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平成15年度第5回薬事・食品衛生審議会血液事業部会概要
(※正式な議事録は、おって公開する。)

日時: 平成15年3月19日(金)10:00〜12:00

 委員22名中17名が出席

 議題1「平成16年度の血液製剤の安定供給に関する計画(案)について」

 事務局の説明に対し、以下の意見があった。

 輸血用血液製剤には200ccで1単位として1万1千何百円の値段がついていて、原料血漿として業者に配分すると1リットル単位で13,000円になっており、6倍か7倍もの価格差がある。総費用を按分して価格を定める方式には問題があるのではないか。厚生労働省として価格設定の考え方を明確にすべきである。また、輸血用血液製剤の値段はもっと下げるべきではないか。
 かつて、日本赤十字社の血液事業の経営で、赤字が出るとそれを補填して輸血用血液製剤の保険薬価を上げていったというのが歴史的経緯であって、原価計算等をして、血液事業に幾らお金を掛けるべきという議論はこれまでなかった。これは根本的な課題であって、時間を掛けて議論する必要がある。
 費用を積み上げて価格を決める方式ではコスト引き下げのインセンティブが働かないので、コストを下げるインセンティブを別途入れるのが普通であるが、血液事業についてはまだそこまで行っていないようだ。配分基準については、一つの考え方だけではなく、幾つかの案を出して、どちらが社会的に納得できるか、というようにするのが正しい議論。

 事務局は、これらの意見を踏まえ、血液製剤の価格が本来どのような水準であるべきか、全体の血液事業を見直す中で検討することとされた。
 「平成16年度の血液製剤の安定供給に関する計画(案)」については、事務局案どおり了承され、法令的な審査を経た上で告示することとされた。

 議題2「平成16年度の献血の受入れに関する計画(案)の認可について」

 日本赤十字社参考人の説明に対し、以下の意見があった。

 日本赤十字社の本社が事業者としての方針を明示すべきだと思う。例えば、山梨県では血小板をすべて東京都に依存しているが、そうした方が有利な状況があるのであれば、他にもうまい仕組みが作れるのではないか。日本赤十字社の献血体制の構造改革をすれば、もっと合理的に安い費用で献血量が確保できるようになるのではないか。
 200mL採血と400mL採血では費用があまり変わらないが、400mLでは200mLの2人分に相当するので、全体のコストは半減する。200mL採血を400mL採血にシフトすることによって経費節減ができるのではないか。
 各血液センターでの意見を話し合う場があるとのことだが、それらの意見を中央でどのように評価しているのか。(案)に掲載されているのはプラスの面だけであって、不適格な血液の量などマイナス面の要素がないので、将来的な問題かもしれないが、そういうものも評価対象にしていただきたい。

 事務局は、「平成16年度の献血の受入れに関する計画」を(案)どおり認可の手続きを進めることとされた。日本赤十字社参考人に対しては、これらの意見を踏まえ、献血の受入れの改善を行うことが必要とされた。

 議題3「輸血医療の安全性確保に関する総合対策について」

 事務局の説明に続き、参考人から、日本赤十字社の安全対策に関する取組について説明があった。
 これらに対する質疑のほか、以下の意見があった。

 輸血後感染事例が発生した場合に、献血者に検査用の採血に協力いただくような体制を作れないか。また、こうした場合の問題は診断や、解析の解釈にある。肝炎の感染について分かる外部の人たちのアドバイスを受ける機構を作るべきではないか。さらに、輸血を受けた人全員に、一定期間後に検査を受けていただき、感染している場合には献血者のフォローも含めた形をとれば、この問題は解消に向かうのではないか。
 問診票は本部会で審議したことがあるが、問診のやり方については、相手の気持ちになって質問する必要があるかと思う。心理学者など人文系の方々の協力が必要。その辺も考慮して、日本赤十字社の方で御配慮願いたい。
 各センターごとの問診医の研修カリキュラムを明らかにして、それに対して本社がどう対応し、どれだけ改善されたかという議論を進めて欲しい。
 特定機能病院に輸血部がない、専任医師も居ない、という状況ではとても高度先端医療を任せられないと思うので、是非必須事項にしていただきたい。
 「健康な献血者の確保」については、献血制度だけの問題ではなく、その地域住民の健康なども踏まえ、保健所や福祉センターの取組と深い関係があると思う。保健所の人たちと献血のボランティアの方たちとの連携があって、呼び掛けの仕方などの改善を図っていくことが大切な問題だと思う。
 「検査目的の献血の防止」にもつながるが、検査目的で行く危険性の周知を地域の方たちに知っていただく、そしてなるべく保健所の検査体制を利用していただくことを献血キャンペーンの中で一緒にやっていかないといけない。献血で検査をしてみようという方たちの動きは残念ながら増えている。そういった面での周知徹底にはいろいろなツールを使うべきではないか。
 フレームワークは、各局・各課が行政として行う部分がある。これをモニタリングして、到達点をどこかで評価しなければならない。
 コストと安全性とはトレードオフすべきではないと思うが、安全の確保のために費用がかかり、それが事業を圧迫する場合がある。コストとベネフィットをよく考えなければ、いたずらに血液代金の高騰を招く。実施に当たっては、プロセスよりも妥当性の検証が必要と思う。
 ウイルス感染の発症率は、もはや100万分の1から1000万分の1まで下がっている。医療現場の適正使用で、新鮮凍結血漿の使用量を半分に減らせば、コストを全くかけずに1000万分の1のリスクを2000万分の1にできる。NATの検体プール数を50から20にしても、リスクは半分には下げられない。そうすると、適正使用が非常に重要になる。これが医療現場でどれだけできているか。医療機関の輸血に全責任を負えるような権限を持つ部門を法的に確保して、ヘモビジランスに近いものを築くということが最重要課題である。

 事務局は、これらの意見を踏まえ、「輸血医療の安全性確保のための総合対策のフレームワーク」をさらに具体化し、その状況を適宜本部会に報告することとされた。日本赤十字社参考人も、安全対策に関する取組を進め、その状況を本部会に報告することとされた。

 議題4「血液製剤に関する報告事項について」

 事務局の説明に対し、問診項目の中に遡及調査への協力依頼を盛込むべきではないか、との意見があった。
 事務局と日本赤十字社は、引き続き調査と安全対策を進め、その今日今日を適宜報告することとされた。

 議題5「血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドラインについて」

(特に議論なし。)

 議題6「その他」について

 事務局から、米国産の米国産のウシ等由来物及びウシ等のせき柱骨等を原材料として製造される医薬品、医療用具等に関する品質及び安全性の確保並びに生物由来製品による感染被害の救済制度の創設について報告があった。
 これらに対し、以下の意見があった。

 BSEなどの対策をタイムリーに行うことは非常に重要であるが、ウシから、あまり見たことがないような材料に切り替えられるケースが出てきている。非常に難しい問題であるが、あまり小さな危険性にとらわれていると道の危険が出てくるような気がする。
 救済制度については、輸血前後の検査をやって情報を得ないと、確度の高いものにならない。輸血前後の検査を保険適用するなど、明確な指示を出さないと医療現場が混乱して、きちんとした対応ができない部分がある。
 生物由来製品による感染被害の救済制度と、献血者の補償制度が同時にできなかったのは残念である。こちらの方も速やかに実現するよう努力していただきたい。
(了)


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