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大濱委員提出資料
160706第19回検討会の資料 (社)全国脊髄損傷者連合会


命にかかわる障害者の介護コスト事例

(命にかかわる障害者とは、全身性障害者のうち、重度頚損・重度脳性まひ・重度筋ジス・呼吸器利用者などで24時間介護の必要な障害者である。人口10万人に1人程度であり、全体からするとその予算はわずかであるが、命にかかわるので最も保障しなくてはいけない。)


1日24時間介護が必要な人(独居や家族が病気)の場合

人間として最低限の生活を保障するためには、二人体制が必要な場合ももちろんあります。
人間らしい最低限の生活を保障する場合
  1日3時間の外出(家族の通院・銀行などの留守番ふくむ)介助=月90時間
  1日3回トイレ介助1回1時間=1日3時間=月90時間
  週3回入浴介助 1回2時間=週6時間=月26時間
  一ヶ月最低でも90+90+26=206時間分を加算して
   24時間×31日+206時間 =950時間必要です。

◆ ヘルパーの人件費(950時間)
 一般ヘルパー賃金 1,500円×778時間=1167,000円
 主任ヘルパー賃金2,200円×172時間=378,400円
 新人介助者研修800円×100時間=80,000円(この月の新人介助者1人の場合)
 主任手当て15,000円
 コーディネーター訪問時間 概算月20時間44,000円
 ヘルパー交通費240,000円
 社会保険・各種保険料等332,000円
 管理者・コーディネーター・ヘルパー会議の時間帯の給与のべ150h
270,000円
 事務所維持費・事務員人件費のうちこの利用者にかかる時間で按分した額
95,000円

重度の全身性障害者 で1日24時間介護に最低必要な費用 合計262万1400円
(このケースを日常生活支援で請求した場合222万6760円。現状では、他の身体介護利用者の黒字でまかなっている状態)


コストがかかる理由(東京都N区ALSのAさんの場合)
新人介護者が呼吸器のことや吸引のことを覚えるのに時間がかかるので、数ヶ月のあいだ、新人とコーディネーター(や管理者)が一緒に介護に入って教えている。

呼吸器関連以外の介助内容も複雑であり、命にかかわるので、介助者が1人でできるようになるまで、時間をかけて2人体制などで教えないといけない。

夜も一睡もできない苛酷な労働なので、介助者の入れ替えがたびたび有り、そのたびに長期の研修を行っている。

介護内容が高度で、長期間(できたら10年以上)介護に入ってくれる常勤のベテラン介助者でないといけない。高齢者の介護をしているパートの人などは勤務時間が少なく、介助を覚えるのに数年かかるのでまったく使えない。過酷な介助内容であり、常勤で介助者の家族を養えるきちんとした給与を出さないと長期にわたって働けないので、コストもかかる。

 ●コミュニケーション
利用者独自のコミュニケーション方法を習得するのに時間がかかる。これができないうちは研修扱いになってしまう。(役に立たないので。)

 ●利用者の最低限の生活の質の保証
呼吸器管理をしつつ移動をする必要がある、車椅子への移乗や外出、トイレ介助、お風呂介助などは介護者は2人以上いる。安全のためにどうしても多人数で行う必要がある。
これらの人間として最低限の日常的な営みに人手がかかることを贅沢だとはいえない。


地方では
 ALSなど重度障害者は「身体介護」でないと働いてくれる人がいないところが多い。(特にCIL型の事業者がない地域では)
 ヘルパーの時給は身体介護単価で給与をもらっている。それが制度改悪で給与が下がったら、介護を受けられなくなる。
 これらヘルパーの多くは介護保険の事業所から派遣されてくるので人材も老人のほうに流れていっていくのが現状です。このような現状下での単価引き下げは、重度障害者の地域での暮らしを否定することです。


包括払い方式の問題点と反対理由

全国の状況などを調査した結果、以下の問題点があり、包括払い方式には反対である。

1.地方でこれから初めての「24時間介護の必要な命にかかわる1人暮らしの障害者」が地域に出た場合に、必要な予算がつかなくなる。つまり、市町村財務部は最低限の予算しか認めようとしないので、低い単価ができれば、最低のものまでしか出さない。このため、例えば包括払いに障害に応じて5段階の区分を作っても、最重度でも1番低い区分で決定されてしまう。そうなると、近隣市町村を見ている各自治体はますます低い類型だけを適用することになり、最低区分が全国の事実上の上限になってしまう。そうなると、最重度の障害者は生きていけない日本になる。

2.命にかかわる最重度の24時間介護の必要な障害者は、現在最高24時間のヘルパー制度がある自治体の中でも、人口10万人に1人程度であり、しかもその数の過半数は全国から移転してきた障害者である。これの、現在の予算額に占める割合は0.3%程度のわずかな予算である。この1番重度の命にかかわる予算を削るのは本末転倒である。

結論
 このような命にかかわる最重度の24時間介護の必要な障害者を福祉の制度で、いかに担保するかが厚生労働省に科せられた課題であろう。この部分を保険でまかなうことは、保険という制度では限界がある。従って国税で担保し、その9割程度を国が負担し、地方自治体の負担分を1割程度に軽減し、重度の障害者が安心して地域生活ができる施策こそ本当の福祉のあり方であろう。


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