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仕事と生活の調和に関する検討会議報告書(平成16年6月23日公表)抜粋


〈2〉 各論

  II 就業の場所について

 「複数就業」について

 多様な働き方の選択肢を整備する観点からは、複数の仕事を同時並行的に行う(複数の雇用契約を結び、一定の期間内に二以上の就業場所で働く)いわゆる複数就業についても、合理性を有する働き方のひとつとして認知していくことが考えられる。その際、複数就業については、働く者の職業キャリア形成に資する面もある一方、本人が望まないにもかかわらず所得を確保するためやむを得ず選択する場合も想定されること、過重労働を起こしやすい形態であること、企業側からすれば雇用保障を弱めざるを得ないこと等に十分留意しておくことが必要である。同時に、「複数就業」を認知していくということは、企業の側からは、従業員に対する兼業禁止を含めて雇用管理の在り方を根本的に見直すという本質的な課題を内包していることにも十分留意しておくことが必要である。

 こうした様々な点に留意した上で、複数就業を合理性ある働き方として認知するならば、この働き方の選択に対して、少なくとも、関係する公的な施策や制度についての中立性の確保が必要となる。

 こうした観点から、諸施策・諸制度について検討すると、例えば、労働時間管理の在り方については、本業・副業ともに雇用労働である場合においては労働時間が通算されて労働基準法の規制が課されるのに対し、本業又は副業のいずれかが請負等の自営業である場合には労働時間が通算されないが、この場合の労働時間管理の責任をどう考えるのかといった問題がある。
 また、労働者災害補償保険制度においては、複数就業について、保険給付の給付基礎日額の算定をどのように行うのかといった問題や、通勤災害保護制度における通勤が住居と事業場との間の移動とされているため事業場間の移動は保護の対象とならないという問題があり、これらの点について検討を行うことが必要である。
 さらに、雇用保険については、現在、適用基準を週20時間以上とすることによりパートタイム労働者の適用の問題に対応しているが、さらに適用基準を引き下げた場合には、部分失業の考えを取り入れることの可否等についての検討が必要となると考えられる。
 厚生年金保険や健康保険についてはパートタイム労働者に係る現行の加入要件(1日又は1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が同種の業務に従事する労働者の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上であること)の見直しとともに、社会保険の一元化という課題も視野に入れた総合的な検討が不可避になると考えられる。
 いずれにしても、複数就業に関しては、社会保障制度全般にわたり、こうした点等について、今後、さらなる検討を進めていくことが求められる。


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