戻る

別添1
障害者の就労支援に関する今後の施策の方向性

障害者の就労支援に関する省内検討会議
平成16年7月9日

  基本的考え方

 障害者基本計画(平成14年12月24日閣議決定)に基づき、障害者が地域で自立した生活を支援していくことは、厚生労働省として極めて重要な政策課題であり、この障害者の地域生活を支える重要な柱の一つが「就労支援」である。

 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(骨太方針2004)においても「障害者の雇用・就労、自立を支援するため、在宅就労や地域における就労の支援、精神障害者の雇用促進、地域生活支援のためのハード・ソフトを含めた基盤整備等の施策について法的整備を含め充実強化を図る」とされたところである。

 今後、これらの方針に基づき、福祉施設の体系の見直しや就労支援施策の充実強化を図ることにより、障害者が働く意欲と能力を高められるように支援するとともに、その意欲と能力に応じて働けるようにしていくことが重要である。

 このため、福祉部門と雇用部門の連続性を確保し、福祉部門から一般就労への移行を円滑に行えるようにするとともに、障害者が自らの職業生活を設計・選択し、キャリア形成を図ることを支援する。

 このように、障害者が意欲と能力に応じて働けるという観点に立って、授産施設等の福祉施設の体系を、その果たしている機能に着目して見直し、(1)一般就労に向けた支援を行う類型、(2)就労が困難な者が日中活動を行う類型、(3)企業での雇用が困難な者が一定の支援のもとで就労する類型の3類型とする。

 また、精神障害者に対する雇用率適用、在宅就業の支援、地域における就労の支援など、多様な働く場を確保するための施策の充実・強化を図るとともに、労働市場におけるミスマッチ解消、就職後のフォローアップ等による就労の安定・継続等の施策を強化するほか、離職した場合の再挑戦を可能とする施策の充実を図る。

 以上について、法的整備を含めその充実強化を図る。



新たな障害者の就労支援策の流れ

新たな障害者の就労支援策の流れの図



障害者の企業雇用に向けてのステップ
障害者の企業雇用に向けてのステップの図



福祉部門から一般就労への移行支援施策の確立

現行

(福祉部門の課題)
 盲、聾、養護学校高等部卒業者の進路は、2割が就職、6割弱が施設・医療機関
 施設体系の見直しの必要性
 
 施設種別が縦割りで複雑であり、機能も混在化している
 社会資源として未だ充分でなく、かつ、地域的に偏在
 福祉工場が増えていない一方で、小規模作業所は急増している
などの問題があり、現状では授産施設から一般就労への移行率は1.1%、工賃は1万8千円弱(人・月)となっている
 授産施設で多額の工賃を得ても、労働法規の適用がない
現行の図
施策の方向

〈基本コンセプト〉
 一般雇用・在宅就労の支援の強化(送り出し施設のフォローなどの充実、離職した障害者が戻り、再挑戦ができる仕組み)
 働く場の拡大
 雇用施策と連動した社会福祉施設の再編と機能強化、デイサービス(デイケア)事業等との役割分担の明確化

 以上のような仕組みにより、障害者が安心して働けるようにするとともに、企業も安心して障害者を雇用できるようにする
施策の方向の図



授産施設等の福祉施設の体系見直し後の形態


基本的な考え方
(1)  施設を実際に果たしている機能に応じて再編成し、機能や実績に応じた費用体系とする
(2)  障害者自身のニーズや就労能力に応じて、それに相応しい機能の施設を利用できる仕組みとする
(3)  就労能力が高まった者を次のステップへ移行することを促す仕組みについて検討
(4)  人口規模の小さい市町村等での対応も含め、地域特性を踏まえた柔軟な運営が可能となるようにする。このため、小規模・多機能化を可能とする仕組みの導入や、障害種別による施設類型をなくすことを検討
(5)  入所施設については、住まいとしての機能と、日中訓練を行う場としての機能を分けて評価することを検討
 施設体系全体の見直しの中で、更生施設や療護施設などについても、授産施設等と同様に機能による再編成を別途検討

  (1)就労移行支援タイプの施設 (2)日中活動の場(デイアクティビティタイプ) (3)継続的就労タイプの施設
目的 一般就労に向けた支援を行う場を提供 障害者の状態や職業能力からみて、就労が困難な者が日中活動を行う場を提供 企業等での雇用が困難な障害者が、労働者として働く場を提供
見直しの
方向性
 一般就労に向けて必要な知識、能力を育むための支援を実施
 就職に結びつけるための支援を行うとともに、就職後のフォローアップを行うため、ジョブコーチによる就職先の職場での支援や、就労移行支援タイプの施設と障害者就業・生活支援センターの併設等により、就職後の障害者の就業面、生活面の一体的な支援を行う。
 離職した障害者が就労移行支援タイプの施設に戻り、一般就労に向けて再挑戦ができる仕掛け
 複数の標準的なプログラムを作成し日中活動を行うことにより、障害者自身をエンパワメントする仕組みとする
 現行の福祉工場より人員基準等の規制を緩和する
 利用者は、公共職業安定所の職業紹介によることとするなど、公共職業安定所との連携を図ることを基本に検討



障害者の就労支援に関する当面の方向



1 福祉部門から一般就労への移行支援施策の確立
 (1)  福祉部門から一般就労に向けた抜本的な施策の強化・見直し
 (2)  就労が困難な者の日中活動の場(デイアクティビティタイプ)の確保

2 多様な雇用・就業機会の確保と能力開発の促進
 (1)  継続的就労タイプの施設の拡充による働く場の拡大
 (2)  精神障害者に対する雇用率制度の適用と支援策の拡充
 (3)  ITも活用した在宅就業による就業機会の拡大
 (4)  公共職業能力開発施設における障害者訓練の拡充
 (5)  多様なニーズに対応した委託訓練の実施
 (6)  障害特性に応じた支援の強化

3 ネットワークによる切れ目ない総合的な支援
 (1)  障害者が自らの職業生活を設計・選択するための支援の強化
 (2)  各種情報等の共有、共通に活用できる評価手法の検討
 (3)  障害者就業・生活支援センターによる支援の強化



障害者の就労支援に関する当面の方向


障害者の就労支援に関する省内検討会議
平成16年7月9日

   障害者の地域生活支援の主要な柱として、障害者(施設利用者・新たに養護学校等を卒業する者、事故・疾病等により障害者状態になった中途障害者等)が働く意欲や能力に応じて、企業等で就労できるようにしていくことが重要である。
 このため、福祉部門と雇用部門等関係機関のネットワークを構築し、障害者が自らの職業生活を設計・選択し、キャリア形成を図るための支援を切れ目なく行い、福祉部門から一般就労への移行を円滑に行えるようにする。併せて、多様な雇用・就労機会を確保する。
 これを実現するため、以下の施策の充実を図る。



1 福祉部門から一般就労への移行支援施策の確立

   障害者が、自ら選択した職業生活を実現することが可能となるよう、一般就労に向けた支援体制等の大幅な充実強化を図ることが必要である。
 このため、現在の障害者の就労等に関する福祉施設等を、その機能に着目して、(1)一般就労に向けた支援の機能(訓練の場)、(2)就労が困難な者が日中活動を行う機能(日中活動の場)、(3)一定の支援のもとで継続的に就労する機能(働く場)の3つの機能に区分し、障害者自身のニーズや就労能力に応じて、それに相応しい機能の施設を利用できる仕組みとする。
 なお、施設体系の見直しについては、準備期間等を考慮し、見直し着手後、概ね5年程度を掛けて段階的に行うものとする。

(1)  福祉部門から一般就労に向けた抜本的な施策の強化・見直し

 福祉工場、授産施設、更生施設や小規模作業所等について、上記のように機能により再編成した上で、「一般就労に向けた支援を行う機能(就労移行支援タイプの施設)」については、以下のような方向で検討する。

(就労移行支援タイプの施設)

 (1)  一般就労に向けて必要な知識、能力を育むための支援内容とする。

 (2)  就職に結びつけるための支援を行うとともに、就職に向けた職場実習や就職後のフォローアップを行うため、ジョブコーチの配置による支援、就労移行支援タイプの施設と障害者就業・生活支援センターの併設等により、就職後の障害者の就業面、生活面での一体的な支援を行う。

 (3)  離職した障害者が就労移行支援タイプの施設に戻り、再挑戦ができる仕組みとする。

 (4)  人口規模の小さい市町村等での対応も含め、地域特性を踏まえた柔軟な運営が可能となるようにする。このため、小規模・多機能化(注)を可能とする仕組みの導入や、障害種別による施設類型をなくすことを検討する。

 (5)  入所施設については、住まいとしての機能と、日中訓練等を行う場としての機能を分けて評価することを検討する。

 (6)  費用体系については、一般就労への移行実績や就職後のフォローアップの実績、長期入所者の数や離職した障害者の受け入れ件数に応じて加減算する仕組みを検討する。
 
(注)  施設の小規模・多機能化
 施設の内部を一定規模の人数に区分し、同一施設内で複数の機能のサービス実施を認めるもの。
(例)  20人の施設において、10人は就労移行支援タイプとし、残り10人は継続的就労タイプ(後述)とするなど。

 施設体系全体の見直しの中で、更生施設や療護施設などについても、授産施設等と同様に機能による再編成を別途検討。

(2)  就労が困難な者の日中活動の場(デイアクティビティタイプ)の確保

 障害者の状態、職業能力からみて、就労困難な重度障害者の活躍の場を充実するため、「就労困難な者が日中活動を行う機能」については、以下のような方向で検討する。

日中活動の場(デイアクティビティタイプ)

 (1)  複数の標準的なプログラムを作成し日中活動を行うことにより、障害者自身をエンパワメントする仕組みとする。

 (2)  就労能力の高まった者が次のステップに移行することを促す仕組みについて検討する。

 (3)  人口規模の小さい市町村等での対応も含め、地域特性を踏まえた柔軟な運営が可能となるようにする。このため、小規模・多機能化を可能とする仕組みの導入や、障害種別による施設類型をなくすことを検討する。

 (4)  費用体系については、就労移行支援タイプの施設の費用体系(機能・実績に応じ)との均衡を図ったものとするよう検討する。


2 多様な雇用・就業機会の確保と能力開発の促進

   障害者の就労を促進するためには、障害者の働く場について量的な拡大を図るとともに、多様なニーズに応えるための支援を拡充することが重要である。
 このため、継続的就労タイプ(現行の福祉工場等)については、規制緩和等によりその設置を容易にするとともに、多様な雇用・就業機会の確保に努める。
 また、障害者の職業能力の開発・向上を一層推進し、障害者の居住する地域における職業自立を支援する。

(1)  継続的就労タイプの施設の拡充による働く場の拡大

 「一定の支援のもとで継続的に就労する機能(継続的就労タイプの施設)」については、特例子会社、重度障害者多数雇用事業所の役割の明確化を図りつつ、併せて、現行の福祉工場より人員基準等の規制を緩和し、授産施設や小規模作業所等からの移行や継続的就労タイプの施設の新規増を促進することにより働く場の拡大を図る。
 継続的就労タイプの施設については、以下のような方向で検討する。

(継続的就労タイプの施設)

 (1)  継続的就労タイプを利用する者は、公共職業安定所の職業紹介によることとするなど、公共職業安定所との連携を図ることを基本に検討する。

 (2)  就労能力の高まった者が次のステップに移行することを促す仕組みについて検討する。

 (3)  人口規模の小さい市町村等での対応も含め、地域特性を踏まえた柔軟な運営が可能となるようにする。このため、小規模・多機能化を可能とする仕組みの導入や、障害種別による施設類型をなくすことを検討する。

 
(2)  精神障害者に対する雇用率制度の適用と支援策の拡充

(1)  精神障害者に対する雇用率制度の適用
 平成14年国会附帯決議等を踏まえ、精神障害者を雇用率制度に適用することについて、諸問題を早期に解決し実施することが求められており、プライバシーへの配慮や在職精神障害者対策の強化と合わせて適用の在り方を検討する。

(2)  精神障害者職場復帰支援事業(リワーク事業)の拡充
 平成16年度より、企業における在職精神障害者の職場復帰に関する取組を支援する事業を独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構において実施することとしており、本事業のさらなる拡充について検討する。

(3)  企業内ジョブコーチ事業(仮称)の創設
 企業がジョブコーチの能力を有する者を日常的に配置し、医療機関や福祉機関、障害者職業センター、公共職業安定所等と連携して精神障害者等の職業生活に関する相談、職場復帰支援等の援助を行う場合に支援することを検討する。

(3)  ITも活用した在宅就業による就業機会の拡大

(1)  在宅就業者への発注に対する奨励
 在宅就業者に対する発注を促進するため、在宅就業を営む重度障害者に発注を行う企業に対して経済的なメリットを付与することを検討する。

(2)  セーフティネットとしての支援団体の整備
 企業からの仕事の受注・分配、品質管理、在宅障害者の能力開発等を行う在宅就業支援機関の育成・支援を図ることを検討する。

(3)  在宅勤務制度を導入する企業に対する助成制度の創設
 重度障害者の在宅勤務を促進するため、在宅勤務制度を導入する企業に対する助成制度の創設を検討する。

(4)  公共職業能力開発施設における障害者訓練の拡充

 障害者職業能力開発施設の設置がない地域において、県立の一般校を活用して、知的障害者等を対象とした職業訓練コースを設置し、従来一般校への受入れが困難であった障害者に対する職業訓練機会を提供するとともに、地域における障害者職業能力開発の拠点整備を図る「一般校を活用した障害者職業能力開発事業」を拡充する。

(5)  多様なニーズに対応した委託訓練の実施

(1)  大幅拡大した委託訓練の効果的実施  障害者が居住する地域における企業、社会福祉法人、民間教育訓練機関等の 多様な委託先を活用した職業訓練を地域ニーズに対応して一層効果的に実施し、障害者の雇用の促進に資する。

(2)  障害者のキャリア発展を図るための支援
 教育、福祉部門から雇用部門への連続性を確保し、その後の職業生活の安定 を図るための職業能力開発プラン策定等の障害者のキャリア形成支援策を検討する。

(6)  障害特性に応じた支援の強化

(1)  障害者試行雇用(障害者トライアル雇用)事業の拡充
 障害者トライアル雇用事業は、常用雇用への移行率が約8割と高い割合で推移していることから、重度障害者も含めその支援対象者を大幅に拡大することを検討する。

(2)  視覚障害等の障害特性に応じた支援
 視覚・聴覚障害等の障害特性に応じた就労支援策を検討する。

(3)  精神障害者社会適応訓練事業の見直し
 精神障害者を一定期間事業所に通わせ、社会的自立を促進することを目的とする社会適応訓練事業について、一般就労への移行をさらに促進する観点から、参加者の訓練への意欲を向上させる方策等、そのあり方について検討する。


3 ネットワークによる切れ目ない総合的な支援

   障害者の就労支援を図るためには、生活面と就労面の支援を切れ目なく行うことが必要であるため、福祉、雇用等の関係機関による就労支援に係るネットワークを構築する。

(1) 障害者が自らの職業生活を設計・選択するための支援の強化

 障害者自らがその意欲と能力に応じて職業生活を設計・選択できるよう、雇用、福祉、教育等の関係機関からなる総合的な相談支援機能を充実し、一人ひとりに合った総合的な支援プログラムを作成・実施するとともに、公共職業安定所、障害者職業センター、公共職業能力開発施設、授産施設、福祉NPO等の地域資源の連携強化を図るため、雇用・就業に関する地域の総合支援窓口としての公共職業安定所の機能を強化する。

(2) 各種情報等の共有、共通に活用できる評価手法の検討

 本人のニーズに応じ、企業への雇用等のステップアップを図っていく場合に、福祉部門と雇用部門が就業に関する各種の情報やノウハウを共有するとともに、雇用・就業に向けた職業評価手法を検討する。

(3) 障害者就業・生活支援センターによる支援の強化

 地域での就労面と生活面の支援を一体的に行う障害者就業・生活支援センターについては、公共職業安定所との連携も考慮し、その強化、拡充を図る。


トップへ
戻る