04/06/11 国際協力事業評価検討会(第2回労働分野) 議事録 国際協力事業評価検討会(第2回労働分野) 1.日時 平成16年6月11日(金)10:00〜13:00 2.場所 厚生労働省専用第16会議室 3.出席者 【会員】    吾郷眞一会員(九州大学大学院)               今野浩一郎会員(学習院大学)               城内博会員(日本大学大学院)               末廣昭会員(東京大学)               中村正会員((財)日本ILO協会)               野見山眞之会員((財)国際労働財団)               末森満会員代理((独)国際協力機構)       【専門会員】  山口典史専門会員(外務省)               長谷川敏久専門会員((独)国際協力機構)               西田和史専門会員(厚生労働省)               縄田英樹専門会員( 〃 )               弓信幸専門会員( 〃 )               佐々木邦臣専門会員( 〃 )               星田淳也専門会員代理( 〃 )       【有識者】   湊直信((財)国際開発高等教育機構                      国際開発研究センター)       【オブザーバー】中垣朋博(外務省)               田代治徳((独)雇用・能力開発機構)               広田啓佑((財)国際研修協力機構)               川上光信(中央職業能力開発協会)               坂井澄雄((独)労働政策研究・研修機構)               成岡衛((独)高齢・障害者雇用支援機構)               齋藤文昭(中央労働災害防止協会)               寺本隆信(ILO駐日事務所)               中井 修((財)海外職業訓練協会)               加山美鶴((財)国際開発高等教育機構                        国際開発研究センター)       【事務局】   村木国際課長、福田室長、山崎補佐、釜石補佐、               吉田補佐、細川専門官                                  〔敬称略〕 4.議事 ○ 釜石補佐  お早うございます。皆様お揃いのようですので、ただ今より国際協力事業評価検討会 労働分野の第2回会合を開催いたします。  初めに、人事異動により新任となりました専門会員、オブザーバー、事務局をご紹介 させていただきます。外務省経済協力局技術協力課から山口課長補佐、当省職業安定局 雇用政策課の弓課長補佐、労働基準局安全衛生部国際室の佐々木室長補佐です。雇用均 等児童家庭局の赤塚係員は本日欠席です。オブザーバーとして、外務省経済協力局調査 計画課から中垣課長補佐、雇用・能力開発機構国際協力課から田代課長、財団法人国際 研修協力機構能力開発部の広田主任調査役、中央職業能力開発協会国際協力部の川上課 長です。事務局として、前回欠席でしたが、国際協力室の福田室長、国際協力専門官の 細川でございます。また、後ほど政策・プログラム評価の手法をご紹介いただきます、 財団法人国際開発高等教育機構「FASID」の国際開発研究センターの湊所長代行で す。FASIDからは加山さんにも来ていただいております。  続きまして、配付資料の確認をいたします。「議事次第」、「出席者一覧表」、「座 席図」の他に、資料1「第1回検討会議事録(厚生労働省HPに掲載済)」、資料2「 第1回検討会における指摘事項と参考資料」及び「第1回検討会における指摘事項と検 討課題」、資料3「厚生労働省のODA(労働分野)の実施状況」、資料4「他機関に おける評価手法等」、資料5「外務省の行うODA評価」、資料6「厚生労働省の実施 する政策評価」、資料7はFASIDの湊所長代行によるブリーフィングレジュメ(別 冊)「政策・プログラム評価ハンドブック」、資料8「検討会(労働分野)の運営につ いて(改正案)」となっております。何か不足がありましたらお知らせください。それ では、吾郷座長以後の進行をよろしくお願いいたします。 ○ 吾郷座長  本日の議事次第の順序の入替えについても、釜石補佐よりお願いいたします。 ○ 釜石補佐  本日、何人かの会員の方が、所用により途中で退席されますので、最初に議事次第の 4の分科会、5の日程調整の話をさせていただきたいと思います。 ○ 吾郷座長  途中退席される方がいらっしゃいますので、第4、第5議題から先に行いたいと思い ます。一番技術的な問題としては、5のその他にある次回の日程調整です。次回は9月 後半がよろしいということですが、皆様方のご予定はいかがでしょうか。  大体伺いましたが、この件についてはここで決められそうにないので、最後の週辺り でまた調整させていただきます。第4議題の分科会等について、釜石補佐にご紹介をお 願いいたします。 ○ 釜石補佐  資料8は前回の検討会で提案させていただき、若干修正の上、ご了承いただいたもの です。それを多少直し、アンダーラインを引いております。1頁目の一番下、「検討会 の開催方式」に「合同検討会の開催」というものを加えております。現在、保健・医療 分野の検討を行っているわけですが、その他の分野も始まれば、それも併せて今年度末 に合同検討会を開催できればと考えております。それに伴い、別紙2の日程案が変わり ました。前回出したものでは、9月にILOマルチ・バイ協力のあり方、12月に人材の 育成戦略となっていましたが、これを統合し、9月に実施し、12月には評価の発表・紹 介、国際協力事業の問題点の改善の方向についてのフリーディスカッションにしていき たいと思っております。そのようなことで、年度末に各分野合同の検討会を開催したい と思います。  運営についての7「分科会等の設置」で、別紙1に開催案が書かれてあります。労働 の主な分野ということで4つほど考えられますが、似た分野については合同で検討する ということで、1番に「雇用・能開分科会」、雇用分野と職業能力開発分野の事業につ いて評価を試みようというものです。これは事務局の全くの素案ですが、野見山会員、 今野会員、末廣会員、弓専門会員、西田専門会員、縄田専門会員以下、オブザーバーの 方、その他本分科会に参加を希望される方を考えております。  2番目が「労使関係・労働基準分科会」で、労使関係分野及び労働基準分野の事業に ついて評価を試みるものです。構成員は中村会員、城内会員、松岡会員、片淵専門会員、 佐々木専門会員、オブザーバー、本分科会に参加を希望される方となっています。改正 案については以上です。 ○ 吾郷座長  検討会の運営規約の改正について、とりわけ合同検討会の開催と分科会の設置につい て、ご意見があればお願いいたします。釜石補佐から説明があったように、構成員につ いては、ある意味では事務局案として出ており、一部には了解されている方もいらっし ゃると伺っております。今日初めてご覧になる方もいらっしゃると思いますが、これで よろしいでしょうか。その他、特に下線が引いてある部分の変更内容についてご意見が なければ、この改正案といたしますがよろしいですか。                    (異議なし) ○ 吾郷座長  ありがとうございます。ご了承いただけたことといたします。次に、議題2「第1回 検討会における指摘事項」に戻り、始めていきたいと思いますので、釜石補佐より説明 をお願いいたします。 ○ 釜石補佐  第1回の議事録が資料1で、これは厚生労働省のホームページにも掲載しているもの です。資料2は第1回検討会で指摘いただいた事項、その回答となるもの、参考資料の 対応状況などをまとめております。中村会員から事業評価について、JICA、外務省、 UNDP、ILOの行う評価はどのような視点で、どのような基準でやっているのかと いう指摘がありました。吾郷座長からも、そのような評価を活かしてどのように取り込 んでいけるかを検討すべきというお話がございました。これについては、後ほど、他機 関におけるODAの評価手法、外務省の評価で紹介していくことにいたします。  野見山会員からは、これまでの主な分野の国際協力事業で、誰がどのような方法でど んな評価をしたかという質問がありましたが、これについては厚生労働省の実施してい る政策評価について、資料6を使い説明したいと思います。  これまでの調査・研究の反映状況について、野見山会員から調査・研究の提言、結論 を事業に盛り込んでいくことに、どのような配慮がされているかという指摘があり、こ れは資料3の説明に合わせてある程度できればと考えております。  これまでの国際協力事業の実績について、末廣会員から予算額を出してもらいたい、 事業の分野別と対象国がわかる資料をということで、これは資料3に用意してあります 。  中村会員からの国別援助計画の質問については、16か国作成済みで、うちアジアが8 か国ということで右に書かせていただいております。  裏には、今後検討すべき事項として整理ができると思われるものについて取りまとめ てあります。今野会員から指摘があった、厚生労働省として、労働分野の援助で何を実 現したいのか、あるいは何を目標とするのか、アドバンテージは何かというお話につい ては、主に来年度の検討会でお願いすることになると思いますが、検討いただき、提言 にまとめていくことを目標にしたいと思います。  末廣会員から指摘のあった、国別支援委員会への本検討会意見の反映というもの、省 庁を超えた横断的な労働の協力の問題についてですが、国別支援委員会というものがJ ICAの行う委員会ということで、当省から参加するとなると、オブザーバーで参加す ることになると思いますが、当省の行っている事業の紹介など、必要な紹介ができると 思います。外務省で取りまとめる国別援助計画策定の際には、本検討会の提言を踏まえ て、厚生労働省として意見を述べていく。また、既存の国別援助計画は16あるわけです から、それを踏まえた形で、本検討会における検討も深めたいと考えております。横断 的な労働分野の問題については、提言にまとめられればと考えております。  本検討会は労働分野ということですが、他にも3つ検討を行うことから、それぞれ重 なる部分があるという指摘が末廣会員からあったところですが、その線引きについては、 厳密にするのではなく、合同検討会の開催などにより、できるだけ議論を共有していき たいと考えています。  職業訓練の協力は、高等教育という側面と産業人材の育成という側面があるので、整 理が必要ではないかという末森会員からの指摘については、当省としては職業訓練を担 当していることから、職業訓練の協力は実践技術に優れているというアドバンテージを 持っていると考えておりますので、それを活かしつつ、関係省庁とも協力したいと考え ております。  今野会員から指摘のあった、国内施策の政策評価とODAの評価では何が違うかにつ いては、評価をするということについては基本的には同じであるべきだと思われます。 今回の検討会で議論が深まればと考えているところでございます。  資料3は、厚生労働省が予算措置をして、ODA事業として実施している労働分野の 事業の実施状況です。別紙1は事業の項目、それに対応した平成11年度から平成16年度 までの各年度の予算額の推移です。右端は事業の統廃合など、予算的な変動があったも のについて書かれてあります。備考の(一)、(特)と書かれてあるのは、一が一般会 計、特が特別会計となります。最後の合計のところを見ると、合計額の推移がわかりま す。平成11年度は約55億円であったものが、平成16年度予算では約32億円と、減少傾向 です。別紙2は、各項目で具体的にどのような事業をやっているかということ、対象地 域はどこかを取りまとめておりますので、後でお目通しいただければと思います。  別紙3は、労使関係、安全衛生、職業能力開発といった分野別の予算額ベースで、割 合を円グラフに表したものです。左が平成11年度、右が平成16年度となっています。裏 は事業の項目の数で見た分野内訳で、平成11年度が計28本、平成16年度は計19本となっ ています。  別紙4は、事業予算ベースで対象地域を分けたものですが、当省で行っている事業は アジアを対象とし、各年度違う国を対象にしたり、一度にアジアのいくつかの国から研 修生を招聘するような事業が多い関係で、アジア・太平洋地域という大きな分類になっ ております。事業の中で、アジア・アフリカ・中南米といった異なる地域を同時にやっ ているものもあり、これは分けられないので便宜上このような形となっています。アジ ア・太平洋地域の中でも、ILO加盟国という切り口で協力しているもの、あるいはA PEC(アジア太平洋経済協力会議)という枠組みの中で協力しているもの、ASEA Nということで分けているものなどがあり、それを右に付けてあります。これが事業予 算ベースで、最後の頁が事業の本数ベースというものです。  こうして見ていきますと、分野別で言うと、職業能力開発分野のウェートが高いこと がわかります。地域で言うと、アジア・太平洋地域を中心としていることがわかると思 います。  野見山会員から指摘のあった、これまでの調査・研究の提言、結論の協力状況への反 映ですが、例えば、協力対象地域を拡大すべきだという話については、アジアからさら にアフリカ・中南米と動いているかというと、あまりそのようなことはなく、アジア中 心のままです。インドシナへの協力を重視すべきということについては、最近ASEA Nの後発4か国であるCLMVへの協力を重視するという方向が出ております。協力分 野の拡大という指摘も調査・研究結果から出ているのですが、特にその中でも就業機会 の創出・維持のプロジェクトに力点を置くべきという指摘については、まさにそのよう なことになっていると思います。特にILOのマルチ・バイ協力ではそのような傾向に なっていると思います。  協力の任務に就く人を養成していくべきという提言については、ILOのマルチ・バ イ・プログラムで技術協力専門家育成事業を平成15年度から開始しており、そのような 取組みもなされるようになりました。その他開発途上国間での協力、いわゆるTCDC というものについては、先発国の機材・施設を活用した、CLMVに対する人材養成の 協力事業というものも今年度から始まりますし、NGOの活用という点については、厚 生労働省の行う事業は相当部分が関係の公益法人に補助をする、あるいは委託事業とい う形で実施しているので、そのような面の活用は進んでいると言えます。資料3関係は 以上です。 ○ 吾郷座長  第1回検討会における指摘事項及び事務局からの回答、提案をいただきましたが、こ れについてご意見をお願いいたします。 ○ 野見山会員  私は質問した立場から、すでにいただいた資料を拝見し、対象地域の選定などで重点 化しつつあるということ、事業の再編・整理がかなり行われているということが、予算 の変更、再編・整理などを伺いましたので、これらが提言等を参考にしていること、ニ ーズに対応しているという感じがいたしました。最後に、いくつか項目別に説明があっ た分野、NGOの活用についても今伺いましたので、提言がかなり参考になっていると 思いました。私としてはそれで十分理解できました。ありがとうございました。 ○ 中村会員  厚生労働省全体、あるいは保険が入って予算がすべて厳しいというのはよくわかりま すが、減り方と比較して、この技術協力の予算の減り方はちょっと激しいのではないか という気がします。55億円だったものが30億円になる、半分近く減ったのですが、厚生 労働省の予算は半分近く減ったわけではない。なぜ、こんなに国際協力が減ってしまっ たのかと寂しく感じます。 ○ 野見山会員  マルチ・バイはしっかりやっています。 ○ 村木課長  全体の中で比較する資料を今持っておりませんので、正確には申し上げられませんが、 厚生労働省全体の予算で言うと、ご承知のように、社会保障等で高齢化に伴う莫大な自 然増がありまして、そこを何とか抑えつつ、それでもどうしても膨らんでいく部分が、 他の経費を圧迫し、しわ寄せを与えているということを、多少言い訳じみていますが申 し上げておきたいと思います。  特に、平成11年度からの予算をご覧いただくと、その辺が大変厳しい状況にあった平 成13年度から平成14年度、平成14年度から平成15年度にかけて、政府予算の全体の見直 しも大変厳しく、大幅なカットになってしまいましたが、その後、平成16年度にかけて は多少の微減になっています。来年度の予算については全くこれからの話ですが、今の ところ予算担当からは、今年度予算以上に厳しい状況にあるので、効率的な執行、予算 の作成をしてもらいたいという話がきております。最初に申し上げましたように、とに かく厚生労働省は社会保障関係の当然増が、来年度さらに大きくなる、これが非常に大 きな要因としてあるようです。 ○ 今野会員  分野別を見ると、平成11年度から平成16年度、ILOを通じた協力が比率として増え ているわけですが、ここは分担金の問題があるから、かなり固定費的だと思います。全 体的な予算が縮小すると、この比率がまた膨らむという感じでしょうか。 ○ 末廣会員  大変詳しいものを出していただき、ありがとうございました。似たような質問ですが、 ILOに対する分担金が固定化しているならば、この分野での事業は、厚生労働省自体 はプロジェクトについて意見が言えるのかどうか。つまり、外で決められたことに精通 するだけで、それ以外の部分は厚生労働省が自主的に別段できる部分なのか、そこをち ょっと確認したいのです。 ○ 吾郷座長  実は私も今気が付いたのですが、この表の結果として、職業能力開発の比重が一番高 くなっているという結論が導かれています。それを分けてやっていったら、必ずしも同 じ結論が出るか出ないか、わからないのではないかという疑問をちょっと感じました。 これは固定なのか、あるいはマルチ・バイの場合は多少伸縮自在というか、政策判断に よって付ける場合と付けない場合があるかと思うのですが、その辺りはいかがでしょう か。 ○ 釜石補佐  分担金は固定的と言いますか、外の要因で決まっているという感じだと思いますが、 拠出金については、自主的な、ボランタリーなコントリビューションでして、基本的に は、ILOでこのような事業をしたいというプロポーザルが上がってきて、当方で審査 して役立つという有要性が認められた場合は、予算要求をし、拠出していきます。向こ うから提案があった段階で、日本としての重点・方針を考えつつ、決めていくものです。 そのような点で、雇用創出を重視したプロジェクトを実施している、基本的な労働条件 を確保していくような事業を実施する、そのようなプロジェクトにお金を出していくと いったことはやっております。 ○ 吾郷座長  そうであるならば、ILOを通じた協力のうち、固定した分担金は確かにILOへの 拠出金ということで決まるのですが、それ以外のものについては、労使関係(青色)に 4分の1ぐらいとか、能力開発(黄色)のところに、ある意味では点線でILOを通じ たマルチ・バイの職業能力開発ということで組み込んでいくことができるのかという気 がするのです。 ○ 釜石補佐  そのような意味では、ILOを通じた協力というものはいろいろな分野でやっており、 毎年違っている場合もあるので、それを労使関係や安全衛生などに分けて入れられてい ないのですが、これらの分野をやっていることには間違いないです。 ○ 村木課長  若干補足をいたしますと、繰り返しになりますが、ILOを通じた協力ということで ひとまとめにしてしまったのが、ややミスリーディングだったと反省しております。こ の中の義務的経費である分担金の一定割合、これは我々のコントロールが基本的には効 きません。もちろん、理事会等での議論を通じたコントロールというのはありますが、 それ以外の部分、私どもはマルチ・バイと言っていますが、ILOが提案し、あるいは 我々が提案する場合もある。要するに、両方が協力をして実施したい、我々として、I LOのノウハウを活かして経済協力を実施したいという事柄について、ILOにお金を 出して、ILOを通じて実施するという仕組みがあり、それが入っております。トータ ルとして、ILOを通じた協力という部分のウェートが少し増してきているというのが、 平成11年度から平成16年度にかけて表れてきているのです。分担金自体はほとんど変わ っておりません。  その中で、座長が言われたように、例えば労使関係、能力開発、雇用開発など、多面 的な協力を行っておりまして、本来ですと、全部切り分けて整理をすることができます し、そうすべきだと思いますが、ちょっと追いかけていくという技術的な問題があって、 ここではひとまとめにしてしまったということです。全体的な傾向として、ILOのマ ルチ・バイについては、雇用開発や労使関係辺りが中心になっていると考えております。 ○ 城内会員  私はどちらかと言うと安全衛生ということで参加しておりますので、平成16年度の事 業予算額ベースというグラフを見て、ちょっとショックを受けました。ODAの予算と いうのは、技術協力等に関しては、技術協力をする国の要請を受けてやっているという ことが、たぶんベースになっていると思いますが、それにしても、交渉していく段階で は、日本政府の立場・ポリシーもその中で当然生きていくと思うわけです。そうすると、 ILOのマルチ・バイ等は別としても、少なくとも平成16年度について、事業予算額ベ ースでゼロになったということは、日本政府としても、労働安全衛生に関しては、今後 あまり力を入れないというポリシーが出ているのか。たまたま他の国からの要請、プラ イオリティが低くてこのような結果になったということなのか、その辺の見解を教えて いただきたいと思います。 ○ 釜石補佐  円グラフではゼロになっておりますが、平成16年度も一応事業は残っておりまして、 19番の「アジア労働安全衛生技術協力実施費」が630万円とあります。額が小さいのでパ ーセンテージとして出てこないのですが、ゼロではありません。 ○ 佐々木専門会員  安全衛生部から一言付け加えさせていただきますと、これは安全衛生分野での協力は やる必要がないと考えてこのようになったというわけでは決してなく、この中には出て きておりませんが、JICAを通じたプロジェクトについても現在実施しておりますし、 現時点でも、来年度に向けて要望が出てきているということもあるので、我々としては 、そういったニーズがある限りは今後も続けていきたいと考えております。たまたま現 時点でこのような数になっていることは、我々としてもちょっと寂しく思っているとこ ろでございます。 ○ 吾郷座長  いまJICAを通じてと言われましたが、JICAを通じたものは全然反映されてい ないわけですので、そこに安全衛生部門、その他別の領域も含めて相当入ってきている 可能性はあります。 ○ 釜石補佐  一応、安全衛生関係のプロジェクトが1つマレーシアで動いているなど、そのような ものはJICAベースでやっていることがあります。 ○ 今野会員  例えば、訓練センターをつくるなどというのもJICAベースですね。そうすると、 我々はこれをポジショニングできないといけない。労働関係全体でJICAでもいろい ろあって、その中でどの辺のポジショニングかがわかること、正確なことはいいのです が、大体のポジショニングができればいいと思います。今度、この分野で一番多いのは 能力開発分野ですが、能力開発についてはいろいろなやり方があるのだろうと思います。 ざっと予算を見てみると、人材を海外から日本に連れてきて、長期で日本で養成して戻 すという、例えば研修生、技能実習生といったスタイルの能力開発のウェートはもちろ ん高いということが、予算規模から見て特徴だと考えていいのですか。 ○ 釜石補佐  おそらく、そのようなことになると思います。 ○ 今野会員  その辺は、かなり日本らしさがあるということですか。これをざっと計算してみると、 定義は難しいのですが、研修生受入れ、実習生受入れといった、連れてきて比較的長期 に日本の中で養成をして戻すという方法の予算が、たぶん10億円以上はあるのではない かと思うので、金額ベースで見ると、能力開発の援助の中での主力はそこにあるという 認識でいいですか。 ○ 釜石補佐  それはまさにそのとおりであるかと思います。ODAベースでやっている研修生受入 れというものもあれば、技能実習制度のように、国の補助・援助がない全くの民間ベー スで日本に研修生が来て、技能を身に付けて帰っていくというスキームもあります。そ のようなものも含めれば、まさに主力だと思っております。 ○ 今野会員  極端なことを言うと、もし、ここで政策効果を能力開発で見たい、プライオリティを 付けたいと言ったら、研修生やその辺だけを評価すればいいということになりそうです。 ○ 西田専門会員  今野会員が言われた点についてですが、確かに、我々能開局においては、国際協力は JICAの協力も含めた形で4つを大きな柱として位置付けております。JICAにつ いてはセンターを置いて専門家を派遣していくといった政府ベースの協力。残りの3つ ですが、そのうちの2つは外国人研修生の受入れと外国人留学生の受入れ、基本的には 国の指導者になるような人を受け入れる、あるいは民間ベースで受け入れるところを支 援することに重点を置いています。残りの1つは、国際機関やASEANやAPECを 通じた協力ということです。少なくとも政策評価ベースにおいて、当省の予算で要求し た事業については行っているところではありますが、JICAのほうでどうするかとい うことは、要検討だと思います。 ○ 村木課長  専門家の皆様を前にして、釈迦に説法になると思いますが、私の感想を述べれば、1 つには今野会員が言われたように、例えば職業訓練なり労働分野全体、日本としてのO DAがどうなっているのか、その中での厚生労働省がやっていることは何なのかという マッピング、ポジショニングは、背景事情として考慮する必要があるだろうと感じてお ります。ただ、私どもとしてここでお願いしたいのは、日本全体のODAについてどう 考えるかではなくて、我々がこれからどうしたらいいかということについて、いろいろ と教えていただきたい、これについてある程度焦点を絞っていきたいと思っております ので、その辺はご理解いただきたいと思います。  もう1点、これも今野会員が言われた、日本として、あるいは厚生労働省としてのア ドバンテージは何なのかです。今西田専門会員も言われましたが、できるだけ実践的に する、現場を大事にするという意味で、日本に連れてきて現場を体験させることは、方 法論ではありますが、日本のアドバンテージであり、かつ厚生労働省が比較的得意にし ている分野であろうと思っております。  もう1つ、これは予算上には反映されませんが、私どもは人的な協力ということで、 JICAベースの協力に対して専門家を派遣することを随分やっております。その際も、 個人的な感想では、どちらかと言うと欧米が理論に基づいて、いわば教科書で教えると いうやり方をするのに対して、できるだけ現場に密着し、一緒になって問題点の解決を 図っていくという姿勢で進めていく、これを私どものやり方としてこれからも通してい けるのではないかと思っております。 ○ 野見山会員  分野別の問題とこれからの展開の方法について、50億円から32億円に減ったわけです が、32億円の中身を今後どうするかという議論では、検討が矮小化される恐れがある。 やはり、JICAを通じた協力ということが労働分野でもかなりの部分あるわけですか ら、その検討がどこまで進むかわかりませんが、少なくとも、32億円に限定せずに、も う少し広い分野で検討した上で、その評価をしていくという立場を取っていってはどう かと思います。  JICAで進めている労働分野の評価方法というのは、もちろん、JICA自身持っ ているわけですから、JICAでの評価はあるでしょうが、専門家である厚生労働省の 立場で、JICAのやっている協力をどう考えるか。JICAベースというのは国別の 問題や外交政策という立場が強く出てくる可能性があります。しかし、同じJICA事 業の評価でも、厚生労働省から見た場合は、外交政策とは多少違う見方というものもあ って然るべきだと思います。そのような意味で、評価の仕方、評価の範囲をもう少し弾 力的に考えていただいてはどうかと思います。 ○ 末森会員代理  労働分野での技術協力については、今JICAのほうでも研究会を開いて、今までの 実績とこれからの方向性をまとめようとしております。その中で、先ほどありました国 別にどうするかが非常に重要なので、国別の方針を立てていかなくてはいけないのです が、外務省で作っている援助計画の中で重点分野に指定されないと、なかなかピックア ップされないという意味では、それを受けてJICAはどのような方向で整理するかを 進めたいのです。  もう1点はこの間と同じ議論になるのですが、例えばインドネシアで産業人材の育成 をやるときに、ポリテクとかそのようなレベルでいくのか、職業訓練という分野でいく のか、この辺りの整理が非常に難しいので、いろいろと指摘をいただき、厚生労働省と もよく相談しながら詰めていきたいと思っております。教育の分野で特に技術教育、職 業訓練の分野については、今初等・中等教育にかなり力を入れようという話がアフリカ 中心にあります。  全体的なバランスとして、ODAのJICAの部分も予算が減ってきており、どのよ うに配分をするかというと困るので、厚生労働省で考えられる各国への対応、どのよう な方向で協力をするか、どこに重点を置くかなど、選択と集中といったことも少し考え ていかないと、なかなか整理ができないのではないかと思います。そのような面で、我 々が今までJICAレベルで分析し、今後どうするかというところを、よく相談しなが ら詰めていきたいというのが現在のポジションです。 ○ 吾郷座長  いくつか大きい論点を出していただきましたので、再度よく検討していただくことに して、議題3の具体的な評価方法・手段に移ります。国際協力事業の評価手法等につい て、事務局より説明をお願いいたします。 ○ 釜石補佐  他の国際協力事業実施機関による評価手法について、山崎補佐から説明いたします。 ○ 山崎補佐  他機関における評価手法について、配付した資料をもとに簡単に説明いたします。順 序としては、第3番目に掲げているJICAの事業評価に関する部分を別紙3で説明し た後、国際機関であるILO、OECDと進めます。JICAの評価調査については、 本来は専門家であるJICAから説明をいただいたほうがいいかもしれませんが、それ では事務局が怠慢だというご批判もあろうかと思いますので、私から説明をいたします。  基本としているのは『JICA事業評価ガイドライン改訂版』、副題が『プロジェク ト評価の実践的手法』という書籍です。この中のごく一部を引用したものが別紙3の表 です。JICAは基本的には、この流れで評価を実施しています。プロジェクト評価に 焦点を当てた考え方ではありますが、ここに示されている基本的な概念、基本的な方法 論というものは、プログラム評価にも適用が可能であるという認識で行っています。こ の流れを見ていただくと、まず6つのステップがあります。(1)「評価の目的の確認 」から始まり、ステップ(6)は「評価結果の報告」という流れになります。  これを少し大括りで見てみると、調査の計画段階がステップ(1)〜(3)になりま す。調査の実施段階がステップ(4)(5)、最後が調査の報告という段階を踏んでい きます。ステップ(1)では評価の目的を確認するという作業があります。評価結果の 活用目的を確認する。想定される利用者は誰であるかの確認をするのです。通常であれ ば、事業の実施部門、あるいは事業の対象となっている相手国の実施機関といったもの が、この評価を活用する、利用するということです。  その次は、評価対象プロジェクトの情報を整理するという作業が入ってきます。対象 プロジェクトの計画内容・実施状況といったものを把握する。通常であると、この中に おいてロジカル・フレームワークと言われているログ・フレームを活用して、この作業 にあたるということになろうかと思います。  次は評価のデザインですが、評価5項目ごとに評価設問を設定する。すでに専門家の 皆さんご承知のとおり評価5項目とは、妥当性、有効性、効率性、インパクト、自立発 展性、というOECD−DACが推奨している5項目を基本として評価設問を設定して、 その評価設問に対する価値判断の基礎・方法を検討・決定するということになろうかと 思います。評価に必要なデータ・情報源を検討・決定をする。さらには、データの収集 方法を検討・決定をする。そして評価デザインをまとめた「評価グリッド」を作成する という形になろうかと思います。このOECD−DACの評価5項目については、本日 の資料5の別紙3にその内容、概略を説明してありますので、ここではその説明は省略 させていただきます。  調査の実施段階に入ると、データの収集と、その分析と解釈という手順に進むわけで す。現地調査の実施、あるいは国内での調査の実施ということになります。データの収 集方法についてはさまざまな方法が考えられますが、典型的なものとしては文献、既存 資料の調査、評価者の直接観察による調査、アンケート・クエスチョネアによる調査、 インタビュー調査、さらには、フォーカス・グループディスカッションのようなワーク ショップ形式によるデータの収集というやり方もあります。これらはコストや時間の面 でさまざまな長所・短所がありますが、こういった収集方法の中で、適当と思われるも のを実施することになろうかと思います。  次に(5)データの分析と解釈という段階になると、データを定量的・定性的な分析 手法によって分析して、その分析結果をもとに阻害・貢献要因を特定して、そういった 評価結果から全体の結論を導き出す。そして、最終段階にはその提言を策定して教訓を 抽出する。こういった形に収斂されていくということです。  最終段階では評価結果の報告ということで、「事業事前評価表」または「評価調査結 果要約表」を取りまとめる。そして、中間評価以降の調査になると、「評価報告書」と いう形でこれを結実させるということになっています。次回、その報告書がフィードバ ックされて、他のプロジェクト等の改善に活用されるという流れになっております。こ れが現在JICAで行われている実践的な評価、調査の流れです。不足の点がありまし たら後ほど補足していただければと思います。  次に国際機関の関係として、まずILOとOECDです。もう少し評価の実践的・具 体的な例を入手できればよかったのですが、残念ながらそういった実践的なものではな くて、今回紹介しますのは、現在の評価の基本的な考え方や哲学・背景といったものを ピックアップしたものです。  ILOで現在行われている評価は、2002年11月に理事会に提出されて了承を得た「戦 略的予算における評価」という文書がその基本となっています。そう目新しいものはな いとは思いますが簡単に申し上げるとこの3の記述です。ここで提案をしている評価ア プローチというのは、国連のシステム内部で推薦されているnorms、あるいはstandards を反映しているということで、ILOの評価の1つ目の目標はこの妥当性、効率、効果、 インパクトを、できる限り組織的かつ客観的に決定するということになっています。 2つ目の目標としては、事務局あるいは加盟国、及び政労使の構成三者が組織的な検討 を加えることを可能にするための手掛かりとしての評価であるべき、という基本的な目 的をここで述べています。  例えば5の戦略的予算枠組みの中でのプログラミング(事業計画の策定)は4つのプ ロセスから成っているということで、最初に「戦略的な政策枠組み」があり、次に「予 算の枠組み(Strategic budgeting)」が出てきます。そして「作業計画とモニタリン グ(Work planning and monitoring)」という段階があって、最後に「評価(evalu -ation)」が出てくる。こういう1つのプロセスの中で戦略的な予算なり、事業執行を やっていくというのが基本的な考え方です。  以下ILO事務局としての原則を提示するということで、10以降から「独立性と信頼 性」あるいは「組織学習に対するコミットメント」「アカウンタビリティと透明性」 「柔軟な焦点と方法論」さらに「妥当性、効果、効率」といったことについて言及され ております。  やや具体的な話として、「ILOの評価の種類」という別表を付けております。これ はこのレポートの中に示されている具体的な評価の種類とそれぞれの評価の重点、責任 者、あるいは評価形態といったものを表にまとめたものです。評価の種類としては「プ ロジェクト評価」から始まって「プログラム/テーマ別評価」、「国別評価」という3 つの種類の評価が存在します。評価の重点としては、「プロジェクト評価」においては 妥当性、効果、自立発展性、効率性といったものを重点的に評価して、それによって得 られる勧告、教訓といったものを打ち出していくということになろうかと思います。 「プログラム評価」においては統一性、効果、それぞれのプログラムの重点目標がどの くらい考慮されているかということがここに示されています。以下「国別計画」「評価 の責任者」ということでここに記載されているとおりです。背景的、基本的な考え方と いうことで、現在ILOが採っている考え方を示したものですので、参考にしていただ ければと思っております。  別紙2にはUNDPに関して示しております。これも評価自体の技術的・実践的な方 法というよりも、評価も含めた事業全体、あるいは業績をどのようにして向上させるか、 全体的にどういう傾向が見られるかという点を、UNDPの評価室が2003年11月に発行 したレポート『Development Effectiveness Report2003』から抜粋しました。これに ついても、特に冒頭にありますように、1988年に「Results-Based Management(RB M)」が、結果重視のマネジメント、成果を重視することを基本的な政策として打ち出 して、それに基づく全般的な事業の見直しを進め、その過程で現在の評価方法を取り入 れているという大きな流れになるかと思っております。  やはりそれぞれのプロジェクト、プログラムについて有効性、自立発展性、あるいは インパクト、そしてまた結果の重視といったことを強調するという流れで、UNDPも 現在動いていると言えます。非常に簡単な説明ですが、私からの説明とさせていただき ます。 ○ 吾郷座長  ありがとうございました。ただ今のご説明に関して、まず、具体的なテクニカルなご 質問、そのあと、外務省や厚生労働省についてのご説明をいただきたいと思います。F ASIDからはそれが終わったあとにご説明いただきます。また、JICAの代表がお られる前で、JICAでない方が説明なさっていましたので、ここで何か補足がありま したらどうぞ。 ○ 末森会員代理  いや、特にありません。 ○ 吾郷座長  それでは続いて、昨年3月に外務省経済協力局評価室が作成・公表した『ODA評価 ガイドライン』をもとに、外務省のODA評価手法をまとめたものについてご説明をお 願いします。 ○ 釜石補佐  資料5をご参照ください。昨年3月に取りまとめられて、外務省のホームページから も見ることができる『ODA評価ガイドライン』は、打ち出すとかなり分厚いものにな るのですが、それをもとに簡単に取りまとめております。  別紙1をご覧ください。まず「外務省のODA評価の形態」ということで、前回、小 冊子をもとにご説明した内容とダブるのですが、レベルについては「政策レベル評価」、 「プログラムレベル評価」、「プロジェクトレベル評価」の3段階になっています。 「政策レベル評価」については国別援助政策や重点課題別援助政策を対象として、それ ぞれ国別評価あるいは重点課題別評価を実施しているということです。「プログラムレ ベル評価」については、セクター別の援助計画があればセクター別の評価を行う。また 無償とか技術協力というような援助のスキームについて、そのスキーム別評価を行う。 「プロジェクトレベル評価」については、主にJICA、JBICで行っているわけで すが、外務省では政策評価法の規定に基づいて、一定のものについて事前段階あるいは 未着手、未了のものについては事後の段階で評価を行っているということになっており ます。主体についてもそれぞれ第三者評価、合同評価、外務省自身による評価と、主体 別で実施されているということです。  別紙2は「政策レベル評価」、「プログラムレベル評価」などをODA評価の流れに 沿って計画をして、それから実施、フィードバック、公表を行うということを示してい ます。  実施段階については、まずその評価の枠組みを設定することになっているということ で、この別紙2にさらに表1、表2、表3を付けてありますが、それぞれ国別評価の枠 組み(例)、セクター別評価の枠組み(例)、スキーム別評価の枠組み(例)があって、 手順、実施事項が細かく決まっております。  別紙3は外務省で取りまとめて、ODA関係府省の評価部門連絡会議に出された「O DA関係府省による技術支援評価のための参考手法」というものです。主に研修員の受 入れ、専門家の派遣というスキームについての事業の実施と、評価の流れについて記載 しております。  先ほど山崎補佐からも説明があったように、別添に妥当性とか目標達成度といった評 価の原則について、コンパクトにまとめてあります。別添資料1が評価の原則で、次頁 の別添資料2にJICAで実施しているPCM手法について簡単に取りまとめてありま す。下のほうにはそのプロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM)というものも 載っております。  次頁には評価5項目の主な視点が取りまとめられていて、さらにその評価5項目を使 った主な調査項目というものも5頁に載っております。これらは参考になるかと思いま すが、厚生労働省も含めて関係省庁が、これに従って評価を実施しているかと言うと、 なかなかそうではないという話も聞いています。 ○ 吾郷座長  ありがとうございました。ただ今の点についても、技術的なご質問があればこの段階 でお受けしたいと思います。これもまた外務省の方がおられる前での本検討会事務局に よるまとめでしたので、外務省の方から補足があればお願いしたいと思います。 ○ 中垣課長補佐  概略をご説明いただいてありがとうございました。ちょっとクリアにしておきたいと ころが2、3ありますので説明させていただきます。  まず別紙1です。これによって外務省が行っているODA評価の全体、どういった種 類があって、どういった対象をどういった主体が、どういった時期に評価しているのか ということをご一覧いただけると思います。それで1つ目のポイントは、前回のこの会 合のときにどちらかの会員の方からご質問が出ていたのを承知していますし、ODAの 評価と政策評価は同じか違うかという議論が議事録にも載っています。外務省としては、 政策評価法に基づく評価であっても、ODAを対象としていればそれはODAの評価で すから、これが含まれていると考えてはおります。この表のどこに表れているかと言う と、ご覧になればわかるとおり「プロジェクトレベル評価」の一番下の列です。ただ、 それ以外の評価について、何が政策評価法で行っている評価なのか、何がODAに対す る評価と違うのかと言うと、基本的に政策評価法で言う評価というのは自己評価です。 要は、基本的に役人が書くということになっていますが、上のほうの政策レベルあるい はプロジェクト評価については、外務省自身によるものもありますが基本的には第三者、 有識者の先生方が指導・評価していただくということになっています。ですから、その 辺に若干の違いがあります。  スキーム別評価の中の援助スキームは、確かに無償技術協力といった大きなものを対 象にすることも理論的には可能ですが、大体そういう大所のスキームというのは国別評 価であるとか、重点課題別評価、あるいはセクター別評価ということでも網羅されます ので、最近やっているスキーム別評価としてはもう少し小型のスキーム、例えばNGO に対する支援スキームであるとか、緊急援助隊の活動についての評価であるとか、そう いったものとなっています。  別紙3で付けてある「ODA関係府省による技術支援評価のための参考手法」、これ はそこに書いてあるとおり平成14年3月に、ODAに関係がある府省に集まっていただ いて、外務省で取りまとめさせていただいたものです。この紙自体の現在のステータス はどうなっているか、要は、使われているのかということですが、一言で言えば使われ ていない。なぜかと言いますと、このあとに政策評価法ができて、どの府省も法律は法 律で偉いので、基本的にはその政策評価法に従ってやっていくのがいいのではないかと いう認識を持っていらっしゃる。これは頭の体操として作ってみたが、その後に法律が できたので、そちらに取って代わられているというように我々は認識しております。以 上です。 ○ 吾郷座長  ありがとうございました。今の事務局のまとめと外務省からの補足について、ご質問 がなければ続けて次の評価方法についての説明に移りたいと思いますが、よろしいでし ょうか。                  (質問なし) ○ 吾郷座長  それでは釜石補佐、続けてください。 ○ 釜石補佐  資料6をご覧ください。これは政策評価法に基づく評価ということで、厚生労働省が 実施する政策評価について取りまとめたものです。  1頁、一番上にいわゆる「政策評価法」という法律があって、これに基づいて政府は 基本方針を作っています。厚生労働省では、5年毎の政策評価に関する基本計画を作成 して、その政策評価の方針、対象、方式、手順、実施体制などを規定しています。さら にその別紙で政策体系と評価の予定表を、それぞれの分野、基本目標に対応した形で整 理しています。また、第七条に基づいて、事後評価の実施に関する計画を毎年作成して いるわけです。そのほかその事業の評価実施要領とか、各種の要領があります。  政策評価の方式、評価の種類については次頁に事業評価、実績評価、総合評価がある ことを書いてあります。  資料6(3)は、先ほどご説明した政策体系及び評価予定表という別紙の見方です。施策 目標があって、その下にその実績目標、評価指標、評価の予定、政策の見直しに関する 法令事項や計画というようなことが記載されているということです。  4頁目に厚生労働省の国際協力事業分の政策体系及び評価予定表が載っております。 基本目標10として、「国際化時代にふさわしい厚生労働行政を推進すること」という目 標が掲げられ、その下にその施策目標1「国際機関の活動に対して協力すること」とあ ります。これはILOの活動、あるいはアジア太平洋地域技能開発計画(APSDEP )への協力、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の人材養成分野の活動への協力に 分かれています。施策目標の2が「国際協力の促進により国際社会へ貢献すること」で、 具体的には福祉医療、労働分野における人材育成のための技術協力を推進することとな っています。  実績目標の最初の「開発途上国の行政官の研修を通じて、開発途上国の社会開発に貢 献すること」、「開発途上国の制度作りの立案推進のための日本人人材養成研修を通じ て、開発途上国の社会開発に貢献すること」は、福祉医療協力分野です。次は「開発途 上国の健全な労使関係の構築に貢献する人材を確保すること」ということで、これは労 使関係への協力です。職業訓練への協力として、「開発途上国において職業訓練指導を 担う者を養成すること」となっております。次は「開発途上国の労働者等の受入れを通 して、開発途上国への技術移転を推進すること」というようなことで、研修生受入事業 等について評価を実施するということになっています。  次頁には実際の評価の資料を載せています。実績評価書というものです。一番上に基 本目標があって施策目標が2つあり、次に担当部局が書いてあり、次にその施策目標に 関する実績の状況ということで取りまとめられております。実績目標1「開発途上国に おける雇用開発、女性の就業・雇用機会の拡大に貢献すること」について、ILOのマ ルチ・バイ・プログラムの事業である(1)と(2)の2つの事業が書いてあります。 評価指標としてはプロジェクトの対象人数というようなことで、これについては人数が 入っています。  実績目標2はその下の方で、「開発途上国の労働基準の向上のためのセミナー等を通 じて、健全な労働環境の整備に貢献すること」となっており、(1)から(4)までの セミナーと、フェローシップ・プロジェクトについて書いてあります。  次頁の一番上には評価指標である参加人数が書いてあります。2として「評価」がま とめてあり、(1)は現状分析、(2)では評価結果ということで、その政策手段の有 効性の評価を、それぞれ実績目標の(1)及び(2)について取りまとめております。 それぞれの事業について書いてあって、どれも有効であったとまとめております。  次頁には政策手段の効率性の評価と総合的な評価を書いてあります。3は「政策への 反映方針」ということで、引き続き雇用・労働分野における支援を行っていくことの重 要性を指摘しています。非常に雑駁ですが、以上です。 ○ 吾郷座長  ありがとうございました。だんだんと情報量が増えてきて、頭の中が満腹状態になり つつあるのですが、今日の議事進行としては、これから「研究機関によって開発された 評価手法に基づいて」ということで、FASIDのほうから国際開発研究センターが開 発された手法についてご説明いただいたあとで、一般討論ということになっています。 しかしお聞きしたところ、40分ぐらいかかるということですか。 ○ 湊所長代行  少し短く説明しても結構ですよ。 ○ 吾郷座長  ありがとうございます。ただしその間お二方、途中で抜けられる方がいらっしゃるの で、早退される方については、今までの中身に関連することで、これだけは言っておき たいということがありましたら、今お受けしたいと思います。                    (意見なし) ○ 吾郷座長  現段階ではないということでしたら、また、事務局のほうでまとめていただくものと か、議事録を再検討する際に、メールで意見をいただくということでも結構かと思いま す。  それでは引き続いて、「研究機関によって開発された評価手法」ということで審議を 進めていきたいと思います。釜石補佐お願いします。 ○ 釜石補佐  本日はFASID(国際開発高等教育機構)から、国際開発研究センターの湊所長代 行に来ていただいています。FASIDは平成2年に設立された外務省・文部科学省共 管の財団法人で、開発援助人材育成のための研究をしている団体と伺っております。で は湊所長代行、よろしくお願いします。 ○ 湊所長代行  FASIDの湊です。今日お手元にお配りしているのは『政策・プログラム評価ハン ドブック』と表がレジュメで裏に事例が1つ載っている資料7です。事例はウズベキス タンの地域開発プログラム評価で、実際にウズベキスタンで行った事例です。今までい ろいろな評価手法の話があり、その中でご説明があった部分もありますので、その辺は 適宜省いてご説明したいと思います。  国際開発の分野では従来から開発援助の質の向上とか、透明性の向上を求める観点か ら、評価の重要性は非常に強く指摘されていたわけです。プロジェクト評価というのは JICAのこのような本(「プロジェクト評価の実践的手法 JICA事業評価ガイドライ ン改訂版」)もありますし、JICAのすべてのプロジェクトはこの手法で評価されて いると聞いておりますので、評価の経験の蓄積はあると思います。今までに、実際にや ってみてうまくいかないというようなことで、いろいろな手法的な問題点がフィードバ ックされ、その都度修正がされていますので、プロジェクトについての評価は、手法の 面で言うと、ある程度確立されていると思います。  この本(「政策・プログラム評価ハンドブック」)を作るときの私どもの問題意識は、 むしろ、プロジェクトではなくてプログラムだとか、あるいはセクター、さらにポリシ ーというレベルの評価をどのようにしたらいいのかということだったのです。当時は、 政策・プログラムに適用できる評価手法は特になく、複数のプロジェクトを含むプログ ラム、あるいは、プロジェクトに比べると対象範囲が非常に広く、上位に位置する組織 が実施するプログラムの評価手法に関して、数回研究会を開いて、そこでいろいろな議 論をして新しい手法を作りました。  私どもの「評価ハンドブック」と、外務省のODA評価ガイドライン、JICAの 「プロジェクト評価の実践的手法」の関係をごく簡単にご説明しますと、この3つはほ とんど同じ時期(違っていても1、2年)に出たものですから、細かいすり合わせはし ておりません。しかし、私どももJICA内の研修をずっと担当させていただいたり、 FASIDで開発した評価手法をJICAで使っていただいたりというような関係です ので、FASIDのガイドラインとJICAの本は、基本的な考え方にはそれほど大き な違いはないと思います。ただ、FASIDのほうは、より一般的な対象を想定してい ます。NGOにも使ってもらいたいし、あるいは海外の援助機関、被援助国の政府に使 ってもらうということも想定しており、JICAのほうはJICAの事業を対象にして います。  外務省の「ODA評価ガイドライン」は先ほどご説明があったようなことが書かれて いますが、具体的な手法自体にはそれほど多くの部分は割いていないと思います。目標 体系図、あるいはフローチャートといったものは出ていますが、具体的に手法をどうす るのかというところは、特に述べられていないと思いますので、その部分を私どものほ うで補完しようと考えています。FASIDの研究会のメンバーにも外務省の評価室長 が入っておられましたし、FASIDの本を出版する前にあらかじめコメントを頂戴し ていますので、考え方にはそれほど大きな違いはないと考えます。  なぜプログラムとかセクターということを考えるのかということですが、従来、途上 国においていろいろな形で、国際機関、二国間援助機関、あるいは国際NGOといった ものが、プロジェクトとして援助を行なっています。それぞれの機関にはそれぞれ関心 事項があって、是非、こういう分野でこういう目標を達成したいというものがあると思 うのです。ところが実態的には、これらはプロジェクトベースでバラバラに行われてい た。そうするといろいろな問題があります。仮にプロジェクト自体はうまくいっても、 プロジェクト間の相乗効果があまり期待できないとか、マクロレベルでのインパクトが 非常に弱いとか、あるいは、被援助国政府の窓口となる人たちが、個々の援助機関のモ ダリティに合わせなければならない。そのために事務負担が非常に大きいなど、いろい ろな問題が指摘されています。  それでハンドブックの3頁にありますが、2000年にミレニアム開発目標(MDGs) が設定されました。これは地球全体の2015年までの8つの達成目標が設定されています。 非常にグローバルな目標なのですが、少なくともこういった共通の目標が設定されるこ とにより、、個々のプロジェクトが、自分たちの果たすべき役割や、共通の目標を達成 する上での位置づけを考えていくようになる。これによって援助協調、つまりプロジェ クト間の協調とか、あるいはモダリティを共通のものにしていく調和化の動きが出てき ています。  そして特にアフリカを中心として、プログラムで援助をしていく世界的潮流が出てき ました。ただ、これは決して日本がプロジェクトではなくプログラムとして行うことを 意味しているわけではなく、こういう世界的な潮流の中では、単にプロジェクトの評価 だけではなく、プログラム、あるいはセクターでの評価の必要も増加しているだろうと いうことです。  ところが世界を見渡して、プログラムやセクターに適する共通の手法というのが存在 していない。そこで、それならば我々でそういった新しい手法を作ろうではないかとい うことで、トライアルとして作ってみました。現在、これに続く版を作っています。そ れは「LEAD(Log-Frame Evaluation Application Design)」という名前の手法 にしたのですが、この細かいユーザーズガイドというのを作っていまして、より具体的 にブレークダウンしております。  従来のプロジェクト評価については先ほどもちょっとご説明がありました。一般的に、 より客観的な評価をするには、2つの部分をきちんと確定する必要があると思うのです。 1つは対象が何であるかということで、もう1つはそれを測る物差しです。対象がどこ のプロジェクトであるということなら、それは誰が見ても同じと思われるかもしれませ ん。活動とか投入という部分ははっきりした事実があるわけです。しかし、その効果を どう捉えるかは評価者によってだいぶ変わってきます。ですからPDMとかロジカル・ フレームワークを使って、評価対象のプロジェクトの内容を確定している。もう1つは 評価5項目。これが物差しにあたるわけです。この2つを確定することによって、誰が 評価をしても、評価結果にさほど大きな相違はない。もちろん全く同じにはならないと 思いますが、なるべく客観性に近づけるような手法であって、これが現在使われている プロジェクト評価手法だと思います。  ところがプログラムになってくると非常に難しい点があります。それは、プログラム がプログラムとして計画された場合には、そのロジカル・フレームワークというのは最 初から作れますから、比較的やさしいのですが、場合によっては、いくつかのプロジェ クトをあとからまとめてプログラムとみなして評価をするというケースがあります。こ の場合はログ・フレームを作ることはそう簡単ではない。また、プログラムが複数のプ ロジェクトを含む場合には、プロジェクト間や活動間の整合性の問題が出てきます。例 えば保健セクターにWHO、USAID、DFID、ケア・インターナショナルとかそ ういうNGOのプロジェクトが入っている場合は、その重複している部分ですとか、あ るいは、非常に重要なのだがどこの援助機関も手をつけていないというような部分、そ れとの整合性をどのように見ていくかというところに、非常に難しい点があると思いま す。もう1点は、マクロレベルに目標が設定された場合に、援助以外の要因が非常に大 きくなることです。民間の活動もありますし、その国の政府の公共政策といったものも あります。またそれ以外の要素として、プロジェクトあるいは政府ではコントロールで きないような要因もたくさん入ってくる。そこをどういうふうに整理していくかという ことです。  そういった困難を踏まえて「LEAD手法」というのを作ったわけですが、考え方は、 JICAやPCMのプロジェクト評価手法と共通だと思います。ただ、両方ともプロジェ クトであるということを前提に、そこに枠組みをはめてこういうモデルを作っています ので、一旦、そのプロジェクトであるということを外して、プログラムの場合はどうな のか、あるいは、セクターの場合はどうなるかということで作成しました。  FASIDのハンドブックは3部から成っていまして、第1部は「解説編」というこ とで、主に政策評価・プログラム評価に関して、どういう議論が行われているかという ことを紹介してあります。重要なのは第2部の「手法編」です。59頁をご覧ください。 「計画段階」「準備段階」「評価段階」「フィードバック段階」という4つの段階にな っています。これは従来のプロジェクト評価とそれほど変わらないと思いますが、特に 重要点は準備段階の、(5)「ヒエラルキー・モデルの作成」、(6)「ロジック・モデルの 作成と全体目標の設定」、(7)「ログ・フレームの作成」です。つまり、ロジカル・フ レームワークを作るというところは変わらないのですが、それをどのように作っていく かという過程を説明しています。  65頁に「ヒエラルキー・モデル作成上の留意点」があります。これはかなり複雑な ケース、評価の対象となるプログラムが複数のプロジェクトを含んでいるような場合を 想定しています。まず、その個々のプロジェクトの活動、成果、目標、そういったもの に関する情報を集めて、それを整理します。。この例は非常に単純な例で、初等教育セ クターの改善のために3つの部署(人材養成課、教育開発課、無償協力課)が実施して いる内容を整理する。この中に対象となるプログラムに関する情報をすべて織り込んで おきます。  このモデルができてから次にロジック・モデルというものを作成します。ロジック・ モデルは、上と下のカードが目的と手段の関係になるようなカードに整理し直すという ことをします。  67頁をご覧ください。上の基礎教育サービスが改善されるためには、例えば「行政 官の計画策定能力が向上する」ことが必要で、そのためには実際にここでやっている 「教育統計データベース構築」や「教育データの管理研修」も必要です。その右側には 「カリキュラムが適切になる」。そのためには「調査・研究」「カリキュラム開発と技 術移転」「教員への研修」が行われるといった形で、目的−手段の論理を整理していく というプロセスです。このプロセスの後に、68頁のログ・フレームの作成になります。  以上の部分がプロジェクト評価手法と比較すると、大きな相違点だと思います。次に これを応用した事例についてご説明します。今の資料7の裏面が別紙となっていて「ウ ズベキスタンの地域開発プログラム評価事例(要約)」となっています。  これはウズベキスタン北西部のカラカルパクスタン自治共和国という所で行った評価 です。この地域では、上流部で潅漑用水など大量に取水したため、アラル海への流入が 非常に少なくなって、自然破壊が起こっている。そのため漁業や農業が非常に大きな影 響を受け、地域住民の生活基盤が破壊されてしまった。したがって人材が外に流出し、 保健医療といったいろいろなサービスの提供に著しい問題が出てきているということで す。  ここにはさまざまなプロジェクトが入ってきておりますが、この評価の目的は、これ らを1つの仮想的プログラムに組み直し、参加型で行いました。参加したのは、ドナー、 ホスト国及び政府の関係者です。そして、援助受入窓口にフィードバックをする。関係 機関がその下に書いてありますが、この対象には45のプロジェクトが入っております。 この手法では評価基準は、効率性、有効性、インパクト、妥当性、自立発展性の5つの 基準を採用しています。この事例はそのうちの効率性と有効性の2つを採用し、昨年9 月に実施しました。  現地でヒアリング等を行いましたが、これが最初に作ったHierarchy Treeです。本当 はもっと大きいのですが、そこに存在しているプロジェクトを整理します。ここでは、 二国間援助のものが整理されています。次に国際機関の部分が整理されています。最後 にNGOです。こういう形で、関係者が皆一堂に会して、Hierarchy Treeを作るわけで す。参加者は自分たちが何をやっているかはよく知っていますから、自分達の部分はは っきりわかります。それぞれが自分達のプロジェクト部分を記入し、それを集めると全 体像が現れます。その地域での一種のマップができます。  Hierarchy Treeが出来上がった後に、Logic Treeを作りました。一番上のカードは、 「そこの人々の生活が向上する」といった内容です。その下に「健康状態が向上する」 とあります。その中にたくさんのプロジェクトが入っています。その個々のプロジェク トが健康状態の向上にどう貢献しているかを示しています。健康状態の中でも、例えば 医療技術の向上、十分な医薬品、人材能力の向上などと分けられています。  次に、真ん中のところに水の問題があります。「飲料水が供給される」というもので す。その下に個々のプロジェクトの水に関するものが入っています。他に、「農業の生 産性の向上」、「自然環境の問題」、「収入増加」とあります。ここには収入源の多様 化などが入っています。要するに、Logic Treeを作ることによって論理的に、個々の活 動によって、上のプログラムの目標が達成されるということを明確にしています。その 後に、ロジカル・フレームワークを作ります。ここまで出来上がると、あとはプロジェ クト評価と同じような方法で、これが評価できるということです。  以上がLEAD手法についての簡単な説明ですが、最後に「プログラム評価と合同評 価」という視点を申し上げたいと思います。ここでいう合同評価というのは、複数の援 助機関、もちろん被援助国の政府を含めた関係者が、共同で評価をしていくことです。 今のプロセスでもおわかりいただいたように、これをやるためには関係者が集まって、 その中でいろいろな作業をやっていく必要があると思います。これは2003年2月にロー マで開催された、調和化ハイレベルフォーラムで、「援助協調」、「調和化」という概 念が重要視され、一種の共通の認識となったと思います。実際に評価での協調というの は、共同で評価をするということで、すなわち合同評価ではないかと思います。  合同評価には多くのメリットがあると思います。例えば、共通のマクロ目標に対する 個々のプロジェクトや、活動の役割を明らかにすることによって、その目標に対する貢 献度を的確に把握できることがあります。あるいは、各プロジェクト間の無駄な重複を 回避して、共通の目標を達成するために、さらに援助の投入の必要な地域や分野を確認 することができます。それから、被援助国側とドナー側、双方の評価業務にかかわる負 担が軽減される効果もあります。実際にこれをやると、それぞれの援助機関の持ってい るノウハウが異なるので、援助のプロセスや評価手法をお互いに学び合う機会になると 思います。  今回の事例の試みはうまくいきましたが、合同評価の場合には現実には非常に難しい 面もたくさんあると思います。例えば、関心事項の違いや、スケジュール調整を1つす るのでも、それぞれの状況に合わせなければいけません。それから、モダリティが違う ために実際の評価のやり方でのコンセンサスを得るのが難しいというような障害がたく さんあると思います。しかし、LEADを日本から発信する合同評価用の手法として使 えないだろうかと考えています。以上です。 ○ 吾郷座長  一般的な討論にいく前に、ただ今のご説明についての技術的なご質問があればと思い ますが、いかがでしょうか。具体的な事例も含めて、明快なご説明をいただきました、 ありがとうございました。  それでは、かなり長時間にわたって検討を加えてきた評価手法について、全体的な意 見交換をしたいと思います。今後どのように評価を行っていくかについてご意見をいた だければと思います。 ○ 城内会員  これは現在の話ですので整合するかわからないのですが、『政策・プログラム評価ハ ンドブック』を初めて見ましたが、これは、あるプロジェクトが始まってから、それを 途中からどう評価するかという観点で例などが示されています。しかし、私は基本的に 評価というのは、初めからこういうことを評価すると決めておいて、プロジェクトを評 価するべきと思います。目標がこのようにクリアされて、それでこう評価をしますとい うことならわかります。しかし、JICAの実践的評価もFASIDで出された評価も 実際にいつから動いているかはわかりませんが、JICAプロジェクトがすでに始まっ ていて、それで終わりの段階で、評価はこうしましょうと言って評価するというのは無 理があると思うのです。評価される側の人たちがそういう評価の方法を知らないで技術 移転したときに、後で評価すると点数が低かったというのでは、あんまりではないかと いう感じがします。その辺のことは、今後どのように整合性を取っていくというか、評 価される側が評価手法を知っているかどうかということについては、どのようになって いるのかをお聞きしたいと思います。 ○ 吾郷座長  外務省、JICA、FASID、どなたでも結構ですが、答えていただけますか。 ○ 湊所長代行  まさにご指摘のとおりだと思います。プロジェクトは5項目の場合に、計画段階で、 効率性が高く、妥当性があり、ポジティブなインパクトがあり、ネガティブなものはな い、目標も達成でき、自立発展性もあるような計画を作るべきだと思います。そういう 5つの視点から評価をされることは、今プロジェクトの段階では実施者は大体ご存じな のではないかと思います。  計画から進んでも、実施しているうちに外部の環境がいろいろ変化し、それがなかな か計画どおりにいかなかったり、計画の時に気づかなかったり、途中で非常に重要な要 素が見つかったりするケースもあるわけです。その場合は、途中で計画を修正したり、 変更したりして、最終的に評価をします。ですから、評価の段階で、初めて全然違う評 価の視点を入れるのではなく、計画段階から同じ視点を入れるべきだと思います。  また、評価は計画のときに立てたものがそのとおりにうまくいっているかどうかだけ ではなく、途中の紆余曲折を考慮し、そこでどのように修正したのか、あるいはどうい う外部の条件が出てきたのかまでを含めて、評価をすべきではないかと考えます。 ○ 末森会員代理  先ほどありましたPCM手法、PDMをやる前にやっていたプロジェクト評価は、今 先生がご指摘のように、後づけで作って評価したのです。しかし、現在はPDMを全部 導入しているので、プロジェクトレベルは事前評価でちゃんとして、ベースラインもち ゃんとやって、最終的な終了時評価や事後評価に最初から組み入れられているので、そ こはちゃんとできるようになりました。  もう1つは、今ご指摘のあったJICAのプロジェクトレベルだけでは、評価がなか なか難しいと。JICAでも、専門家派遣と、研修員と、プロジェクト、場合によって は無償や有償、あるいは場合によっては他のドナーも入って、1つのプログラムとして の評価、アウトカムをどうするかという視点においては、JICAのほうもそういう個 別のスキーム別の評価ではなく、なるべくプログラムに組み込んでいく方向が必要なの ではないかということで、今そういう方向での試行をやっているところです。  そういう面で、今後プログラム評価をどうするかというのは、また今のFASIDの ほうのご説明等も勉強しながらやっていく必要があるのではないかと思います。 ○ 吾郷座長  城内会員のご指摘は非常に重要なところだと思います。つまり、最初から評価基準を 決めないでプロジェクトがスタートするというのは、執行しているほうにしてみれば大 変問題があるわけです。  今日の議論では必ずしも十分には反映されていなかったかと思いますが、例のIMF や世界銀行、いわゆるブレトンウッズ機構が行う融資には、いわゆる悪名高いコンディ ショナリティというのが初めから付いています。こういう条件でやりなさいというのが あって、はじめて援助がいくわけです。ある意味では初めから筋道を立てて、こういう 条件でというのが決まっています。私も詳しいことはよく存じていませんが、評価とい うものを考える場合には、そういうものも参考になるのかもしれないですね。  その他にいかがでしょうか。 ○ 中村会員  まず事務局及び各機関から非常に豊富な情報をいただいて、消化不良というのが私の 正直な感想です。ですから、意見をといってもありません。勉強をしてから意見を申し 上げたほうが、むしろ賢明ではないかと思いますので控えます。  先ほどの城内会員のお話について、確かにそうだと思います。評価についての粗筋が 決まっていないで、後でやられたらかなわないというのがありますが、逆もまたあると 思います。あまり評価の方法等、コンディショナリティに近いのですが、具体的にやる とそれに沿っていい答えを出そうといって実態に合わないことをやり出すとか、評価を 気にしすぎてやりすぎるという欠陥も、ILOの感じでは経験があると思います。基本 的な評価はこうだという粗筋は、目標設定を作るときにあるので、それを認識したら、 あまり細かいことは決めないほうがいいのではないかというのが、私の感じです。 ○ 吾郷座長  卑近な例ですが、我々大学陣は、今中期目標、中期計画というので汲々としていまし て、何のために研究教育をしているのか、評価をされるために、評価基準を作るために やっているのではないかと悪口を言う人もいるぐらいです。今のご指摘はよくわかると ころです。  その他にございますか。確かに豊富な資料・情報をいただいて、我々会員としてもこ の場ですぐどうだということも申し上げられないと思います。パッと拝見したところで も、いくつも論点もあるようですし、それぞれの国連機関がやっていることや、全般的 なことをここで議論し始めますと、議論の収斂というところまでにはいかないかもしれ ませんので、この段階ではこれだけ出していただいて、後で会員のほうでゆっくり検討 して、勉強させていただいて、また次回でだんだんとそれを収斂させていくというとこ ろしかできないかという感じですが、そういうことでよろしいでしょうか。事務局のほ うから、場合によってはこの点についてはある程度ここでまとめていただいたほうがい いことがあれば、ご指摘いただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○ 中垣課長代理  外務省ですが、今私も含め、湊所長代行、JICAの説明もありましたように、日本 や各国で実際にどのような評価が行われているのかという話はかなり出たと思います。 ただ、私は初めてこの場に出させていただいているのですが、国際協力事業評価検討会 ということで、評価の手法を勉強しました。それで次のステップとして、評価はどうす るのかが話になるのだと思います。これは事務局にお聞きしたほうがいいと思うのです が、何を対象に評価をすることを議論したいと思っているのかというところがはっきり していないのではないか。我々がやっている例でいうと政策レベル、例えば国別援助計 画などで、これは政策の話です。逆にJICAがやっているプロジェクトの話、これと 政策という話だとだいぶ違うわけです。ここで議論されるべき対象は何なのかについて、 皆様のコンセンサスを得た上で話を進めていただいたほうが、生産的な議論ができるの ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○ 吾郷座長  事務局からお答えいただく前に、会員のほうが理解している会の目的というのは、む しろ個別の評価を行うために1つの提言をするとか、そういうことではなく、厚生労働 省が行う海外事業全般についての評価自体について整理をし、そこに提言するというこ とだと理解しています。あまり個別的に、この事業についてはこういう評価をするのだ という提言ではなく、評価すること自体についても含めて、非常に大きな意味のマンデ ートが与えられていると理解してやってきたのですが、事務局のほうではどうでしょう か、私たちの理解はそれでいいのか、あるいはもっと具体的な評価方法の決定までも含 めて、具体的なところまで入っていくのでしょうか、どのように考えておられるのでし ょうか。 ○ 釜石補佐  私の個人的な考えも含まれていますが、厚生労働省では、現在政策評価法に基づく評 価をしているわけで、すでに評価ということはやっているのですが、今回いろいろ手法 も教えていただいて、政策評価法に基づく評価のやり方をまず改善することができれば ということもあります。  それから、体系的な評価など、評価のやり方を改善するというのは、そのような視点 ですが、外務省の実施している評価でも、国別評価をするためには国別援助計画がなけ ればならないと言えるかと思っています。そういう点で言うと、厚生労働省として何を 基本的な方針として持っているか、その後にそれをどう評価するかということになって くるかと思います。ですから、評価のやり方、このような階層的な評価のレベルがある ということ、対象、主体などいろいろなやり方があることを勉強した後は、来年度にな りますが、厚生労働省が労働分野について、どのような戦略で援助をしていくかという ことを考えていければと思っています。 ○ 吾郷座長  そういうことで2段階に分かれて、来年度に入るとかなり具体的なところにも入って いくということですね。  その他にご意見はいかがでしょうか。 ○ 釜石補佐  最初に分科会の話を提案させていただきましたが、今回勉強させていただいたことを もとにして、分科会のほうで具体的な試行として、当課でやっているような国際協力の 1つの事業について、これは後づけになるかもしれませんが、PDMを作って評価をし てみるということも考えているところです。 ○ 吾郷座長  長時間にわたっていますし、一応1時まで取ってはあるのですが、会員の中には退室 された方もいらっしゃいますし、これ以上やりますとさらに消化不良になる恐れもある ので、今日はこの辺りで議論を終わりにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。  分科会は全体会とは別に時間調整その他をやるということですか。 ○ 釜石補佐  別にまた追ってご相談させていただきたいと思います。 ○ 吾郷座長  わかりました。全体会については9月末を目処にもう1度日程調整をして、皆様にご 連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。今日のこの後について釜石補佐から お願いします。 ○ 釜石補佐  本日はお昼過ぎまで活発にご討議いただき、誠にありがとうございました。この後食 事を取りながらご自由に意見交換ができればと存じます。よろしくお願いいたします。 ○ 吾郷座長  どうもありがとうございました。                                     (了) (照会先) 厚生労働省大臣官房国際課国際協力室   国際課長補佐 山崎   国際協力室長補佐 釜石   03-5253-1111(内線7303)