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資料2

盲・聾・養護学校において教員が行う医行為の範囲について


論点:
 医行為については医療職が実施することが、原則である中で、障害のあるこどもの教育を受ける権利や安全かつ適切な医療・看護をうける権利を保証するための体制づくりを進めることが前提である。その上で、盲・聾・養護学校において教員が行うことが出来る医行為は、文部科学省において実施したモデル事業で認められた3つの行為((1)たんの吸引、(2)経管栄養、(3)自己導尿の補助)でよいのか考えるべき。

  3つの行為に限定するのか(3つの行為以外で教員が実施することを容認してもよい行為があるのか)

  3つの行為の中でも教員が実施すべきでない部分は明示すべきではないか

  安全に実施するための手順を示す必要はあるか


I モデル事業において取り組まれている行為

 1 たんの吸引

 (1)たんの吸引の必要性
痰や唾液が貯留しないために、吸引する。
痰や唾液が貯留していた場合、速やかに取り除かないと呼吸困難を生じ、また気管支炎などを起こす可能性がある。

 (2)モデル事業において教員が行うことが認められているたんの吸引の範囲
「咽頭より手前」の吸引について、教員が行うことが認められている。咽頭より奥の吸引については、看護師資格のある者が対応する。

 ※ 具体的な内容については主治医の意見を尊重の上決定すること。

 (3)標準的な手順
深く入りすぎないように予めチューブを挿入する長さを決めておく。
適切な吸引圧で、吸引チューブを不潔にしないように、吸引する。
咽頭にある痰を取り除くには、鼻腔から吸引チューブを挿入して吸引した方が痰を取り除きやすい場合もある。
その場合、鼻腔粘膜など刺激して出血しないようにチューブを入れる方向等に注意しながら挿入する。

 (4)教員が行う「咽頭より手前のたんの吸引」の安全性
咽頭より手前の範囲で吸引チューブを口から入れて、口腔の中まで上がってきた痰や、たまっている唾液を吸引することについては、手順を守っていれば、研修を受けた教員が行うことに危険性はないものと考えられる。
鼻からの吸引には、鼻腔粘膜やアデノイドを刺激しての出血が、まれではあるが生じうる。また、鼻や口からの、咽頭の奥までの吸引により、敏感なケースでは嘔吐・咳き込み等の危険性もある。したがって、鼻からの吸引や、口から咽頭の奥までの吸引は、「一般論として安全である」とは言い難い。しかし、児童生徒の態様に応じ、吸引チューブを入れる方向を適切にする、左右どちらかのチューブが入りやすい鼻からチューブを入れる、吸引チューブを入れる長さをその児童についての規定の長さにしておく、などの手順を守ることにより、個別的には安全に実施可能である場合が多い。

 2 経管栄養

 (1)経管栄養の必要性
口からの水分・食物の摂取が不可能か不十分である場合、管を通し食物や水分を、直接胃に入れる方法である。
嚥下機能が低下している児に、誤嚥の危険性が無く、決められた時間で安全に必要な栄養と水分を摂取することができるのは、安全面からも、成長期にある児の栄養状態と脱水防止等健康管理の観点からも、有用である。

 (2)モデル事業において教員が行うことが認められている経管栄養の範囲
咳や嘔吐、喘鳴等の問題のない児童生徒で、留置されている管からの注入による経管栄養(ただし、経管の先端位置の聴診器による判断は除く。)
経管の先端位置の聴診器による判断は看護師資格のある者が行う。また、咳や嘔吐、喘鳴等の問題のある児童生徒に対する経管栄養は、看護師資格のある者が行う。

 ※ 具体的な内容については主治医の意見を尊重の上決定すること。

 (3)標準的な手順
既に留置されている栄養チューブが胃に挿入されているか注射器で空気を入れ、胃に空気が入る音を確認する(看護師資格のある者)。
胃の内容物をチューブから注射器でひいて、性状と量を確認、胃や腸の状態を確認し、注入内容と量を予定通りとするかどうかを判断する(胃の調子等の判断は看護師資格のある者)。
あらかじめ決められた注入速度を設定する。
安楽な体位を保持できるように姿勢の介助や見守りを行う。
注入終了後、微温湯を注入し、チューブ内の栄養を流し込む。

 (4)教員が行う「経管栄養」の安全性
経管栄養注入のプロセスにおいて、注入開始時の確認や判断は看護師資格の者が行うことが必要であるが、開始後の対応は多くの場合は教員のみによっても可能である。

 3 自己導尿の補助

 (1)自己導尿の必要性
脊髄の障害や他の疾患のために排尿を自分でコントロールできないケースでは、一定の間隔で膀胱内にたまっている尿をカテーテルを挿入して排出させなければならない。

 (2)モデル事業において教員が行うことが認められている「自己導尿の補助」の範囲
本人がカテーテルの挿入を行う際の、そのカテーテルや尿器、姿勢の保持等の補助

 ※ 具体的な内容については主治医の意見を尊重の上決定すること。

 (3)標準的な手順
尿道口を清拭消毒する。(本人又は看護師資格のある者)
カテーテルが不潔にならないように、尿道口にカテーテルを挿入する。(本人)
本人が自らカテーテルを挿入することが出来ない場合には、看護師資格のある者が行う。
本人がカテーテルの挿入を行うため、そのカテーテルや尿器、姿勢の保持等の補助が必要である。
下腹部を圧迫し、尿の排出を促す。
尿の流出が無くなってから、カテーテルを抜く。

 (4)教員が行う「自己導尿の補助」の安全性
本人がカテーテルの挿入を行う場合には、尿器や姿勢の保持等の補助を教員が行うことについては、危険性はないものと考えられる。


II モデル事業において取り組まれていない医行為

 文部科学省のモデル事業において取り組まれていない医行為のうち、教員が行っても同等の安全性が確保できる行為があるか。あるとすれば、どのように考えるか。

  例: 胃瘻
 胃瘻による経管栄養の児童は最近増加していることが報告されている。鼻からの経管栄養よりも相対的に安全性が高いともいわれるが、どのように考えるか。この場合であっても、胃瘻の状態に異常がないことの確認や、び爛や肉芽などの問題のある場合の衛生管理は看護師が行うべきか。


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