04/06/02 第3回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会議事録        第3回 労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会                        日時 平成16年6月2日(水)                           14:00〜                        場所 厚生労働省専用第21会議室 ○日高座長  定刻となりましたのでただいまから、第3回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問 題懇談会を開催いたします。本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがと うございました。開催に先立ちまして、労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題運営 規定第4条により、懇談会は原則として公開するとされていますが、非公開とする特段 の事情がございませんので、本日の懇談会は公開といたしたいと思います。よろしくお 願いいたします。なお、本日は全員が御出席の予定ですが、勝委員は30分ほど遅れると のことです。  まず、はじめに前回(4月9日)開催されました、第5回労働政策審議会勤労者生活 分科会におきまして、齋藤分科会長より基本問題懇談会への参加の御表明がございまし た。分科会においても、基本問題懇談会の状況につきましては、特に大きな関心が寄せ られており、今般、分科会長にもご参加をいただくこととなりまして、私としては非常 に心強くありがたく感じているところでございます。どうかよろしくお願いいたしま す。また、基本問題懇談会以外のメンバーの方々にも、都合のつく限り御自由に御参加 いただけるよう、御案内を差し上げているところでございます。本日のところはお申し 出をいただいておりませんが、これから御参加していただくように、お願いをするつも りでございます。  議事に入ります。議題1、「今後の進め方について」です。今後の基本問題懇談会の 進め方については、第5回勤労者生活分科会において、事務局より今後のスケジュール 等を示していただくこととされました。その線に従って事務局より資料の説明をお願い いたします。 ○労働基準局企画官  説明をさせていただきます。資料No.1の「今後の基本問題懇談会の進め方(案)」 をご覧ください。1、2回の基本懇、そして前回の分科会で今後の進め方について、い ろいろ御議論があったところです。一応、財形制度について34年経過し、いろいろ周辺 環境も変わってきているというところで、制度について個別の課題はもちろんのこと、 幅広く御議論をいただくというスタンスで仕切り直しをしたいということです。  本日は財形制度全般について入口の議論として、周辺環境の変化等を踏まえた上での 自由な議論をいただき、そして7月以降各論に入り、まず財形貯蓄について2回ほど議 論をさせていただきまして、その後、財形融資も2回に分けて議論をいただきまして、 最後には財形給付金・助成金等について、11月ぐらいに議論をいただいた後、来年の1 月ぐらいに、一巡した議論について、とりまとめの御議論をいただいた上で、最終的に 年度末の3月ぐらいに、とりまとめができればと考えています。個別の課題と全体的な 枠組みに関するものも幅広く含めて、同時並行的に御議論をいただけたらと思います。 ○日高座長  ただ今の説明について、御質問御意見等がありましたらお願いいたします。 ○松井委員  いま示された案の進め方について、もう少しスピード感をもってできないのかなとい う感じを持っています。もちろん根本の議論をするということは、前回の分科会でも合 意されたことです。ただ、まとめがない限り何も進まないということではなく、項目に よっては、法改正でなくてもできるものも、既に基本問題懇談会では整理されていると 思いますので、そういった進め方も一方でお願いできればと思います。  もう1つ、このとりまとめが来年の3月ということだと、その先はどのようなイメー ジをいま事務局としては持っておられるのか、その点のお考えをお聞かせ願えるとあり がたいのです。 ○企画官  まず、議論の進め方として、もちろん幅広く議論をしていただくわけですが、個別の 課題があって初めて全体の実像もよく分かってくるという、相互作用があるので、もち ろん個別の課題の中で法律以外でできるものについては、皆様に御議論をいただいた上 で、必要のあるものについては進めさせていただきたいと考えています。  その後のスケジュールの話ですが、基本問題懇談会でどのような議論になるかは、始 めてみないと分からないのですが、報告書の中で項目によって法律事項であったり、そ れ以外でもっと中長期的な課題であったり、あるいはすぐできる事柄は仕分けがなされ る。その中で必要な法律事項ということで、早めにできるものがあれば、それも事務局 で集約して分科会にお諮りをして、早ければ平成18年の通常国会ぐらいを目途に、法案 の提出も可能かなと考えています。ただ、周辺状況である確定拠出年金等との関係もあ るので、そういった法改正が今のところ、平成18年の秋から平成19年の通常国会ぐらい だろうということも聞いていますが、そこのところとほかの法案との関係があれば、日 程等は調整させていただくことになるかなと考えています。 ○日高座長  松井さんよろしいですか。 ○松井委員  状況はまず承りました。 ○宮野委員  私も進め方について意見を述べさせていただければと思います。いま松井委員からお 話があったように、資料の2を拝見すると、かなり大きな話も含めて、基本問題懇談会 でやっていくことについては、前回の分科会の中でも確認されたところだと思います。 逆にこういった枠組み自体を大きく変えていくという議論であれば、3月というところ については、本当にここまでに議論がまとまるのかという懸念点が1点です。  そうはいいながら、現行制度を前提に、どう拡充をしていくかという個別の課題は個 別の課題であるわけですし、その中で税制改正要望を伴うような事項も含まれているの で、そういう意味では税制改正要望等については、12月を1つのメドに会としてまとめ ていかなければいけない部分もあるので、その辺のところは、少し切り分けながらやっ ていったほうがいいのではないかとは思います。 ○企画官  そういった個別の課題について、もちろん今年できるものについては、十分に検討を して進めさせていただきます。あと、枠組みについては今後の状況によりますが、一応 3月までに議論を一巡する。その時点で多少の伸縮はあるかもしれませんが、まとめさ せていただきたいと考えます。 ○日高座長  税制改正要望内容をまとめるのは、12月ではなくてもう少し早いわけでしょう。当 然、夏の段階になりますね。ですから、その辺はそれぞれのテーマに従って臨機応変に やらなければいけないところがあるのかなと思っています。 ○宮野委員  それは基本問題懇談会の中でやる、という認識でよろしいのですか。 ○企画官  基本問題懇談会の中で挙げられている課題の中に当然含まれていますので、一応御議 論をいただきたいと思います。 ○日高座長  よろしいですか。 ○宮野委員  はい。 ○奥村委員  この進め方の案は全般という項目があって、後は貯蓄の種類だとか、それに関連する ような制度という分け方になっているのですが、財形の一番大きい課題は、スタートし たときの趣旨が、今の時代においても生きているのかということがある。そういうもの を議論した上で、財形の役割は終わったという結論もあるかもしれませんが、そういう 中で財形の意義をこういうところに持たせるのだということが確認できたら、それを今 度はどう普及させていくのかが重要な問題だと思います。ここの項目の立て方はそうい う考え方ではないので、少し違和感を感じるのです。  例えば財形融資制度をどうする、こうするという議論などは、ある意味では最後のと ころの議論であって、3月以降でも何でもかまわないのではないか。財形の趣旨をもう 1回、今日的な課題なりを確認して押さえる。それができたらどう普及するかというの が大事なのです。現時点の財形でも、財形融資制度がどういう制度だから、財形を利用 しやすいとか、しにくいという問題は大きな問題ではないだろうと思っているのです。 こういう財形の問題点は再三再四にわたりずっと繰り返し言ってきたにも関わらず、そ ういうことが課題の立て方に反映されていないと思います。どういうふうに進めていく のか具体的なイメージが分からないのですが、切口がちょっと違うのではないかなとい うことを、申し上げたいのです。 ○企画官  現行制度内で運用上問題になっているような点は、各論の中でお出しいただいて、そ れらについて検討をしていただくということで、進めさせていただきたいと思います。 必要があれば実務的な方と我々事務局レベルで、必ずしも基本懇の場ではなくてもタイ アップで検討をして、それをまた報告をしたりというやり方もあると思います。 ○奥村委員  一応、そういう主張があったということだけは押さえておいてください。また同じよ うな確認を、いつかさせていただくことにもなるのだろうと思うのです。 ○日高座長  財形制度全般についての考え方というか議論の方向というのは、1回目で終わるわけ ではなくて、ずっと続いていくはずですから、時期を見ていろいろ議論をしていただい てかまわないと思います。後ほど全体の議論をする時間があろうと思いますので、とり あえず議題(1)についてはこれで終わりとして、次の議題に移ります。議題(2) は、「財形制度全般について」です。財形制度全般の状況について皆様方に忌憚のない 御意見をいただくということで、その関係資料について事務局より説明をお願いいたし ます。 ○企画官  資料2から4までについて説明いたします。本日は入口の議論ということで、総論的 な視点で、財形制度をどう捉えるかという形でお願いしたいと思います。資料2は今ま で各委員の方からいろいろ御発言をいただいた中で、総論的な部分について抜き書きし たものです。  どのような視点が考えられるかというもので、勤労者を対象とした財産形成を促進す る施策の必要性が、現在どの程度あるのか。あるいは老後に不安を抱く方が増加する中 で、それに対する自助努力による財産形成の支援策という必要性が高まっているのでは ないか。あるいは公的年金、企業年金等と他の制度との在り方との整合性、あるいは財 形制度が真にターゲットとするものをどのようなものに置くか、もっと広げるのかそれ とも縮めるのかという話とか、中小企業の勤労者への普及促進は、いかにしたらいいか ということについて、今まで御意見をいただきました。  こういったものを踏まえて、資料3、これは現在の財形制度を取り巻く周辺環境等の 資料です。財形を設立した当時の背景になったデータを、今日検証してみてどうなる か、どういう変化があるか、あるいは変化がないのかといったところを眺めたもので す。最初は勤労者と自営業種等との比較に関する資料です。  1頁、財形制度が出来上がった時には、就業者の中で勤労者の占める割合が60%台で あった。今後それが国民の中心になっているので、そういった人たちを支援する必要が あるということで、財形制度が立ち上がりまして、最近ではもう80%を超えて、主要部 分を勤労者の方が占めるようになっている状況です。  2頁、勤労者の方々がどのような規模の企業におられるかという推移を見たもので す。構成比率規模による構成比率自体はそれほど大きな変化はないという形です。現在 雇用者数は5,300万人程度に膨れ上がっている状況です。  3頁、自営業主と勤労者の世帯で、貯蓄残高の推移はどうなっているかです。財形が 立ち上がった当時はかなり差があった。自営業主世帯が338万に対して勤労者世帯が194 万、大体勤労者世帯は57%ぐらいしかなかった。それがその後どう変化したかというこ とですが、その時にやや格差は縮まったものの最近またやや広がってきました。結局は 全体にならしてみて、まだ格差は依然としてある状況で、平成15年の結果を見ると57% の状況です。  4頁、具体的に職業別にもう少し細かく貯蓄の残高、保有額を見るとどうなるかです が、特にターゲットとなるのは自営業主という分類と事務系職員、いわゆる一般の事務 職・技術職のサラリーマンはここに分類されます。そこを比較すると、昭和50年から平 成15年まで見て、格差自体は一時縮まってはいますが、格差自体は最近、少し差が出て きたり何かして、多少の伸縮はありますが、依然として貯蓄保有額の格差はある状況で す。  5頁、貯蓄残高を残すに当たって年収との比率が問題になります。どれだけ貯蓄能力 があるかということで、年収に対する貯蓄残高の割合と倍率を見たものです。当初は自 営業主等については1.56倍、勤労者世帯では0.92倍と格差がありました。その後、どち らとも年収比は増えてはいるのですが、自営業主世帯と勤労者世帯との間の倍率自体の 格差は、やや広がっているぐらいで縮まってはいない状況です。年収で見ると勤労者世 帯のほうが最近では、自営業主世帯よりも多くなっている状況があります。  6頁、持家の状況で、持家率を比較しています。当初、勤労者世帯は自営業主世帯に 比べて、持家率がかなり低いということで、約80対50という状況でした。その後も変化 はありますが、やや縮まってはいるものの依然として76.8、56.9、平成10年のデータな ので、やや古いかもしれませんが、格差自体は依然としてある状況です。  7頁、今度は住宅の広さの比較です。自営業主世帯と勤労者世帯で、まず1世帯当た りの床面積、一人当たりの床面積で推移を見たものです。両世帯とも床面積は広がって はいますが、依然としてその格差自体はそれほど縮まってはいない状況です。  8頁以降、住宅持家率の格差の問題は、大都市圏だけではないかという意見が一部に あります。それを全国的に見たらどうか。特に都市部以外の部分では、差はないのでは ないかという話もありましたので、そこを全県で見たものです。灰色の部分が自営業主 世帯、黒の部分が勤労者世帯です。これで見ると都市部だけではなくて、地方において も、依然として自営業主と勤労者世帯の持家率の格差はある。これは58年です。  9頁、平成5年においても、全国的には縮まっていない。  10頁、平成10年においても、縮まるよりもむしろやや広がっている部分もある状況で す。都市部だけではなくて全国的に差はあるということです。  11頁、財形制度ができたとき、日本はストック面で諸外国に比べてかなり立ち遅れて いるので、支援が必要という背景がありました。特にアメリカとの比較で金融資産残 高、特に一人当たりの金融資産残高を比べたところ、日米比較で12.8倍の差があった。 昭和35年当時、日本は12.8分の1であった。昭和47年当時はやや縮まって3.1倍になっ た。国民所得で2倍程度の差があった。平成11年のデータでは、金融資産残高で1.3倍、 国民所得では一人当たりではほぼ同じになっている状況です。ただ、金融資産の残高の 構成比に特徴がありまして、日本は現金預金の占める割合が50%以上ということで多 い。一方アメリカでは有価証券で金融資産を持っている方が50%以上で多いという特徴 の違いがある。これは変わっていません。  12頁、イギリスとかドイツ、ほかの国は現在どうなっているかです。一人当たりの円 換算の比較で見ると、アメリカより金融資産残高はやや少ないのですが、むしろイギリ スとかドイツよりも多い状況です。いわゆる所得分の残高倍率で見たものについても、 諸外国とそう格差はなく、むしろドイツよりも多い状況です。ただ、金融資産の内訳に ついて日本は現金預金が多いのに対して、アメリカは株式・証券・株式以外の証券。イ ギリスでは保険・年金準備金が多い。ドイツでは現金預金とかが多いのですが、一方で 株式以外の証券も多い状況です。  13頁、家計での貯蓄率がどうなっているかの国際比較です。貯蓄率自体は日本は昭和 40年代も高い状況で、ストックが足りませんでした。最近ではその家計貯蓄率自体が下 がっていて、平成13年のデータでは6.9%という状況で、かなりアメリカ・イギリスレ ベルになってきましたが、ドイツ・フランスよりは低い状況になっています。  14頁、住宅のストック面ではどうなっているかの国際比較です。世帯比、人口比で、 世帯の数に比べて住宅のストック総数がどのぐらい、人口に比べてどのぐらいというこ とですが、世帯比では1.14倍、住宅の戸数は世帯を上回っている状況です。ほかの国と 比べても、ほとんど遜色なく同一線上です。人口比で比べても0.4倍でほかの国とそう 差はない状況にまで、住宅ストック面では充実してきました。  15頁、では質的な面はどうか。持家・借家、両方とも床面積は上昇はしてきてはいま すが、現段階においてはアメリカ・イギリス・先進諸国に比べて、一人当たりの床面積 で見ると、やはり日本はかなり狭い、特に大都市圏では2分の1、3分の1ぐらいの狭 さであるという状況があります。  16頁、以上を総括して住宅の事情はどうなのかをまとめたものですが、住宅数自体は 世帯数をもう既に超えていて欧米なみである。ただ、中古の流通で大きな格差があり、 先進国に比べて劣っている部分がある。あと、一人当たりの床面積でもまだ劣ってい る。持家についてはそう差はなく大同小異である。住宅の価格が下がっているとはい え、まだ諸外国に比べて年収倍率は高い状況にあります。以上が住宅の事情です。  17頁からは国民とか勤労者の意識の面の変化です。17頁は生活の各側面での満足度の 変化、昭和46年当時のものがベースにあって、その後の推移を見たのですが、なかなか タイアップする資料がないので一部分だけになっています。賃金については非常に不満 が高かったのですが、その後、やや不満が減って満足度が高まったが、最近ではまた下 がってきた状況です。一貫して住宅の満足度がやや上がっている。一部は抜けています が平成15年度で見ると、満足度が71.6%と、かなり上がってきています。貯蓄の関係で は昭和46年当時、非常に不満足が高くて67%もあった。その後やや下がったのですが、 依然として60%以上が不満であるという状況で、貯蓄に対する不満は依然として高い状 況です。  18頁、将来の生活についてどのような希望をもっているかを比較したものです。昭和 46年当時、「貯えのあるゆとりある生活」にかなり希望者がありましたが、その後この 項目が削られていて、平成15年になってこの関係の項目が出てきました。それだけ貯え について最近注目されているのかなと考えます。貯蓄の関係に平成15年時点で24.3%希 望をもっている。住生活についてはほとんど差はありませんが、やや下がってはいま す。  19頁、今後生活の力点として、どのようなところに力点を置くかの推移を見たもので す。やはりレジャー・余暇生活に対して力を入れたい、というところは依然として一番 高いのですが、資産・貯蓄の部分とか、自己啓発・能力向上という項目が、新たに平成 13年度の調査項目から出てきまして、ここが注目されていて、やや右肩上がりになって いる。資産・貯蓄、自己啓発・能力向上について、かなり関心が高まってきました。住 宅については住生活ということで、やや横這いが続いて、やや下がってまた横這い状態 です。  20頁、将来の不安についてという別のネガティブの側面で見ました。自分の健康に不 安を抱いている方が増えてきていますが、特に今後の収入・資産とか、老後の生活設計 というところが非常に最近高くなっていて、今後の収入・資産について41.7%、老後の 生活設計について50%の方が不安だという状況があります。これはむしろ昭和46年当時 よりも増えています。  21頁、悩みや不安の内容の推移を見たもので、特に太線で書かれているものが財形に 関する部分ですが、「老後の生活設計」が非常に右肩上がりで増えて、それによる不安 が増えており、50%になっている。次が「今後の収入や資産」という面で41.7%。現在 の収入や資産についても最近、不安が高まっていて28.6%が不安だという状況がありま す。  22頁、年齢別・性別でそういった不安の内容を見るとどうかです。若年層では今後の 収入や資産、現在の収入や資産にかなり不安が高まっている。男性と女性を見ると、女 性で老後の生活設計に30代、40代でも、かなり不安になっている人が多いという特徴が あります。  23頁、1番、金融資産の保有額は最近、平均で見れば増えてきていると言われます が、実際に世帯別の分布状況はどうなっているかというと、やはり低額層の貯蓄、金融 資産保有額が、400万以下ぐらいのところにかなり集中している状況があって、低位層 が多いことが分かります。  2番で貯蓄の有無について聞いたところ、平成15年時点では21.8%の世帯が貯蓄自体 がない、ゼロだという回答をしています。  24頁、では、老後の生活を心配している理由は何かです。やはりトップは十分な貯蓄 がないということ。次が年金・保険が十分でないというところが、非常に高くなってい ます。2番で最近いろいろ注目されていますが、年金に対する考え方を聞いたところ、 平成15年の時点では、日常生活費用を賄うのも難しいと答えている世帯の方が、50%を 超えて51.9%、特に60歳未満の世帯主の世帯では、60%近く世帯が日常生活費も苦しい という意識をもたれています。  25頁、貯蓄の目的についての意識の変化ということで、貯蓄の目的はどういうことに 備えているかです。病気や不時の災害への備えが依然として高いのですが、最近になっ て、やはり老後の生活資金という見方が高くなっています。住宅の取得とか、改築資金 はやや一時下がって横這い状態です。特に目的はなく、とにかく貯蓄は必要ということ で、貯蓄されている方が、一貫して横這いの状態になっています。  26頁、貯蓄の目的を年代別に見たものですが、若年層では子どもの教育資金とか、住 宅。特に若年層で住宅の取得・増改築資金に貯蓄が必要というところが多い。高年齢層 では、病気とか災害に備えるとか、老後の生活資金というところが高くなっています。 特に目的はないという方がどの層にも平均して分布しています。  27頁、要は貯蓄残高について、勤め先の企業の規模別に見たらどうかを分類したもの です。昭和58年ですが、小規模1から29人規模の企業では、残高は大規業に比べて差が あって少なかった。そのほかこのデータで見るかぎりは、零細企業の方の残高も増えて きて、最近では格差はやや縮まっているのかと考えます。  28頁、1世帯当たりの世帯主の年代別の貯蓄残高を比較したものです。これで特に20 代と60代以上の方との比較を見ると、昭和50年当時の差は2.5倍ぐらいあったのですが、 その後、年々格差が広がってきて、平成14年度は8倍ぐらいの差、平成15年ではブレが ありますが、また4倍ぐらいの差ということで、若年層と老年層の格差が貯蓄で拡大し ている。特に30歳代の方で最近残高自体が減少傾向にあることが特徴です。  29頁、年代別に年収と貯蓄残高の比率を比較したものです。貯蓄残高自体はどの層で も増えているのですが、若年層に比べて高年齢層の残高自体の伸びも高い。貯蓄年収比 で見ると、29歳以下の世帯のみが0.98倍と、昭和46年当時に比べて平成15年が減ってい ます。それ以外の年代層では貯蓄年収比も伸びている。特に高齢層になればなるほど伸 びています。貯蓄で見ると平成15年はかなり上がっていて、29歳以下の世帯で24.7とい う高い数値が出ています。これは最近のいろいろな不景気の状況とかがあり、家計を切 り詰めているのかということも影響していると思います。ここで注意しなくてはならな いのは、ここは世帯で若年世帯といっても単身は除かれていて、結婚をされて2人以上 の方を対象にしているので、比較的安定な層を対象にした調査です。その背後には単身 の方で、いわゆるフリーターみたいな方も、たくさんおられることに注意する必要があ ると考えます。  30頁、これは世帯主の勤め先の企業規模別の持家率の推移です。昭和58年からです が、やはり小規模企業と大企業では差がかなりありました。その後、小規模企業でも増 えてきて最近ではその格差がやや縮まってきている。500人以上の企業で思ったほど増 えていない状況があります。これは転勤等の影響もあるかと考えています。  31頁、世帯主の年齢別の持家率を見たものです。ここではかなり特徴があります。特 に若年層、25歳〜29歳とか、30歳〜34歳の持家率が急激に下がってきているところが特 徴的です。それ以外の世帯ではそれほどの変化はありません。  32頁、若年層の持家率は下がっているけれども、ニーズ自体はどうなのだということ ですが、持家率のニーズとしては若年層においても80.9%と依然として高い。ただ、持 家率のギャップは大きい。  33頁以降は最近の雇用情勢、勤労者の背景にある雇用情勢等をまとめたものです。や はり失業率が高くなって、求人倍率が下がっている。  34頁、いわゆる非正規就業者の割合が最近増えている状況を示したものです。男女を 合わせて平成14年のデータでは、約3割の方が非正規就業者、女性では50%を超えてい る状況になってきています。  35頁、転職の状況を見たものですが、やはり年々転職者の数、比率とも増えていま す。転勤が多いとなると計画的・定期的な貯蓄も難しくなってくるのかなと考えます。  36頁、これは新規学卒者の推移を見たものですが、年々新規学卒者が減っています が、財形貯蓄との関係で見ると、新規の財形貯蓄の加入者が以前と比べて、取り組むの が難しくなっているという状況です。  37頁以降は、財形についての細かい話は、各論で御議論をいただきたいと思います が、財形貯蓄についての全体的な大まかな状況を見たものです。財形貯蓄残高と勤労者 世帯の貯蓄残高との推移で、棒グラフが財形貯蓄の残高の推移、折れ線グラフが勤労者 世帯の貯蓄残高の推移です。これを見ると大体比例的になっていることがうかがえま す。ですから、財形貯蓄制度自体がかなりニーズが低まっているのではなくて、貯蓄全 体が低くなっているので財形もやや低くなっていると思います。  38頁、一般財形貯蓄の推移です。ガクンと昭和63年度に契約件数、残高とも落ちてい ますが、ここは一般財形から非課税措置が外された、あと財形住宅貯蓄ができたので、 そちらに資金がシフトしたという状況があります。その後、それほど一般財形について は、非課税措置がなくなっても、大きな落ち込みというほどの落ち込みはないのではな いかなと思います。天引き制度がある程度有効に作用しているのか、あるいは還元融資 等によりいく分かの有効性はあるのかと考えています。  39頁、財形制度の導入企業の規模別の比率を並べたもの、あと業種別にみたもので す。従前から御指摘のあるように、1,000人規模以上の大企業では、財形貯蓄導入企業 が91.7%と圧倒的になっている。ところが30人〜99人規模のところは、50%少しという ことでかなり格差があります。業種別に見ると電気・ガスの大企業の関係、金融・保険 などで財形貯蓄の利用率が高い。  40頁、年齢別の財形貯蓄の保有率を見たものです。財形貯蓄は大体4.0%〜8.9%とい う率ですが、30代で8.9%とやや多い状況があります。だんだん高齢層になると当然低 くなっています。  41頁、住宅の関係で先ほどいろいろデータがありましたが、住宅総数と世帯数の推移 で参考までに並べました。30年代ぐらいまでは住宅不足の状況があって、特に40年代に 入ると高度成長期に入りまして、特に人口の都市集中で、都市部での住宅不足の状況に なりました。最近ではむしろ住宅の数自体は充足されて質的な面が問題になっていま す。以上がデータの資料です。  資料No.4は、今まで財形制度に関する関係団体から要望があったものを、参考まで に並べたものです。これ以外にもいろいろ委員の方から、ほかに課題があれば次の各論 に入る前にFAX・電話なりで御指摘がいただければ、取り入れたいと思います。  既に御存知の内容なので具体的には省略しますが、ポートタビリティの確保とか、新 しい貯蓄の創設とか、退職金を預入れできないか、預替えの弾力化、運用商品の拡充、 勤務先異動等の場合の書類の簡素化、非課税限度額の拡大、年金の一時金の支給ができ ないか、払出し要件の緩和というところです。  3頁に財形融資の関係では、失業中の融資、失業者でも財形貯蓄を続けていれば転職 をするまでの期間、失業中の期間で融資ができないかとか、教育融資をもう少し拡充し て、親子で承継償還ができないかとかいう、新しい課題も出されています。以上です。 ○日高座長  ただ今の説明について、御質問御意見がございましたらお願いいたします。 ○松井委員  資料の4ですが、関係団体からの要望事項で、既にもう手当がされているものはある のかないのか。あるならばどのようなところなのか教えていただきたいのです。1の (1)の(11)の営業所において云々というところを、もう少し詳しく説明をしていただ ければありがたいのです。 ○企画官  既に手当をしている部分ですが、1頁の(1)の(6)で、労働組合に対して事務代行 の取扱いを認めることというのがありましたが、関係通達を出しまして、事務代行団体 そのものではないのですが、定型的な事務について代行は可能である、というところを 示しました。(10)で転職時預替えの適用期限を1年から2年に延長しました。改善の見 られたところは以上2つです。 ○松井委員  (11)番の財形業務を廃止した際の預替えを認める件で、現在、ある金融機関のA営業 所で財形業務を廃止した場合は、非常に距離が離れている場合でも、いま預けていると ころとは別の金融機関には預けられない。その金融機関自体で業務廃止にならないと別 の金融機間には預替えができないという制限があります。今の状況として営業所単位で 廃止した場合には、むしろ別の金融機関でも自分の家に近いところがあれば、そちらに 預替えたいと、そういうことが自由にできるようにしてもらいたいということです。 ○企画官  ありがとうございます。 ○日高座長  よろしいですか。ほかにございませんか。 ○勝委員  基本的な質問なのですが、資料の4の要望事項、関係団体からの要望事項が平成15年 とあるのですが、これは定期的にヒアリングとか何かをして、そういう要望事項を毎年 聞いているのか、あるいは、たまたま昨年こういった要望事項を集めたのか。これは日 にちが書いてあるようですが、どういう形で集めたのか分かれば教えていただきたいの です。 ○財形専門官  この関係団体からの要望ですが、別にこちらからアクティブにしたものではなくて、 大体毎年定期的に同じような団体から、同じような時期にこういうことをやってほしい という要望が出ていました。 ○日高座長  タイミングを見ると、要望がされているのがバラバラですが、一定の期間にきたもの を集めているということですか。 ○財形専門官  平成15年度の1年間に、団体からこちらに要望が出されますので、その平成15年度分 をとりまとめたものです。 ○新村委員  要望なのですが、勤労者と自営業主中心で比較してありますが、それは制度発足時、 そういう問題意識でその制度を作られたと伺ったと思うのですが、いまは少し事情が変 わっているというのが、この資料からも見て取れるわけです。一体どういう人が貯蓄が なくて支援を必要としているのかを、もう少し分かりやすいというとおかしいのです が、もう少し細かいクロスをしないとそれは見えない。例えば21%の貯蓄を全く持って いないというデータがここに載っているのですが、それは一体どういう方なのか。自営 業でもいろいろな自営業があって、これを見ると零細商店主から医者・弁護士まで全部 含んでいる。でも、やはり違うだろうという感じがします。いま本当に貯蓄支援をする ならば、どの層で貯蓄がなくて困っているのかとか、その中で老後不安とか、年齢によ っても違いますから、そういうことをもう少し詳細に見たデータをどこかで見ていただ くといいかなと思って、お願いをしたいのです。 ○企画官  では、各論のところでなるべく詳細なデータを収集とか作成いたします。 ○日高座長  できるだけ早い方がいいですね。それぞれの議論を進めていく上で、一番基本になる 資料かもしれません。 ○奥村委員  どういう層が貯蓄を必要としているのか各論でと言われたのですが、各論というのは どういう意味なのですか。そういうことは総論のところで明らかにするのではないので すか。意味が分からなかったのです。 ○日高座長  本日ということではなくて、次回以降ということです。 ○企画官  今度は貯蓄の関係で議論をします。 ○奥村委員  それはお話があったように、各論にみんな結び付いてくるご質問です。 ○日高座長  その点は考えていただけませんでしょうか。 ○勤労者生活部長  資料2でお示ししたのは、今まで財形制度全般について御議論をしていただき、概括 しますと5つぐらいの切口で御議論があったかな、というまとめでありますし、これを 検証していただきつつ、まだほかにこういう視点から見るべきだ、あるいはこういう必 要性についても自分としては判断を下しているということがあれば、これにコメントを 加えていただきたいというのが、たぶん今日の総論の議論なのです。先ほど時間をかけ て説明いたしました資料の3は、制度創設当初の要請対象を考えて、それが今どう変化 しているかということで資料を編纂しましたから、今の時点で対象者を広げて、もう少 し別の切口でというのは、申し訳ありませんが資料ができていないということです。  ただ、資料3で2の論点の議論をある程度深めていただければ幸いだと思うのは、参 考資料にもありますが、ざっとした全体概要のほかに、現行制度の運用状況の推移と比 較すると、細かい分析はできないけれども、もう少し判断を深めていただけるのではな いかと思うのです。  例えば貯蓄に関しては、参考資料の3を見ていただきたいのです。先ほどの貯蓄は勤 労者と自営業主の対象をしながら、資産の形成が個別の方々ではなくて層として遅れて いるから、それを形成を促す装置としてということで、昭和47年3月からできています が、この47年3月というのはこの資料の14頁、昭和39年から財形制度をいかにすべきか ということで検討を開始しまして、昭和46年に勤労者財産形成促進法ができました。そ こで昭和46年6月1日に施行されて、以後の数字ということで、当時は貯蓄、分譲融資 の2つの制度で発足した。ここで人数も11万8,000人からウナギ登りで増えて、ピーク 時というかこの資料でいくと、昭和62年3月、1,700万人、これが契約件数です。それ が以後、ずっと右肩下がりで減りまして、平成15年3月で830万人。これが契約をして いる方です。  先ほど言った全体の中で勤労者と言われる方々が、貯蓄資産を平均的にいくら持って いて、そして、平均資産を持っている中で財形貯蓄として持っている割合が0.何パー セント。その0.何パーセント持っている方々という頭数がこういう状況だということ で、この政策自体が役立ったか、役立っていないかということも含めて、一定の評価が できてくるのではないか。件数は減っていますが、資産は1兆という形で伸びている。 これは契約があれば累積してくるからと見ていただけるのではないか。  あと、年金・郵貯、それぞれ持家政策をやります、年金政策をやりますと言います が、ここの制度を通じて融資を受けられる方の母数は、この契約数を超えません。財形 持家・住宅融資であっても160万人止まりです。ですから全国民の住宅政策は到底でき ないわけです。しかしながら、今いった政策は全国民を対象として住宅政策を議論しな がら、投射して見ているわけですから、そういった関係を我々どの程度、そういったも のを咀嚼し、あるいはそれを活かすかという視点での議論ができるのではないか。  そういう意味で財形制度そのものを貯蓄と資産形成の2本柱というけれども、こうい った対象者を捉えてやっている政策が、国政全体を論じてやっているのか、あるいはた またま契約をしている方をやっているのか分析をしていただいて結構ですし、むしろそ ういう形でやっていただければ、言われている総論が本当にできるのではないかと思う のです。そして、改めて制度のところでより改良をして、よりたくさんの人を導入する のか、あるいはこの制度の限界で、ここでいいのだということを言うのか、あるいはも ういらないというのか、その辺をやっていただければと思っています。  融資等々について個別の件数も12頁にあります。財形持家の分譲融資、昭和48年から 件数を積み上げて、個々の件数・戸数を見ていただければと思います。分譲融資件数 3,334件、戸数9,104戸です。日本における住宅戸数はこれでは全然足りません。いわゆ る昔の建設省がやっていた住宅政策のほんの一部ということですから、これが全てを背 負うわけでもない。教育融資にしてもトータルの件数をみているということなので、資 料では日本のマクロの議論をしているようですが、その一部を通してやっている財形制 度の対象者は、ごく限定されていることから見ると、貯蓄をしていない方全体に対し て、この制度をどうアプローチするかということは考えづらいのです。社会保障政策で はないので、ある程度給与をもらって、自ら自主的に貯蓄形成できる方々に対する、あ る意味で便益を図るぐらいの位置づけでスタートしていて、いわゆる国の所得層が低い 方の政策として打って出たという経過がないものですから、そういう分析はなかったと いう視点だと思います。言いわけになりますけど。 ○新村委員  私も別にこれが全住宅政策ををやっているものでもないし、全貯蓄政策でもないとは 思うのですが、これまで、この審議会でいろいろ出していただいたデータ等を見ます と、どうも財形貯蓄をやっておられる方は、相対的に大企業が多くて、本来目的として いた、と言っていいのかどうかわかりませんが、中小企業への普及が未だという話、と いうようなところを見ましても、やはりこの制度自体が一体どういうことを本来の目的 としてやるのかということを、新たに明確にしない限りは、制度自体、どうしていいか が見えないと思います。そして、それを見るためには、今の制度のままで恩恵を享受し ている人は一体どんな人なのか、その人たちは恩恵を受けるだけの理由がある人たちな のかどうかという検証がなくて議論しても、推論してもしょうがないと思うのですね。  だから、今この時点で、この制度自体をどういうものにすべきかという議論をする前 に、今受けている人たちは一体どういう人なのか。これまでの御説明だと、どうも大企 業のきちっと就業している、正職員の方が多いというようなことが、最近のデータは見 ていませんが、だいぶ前に御説明いただいたデータでありました。そういう方たちは、 先ほどマクロの数字で見たように、もう自営業種よりも所得は多いし、一人っ子時代で すから、親の家は少なくともあるし、そういうような世代だと思うのてす。そこだけ見 ると、この制度の使命は終わったのではないかという議論になると思うのです。そうで はなくて、今の時代の文脈で、一体どういう人がそういう支援が必要かということを見 ないと、新しい目的が見出せないような気がしたので、先ほどのようなデータをお願い いたします。以上です。 ○勤労者生活部長  財形制度の利用状況の、もう少しクロスした資料ということですね。 ○新村委員  はい。それが本当にほしい人にいってるのかどうか。 ○勤労者生活部長  ほしい人にいってるかどうかは、たぶん内心の意図でありますし、何かの形でできる かもわかりません。実際は分析ができるのです。 ○新村委員  そういうのがわかるような資料を少しお出しいただけたらと思います。 ○勤労者生活部長  そうですね。 ○日高座長  先ほど、御議論がありましたように、その辺を議論のスタートにしないと、なかなか 先に進めないということがありますね。 ○齋藤分科会長  もう1つ、別な観点があると思います。特に最近のような低金利時代になってきます と、非課税のメリットがほとんどないです。そもそも課税される利子の金額がとんでも なく少ないわけです。それの非課税分というのはいくらだ、ということになると、いく らか知りませんが、それだけ見ると、とても低いわけです。昔みたいに1,000万円預け れば、毎年70万円ぐらいの利子収入があれば、それはそれなりに非常にいいけれども、 今はそれの1/10です。それの非課税がどうのこうのと言ってみても、貯蓄している人 にとっては、あまりメリットがないだろうと思います。それより、無駄遣いしないで、 貯めていくというところのほうに、むしろメリットがあるのかもしれないですし、メリ ットの感じ方というのは、おそらくここ5、6年で非常に変わってきているのではなか ろうかという気がします。  もう1つは、持家分譲といっても、事業主はどんどん福利厚生から撤退しているとき に従業員用の宿舎を作って、利用するということを発想する事業主の人が、そもそも少 なくなったという部分でしょうね。そういう意味での社会事情の変化というのは、ここ 4、5年は非常に大きいものがあると思います。 ○勤労者生活部長  ここで資料を提示できずに非常に恐縮なのですが、近年の企業における法定外福利費 の動向というのは、ここ10年を見ますと、いわば右肩下がりなのです。法定福利費は義 務化されていますから、介護等ができるという中で多少右肩上がりなのですが、その上 回る部分は減っていて、トータルでは福利厚生費が減るという傾向があります。その内 心の意図は企業間競争の中で、コスト削減等という動機付けがあり、なかなか経済状況 が許さない。この財形制度にとっては外的要点ですから、それをどうこうするというわ けにはいかない。それを踏まえて、制度を組み替えていくということしかないので、非 常につらい部分ではあるのですが、それ以上に、今言われたところで、財形制度の問題 意識とするべきは、昭和46年当時、作ったときには、いわばこの国の福利厚生というの は、もっともっと充実していくのではないか、あるいはいくべきだというのがアプリオ リにありました。  それの先端企業が大企業ということでした。したがって、中小企業にも普及すると。 そのための刺激策として、まずもって天引きという制度を導入してもらうならば、個々 人の方に非課税で優遇もつくから、従業員対策になります、それへの上乗せで給付金と いう事業主の福利厚生の一環で出せば、損金扱いで、さらに資産形成になります。その ようなコンセプトで導入いたしまして、それを普及すべく実は相当やってきたという経 緯があります。  そこで、例えば財形給付金、先ほど言った資料を見ていただきますと、4頁がそれで す。実施した企業というのは、昭和51年以降で2,795社、多いところで5,000社止まり で、今はまた2,180社になっています。対象者等もこういった、途中、中ふくらみで今 はまた下がる傾向にあります。こういった状況なのです。制度をどうしろということ は、言いにくいものですから、こういったことを踏まえて、こういった状況を、あるい はそういうコンセプトを経済要因等を抜きに、福祉政策として、あるべきものだという ことを堅持して、それを普及させるための装置に組み替えて財形制度を生き残せるの か、そういった大きなトレンドの中で、必要なものに限定する。いわば使命を終えて、 あるいは使命を果たせないということが検証できたから撤退する。そういった選択肢と いうか、それで議論していただくのが基本懇の筋かなと思っているわけです。  ただ、言われたように話すだけの資料を出していないものですから、非常にお粗末だ ということで、反省いたします。それは、また追加いたしますし、そういう面で見てい ただきたいと思います。その総論をやりながら、改めて貯蓄制度をそういった視点でど うするか。それを踏まえた上で個別の改正要望とか、今直すという装置が本当に要るの だろうか、ということでやっていただきたいと思っているのです。そこを抜きに、単に ますますの拡充というのは、たぶん今からの議論としては、なかなか通用しないのでは ないかな、という認識は持っています。 ○齋藤分科会長  先ほど、新村委員が言われたように、ちょっと違うかもしれませんが、その1つだと 思うのですが、今財形貯蓄をやっている現実の人たちが、どういうところにメリットを 感じているかという、何のためにやっているかという、意識調査みたいのができればい いのですが、なかなかそう簡単にできないところがあるかもしれません。 ○日高座長  それは齋藤分科会長が先ほど言われたように、今のような金融環境の下では、例えば 貯蓄を増やすための補強材料というように受け止めて、やはり何とかすべきだという議 論を打ち出していっても、それが世の中のコンセンサスを得られるかどうかというの は、誰も反対とは言わないでしょうが、なかなか心の中では「もう、どうなんだろう」 という議論しか出てこない可能性はあるわけです。ですから、むしろ資産形成に対する 助成ということを考えていくのであれば、今いろいろ話題になっている年金との関係 を、やはり忘れるわけにはいかない。そちらのほうは厳しい状況にあるのですから、勤 労者、あるいは大企業の事業主でもいいのですが、その辺との関係を少し打ち出してい かないと、立っていく基盤が何もないという気がするのです。 ○勝委員  いま座長がおっしゃったように、どの層が必要としているかというよりも、公的年金 があまり信頼できるものではなくなったというところで、やはり財産形成というのは、 どの層も必要としているのだろうと思います。これは一部の高所得層は別として、勤労 者、このデータですと、6,500万人の就業者のうち雇用者というのは5,300万人いるわけ です。かなり大きな部分をカバーすることのできる制度だと思ます。先ほど齋藤分科会 長も言われたように、今の金利情勢でニーズが非常に低下しているという現実的な側面 があり、そうすると、そういう財産形成は非常に重要であって、それをカバーするため にこの制度はある意味で重要である、という認識をすべきなのかなと思います。そのた めに何が必要かといえば、やはり貯蓄から投資へというのは、マクロの面での政策であ る。リスクマネーというか、預貯金ではなくて、例えば投資信託であるとか、非課税で 運用ができるようなものが出来てくれば、これは雇用者、あるいは国民にとっては非常 に有用なのではないかと思います。これは日本経済にとっても、望まれるところなので はないかと思います。  ただ、それはもちろん税制面との問題もあるので、非常に難しいとは思うのです。し かしそういったリスクマネー、あるいは長期の投資というものが組み込まれるようなも のにしていけば、もう少し契約者数も増えていくのではないかという気がします。 ○勤労者生活部長  その点はおっしゃるとおりなのですが、今言われたのは、いわゆる勤労者を含めた国 民が、いかに資産を形成していくかというときのことですね。利子所得で増えていく貯 蓄のほかに、ハイリスク・ハイリターンでもいい商品を多く活用することがいいという ことで誘導策として、税制上の優遇が考えられているという範疇だと思います。財形制 度をどうするかの議論ですが、私の理解する限りの現行財形制度は給与という使用者か らの対価を定期的にもらう、いわゆる所得の根源、蛇口が1つしかない労働者に、定期 的にお金を積み立てさせるという手法で資産形成を促そうとしたわけです。その積み立 てられた資産はハイリスクでは困るのです。つまり、「日々こつこつ貯めると、君、し っかりした財産になるんだよ」ということで、当初設定したときは、財形貯蓄という看 板をかけられる商品は、堅実な運用ができるものに限定するという思想できたのです。  ところが、相当程度運用がしっかりするという仕組みが商品で広がってきた。それを 対象として広げるということをやりつつ、非課税の恩典があるから、奨励策としてやっ てきたのです。ところが、ここに来ていわゆる利子非課税措置を見直し始めまして、日 本全体で貯蓄奨励というのはやめようということになったのです。貯蓄増強委員会がな くなったのは象徴的です。その後、自分で資産形成するということに切り替えるという ことで、天引きしてやること以上に、目的を付けなくては、インセンティブを与えない というコンセプト変えをしました。そして住宅貯蓄と年金という特定目的だけ非課税を ずらして、一般財形は非課税を切ってしまったのです。  そうすると、天引きという癖しかついていない。その貯蓄を残すインセンティブは何 が残っているかという後追いで考えると、金融機関に積み立てられたお金を積み立てと いう強制の中で取り崩せない。還元融資するという名目で、貸付けるということで両輪 である、という説明を始めたのです。ところが、これをやろうとすると、利率のところ が住宅金融公庫などで利子補給して安いが、足りないので、もっとお金を出せというこ とでやり、それを出す努力をしていたのですが、住宅金融公庫がやめてしまったので す。国策でそういうのができないのに、こちらで利子補給できるかということになり、 結局ここも制度が中途半端に終わってしまっています。こういう状況なのです。ただ、 その中で、資料の3頁を見ていただくと、年金なり住宅貯蓄が発足したのが昭和58年な り平成元年とかあるのですが、財形貯蓄は課税されたが、800万人いると見るのもいい のではないかというのが、先ほど言った還元融資があるから、そのメリットをというの はどうだろうか。課税されるのです。年金と住宅貯蓄については、実は年金のほうは件 数は、始まったのが早いからと言うのか、いわば公的な年金原資等に不安があるから、 貯められるもので有利なものは利子課税が薄いとしても、500万円の非課税の枠を目一 杯に利用して、こちらを使っていこうという判断があり、多少なりとも、住宅貯蓄より も多いと見ていいのではないかと思います。住宅貯蓄のほうは民間等の金融機関が、い わゆる長期融資から個別の消費者ローンという一還の中で、個々人の方への住宅融資を 始めたので、わざわざここで借りられなくても、もっと安いのが借りられるということ で、こちらへの必要性が落ちて、あるいは財形住宅貯蓄が減ってきている。  そういう仮説というのが成り立つとすれば、そのトレンドを踏まえた制度改正をどう するかというアプローチがないかと思っています。今言われたように資産形成という観 点で、ハイリスク・ハイリターンまで広げていくという考え方は、今の制度を前提とす る限りは、相当異例ではないか、イレギュラーではないかと思います。 ○勝委員  私もハイリスク・ハイリターンは株式に投資するとか、そういうことではなくて、投 資信託にも安定した運用というのはできるわけで、それは長期的な運用というのであれ ば、利回りが一般財形2年で回しているよりも高い利回りが得られる。長期の運用とい った安定した資金の運用ということを考えるということになれば、一般財形は必要ない のかもしれません。年金と住宅だけでいいのかもしれない。そこの部分で、もう少し工 夫をすることができないのかなと思います。 ○勤労者生活部長  なるほど、わかりました。 ○山口委員  この2年間、何してきたんだろうと思って、悩んでいるのですが、少なくとも、我々 労働側委員はいろんな勉強会もしながら、結局低所得者層が格差が大変拡大している中 で、まだ大変な状況にある。貯蓄ゼロ世帯の比率も年収400万未満世帯のこういう資料 も、類推して作ればあるわけです。そこでは、住宅もない人は、やはり何とかしなけれ ばいけない。公的年金のこういうことがあって、年金を支えるこういう制度が、今、対 象者にいってないとすれば、大企業の本当の自助努力で十分やれるようなところであれ ば、そこは改善すべき点があると思います。根本のそこは変えるべきではないのであっ て、ですから我々はきちんとした制度にしてもらいたい。  いろいろな付帯的な優遇措置についても、それは議論の爼上に乗っても、私はいいと 思っています。ただ、基本的にはそうすべきだというところで、報告書の中にもいろい ろな、ポータビリティから何から含めて書いて、それを箇条書きにしました。  まさに金融機関から出されている要望が、あの中にほとんど入っているわけてす。で きるものからやりましょう、という話になっているわけです。そういうことを具体的に やるためにこの基本懇談会でやりましょうということになっているわけです。ところ が、そのこと自体がまた、「いや、そこが本当にそうなのかどうなのか、もう一回検証 しましょう」という話になっているとすれば。 ○勤労者生活部長  そういう話になっているかどうかとすれば、まさになっているのです。というのは、 現行の制度が作られたときの時代背景に合った政策として動いているのです。かつ今も 現状に合った政策として動いていれば、その制度を前提として、それへの改良をどんど んやっていくという主張をいただき、関係者の合意が得られれば、我々だって、必要な 法改正もできるし、政府内のコンセンサスもできます。ところが、今申しましたように 作った当時と背景が違ってきており、その装置そのものが現在の状況の中で、うまくい かない。いろいろな国策と比較して、必ずしも整合性が取れてない中で、既存のものの 充実といういろいろな宿題をいただいても、いただきっ放しで措置できていないという 現状があります。申しわけないけれども、もう一度しっかり見ようというのが、今回の 基本的な議論をさせていただきたいということです。ざっと聞く限り皆さん、そういう ところには根底に問題意識があると思っているのですね。  関係金融機関から出ている要望というのは、私の個人的な考えで申しますと、制度の 運用というか、それを利用しているところでありますから、利用している範囲内で改良 をお願いされるというのは当然のことです。ここはそういった要望される装置を国全 体、あるいは政策の整合性を取りながら、組み替える必要があるのかどうかです。さら に補強する必要があるのかと、もっと大所高所の議論をした上で、たしかにこれは採用 しようとか、そういう思考をしない限り、いずれも細かい議論をしていくと、整理でき ないと思っています。  ここで、基本的な議論と個別のものを、必ず接合しながらやっていきましょうという ことを申し上げており、それを今実践し始めたところだと、自分としては認識していま す。 ○山口委員  私自身は、まさに低所得者層のこういう装置は必要なんだ、国策として。そしてそれ は存在しているんだ。それを前提に、ではどうするのだという話でしたら、まだいいの です。いや、そこがもう違うんだとか、そういう話で言われると、何やってきたんだろ うと思っているんです。おっしゃることはわかります。ですから、今の中でいろいろな 矛盾があって、いろいろな議論をずっと積み重ねてきたわけです。それはそれとして、 新たにそういうことがあったときに、先ほどおっしゃったように、対象がどうなのかと いう検証も、そういう点では必要になってくると私は思います。  そういう中で、私自身は本当に必要だと思っていますから、必要なところと、制度を どう変えるのかをきちんとやってほしいのです。  ところが、これは各論で、総論で、また始まったら、あまり今までの議論と変わりが ないようなものになる。提起の仕方も変えてほしいなと思います。 ○勤労者生活部長  もちろん、提起の仕方は組み替えなり、もう少し深めますが、今言われた論点だけ シュミレーション操作いたしますと、低所得者層の貯蓄が低いから、財形を使って伸ば すといったときに、今言われた低所得者層は例えば年収500万円、300万円、200万円、 と切ったときに、どこまでをイメージされた低所得者層か、これは政府部内でやるとき の議論です。どこまでを考えるのか。つまり、生活保護世帯水準みたいな低所得者なの か、中流所得で、年収も平均的な労働賃金を得ている方々をイメージするのか、高所得 者なのかです。もともと経済活動として、日々の生活に困った方に貯蓄というのは難し いですから、これは社会政策として補填です。財形はたぶん社会政策としては、位置付 けてないし、無理なのです。というのは、任意の制度でありまして、強制じゃないので す。しかも、事業主が採択するかどうかは、任意にしておいて、お勧め商品でやってい ます。無理です。そうすると、一定の水準なのです。  では、この一定の水準の中で、どの層が貯蓄をしているかということを捉えて、仮に 中所得者のアッパーがやっていたら、アッパーがやっていたのだから必要ないというの か。逆に下のほうがやっていないから、下のほうがやるために、貯蓄制度を維持して、 さらに優遇税制とか、お金をつぎ込むということでやれるか。そこではじめて議論が出 てくるわけです。そこのところを押さえないでおいて、給付金の額を増やしてくださ い、便利に引き出すようにしてください、というようになると、今の貯蓄制度の意義付 けのところが薄れてきているのに、何の政策かということを問われる。もう一度悪いけ れども、公の貯蓄がどの層をねらってやるか考えながら、個別の改善要求を整理してい ただきたい、と申し上げたつもりです。別に否定しているわけではなくて、もっとしっ かりした分析をしたいということです。  ただ言いながら、言われたように現状の分析をしたクロスの資料を出していないもの ですから、非常に失礼かなとは思っています。そこは申し訳ないですが、後でやりたい と思います。 ○日高座長  山口委員のおっしゃる御意見というのは、それは非常によくわかります。わかります が、例えば、先ほど資料4で各機関からも要望事項というのは並んでいるわりには、実 現したのは、このあいだの2項目だけで、まだまだ門外漢である私自身が見ても、なぜ このようなことが認められないのかなというものもあると思うのです。しかし、それ は、今までに認められてこなかったという背景を議論するには、やはり環境の変化があ って、こういう環境の変化があるから、今まではノーだったけれども、こういうものは 認めるべきではないか、というように少し変えていかないと、現実には動かないのでは ないかと私は思います。  ですから、はじめからイエスかノーかということではなく、いろいろな意見を総合し て議論を進めていくということが必要だろうと思います。 ○山口委員  いや、部長がおっしゃったとおりです。私自身、イメージとしてはたぶん持っていま す。おっしゃるとおり、400万円以下で、貯蓄に回せるかというと、そこには大変な20 何%のね。第1・5分位はそうなっていますね。そういう点では、そこに対する施策と いうのは、また違うものがあると思うのです。そこさえも揺るがそうという、いろいろ な流れの中で、連合としては、いろいろなことを言いますが、ただこのことでいけば、 今の平均といっても、平均がわからないですね。 ○勤労者生活部長  先ほど言った、分布で平均値と中央値がえらくずれています。ああいう統計の取り方 ですとイメージが全然違うのです。だから、もう少し正確にやらなくてはいけないと思 いながらも、できないでいます。 ○奥村委員  まさにそういう原理原則で結構です。実は財形貯蓄活用助成金、給付金を導入する案 を、事務局が作って、勤労者にあまねく普及するんだとおっしゃったときと、随分現在 の事務局の御発言が違うの気がします。いろんな議論があって、結局は普及することが なかったということを、大いに反省していただいて、前向きに議論できるようにしてい ただきたいと思います。  ですから、先ほど出た意見で言いますと、「貯蓄から投資」は国の施策だから、そこ に対するインセンティブをつければ、財形制度は普及できるという意見がありました が、そういう一般的な議論ではなく、本当に「誰が今、貯蓄ができていて」、「どうい う層が、本当に貯蓄したいと思っているが、できない」のかの分析をきちんとやった上 での議論が必要だと思います。ですから、今まさに山口委員がおっしゃった気持はわか るのですが、貯蓄だ、投資だ、という御提言も一般的な議論ではなく、総論的な議論で はなく、本当にこの制度自身が今どんな意義を持っているのか。その意義というのは、 今後続ける必要があるのか、どこをターゲットにするか、というようなことを議論した いですね。 ○藤田委員  いま山口委員のおっしゃったこと、私としてはそれなりに受け止めているわけです。 と言いますのは、2年前に日生のほうに委託しました研究会で、大体総論部分を含め て、財形問題の細かなことまで一応議論いたしました。この懇談会でも報告書を前提に して、そういう枠組で議論していこうということだったわけです。今改めて、そもそも の議論から起こすというのは、この3年間は何だったのかという山口委員の思いも、私 なりに受け止めております。研究会の課題としては、時間がなかったということもあり ましたが、財形をもっと大きな枠組で捉えていこう。つまり従業員福祉とか、企業福祉 の中にどう位置付けるかということで出発したわけですが、それが十分果たせなかっ た。財形問題だけに終わった感がありまして、私自身、その辺は残念に思っているわけ です。ですから、是非この懇談会では従業員福祉、企業福祉の中にどう位置づけていく のかということ。その論点の中で実は部長もおっしゃいましたが、環境変化、この10 年、少なくとも、この5年は急激に財形を取り巻く環境条件というのは変わっているわ けです。たしかに金融面もありますが、その前に労働市場そのものが大きく変わってい る。非正規社員というか、非正規雇用者が1,500万人というふうな数に上っているわけ です。単に零細中小企業という規模別の問題だけではなくて、労働力累計そのものが変 わってきているのです。  ですから、長期雇用だけを対象にした従来型の長期プログラムだけでは、なかなかこ れから解決しない問題が出てくるのではないかと思います。財形なども、やはり貯蓄を 主とするという意味においては長期プログラムへ属すると、私個人は考えているわけで す。短期雇用者が出てきますと、それなりの手当てもしていかなくてはいけない。企業 環境は非常に不透明になってきて、コスト意識が非常に強くなってきています。そうい う中で、財形全体をもう一度考えてみる。そういうことで言いますと、今日出していた だきました論点が5点ほどございますが、環境条件の変化を踏まえた、中でも企業福祉 との関係というのをどういうふうに見ていくか、ということが大事だと思っています。 具体的にどういう条件の下で我々は議論するのか、その枠組みをもう少し丁寧に書いて いただきたい。  できましたら、諮問という形ではなくても結構なのですが、こういう点を議論してほ しいということを少しまとめて出していただく。それを我々は常に共有して、問題意識 を共有して、報告書をまとめていく。こういうことで、是非お願いしたいと思います。  考えられる論点というよりも、考えなければならない論点というのがいくつもあるよ うに思いますので、その点をよろしくお願いします。 ○日高座長  もちろん考えられる論点というのは、ここに掲げられた5項目には当然限られないわ けです。どんどん広げていただいて結構だと思います。そういう観点から見れば、例え ば7月に予定されている次回も財形貯蓄のいわば事務局が言った個別論といっても、本 日の議論を踏まえて、総論も含めていろいろな議論に結びついていくわけです。この貯 蓄関係だけに捉われずに、今までに言われていた総論等も含めての議論を7月にはさせ ていただきたいと思います。先ほどの、御要求のありました資料を、まずできるだけ早 く出していただく。できれば7月の冒頭にそういった資料を出していただいて、その辺 を含めて、議論をしていただければありがたいと思います。 ○勤労者生活部長  ありがとうございました。実は先ほど言われた研究会の報告を、ある意味でぶち壊す という、非常に失礼なことをやり始めるという自覚がございまして、それをお許しいた だきたいというのが今回の趣旨であります。いただいたものを実現しようといろいろ考 えたのですが、今の政府部内の諸政策からいくと、やはり相当ハードルが高いのです。 ですから、いただいたものを本当に通すべきものをどうするかと考えたときに、もう一 度財形制度をどうするんだというコンセプトを作らないと、政府部内で要求が通らない ことがわかったのです。それは次回、整理して申し上げます。  いわゆる政策をやるときに、人、物、金のうち一番ボディーブローが利いたのが金な のです。いろいろな形で、支援措置を付けてやりましょうというのが最後の結論なので すが、税制については政府全体でなかなか厳しい状況です。つまり、国全体の収入が上 がらない。  出すお金で、特別会計で出せというお話があるのですが、一般的に御存知のように、 実は労働保険の特別会計が、本体給付でない福祉事業というものについての圧縮をしよ うという、すごいコンセプトがございまして、それがほとんど事業主の方の連帯責任と いう保険料で成り立っているのです。時間がないようですので、また整理して申し上げ ます。そんなことから、是非お願いしたいということです。 ○日高座長  だいぶ定刻も過ぎてしまいました。最後に、前回財形制度に関する目標設定、政策評 価関係の資料を出せという御説明がありましたが、これはお手元にお配りをいたしまし た資料5というところに「勤労者財産形成促進制度に関する政策評価」というのがまと めてございます。これは政府内部でいろいろな各行政の仕事のやり方についての政策評 価を求められて、その中から財産形成促進政策に関するものだけを抜き出したものであ ります。  本来事務局から説明をさせていただこうと思ったのですが、取りあえず、本日は時間 の関係もございますので、お読みいただいて、何か御質問があれば、次回にさせていた だければありがたいと思います。最後に事務局から何か、今後のスケジュール等につい てございますか。ございませんか。それでは、ちょうど時間がまいりましたので、これ で終わりにします。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。 照会先:厚生労働省労働基準局勤労者生活部企画課企画係 (内線5353)