安全支援センターや医師会が設置する苦情処理機関などの患者・家族からの相談に対応する相談窓口を活用するほか、当該医療機関においても診療情報の提供に関する苦情処理の体制の整備に努めなければならない。


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