04/06/22 医業経営の非営利性等に関する検討会(第3回)の議事録         第3回医業経営の非営利性等に関する検討会議事録 日時   平成16年6月22日(火)10時00分から12時00分 場所   東海大学校友会館東海の間 出席委員 石井孝宜、大道 學、川原邦彦、品川芳宣、田中 滋、豊田 堯、西澤寛俊、      松原由美、真野俊樹、三上裕司、山崎 學                             (五十音順、敬称略) 議事内容 ○田中座長  ただいまから第3回「医業経営の非営利性等に関する検討会」を開催いたします。委 員の皆様方におかれましては、ご多忙中のところ、本検討会にご出席いただき誠にあり がとうございます。まず、委員の異動についてです。西島委員が辞任され、代わって、 日本医師会の三上常任理事に委員にご就任いただきましたのでご紹介申し上げます。 ○三上委員  日本医師会の三上でございます。この度、4月の会長選挙の後、私が常任理事に就任 いたしまして、この委員会に入ることになりました。この検討会は知っている先生が非 常に多いということで、比較的安心してお任せして参加させていただきますので、どう ぞよろしくお願いいたします。 ○田中座長  それでは、議事に入りたいと存じます。当検討会は昨年中に2回開催し、出資額限度 法人についてのイメージをおおむね共有したところで、移行等に係る課税関係の明確化 が焦点となりました。このことは、昨年末の政府与党の税制改正大綱においても、出資 額限度法人について、課税関係の明確化を図ることとされました。これを受けて、事務 局を通じて関係省庁との間で課税関係の明確化に向けて作業を継続していただいたとこ ろであります。こうした状況については、昨年12月と本年3月末に、委員の先生方に中 間的にご連絡申し上げてきたと思います。本日は、こうした課税関係の明確化について の作業の進捗を受けて、本検討会としての議論の集約を図りたいと存じます。最初に、 事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○山下主査  お手元の資料について確認させていただきます。議事次第1枚紙があります。次の所 に委員名簿が入っております。それと、今回の座席表があります。資料ですが、いちば ん上に(報告書)(案)と書かれているもの、また「持分の定めのある医療法人が出資 額限度法人に移行した場合等の課税関係について」ということで、右方に「別紙」と書 かれているものがあります。右方に「参考資料」と書かれた図を1枚と、同じく右方に 「参考資料」と書かれた表になっている資料がお手元にあるか、ご確認いただければと 思います。 ○田中座長  報告書案ですが、前回までの議論を踏まえ、現行医療法の下で定款自治の範囲内で出 資額限度法人とすることについての考え方を整理してあります。また、課税関係につい て明らかにされたものも織り込まれております。委員の皆様方にあらかじめお目通しを いただくとともに、事前に伺った意見についての調整を経ております。事務局から読み 上げをお願いいたします。 ○山下主査  報告書案を読み上げさせていただきます。「医業経営の非営利性等に関する検討会」 (報告書)(案)。「出資額限度法人」の普及・定着に向けて。1.はじめに。○高齢 化、医療技術の進歩、国民の意識の変化や規制改革の観点を含めた各方面からの指摘な ど医療をめぐる現下の状況を踏まえながら、これからの医業経営の在り方について検討 するため、平成13年10月に「これからの医業経営の在り方に関する検討会」が設置され、 平成15年3月に最終報告書(以下「最終報告書」という。)がとりまとめられた。○最 終報告書においては、医療法人の非営利性・公益性の徹底による国民の信頼の確保、変 革期における医療の担い手としての活力の増進を2つの柱とし、医療法人を中心とする 医業経営改革の具体的方向が示されたところである。○この最終報告書に示された具体 的方向のうち、本検討会においては、特に、社団医療法人の出資持分に起因する非営利 性の問題について、公益性や経営の安定性の確保を図る観点を加味し、検討を重ねてき たところであり、対応の方策としての「出資額限度法人」の仕組みの普及・定着に向け、 とりまとめを行ったものである。  2.「出資額限度法人」の検討の必要性。○医療法人は、制度の創設以来50余年を経 て、その数は平成16年3月末で38,754に達し、そのうち出資持分のある社団医療法人が 大半(出資持分のある社団医療法人数:37,977、全医療法人数の98%)を占めるに至っ ている。○こうした出資持分のある社団医療法人では、その出資持分に含まれる払戻請 求権が高齢化した社員(同時に出資者であるものとする。以下同じ。)や、死亡した社 員の相続人により行使される例が生じるようになり、払戻額が高額に及ぶことなどによ り、社員の世代交代等に際して医療法人の存続そのものが脅かされる事態も生じている ことが指摘されている。○こうした問題についての対処の方向としては、既に、最終報 告書において、「将来の医療法人のあるべき姿である持分がなく公益性の高い特定医療 法人又は特別医療法人への円滑な移行を促進するための1つの方策として、出資額限度 法人(社員の払戻請求権を出資額にのみ制限した定款を有する社団医療法人)の制度化 が必要であるとする意見があった」とされているところである。○医療法人制度は、昭 和25年の医療法改正に当たり、「私人による病院経営の経済的困難を、医療事業の経営 主体に対し、法人格取得の途を拓き、資金集積の方途を容易に講ぜしめること等により、 緩和せんとするもの」であり「その営利性については剰余金の配当を禁止することによ り、営利法人たることを否定されており、この点で商法上の会社と区別されること」 (昭和25年厚生省発医第98号厚生事務次官通知)との趣旨で、剰余金の配当を明文で禁 止するなど、非営利性を担保しながら、医療の永続性・継続性を確保することを目的と した特別の法人として設けられたものである。したがって、この趣旨に則し医療法人の 大半を占める出資持分のある社団医療法人が出資持分の定めのない法人へ移行し、「非 営利性」を徹底しつつ、「医療の永続性・継続性」の確保を図る方向に沿って対処する ことが望ましい。○このような観点を踏まえると、社団医療法人において、直ちに出資 持分の定めのない法人に組織変更できない場合であっても、出資持分の払戻しが法人の 財産に及ぼす影響を限定すること、すなわち、社員の退社時における出資持分の払戻請 求権や医療法人の解散時における医療法人の財産に対する分配請求権を、出資額の範囲 に限定することは、(1)投下資本の回収を最低限確保しつつ、法人の内部に留保された 剰余金が出資額に応じて社員に払戻し(分配)されるという「事実上の配当」とも評価 されかねないと最終報告書が指摘するような事態の発生を防止し、医療法人の「非営利 性」の徹底に資するものであること、(2)社員の退社時や法人の解散時における払戻し (分配)される額の上限があらかじめ明らかになることで、医療法人の安定的運営に寄 与し、もって「医療の永続性・継続性」の確保に資するものであること、から望ましい ものと考えられ、特定医療法人又は特別医療法人への円滑な移行を視野に入れた促進方 策ともなり得るものである。  3.「出資額限度法人」の内容等。○2.の考え方に基づき、「社員の退社時におけ る出資持分払戻請求権や解散時における残余財産分配請求権の及ぶ範囲を、払込出資額 を限度とすることを定款において明らかにする社団医療法人」のことを、「出資額限度 法人」と呼ぶこととする。○その具体的意味については、同様に、2.の考え方に基づ き、「社員が出資者であり、出資持分を有している」場合を前提として整理すれば、そ れぞれ以下のとおりとすることが適当である。(1)出資額。金銭出資であっても現物出 資であっても、社員(出資者)が出資した時点の価額(出資申込書記載の額の等価)を 基準とする。なお、医療法人の設立後、追加して出資があった場合についても同様とし、 出資時点の差異による調整は行われないものとする。(2)出資持分の及ぶ範囲。解散・ 脱退時における出資持分を有する者への返還額は、出資持分を有する者それぞれにつき、 その出資した額を超えるものではないこととする。この「超えるものではない」とは、 物価下落により法人の資産価額が出資申込書記載の額の合計額より減少している場合等 においては、医療の永続性・継続性の確保を図るという観点から、出資時の価額を上限 として、現存する法人の資産から出資割合に応じて出資持分を有する者に返還すること も含まれるものであり、結果として、出資持分が解消された際の返還額が出資時の価額 を下回ることも生じ得ることとなる。 ○また、定款の定めにより設立した出資額限度法人が解散した場合における当該出資額 限度法人の残余財産の帰属については、出資持分を有する者に払込出資額を限度として 分配するとともに、払込出資額を超える残余財産については、社員総会の議決により処 分することが適当である。この場合において、払込出資額を超える残余財産の帰属先に ついては、都道府県知事の認可を得て、国若しくは地方公共団体又は租税特別措置法に 基づく特定医療法人若しくは医療法に基づく特別医療法人とすることが、医療法人の 「非営利性」の徹底の観点からは適当である。  4.「出資額限度法人」の普及に向けて関係者に期待される役割。(1)医療法人に おける取組。○医療法人(これを新規に設立しようとする関係者を含む。)は、本来、 医療法の規定を始めとする医療法人制度の趣旨・目的を十分理解した上で法令の範囲内 で法人自治の考え方に立ってその具体的在り方を決定することが期待されることは、言 うまでもない。○医療法人自らが、新規設立の際に定款の規定により、また、既設のも のについての定款変更により、「出資額限度法人」とすることは、法人自治に委ねられ た範囲における関係者任意の選択によるものであるが、「出資額限度法人」の積極的意 義についての理解の深まりに応じ、社団医療法人のうち「出資額限度法人」となるもの が増加していくことが期待される。  (2)医療法人の監督に係る行政における取組。○厚生労働省においては、現在も、 医療法人についてモデル定款を示しているところであるが、現行の社団医療法人のモデ ル定款では、出資額に「応じて」、脱退時の出資持分の払戻しや、解散時の残余財産の 分配が行われ得る規定ぶりとなっている。○このため、医療法人が、関係者の十分な協 議と合意の上、新規設立や定款変更により、「出資額限度法人」となることを選択する 際、その円滑な対応に資するため、上記3.の内容等を盛り込んだ「出資額限度法人の モデル定款(仮称)」を新たに作成し、周知を図るべきである。○他方、現行の社団医 療法人のモデル定款については、廃止を含めてその取扱いを検討すべきである。当面、 上記の「出資額限度法人のモデル定款(仮称)」と併存させる場合には、昭和61年改正 時にその他の注記部分とともに整理・削除された「解散時の残余財産の分配を出資持分 に『応じて』行う旨の規定ぶりとするか否かはあくまで『任意』のものである」旨の記 述を設けることが、最低限必要である。○加えて、委員から指摘のあったように、監督 官庁における定款の認可等の運用が、モデル定款からの逸脱を一切認めないといった硬 直的なものになっている例があるとすれば、適当ではなく、新設の「出資額限度法人の モデル定款(仮称)」についての運用面も含め、今後、その適正が期されるべきである。 ○なお、出資持分のある社団医療法人から出資持分のない社団医療法人へとの移行の方 向が公益にかなうとの考え方に沿って制定された医療法施行規則第30条の36の規定の趣 旨に照らせば、(1)社団医療法人で出資持分の定めのあるものは、定款を変更して「出 資額限度法人」に移行できること。また、「出資額限度法人」は、定款を変更して、社 団医療法人で出資持分の定めのないものに移行できること。(2)社団医療法人で出資持 分の定めのないものは、当然、「出資額限度法人」に移行できないこと。一方で、「出 資額限度法人」は、社団医療法人で出資持分の定めのあるもの(脱退及び解散時の出資 持分の払戻請求権の及ぶ範囲に制限を設けないもの、あるいは従前よりその及ぶ範囲が 拡大するものをいう。)への移行(後戻り)ができないこと。とすべきであり、関係者 はその理解に立って定款上自ら明らかにするとともに、「出資額限度法人」に関する定 款の変更認可等に係る監督官庁の事務も、この考え方に沿って行われる必要があるもの と考えられる。さらに、この旨を法令で位置付けることについては、現行税制上の取扱 いに及ぼす影響面も含めて、検討が必要である。  (3)病院関係団体を始めとする関係団体における取組。○病院関係団体等において は、実際に「出資額限度法人」に移行した後の退社時等に払戻額が制限されることとな る出資者を始めとして、関係者の理解・合意を得るために必要な手続や留意点、さらに は、「出資額限度法人」への移行を機に、法人の役員構成(同族役員の制限)など医療 法人の構造面及び提供する医療の内容面の両面にわたり、公益性を高めた例などの好事 例を収集・整理し、広く関係者に提供することが期待される。加えて、病院や医療法人 を会員とする団体を中心に、「出資額限度法人」への移行を検討しようとする関係者か らの具体的な相談に応じるなどの活動が展開されることは、「出資額限度法人」の普及 に有効かつ必要と考えられる。  5.「出資額限度法人」の課税上の取扱い。○医療法人については、現在、公的な運 営を確保するための一定の要件を満たす法人類型として、租税特別措置法に基づき、法 人税の軽減税率が適用されている「特定医療法人制度」のほか、医療法に基づき、経営 安定化の観点から、その収益を医業経営に充てることを目的とした収益業務を実施でき る「特別医療法人制度」がある。これらの法人類型については、移行に伴い、医療法人 について法人税、贈与税が、また、社員について所得税(みなし譲渡所得課税)が非課 税の取扱いとなっている。○これまで既に、新規設立や設立後の定款変更により「出資 額限度法人」は設立されており、こうした事例をめぐり、定款変更の有効性や出資持分 に係る払戻額の妥当性について、医療法人と社員の間で争われた民事訴訟の事例も次第 に集積されてきた。○その具体例として、出資持分のある社団医療法人から「出資額限 度法人」へ定款を変更し、変更後の定款に基づいて、出資額を「限度として」なされた 死亡退社した社員の相続人への出資持分の払戻しの有効性は、平成13年2月28日の東京 高裁八王子支部判決が認めていたところ、この事件について、最高裁は、平成15年6月 27日、「上告を受理しない」との判断を示し、結果的に東京高裁八王子支部の判決が確 定するに至った。○このような動きも背景に、「出資額限度法人」を巡る現行の課税関 係について、その明確化を図るべきとの気運が高まってきたことから、本検討会の検討 と並行し、事務局において関係機関の見解を確認したところ、現行の医療法等関係法令 の規定及び税法を前提に、おおむね別紙のとおり整理され得るとの見解が得られた。○ こうした取扱いを前提とすれば、かねて種々論じられてきた「出資額限度法人」への移 行に伴う医療法人側、社員側双方に対する課税面の取扱いが整理されることで、これま で指摘されてきた移行に伴う不安が相当程度解消され、円滑な移行に寄与するものと考 えられる。厚生労働省においては、関係者に対する周知に努めることが適当である。  6.今後の課題。○当検討会では、「出資額限度法人」について、(1)「出資額限度 法人」を出資持分のある社団医療法人の一類型として、関係者が選択する際の骨格を整 理すること、(2)既存の特定医療法人・特別医療法人とは異なり出資持分を解消するに 至っていないという点を踏まえつつ、円滑な移行方策として税制上の課税関係を明確に すること、を念頭に検討してきた。○本報告を受け、特に上記4.の取組を関係者が着 実に行うことにより、医療法の医療法人制度の趣旨が再認識されるとともに、「出資額 限度法人」が普及・定着していくことが期待される。今後、「出資額限度法人」の普及 ・定着が現実のものとなった時点では、最終報告書が指摘した社団医療法人の「事実上 の配当」とも評価されかねない事態に対処し、「非営利性」を徹底するという段階を超 え、より積極的に「公益性」を実現していくことが、関係者にとって共通の課題として 認識されることとなろう。○その際、今回の「出資額限度法人」をめぐる議論を通じて 改めて整理が必要とされた、既存の公的な運用を確保している特定医療法人及び特別医 療法人と医療法人全般との関係、さらにはこの公益的な運営を確保している2つの法人 類型の相互関係を如何に考えるかといった論点を含め、特定医療法人について平成15年 3月に、特別医療法人について平成15年11月に、それぞれ実施した要件緩和の効果も見 極めつつ、さらに検討が深められることを期待するものである。以上でございます。 ○田中座長  ただいま読み上げた報告書案について、項目立てに沿って順番にご議論をお願いしま す。1.はじめに、についてご意見があればご発言をお願いします。 ○山崎委員  2つ目の○なのですが、最終報告書においては「医療法人の非営利性・公益性の徹底 」という表現がありますが、従来の医療法人制度は、公益性の徹底がさほど求められて いないというか、厚生労働省の事務次官通牒によりますと、積極的な公益性は求めない という書き方があるわけです。こういう報告書で公益性の徹底ということを書くと、ほ かの公益法人と同じような扱いというか、そういうように錯覚される恐れがあると思う ので、この「公益性の徹底」という表現を若干変更していただきたいと思うのです。 ○田中座長  私の感じでは、単に前回の在り方検の最終報告書にこうありますと書いてあるだけで、 この委員会としての主張ではないととっているのです。事務局はどうですか。 ○渡延指導課長  本日机上配付しております前回までの資料のうち、1回目の所に「これからの医業経 営の在り方に関する検討会」の報告書の関係部分を抄訳したものが入っています。今、 座長からご指摘があったとおり、平成15年3月の在り方検討会の最終報告書では、この 頁のIIIの次の最初の見出しが「非営利性・公益性の徹底による国民の信頼の確保」と なっておりまして、この部分を引用させていただいたということです。ただ、確かに、 山崎委員からご指摘がありましたように、昭和25年の通牒で見ると、その時点では医療 法人ができていませんでしたので、医業の提供主体として民法34条の公益法人と株式会 社の例を対比して、民法34条の公益法人までの狭義の公益性は求められないが、営利を 目的とした株式会社は違う、その中間的な法人類型として医療法人をつくるということ は説明されているところです。ただ、ここの表現自体は、平成15年3月のものをそのま ま引用したということで採用したものでございます。 ○山崎委員  今のでしょうがないのですかね。公益性の徹底というのは、この次の課税のいろいろ な条件が、公益法人並みにしないと課税関係が生じる、という部分に波及してくる可能 性があるわけです。したがって、医療法人の性格は中間法人的な色彩を持っていて、必 ずしも公益法人と同等なものではないのだというところを強調していたと思ったのです。 ○田中座長  ご主張としては理解できますが、文面としては、ここで新たに我々が言い直したこと ではなくて、前書みたいなものなのでこれでよろしいかと思います。一学者として発言 しますと、公益性は学問的に定義が難しいのです。公益法人は法律上の定義があります が、公益性はもっと広い概念で、山崎委員が言われたように、広い意味、狭い意味、い ろいろとありますので、この医療法人に求められる公益性はこうだ、と団体として世の 中に訴えることはなさっていただいてよろしいのだと考えます。1.についてはよろし いですか。  では、2.「出資額限度法人」の検討の必要性、についてご意見等があればご発言を お願いいたします。また戻っていただいても結構ですので、3.「出資額限度法人」の 内容等、についてご意見があればご発言をお願いします。 ○品川委員  おそらく、今回の課税処理案といちばん密接に関連するところなのですが、3頁の中 ほどの「また」以下で、結局は、これは課税案との関係でどこまで踏み込むか、それぞ れの立場でいろいろな考え方、思惑があるかと思うのですが、ここでは、社員総会の議 決により処分することが適当である、ということで、この場合において、国若しくは地 方公共団体又は云々、となっています。要するに、医療法人の非営利性の徹底の観点か ら適当であるとしていますが、ここに書いてある国、地方公共団体、特定医療法人若し くは特別医療法人以外に分配することが可能であるように読めるのです。この辺は、こ のように曖昧模糊にしておくことが目的なのか。もともと、課税の処理案自体が非常に 厳しいので、せめてこの辺で妥協を図ろうとしているのか。その辺の趣旨はいかがなの ですか。ここに書いてあること自体に賛成、反対というわけではないのですが、非常に ぬえ的な表現になっているので、この「適当である」という意味がある意味では非常に 適当な表現なのかもわからない。 ○渡延指導課長  原案を整理した立場で申し上げれば、この「適当である」の5文字に特別な意味を込 めたつもりは全くありませんし、これまでの検討会の場でも、残余財産の処分のところ は、一時、同種の法人にという話を持ち込むというのが去年の1回目か2回目の段階で はあったと思うのです。しかし、その後の議論ではその話は消えておりまして、ここの ところで国、地方公共団体、特定医療法人、特別医療法人以外のものを持ち込むという お考えの方はおられないのではないかと思っています。したがいまして、品川委員がお っしゃったような考え方を強く出すということであるならば「にすることが」ではなく て「に限ることが」と書いてしまうとか、そういうような曖昧模糊性を払拭するのであ ればそのほうがよろしいのではないか。それとも、その「適当である」の部分が弱すぎ るのであれば、その「適当である」の部分の末尾を変える。いずれにしても、ここをフ ワッとしたものにして、最後の残余財産の分配のところで何らかの利益の付け替えを考 えている委員は、少なくとも、この場にはおられないと思います。 ○三上委員  しかし、社会福祉法人や財団法人など、同じような公益性の高い法人もありますし、 そういうニュアンスで書いたほうがわかりやすいのではないですか。 ○品川委員  もともと、これは課税案をどのようにするかということとのバランスがあり、私も医 師会を代表している点もあって、単なる課税上のあり方の問題と医師会側の要求とのバ ランスをどのように調整するかということから考えると、要するに、当初は、とにかく、 ほかの所には回さない、あくまでも最後の財産は特定医療法人や特別医療法人など、医 療のために使って、プライベートな部分にはバックしないということ。そういうことを 徹底することによって、課税の在り方ももう少し緩和してもらいたいというのがそもそ もの趣旨だと思うのです。  しかしながら、今回の課税案は、これはまた後で議論になるかと思うのですが、いろ いろな条件を考えると、今回の措置は総合的にはやむを得ない措置であろうかと思いま すが、今まで医師会側が要求してきた要求からは若干まだ不十分なところがあります。 今日は私が医師会側のことを言うのではなくて、代表の方が来ておられるので、私は専 ら課税のあり方から議論をすればよろしいかと思うのですが、そういうバランスの意味 で、ここのところは、非常にぬえ的であり、しかし微妙なバランスを確保している、と いう解釈をしてもいいのではないかとも思えるのです。特に「限定する」としてしまう と、後の課税処理がいかにもきつすぎるような感じがします。  これは、1つの訓示規定なのか、出資者あるいは出資者の姻戚の方には絶対に戻って こないことを明確にする必要があるのか。この文章からだけではその辺が読み切れない のです。しかし、どうすべきかということについては最後の課税案とのバランスをどう 考えるかということで、むしろ、ここは三上委員、豊田委員、お2人のお考えでおやり になればよろしいのではないですか。 ○豊田委員  残余財産につきましては、法人の役員など、私的にそちらのほうに配分されることは 毛頭考えられないことで、そういうことはないと。残余財産は、国あるいは公共に属す るか、特別あるいは特定に帰属するか、ということでは今までの長い議論の中でどこも ブレはないと思うのです。そういう立場に立てば、むしろ、ここは「することが」を 「に限ることが」と改めるほうが明快です。ただ、その場合に、後の課税関係が厳しく なることとの関係もあるわけですが、それはそれで、私のほうとしては意見があります ので、現行の税制下では今回はこういう厳しい条件になったと。しかし、本来あるべき 出資額限度法人の形はきちんと整理しておく。そして、現行の法制下ではそれは非常に 厳しいのだということになれば、それをどうするか、という議論のほうがここでのまと めとしてはよろしいのではないかと思います。 ○田中座長  私も、課長が言われたように、この検討会の委員のご発言としては曖昧模糊とするよ りも、わりと限定的に考えている方向だったと思います。「限る」という修文はいかが でしょうか。課税のほうは、別途、これとは別に考えるということです。 ○三上委員  限ってしまうと、もっと公益性の高い社会福祉法人の病院もありますが、そういう所 にも渡したら駄目ということになりますか。 ○田中座長  これはあくまでも提案ですから、それを厚生労働省が出す通達にどう書かれるかは別 の話ですけれども、限ると書くとどうなりますか。 ○渡延指導課長  最終的には、後ろの4.の関係者に期待される役割、の所でモデル定款をつくります が、そのモデル定款においてはこの報告書の3.の内容を盛り込むことになっています ので、いちばんきつくやるのであれば、モデル定款の中でも、その残余財産の帰属先の 所をこの4種類に限定したもので世間に出していく考え方が当然あり得ます。ただ、先 ほどの読み上げの中にありましたとおり、もともと、モデル定款自体が標準になる定款 であって、それからの一切の逸脱を認めないというものではありません。そういうスタ ンスでやることで臨むわけですから、その意味では法令で制限しているものではありま せんので、品川委員がご指摘になった曖昧模糊性みたいなものが最後まで残ってまいり ます。  私も非常に曖昧模糊なことを申し上げているわけですが、モデル定款はモデル定款で すので、帰属すべき所を「国、地方公共団体、特定医療法人、特別医療法人」と一旦書 いて、そのほかに「それと比肩するような公益性、公共性の高いものに分けられる」と 書いたらば県はその定款変更を受理しないかというと、おそらく、そういう運用は許さ れないことになるだろうと思います。 ○豊田委員  繰返しになりますが、これは出資額限度法人の一つの概念ですね。一つの仕組みにか かわる大事なことなので、これを曖昧にしておくと、その後に続くことがみんな曖昧に なってくる可能性があります。ですから、今回は、出資額限度医療法人はこういうもの である、ということがきちんとしていなければいけませんので、ここは厳しく規定すべ きだということです。 ○品川委員  三上委員からのご指摘のように、特定医療法人、特別医療法人以外の社会福祉医療法 人何とか病院とか、そういう所も駄目なのですか。これだけに限定するのですか。 ○豊田委員  趣旨は、出資額限度法人がなぜ出資額限度法人かということに戻るわけですが、要す るに、剰余金がプラスされた部分は、法人の役員や親族には戻ってこないということ。 今、いろいろと批判されて、形を変えた配当という批判がありますが、そうではないの だということ。出資額限度法人は、あくまでも払込出資額だけの返還であって、その他 については、私的な部分には何ら流れないことを明確にしている法人ですから、私は、 例えば社会福祉法人に寄付することが駄目だとは言いませんが、医療法人で、医療の中 で蓄積されたものは医療に使われることが第一と考えたい。ですから、社会福祉法人は けしからんという話は毛頭ありませんが、趣旨は私的な部分に戻ってこないということ がありますので、仮に、社会福祉法人を入れたらいかがということであれば議論の余地 があります。私としては、医療の中で使っていただきたいということです。ですから、 このままでよろしいということです。 ○渡延指導課長  もう一度ご説明しますと、3.で書いている「出資額限度法人」の内容は、4.の行政 の取組の中でモデル定款に表現する内容となります。したがって、社会福祉法人が病院 を経営している例が世の中に存在するわけですが、押し並べての医療法人の定款として 世の中にお勧めするものとしてはこの3.の内容で書く。それは、あくまで標準となる ものですので、法令でこれ以外は認めないと制限するものではないという趣旨のもので す。世の中の事象のおおかたのものを想定してお勧めするメニューとして書くときには どう表現するかということで、代表的なものを書く場合は特定・特別までで限定しても 問題はないのではないか。それは、同時に、それ以外のもの、公益性・公共性において 比肩すべきものを一切排除するというものではないです。 ○品川委員  豊田委員からの発言と、いま話をしたところでは、ここの「又は特別措置法に基づく 特定医療法人若しくは特別医療法人」と、限定した書き方になっていますが、この2つ の医療法人をベースにして、これらの医療機関に限定することだという、とにかく医療 機関以外には回さないのだということを明確にしたほうがいい。豊田委員もそういう趣 旨なのですね。そこはいかがなのですか。 ○山崎委員  私は、むしろ、将来、医療や福祉の垣根がはっきりしなくなってくることも考えると、 社会福祉法人とか、公益性の高い法人が入っても構わないと思うのですが、いかがでし ょうか。 ○渡延指導課長  今の山崎委員のご意見、品川委員、豊田委員からお話がありましたが、要は、最終的 に病院の開設主体の法人類型の中にいろいろなものがある中で、持分のある社団系のも のを排除することについてはコンセンサスはあるのだろうと。1回目、2回目で、同種 の法人という議論が出てきていましたが、同種の法人というと、結局、出資額限度法人 といえども持分を解消し切っていない社団医療法人ですから、これが残ってしまう。こ こを排除するということで、ここの議論はほぼコンセンサスになっているような印象を 受けていますが、それならばそのように書く。確かに、4つに限定してしまうと、社会 福祉法人の場合はもともと財団型ですので、出資持分などは存在しないわけですから、 そういうものが開設する病院を排除する理由はないことになるのだろう。そうであるな らば、そういうものが書けるように限定的に書いておけばよい。ただ、去年、議論があ ったような、漠と「同種の法人」と書くのはやめたほうがいいということになろうと思 います。そこの表現の問題として若干の修正を加えれば可能かと存じますが、いかがで しょうか。 ○田中座長  特定・特別というより、出資持分がないほうにしてしまうのですね。 ○渡延指導課長  単に「移行」と書くと、同種の法人論が復活しかねないから、それはやめたほうがい いと。 ○田中座長  「持分の定めがない」と書いておけば、特別も特定も、社福も財団も入るから、そち らのほうがいいとの提案ですね。 ○川原委員  特定医療法人であるとか特別医療法人云々という話があるわけですが、特別医療法人 又は特定医療法人が解散をした場合の残余財産の帰属との整合性をここで考える必要は ないのかどうか。ということは、先ほど来、社会福祉法人であるとか、いろいろな意見 が出されたのですが、一つの医療法人という主体の体系の中で、ある意味においては、 統一性というか、共通性を持たせておかないといけないのではないかと考えています。 ○大道委員  私は、川原委員の発言、豊田委員の発言と同じです。あまり範囲を広げることに賛成 しません。 ○渡延指導課長  今の川原委員、大道委員のご提起は、1回目の資料の19頁と23頁に該当の条文が入っ ていますが、特別医療法人については解散時の残余財産の帰属先について、最後は、特 別医療法人で止まっている。それ以外の社会福祉法人は登場していない。いかに公益性 が高くて持分がなくても、医療は医療の枠の中からはみ出すべきではないというご意見 です。山崎委員、品川委員からお話が出たのは、医療にまで限定しなくてもよい。医療 と福祉のクロスオーバーが起きることを考えれば、主体の公益性なり持分のないことが 確保されていればそこに限定する必要はないという提起があったわけです。これは、こ の場で最終的な議論をお決めいただくのが適当な話かと思います。 ○松原委員  社会福祉法人を認める場合には、同一理事長の可能性もあるので、そのときに、社福 を認めておいて、実は理事長も一緒で、こっちに移していたということがないような手 立ても考えないといけないと思うのです。 ○田中座長  そこは、実務的にこういう場合はこう、とすべてを書いていったら、いくらでも長く なりますから、精神を謳っていると理解すればどうなのでしょうか。ほかの医療法の体 系の中で併せて書いておけば、実務上は、明らかに公益性を担保している所ならば可能 だ、との理解が汲み取れるならばそれでいいのだと思います。 ○品川委員  そうですね。今あったいろいろな意見については、この「適当である」という所で呑 み込んで、この4つに限定して、とにかく承継するのだと。あとは、それに準じた所に、 仮に百のうち一つそういう場合があるかもしれないけれども、それは規定しないという 意味で「適当である」という言い方で呑み込めば、それはそれで、この原文でも構わな いのではないかと思います。 ○山崎委員  最近の傾向として、営利法人が医療法人に入っていきたいということで、官業開放推 進委員会ができていろいろな話が出ているのですが、営利法人を含めた業種が入れない ような歯止めをきちんと付けておかないといけない。その一方で、反対に、営利法人の 剰余金の部分について、個人財産的な色彩を排除していく歯止めのようなものと、両方 を担保していかなければいけないと思うのです。したがって、そういうような危険性を 排除できるような条文にしていただきたい。あと、不勉強なのですが、NPO法人とか、 そういうものは公益性の高い法人になるのでしょうか。 ○渡延指導課長  誠に申し訳ありませんが、よくわかりません。 ○山崎委員  あの辺が入ってくるとグチャグチャになってしまうと思うのです。 ○渡延指導課長  そうなりますと、回り回って3.で書かれている内容を医療法人向けのモデル定款と して表現するならば、お勧めメニューとしてのモデル定款は医療の世界で完結する姿で 書いておく。そして、それは公益性において比肩すべきものが出てきたときにそれを排 除するものではない、という運用を意図してモデル定款上そう表現しておくのが着地点 ではなかろうか。NPO法人で病院開設を許可した例はまだ聞いたことがないから、多 分、無理なのではないかと思うのですが。 ○田中座長  今の議論の方向としては、今のところ、確率的には低いけれども、社福や他の財団が あってもそれを否定するものではないとの理解を我々は持っている。例えばそれぞれの 組織での発表やセミナーではそういう趣旨であると伝えていただくことにして、ここで の修文は、いちばん下の行の「とする」をやや強めて「限定する」にとどめる。まさに、 そうではない所に行かない、ということを精神としては書いておく。 ○三上委員  たとえば、普通の医療法人で、解散をすることになって持分だけを返したとする。そ うすると、持分のない普通の医療法人、特別でも特定でもない医療法人が残るわけです が、そこで働いている人たちが、自分たちでやりたい、ということになればやる道があ るのではないかという気もするのです。持分がない普通の医療法人という形はないので しょうか。 ○田中座長  それは解散しないことなのでしょう。新たにその医療法人を買い取る形ですよね。 ○三上委員  というよりは、社員である人たちが持分だけを返してもらって出ていってしまった。 職員が残っている状態で、その職員だけでやる。これは世の中によくあるような感じも するのですが、どうでしょうか。持分のない普通の医療法人になるということはあり得 ないですか。 ○田中座長  普通の会社でいえば、一部の株主が売り払っても従業員が残りを買い取って、会社は 解散していないことになります。 ○三上委員  株式会社ならば買い取ることになりますが、この場合は宙に浮いているわけです。そ れを職員たちが自分たちで運営していく、というのはどうなのですか。 ○真野委員  職員が権利を買い取るという、仮定があるということですね。 ○石井委員  今の三上委員の話は、現在の出資額限度法人にかかわる議論であったとすると、出資 金を持っているすべての社員が出資額限度のみを持って退社をしてしまった後の議論と いうことになるわけですね。そうしたら、存在の可能性はあるのではないですか。買い 取る買い取らないではなくて、きちんと役員構成に入って運営をしていくというだけの ことで、残った財産権は宙に浮いたままでいくのではないでしょうか。つまり、財産権 の議論ではなくて、いかにきちんとした医療運営をしているかどうかという議論だけの ことなのではないかと思います。  それから、私も質問があるのですが、今ご議論いただいている中との関係で確認させ ていただきたいのですが、4頁の○の4つ目に「加えて、委員から指摘があったように 」という議論があって、「モデル定款からの逸脱を一切認めないといった硬直的な」云 々と。ということは、今ご議論いただいている点もそこにかかわるかと思うのですが、 特別医療法人の定款例、あるいは特定医療法人の定款例もこの考え方に従うということ でよろしいのでしょうか。私は、松原委員からお話があった点が大変興味深かったので すが、もしそうだとすると、特定や特別でも同じような解釈が成り立ってくるので、他 の社会福祉法人がそういう運営を依頼されて、そのまま取得をするようなケースがあり そうな議論になります。特定や特別の場合は、財産の受入れをした段階で非課税措置等 がありませんから、課税受入れになるのではないか。他の特定や特別が財産をそのまま 受け入れると、特定医療法人は軽減税率しかありません。特別医療法人は普通の法人と しての課税ですから、とてつもない課税が起きますので、現実の実務の中ではなかなか 難しい。ところが、社会福祉法人であれば、社会福祉法人自身が非課税の措置団体です ので、財産の受入れは非課税になる。こういう問題が出てくるのではないかと感じまし て、私は、川原委員の意見に賛成で、少し硬直性があるぐらいがよろしいのではないか と思います。アローアンスを持たせるといろいろなものが起きてしまうのではないかと 思いますので。 ○渡延指導課長  4頁の(2)の4つ目の○の記述は、普通の社団医療法人、さらには今回つくる出資 額限度法人のモデル定款の運用について言及している部分です。確かに、今は、普通の 社団医療法人、財団医療法人の標準定款に加えて特定・特別のものがありますが、普通 の医療法人の標準定款の部分は、医療法なり医療法の施行規則に書いている所の外側、 つまり、法人自治に委ねられている部分を食い込んで書いている部分が相当程度ありま す。その意味で、運用があまりにも硬直的になってはいけないと言えると思うのですが、 特定・特別になると、税法の関係で、法令あるいは税所管当局の通知レベルにかかわる ような、かなり拘束された部分をそのまま書いているところがありますので、当然、そ の運用にあたっての拘束の場合とは違ってくるであろうと考えます。その意味で、ここ で論じているのは、あくまでも、3万何千あるところの普通の社団医療法人の定款の運 用にかかわる精神訓話というか、そういうもので書いているというようにご理解を賜り たいと思います。 ○田中座長  今のは実質的に4.に入りましたので、4.についてもご意見をお願いいたします。 ○品川委員  4頁の最後の4行目ですが、定款で明確にすべきだということで、「さらに、この旨 を法令で位置付けることについては、現行税制上の取扱いに及ぼす影響面を含めて検討 が必要である」と。この検討の必要性については、むしろ、医療法人側が望んでいるこ とかもしれないと思うのですが、この検討の時期的な問題は、早急に検討するのか、し ばらく棚上げにしておくのか、その辺の観測はいかがですか。 ○渡延指導課長  事務局が答えるのが適当なのかどうかですが、今回、この数十年間やってきた出資額 限度法人の問題について一つの区切りをつけて、その次に進むべきステップの部分は、 6.今後の課題の○の2つ目、3つ目に書いております。全体の方向として、出資額限 度法人の普及・定着を図り、その上でさらに高次の公益性を求めていく。その際には、 特定・特別を含めた全体のガラポンの議論が当然起きてくる。そして、4頁の最終行に 戻って、今の特定・特別にしても、後戻り禁止は直接法律の委任のない省令で書いてや っているわけでありまして、そのときにはそこに問題が戻ってくるのではないかという 時間軸のイメージです。ですから、それをすぐにやるのかというのはなかなか表現しに くいところがあるのですが、方向としては、社団医療法人の大層を占める持分ある社団 について出資額限度の普及・定着を図る、というステップをこなすことが先決、先行の 課題であろうと考えて、原案についてはそのように処理しているところです。 ○豊田委員  そこは非常に重要な部分です。これは、むしろ、全体を総括するような形になります が、今回の出資額限度法人についての骨格、内容、仕組についての整理はいいと思うの です。出資額限度法人についての議論はずっと行われてきていまして、現実、たくさん の医療法人がそれを検討したり定款変更もしている。ところが、いちばんの問題は、し からば、そうなったときに、退社や相続が起きたらどのように課税されるのですかと。 税制の問題ですね。課税の問題が全く不透明で、専門家の間でもいろいろな意見を言う 人がいるという状況だったわけです。それを主張する人からすれば、問題が起きたとき は裁判をやればいいのだという強行な人がいる。私どもはそういう立場はとりませんで したが、そういう不透明な中で模索していた状態に対して、現行の税制に照らせばこの 出資額限度法人はどうなるのかということが整理されたことは今回の非常に大きな成果 で、私はそこを非常に高く評価したいと思うのです。  そういうことであって、ゴールではないのです。この出資額限度法人というのは、我 々長いこと求めてきた法人は、制度化されて、それに見合う形で税制がきちんと整理さ れる形にしてほしいということを最初の提案から申し上げてきたのです。したがって、 今回は、そこに至る途中の形として、とりあえず、非常に不透明な中でいろいろな法人 が動いていることに対しては非常に良いまとめだったという評価です。それと、制度化 の問題は、今回のまとめは途中経過ですから、ゴールは、あくまでも、制度化をしてき ちんとした形にする。制度化があってはじめて税制もきちんと決まると思うのです。で すから、そういう整理があってはじめて出資額限度法人がきちんとした形になると考え ています。品川委員の言葉を借りて続ければ、今回これはこれで一つのまとめで良かっ たと。さらに、これに続いて制度化に向けた継続をしてほしいというのが私どもの立場 です。 ○田中座長  整理としてはよくできているけれども終わりではない、ということを込めて書いてあ るわけですね。 ○三上委員  払戻請求の制限を設けないことを前提に後戻りができないことを規定するかしないか で、課税関係がどうなるのかというのは検討されているのでしょうか。後戻りができる 場合はどうなる、あるいは後戻りができないと規定したらどうなるかということは決ま っているのでしょうか。 ○渡延指導課長  今のお話は、現行税制上の取扱いに及ぼす影響面の部分もそうですが、課税上の取扱 いのところで、参考資料もご用意しておりますので、そこを含めてご説明をした上での ほうが早いような気がします。お許しいただければ、そのように議論を進めていただけ ればと考えますが。 ○田中座長  それでは、これの説明をお願いいたします。 ○山下主査  参考資料の図を書いたA3の紙に基づいて、それぞれの場合について説明させていた だきます。この出資額限度法人に関して、それぞれの場面でどのような課税関係になっ ているのかということです。イメージ図の左上にある例として、現行、持分のある社団 医療法人が、出資者が400万円ずつ出資をして、その上に年月が経過して、剰余金がそ の出資に応じて上に乗っている状態から出資額限度法人に移行した場合について、その 剰余金の取扱いがどうなるか。これは、その課税関係を整理したところ、定款変更のと きにこの剰余金が誰の所に移ったのか。その移ったときに確定的に移ったのであれば、 その移った先で課税関係が生じることになるのが原則ですが、今回の場合は、もともと、 持分のある社団医療法人から出資額限度法人になったとしても持分のある社団医療法人 なので、その出資者のものであるという関係については課税上は変更がないということ で、出資額限度法人への移行時については医療法人に対する課税は生じませんし、また、 もともと変わりがありませんので、他の出資者に対する課税も生じないということで整 理されております。  今度は、真ん中の所にありますが、ある出資者が脱退した場合は、そもそも、出資額 限度法人から脱退するということですので、出資者に対する払戻しはその当時出資した 400万円を限度として払い戻しされることになりますので、その脱退をする出資者につ いては課税が生じない。それでは、その脱退をした人の400万円のうち、その上に乗っ ていた剰余金がどこに行くのか。これが、当然、課税をするときに重要になってくる視 点ですが、それが医療法人に移るのか、そうではないのか、というところを整理すると、 その剰余金については医療法人に生じるものではない。では、誰に行くのかというとき に、脱退をしていない残りの出資者の方々に対して課税みなし贈与、つまり、脱退した 人から他の残りの人たちに対して、剰余金の部分がみなし的に贈与されたという整理を することになっていまして、その場合については、真ん中の所にあるように、同族グル ープで占められている等の事情があれば他の出資者に対してみなし贈与がある、また、 そうではない場合については、ということで、それぞれ個別の事情に応じて課税関係が 生じるか生じないかを見ることになっています。  また、出資者が死亡した場合にどうなるのかということが右側の所にあります。その 場合は相続になりますが、そもそも、相続人がこれを機会に400万円部分については持 分について払戻請求権を行使するときには、出資額限度法人の定款に基づいてこの400 万円のみが相続人に対して払い戻されることになりますので、その相続人に対する相続 税課税が生じることになります。これも、脱退時と同じように、医療法人については、 出資者の脱退と変わりありませんので、医療法人に対して剰余金が贈与されたのではあ りませんので、課税は生じない。また、他の出資者については、その脱退に伴う2階部 分、いわゆる剰余金の部分がどうなるかというのは、出資者の脱退と同じように見るこ とになっています。  さらに、相続人が亡くなった出資者の地位をそのまま承継して、医療法人の出資者と しての地位になる場合はどうなるかというと、その部分については、当然、医療法人や 他の出資者に対してお金が動きませんので、相続人のみで課税関係を見ることになりま す。その課税がどこまで行くのかというのは、税法上、持分のある社団医療法人である ことは変わりありませんので、その部分の評価、いわゆるどれだけの財産があるのかと いう評価は、400万円プラスその2階建てのある剰余金の部分を合わせて評価すること になっています。 ○渡延指導課長  若干補足してご説明しますが、この資料自体について、たしか、2回目の議論の際に 委員からご注意があったところですが、イメージ図と書いた上の段の年月の経過の下の 所に「※」で書いておりますとおり、今のモデル定款どおりの定款で書いたら、贈与の 部分が脱退・解散の際に出資者に帰属する可能性があると言っているに止どまっている のであって、決して、この時点で贈与の部分が確定的に出資者のものになっているとい う見解は私どもはとっておりません。今の定款の規定の下でそういうことが生じ得る可 能性があるということです。また、この絵全体で表現しているのは、医療法に基づく秩 序、評価というよりは、この医療法人について起こる事象を課税当局が眺めたときに、 税法の規定に照らしてこういう切り口で着眼し課税する可能性があるということを申し 上げたものです。  さらにもう一つ申し上げれば、直接、三上委員のご提起についてお答えするならば、 この出資額限度法人への移行という、左から3番目の欄の上から2つ目の「課税は生じ ない」の下に、出資額限度法人は移行後も、持分あり法人であることから、移行に際し 課税関係は生じない、とあります。これだけでは何を言ってるか全然わからないのです が、医療法施行規則の30条の36、1回目の資料の23頁ですが、そこで、社団である医 療法人で持分の定めのないものは持分の定めのあるものへ移行できない、ということ。 持分を一旦解消していれば逆戻りができないわけですが、出資額限度法人といえども持 分のある社団であることには変わりありませんので、その限りでは、この隣の世界へ戻 れる。定款変更の手続を踏み、必要な事情があれば戻れる構造になっています。そのた めに、今の医療法の法令を前提にした後戻り禁止が押さえているところから課税の関係 を考えるならば、出資額限度法人に移行した瞬間は法令上なお戻る可能性があるという ことで、そこでは、特段、財産の移転が起きないと見ている。したがって、ここでは課 税関係は生じないという整理です。したがいまして、そこの根拠の規定が改正されたと きには、この定款変更の時点で財産の移転が生じていると評価される可能性があるとい うことです。 ○田中座長  テクニカルでややこしい点ですが、何かご質問はありますか。これはあくまでも税関 係の整理であって医療法上の整理ではないとの説明も付け加わりました。 ○品川委員  これは、先ほど三上委員がおっしゃったように、ここに書いてあるABCDnすべて の出資者が同時に400万円もらってサッと抜けて、余剰金だけが会社に残った場合の課 税関係の説明がないです。そうすると、これは医療法人に法人税課税が行われるかどう かということを検討しておかなければならないのかもわからないですね。 ○渡延指導課長  現時点で、私どもはその点についての確認をしておりません。抽象的な可能性として はご指摘になったようなことが起こり得ると考えております。 ○品川委員  あまり現実的ではないでしょうかね。 ○田中座長  今回、医療機関が地域に貢献し永続する場合の規定であって、出資者が全員辞めてし まったらどうするかといった、かなり例外的な点についてはまだ検討していない。 ○渡延指導課長  確かに、出資は解消しながら法人としては地域で永続し続けるということも、可能性 としては否定できないのだろうと思うのです。 ○三上委員  出資額限度法人は、もともと、相続とか、継承のために今までの持分のある医療法人 をうまくやりたいということで出てきたわけです。このイメージ図を見ると、例えば相 続人が後を継いだ場合は剰余金にかかってくるような形になっていますから、あまり有 効に働かない。もっとわかりやすい課税のやり方が明記されているほうが思い切ってい きやすいのではないかと思うのです。 ○品川委員  今はそのために検討しているわけです。 ○三上委員  持分というか、剰余金の処分の仕方についても後戻りできないような形にしてしまえ ば法人が課税されるのですか。 ○品川委員  それを検討して、できるだけこの400万円以外には課税されないようにスキームをつ くって、いろいろとご苦労されたということですよね。これは現行の課税体系がこうな っているということですから、この課税関係を出資額限度法人の趣旨に合わせて修正し てもらうということで、できるだけ課税関係が生じるところを押さえようという趣旨で すよね。 ○渡延指導課長  お話がありましたように、このいちばん右端の世界は、本来は、昭和25年に医療法を つくったときに想定されなかった世界だと考えております。なぜかといいますと、これ は関係の先生方からご指摘を受けたところですが、社団医療法人の社員たる地位とか、 そういうものは、本来、自動的に承継できるものではない。端的な例が、父親が死んで 息子が未成年者であるケースとか、自動的にあたかも株式と同様に相続、承継が起きる と考えるべきではないものが、実際上の実務の取扱いで、あるいは定款にそういうこと を盛り込んで書いた例はあまり見たことがないのですが、そういうことが実態として起 きた結果、事実が先行して課税の評価が後からついてきてこういう事態が起きたと。そ れで、時間が経過してしまったというのが真相であろうと思っています。  ですから、今回の一連の出資額限度法人に係る検討は、ある意味では本来起きるべき ではないことを正していく世界で、昭和25年に医療法人制度をつくった精神に立ち返る 検討の世界であろうと考えております。そうはいっても、現実問題、起きる事象につい ての課税関係は十分踏まえておかなければならないということでここに付記しているも のですが、気持としては、本来、社員たる地位とか、ましてや理事長たる地位が自動的 に承継できるはずがないのであって、所用の手続は当然踏まなければいけない。社員に なるためには社員総会での承認をとらなければいけません。その上で理事になって、理 事長には互選されなければならないのですから、このような承継が自動的に起きるはず はないわけです。ただ、それが安易に行われるとすれば、医療法に照らしても問題だし、 税法の世界から眺めればこういう評価をされてしまうということをこの機会に改めて関 係者が等しく認識する必要があるのではないかという考え方です。 ○山崎委員  これのスキームですが、いちばん右側の相続人B′の人が既に理事で入っていたよう な場合は左側のスキームで解釈をするということでいいのですか。というのは、先代と いうか、大先生が理事長をやっていて亡くなったときに、息子さんが既に理事で入って いる場合があるわけです。そういう場合は、理事長が持っていた額に限定して相続をす るという、この左側の考え方で行っていいのでしょうか。既に権利を持っている場合で す。 ○渡延指導課長  右から2番目の絵でいけば、父親と自分が理事なり出資者として社団医療法人の運営 に参画していて父親が亡くなった、払戻請求権を行使して父親の持分400万円を自分が 相続する、だけど自分の固有の地位は何ら変更がない、というケースですね。そうであ れば、当然、右から2番目のケースです。 ○山崎委員  そういうことですね。 ○山下主査  いちばん右側の場合は、さらに相続人が出資をした場合についてどのような財産上の 評価をするかというのは、右下に「財産評価基本通達194−2の定めにより評価」とあ るように課税当局でそういう通達を出されていますが、その場合の出資の評価について はこのようなことにするということで、実態上、相続人B′の方がどんな状況であれ、 出資をさらにした上で地位を承継する場合にはそういうようにする。そうではなくて、 実態的には払戻しを受けてやる場合には、右から2番目のようになるのだろうと考えら れると思うのです。 ○真野委員  先ほどの三上委員、品川委員の議論で、あまり可能性が少ないということなのですが、 出資者が全員脱退してしまった場合は持分のない医療法人のような感じになるのでしょ うね。そうすると、また別に持分のない医療法人ができてしまうことになるのですね。 ○渡延指導課長  そういうことになろうと思います。ただ、一つ均衡論で考えておかなければいけない のは、世の中の医療法人のおおかたは持分あり社団なわけですが、最初から持分のない 社団で設立する場合、あるいは財団医療法人で設立する場合、それは設立の時点で課税 が起きているのです。多分、税の世界からこの事態を眺めたときには、到達点が同じな らば課税上の評価もどこかで帳尻が合うようにされるのではないだろうかと想像します。 ○真野委員  整合性がないと問題が出てきますよね。 ○三上委員  これは、特定医療法人あるいは特別医療法人が、その認可を外されて普通の医療法人 に戻らなければならないという状況もありますから、そのときは、当然、持分のない普 通の医療法人になります。特定医療法人が規制の枠を外れてしまうと戻らないといけま せんから、それは当然起こり得ます。例えば、個室の比率をもっと上げたいという場合、 税法上も8%ぐらいの税率減免ではそれを我慢するメリットがないということになり、 普通の医療法人に戻ることも当然あります。 ○田中座長  特別ではない、持分のない社団になってしまう。例外規定をたくさん考えていくと本 ができると思いますね。4.はよろしいですか。次に、5.の「出資額限度法人」の課税 上の取扱いについて、です。今も、事実上、だいぶ議論が出ていましたが、さらにあり ましたらお願いいたします。続いて、最後の項目になりますが、6.今後の課題につい てご意見があればお願いいたします。それでは、一応、報告書の文言をめぐる議論はひ ととおりいただいたことと理解いたします。議論いただいた結果、報告書の内容につい て修正すべき大きな点はありませんでした。1つだけ「とする」を「限定する」に変え る所が決まったと思いますが、それをもって本検討会の報告書とさせていただきたいと 存じますが、いかがでしょうか。 ○山崎委員  「別紙」の課税関係も説明いただきたい。 ○田中座長  そうですね。時間もありますので、こちらも説明していただきましょうか。 ○山下主査  課税関係の別紙につきまして、先ほど、図に基づいてご説明したことを日本語で書い たものですが、ご説明させていただきます。1〜3、5頁に4ということで、4つの場 合についての課税関係が書かれております。1.定款を変更して出資額限度法人に移行 する場合。法人税、所得税及び贈与税等の課税は生じない。2.出資額限度法人の出資 の評価を行う場合。相続税、贈与税の計算における出資の価額は、通常の出資持分の定 めのある医療法人と同様、財産評価基本通達194−2の定めに基づき評価される。3. 社員が出資払込額の払戻しを受けて退社した場合。定款の後戻りが可能であるとしても、 社員のうちの1名が退社し、定款の定めに従って出資払込額の払戻しを受けて当該退社 社員の出資が消滅した場合には、その時点において、当該出資に対応する剰余金相当部 分について払い戻さないことが確定することとなる。なお、株式会社等営利法人は医療 法人の社員となることができないと解されていることから、個人社員が退社した場合の 課税関係についてみると、以下のとおりとなる。(1)退社した個人社員の課税関係。 退社に伴い出資払込額を限度として持分の払戻しを受ける金額が、当該持分に対応する 資本等の金額を超えない限りにおいては、課税関係は生じない。(2)医療法人に対す る法人税(受贈益)の課税関係は生じない。(3)残存出資者又は医療法人に対する贈 与税の課税関係。残存する他の出資者の有する出資持分の価額の増加について、みなし 贈与の課税の問題が生じることとなるが、次のいずれにも該当しない出資額限度法人に おいては、原則として他の出資者に対するみなし贈与の課税は生じないものと解される。 ア.当該出資額限度法人に係る出資、社員及び役員が、その親族、使用人など相互に特 殊な関係を持つ特定の同族グループによって占められていること。イ.当該出資額限度 法人において社員(退社社員を含む)、役員(理事・監事)又はこれらの親族等に対し 特別な利益を与えると認められるものであること。上記に該当するかどうかは、当該出 資額限度法人の実態に即して個別に判断されるものである。その際、次に掲げる所に該 当しない場合にあっては上記ア又はイにそれぞれ該当しないものとされる。アについて。 (1)出資者の3人及びその者と法人税法施行令第4条第1項又は第2項に定める特殊の 関係を有する出資者の出資金額の合計額が、出資総額の50%を超えていること。(2)社 員の3人及びその者と法人税法施行令第4条第1項に定める特殊の関係を有する社員の 数が総社員数の50%を超えていること。(3)役員のそれぞれに占める親族関係を有する 者及びこれらと租税特別措置法施行令第39条の25第1項第2号イからハまでに掲げる特 殊な関係がある者の数の割合が3分の1以下であることが定款で定められていないこと。 いま申しました法人税法施行令、租税特別措置法施行令は参考条文の所に、2頁以降、 書いてあるとおりです。  4頁です。イについて。(1)出資額限度法人の定款等において、次に掲げるものに対 して当該法人の財産を無償で利用させ、又は与えるなど、特別の利益を与える旨の定め がある場合。i.当該法人の社員又は役員。ii.当該法人の社員又は役員の親族。iii.当 該法人の社員又は役員と次に掲げる特殊の関係にある者。ということで、細かい所は省 略いたします。  (2)当該出資額限度法人が社員、役員又はその親族、その他特殊の関係がある者に対 して、次に掲げるいずれかの行為をし、又は行為をすると認められる場合。i.当該法人 の所有する財産をこれらの者に居住、担保その他の私事に利用させること。ii.当該法 人の他の従業員に比し有利な条件で、これらの者に金銭の貸付をすること。iii.当該法 人の所有する財産をこれらの者に無償又は著しく低い価額の対価で譲渡すること。iv. これらの者から金銭その他の財産を過大な利息又は賃借料で借り受けること。v.これら の者からその所有する財産を過大な対価で譲り受けること、又はこれらの者から公益を 目的とする事業の用に供するとは認められない財産を取得すること。vi.これらの者に 対して当該法人の理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるものの地位にあること のみに基づき給与等を支払い、又は当該法人の他の従業員に比し過大な給与等を支払う こと。vii.これらの者の債務に関して、保証、弁済、免除又は引受けをすること。viii. 契約金額が少額なものを除き、入札等公正な方法によらないで、これらの者が行う物品 の販売、工事請負、役務提供、物品の賃貸その他の事業に係る契約の相手方となること。 ix.事業の遂行により供与する公益を主として、又は不公正な方法で、これらの者に与 えること。なお、剰余金相当部分に相当する利益は残存出資者へ移転されるものと解さ れるから、医療法人への贈与があったものとみる必要はないため、相続税法第66条第4 項の規定に基づく医療法人に対する贈与税課税の問題は生じない。  4.社員が死亡により退社した場合。(1)相続税の課税関係。これにつきましては、 省略しましたが、上記2のとおり、財産評価基本通達194−2の定めに基づき評価した価 額となる。(2)他の出資者の課税関係。上記(1)で死亡した社員相続人等が出資払 込額の払戻しを受け、出資を相続しなかった場合であって、当該出資に係る剰余金相当 額が残存する他の出資者に帰属するものとして前記3(3)の場合と同様の判定に基づ き、他の出資者が退社した社員から出資の価額の増加額に相当する利益の贈与を受けた ものとして取扱われるときは、みなし贈与の課税が生じることとなる。(3)その他の 課税関係。退社社員の所得税の課税関係及び医療法人の法人税の課税関係は、前記の3 (1)及び(2)の場合と同様とする。以上、課税関係の整理についてはこのようにな っております。 ○田中座長  ありがとうございました。 ○三上委員  出資額限度になるためには、同族を減らしたりするため、かなり増資をして社員を増 やさなければいけない可能性があると思うのです。その場合に、剰余金の扱いがどうな って、新たな増資に出資した社員や元からの社員に対して贈与税関係がどうなるのかと いうのは(2)の他の出資者の課税関係と同じような考え方でいいのでしょうか。例え ば、1,000万円で10億円の剰余金がある場合は、あと1,000万円を何人かで増資の形で 出した場合に5億円ずつに分かれてしまって、新たに出資した社員のほうに5億円の贈 与がかかる形になるのかどうかということです。 ○渡延指導課長  理論的に考えたときに、今の特段の制限のない持分あり社団の世界で追加出資したよ うなケースと、出資額限度方式に一旦しておいて、いわば切断しておいて追加出資をす るようなケースと、2つあり得ると思うのですが、後者の方法によったケースであれば、 後から出資をした人間が、既に運営によってたまっている剰余金を自分のものにするこ とは、少なくとも医療法あるいは医療法人の定款の世界でそういうことは起こらないと 考えられますので、多分、ご懸念になったようなことは起こらないのではなかろうか。 仮に、出資額限度方式にしないで、普通の持分あり社団で追加出資したときにどうなる かについては、今回、報告書では引用していないほうの八王子判決、その高裁段階のも のでみると、出資の時点に差異があるときは後から出資した者は先行の出資者の運営に よって蓄積した剰余の部分は払戻しを受けないという判決が出ていますので、その場合 であっても直ちに課税が起きるかどうかわかりません。わかりませんが、その安全を考 えるならば、一旦、定款を出資額限度方式に変えてから追加の出資を受け入れることが 安全なのではなかろうかと考えられます。 ○三上委員  前に出資した人たちが剰余金を持っていて、新しい出資者は剰余金の権利がないとい う形になるわけですね。 ○渡延指導課長  仮にその定款を再変更して元の世界に戻ったところでもそういう形になるだろうと思 います。 ○三上委員  明日、官製市場民間開放会議との意見交換会があるのですが、出資額に応じた議決権 の話が出ているので、逆に言えば、そのような出資額限度法人にすると非常に少ない出 資で議決権を取ってしまうことができる可能性がありますし、非常に微妙な話だと思う のです。 ○田中座長  ただ、判決では後からの人にはかかっていない例があるようですので、権利はないの だと思うのです。 ○三上委員  出資額は出資額を限度として権利があるのですね。 ○渡延指導課長  出資額限度でも何でもない普通の持分あり社団の所で、元の出資は少ないけれども剰 余が相当あるようなケースの所に、後から出資してきた人間が、少額の追加的な出資で 既存の人間と同様以上に社団を支配することにならないかということですね。それにつ いては、座長がおっしゃいましたとおり、最初のほうの八王子事件の高裁の判決で否定 されていると考えています。仮に、出資額限度方式に変えた後で追加出資で入ってきた ケースについては、今回の要件で見ていく限り、非同族の関係の人間を50%入れること になれば、歴史が古い所で当初の出資の額が少ない所は、追加出資の額も比較的少ない 額でフィフティーフィフティーにできる可能性があります。その時点で、将来的に出資 額限度から元の無制限定款に戻ったときに、1階部分というか、その出資の部分がほぼ 同じような額になってしまった場合に後から出資した人間が戻った世界で支配力を持つ のではないかということですね。それについては、もともと、後戻りの可能性自体は法 令で制限されていませんが、今回の報告書の思想全体に流れているのは、持分を解消す る方向に向かうことが公益性を高めるために目指していく方向だということで、法人関 係者も自らそのことを明らかにし、かつモデル定款においても、県の定款変更の認可事 務においても、そういう方向にかなうようにやっていくということであると思います。  三上委員がご懸念になっているのは、今の社団医療法人の出資の高に関係なく1人1 票制が崩れた世界でそういうことが起こり得るということですので、将来というか、二 重に向こうぐらいの話なのですが、出資額限度方式に一旦変更して追加出資をすれば、 少なくとも、既存の剰余について追加出資者に何らかの利益移転が起きても課税になる ことはないでしょう。また、出来上がった出資額限度法人の世界から仮に無制限持分あ り社団の定款に戻ったとしても、もともと出資と社員権が分離されている世界では、そ の時点で後から入ってくる人間に直ちにそれによって社団医療法人の経営が支配される ことは起こりようがないであろうし、また、実態の話として、出資額の高が事実上の影 響を与えるというところに着目してみても、50%以下に止どめているのであれば自ずと その影響は限られるであろうと考えます。 ○山崎委員  課税関係の通知についてなのですが、これは、出資額限度の標準定款とくっつけると いうことではないのですね。行政上の手続なのですが、標準出資額限度の標準定款とこ の課税関係の通知をくっつけて出すという話ではないですね。 ○渡延指導課長  社団医療法人のモデル定款をつくる際に、今回この報告書で言われていることは、報 告書の3.の部分の内容をモデル定款として表現することを考えているものですので、 5.の課税関係の部分とモデル定款の内容は切断されたものになると考えています。  山崎委員がおっしゃっているのは、我々が実際に県に対して出すときに、その文書を 局長名の2本の文書にするということなのか、1本の文書の別紙1・別紙2でつくるの もいかがなものかというお考えなのか。具体的に役人がどういう形で県に文書を出すか のスタイル自体は行政の処理にお任せいただきたいと考えているのですが、少なくとも、 この報告書で言われているモデル定款に盛り込むべき内容は報告書の3.の部分です。 5.の部分と3.の部分は分離しております。 ○品川委員  これは重要な点なので確認しておかないと皆さん方に誤解を与えるのではないか、と いうところを確認させていただきたいのです。5頁で、これは実務的にいちばん多く起 こり得る話なのですが、相続税の課税関係で、今回の課税処理の一つのポイントなので すが、社員の地位でそのまま相続した場合には現行の通達で評価されるわけです。問題 は、この「一方、社員の死亡退社に伴い、出資に関する出資払戻請求権を取得した相続 人等が現実に出資払戻額の払戻しを受けたときには、出資払込額により評価する」と言 っているのですが、父親が理事長、息子が理事で、相続が起きて、父親の出資について は払戻しが起きた。先ほどの図解ですと、400万円の払戻しを受けた。そして、翌日、 払戻しを息子の名前で増資した。その場合も、一旦、払戻しがきているから通達による 評価は行われないのですね。あるいは、1日ぐらいの違いであれば、それは実質上は出 資を承継したことになるから、400万円の評価ではなくて剰余金を含めた評価になると いう扱いにされるのか。その辺は、課税当局ときちんと刷り合わせておかないと、この 文書だけでは皆さん方にいろいろな誤解を与えるのではないですか。 ○渡延指導課長  まさに課税の問題ですから、最終的には個々の個別判断になってくるわけです。A3 の表のいちばん右側の局面と右から2つ目の局面が、ただいま先生がご提起になりまし たとおり、右から2つ目の場合で払戻しと再出資ということをやったときに、その2つ の時間間隔がどこまで狭まったときにいちばん右と同一視されるのかというご提起です。 これは、正直申し上げまして、関係当局との折衝の過程でも、最終的には個別判断によ るということ以上のものは引き出せるものではありませんので、私どもとしてもそれ以 上の詰めはしておりません。ただ、今回この出資額限度法人に係る課税関係全般を整理 するにあたって、先ほども申し上げましたが、医療法人制度の本来の運用に戻ることを 目標として掲げてこの検討をしているもので、従前の扱いと同じ効果をテクニックでや るということを目指しているものではありません。その意味で、具体的にその間隔が何 日何分だったらセーフということは詰めようもないし、詰めてもいないというところで す。 ○品川委員  そうしますと、剰余金がある場合には必ず一旦は払戻しを受けるという税理士等から の指導があると思うのですが、事実上、本書のほうの通達による評価は実務的にあり得 なくなる。皆、とにかく、だんだん厳しくなってくると、400万円は、形だけでも仕分 けだけでもいいから、何日に現金が払い戻されたという仕分けにしておいて、翌日にま た戻して、実態は何も動いていないということもあり得るかもわからない。そうなって くると、おそらく、課税当局は黙っていないかもしれないし、そこが少し気になるので す。 ○渡延指導課長  そこのところは現実の事例の積み重ねになってくるわけですが、今のケースは、この 右から2つ目のケースで父親たる理事長さんが亡くなったときに、遺産の分割協議なり をやって、その協議書に400万也が当然書き込まれるのだろうと。そして、死亡から10 カ月以内にその協議の手続を整える過程で、それに一切登場しないような形で処理され ていたならば当然否認されると思うのです。そういうような、正式の分割協議の手続を 踏んでやったような、現実にやっているようなものについて、直ちに右から2番目では なくていちばん右の事例になるようなことはないだろうと思います。その分割協議書な りに登場しなければすべてアウトか、と言われると、これも、正直なところ、個別事例 の積み重ねでわかりません。  ただ、テクニックでいちばん右側の事態を回避しようとされるのでないならば、かつ、 父親の理事長さんが亡くなった場合の個人の相続にかかわるものですから、最低限、分 割協議書にはこういうものが登場するであろう。そういうものを正しく踏んでいれば正 しい課税上の評価にも当然なってくるであろうと考えています。 ○山崎委員  言葉の質問なのですが、2頁の上から5行目に当該出資額限度法人に係る出資社員及 び役員が、その親族、使用人とあります。あと、その下の法人税法施行令の第4条の3 番目に使用人という言葉が入っています。これの範囲について聞きたいのです。 ○山下主査  この使用人という言葉は、医療法人に雇われている従業員なのか。そもそも、使用人 と言われているのはどんな人なのかということだと推察します。2頁の参考条文の4条 の3号の所に、個人である株主等に限るの「使用人」と書かれています。この使用人は 株主である個人に雇われている使用人ととらえていただきたいと思います。具体的に言 うと、医療法人に雇われている医者、看護師、事務職員ではなくて、理事長個人に雇わ れているメイド、運転手です。そういうような個人に雇われている使用人が社員に入っ ているとか、そういうことをとらえていただければと思います。 ○山崎委員  アの「使用人」という言葉も同じに解釈していいのですか。 ○山下主査  はい。 ○山崎委員  もう1点ですが、アについての(1)で「出資総額の50%を超えないこと」というのは、 50%・50%はオーケーなのですか。あるいは、51%・49%なのでしょうか。50%を超 えない場合はいいわけですか。 ○渡延指導課長  アで書いているのは「出資総額の50%を超えていること」ですから、51%以上だった らばアに該当してしまうわけです。50%までオーケーです。 ○品川委員  これは去年の法人税法の改正でこうしたのです。今までの50%以上を50%を超えると いう、商法の規定に合わせて改定したので今のご説明のようになったのです。 ○山崎委員  出資金の多い病院は、当然、この50%条項をクリアするのに減資という手続でしない とクリアできないと思うのですが、従来、厚生労働省は、減資というか、出資額の一部 払戻しは禁止していたのです。できなかったのです。そういう出資額の一部払戻しにつ いては認めるのでしょうか。 ○渡延指導課長  ただいまの社団医療法人の出資の払戻し、さらに言えば一部払戻しですが、確かに、 現在の社団医療法人の標準定款には、社員が脱退した場合に払い戻すという書き振りに なっていますが、社員たる地位を残したまま一部を払い戻すことを想定した規定は入っ ていません。  厚生労働省が、厚生省時代も含めて、出した社団医療法人の解説書を見ると、社員資 格を残したまま一部だけ払い戻すことについては、「今のモデル定款の出資額に応じて 」という規定を前提にしての解釈と思われますが、54条違反の事態が起こる可能性があ るからそれは認められないという解釈を示したものがあります。これは、正式な通知で はありませんが、過去の取扱い例としてはそういうものがあります。  今後これについてどう考えるかですが、定款を出資額限度方式に変更した事態の下で は54条違反となるような、出資に応じて剰余が払い戻されるという事態は起こらなくな る。そういうことであれば、54条違反の問題は直ちに生じることはないだろうと考えて います。ただ、山崎委員がご提起になりました減資の問題については、既にいる出資者 の全員が均等に減資するのか、それとも特定の人が減資するのかによっては、出資者相 互間で利益の付け替えのようなことが起きる可能性がある。したがって、そこは実務的 に生じる問題について十分に検討することが必要であろうと考えています。 ○山崎委員  減資の場合の課税関係はどのようになるのでしょうか。減資をした場合に、当然、課 税が生じるのでしょうか。 ○渡延指導課長  これは確認したわけではありませんが、理論的に考えていきますと、この出資額限度 法人に係る課税関係の表で「出資者の脱退」というので一部の方が脱退するケースを考 えているのですが、このケースでは、この人は400万円だけ払戻しを受けて出ていくが、 置いていった斜線をかけた部分がほかの人になるかもしれないので課税の可能性がある という議論をしているわけです。出ていくケースというのは、減資率100%と考えてそ ういうことが起きているわけですから、これが100%ではなくて、50%減資だというケ ースも同じではないか。特定の人だけが減資したケースだったらば、その人が比例で置 いて出て行った部分がほかの人に回ったと評価されて、みなし贈与課税が起きる可能性 があると考えます。それでは、今いる出資者n人全員が同じ比率で減資をしたらどうな るのか。そういうところまで含めて十分に詰める必要があるという趣旨のことを申し上 げました。 ○山崎委員  減資をした場合に、課税関係の3項目をクリアしていれば課税はされないということ ですか。 ○渡延指導課長  個別に照会したわけではないですが、脱退を減資率100%と考えれば、減資率100% で課税が起こらない世界では減資率50%で課税が起きることはないだろうと考えます。 ○品川委員  先ほどの三上委員、今の山崎委員の減資とか加入の問題に絡んでいきますと、先ほど のご説明では、出資額限度法人における定款変更をした後に減資なり加入をやって、こ こに定められている同族要件等を満たしていく。そういうプロセスの中で課税関係がど うなるかという問題はもう少しきちんと整理する必要があると思うのです。ただ、一般 的には、有利発行のような加入が入れば所得税法84条で所得税が課税されますし、減資 の場合は取得した金額がその資本等の金額を上回ればみなし配当の対象になるわけです から、こういう目的のために減資や加入が起きた場合に課税関係が生じないようにする ことについてはもう少し念を押しておく必要があると思うのです。これは、こういう同 族要件を満たした場合にみなし贈与課税等を生じないように整理したわけですから、減 資、加入については、この取扱いだけですべてカバーしにくいかもしれないのです。 ○三上委員  出資額限度法人になってしまえば増資、減資はあまり関係ないですから、普通法人で 増資、減資をして、その後で出資額限度法人になるということだと思います。 ○山崎委員  出資額限度法人でも、出資額の50%条項は相当にきついのです。したがって、増資や 減資という手続をとらないとこの条項はクリアできないと思うのです。 ○品川委員  それは加入の問題もそうなのです。ただ、一般的に、加入や減資をやってしまうと、 いずれにしても所得税の課税が生じてしまうのです。だから、こういう定款を明確にし て、その定款の要件を満たすために減資や増資をする必要があるのだということであれ ば、その減資・増資に伴う課税関係については同じような対応にしてもらう必要がある と思うのです。この趣旨からいけば、それはそういうように扱っても構わないと思うの ですが、そこのところがここで読み切れていないように思われます。 ○渡延指導課長  まさに、実務的に詰める必要があると申し上げたのはその点です。 ○豊田委員  非常に大事なところでまた曖昧な点が出てきました。例えば出資額限度方式になるの だから、税制の上では減資も、みなし配当という疑いも全部なしで、そういうことが生 じない形でこういう処理ができますということで、そこまで議論が進んでくると、法人 の自治に任せる形、要するに法制化されない世界でこれから不透明な部分をずっと広げ ていくことになる。私は、そういう意味からも、これはきちんとした法制化をした上で その議論をしないと行かないと思うのです。今回、新しく出てきた出資持分、社員の数、 この2つの50%は古い医療法人ほど難しい問題なのです。しかし、法制化はされていな い。最初に定款変更をしたときに課税されないというのはまた戻るかもしれないという、 非常に自由度は認めているけれどもある意味では曖昧です。日本の税制はそういう不確 定なものにはそんなに甘くないというのは皆さんの常識だと思うのですが、この出資額 限度方式をきちんとした形にするためには、後戻り規制を法制化して、制度として確立 した上でなければ、ここに出ている財産評価の基本通達に対して影響を与えることがで きないと思うのです。  確かに、今回は規制、制度化がなっていない中で整理されて、それはそれで高く評価 されるのですが、私どもが、長年、この出資額限度方式の実現を目指して推進してきた のは、そういう曖昧な形ではなくて、制度と税制がきちんとした形で整理されることで す。現在の日本の医療提供体制の中で、医療法人が病院を経営するのは全体の数の中で 6割近くになるし、病床数にすれば40%を超える。こういう役割を果たしている97%が 持分のある社団なわけですから、そこの安定化を図るという意味からすれば曖昧なこと は許されないと思うのです。ですから、今回のこの検討会でのまとめは高く評価します が、あくまでも途中経過であって、ゴールはきちんとした法制化をして、それに税制が 伴った形で整理をするということでなければならないと思います。後になりましたが、 6.の今後の課題の中に、その一言をぜひ加えていただきたい。これは全般に通ずるこ とですので、よろしくお願いしたいと思います。 ○渡延指導課長  事実関係について補足して説明いたしますが、今回の出資額限度法人についての移行 等に伴う課税関係、これは、省令まで含めて現行の規定を前提に、かつ現行の税法の規 定を前提に、適用関係を整理したらこうなるということで、それがただいまご説明した A4横長のものであり、それを模式的に表わしたこの絵です。ここまでは、ある意味で は、最終的に個々の事例の個別判断に委ねられているところがありますが、一つの現行 の法制を前提にした明確な整理であると私どもは考えています。  それで、これを実務的にクリアしていくさまざまな方法を考えるにあたって、例えば 今の社団医療法人の出資の階級別の分布を見た場合に、2,000万円未満は累積で71%、 5,000万円未満は累積で93%になっています。したがって、仮に、今ある出資が全員同 族関係者であったとしても、外から同じ人数、追加の出資を2,000万円入れれば50%要 件のクリアは可能だという、粗っぽく言ってしまえばそういう状況にあります。もちろ ん、それを出資額限度方式に変えてからやるか、変える前にやってしまうかについては 実務的に十分詰める必要がありますが、そうした新規の出資を受け入れることによりク リアする方法、あるいは、さらに技術的に難しくなりますが、既にいる出資者が減資を することによってクリアする方法。そういうものを、今回、個別判断による部分はあり ますが、明確に打ち出されたフレームの下でクリアしていく方法として、実務の領域で 詰めるものが今はあるという状況だと考えています。豊田委員が後半でおっしゃったと ころは、さらにその先の残された課題ということで、両者の関係はそういうところです。 もちろん、今回示されたものを実務的にこなしていくやり方について、まさに実務の実 務で個別に当てはめなければわからない部分が出てくるのは必然ですが、それをもって 今回の整理全体のフレームに不分明な部分が多数残っているということではないと考え ております。 ○田中座長  医療法上の扱いについて、今後、検討してほしいというご主張は、最後の文章に込め られているといえば込められているのだと思うのです。それは誰も否定していないと思 いますので、今後、検討を大いにし、また、各団体から提起をいただく。我々の報告書 の中の趣旨としてはそのように書かれていると理解いたします。  最初より少し遅れましたが、今日の段階でまとめておかないと他のいろいろな会議等 にも影響しますので、できれば、今日のところは先ほどの細かい語句の訂正でご容赦い ただければと思います。いろいろとご発言いただいたことは議事録に残りますし、方向 性の確認は本日の議論でも何回も出てきましたので、かなり一致した方向性で将来につ いての議論もいただいたと考えております。では、皆様のご協力によってここまでまい りましたこと、また、それぞれのお立場でご熱心に問題提起をいただき、解説をいただ いたことに感謝いたします。最後になりますが、岩尾医政局長に一言ご挨拶をお願い申 し上げます。 ○岩尾医政局長  先生方、お忙しい中、貴重なご意見、また「報告書」をまとめていただきましてあり がとうございました。持分のある社団法人の払戻しに起因する諸問題、永年の問題であ りまして、この検討会でお取組みいただいた結果、課税の取扱いについての認識を共有 し、私ども行政のみならず、関係団体を含めて今後の取り組む方向を提示いただいたと 思っております。厚生労働省といたしましては、この報告書を踏まえて早急に出資額限 度法人の仕組みの普及、定着に向けて取り組むとともに、併せて特定・特別医療法人の 要件の見直し等、引き続き取り組んでいきたいと思っております。最後に豊田委員がお っしゃいましたが、これを定着に向けて取り組んでいくと同時に、制度なり税制改正と いう、医療法も含めた見直しも視野に入れていかなければならないと思っております。 本日はありがとうございました。 ○田中座長  最後に、事務局から「報告書」の取扱いについて説明をお願いいたします。 ○渡延指導課長  本日のご検討を通じまして「報告書」の案文自体の修正箇所は1箇所だと認識してお りますので、修文につきましては、最終的に座長にご確認いただきまして、本日付で当 検討会として報告を集約したという形とさせていただきます。これを受けての行政部内 での取組みですが、早速、この「報告書」の内容を受けまして出資額限度法人に係るモ デル定款の作成に取り組みたいと考えております。その際は、先ほど委員からご指摘が ありましたとおり、課税関係との相互関係については本日のご議論を踏まえて対応させ ていただきたいと考えております。その上で、都道府県等関係機関に対して、法令の改 正は必要ありませんので、通知発出という形で対応を図ってまいりたいと考えておりま す。なお、本席には医療関係団体の先生方が多数ご出席でございますが、報告書の中に ありますとおり、内容の普及、周知にあたりましてはまた改めて個別に各団体のご協力 をお願いする局面があろうかと思いますので、何とぞよろしくお願い申し上げる次第で ございます。 ○田中座長  それでは、本日はこれにて終了いたします。お忙しいところをご出席いただきまして ありがとうございました。                                   (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 大門 龍生(内線2560) 医療法人係長  伊藤 健一(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194