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ガイドラインに係る主な論点について


【基本的考え方】

論点1: 個人情報の利用や第三者への提供等に当たって具体的に必要となる対応に関する論点
【利用目的の特定・公表等】
  論点1−1: 利用目的の特定
  論点1−2: 利用目的の公表等
【利用目的の変更、利用目的による制限、第三者提供の制限】
  論点1−3: 利用目的の変更、利用目的による制限
  論点1−4: 第三者提供の制限
【その他共通の論点】
  論点1−5: 個人情報に該当しないようにするための匿名化
  論点1−6: 本人の同意

論点2: 個人情報の安全管理のために必要となる対応に関する論点
  論点2−1: 安全管理措置、従業者の監督、委託先の監督

論点3: 本人からの要求・苦情等に対する対応に関する論点
  論点3−1: 個人データの開示原則とその例外
  論点3−2: 開示等に応じる手続き
  論点3−3: 本人からの求めによる個人データの訂正等
  論点3−4: 利用停止等
  論点3−5: 苦情処理等

論点4: ガイドラインの適用範囲や見直し等に関する論点
  論点4−1: ガイドラインの適用範囲
  論点4−2: ガイドラインの見直し

(別紙) 医療機関等における診療情報等の利用目的や他の事業者への情報提供について(主な事例)



【基本的考え方】

 医療機関等における個人情報保護のガイドラインを策定するに当たっては、次の点を基本として検討していくこととしてはどうか。


 (1)  本来の利用目的である医療(介護)サービスの提供が円滑かつ適切に行われることを最優先に考える。

 (2)  上記の視点を踏まえつつ、医療(介護)サービスの提供以外の目的での利用や第三者への提供等については、本人の同意を得るなど、適正な手続を経ることとするとともに、漏えい等を防止するための適切な安全管理措置等を講じることとする。

 (3)  個人情報の取扱いに当たって、医療機関等が何をすればよいか、患者等からみて何を期待できるかをできる限り具体的に示すこととする。



論点1:個人情報の利用や第三者への提供等に当たって具体的に必要となる対応に関する論点


【利用目的の特定・公表等】

論点1−1:利用目的の特定

(1)個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  個人情報保護取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、利用目的をできる限り特定しなければならない。(法15条1項)

(2)主な論点
 (1)  ガイドラインの策定に当たって、診療情報等の利用や第三者への提供等について、整理することが望ましい主な事例には、どのようなものがあるか。(別紙)
 (2)  通常、医療機関等が、医療保険(介護保険)により、医療(介護)サービスを提供する場合については、診療情報等の利用目的は、患者等に対する医療サービス(介護サービス)の提供、医療保険(介護保険)事務、入退院等の病棟管理、会計・経理、医療サービス等の向上、これ以外の当該医療機関の管理運営、職員の研修などで特定できると考えてよいか。


論点1−2:利用目的の公表等

(1)個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  個人情報取扱事業者は、個人情報を取得したときは、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知又は公表しなければならない。(法18条1項)
 (2)  契約書その他の書面により、本人から直接書面に記載された個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。(法18条2項)
 (3)  取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合等については、これらの規定は適用しない。(法18条4項)

(2)主な論点
 (1)  利用目的の公表の方法としては、院内掲示、ホームページへの掲載、本人への通知の方法としては、初診時や介護サービス提供開始の書面の交付などと考えてよいか。

 (2)  医療機関等が書面により個人情報を取得する場合としては、被保険者証の提示、問診表の記入などの他、どのような場合が考えられるか。

 (3)  通常、本人の申込みに応じて診察、介護サービスの提供等を行う場合で、論点1−1(2)(2)であげたような目的(患者等に対する医療サービス(介護サービス)の提供、医療保険(介護保険)事務、入退院等の病棟管理、会計・経理、医療サービス等の向上、これ以外の当該医療機関の管理運営)で診療情報等を利用する場合は、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」に該当し、利用目的の公表等は行わなくともよいと考えてよいか。
(注)
 1.  仮にこのように考えられる場合であっても、上記以外の利用目的については、個別の例外規定に該当しない限り、公表又は本人への通知が必要。
 2. 個人情報保護法第24条の保有個人データに関する事項の公表等については、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」も例外とされていないことから、事業者は、保有個人データの利用目的を含む必要事項について、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)に置かなければならないこととされている。


【利用目的の変更、利用目的による制限、第三者提供の制限】

論点1−3:利用目的の変更、利用目的による制限

(1)個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  利用目的の変更は、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。(法15条2項)
 また、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、又は公表しなければならない。(法18条3項)
 (2)  あらかじめ本人の同意を得ないで、利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない。(法16条1項)
 (3)  次の場合は、(2)の制限は適用しない。(16条3項)
ア.  法令に基づく場合
イ.  人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ことが困難であるとき。
ウ.  公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
エ.  国、地方公共団体等の事務の遂行に協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

(2)主な論点



(議論のための事例)
 ○  病院の職員を対象とした研修会で、事例として一部の患者の診療情報 を使用する場合に、どのような対応を行うか。



 (1)  個人情報保護法を遵守するための対応として、以下のような対応があり得ると考えてよいか。
ア.  診療情報を病院の職員を対象とした研修会に事例として利用する場合があることを、あらかじめ公表又は本人に通知しておく。
イ.  あらかじめ公表又は本人に通知していない場合は、利用目的を変更し、公表又は本人に通知する。(利用目的の変更は、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならないことに留意が必要。)
ウ.  研修会で利用する前に、本人の同意を得る。
エ.  氏名、生年月日、住所等を消去し匿名化することにより、「個人情報」に該当しないようにする。(匿名化に関する論点は、論点1−4を参照)

 (2)  更に、より望ましい対応として、どのような対応があり得るか。
(例)  本人の同意を得るとともに、可能な限り、氏名、生年月日、住所等を消去する。
 (注)  例外規定((1)(3))については、次の第三者提供の制限の例外規定とあわせて検討。


論点1−4:第三者提供の制限

(1)個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  次の場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ずに、個人データを第三者に提供してはならない。(法23条1項)
 (2)  (1)の例外は、次のとおり。

ア.  法令に基づく場合
イ.  人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
ウ.  公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
エ.  国、地方公共団体等の法令に定める事務の遂行に協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
 (3)  次により個人データの提供を受ける者は、第三者に該当しない。(法23条3項)
ア.  利用目的の達成に必要な範囲において個人データの取扱いを委託する場合
イ.  個人データを特定の者との間で共同して利用する場合であって、その旨や個人データの項目、共同して利用する者の範囲等について、本人に通知等を行っている場合

(2)主な論点
 (1)  次のような典型的な事例(別紙より、議論のための事例を一部抽出)について、個人情報保護法を遵守する上で、どのような整理、対応が考えられるか。
 (2)  また、更に望ましい対応については、どうか。

【当該事業者内部での利用であると考えられる事例】
 ア.  院内の他の診療科との連携など医療機関等内部における情報交換
 イ.  同一事業者内の複数施設間の情報交換
 ウ.  職員の研修
 個人情報取扱事業者としての内部での利用であることから、利用目的による制限や安全管理との関係で問題が生じないようにする必要はあるが、「第三者提供」には該当しないと考えてよいか。

【他の事業者への情報提供ではあるが、「第三者」に該当しないと考えられる事例】
 ア.  検査等の業務の委託
 イ.  外部の医師へのコンサルテーション
 他の事業者への情報の提供ではあるが、利用目的(この場合は、患者等に対する医療(介護)サービスの提供)の達成に必要な範囲において個人データの取扱いを委託する場合に該当すると考えてよいか。

【第三者提供に該当し、原則として本人の同意を得ることが必要と考えられる事例】
 ア.  他の医療機関、薬局、訪問看護、介護サービス事業者等との連携
 紹介状、処方箋の交付等が本人を介して行われる場合、基本的には、その後の情報交換を含めて、実質的に本人の同意があると考えてよいか。あるいは、明示的な同意が必要と考えるか。
 連携先があらかじめ特定されている場合は、個人データを特定の者との間で共同して利用する場合の規定を活用することも考えられるが、どうか。
 介護分野では、複数の居宅サービス事業者等が、サービス担当者会議等において、当該利用者又は利用者の家族に係る個人情報を用いる場合には、省令上、あらかじめ利用者又は家族の同意を文書により得ておかなければならないこととされている。実際上も、多くの事業者において、サービス提供開始時に利用者及びその家族から同意をとっており、こうした方法を原則としていくことが適当と考えられるがどうか。

 イ.  他の医療機関からの照会
 患者が現に受診している医療機関Aから、当該患者が過去に受診していた医療機関Bに照会があった場合には、医療機関Aに対し本人が同意していることで足りると考えてよいか。

 ウ.  家族等への説明
 家族等についても、未成年者の法定代理人などの場合を除き、第三者に該当し、原則として本人の同意が必要と考えてよいか。(法定代理人等の取扱いについては、論点1−6を参照)
 本人と家族に対し、同時に説明するような場合は、本人の同意があると考えてよいか。
 意識不明の患者の病状や重度の痴呆性の高齢者の状況を、家族に説明するような場合は、次の例外規定(一定の要件に該当し本人の同意を得ることが困難な場合)に該当するかどうかを考えればよいか。

 エ.  学生の実習への協力
 学生が実習としてケアに参加することについて患者等の同意を得る際に、個人情報の取扱いについても説明し、同意を得ることが望ましいと考えてよいか。

【第三者提供に該当するが、本人の同意を得る必要のない例外規定に該当すると考えられる事例】
 ア.  行政機関への届出等
(例)  医療法等に基づく立入検査、感染症患者に関する届出、児童虐待の通報
 イ.  審査支払機関へのレセプトの提出
 法令に基づく場合と考えてよいか

 ウ.  意識不明・身元不明の患者についての関係機関への照会
 エ.  意識不明の患者の病状を家族に説明する場合
 人の生命、身体等の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときに該当すると考えてよいか。

 オ.  個人を特定する必要がある一方、本人の同意を得ることが困難な調査研究への協力
 カ.  児童虐待事例についての関係機関との情報交換
 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときに該当すると考えてよいか。


【その他共通の論点】

論点1−5:個人情報に該当しないようにするための匿名化

(1)個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。(法2条1項)

(2)主な論点
 (1)  一般的には、文書に記載された情報については、氏名、生年月日、住所等を消去した場合には、特定の個人を識別することはできないと考えてよいか。また、顔写真については、一般的には目の部分をマスキングすることで、特定の個人を識別することはできないと考えてよいか。

 (2)  このような考え方をとる場合でも、例えば、職員の研修や学生の実習に診療情報等を利用する場合は、(1)のような処理を行っても事業者内部で得られる他の情報と照合することにより、特定の患者等を識別することができることも十分考えられることから、個人情報に該当するとして、法の規制が適用になることを前提として、本人の同意を得るなどの対応することが望ましいのではないか。


論点1−6:本人の同意

(1)個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  利用目的制限や第三者提供の制限を解除する要件として、本人の同意を得ることが規定されている。

(2)主な論点
 (1)  未成年者とその親権者のように法定代理人がいる場合は、誰から同意を得ることが必要か。例えば、法定代理人のよる同意でよいと考えられるが、一定の判断能力を有する未成年者については本人の同意も得ることが望ましいと考えてよいか。
(注)  個人データの開示請求については、本人の代理として法定代理人も行うことができることとされている。(法29条4項、施行令8条)

 (2)  意識不明の患者や重度の痴呆性の高齢者などで、法定代理人がいない場合については、本人の同意を得ることが困難な場合として、利用目的制限等の例外規定に該当するかどうかを考えるということでよいか。



論点2:個人情報の安全管理のために必要となる対応に関する論点

論点2−1:安全管理措置、従業者の監督、委託先の監督


(1) 関係する義務の概要
 (1)  個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。(法第20条)
 (2)  個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。(法第21条)
 (3)  個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。(法第 22条)

(2) 主な論点
 (1)  個人情報取扱事業者が講ずべき個人情報の保護のための措置について、個人情報の保護に関する基本方針等では以下のとおり規定されているが、医療機関等における安全管理措置等についても、基本的に重要な事項は同様であると考えてよいか。
【個人情報の保護に関する基本方針(抜粋)】
 個人情報取扱事業者等が講ずべき個人情報の保護のための措置に関する基本的な事項
(1)  個人情報取扱事業者に関する事項
 個人情報取扱事業者は、法の規定に従うほか、2の(3)の(1)の各省庁のガイドライン等に則し、個人情報の保護について主体的に取り組むことが期待されているところであり、事業者は、法の全面施行に向けて、体制の整備等に積極的に取り組んでいくことが求められている。各省庁等におけるガイドライン等の検討及び各事業者の取組に当たっては、特に以下の点が重要であると考えられる。
 (1)  事業者が行う措置の対外的明確化
 事業者の個人情報保護に関する考え方や方針に関する宣言(いわゆる、プライバシーポリシー、プライバシーステートメント等)の策定・公表により、個人情報を目的外に利用しないことや苦情処理に適切に取り組むこと等を宣言するとともに、事業者が関係法令等を遵守し、利用目的の通知・公表、開示等の個人情報の取扱いに関する諸手続について、あらかじめ、対外的に分かりやすく説明することが、事業活動に対する社会の信頼を確保するために重要である。
 また、事業者において、個人情報の漏えい等の事案が発生した場合は、二次被害の防止、類似事案の発生回避等の観点から、可能な限り事実関係等を公表することが重要である。
 (2)  責任体制の確保
 事業運営において個人情報の保護を適切に位置づける観点から、外部からの不正アクセスの防御対策のほか、個人情報保護管理者の設置、内部関係者のアクセス管理や持ち出し防止策等、個人情報の安全管理について、事業者の内部における責任体制を確保するための仕組みを整備することが重要である。
 また、個人情報の取扱いを外部に委託することとなる際には、委託契約の中で、個人情報の流出防止をはじめとする保護のための措置が委託先において確保されるよう、委託元と委託先のそれぞれの責任等を明確に定めることにより、再委託される場合も含めて実効的な監督体制を確保することが重要である。
 (3)  従業者の啓発
 事業者において、個人情報の漏えい等の防止等、その取り扱う個人情報の適切な保護が確保されるためには、教育研修の実施等を通じて、個人情報を実際に業務で取り扱うこととなる従業者の啓発を図ることにより、従業者の個人情報保護意識を徹底することが重要である。

【個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン(平成16年6月 経済産業省:抜粋)】
2.個人情報取扱事業者の義務等
(3)  2)安全管理措置(法第20条)
 個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のため、組織的、人的、物理的、及び技術的安全管理措置を講じなければならない。その際、本人の個人データが漏えい、滅失又はき損等をした場合に本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し、事業の性質及び個人データの取扱い状況等に起因するリスクに応じ、必要かつ適切な措置を講じるものとする。なお、その際には、個人データを記録した媒体の性質に応じた安全管理措置を講じることが望ましい。
 (注)  なお、同ガイドラインにおける組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置の内容及び講じることが望ましい具体的措置等については、第1回検討会参考資料21〜34ページを参照。

 (2)  医療情報や医療機関等の業務の特性からみて、個人情報保護法を遵守する上で必要な対応やより高いレベルの対応として、各種の安全管理措置のうち、例えば、次のような事項について、医療機関等の規模等も踏まえつつ、医療機関等に求めることとしてはどうか。

  ア.  個人情報保護に関する規程の整備、公表
  (参考)  「診療情報の提供等に関する指針」においては、「診療情報の提供に関する規程」を整備することとされている。
【診療情報の提供等に関する指針(抜粋)】
2 診療情報の提供に関する規程の整備
 医療機関の管理者は、診療記録の開示手続等を定めた診療情報の提供に関する規程を整備し、苦情処理体制も含めて、院内掲示を行うなど、患者に対しての周知徹底を図らなければならない。

  イ.  個人情報保護推進のための委員会や責任者等の設置

  ウ.  個人情報の漏洩等の問題が発生した場合の報告連絡体制の整備

  エ.  医療資格者でない者も含めた従業者との雇用契約において、個人情報を漏えいしないことを義務づけること

  オ.  従業者に対する教育研修の実施

  カ.  個人情報の提供が必要な業務委託を行う際の委託契約において、個人情報の漏えい防止その他の安全管理措置の実施を義務づけること
 ITに係る技術的な安全管理措置等については、「医療情報ネットワーク基盤検討会」の検討結果を踏まえ検討。

 (3)  受付での呼び出しや、病室の患者の名札などについては、患者の取り違えを防止するなど業務を適正に実施する上で必要と考えられるが、患者の希望に応じて一定の配慮をするとが適当ではないか。



論点3:本人からの要求・苦情等に対する対応に関する論点

論点3−1:個人データの開示原則とその例外


(1)  個人情報取扱事業者の義務の概要

 (1)  事業者は、ア)本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合、イ)当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、ウ)他の法令に違反することとなる場合、を除き、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示等を求められたときは、本人に対し、書面又は本人の同意する方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならないとされている。(法 25条1項)

(2) 主な論点
 (1)  「診療情報の提供等に関する指針」においては、以下のとおりとなっているが、修正を要する点はあるか。
 (2)  介護分野についても、基本的にこれに準ずるものと考えてよいか。

【診療情報の提供等に関する指針(抜粋)】
7 診療記録の開示
(1)診療記録の開示に関する原則
医療従事者等は、患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には、原則としてこれに応じなければならない。
診療記録の開示の際、患者等が補足的な説明を求めたときは、医療従事者等は、できる限り速やかにこれに応じなければならない。この場合にあっては、担当の医師等が説明を行うことが望ましい。

8 診療情報の提供を拒み得る場合
医療従事者等は、診療情報の提供が次に掲げる事由に該当する場合には、診療情報の提供の全部又は一部を提供しないことができる。
(1) 診療情報の提供が、第三者の利益を害するおそれがあるとき
(2) 診療情報の提供が、患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるとき

 <(1)に該当することが想定され得る事例>
 ・ 患者の状況等について、家族や患者の関係者が医療従事者に情報提供を行っている場合に、これらの者の同意を得ずに患者自身に当該情報を提供することにより、患者と家族や患者の関係者との人間関係が悪化するなど、これらの者の利益を害するおそれがある場合
 <(2)に該当することが想定され得る事例>
 ・ 症状や予後、治療経過等について患者に対して十分な説明をしたとしても、患者本人に重大な心理的影響を与え、その後の治療効果等に悪影響を及ぼす場合
 ※ 個々の事例への適用については個別具体的に慎重に判断することが必要である。
医療従事者等は、診療記録の開示の申立ての全部又は一部を拒む場合には、原則として、申立人に対して文書によりその理由を示さなければならない。また、苦情処理の体制についても併せて説明しなければならない。


論点3−2:開示等に応じる手続き
(1) 個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  本人から個人データの開示等の求めがあった場合の受付等の手続きを定めることができるとともに、未成年者又は成年被後見人の法定代理人又は本人が委任した代理人による請求を認めている。(法29条、施行令8条)

(2) 主な論点
 (1)  「診療情報の提供等に関する指針」においては、以下のとおりとなっているが、修正を要する点はあるか。
 特に、開示を求め得る者として、どのような整理が適切であると考えられるか。
 (2)  介護分野についても、基本的にこれに準ずるものと考えてよいか。
【診療情報の提供等に関する指針(抜粋)】
7 診療記録の開示
(2)診療記録の開示を求め得る者
診療記録の開示を求め得る者は、原則として患者本人とするが、次に掲げる場合には、患者本人以外の者が患者に代わって開示を求めることができるものとする。
(1) 患者に法定代理人がいる場合には、法定代理人。ただし、満15歳以上の未成年者については、疾病の内容によっては患者本人のみの請求を認めることができる。
(2) 診療契約に関する代理権が付与されている任意後見人
(3) 患者本人から代理権を与えられた親族及びこれに準ずる者
(4) 患者が成人で判断能力に疑義がある場合は、現実に患者の世話をしている親族及びこれに準ずる者

(3)診療記録の開示に関する手続
医療機関の管理者は、以下を参考にして、診療記録の開示手続を定めなけ ればならない。
(1) 診療記録の開示を求めようとする者は、医療機関の管理者が定めた方式に従って、医療機関の管理者に対して申し立てる。なお、申立ての方式は書面による申立てとすることが望ましいが、患者等の自由な申立てを阻害しないため、申立ての理由の記載を要求することは不適切である。
(2) 申立人は、自己が診療記録の開示を求め得る者であることを証明する。
(3) 医療機関の管理者は、担当の医師等の意見を聴いた上で、速やかに診療記録の開示をするか否か等を決定し、これを申立人に通知する。医療機関の管理者は、診療記録の開示を認める場合には、日常診療への影響を考慮して、日時、場所、方法等を指定することができる。
なお、診療記録についての開示の可否については、医療機関内に設置する検討委員会等において検討した上で決定することが望ましい。


論点3−3:本人からの求めによる個人データの訂正等

(1) 個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除を求められた場合、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならないとされている。 (法26条1項)
 また、前項の規定に基づき求められた保有個人データの内容の全部若しくは一部について訂正等を行ったとき、又は訂正等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む。)を通知しなければならないとされている。(法26条2項)

(2) 主な論点
 〇  事実でないという理由により本人から訂正等を求められた場合にはこれに応じなければならないとされているが、診療情報における「事実」とは何か、これを踏まえ、どのように対応する必要があるか。

(参考)
 〇  「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」では、訂正を行う必要がない事例として、「訂正等の対象が事実でなく評価に関する情報である場合」を挙げている。


論点3−4:利用停止等

(1) 個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  事業者は、本人から、個人データが正当な利用目的以外の目的で利用されている、不正な手段で取得されたという理由により、当該個人データの利用の停止又は消去を求められ、その理由が適切であると認められる場合は、利用停止等の措置をとらなければならないとされている。(法27条)

(2) 主な論点
 〇  論点2により、個人情報の利用や第三者への提供等に当たって法を順守する上で必要となる対応を整理し、これに反する場合は利用停止等の措置をとることが必要。


論点3−5:苦情処理等

(1) 個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  事業者は、苦情の適切かつ迅速な処理に努め、必要な体制の整備に努めなければならないとされている。(法31条)

(2) 主な論点
 〇  「診療情報の提供等に関する指針」においては、以下のとおりとなっているが、どのような対応が適切と考えるか。
【診療情報の提供等に関する指針(抜粋)】
11 診療情報の提供に関する苦情処理
医療機関の管理者は、診療情報の提供に関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない。
医療機関の管理者は、都道府県等が設置する医療安全支援センターや医師会が設置する苦情処理機関などの患者・家族からの相談に対応する相談窓口を活用するほか、当該医療機関においても診療情報の提供に関する苦情処理の体制の整備に努めなければならない。



論点4:ガイドラインの適用範囲や見直し等に関する論点

論点4−1:ガイドラインの適用範囲


(1)個人情報取扱事業者の義務の概要
 (1)  この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいうとされている。(法2条1項)
 (注) 従って、死者に関する情報は含まれていない。ただし、死者に関する情報が同時に遺族等の生存する個人に関する情報でもある場合には、当該生存する個人に関する情報として法の対象となる。
 (2)  その事業の用に供する個人情報データベース等を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数の合計が過去6月以内のいずれの日においても5千を超えない者は、「個人情報取扱事業者」から除外されている。(法2条3項5号、施行令2条)

(2)主な論点
 (1)  個人情報保護法では、生存する個人の情報のみを対象としているが、死者に関する情報についても、ガイドラインの適用対象とすることが適切か。
 (2)  個人情報の件数が5千件以下の事業者は、個人情報保護法の定める具体的義務等の適用が除外されているが、ガイドラインの適用対象とすることが適切か。


論点4−2:ガイドラインの見直し

(主な論点)
 ○  個人情報の取扱いのルールをより明確化し、適切な取扱いを推進するためには、ガイドラインの策定後において、疑義が生じた事例やそれに対する対応例等の情報を集積し、公表する仕組みをつくるとともに、こうした情報に基づき、必要に応じ、ガイドラインの見直しを行っていくことが重要と考えるが、どうか。



(別紙)


医療機関等における診療情報等の利用目的や他の事業者への情報提供について
(主な事例)


【医療機関等の内部における利用に係る事例】
 ○ 患者等に対する医療サービス(介護サービス)の提供
 院内の他の診療科との連携、同一事業者内の複数施設間の情報交換など同一事業者内の情報交換を含む。
 ○ 医療保険(介護保険)事務
 ○ 当該医療機関の管理運営
 ・ 入退院等の病棟管理
 ・ 会計・経理
 ・ 医療サービス等の向上
 ・ 医療事故等の院内報告
 ・ 法人本部への報告
 ○ 職員の研修

【他の事業者への情報提供を伴う事例】
(医療(介護)サービスの提供を目的とした事例)
 ○ 他の医療機関、薬局、訪問看護、介護サービス事業者等との連携
 ○ 他の医療機関からの照会
 ○ 検査を委託する場合その他の業務委託の場合
 ○ 外部の医師へのコンサルテーション
 ○ 家族等への病状説明

(医療保険事務・介護保険事務関係)
 ○ 審査支払機関へのレセプトの提出

(その他)
 ○ 学生の実習への協力
 ○ 外部監査機関への情報提供(会計監査法人、医療機能評価等)
 ○ 民間保険会社からの照会
 ○ 医療事故等の報告
 ○ 医薬品等の副作用報告
 ○ 職場からの照会
  (注)労働者健康情報として別途検討中。
 ○ 学校からの照会
 ○ 行政機関(保健所、福祉事務所等を含む)への届出等
 ○ 警察、裁判所からの照会
 ○ 学術研究機関からの照会
 ○ 調査機関(学術研究以外)の照会
 ○ 報道機関からの照会
 ○ 治験への協力
 ○ 商業誌への症例の公表
 ○ その他外部(見舞い客等)からの照会


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