04/06/29 社会保障審議会福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会第13回 議事録     社会保障審議会福祉部会 第13回生活保護制度の在り方に関する専門委員会 日時:平成16年6月29日(火)10:00〜12:00 場所:厚生労働省 5階専用第7会議室 出席委員:石橋委員、岩田委員長、大川委員、岡部委員、後藤委員、鈴木委員、      田中委員、根本委員、布川委員、八田委員、松浦委員   京極委員は欠席 議題  :(1)級地制度の在り方等について       (2) その他 (岩田委員長)  定刻となりましたので、ただいまより第13回社会保障審議会福祉部会生活保護制度の 在り方に関する専門委員会を開催いたします。大変御多忙のところを御出席いただきま してどうもありがとうございます。  まず、事務局から本日の委員の出席状況及び配布資料についての御説明をお願いしま す。 (事務局)  まず委員の出席状況でございますが、本日は全員出席ということになっております。 京極委員はまだお見えになっていないようですが、出席の予定と伺っております。  続きまして、資料の確認をさせていただきます。上から順番に、  議事次第  座席表  資料1「説明資料」  資料2「田中委員提出資料」  資料3「布川委員提出資料」 となっております。  それから、第12回の議事録の案を配布しております。これについては、各委員に内容 を確認いただく必要がありますので、委員のみの配布となっております。  資料は以上でございますので、お手元に以上の資料がない場合におきましては事務局 より別途お渡ししたいと思います。以上でございます。 (岩田委員長)  資料の方はよろしいでしょうか。  本日の議題は、議事次第に書いてありますように、今日の新しい議題として級地の問 題があります。そのほか、前回の保護施設の議論、それからずっと引き続いております 資産及び労働能力の活用の問題について今日は少しまとめの議論をしたいと思います。  それで、事務局からの資料については、級地の問題から入っていただいて配布資料の とおりに御説明していただきますが、労働能力の活用も何回も何回も議論をしては時間 切れのような感じになっておりますので議論としては積み残しの方を先にしなければな りません。資産保有と労働能力の活用、保護施設、そして級地の問題という順番で議論 をお願いしたいと思います。  田中委員と布川委員から提出資料が提出されておりますが、それはその議論のときに 御発言の中で御紹介いただきたく形でご説明願います。  それでは、まず資料の説明を事務局からお願いいたします。 (資料1「説明資料」に基づき岡田保護課長より説明) (岩田委員長)  ありがとうございました。  それでは、今の御説明があったテーマを後ろから順に御議論いただきたいと思いま す。  まず預貯金の保有の問題からはじめたいと思いますが、いかがでしょうか。御意見が ございましたらどうぞ。 (大川委員)  預貯金については前回、資料を出させていただきました。私は今回事務局の方からい ただいた23ページの資料を見せていただいて、率直に申し上げまして私たちが今まで論 議してきたことは一体何だったのだろうという感想を持ちました。  例えば、23ページの下の段にある「自己責任を原則としつつ、不足分を補う」とか、 あるいは他の世帯とのバランスを考えるということは当然のことであって、今までの論 議もそれを前提とした上でいろいろな比較をしながら進めてきたと私は考えています。 ですから、何で今更こんなことを言われなければいけないのかというのが率直なところ です。  いずれにしても例えばこの上の段にありますように、本人、要するに生活困窮者に対 する早期支援は他法他施策の形や就労支援のサービスをきめ細かく提供していくことが 重要とあります。私もそう思いますが、実際にこういった他法他施策や就労支援のサー ビスをきめ細かく活用しても、生活保護になる方が非常に増えているという現状に対し てどういう認識を持っておられるのか。これを非常に私は疑問に思っているのです。  とりわけ最近の社会保障制度そのものが総額抑制の動きになっていますから、今後生 活保護の周辺の制度がどんどん縮小していく中で、嫌でも生活保護を受ける方が増えて いくであろうということは十分予想されると考えています。  では、そういったときにどうするかというところで、多分、議論の一番のスタートで 私たちは入り口を広く、そして出やすくする。つまり、生活保護で早めに救って、早め に自立していただくという仕組みをつくらなければいけないという論議をしてきたよう に思うのです。そういったことを考えると、むしろこういった考えの在り方そのものを 私たちは見直さなければいけないのではないかと考えています。  端的に言いますと、預貯金・資産の保有容認枠の拡大と、自立支援のためのシステム の構築というのは同次元、つまり一体で進めなければなりません。下手に対象を広げて そのまま生活保護の人が増えていくというのも困った事態ですし、逆に入り口のところ を閉めて、自立支援の効果が上がらないという結果になることを私は非常に恐れます。 したがって、この辺については是非そういった見直しも含めた取りまとめにしていただ きたいというのが委員長に対するお願いでもあります。  さらに申し上げますと、自立支援についてはいただいた議事録を克明に読ませていた だいて、非常に方向性が見えていると思うのです。ただ、この自立支援を具体化するた めには自治体にとって、財政的な面も含めて大変厳しいと思っております。したがっ て、法律の中にきちんと明記する、つまり、ホームレスの特別措置法と同じ考え方です が、生活保護法の中、あるいはそれとは別立ての生活保護世帯に対する自立支援のため の法律を整備して、各自治体が法的根拠に基づいて努力をしていくという形にしない と、自治体としても動きたくても動けない状況になると思います。  ですから、ここの最後のところに、各事務所が自立支援の体制整備に取り組んでいた だくことが必要でありと書いてありますが、解決しなかったから今に至っているのでは ないでしょうか。そういった意味で、私はこれを聞いて一番思ったのは、早急に生活保 護の自立支援に対して法的な根拠をつくる。生活保護法にターボエンジンを付けるとい う考え方でいいと思いますが、その中に例えば生業扶助であるとか、あるいは自立支援 のためのアセスメントの仕組みであるとか、職安の連携であるとか、そういったものを 独自の章立てをするような形で法整備をすることで、各自治体が自立支援に対して積極 的に行っていくということの裏付けができると考えております。文句ばかり言って申し 訳ありませんが、以上です。 (岩田委員長)  ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。  今日、事務局の方から出していただいた23ページのところは、1つは最初の幅広い生 活相談といいますか、低所得層全般に対する生活相談の大事さというのは、これはこれ としてあるということだろうと思います。これも一回議論をしたと思います。  それは今よりもっとやるべきだし、他法他施策の活用もすべきである。ですから、そ ういう意味で確かに異次元の話でもある。恐らく、大川委員の御意見は、しかし生活保 護の適用とやはり同次元の問題もあるのではないか。それに対して、自立支援で例えば 生業扶助の位置付けを少し重くするとか、生業扶助を自立支援扶助に変えるという御意 見が前に岡部委員から出ていましたが、そのような感じでしょうか。 (大川委員)  はい。 (岩田委員長)  多分、そこが一つ目の論点になると思います。  それから二つ目の論点は、今の下の方の2つの預貯金の保有ですが、要するに、どの 程度であれば整合的であるか、という議論をすべきだろうと思います。ゼロなのか、今 の0.5か月なのか、それとももう少し上なのか。保護基準の方で少し水準の議論をしま したので、資産保有についても何か基準みたいなものが設けられないか。今の0.5でい いというのが一つの考え方だと思います。だから、ゼロという判断は今までもしていな いわけですが、一つの目安としては新破産法が標準生活費の3か月という基準を示して います。この基準は最低生活ではなくて標準生活費の3か月というものを示していま す。私もこの間、何となく3か月ということを言ったのですが、新破産法では3か月と いう考え方をすでに採用しているわけです。  もちろん、破産という問題と最低生活維持の問題というのは同次元の問題ではないの ですが、今日の社会の中で生活を再建していくベースラインでどのくらいの資産保有が 常識的に認められるかというときの、一つの目安になりはしないかと思います。この2 つはまさにそうなのです。そして、一般世帯でも若い世帯はほとんど貯金はありません から、非常に小さい。貯金が大きいのは高齢世帯ですし、生活保護は一般扶助ですから 大変広い対象にしていますので、何となくこういうふうに広げてしまうと貯金をいっぱ い持った若い世帯がどっとくるようなイメージになるかもしれませんが、そういうこと は現実的にはあり得ないわけです。むしろそうなることによって早目にくるという目安 になると、この上の所得階級のところが救われるかもしれない。  その人たちがすべて生活保護になるかどうかというのはまた別の話だと思います。私 が申し上げた3か月がいいかどうかというのはまた別の話ですが、この原則に基づいた 上でどのぐらいの程度を決めるかという議論が確かに大切ではないかと思います。  三つめの論点です。課長がおっしゃったように、生活保護制度は非常にパーフェクト な構えでつくられていまして、つまり何でもここの中で処理してしまうという制度で す。だから、何もなくてもこの一時扶助や8つの扶助を組み合わせていけば最低生活が できるというのはおっしゃるとおりなわけですが、一時扶助というのはかなり裁量的な 要素が大きいわけで、例えば緊急的に何か生活保護の世帯の方たちが自立的に判断して 使えるというものではないだろうと思うのです。そのニーズは当然、福祉事務所の判断 を通っていきますから一定の期間が必要でしょうし、かなり裁量的なものだと思いま す。その辺りも含めるとどのぐらい、入り口のところとその後の受給中の、例えば簡易 保険などの所有や、自分で少し貯めるということも、どのぐらいの幅は裁量的なものと して保有できるかということかと思います。つまり、そういう意味で資産に当たらない 程度の生活融通資金といいますか、やりくり資金的なものがどのくらいだと合理的かと いうことだろうと思うのですが、いかがでしょうか。 (八田委員)  まず一点目ですが、今おっしゃった3か月という目安に、私は基本的に賛成です。そ の上で今おっしゃった最後のところを補足したいと思います。例えば母子家庭の子ども が高校に行くというというとき、制服の場合には前もって自分で買わなければならな い。生活保護からは事後的に支払われます。その間のつなぎが結構苦しいということを 聞きます。まさに運転資金が必要だと思います。  二点目として、批判は、やはりここに書いてあるように、預貯金を保有できずに生活 をやりくりしている低所得世帯とのバランス等に配慮すべきだと思います。預貯金は持 っていなくても、住宅や自動車といった資産を持っていれば、いざとなったらそれを流 動化して売って現金にできるわけですから、非受給者のそれらも含めた資産総額と、生 活保護受給者の預金とを比較するべきではないか。同じ所得階層の非受給者で預貯金以 外の資産を引っくるめたものが3か月を超えているのであれば、非受給者の預金の目安 も3か月にしてはよいのではないかと思います。  それから三点目です。生活保護で確かに手術のような膨大な金がかかるときに面倒を 見てくれるのは安心です。しかし非受給者の最低生活者にとって、手術のような非常に 大きな事故に遭ったときのための用意まで全部自分の預金でやるのは無理で、いざとな ったら生活保護に頼るより仕方がないという気持ちがあると思うのです。そのように、 非常に大きな支出については低所得者の方も間接的には生活保護を期待して預金額を少 なく維持しています。したがって、低所得者の方が持っている程度の預金を生活保護の 人が持つということは、それほど不当なことではないのではないかと思います。  最後、四点目です。ずっと前に出てきたことで、大工さんが自分の非常に大切な道具 を持っていて、それが資産だが、それをあきらめないために生活保護をもらえないとい うような話がありました。そういうような場合には資産の帰属所得、要するにその道具 を借りるとしたら払わなくてはならないレンタル費用分を生活扶助から差し引いて支給 すれば、その道具を持ち続けて自分で稼ぎながら生活扶助の支給を受けることができる のではないかと思います。道具を持っているから、あるいは自動車を持っているから生 活扶助が全部もらえないという仕組みは改めてはどうかと思います。 (岡田保護課長)  先ほど委員長が言われました破産法の3か月について、確かにそういう基準があるこ とを我々も承知していますが、破産法の3か月は当面の生活費に充てるものと聞いてい ます。それについては、生活保護の世界では生活保護基準で全部見ることになります。 したがって、破産法の3か月という基準を、生活保護制度に同じような考え方で取り入 れるのが適当かどうかについては疑問があります。  それから、八田先生の大工さんの道具の話ですが、私の理解では、そういった生業に 関わってちゃんと収入の元になるような資産について、売り払えという指導にはなって いないと思います。  それから、今は余りないかもしれませんが、大工さんの道具などの費用を生業扶助と いう形で見るという仕組みもあります。先ほど言いましたように、生活保護に入ってこ られれば、一時扶助や医療扶助により生活全般に関わるようなものについて、それから 生業扶助により生業に関わるようなものについて、その費用を生活保護制度で全部見る という仕組みになっています。 (岩田委員長)  ただ、自己破産、個人破産など、破産の場合は全部収入がない状態ではないと思いま すので、3か月を全部食い尽くせという意味で置いてあるとは思えない。むしろ、そこ まで追い詰めないで再生するといいますか、もう一回やり直しができるようにというよ うな配慮なのではないかと思います。  それから、福祉の場合も、さっきの制服の例と大変似ていて、相談に来てから決定ま での間に最短で2週間、長いと1か月くらいかかるときに、現行では手持ち金がゼロで すと生活費を生活福祉資金から貸す。それで、後でさかのぼって出るのでそれを返すと いうことをやっていると伺っております。同じことだと言えば同じことですが、そうや らないで済めば生活福祉資金は別の低所得の方が利用できるわけですね。だから、さっ きの医療扶助もそうだと思うのですが、単給というのはまさに低所得の方の、さっき八 田委員がおっしゃったようなためにあるわけです。  ですから、確かに何でもそろってはいるのですが、実際上の運用を見ていますと回り 道をしているような感じもします。ですから、私は3か月という場合、3か月まるまる というより、そういう意味で1か月分はむしろ生活費的なもので、あとの2か月分が運 転資金といいますか、そういうような感じで保有させることもあり得るかなという感じ がしています。こういうものはきちんと根拠を示せと言われてもはっきりとした数字が 出るようなものではなくて、恐らく社会通念的な、経験的なものだと思いますが、いか がでしょうか。 (布川委員)  前回6月8日の委員会で、大川委員の方から、もう少し具体的な提案がされていたと 思います。全体の筋は今のお話のようなことだと思うのですが、そういう中で大川委員 からの提案でここは大体合意できるというようなことがあるならば、そういう御議論を していただいた方が前向きなものが固まっていくのではないかと思うのですが、大川さ んいかがですか。 (岩田委員長)  大川委員、いかがですか。 (大川委員)  これで完璧だとは思っておりませんので、今のお話も受けて、もし検討していただけ たればありがたいと思います。 (岩田委員長)  前の資産の議論でありましたように、一方では2,000万円くらいの家屋が場合によっ ては保有可能だという状況があります。もちろん、相続の問題などで解決しなければな らない幾つかの問題が資産の保有の場合もあるわけで、その辺の整備はきちんとしなけ ればならないと思うのですが、片方で2,000万、片方で0.5か月というのは、住宅という ものの持つ生活上の基盤としての意味が大きいというの理由が片方であるにしても、そ の辺の整合性を全体に考えて、いかがでしょうか。全体としてさっき八田委員がおっし ゃったように、資産として全体として流動的な預貯金と、それ以外の資産、生活基盤と しての住宅、先ほどの生活手段、生業手段のような要素を考慮しながら、適切な範囲 で、今も不適切だと言っているわけでは必ずしもありませんが、なるべく実質的に自立 のバネになるような、跳ね返ることができる基盤まで崩さないような範囲での生活保護 の適用ができればという御議論だと思います。 (松浦委員)  大体0.5か月分というのは幾らくらいでしょうか。破産で言う3か月分というのは、 大体額にしてどのくらいのことを言っているのでしょうか。 (岩田委員長)  新破産法では、もともとの金額が標準ですから、私もはっきりは覚えていませんが、 九十何万でしたね。 (事務局)  破産法の関係で言いますと、3か月分で90万円程度というふうに承知しております。 また、0.5か月分は被保護者の最低生活費によって額は異なります。 (大川委員)  大体、単身基準で生活扶助で8万円くらいです。住宅扶助も少し考えに入れるとやや こしくなるので、生活扶助だけで言うとその半分ですからおおむね4万です。今、単身 で1類、2類を足すと8万5,000円くらいですね。あとは、標準3人世帯として算定さ れている16万円の2分の1が8万円ということで理解していただければと思っていま す。 (事務局)  参考までに申し上げますと、東京の場合で住宅扶助ですと5万3,000円程度になりま すので、大体標準的な家庭であれば10万を超える程度が半月分に相当するということに なります。先ほど大川委員が申されました基本の生活扶助の部分と住宅扶助の部分を足 し上げて、それの半分程度でございますので、約10万を超える程度の額になろうかと思 います。 (松浦委員)  特に私は公務員の場合で経験があるのですが、被用者の場合は破産をしたからと言っ て首が切れないのですね。  ただ、一般的に自営業をやっておられる方というのは破産をすると夜逃げをして隠れ てしまわなければいけない。そういうことならば、当座の埋め職のために3か月くらい は認められるかと思うのですが、生活保護の場合は独立資金として見るわけですか。自 立のための資金ですか。 (岩田委員長)  そういうふうに結果的になる場合もあるだろうし、さっき言いましたように1つはこ れもケース・バイ・ケースだと思いますが、最初の相談に行ったときの、つまり申請時 の預貯金の保有だと考えると、申請から決定までの間の生活費に充当する部分が幾分そ の中に含まれるということになります。それから、受給中のさっき言ったいわばやりく りのための運転資金になります。  しかし、そこで少し更に貯めることができれば、それは自立のときのいろいろな資金 になっていく可能性は高いという見方です。つまり、ちょっと変な言い方ですが、生活 保護の最低生活費が1か月1類で幾ら、2類で幾らと決められるのは、私どもが前半で 議論をしましたように一種のフィクションなわけです。実際上の生活は、当然、それを 前後していくわけですから、そういう波を補正するものとして私たちは普通、貯金とい うものを流動的なものとして持っているわけです。生活保護世帯も、当初にも、あるい は受給中にもこのくらいだったらあっても構わないのではないかという幅がどのくらい か。ですから、それが3か月では多過ぎるという議論はあり得るとは思います。  でも、1つの目安は破産法がそういうふうに引いたので、破産と生活保護が違うとは いえ、破産法の方がむしろもう少しさっきおっしゃったように公務員で収入があるとい う場合も想定しているとすれば、余りとことんいってしまわない方が、更生していくと きの心理的な面も含めて基盤になるという御判断なのではないかと受け止めたわけで す。もちろん一番わかりやすいのは、最初にあった丸裸論といいますか、最低生活とし てはぎりぎりであるということで、すべてゼロという考え方があると思うのですが、次 第に生活保護の制度でもそうではなく、資産保有も認め、0.5か月は認めるという方向 できていますし、裁判例でいっても保険とか、その中の貯蓄というのは認めてもいいの ではないかという方向にきている。この流れが社会通念だと考えますと、この委員会で この程度の判断はできるかなと思います。 (岡部委員)  資産に関しては、資産及びその預貯金についてもできるだけ生活の基盤を取り崩さな いで自立更生につなげるという形で話が進んでいたかと思います。そうなったときに、 先ほどお話ししたように0.5か月が妥当性を持つかどうかというと、ある意味では皆さ ん厳しいという形が一定の御意見として出たのではないか。  それでは、どれくらいが妥当かという点について、委員長は3か月というお話をしま したが、やはり生活の基盤を形成するような資産と自立の更生という形を考える資産及 びその預貯金と考えるべきです。生活保護法の中で一定の生活のめどが立って、将来的 な予測を立てるという形で、生活保護では停止の期間というものを設けていますが、停 止の期間では、一定の見込みとして6か月という目安を持っています。それで、私個人 としては入り口のところで3か月にするのも一つの判断ですし、6か月分を認めるとい う考え方もあります。廃止をする目途で経過観察という形で6か月という幅も、トータ ルの廃止の時点で持っていることも一つの判断としてあるのではないかと思います。  ですから、やはりここで現行の中で低所得の方とのバランスの話が出ましたが、確か にそういう面があるものの、現行の生活保護では入り口で非常に厳しくやっておりまし て、それがある意味ではそのスプリングボードというか、自立に向かうのではなくて固 定化してしまうのではないか。そこのところも一つ考えて、もう少し預貯金及びその資 産というものを広げて考えるべきではないか。  そこで、3か月ということが妥当性を持つかという形と、もう一つはやはり私は少し 大きくとらえていいのではないか。1つの目安としては、6か月という形を提示させて いただきたい。これは御検討していただければと思います。 (松浦委員)  私はどうもうがった見方ばかりして申し訳ないのですが、貯金をたくさん持ってよろ しいということで、額を多く認めれば認めるほど、やはり生活保護者はたくさん増えて くるという気がします。あれだけ貯金して生活保護がもらえるのならば、自分ももらう という意見は当然出てくると思いますので、その辺のこともやはりバランスというのは 大事なことではないでしょうか。 (岩田委員長)  もちろんその入り口の基準を緩くするというのは、入り口の場面ではそれだけ生活保 護世帯を抱えることになります。ですから、さっき大川委員がおっしゃったように自立 支援といいますか、余りたまらないで早く利用をして、そこをバネにして出ていただく というプログラムにつなげないと増えていってしまいます。  もちろん生活保護の財源の問題ももっと深刻な問題として背後にありますので、その ことを考えますと、入り口を小さくして一人一人の受給期間が長くなってしまう、つま り病気や障害をお持ちで、あるいは高齢で長く生活保護にかかるという人を割合的に多 く抱え込むのか。そうではなくて、割合短い期間で出る可能性のある層をある程度抱え 込んで、それを早く出すというようなプログラムをつくるのか。それらをどういう割合 で持つかという辺りが絡んでくると思うのです。  それで、多分事務局の御心配は、入り口でたくさん入れて自立支援がうまくいかなか ったらどうしようということだろうと想定されるのですが、ここが日本の生活保護法の 一般扶助としての大変難しいところです。  しかし、例えば財政の問題を見ますと圧倒的に医療費が多いわけです。半分以上が医 療費で、しかも入院ですから、そのことを少し考えますと、特に若い人の低所得や失業 問題に短期に対応するような制度として社会的に機能を果たすという面はもう少しあっ てもいいかなと、私は常々感じております。  ですから、入り口を広げるという場合に、例えば今の3か月とか6か月ということを した場合に一体どういう層が広がってくるのか。むしろ高齢層がもっと入るということ になるのか、若い層が来てくれということになるのか。そこの見極めはなかなか難しい と思います。  そこで、岡部委員の御議論はむしろ出口の問題です。出口で、生活保護をもらってい ながら6か月ずっと持っているというのではなくて、それでやってみろという形で一時 停止するということです。これは自立をスムーズにしてもう一回入ってこないようなや り方に使うということかと思います。その場合は、さっき松浦委員がおっしゃったよう に、何のための3か月とか6か月なのかということがそういう意味であるわけで、いろ いろな機能があって最初のアプローチのときの生活費、それから受給中の生活費のいわ ば運転資金的な要素、それから自立していくときの試行期間の非常に不安定な時期を乗 り切るような資金というような位置付けは可能だと思うのです。だから、そういうこと を考えたときにどのくらいが適当かというような判断になるかと思います。  御心配な点はそのとおりだと思います。ただ単に入り口を広げただけで問題が解決す るというほど単純ではないというのはおっしゃるとおりだと思います。 (岡田保護課長)  1点目は、保有している預貯金の範囲を広げれば自立に本当につながるのかどうかと いう点です。最初の方に書いてある「早期支援」とは、生活困窮に陥るいろいろな理由 に対して、基本的にはその原因となるものをどう解決していくかという問題だと思いま す。預貯金の範囲を広げることによって本当に自立しやすくなるのか、我々としては十 分説明できないと考えます。  それから2点目は、年金との関係についてどう考えるかという点です。これは変な話 なのですが、生活保護基準は、住宅扶助まで考えますと、基礎年金よりも高くなるわけ ですが、非常に不公平ではないかと、現実として我々は非常に厳しい批判をいただいて います。そのときには、年金とその生活保護ということを比較したときに、基本的には 生活保護と年金というのはその性格が異なります。生活保護というのは預貯金を使い尽 くしてから入っていただきますという御説明をさせていただいているわけです。そうい うこととのバランスみたいなものについて、いろいろな批判もございますので、お考え いただく必要があるのではないかという気がします。 (岩田委員長)  では、後藤委員どうぞ。 (後藤委員)  ここでの議論は生活保護制度に関する議論には違いないのですが、できれば他制度に おいてこういうふうにやってもらわなければならないということをきちんと申し述べる 場としても活用したいと思います。  例えば今、年金というお話が出ましたが、他法優先というときの他法が、今のところ はいかに貧しいものであって、そのために生活保護がこれほどいろいろなものを抱えな ければならなくなっているということを、他法の方に問題として突き付けることができ ると思います。  生活困窮の原因と回復の方途がはっきりしているような問題、例えば子どもの養育で あるとか、失業であるとか、高齢であるとか、障害であるとかに関しては、それをカバ ーするような手当や法制度を、まずはきちんと整備してほしい。もしそれができれば、 それ以外の、何とも言いがたいジェネラルな問題を抱えて、生活困窮に陥っている人た ちを対象としたものとして生活保護制度を考えることができる。そのような形で整理し たとすると、ここで言っている預貯金、ジェネラルないろいろな理由で生活困窮に至っ た人たちにとっての預貯金の意味というのは、他法の対象となっている人たちの預貯金 の意味とは若干ずれていることが理解されると思います。  生活困窮の原因と回復の方途がはっきりしている人たちの中にはは、現在消費を多少 高めて貯金を抑える、つまり、自分の技能向上のために使ったり、子どもの教育のため に使ったりという形で預貯金が持てないがいる。そういう状況で頑張ろうとしている人 たちにはその意思を支えるような目的別の手当を支給すべきです。  それに対して生活保護にやってくる人たちの特徴はいろいろな意味での社会資源がす べて枯渇してしまっている点にある。友人に頼ることもできないし、今までのキャリア のつてを頼ることもできない。そういう状況の中で、お金だけが社会との関わりを持つ すべてである。このような人たちに対してはたして預貯金というものをどのくらい残す べきか。ここにきて、初めて生活保護という制度の中に入っている人たちの自立の問題 を真正面から論ずることができると思います。その人たちにとっての自立の問題という のは、救うべき原因と回復の方途がはっきりしている人たちにとっての自立の方法とは やはりちょっと性質の違うものであるという形で議論が進めることができるのではない かと思います。以上です。 (大川委員)  今の事務局の方からのお話ですが、私が主張しているのは資産保有を認めれば自立が できると申し上げているつもりでは全くありません。  例えて言うならば、こういうことが言いたいわけです。病院に非常に具合が悪くなっ てぎりぎりになって来るよりも、少し予兆があったときに早く来て治療をした方が、結 果的に医療費は安くなるという話があります。つまり、医療の世界においては早期発見 早期治療という考え方があるわけです。先ほどの生活保護の預貯金の枠を広げると保護 受給世帯が増えるではないかという御心配はそのとおりだと思うのですが、ただ、それ は長い目で見れば、早目に救って早目に仕事捜しを手伝って当座の資金を生活保護とし て出した方が、生活が破綻して貯金も全くなくなるような状態になって長々と保護を受 け、だんだん就労意欲もなくしていくということを防ぐことになるのではないか。  そういった意味で、生活保護は今、後藤委員が言ったように他法が非常に貧しい中 で、今とりあえずそういう役割を果たさなければいけないのではないかという意味で言 っています。ですから、決して預貯金を広げたらどんどん自立するということではなく て、先ほどから言っているとおり自立支援の仕組みというものをちゃんと一方で付けな ければいけない。一体のものとして論議する必要があるということを申し上げてきたつ もりです。  それともう一点、一時扶助の話が出ていますが、これも先ほど委員長の方からお話が ありましたが、今の生活保護というのはとにかく全部丸裸にして、たとえて言うならば 全部服を脱いでもらって、それからあなたの体に合った服を御用意いたしますよという 仕組みになっているわけです。  しかし、そうではなくて今、持っているものをとりあえず生かしてもらう。つまり、 全部裸にしてその後、あらゆるものを後から給付する仕組みの生活保護ではなくて、む しろ今、自分が持っているものを生かす。言い換えれば「自立」という言葉ではなくて オートロノミーとしての「自律」という考え方に立って生活保護制度を運用していくと いう考え方を入れていく必要があるのではないかと思います。そういうものがないと、 次の救護施設の論議についても自立という方向が見えてこないと私は思っています。  ですから、例えば一時扶助である程度のことができるから預貯金を認めなくてもいい ではないかという考えから、ある程度自分の持っているものを生かしてもらって、その 代わり一時扶助とか、そういったものには頼らなくても、ある程度自分の融通、自分の 判断で自立をしていけるような制度に変えていくべきではないかということが、私が先 ほどから言っている主張です。 (岩田委員長)  年金に関しては、基礎年金が創設されたときに年金の議論で、年金というのは一体最 低生活の保障をするのか。それとも、かつての所得の一部を代替的に支給するのかとい う議論があったわけですが、その場合に必ずしも年金が最低生活保障をするということ をきちんと定めなかったと私は理解しております。  だから、今のところは土台、機能が違います。基礎年金は最低生活を保障するという ことがきちんと明らかにされれば、ここまで生活保護が高齢層を抱え込まないで済む話 だろうと思います。ですから、そういうことも含んだ他法の環境の中で、一般扶助とし て生活保護制度があるということは非常に困難なことと思います。いっそ失業扶助と分 けた方がいいのではないか。若い層と、高齢や働けない層の2つの扶助に分けてしまっ た方が、この辺の議論もすっきりするのではないかと思うことすらあるわけです。  結果として、いろいろ矛盾が当然出てきますし、生活保護法の位置といいますか、最 後のセーフティネットとして21世紀の日本社会の一番の底を支えるということをどうや っていくかというのは、そう簡単なことではありません。また、そう簡単に自立支援が うまくいくかどうかということも、確かに入り口を広げただけでは即自立につながると いうほど単純ではないというのはそのとおりだと思うのです。  議論が尽きないところで、ほかの点もありますので、この問題は自立支援の有り様と 絡めながら資産保有を合理的な範囲で決めていく。つまり、入り口だけ広げてたまって しまうという形ではなくて、出口を確保しながら入り口を広げていくという方向で進め ていくという体制をどう整えるかということがまずある。その上で、そういう体制との 絡みで、それが何か月というふうに言うかどうかは別ですが、例えば3か月程度の預貯 金、あるいは必要な資産の保有は認めていく。  しかし、もちろんそれが自立につながらない形で、ただ保有しているという状況を容 認しているわけではないという流れではいかがでしょうか。なかなか制度自体をもっと 根本的に変えるということでもない限り、皆さんが全員一致するような程度を決めるの は大変難しい問題かと思います。 (松浦委員)  その場合に、私は法律は素人ですからわかりませんが、個人の資産に制限を加えるこ とはできるのですか。 (岩田委員長)  例えば、どんな形ですか。 (松浦委員)  貯金にある程度の使い方について縛りはかけられるのでしょうか。 (岩田委員長)  これはどうでしょうか。前も凍結とか、いろいろな案も出ました。この辺はいかがで すか。 (事務局)  これまで一定の資産を持っていただく場合、例えば災害に遭われた方が災害の見舞金 について、将来の家屋の再建等のために保有を容認するような場合があります。そうい った場合においては、適当な機関に預託をしていただいて、そういった目的、保有を認 めた目的どおりに使っていただく担保が取られています。ですから、そういった措置が 必要ではないかと考えます。  ただ、一方で数が多くなってくると、またこれは事務所の預託がきちんとされている かなど、そういった管理の問題がまた難しい問題として出てくると認識しております。 (松浦委員)  その辺は、個人の財産ですから、それにこういうふうに使いなさい、こういうふうに 使いなさいと言うことが民法上できるのかどうか。 (大川委員)  実務的には、そういう場合は権利擁護システムとして、特に知的障害者の方を年金の 管理で周辺の方に悪用されないように一時的に預託するという制度もできています。そ れは今、言った民法の考え方も一通りクリアした上でシステムとしてできていますの で、私も今、事務局の方から預託制度のお話がありましたが、資産を保有するというこ とがある程度容認された中では、そういった預託の制度あるいはシステムの整備という ことも不可欠ではないかと考えています。 (岩田委員長)  それは、全体として例えば自立支援計画とか、生活再建計画とか、そういうものをき ちんと立てた上で、当事者の方と福祉事務所がよく相談して決めていくべきです。例え ば、ケースによってはそういう預託といったことが必要だとか、ある場合にはある程度 その裁量で任せた方がそれはできる世帯だと判断できるとか。この自立助長のケースワ ークというのは本来的には家計指導も含まれておりますから、当然そうした意味での助 言とか、最初の計画をするときにいろいろ生活設計をどうしていくかというような中に 組み込んでいくということは当然あり得るし、そうすべきだろうと思います。  それでは、次の稼働能力の活用の方に移りたいと思います。時間がだんだん押してき ました。この点は布川委員が資料をお出しになっていますが、御発言されますか。 (布川委員)  何度か繰り返しており重なるところもあるのですが、一応私なりの考え方をもう一度 述べさせていただきます。資料の3です。  今のお話とも関わるのですが、資産に次ぐ課題として、今の日本の社会状況で働き方 が大きく変わってきている中で、生活保護がどこまでやるのかを決める上で最後に残る 問題として、稼働能力の活用をどう判断するかということがあると思います。その際、 基本的には自立支援という大きな前提に立つならば、入り口を広げ、またなるべく早く 出ることのできる生活保護に改めていくのであれば、このような見直しが必要なのでは ないかということを繰り返し述べてまいりました。  もう一つの意味として、入り口の申請段階で、申請者の方と現場のワーカーさんとの 間の人間関係をつくる上でも微妙な、大事な問題であります。お互いの信頼ができるか どうかはここに関わってくると思います。お互いに信頼できないままに自立の支援など はあり得ないわけです。自立の意欲も出ないということにもなってしまいますし、支援 も形だけということになってしまいます。その辺にも関わる問題かと思います。  それでは、資料の1枚目です。今までの繰り返しにもなるのですが、稼働能力の活用 ということに関わっては幾つか判断することを分けておいた方がいいと思います。1番 目に、勤労能力とか稼働能力の有無の判断をどうするかということが当然あります。こ れは精神的、肉体的な条件とか、家庭の条件を下に、その人が働けるかどうかという判 断ですが、それをもう少し丁寧にする必要があります。  2番目は、その人に合った仕事がどんな仕事かの判断です。これももっと丁寧に見て いくシステムをつくり、その上で自立支援をしていくのが大事ではないかと思います。1 番目は本人の側の問題ですし、2番目は仕事がその人に合っているかという仕事の問題 です。  3番目に、さらに大事なのは、ではその人が稼働能力を活用しているから保護を出す か、出さないか、保護を認めるかどうかの判断です。これは(1)(2)と別の判断で す。この(1)(2)(3)の三つの判断があり、(3)が稼働能力を活用している か、していないか、保護を出す、出さないを決める判断です。この3つの区別をしっか りすることが前提であり、大事ではないかと思います。  その上で難しいのは、(3)の稼働能力を活用しているか、していないかという判断 です。またその中に(1)から(3)の三つバリエーションがあります。現場では3つが混在 しているのではないかと思います。「(1)稼働能力を活用しているから保護を出す」と いう判断をするか、「(2)稼働能力を活用していないから保護を出さない」という判断 をするか。これは微妙ですが、大分中身が違ってくる判断だと思います。稼働能力を活 用している人には保護を出すのか、稼働能力を活用していない人には保護を出さないの か。その判断のどちらをするのかということを実は明確にしないといけないのではない かと思います。  現状ではそれだけではなくて、「(3)稼働能力を活用していないとは言えないから保 護を出す」という判断もしています。前回事務局からお示しいただいたように、「意思 があるが働く場がない」人に対しては、「稼働能力を活用していないとは言えない」と いう判断をしているのです。この3つの判断が入り組んでいて、それぞれ何を基準にし て、誰がどう判断するのかがとても面倒になっていると思います。  いずれにせよ、(1)から(3)のどれを判断していくのか、何を元に判断するのかという ことが大事なところです。「(2)稼働能力を活用していない人には保護を出さない」と いう判断をするのが原則ではないかと私は思います。2に挙げたとおりです。  では、その「稼働能力を活用していない」ことをどう判断するかです。2枚目に移り ます。例えばパートの就労をしている人は稼働能力を活用しているわけです。すなわ ち、稼働能力を活用していないかと言われれば稼働能力を活用しているわけです。もう 少し稼働能力の活用ができるのではないかと思われる人もいるかもしれませんが、「稼 働能力を活用していない」わけではありません。  失業をしている人は仕事を探していても仕事がないわけですから、稼働能力の活用の しようがないわけです。そういう人たちに対して、この「稼働能力を活用していない」 という判断をどうするのか、ということになります。  当然見た目では、稼働能力を活用していないわけですから、その人に合った仕事とし てこういうものがあるとか、こういう機会があると自立援助をしていくわけです。アル バイト等で稼働能力をある程度活用している人や、失業していて「稼働能力を活用して いないとは言えない」人たちに対して就労支援をしていく。それでもやはり仕事に就く 気がないとか、就労を拒み続ける、何もしないという場合には、その人は「稼働能力を 活用していない」と判断する、こうしたシステムをつくっておくことが前提だと思いま す。そのようなことをこの間、繰り返して述べさせてもらいました。  2ページ目の下に移ります。これはもう少し具体的なイメージです。特に保護の申請 時の問題です。ここに挙げましたように申請時は最低生活を下回っている状況の中で、 いろいろな壁にぶつかっているわけです。生活費がない、家賃も払えない、借金取りか らの追い立てがあり気が気ではない、職安に行っても電話が止められていて連絡先が書 けないとか、そういう状況が申請時には当然あるわけです。今まで言ったような稼働能 力を活用していないということをどう判断するかという一般的な議論プラス、特に保護 の入り口のところでは、こうした状況の中にあるということをふまえ、稼働能力の活用 ができていないという状況の中でもなるべく早めに保護を開始していくことができない ものか。生活の困窮という現状を元に判断していくということが優先されてしかるべき ではないかと思います。 (岩田委員長)  ありがとうございました。では、どうぞ。 (石橋委員)  この間も私は発言したのですが、生活保護法制定時に書かれた小山先生の本を見てい ると、受給資格と、今回のように保護実施の要件として規定することの違いが書かれて います。受給資格とすれば今言ったように欠格事由を設けなければならない。だから、 保護実施の要件として規定することにより多少の弾力性を持たせることにしたとはっき り言っておられて、その多少の弾力性というのは布川先生が言われたようなことと思い ながら聞いておりました。  それからもう一つ、4条の中に活用という言葉は意識して入れたと言われています。 それは、稼働能力の存在だけで保護を受けられないというような判断はしないようにと いうことです。そういうことから考えると、その人のもちろん年齢とか、経歴とか、健 康とか、家族とかというようなことをよく調べて、そのケースごとに判断をしていかな ければならない。  名古屋市林訴訟の最高裁判決のように、就労可能性だけでやれば、それはすべてある ということにもなりかねないので、やはり私は生活困窮に陥っているということで生活 保護を受けられる。そして、受けながらいろいろな就労援助をやった結果、本当に仕事 がある、あるいはその人に向いているのになかなか仕事に就かないという状態のとき に、今までの支給をどうするかという議論だと思うのです。だから、別な言い方をされ たと思いますが、私も大体布川先生と同じような考え方を持っております。以上です。 (岩田委員長)  それで、具体的に今日、例えば事務局の方からお示しいただいた24ページに現行の評 価方法というものがありますが、こういうものとの関係でどこをどう直せばいいかとい うか、どういうふうにしていけばいいかということで具体的な御提案がございますか。 (大川委員)  稼働能力を活用しているか、していないかというのは、訴訟や、あるいは審査請求で もかなりいろいろな判例といいますか、審査例があって、私も一通り見たのですが、や はりその中で具体的な評価方法を示すこと自体が難しい。個別の人の条件やいろいろな 時期によって、稼働能力を活用しているかどうかという評価はかなり分かれてきます。 そうすると、基本的にはきちんとその保護申請があった人の生活条件に対するアセスメ ント、それからそのアセスメントを受けて自立についてきちんとプランニング、計画を 立て、そして評価をするという仕組みを生活保護の中に入れなければいけない。これは 布川委員のメモの中にも入っていると思いますが、そういった仕組みをつくらなければ いけないと思います。  ただ、一番難しいのは、やはり保護申請に来て、かつ最低生活を下回っているとき に、アセスメントは実務上不可能です。一見さんですね。初めて来る人に、あなたは働 く意欲があるのか、働く能力があるのかと聞いても当然わからない。本人もよくわから ないし、私たちも聞いてそれが客観的なものなのかどうかわからない。もし、例えば入 り口で確認するとすれば、稼働能力の意思があるかどうか。ここにまず着目した上で、 意思があるという方に対しては、生活保護を出す代わりにきちんとした自立に向けた方 向性を出してくれ。それは契約の考え方になってくると思いますが、そういう形でする べきだと思います。  ところが、実際には今は、稼働能力を現に活用しているか、あるいは、稼働能力を活 用しているという状況が確認できるかどうかという入り口にエネルギーを注いでいま す。例えば、1つはホームレスのときに今、石橋委員から例がありましたが、それこそ 家もない、お金もほとんどない。仕事探しは何をしているのか聞いたら、駅の片隅に 時々手配師が来るからこれをじっと待っている。これも稼働能力を活用していると言え るのか言えないのかは判断が割れてしまいます。そこのところで最低生活保障というと ころが左右されてしまうのがおかしいのではないかというのが、恐らく布川委員の出さ れた趣旨かと思います。  ですから、私はやはり入り口では稼働能力の意思の確認をする。その上で、なおかつ 先ほどから繰り返し申しておりますが、自立への仕組みとしてアセス評価と、それから アセスメントといった仕組みをつくる。ただ、これは現行の福祉事務所だけでは大変困 難な課題かと思いますので、先ほど言いました法制化の問題も含めてですが、第三者機 関であるとか、あるいは労働行政の側の協力の上で、人のアセスメントや立案評価の仕 組みをつくるということで整理をするのがよいのではないかということが私の意見で す。 (岩田委員長)  今、入り口のところで無差別平等の原則と補足性の原則とのいわば微妙な関係を、先 ほど石橋委員がおっしゃったように、資格ではなくて要件という形で切り抜けてきたこ の制度は、非常に奥の深いといいますか、重構造みたいなものがあるわけです。したが って、逆に言いますとそれが資格になってしまったりするというようなことが現実的に はかなりあるわけですね。  例えば、65歳以上ならば保護を受けられるというようなことが、はっきりその辺で言 われています。そういうようなことをなくすにはどうしたらいいかということで、保護 受給中に自立を促していくために働ける人が働けるようにするというようなところで見 ていく評価方法と、最初の申請時に見る見方は、ある種の二重基準でいいのではないか ということですね。それはどうでしょうか。 (布川委員)  私が言いたいのは、何を判断するかというときに、「稼働能力を活用しているから保 護を出す」という判断は現状をもとにするとできないということです。失業している人 は、稼働能力の活用をしていないわけですから。  具体的な基準をつくって、自治体として失業して稼働能力を活用できていない人を救 おうとしているところもあります。求職活動を週にどれだけしているかの基準をおいた りしています。しかし、原則はそうではなく、何を判断すべきかと言えば、「活用して いない」ことであり、あなたは活用をしていないから保護は出しませんという判断をす るということだと思うのです。  そのためには、その人に合った仕事を提供し、「これだけ自立の支援をしてきたの に、結局それにこたえていないではないか」というやりとりができる制度をつくってお くことが前提だと思います。これはどちらかというと受給中のイメージです。保護が始 まるまでには先ほど大川委員も言われたようにそこまでのやりとりはできないわけで す。時間がないということと、当事者の方もすぐに職探や就職ができる状況ではないと いう方もいっぱいいるわけですから。入り口のところは違う基準でもいいのではない か、違うやり方でもいいのではないかと思います。 (岩田委員)  では、八田委員どうぞ。 (八田委員)  アメリカのやり方は、最初はとにかく入り口では支給する。同時に職業を紹介し続け るが、受給者はそれを断ってもいい。ただし、2年が過ぎたら紹介した職業は絶対引き 受けなければだめで、引き受けなかったら支給停止というわけです。  この方法を採用すると、先ほどの問題を非常にうまく解決できると思います。それで は生活保護の予算が足りないというのならば、例えばそれを2年間ではなくて3か月と か半年にして、半年後はこちらで紹介した仕事をちゃんと引き受けてもらうということ にすれば今、御議論になっている問題はかなり解決すると思います。  ただし、アメリカはハローワークがないですから、職業紹介を生活保護の担当部局が 自部局でやるのだと思うのです。きちんと探してきてやる。日本はハローワークでいい のかという問題もあります。例えば3か月風呂に入っていないし、散髪にも行っていな いホームレスの人がハローワークに行っても職はありそうにない。散髪もしてあげて、 それなりにケアした上で紹介すればひょっとしたら職があるかもしれない。働けという 側がちゃんとそのように紹介できる体制を組めるかどうかということにも関わっている のではないかと思います。 (田中委員)  今の稼働能力の活用の問題で、こんなケースを最近取り扱っています。ちょうど半年 ほど前に1人の50歳代の女性の盲人の方、視覚障害者が私どもの施設に入ってまいりま した。この方はもともと鍼はないのですが、あんま、マッサージの資格を持っていま す。長い間、仕事をしている間に腱鞘炎までいかないのですが、ちょっとその仕事が在 宅の中で難しくなってしばらく仕事ができないということで、私どもの施設に7か月か 8か月前に入ってきました。まだ50歳代ですから当然マッサージ等の資格を持っていれ ば十分稼働能力としては可能性はあるわけです。  その稼働能力をどういうふうに発揮するかということで、当然働けなくなった原因と して、マッサージなどはかなり力を入れますから、手が痛くなる。それをまず一つは医 療的に癒すという問題もあるのですが、もう一つは精神的なものもかなりあるものです から、いずれにしもあなたは資格はあるから働けるのではないかと言っても簡単にいか ない問題がしばらく続いて私どもの施設に入ってきたのです。問題はこれを受けた後で 施設ではそれなりの生活指導というものをやりますから、この資格を生かすことがいか に大事かということを順々に説いて、ようやく半年過ぎて、手の方もある程度落ち着い てきたからやってみたいということで、つい1週間ほど前にマッサージの専門の先生に 技術がまだ大丈夫かどうか見てもらいまして、まあいいでしょうということで、この7 月から私ども法人の中に老人ホームがあるものですから、そこで働くとそれなりの収入 を得られるわけです。当然、生活保護は切られるようになるのですが、最初は資格を持 っているがやらない理由がはっきりしておりますし、その段階では経済的に相当困難性 がありますから、これはやはりきちんと入れてあげるべきだし、そういう形で入ってき たわけです。  しかし、7、8か月後にようやく本人もやる気が出て、来月から働くわけですが、そ うなれば確実に生活保護の脱却ができるわけです。今まで公費をそれなりに使っていた ものが、稼働能力を現実に働かせた場合に生活保護から抜け出ることはできるわけで す。私は今までの議論を伺って、はっきりとした稼働能力を活用できる条件と、それか ら他の機関を利用しないとせっかく働きたいという意識があってもなかなかできない場 合と、両方あると思うのです。ですから、やはり入り口の段階ではかなり生活指導とい うものを積極的になさって、いずれは稼働能力のこの点は十分に生かしていくというこ とで、約束ということはちょっと難しいとは思うのですが、そういうことをきちんとお やりになってやっていけば、かなりの方が生活保護を活用しながら、しかも十分にそれ を元にして自立ができるのではないかと、施設側から見て感じました。そんなケースが あります。 (岩田委員長)  今までのお話ですと、入り口のところというのは経済的困窮をむしろ前面に出してい て、稼働可能年齢層の方に対してはその稼働能力の活用の意思を確認する。今の田中委 員のお話だと、生活保護を利用しながらいわば生活再建をしていくときに、やはりその 能力を活用しようというようなことをはっきり約束するという形で持ち込んで、そして 受給中の稼働能力の活用について積極的な支援をしていく方向が現実的ではないかとい うような御意見でよろしいでしょうか。 (岡部委員)  私も、入り口のところでは就労の意思の確認でいいのではないかと思います。それ で、保護課の方で推進していただいている就労支援の相談員の設置というのは、ある意 味では福祉事務所の中にそういう就労に関する相談と、その支援のプログラムを推進す るという2つ、人とプログラムを設置して就労の自立という形につなげているのです。 ですから、ある意味では就労の意思の確認をして、御本人が十分御自身で求職活動をし て職に就いて経済的な自立を果たすことができる環境にあり、御本人もそういう状態に あるということならば別ですが、そうでなければ意思の確認をして福祉事務所の方でそ ういう条件を整備するという方向で考えるべきではないかと考えています。  私自身は先ほど言ったように田中委員と同じで、意思の確認をして、能力の活用ある いはその開発をするのはその場の中でしかるべき職員配置とプログラムを用意してやっ ていくのが流れとしてはいいのではないか、筋としてはいいのではないかと考えます。 ですから、この中で活用しているかどうかというところまでは判断をしなくてもいいの ではないかと考えております。 (岩田委員長)  そうしましたら、割合この点に関しては類似の意見といいますか、ほぼ同じような御 意見だと思いますので、時間が今日はなくなりましたが、今日は級地の問題まで議論で きないことに多分なると思いますが、保護施設について残った時間で御議論していただ きたいと思います。  田中委員から資料を出していただいていますので、大変申し訳ありませんが、手短に お願いいたします。 (田中委員)  あと15分しかありませんので、仮に私が短くやっても余り十分な議論はできないので はないかと思うのですが、今日できなければ次回ということにもなるのかと思います。  前回委員の皆様方からいろいろな御意見をいただきました。それを受けて、私ども全 国救護施設協議会の中にございます救護施設の在り方検討委員会で議論いたしました。 それをまとめたものが資料2として出させていただいたものですので、これについてで きるだけ簡単に述べさせていただきます。これは読んでいただけば特に説明をすること でもないのですが、若干前回と重複する場合もあると思いますが、お許しいただきたい と思います。  最初にも述べてありますように、今の日本の福祉施設の体系が私どもから見れば、そ ういう分析がいいかどうかは別として、現実的に限りなくどんどん専門分化していると いう感じがいたします。それが、より専門的な対応ができるであろうという一つの考え 方で、それはその考えを特別に否定するものでもございません。  しかし、それでも専門分化したそれぞれの専門施設に該当しない方、あるいはいろい ろな重複等のためにそれぞれの専門施設が、これはうちにはちょっと重複なので受け入 れられませんとか、今の体系の中で施設利用が困難な人がどうしても出てくる、いわゆ る狭間の中に置かれた人がかなり社会的に存在するわけです。いろいろな方々を受け入 れているのは保護施設、救護施設の一つの大きな特徴でもあるのです。  前回の指摘の中に、本来は他の福祉法の専門施設が整備されていけば、必然的に生活 保護の中にある保護施設は役割を終えていくだろう、当然そうなるであろうという御指 摘がありました。これは別に今に始まった議論ではありませんで、30年前、40年前から ずっと言われてきた一つの考え方です。しかし、現実的には他法の専門施設がどんどん 増える中でも、保護施設の一つである救護施設がかなり同じようなペースで増えてきて います。これは、やはり我々の側から見るとそういう需要があった。社会のニーズがあ った。しかも、すべてのあらゆる障害者にその門戸を開いているところが利用者の方々 の真のニーズに対応できた。即応的な対応ができたと考えております。それが現実の今 の保護施設の実態だろうと思います。  そこで、前回の御議論の中にもありましたように、確かに形はいろいろな障害者を混 合的に受け入れております。ある意味では混合入所といいますか、昔はよく混合収容と いう形で言われたのですが、今、収容という言葉は使いませんので、混合利用というこ とです。  しかし、それは生活保護法第38条にありまして、3障害の方々はもちろんですが、そ れに加えて重複障害あるいはさまざまな生活上の課題をたくさん背負った方々を現実的 に受け入れているのが救護施設です。ここにも書いてございますが、アルコール依存 症、ホームレスとは言わないですが、一応ホームレス状態の方々、あるいはDVの被害 者、多重債務を抱えた方々、いわゆる生活障害に類似した、そういう方々をも3障害に 加えて受け入れているのが今の救護施設です。それは資料2にも出ているわけでござい ます。  このように、そういう方々を受け入れて現実に自立支援をやっているところに、実は 救護施設の専門性の特徴があるわけです。ただ受け入れて受け入れっ放しということは 全くありません。そういうことで、他の福祉法の専門施設にはないような方々を受け入 れて生活指導あるいは自立支援等をやっているのが救護施設の専門性だと思います。そ んなことで、私どももこの方向は今後も必要ではないだろうかと思います。  資料の2ページの方へ入っていきますが、そういうことで現実の今の保護施設は資料 の3にもありますように今182施設ありますが、全国平均で利用率が100%を超えている 施設は余りほかにありません。この数字はどういう意味なのか、いろいろな考え方はあ りますが、これはやはり需要が強いということ、必要性が強いということを私どもは受 け止めております。  しかも、ただ入れてそのまま利用率が100%を超えているということではなくて、資 料の方にもありますように、実は昨年度実態調査をいたしましたところ、1年間に 2,326名が施設を出てさまざまなところへ出ているわけですね。これは、1万7,000名 の人数のうち1年間に2,300名も施設を出て在宅へ戻る、地域に行く、その他もろもろ のところへ出るというのはかなりの数字だと思うのですが、その中に在宅復帰者あるい は地域生活に戻った人が753名という実態の数字が出ております。これは退所した2,326 名の30%以上の数字になっているわけでして、これが現実の地域移行ということで一つ の成果だと思います。その中にもやはり次から次へと入所依頼がありまして、全国平均 が依然として100%を超えているということでございます。  今後、救護施設の中に通所事業の問題、あるいは平成16年度からスタートいたします サテライト型の救護施設の設置、そういう居宅生活の訓練事業等が新たに設置されるわ けです。そういうものともちろん一体なのですが、いよいよ救護施設を利用なさる障害 を持つ方々の自立支援をかなり精力的にあるいは効果的にやらなければならないという のが、私ども全国の救護施設関係者の考えでもあるわけです。  そういう意味で、私はまず救護施設にも救護施設独特の専門性がきちんとあるという こと。それから、現実に確かに専門分化しておりますが、そこに当てはまらない人、狭 間の中にいる人がやはり起きてくる。そういう人たちに門戸を開くという点で、保護施 設の大きな役割が今後ともあるのではないかと思います。そういうことを踏まえて、今 後の保護施設の在り方について議論いただければ大変ありがたいと思っております。  もう一つ最後に申し上げたいと思います。これからの21世紀に向けた保護施設の在り 方として、いろいろな障害を持つ方々が一緒に生活をするということで、昔は混合収容 と言いました。しかし、今、私どもはいろいろな方々が互いに支え合うという非常にノ ーマライゼーションの精神にのっとった生活が施設の中でもできている。ある意味では 非常に社会参加をする一つのサンプルといいますか、そういう生活も救護施設ならでは のことだと思うのです。これは決して我が田に水を引くつもりはありませんが、現実に 他の種別にないような利用率100%以上というのは単に抱えているだけではありません。 やはり需要が強いのです。そういう点は、全国の実施機関との連携の下で自立生活も含 めて生活保護、被保護者も方々の、しかも障害を持つ方々の生活改善にかなり大きな役 割を今まで果たしてまいりましたし、これからもそういう点では大きな役割を持ってい るのではないか。そういう観点で御議論いただければ大変ありがたいと思っておりま す。ちょっと長くなりましたが、以上です。 (岩田委員長)  田中委員の予言どおり時間がきました。前半に大変時間がかかってしまいましたの で、本当は今日は級地の問題を中心にやろうと思っていたのですが、持ち越しというこ とにいたします。  今の保護施設については先ほどの事務局からの御説明もありますように、もちろん救 護施設だけの問題ではございませんので、前回根本委員から御発言のあった医療保護施 設ですね。それから授産施設、それから今の救護の変貌を見ますと更生施設と救護施設 の区別はどこでするのかというような問題とか、実は次回に全部時間をかけてやっても かけ足りないような根本的な問題がいろいろあります。  また、前回申しました決定と措置との関係ですね。その辺りの問題も依然としてある ので、どの辺までいけるかわかりませんが、次回、若干の時間はこのためにまた取りま して、これと級地と、次回はまた別の問題が多分出てくると思いますので、それをやる ということで今日はお許しいただきたいと思います。よろしいでしょうか。  それでは、最後に前回起草委員会の提案と、それから関係機関、団体からの意見の反 映をどうするかについて委員の方から御意見がございました。1つは、関係団体から意 見を伺うということについては時間的な問題もございまして、最終的な取りまとめを委 員会でした後に厚生労働省としてその関係団体等の意見を聞いた上で全体的な制度見直 しというところにいこうということかと思います。  その点と、それから起草委員会の設置の点ですね。その点を含めて、事務局の方から 御説明いただけますか。 (事務局)  今の点でございますが、前回関係団体の意見の反映ですとか、起草委員会の設置につ いて御提案がございました。いずれの点もスケジュールの関係の問題はあるわけです が、まず関係団体の意見の反映という点につきましては、前回も事務局の方から御説明 をしましたとおり、本専門委員会の最終的な取りまとめを受けまして、厚生労働省とし て前回お話のあった民生委員ですとか、実際に業務に当たる地方公共団体といった関係 の方々の御意見を聞いた上で、17年度以降の見直しに反映させていきたいと考えており ます。  また、起草委員会の設置については、どのような形であれ各委員のこれまでの御議論 ですとか御意見を踏まえた素案を準備いたしまして本専門委員会で御議論いただきたい と考えております。起草委員会を設置いたしましてまずそこで素案を取りまとめるべき という御意見でありましたら、日程の確保の関係がございますが、事務局としてはその 方向で調整をさせていただきたいと考えております。以上です。 (岩田委員長)  今の2点について、いかがでしょうか。関係団体からの意見は委員会としては報告を まとめた後で厚生労働省としてそれを伺うということで、起草委員会については委員の 方々の御異論がなければ設置という方向でいきたいということですが、よろしいでしょ うか。  それでは、御異論がないようですので、起草委員会は設置という方向で事務局で調整 していただくということにしたいと思います。 (事務局)  1点、先ほどの中身の議論の関係で稼働能力の活用の話です。稼働能力の活用は、意 思だけを見ればいいのではないかというような御議論であったかと思うのですが、仮に そうした場合において法律上の関係で申し上げますと、法の4条で掲げております稼働 能力、その他あらゆるものを最低限度の生活のために活用することを要件として保護開 始及び実施を行うとなっておりますと関わってまいります。これまでの御議論の中で、 開始時と保護受給時においてアセスメントがなかなか違うような問題というのは御議論 があったとおりかと理解しております。しかしながら、稼働能力の活用の意思だけを見 るというのは生活保護法4条1項の能力の活用を要件として行われるという観点から見 てそれがうまく当てはまってくるのかという点については極めて慎重に検討しなければ ならない部分があると考えておりまして、その点だけ最後にコメントさせていただきま す。 (岩田委員長)  そうですね。もちろんさっき石橋委員がおっしゃったように、この議論はそれを踏ま えた議論なので、いわば解釈の相違ということかもしれませんが、大事な点ですので、 その点は次回に持ち越しということにいたします。たくさん持ち越しがあるのですが、 次回は今の労働能力の特に入り口の問題つまり活用のアセスメントの問題、施設の問 題、それから級地の問題を引き続き議論させていただくことにします。 (布川委員)  起草委員についてはどういうふうに選定されますか。設立は賛成です、自分がやらな い限りはという条件つきですが。 (岩田委員長)  事務局の御提案はいかがでしょうか。 (事務局)  今日の皆さんの起草委員会の設置の方向性を受けまして、次回の7月14日の委員会で そのメンバーについては御提案をするというような形になるのではないかと思います。 その点につきましては、委員長とも相談をさせていただきたいと思います。 (岩田委員長)  何か推薦とかございましたら、後で私の方にお願いします。  それでは、長時間御議論をありがとうございました。私の不手際で時間配分を上手に できませんでしたことをおわび申し上げますが、次回もどうぞよろしくお願いいたしま す。どうもありがとうございました。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)