04/06/01 第20回厚生科学審議会科学技術部会議事録                   第20回               厚生科学審議会科学技術部会                    議事録              厚生労働省大臣官房厚生科学課             第20回厚生科学審議会科学技術部会                   議事次第 ○日時   平成16年6月1日(火) 10:00〜12:00 ○場所   厚生労働省 専用第21会議室(中央合同庁舎第5号館 17階) ○出席委員 矢崎部会長       井村委員 垣添委員 北村委員 倉田委員 黒川委員 笹月委員       佐藤委員 柴田委員 長尾委員 中村委員 松本委員 南 委員      (事務局)       上田技術総括審議官 中谷厚生科学課長 成田研究企画官 他 ○議事  1.厚生労働科学研究について    (1)平成15年度厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について    (2)平成17年度の厚生労働科学研究分野について    (3)厚生労働科学研究の中長期的な展望について  2.医学研究分野の個人情報保護の取扱いについて  3.機関評価について(国立・精神神経センター) ○配付資料  1−1.厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について(案)  1−2.厚生労働科学研究費補助金制度の概要(案)  1−3.厚生労働科学研究費補助金の成果の評価(平成15年度報告書)(案)  1−4.厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要  1−5.厚生労働科学研究費補助金研究事業の成果表(平成15年度)  1−6.厚生労働科学研究費補助金研究事業の成果に基づく原著論文  2−1.平成17年度の厚生労働科学研究分野について  2−2.厚生労働省におけるこれからの研究開発の推進戦略(案)  3−1.今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会の設置につ      いて(案)  3−2.科学技術政策の進捗状況について(概要)(案)  4.医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会の設置について    (案)  5.国立精神・神経センター研究所の機関評価について ○参考資料  1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿  2−1.厚生科学審議会科学技術部会関連規程  2−2.厚生労働省における医学研究に関する指針の概要  2−3.個人情報の保護に関する法律の概要  2−4.個人情報保護法に関する基本方針及び附帯決議  2−5.ユネスコにおける生命倫理の最近の検討状況について  3.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針 ○事務局  ただいまから、「第20回厚生科学審議会科学技術部会」を開催します。委員の皆様に はご多忙の中をお集まりいただき、どうもありがとうございました。本日は今井委員、 加藤委員、金澤委員、高久委員、竹中委員、中尾委員からご欠席のご連絡をいただいて います。長谷川委員はまだお見えになっていませんが、現在のところ、委員20名のうち 過半数のご出席をいただいていますので、会議が成立することをご報告いたします。  まず、会議の資料の確認をいたします。欠落等がありましたらご指摘いただきたいと 思います。本日の資料は大変多く、恐縮です。配席表、議事次第、配付資料1−1から 5まで、参考資料1から3までです。資料の番号を振っていませんが、「国立精神・神 経センター」のパンフレットと「厚生労働科学研究費のあらまし」というパンフレット を配付しています。  先生方の席上には、参考資料の説明のところで使います「個人情報の適用除外につい てのイメージ」という図を1枚お配りしました。議題のときにまたご説明させていただ きたいと思います。それでは部会長、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  おはようございます。悪天候の中、お忙しい中をお集まりいただき、ありがとうござ います。  本日は科学技術部会で最も重要な課題である、厚生労働科学技術についてご審議をお 願いしたいと思います。委員の皆様におかれましては、どうぞ活発なご意見、あるいは ご注文をいただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いします。  早速、議題に入ります。いま申し上げた「厚生労働科学技術について」、1番目の議 題になります。最初に「平成15年度厚生労働科学研究費補助金の成果の評価」につい て、事務局からよろしくお願いいたします。 ○事務局  「厚生労働科学研究費補助金の成果の評価」について、事務局よりご説明いたしま す。資料1−1をご覧ください。成果評価を行う背景には、厚生労働科学研究費補助金 が我が国の代表的な競争的研究資金制度の1つであり、また研究評価システムの確立の 必要性が指摘されているということがあります。  このような背景に対応し、昨年6月より厚生労働科学研究費補助金の成果の評価を実 施し、7月の総合科学技術会議「競争的研究資金制度の評価」において、「資金配分の 適切性や研究成果等について概ね適切に評価されている」との評価がなされています。  ただし、同時に、「政策支援的要素の強い研究課題では学術的な側面に加え、行政へ の貢献を明確にし、研究者が納得する評価指標を導入することが重要である」などの指 摘もあり、成果の評価を継続しながら研究評価システムの整備を進めることが求められ ています。  そこで、本年度の評価では、平成15年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価を 「行政への貢献」を明らかにしながら実施することになりました。  資料1−2をご覧ください。まず、補助金の概要についてご説明いたします。この資 料は基本的に、昨年度の概要について数値を新たにしたものです。  重要と考えられる点を3点のみご紹介いたします。第1点は3頁の「予算」です。4 分野、約1,400課題の平成16年度の予算は合計で約420億円でした。第2点は4頁にある 各事業の申請・採択結果です。新規申請課題の採択率は28.6%でした。課題あたりの平 均研究費額は表の右下にあるとおり、1課題あたり平均2,321万円でした。第3点は7 頁にある、研究事業毎の平均研究費額です。課題あたりの平均研究費額が最も低いのは 「統計情報高度利用総合研究」の370万円、最も高いのは「治験推進研究」の9億5,000 万円でした。  資料1−3をご覧ください。次に、各研究事業における成果の評価をご説明いたしま す。2頁目までは既に説明した内容が書かれています。3頁目からは今回の評価方法の 説明です。評価対象は厚生労働科学研究の各研究事業、および平成15年度に終了した課 題の成果です。基礎資料は本年4月から5月に収集しました。  記述的評価と定量的評価を行い、まず記述的評価について各研究事業のご説明をした あと、定量的評価についてご紹介いたします。記述的評価については(1)研究事業の目 的、(2)課題採択・資金配分の全般的状況など、(1)から(6)までの項目で評価を行いま した。具体的な内容は資料1−4に示してあります。かなり分量が多いために、この6 項目を総合した概要をいまご説明している資料1−3に掲載しています。詳細をお知り になりたい方は、併せて資料1−4をご覧ください。  各研究事業の記述的評価をご説明いたします。なお、限られた時間で1,400に上る研 究課題の研究成果を十分にご説明することはできません。今回は各委員の先生方が研究 事業をイメージできるよう、具体的例を中心にご紹介いたします。その後、ご質問に対 して担当課からご説明したいと思います。  7頁にあるように、平成16年度の厚生労働科学研究は4研究分野、18研究事業に分か れて実施されています。まず、「行政政策研究分野」です。厚生労働行政施策に直結す る研究事業である行政政策研究事業は、(1)にあるように3領域から構成されていま す。各領域のまとめのあと、図1に具体的な成果の例が示してあります。例えば、地域 における福祉サービスの第三者評価および第三者評価機関の認承に関するガイドライン 案について提案を行い、この成果から福祉サービスの第三者評価事業の推進体制が構築 されています。  10頁の「厚生労働科学特別研究事業」については、社会的要請の強い諸課題に関する 必須、もしくは先駆的で緊急性のある研究を支援して、当該課題を解決するための新た な科学的基盤を得ることを目的としています。研究には例えばSARS対策に資する研 究、またBSE発生国の牛脊柱の食品原料としての使用許可に関する研究など、緊急性 のある課題に対して行政施策と安全性に関する成果が極めて効果的に出されていると考 えられます。  次に「厚生科学基盤研究分野」です。11頁をご覧ください。これは2つの研究事業か ら構成されています。「先端的基盤研究事業」は4研究領域からなっています。具体例 としては、「骨髄細胞移植による血管新生療法」などが医療保険において高度先進医療 として認定されるなど、実際の医療の現場で用いられる再生医療技術を生み出しまし た。  また、産学官共同による事業の運営・実施体制等を整備するとともに、ヒト試料の採 取・管理から創薬ターゲット探索用データ解析までを一括管理するシステムを構築して います。  14頁の「臨床応用基盤研究事業」は2領域があります。基礎研究成果の臨床応用推進 研究領域では、医薬品または医療技術等の基本特許を活用して、治療法として研究期間 中に探索的な臨床研究に着手し得る医薬品または医療技術に関する研究を推進し、基礎 研究成果を実際に臨床に応用することを目的としています。  「治験推進研究領域」の具体的な成果として、厚労省・文科省で作成した「全国治験 活性化推進3カ年計画」に基づく、500を超える登録機関からなるネットワークの構築 があります。さらに、我が国において初めて試みられる医師主導型治験の支援を行って います。  次に16頁、「疾病・障害対策研究分野」です。この研究分野は「長寿科学総合研究事 業」から「難治性疾患克服研究事業」までの9事業から構成されています。長寿科学総 合研究事業はゴールドプラン21や介護保険制度と関連のある長寿科学総合研究領域、及 び「メディカル・フロンティア戦略」の一環として痴呆・骨折・臨床研究領域から構成 されています。具体的成果には、寝たきり予防を目的とした老年症候群発生予防の検診 におけるスクリーニング手法の開発があり、その成果は介護保険制度の見直しに示唆を 与えています。また、老人骨折の発生・治療・予後に関する全国調査、高齢者の転倒と 骨粗鬆症に伴う骨折の予防を目的とした研究などで多くの成果を得ています。  18頁、「子ども家庭総合研究事業」は「子ども家庭総合研究領域」および「小児疾患 臨床研究領域」から構成されています。研究成果の例として配偶子・胚提供を考慮すべ き適応基準を含む、我が国における独自の生殖補助医療技術全体の診療指針の作成があ ります。また、研究成果を参考に「健やか親子21」公式ホームページを構築運営し、情 報の収集・提供面で寄与しています。  20頁に「第3次対がん総合戦略研究事業」があります。これは「がん克服新10か年戦 略」の推進に大きな貢献をしてきました。がんの病理像と遺伝子・分子・細胞レベルの 変化の対応を明らかにし、新規がん関連遺伝子を同定しています。また、磁気誘導装置 を用いた有効性・安全性の高い胃内視鏡切除術の手法を開発し、動物実験を終了して、 今年度より臨床試験の段階に入っています。また、肺がん対策の切り札として世界的に 注目されている、CTを用いた肺がん検診の有効性評価を行い、中間成績として男性で 約36%の死亡率減少効果を示唆する成績を示しています。  21頁の「循環器疾患総合研究」は、我が国の3大死因のうち、2位と3位を占める重 要な疾患である脳卒中、心疾患及びその原疾患である糖尿病等の生活習慣病に対する予 防・診断・治療法について研究を進めています。研究成果の例として、我が国の急性心 筋梗塞患者数が1年間に約6.6万人であり、医療圏単位の発症率が初めて判明し、地域 医療の施策に有用であると評価されたことが挙げられています。  また、後ろ向き調査と現在進行中であります本邦初の大規模無作為割付試験により、 低リスク狭心症に対する薬物療法はインターベーションにより予後が良好であり、コス トも4分の1であることが判明しました。これにより、新しい狭心症治療ガイドライン を作成することで、患者ならびに医療経済に資することが期待できます。  続いて22頁の「障害関連研究事業」です。これは「障害保健福祉総合研究」および 「感覚器障害研究」から構成されています。「障害保健福祉総合研究」では身体障害者 および知的障害者、入院中の精神障害者に関する研究など、公募課題の決定時点から必 要な行政施策を踏まえて戦略的に取り組んでおり、施策決定の上での基礎資料の収集・ 分析、研究成果に基づく施策への提言等に大きな成果を挙げています。「網膜刺激型電 極による人工視覚システムの開発」など、視覚、聴覚・平衡感覚等の感覚器機能障害の 状態解明、検査法、治療法の開発、支援機器の開発に着実な成果を挙げています。  23頁のエイズ対策に関する技術開発研究では、薬剤耐性HIV−1・副作用に関する 研究成果のうち、実用レベルに達している部分をホームページで情報公開して検査の受 付等を行い、治療支援に貢献しています。C型肝炎ウイルス感染の全国実態調査を実施 し、潜在的感染者が肝臓専門病院へ速やかに移行・治療されるネットワークを構築し、 治療ガイドラインを作成しました。「新興・再新興感染症研究」ではバイオテロ対策等 を講じる上で、炭疽菌などの検出法確立の意義を確認するとともに、動物由来感染症の サーベイランスの立案・実施のための有益なモデルの提供が行われています。  26頁の「免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業」では、明確な目標を設定、効率的 な研究を推進し、その研究成果を行政に反映しています。例えば、関節リウマチに関す る研究において、全く新しいタイプの治療薬剤に対する具体的な適応基準、除外基準を 明示したガイドラインが初めて策定されています。また、重症喘息に関する研究の成果 は喘息治療ガイドラインへ反映される予定です。  27頁の「こころの健康科学研究事業」は「精神保健福祉領域」および「神経疾患領域 」から構成されています。精神保健福祉分野においては行政施策に直接的に反映された 研究が多くあります。例えば、「自殺の防止対策の実態に関する研究」の成果は基盤と なる情報を提供し、厚生労働省の各種報告書として活用されています。神経疾患の分野 においては、脳・神経疾患に関して病態解明から治療法・予防法の開発まで、総合的に 多くの成果が挙げられています。例えば、経頭蓋磁気刺激療法の精神疾患への臨床応用 を発展させ、脳波と機能的MRIの同時測定は国際特許も申請するに至り、世界をリー ドしています。  同じく、27頁の「難治性疾患克服研究事業」では特定疾患の診断・治療等臨床に係る 科学的根拠を集積・分析し、医療に役立てることを目的に積極的に研究を推進していま す。また、実用化につなげる等、治療法の開発といった点においても画期的な成果を得 ています。難治性皮膚疾患に関する研究において、重症多形滲出性紅斑の診断基準案を 作成し、全国に広く普及しました。診断基準案は厚生労働省の難病対策ガイドブック や、難病情報センターウェブサイトで活用されています。  28頁からの「健康安全確保総合研究分野」は5つの研究事業からなっています。29頁 の「創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業」では画期的・独創的な医薬品等の創製 のための技術開発、医療現場のニーズに密着した医薬品の開発、および長寿社会に対応 した保健・医療・福祉に関する先端的基盤的技術開発のための研究を推進しています。 例えば質量分析法や各種電気泳動法など、プロテオミクスの手法を用いたバイオ医薬品 の新規評価技術を開発し、多数の国際的分析化学雑誌、およびバイオ医薬品関連国際誌 その他に掲載され、大きな反響がありました。  30頁の「医療技術評価総合研究事業」では糖尿病の治療、合併症抑制に関する個別課 題の解決方法、脳卒中や大腿骨頚部骨折等の診療ガイドラインをまとめ、生活習慣病対 策や介護予防の推進など政策の企画立案に寄与しています。また、誤った医療行為事例 の収集、分析により、医療事故防止をはじめとする医療安全対策が検討されています。 その研究成果は「厚生労働大臣医療事故対策緊急アピール」において、推進すべき新た な取組み、強化すべき対策として示されています。  同じく30頁、「労働安全衛生総合研究事業」は労働環境の変化にも留意しつつ、労働 安全衛生に関する課題に今後より一層的確に対応するために、職場における労働者の安 全と健康を確保をするとともに、快適な職場環境の形成を促進するための研究を総合的 に推進しています。頸肩腕障害患者等において自覚症状を調査し、筋硬結と圧痛が合併 する人における筋血流の低下、季節による症状の変化などが明らかになり、労災認定や 予防に大きく貢献すると考えられます。  31頁の「食品医薬品等リスク分析研究事業」は3領域からなっています。「食品の安 全性高度化推進研究領域」は食品を介して人の健康に与える影響を科学的根拠に基づ き、最小限にするための研究を行ってきました。また、「米に係るカドミウムに関する 規格基準の改正の可否について」は、審議会の毒性部会において、研究成果を主要な根 拠として議論がされていました。また、2004年の「国際食品規格委員会」におけるカド ミウムの食品中の基準値などの検討で、本研究成果が議論の主な拠り所とされていま す。  「医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究領域」は医薬品・医療機器 等の分野における安全性の向上および安全対策、薬物乱用の防止対策、人工血液開発の 推進を通して、国民生活への質の向上等に資する研究がなされています。  34頁の「健康科学総合研究事業」は5分野から構成されている、公衆衛生に関する総 合的研究事業です。研究成果の例としては地域保健関係機関のマンパワーに関する研究 成果が、保健所長の職務の在り方に関する検討会の基礎資料として活用されるなどあり ます。以上で記述的評価のご紹介を終わります。  次に、「終了課題の成果の定量的評価」についてご説明します。定量的評価の調査対 象は平成15年度に終了した課題です。資料1−5をご覧ください。それぞれの課題につ いて専門的・学術的観点、行政的観点、その他の社会的インパクト、普及・啓発活動の 件数などが記載されています。  資料1−3に戻ります。これらの調査表を集計したものが資料1−3の37頁にある表 6です。今回、個別の研究成果の数値が得られた588課題について、原著論文として総 計1万3,046件、その他の論文総計7,807件、口頭発表等総計1万9,118件が報告されて います。特許件数は合計519件でした。また、医療行政施策の形成・推進に貢献した件 数は784件でした。  表7は各研究事業別の原著論文発表件数の平均を上位10研究事業について示していま す。難治性疾患克服研究事業などにおいて、課題あたりの原著論文数が高かったことが わかります。表8は課題あたりの特許取得件数の上位10事業を示しています。「免疫ア レルギー疾患予防・治療研究事業」などで課題あたりの特許件数が大きくなっていま す。表9にあるように、課題あたりの施策への推進等への反映件数では「免疫アレルギ ー疾患予防・治療事業」などが上位にありました。  なお、今回の報告で、厚生労働科学研究費補助金による研究成果のうち、同僚評価に より査読された英文原著論文名を主任研究者に報告いただきました。資料1−6をご覧 ください。英文原著論文の概要をまとめたもので、6,000件以上の報告がありましたの で併せてご報告いたします。以上でご説明を終わります。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。評価について、いま包括的な説明を技術調整官から いただきました。資料は大変な量でして、細かい内容は資料1−4と1−5、それから 1−6にございます。委員の皆様には予め送付させていただいたところです。本部会に おいては先ほどご説明のあった評価方法を6つの視点から評価する。すなわち、制度の 目的や導入予算に照らして課題採択や資金配分の結果が適切か、研究成果やその他の効 果が十分に得られているかなどについて評価を行うことになっています。  いま、そのような視点からの概略を述べていただきました。委員の皆様、何かご意見 やコメントがありましたらよろしくお願いしたいと思います。いかがでしょうか。 ○黒川委員  これは矢崎部会長もよくご存じだし、ここには笹月委員や北村委員、垣添委員など、 それぞれ国立センターの長がおられるわけです。公募した臨床審査や中間評価が出てい ると、公募しているのは確かに正しいやり方なのだけれども、例えば循環器疾患だと急 性のCBAのTPAを使うかどうか、心筋梗塞だとどうしようか。ランダマイズ・スタ ディーをするとか、EBMが日本でないと言うけれども、これだけお金を使って5年し ても、例えばEBMのランセットが、ニュー・イングランドで出てきているような論文 が出てこないというのは、全体のデザインに問題があると頻繁に言っていたわけです。  公募すると同じようなプロジェクトが3、4カ所から出てくる。「これは大事だから やる」といってみんな出てくるのです。村社会だから仕方がないのですが、例えば京大 系のネットワーク、阪大のネットワーク、東大系のネットワークなど、ゲノムとこれで やりましたとなる。そうすると、α値とβ値から言うと、大体2,000人の患者がいるの だけれども関連病率ができますなどと書いてある。その結果、予算からいって1つしか 取れない。オールジャパンの体制ができないのです。そこで「公募しているのだから審 査しろ」などと言われて、北村委員に「どうするの」と聞いたら、「そのようなことを 言っても駄目だよね」とおっしゃる。  前から話していたのですが、厚生労働省という国のお金をそのように臨床なり、ゴー ルを設定した疾患のアウトカムを見たいということに使うのなら、国立循環器医療セン ター、笹月委員だとゲノムと疾患の関係ということであれば、やはりプロトコールを外 部の関係学会からきちんと持ってきて、スタディーやエビデンスを積み重ねてデザイン を描いていく。「このように必要」となるとエントリーをしなくてはいけない。例えば 急性のCBA、キュウテイ前など矢崎部会長もよくご存じだし、インフォームド・コン セントを取れる率など「ランダマイズ・スタディーをします」などと言うと、急性疾患 ではないのですが多分10%を取れるかどうかなどということになる。  そのようなデザインをして、「ここに応募してください」というのが公募の性質で、 エナイジョンのスタディーなど、アウトカム・スタディーはみんなそうやっているわけ です。それでは、それぞれのセンターで過去、このような症例を何例扱っているか出し てくださいと言えば、なぜエンドースできるのかすぐわかるわけです。それをやるのは 非常に大事なのですが、それを国のお金だから循環器疾患であれば国循から予算が流れ て、各センターに行って、そこの予算でCRCを1人付けましょうということになる。  もう1つ大事なことは、これは笹月委員がいちばんよくご存じなのですが、このよう なスタディーでいちばん大事なのは患者の個人データをきちんと同じプロトコールで行 う。臨床治験もそうですが、全部どこかに落としてまとめて、データをマネジメントし て、エピデミオロジーを分析する人がいつでも使えるようにきちんとしていなければい けないわけです。  例えば、製薬企業の販売後の大規模治験など、1万例とか2万例出ているような、ウ エスト・オブ・スコットランドとかライフスタディーなどもそうです。あのようなもの がいちばん大事なのは治験をする現場の先生たち、インフォームド・コンセントでデー タを入れてもらうのは大事です。しかし、全体のデータをきちんとコンピューターに入 れて、これはどう、あれはどうといった時にどんどん分析できるようにしなくてはいけ ないわけです。そのシステム全体を組んで始めないといけないのではないか。そうやっ て始めると差があるのかないのかわかりませんが、5年したら結果は必ず出るわけで す。矢崎部会長はよくご存じだから、是非その辺をきちんとやらないと、と思います。  いま科学技術基本計画は第3次になってきて、いろいろ出るのはいいのですが、日本 の場合は特に疾患ベースのアウトカム・スタディーというのはみんな非常に期待してい ると思います。その期待はそれぞれが申請しているだけだから、成果が出たというけれ どもある程度国際的なジャンル、「日本できちんとエビデンスが出ましたね」など笹月 委員が言っている例のスタディーなどもそうですが、そういうものがなかなか出てこな いのは、もともと戦略的なデザインとお金の使い方に問題があるのではないか、北村委 員としょっちゅう話をしています。その辺を是非考えて、今度、来年度というわけには いかないでしょうが、その次ぐらいからそのようなシステムを厚生労働省として作らな いと失望感が大きくなってしまうのではないかと思います。是非、それを考えてもらい たいと思います。  中谷課長ともやり方についていろいろ相談しています。矢崎部会長なども特にそうで すが、厚生労働省の国の予算の流れ方というのはある程度制限があるからやむを得ない のですが、どういうアウトプットを見せるためには、どのような人たちのアドバイスを 得ながら、どのようにやってどのように予算を付け、どこに置こうかということを考え ないと、やはり大変まずくなってしまうのではないかという点を非常に気にしていま す。是非、そのようなことを考えていただければと思います。これは過去のことでいい のですが、これからそのようなことを戦略的に考えてもらいたいと思っています。 ○矢崎部会長  極めて大切な指摘だと思います。 ○笹月委員  ちょっと例が出されましたので報告します。例えばそれぞれの疾患について、同じよ うなテーマでいくつかのグループが申請しているということは実際にあると思います。 いま例として出された、骨髄移植におけるHLAのマッチングがどれぐらい重要かとい うことに関しては、コンセプトそのものが新しいテーマですので、日本の国内でいくつ かのグループが同時にやるということはあり得なくて、厚労省の班が組まれ、HLAに ついて、これまでは血清で合っていればドナーとレシピエントの移植が行われたのです が、血清で合っていてもDNAレベルでは違っているということが明らかなのです。D NAでマッチさせるとどれぐらい改良するのかというのがテーマだったわけです。  それを実際に行ったら、確かにDNAレベルで合っていれば5年経っても60%は生存 しているのに、DNAレベルで1つでも違うと半年で60%以上が亡くなってしまうとい う、非常に劇的な差が出ました。それが『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・ メディスン』に掲載された。それが出るとすぐ、その日の『ニューヨーク・タイムズ』 が1面でその記事を紹介したという、非常にインパクトのある結果でした。  それに応えてすぐ、日本でもDNAレベルでのマッチングをやりましょうということ でスタートしました。そのような例がありますので、日本では絶対そのようなことがで きないということではなくて、疾病に関して本当にきちんと、最初のグランドデザイン のところで十分にプランニングがなされていれば、これだけの研究費があるわけなので 本当に有効なアウトカムができると期待しています。プランニングのシステム、どのよ うに科研費の公募の部分を作り上げるかが重要かと思います。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○北村委員  国というか、厚労省があるテーマに沿って主体性を持ってやるという、指定研究とい うものがある。もう1つはもちろん競争的研究資金という形で、公募によって行われる 場合があります。  いまのような6項目の評価基準が出ていて、そのような評価から見ていくと、公募型 が3年、指定型が5年と長い場合が多い。しかし、アウトカムから見ると成果はどちら か。世の中はすべて公募になっていますが、公募すると先ほど黒川委員からご指摘があ ったように、それぞれ同じテーマで各大学が別個にやって、関連が全くないということ も事実たくさんございます。国としてのアウトカムを求めるという場合、もう少し指定 型というものをこのような委員会を通して合意が得られるならば付けていってもいいの ではないか。  よりアウトカムを重視した場合、どちらが成果が上がっていくかというのはお答えに なれるかどうかわかりませんし各部門で違いもあろうかと思います。世の中あまりにも 公募になって公平性を強調しますので、いまのような地域別、大学別、組織別という弊 害もあるのではないかという気もします。私の意見としては、ある組織を通じて了解が 得られるならば、国の課題に関して指定型というものを、もう少し重視してもいいので はないかと思います。 ○黒川委員  循環器疾患だと国循がやるわけではなくて、国循にまず予算は流れるのですが、国循 の外にきちんとスタディー・パネルを作る。そうすると、5つぐらい研究のデザインが 出てきます。いままでのデータからどのぐらいの数の登録が必要かというのがわかって くる。そうすると、いまのプライオリティは一体何なのかということが循環器関係疾患 の中で出てきます。  それが5つぐらい出てくると、この予算だと多分5年かかる。そうすると、この1題 にしましょう、あるいは2題にしましょうといって、それが終わったら次のスタディー に行きましょうという話がある。国循に指定はするのだけれども、デザインするのはみ んな国循の外にある、アカデミックなソサエティーのコミッティがやるわけです。そこ でエピデミオロジーとか、いろいろなものを入れて、文献をさらに探しながらデザイン をきちんと書く。これに参加するところを公募することが大事なのです。ドロップアウ トの確率も計算しているわけです。国循がやるわけではない。  国循という国の機構を通してやるのですが、極めて透明性が高くて学術的にも意味が ある、保健行政的にも非常に意味があるという、順番を付ける委員会だけここできちん とやればいいのではないかと思います。あとは毎年どうなっているか、進捗状況はとい うことさえきちんとフォローしていればいい。そのためのインフラは何かというと、先 ほど笹月委員が言われたように、患者の個人データをどうやってコンフィデンシャルな 中に入れるかという点が大事なのです。参加するところには毎年このぐらい予算が出て います。過去3年間でこれだけ患者がいて、おそらくインフォームド・コンセントはこ のぐらいでとしていると、もちろん医師は大変です。  例えば、矢崎部会長の統轄されている巨大な国立病院機構などというところも参加す るのかもしれません。それはそのような患者が多いからです。だけど、そういうところ にはCRCを何人付けましょう、データについてはどうしましょう、医師や看護師はど うしましょうという話の予算を付けるのが大事なのです。  この間、アメリカと日本で国のセキュリティとセーフティーに関する二国間の協議を やっています。厚労省でも中谷課長が出てきていろいろやっています。例えばアメリカ でいま、デパートメント・オブ・ホームランド・セキュリティーでボーダー・コントロ ールとか、色々ななことにサイエンス・アンド・テクノロジーの政策を行っている。サ イバーテロの予防とか、色々なことを行っています。  サイバーテロだけでもベンチャー会社とか、私企業もたくさんあって、お互いのコン フィデンシャリティを守りながらいかに国の予算を付けるかというのは結構大変なので すが、今年が914ミリオンドルとか言っていたでしょうか、サイバーテロ防止に1,000億 円ぐらい予算が付いているわけです。民間企業にも出るわけです。そのとき聞いたので すが、研究者とか、民間会社もいろいろあるのだけれども、人件費と年金、雇用のイン ディレクト・マストとアドミニストレイティブな人、テクニシャン、スタッフ、セクレ タリーなどみんな入れる。そのうち何パーセントが人件費だと聞いたら、「100%が人 件費だ」と言っていました。つまり、そのぐらい人にお金がかかるわけです。  そのようなメカニズムを作ってあげないと、いつまでたっても医師は診療が忙しい。 矢崎部会長の国立病院も診療がどう、お金がどうと言われていますが、結局行うのは人 だから是非そのようなことを考えなくてはいけない。ただ、多分中谷課長は「国のお金 は人には使えません」などと言うだろう。そこに問題があるわけです。そこをどのよう にアウトソーシングするか。その辺をうまく考えないと、いつまでたっても笹月委員が 言っていたような。笹月委員もかなり個人的にされた部分が多いわけですが、システム として組み込まれると、次から次へと日本発のきちんとしたものが出てくる。それが 「診療ガイドライン」ではないですが、政策に入れるというぐらいのパワフルなメッセ ージになってくるということはとても大事だと思います。是非、そのようなことを考え たらいいかなと思います。 ○垣添委員  先ほど北村委員がご指摘のように、国として、あるいは厚生労働省として、このよう なことを明らかにすべきだという課題をある程度指定するのが良いと私も思います。運 営の公平性や透明性というのはもちろん求められますが課題の重要なものをきちんと設 定して、それを指定研究として進めていく。世の中では公募研究が非常に盛んですが、 この方針が大事だということを常々思っています。ですから、課題の設定と運営方針を うまく固めて、是非厚生労働省として明らかにしていくべき疾患あるいは課題を進めて いくことを考えていただきたいと思います。 ○柴田委員  いつも申し上げていることをまたお話いたします。今日、改めてこの膨大な資料を見 てやはり評価とは何かということを考えます。例えば、研究にかけているエネルギーと それを評価することにかけているエネルギーとの比率がどれぐらいなのだろうかという ことを改めて感じます。  おそらく、その研究を評価できる最適な人は、その研究の最も最先端にいる人だと思 います。そう考えると、評価のほうに非常にエネルギーをかけるということは、研究自 体にとって果たしてどうなのかという疑問を前から持っています。これだけの膨大な資 料を前にして改めて、いま評価で大変な時代ですが、評価の仕方そのものについても評 価をしなければいけない時代というか、評価にかけるエネルギーを少し軽減する。ある いは、もっと効率化を図る方法ということも研究すべき大事な時なのかなと思います。 そうでないと、この前も申し上げましたが、いわゆる「評価なって研究進まず」という 状況に日本全体が陥る恐れを感じないわけではありません。  そのことと同時に、それと相矛盾するのですが、評価というのはこれだけエネルギー をかけて果たして本当になされているのかという、もう1つ別の疑問があります。とい うのは事前評価、中間評価、事後評価とありますが、例えば中間評価でこの研究はここ でやめなさい、ストップしてもいいという形に結果が出たことが果たしてあるのかとい う疑問なのです。おそらく、ほとんどないのではないか。「概ね妥当」というのはそれ はそれでいいのですが、またそういうものを最初から選んでいるから、そのようなこと はあり得ないと言われればそれまでです。しかし、本当の評価をするならば例えば中間 評価で、「ここでもういい、もっと進んでいるところへ費用を回しなさい」ということ が本当の評価なのだろうと思います。ただ、おそらく、そのようなことは現実にはない のではないかと思います。あるならば、私の杞憂にすぎないかもしれません。 ○中谷課長  いくつかの研究事業のパネルで責任を持ったことがあるのですが、大体1年で1つの プロジェクト、2つのプロジェクトが「継続認めず」という感じになっています。  あと、中間評価の結果は次年度の予算配分に非常に影響いたします。ですから、アベ レージを取ったプロジェクトは大体、ファンディングのレベルもそれなりである。アベ レージから極端に悪いと中止です。ちょっと悪いと、それに応じて1割減、2割減、3 割減というように、次年度予算配分と評価がリンケージしているというのが大部分の研 究事業の姿です。 ○中村委員  厚生労働省の場合、目的とするところは疾病や健康など、非常に明快だと思います。 先ほど黒川委員が口火を切られ、先生方がおっしゃったことは研究の側から見たときに とても大事で、きちんと目的を決めて、外からよく見えるような形にし、最終ゴールが はっきりするような形で行うのが大事だと思います。  その時、研究の中だけでなくもう1つ外側からつまり社会からもそれぞれの研究の目 的が明確に見えるようにしておく方法が必要なのではないか。たとえば、4分野、つま り行政、総合、先端、健康安全などに分けています。具体的に中を見ると、例えば先端 のところにある「ゲノム研究」で中心になっているのが高齢者疾患(例えばアルツハイ マーのような疾患)です。一方、「高齢者の疾患の研究」が別にあります。研究として は別かもしれませんが社会から見ればそのようなところとはつながっているはずなので す。そのつながりが見える必要がある。  厚労省としてこういう方向で、このような疾患に重点を置いてこうやるというとき に、それぞれさまざまなレベルでの研究があると思います。実際の研究は別々に行われ ているとしても、それらがどれぐらい連携し、統合化しているかということをどこかで まとめて見ることが欲しいと思います。そこから新しくこれはこうつなげていけるので はないかということが見えると非常に明快だと思います。ですから、一つひとつだけで はなくてここにある40いくつかの研究の連携が外から見えるような作業が評価としては 必要なのではないかと思いました。 ○黒川委員  いま中村委員の言っていることも、柴田委員の言っていることももっともで、みんな 評価疲れしているのです。なぜかというと、やはりタックス・ペイヤーのお金がいいか げんに使われていたことがだんだんと明らかになったからなのです。だけど、そこはお 役所は絶対認めない。一応「評価している」という、格好をつけているだけだと思いま す。  国立大学も、矢崎部会長の病院もそうなのですが、みんな結構一生懸命やっていま す。でも、北村委員と一緒の委員会に結構いるからわかっているのですが、先ほどのよ うに公募するではないですか。そうすると、3つか4つ良いものがあるのです。みんな 同じことを言っている。でも系列が違うから、1つにまとめてオールジャパンにしよう と言うのです。だけど、「今年はこの予算ですから1つだけ選んでください」と言われ るわけです。その中でいちばん良いと思っているから選んでいるのですが、あまり良い ものがないところもある。だけど分けてしまっているから、「予算を付けてよ」と言わ れればやはりそうなってしまう。その中で、やはり次の年は落ちたかなということが無 きにしもあらずだった。  ある程度行政のいままでの予算の付け方とか、中での配分の問題もあって、いまあっ たようなダブりがいくらでも出てくるわけです。末端は同じところに行っている可能性 も結構あるのです。それはこれからのシステムで、過去のことをガタガタ言っても仕方 がないのですが、といって役所に「直してね」と言っても、なかなか自分たちでは直せ ないというのは無理もない話なのです。  例えば、総合科学技術会議などに出て、第3次科学技術基本計画などと言うと、競争 的資本もそうですが、厚労省の予算に期待していることは結構多いのではないですか。 5人に1人が65歳以上になってしまっているし、疾患が多いし、医療政策にいま大変問 題がある。  だけどガイドラインをきちんと書くぐらいの、大きなインパクトのある結果が出てい るかというと、縦割り行政でなかなか出ていないところに問題があるわけです。北村委 員、矢崎部会長、笹月委員などと話していると、国の予算の使い方とアウトカムやゴー ルは何かというところ、そのためにはどういう方法がいちばんいいのかという点の議論 が十分なっていないところは確かにあると思います。  そうすると、それをやっていることのジャスティフィケーションのために評価してい るだけの話ではないか。いま国立大学を見ると、矢崎部会長もいくつか理事をやってい るのではないかと思うのですが、国立大学の先生は「評価」と言われて、評価のレポー トを書くのに大体時間の20%ぐらい取っているのではないかと思います。良い大学の先 生などというのは、よそから「評価してくれ」など言われて、また評価のレポートを書 くのに20%の時間を使って、残りに教育、産学連携、研究などと言われたら、みんなレ ポートを書いているばかりです。そのようになってきてしまったら、若者が4年間過ご している大学は事務屋を作っている所ではないかとなるぐらい、評価疲れになってしま っているのではないかと思います。  先ほど言ったように、大きなスタディーをきちんとデザインしてやるのであれば、モ ニターする人がきちんといるわけです。公募して、「ここはできる」と言ったからに は、進捗状況はどうなっているのかというモニターをしていればいいわけです。そうす ると、5年でこのぐらいになりますと予測していれば、1年ぐらいは違うかもしれませ んが大体は当たると思います。そのようなシステムさえ組んでいれば、評価疲れするよ うなこともなくなるのではないでしょうか。その代わり、アウトカムがきちんと出るよ うにするという政策を考えるのが、やはりここのいちばん大事な役割ではないかと思い ます。おっしゃるとおり、確かにみんな評価疲れですよ。 ○笹月委員  いま、何人かの委員の先生方から出されたコメントはどれも重要な、的確なコメント だと思います。しかし、一方ではいろいろな批判を受ける割に、現実問題としてはいろ いろ改善されて、研究者レベルではそれが実行されている例もたくさんあると思いま す。例えばミレニアム・プロジェクトにおいて、各疾患についてはトップダウンでゲノ ム解析をやります。そうすると、文科省もそうやっているではないか、他の省庁との連 携はどうかと大変批判をされます。  糖尿病の例で見ると、厚労省で請け負ったグループ、文科省で請け負ったグループが 一緒になってコンソーシアムを作って、本当の意味での省庁を超えたオールジャパンの システムがボトムアップで出来てきています。  いろいろな批判に応えて、そのような気運が研究者間ではできてきています。それを どのようにきちんと制度化して、本当の意味でのオールジャパンの体制を作るのか。特 にゲノム解析ですから、その意味ではやりやすい。数も多くなければいけないし、テク ノロジーも均一でやりやすいので、そうなったのだとは思います。これを1つのモデル として、そのようなシステムを是非作り上げるということが大事だと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 ○北村委員  ピアレビューされたこの論文集が資料1にあります。この研究が厚労省の科学研究費 でサポートされた、ということが論文末に入っているのは何%ぐらいあるのですか。研 究費の出所を明確に、パブリケーションに書いてあるのはどれぐらいあるのでしょう か。  例えば循環器研究委託費などでは、是非それを書くようにということをお願いしてき ています。多くの研究者がいろいろな、違った種類の研究費を重ね合わせて使ってある とは思います。何%の人がそういうことを書くのか、あるいは書かなくても自由に任せ ているのか。やはり、書いてくれということを厚生労働省もお考えなのか。教えていた だければと思います。 ○中谷厚生科学課長  これはセルフ・レポーティングなものですから、必ずしも全部チェックしているわけ ではありません。想像では、明確に書いてある論文というのはむしろ少ないのではない かと思います。私どもとしては、是非書いていただきたいということをお願いしている 立場です。ただ、現実には北村委員がおっしゃっているとおり、いろいろなファンディ ング・ソースがあるので、1つだけ書くのも何かなといって書いていない例が多いので はないかと思っています。 ○松本委員  必ずしも専門ではないので、不適切な意見ではないかもしれません。今回の1−1を 見ると、成果の評価について「行政の貢献を重点に評価する」ということでした。評価 の切り口はいろいろあると思うのですが、行政貢献という観点から整理されています。  「厚生労働科学研究費補助金」が行政の貢献を第一とする、というものであるからこ うなのだということであればもうそれ以上言うことはないのですが、科学研究補助とい う観点からいくともっとほかの点も多分あるのだろう。そういう中で、先ほどの公募性 か、制度の指定性ということとも絡むのですが、行政貢献ということを強調していけば 公募というのはおそらく合わないような感じがします。私は行政に貢献するために研究 をしている、という人は多分あまりいないだろう。むしろ、研究の成果が結果として行 政に貢献するという観点であろうと思います。  公募ということを強調するのであればもっとほかの視点も要るだろうし、行政貢献を 強調するのなら国がもっとリーダーシップを取って、よりテーマを限定した上での公募 にする。いくつかご意見が出ていましたが、そのようなほうが適切ではないか。この 辺、若干感想として持ちました。 ○中谷厚生科学課長  クラリファイします。厚労省の研究というのは、「厚労省設置法」で疾病予防および 治療に関する研究を行う。そのようなことが明記されていますので、それを厚労省とし ては行政のメカニズムを使って国民に普及していくという立場だと思います。  その意味で、学問の真理を探究するということは非常に大切な仕事です。ただ、厚労 省としてはいわゆる目の前の患者の病気を予防する、あるいは治療する。それを行政メ カニズムで広く広めていく。こういうところに私たちの重きがあるものですから、その ような書きぶりになっています。  2番目に、公募と矛盾するのではないか。確かにそうなのですが、いまの公募の分野 というのは、私たちは難病の原因について行政施策を作るために見つけてくださいと言 っています。その見つけ方について疫学的な調査をするのか、動物実験をするのか、こ こについては競争になります。ですから、「厚生科学審議会」にお願いしているのは目 標を定めて、その研究手法についてはまさに公募、コンペティションという競争になっ ています。ここが多分、文科省の研究費と非常に大きな違いがあるところだと思いま す。多分、文科省のほうが学問の進歩のために非常にブロードな目的のもとに研究課 題、手法は非常に自由でしょう。私たち(厚労省)が大阪に行きたいというときは、新 幹線で行こうが、飛行機で行こうが、バスで行こうが、最も適切な方法で行ってくださ いとなる。そこのところで競争になっています。 ○矢崎部会長  そのほか、よろしいでしょうか。まだまだご意見があるかと思いますが、時間も限り がありますので、本日この件に関しての議論はここまでとさせていただきます。まだご 議論、あるいはご意見があれば、どうぞ事務局にご意見をお寄せいただき、最終的な文 書としてその意見も踏まえて、事務局と私どものほうで作成して提出したいと思ってお りますが、よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○矢崎部会長  ありがとうございました。いま委員の皆様からいただいたいろいろな課題について は、本日の(3)にある厚生労働科学研究の中長期的な展望について、少し触れていた だけるのではないかと思っておりますので、そのときにご議論いただければ大変有難い と思います。  では、続きまして平成17年度の厚生労働科学研究分野についてご議論いただきたいと 思います。まず事務局から説明をお願いいたします。 ○中谷厚生科学課長  それでは、資料2−1、2−2を使ってご説明いたします。この議題の趣旨ですが、 現在、厚生科学審議会で研究の方向性を出していただき、具体的な研究課題も決定して いただくわけですが、我々のこの論議のセッティングチューンというかトーンというか アジェンダというか、大枠を示しますのが総合科学技術会議です。この総合科学技術会 議で「資源配分の方針」が先般決まったところです。  その中身は、資料2−1の3枚目の「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の 資源配分の方針(案)」ということで、5月26日の総合科学技術会議で決定されたわけ です。  主な変更点は、2の「科学技術の戦略的重点化」で、これは重点4分野及びその他4 分野です。ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテク・材料を重点4分野として、 エネルギー等々のその他4分野、計8分野を重点化していくのだということで、第2期 科学技術基本計画ではやってきたわけです。平成17年度の資源配分においては、ブルー のボックスの(2)の2)「国家的・社会的課題への新たな取組みに向けた科学技術の 戦略的・総合的な推進」の中で、安心・安全な社会を構築するための科学技術というと ころが、新たに強調されたわけです。  そこで私たちの総合科学技術会議からのサジェスチョンは本文編では5頁、6頁で す。まず5頁の重点4分野の(a)ライフサイエンスのいちばん下のパラグラフの下か ら4行目ですが、「ゲノムネットワーク等のポストゲノム研究を一層推進」。6頁の健 康の安心・安全の領域ではの上から2つ目の○の「健康の安心・安全の領域では、高齢 化社会における健康の増進や要介護状態の予防を目指し、がん、生活習慣病、骨関節疾 患等の疾病の予防・診断・治療に向けた研究、再生医療の研究、脳やこころの研究を推 進。新興・再興感染症の研究、医療安全・バイオテロリズムへの対策」が入っていま す。  この背景になったのは、総合科学技術会議で各関係の大臣からヒアリングをされてい ます。そこで坂口厚生労働大臣が、総合科学技術会議の4月の総会に出した資料が資料 2−1の最初の2枚です。若干厚生労働省の考え方を総合科学技術会議にインプット し、その結果が先ほど述べたようなフレーズに落とし込んであるものと私たちは理解し ています。  まず坂口大臣のスライドの1枚目ですが、厚生労働省の科学技術の推進の基本的な考 え方としては、私たちは安心・安全な社会を作っていきたい。その上で国民の安心の逆 の不安の原因は何かを調べてみますと、国民生活基礎調査によれば、いちばん国民が不 安に思っている原因は、健康の問題であり、老後の介護であり、家族の健康、病気のこ とですから、逆に言えば、我々はこういうところをタックルしなければいけないだろう と思いました。  これからどのような病気が重要になるのだろうかというと、脳卒中、心臓病、糖尿病 など高齢化に伴う生活習慣病でしょう。糖尿病の予備軍は1,600万人いるという話もあ りますので、これに対応しなければいけないだろう。  これが安心部分ですが、安全ということから考えてみれば、右側の小さな地図に書い てありますように日本の周りは新興感染症だらけということで、日本の国民の健康面で の安全といったら、国際的な視野での感染症対策に関する研究をしなければならないだ ろう。こういう3つのことを説明し、厚生労働省としては、健康安心を推進したい、健 康安全を確保したい。そのためには先端医療を実現したいということを申し上げ、黒川 先生のアウトプットということであれば、我々の最大のアウトプットは健康な安心を推 進したい、健康な安全を確保したいということになるわけです。  具体的にはどういうことかということで、2頁目のスライドですが、健康の安心の面 では、介護を予防するようにならないか。例えば、多くの寝たきりの方が骨関節の疾患 で立てない、歩けないから寝たきりになっていきますので、再生医療を使った関節炎の 治療をもっと進められないか。  生活習慣病の予防なら真ん中の濃いブルーとグリーンの図で、例えば、タバコと発が ん(肺がん)の関係では、いちばん右のFさんは遺伝因子が非常に強いので、タバコを 吸わなくても肺がんになってしまう。こういう方は健康診断をより頻繁に受けていただ くことで予防していく。Aさんは、タバコを吸っても肺がんにならないということであ れば、受動喫煙に気を付けるような協力をしていただく。DさんとEさんは、何か生活 習慣を変えれば遺伝的な因子があったとしても、肺がんのレベルにまでは達しない。で は生活改善をしていただきましょうかということになり、このような具体的な成果を上 げるようなゲノム研究をしていただきたい、と大臣は申し上げたわけです。  「健康安全の確保」という意味なら、感染症に関する研究を充実し、医療の安全対策 については、いまあるテクノロジーを総合するような形での研究はできないだろうか。 最後に厚生労働省の先端医療の分野については、今ものすごい勢いでライフサイエンス が進んでいますが、それを何とか実用に結び付けていきたい。研究の新たな成果につい ては、さまざまな努力があります。それを逸早く実用に結び付けていくところで厚生労 働省の役割を果たしていきたい、と大臣は述べて、その結果、冒頭説明したような総合 科学技術会議の「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」に盛 り込まれたわけです。  そこで厚生科学審議会としては、このような状況を踏まえて、では、来年度の研究を どういうところに力点を置いてやっていったらいいのだろうかという論議を、今後期待 しているわけで、私たちも事務的には研究を所管している担当課、その担当課にはそれ ぞれ研究の評価委員会がありますので、評価委員会の先生とご相談をして、近日中に具 体的にはこのような方向でやりたいということを提示し、論議いただくように考えてい ます。  資料2−2ですが、先ほど来の制度論の話は、できるところは平成17年度に盛り込み たい。本格的な論議は次の議題の「厚生労働科学研究の中長期的な展望」に反映させた いというので、できることから平成17年度からぐらいの気持でいますので、2−2もご 説明したいと思います。  資料2−2の1頁の「政府の科学技術関係経費と厚生労働科学研究費の位置づけ」と いうことで、科学技術基本計画の第2期の第1年度の平成13年のライフサイエンスの予 算総額が4,000億円ぐらいでしたが、今は4,500億円に近づいてきました。その非常に大 きなプロバイダーが文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省の4省庁が大部 分のライフサイエンスのファンディングをしております。厚生労働省が1,200億円ぐら いです。  ただし、ここで非常に大きな違いは、ライフサイエンスに関するものだけではなく、 文部科学省の研究における公募の部分(競争的資金)は文部科学省全体の10%ぐらい で、厚生労働省の研究は大体3割が競争的資金になっています。その他残りはどうなの かというと、ナショナルセンターや国立感染症研究所などの直轄の研究機関の運営費等 になっています。  こういうことで厚生労働省は競争的資金のウェイトが非常に大きいというところが特 徴です。逆に私たちが非常に心配しているのは、総合科学技術会議の方向は、研究者の 方々の自由なイニシアティブによって競争的に配分するのがいいのだというお考えです が、そうすると、いま出てきたような種々の問題が制御できるかどうか。また私たちは 3割の競争的資金を持っておりますので、草刈り場と言っては非常に変な言い方です が、学問的には非常に面白い。ただし、国民の健康などの問題については、直接的な関 連性という意味では、厚労省としてはプライオリティが少し低い、こういうところをど うハンドリングするかという問題が潜在的に出てきます。  これは課内での論議をたたき台というか披瀝して、ご批判いただき、さらに練り上げ ていきたいのですが、現時点において課内で私たちが話していることを述べますと、ま ず標語から決め、Science to Practice/Science and Societyというイメージで、私た ちは患者が治っていくらの研究をやりたいという気持が非常に強いのです。やはり課題 と改善の必要性の認識ということであれば、政策とリンケージして研究成果を全国に広 めていきたい。これについては、対がん10カ年の第3フェーズをやるときに研究につい ては、「ほどほどやってきているではないか、いまさら何をやるのですか」と総合科学 技術会議でさんざん言われ、我々は研究の成果を是非国民に満遍なく広げたいのです。 そういうための応用研究など、まださまざまやることがあるという説明をしています。  このような政策リンケージをやりたい。あとは3大死因による死亡率の上昇、糖尿病 ハイリスク者の急増などの問題から、さまざまな対策によっても、なお改善されていな いような健康問題が出ております。これに対応できるような、より大型で戦略的かつ効 果的な実践研究をやりたいということを、非常に漠然と思っています。  そこで、いま方向性として私たちがやりつつあるのが、まずエビデンスに基づく厚生 科学行政推進のための戦略的視点で、独立した配分機関での競争的資金配分を開始する ために、ナショナルセンターにファンディング・エージェンシー機能をお願いする。私 たちは6つあるナショナルセンターを一斉にと思っていますが、体制が整ったセンター から順次開始したいと考えています。  そうすると、ナショナルセンターがカバーできないような分野も若干ありますので、 そこをどうするのかという問題になります。それから分野別にプログラム・ディレクタ ー、プログラム・オフィサーを配置し、能力を強化しようということで、我々はNIH に研修生を送って、向こうのファンディングのやり方を勉強してもらおうと思っていま す。  次がたぶん黒川先生がおっしゃり始めたことと非常に近いのですが、大型戦略的資金 配分による確実な課題の解決で、疾患・障害ターゲット毎のストラテジー研究を、成果 契約型というイメージでやります。例えば、糖尿病における疾病負荷を5%低減する総 合戦略で、このような結果を出してくれたら、その方向性や具体的な研究の課題、やり 方については、非常にフレキシビリティを高めたらどうかというイメージで私たちは論 議をしています。  既存の研究費との棲み分けは、最後から2頁目の横表です。いまの厚生労働科学研究 は、競争的で、課題は具体的に設定し、科学技術部会で承認を得たものを公募してやる ということを3年ぐらいのスパンでやっています。委託事業のがん研究助成金委託費と いうのもあって、公募でやっています。  中間的なというか新たなカテゴリーとして、成果契約型の疾患・障害ストラテジー研 究というものがあります。これは5年ぐらいで戦略目標のみを設定し、具体的な研究目 標はもう少しフレキシブルにして、応募は団体としています。方法は、契約をして5年 間で結果が出なかったらお金を返せというのができるがとうか分かりませんが、そのよ うなイメージで我々は論議をしています。  これについては、いまの公募制には良い面と悪い面とあって、我々からすれば、公募 公募と言ったのは、総合科学技術会議や学者の先生ではないかという恨みつらみもたく さんあるわけです。とは言っても、私たちは具体的な成果が欲しいわけですから、それ はさて置き、やっていこう。  最後のポンチ図ですが、「成果契約による戦略研究の創設」ということを、将来的に はもう少し導入をするという前提で、平成17年度からいくつかのことについてやってみ てはどうかということを、いま課内で考えています。というのは、例えば、糖尿病の研 究や介護・予防の研究で、いまどうしても何か取り組まなければいけないのではないか と思っており、これをサンプルとしてフィージビリティをやってみようかというので、 5年ぐらいでアウトカムを指定し、プロジェクトリーダーは、例えば糖尿病では糖尿病 研究総監という感じでやっていただき、ミニ・ファンディング・エージェンシーと書き ましたが、かなり自由度を与えて、その代わり結果についても責任を持ってやっていた だくようなイメージでいま論議をしています。  総合科学技術会議の流れ、私たちの具体的な各事業毎にやっている研究の検討の状 況、1つか2つの分野について、新たなメカニズムを導入してみたらどうかという提案 をパッケージで申し上げて、現時点でのご意見を伺い、次にお諮りするときには、もう 少し詰まった話をこの場に上げたいと思っております。 ○矢崎部会長  先ほどご議論いただいた課題のいくつかは、厚生科学課にそれぞれ委員の皆様がある 程度意思を伝達されていたこともありますし、また厚生科学課には、発想の転換で新し いこのようなシステムを作ろうという心意気を示していただいたと思いますが、いかが でしょうか。 ○黒川委員  大変いいと思います。確かに競争的資金と言われると、ただ公募すればいいというの は、出口を見ているような厚労省と、NIHのR1みたいな、研究者のイニシアティブ で出してくるような文部科学省型とは全然違うと思います。そういう意味では、単に競 争的と言われたから公募しましたというのは、少し単純すぎてしまい、糖尿病などは厚 生行政としては大事だというのは構わないのですが、もう少し広い学会の意見を聞い て、いまどういうものが大事かというプライオリティを決めなければいけないわけで す。そのプロセスをまずオープンにして、いくつかのプロポーザルを具体的に出し、厚 生行政としては、今年はこれをしばらく取り上げましょうという話をしなければいけま せん。  例えば委託で糖尿病などと言って、糖尿病のグループに投げると、彼らは自分の勝手 なことをやるだけですから、母体をどこに委託するかというのが、がんだとがんセンタ ーということになるのだと思います。しかし、どういうがんに何をしようかという話 は、がん学会など、もっと外の意見を聞いて、5つ6つのプロジェクトを出し、開かれ た場で議論を十分して、「1番、2番を今年やりましょうか」というプロセスの透明性 と、その辺が競争的な話でしょう。一旦プロトコールが決まってやろうとしたら、参加 する所の公募は競争的でいいと思うのです。  そこでどのようにやったら、必ず後から出るかということは、先ほどの坂口大臣が言 われた例ではありませんが、5年したらここまで出るということは、ある程度予測でき るわけですから、それに必要なマンパワーやインフラなど、患者のフェノタイプのデー タをどうするか、コンフィデンシャリティをどうするかという話を考えるのが、むしろ 行政の仕事で、どういうことをするというのは、また別のプロセスを考えておかない と、また丸投げするかなという話になりかねないと思って聞いていたのです。その辺は いろいろな人の意見を聞いておくといいのではないかと思います。 ○笹月委員  先ほど中谷課長がおっしゃった、いま文科省はわりと自由に何でもよろしい。だから こそ文科省は競争的資金で、このプロジェクトに関して本当に優れたものだけを採択す るという、その精神が必要だと思います。  ところが、いわゆるミッション・オリエンテッドである我々の所は、指定課題という かそういうものを十分考慮されなければいけない。それを誰が決めるのかというのがい ちばん問題になると思います。例えば、ファンディング・エージェンシーを決めて、そ こに任せるとしても、ファンディング・エージェンシーそのものが、いわゆる有識者、 その疾患に関する本当の専門家を糾合して、そこで議論し、本当の意味での指定課題、 メンバーさえも決めるぐらいの、そのプロセスがいちばん大事だと思います。  そういう意味では、これもすでに例があって、例えば、文科省は大きな特定領域を組 むときには、いまそれがあるかどうかは知りませんが、かつては検討班を作って、1年 間その分野の専門家を集めて検討をする。実際にスタートできるか、あるいはスタート をするには時期尚早だという結論を出すわけですが、それは100万円か200万円の会議費 だけでやらせるというシステムをきっちり作っておくことが、いまここでプロポーズさ れている指定課題、研究成果を本当に出して見せるということを推進するためには、非 常に重要なことだと思います。 ○垣添委員  厚生労働省の研究が、疾病研究であるというのは、たびたび議論になったとおりで、 私もそうだと思います。その研究を進めていく上で、先ほど中谷課長からご説明いただ いた成果契約型の研究は、いいご提案だと思います。  質問ですが、ミニ・ファンディング・エージェンシーとあるのは、どういう意味でし ょうか。もう1つは、先ほど来、議論の中に出ているデータ・マネジメントと言いまし ょうか、こういう大きな研究を進めていく上で、患者のデータをきちんと管理していく ことが研究の成否を決めるかなり重要な部分になってきますので、その辺りをどのよう に考えておられるか。いまの時点でお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。 ○中谷厚生科学課長  ファンディング・エージェンシーになりますと、透明性を持った採択、課題決定なり をしなければいけませんので、外部の方を入れた委員会を作ってやるのだろうと思って います。ミニ・ファンディング・エージェンシーというのは、例えば、がんであれば、 多分がんセンターがファンディング・エージェンシーになって、膵臓がんから肝臓がん から全部やるという形です。  例えば、糖尿病であれば国立糖尿病ナショナルセンターというのはありませんので、 そのような所について、どこかエージェンシーになり得るようなものはないか。私のイ メージとしては学会なり、何々機構なり大学なりといった所が、それを引き受けて外部 の委員会を作り、意見を聞きながらまとめていき、ブロック・グラントみたいな形にし て成果が出るのなら、ここの部分については自分たちの仲間でやりましょう、あるいは 公募によってデータ・マネジメントについては、自分たちでやりましょう、どこかの大 学のバイオ・インフォマティックスがやりましょう、極論すればNPOでいい所がある からアウトソーシングしてしまいましょうということをお任せしようかと思っていたの です。  そこが先ほどの黒川先生の丸投げではないのですが、ある程度フレキシビリティを担 保しなければいけないような気もしたものですから、イメージが先行して表現が不適切 だったかもしれません。ファンディング・エージェンシーであれば、予算のアロケーシ ョンについて、かなりフレキシビリティがあるという意味で使ったのです。  研究の個人情報保護は非常に大きな分野なので、あとの議題で出てきますが、ここで ガイドラインなり何らかのことをして、医学研究が個人情報の保護ともう少し調和が持 てるような形にしたい。今日の議題の2でお諮りをするつもりです。実際はそういうグ ループの中で、どなたかが担当されて情報をマネージしなければいけないのですが、そ のとき基準がないと、特にアウトソーシングか何かをしたときの大きな問題になります ので、問題意識は十分共有しているつもりです。 ○中村委員  いまのお考えでは、研究費の中での配分は契約型にはどのぐらいのウェイトを考えて いるのですか。 ○中谷厚生科学課長  あまり詰まった考えはしておりませんが、いまの平均した研究費が1本2,000万円ぐ らいの感じですので、1つの課題について、それをいくつか束ねた感じでブロックを積 むのかな、というぐらいの頭しかありません。果たしていくつクラスターが立てられる かは、科学技術部会のご意見を聞いて決めていかなければいけないかと思います。 ○笹月委員  いま課長がご説明になった坂口大臣のスライド、資料2−1の2頁の上の段ですが、 特に詳しくお話になった喫煙と遺伝子型を用いた予防というか生活習慣の指導が、大き なお金を投入したミレニアム・ゲノム・プロジェクトの1つの大きなアウトカムとなる べきものだと思います。  私どもは糖尿病を担当していますが、10個ぐらいの遺伝子、マーカーがだんだん明ら かになってきたのですが、それだけではこのような成果には至らないわけです。何が必 要かというと、生活習慣、あるいは環境要因、臨床情報です。すなわち臨床情報と環境 要因とゲノム情報の3つを統合したデータベースを構築することが必須で、その成果と して、このようなことが出てくるのだと思います。  ですから、私どもは国立として進むべきナショナルセンターは、是非そういうものを 統合できるデータベースを、すべてのナショナルセンターが持つべきだと思います。国 の施策として、ナショナルセンターにそういうものを付与する、あるいは自分たちのナ ショナルセンターの自助努力としてそういうものを作るというか、何か是非お考えいた だければ、各ナショナルセンターが担当したゲノム解析の成果が、本当の意味で生きて くるのではないかと思います。ほとんどが多因子疾患ですので、世に言われるテーラー メード医療のときの資料には、ゲノムのデータがすぐには利用できないと思うのです が、予防や生活習慣の指導による予防には必ず利用できると思いますので、そういうシ ステムの構築に是非ご支援をいただければと思います。 ○矢崎部会長  いまご議論をご熱心にいただいたのですが、次の議題にも関係し、資料3の中長期的 な厚生労働科学研究費のあり方に関する事務局からの提案がありますので、まずこれを 説明していただきたいと思います。 ○中谷厚生科学課長  資料3−1です。科学技術基本計画は、平成13年から行われていますが、平成17年度 まで5年間のワンサイクルが終わり、平成18年度からは新たな第3期科学技術基本計画 が始まります。そうすると、厚生労働省あるいは厚生科学研究としては、この中でどの ように貢献していくのかについて、この部会で論議を深めていただきたいと思いますの で、今回の提案は非常にシンプルです。「この部会にワーキンググループを作って検討 していただきたいです。」という、これだけの提案です。  いま出たような厚生労働省の研究のフォーカスなりオリエンテーションというのは、 どういう方向に持っていくのだ。だから、このようなことを科学技術計画の中に位置づ けてほしいのだ、ということを積極的に言っていきたいと思っております。 ○矢崎部会長  これは専門委員会設置のご提案ですね。いかがでしょうか。 ○黒川委員  私は厚労省の応援団なので言っているので、アウトカムが出ないと国民が元気になら ないのです。そのつもりで投資しているのです。  もう1つは、先ほどから安心・安全、安全・安心という話が基本理念で出ているので すが、今度文科省で鼎談をして出したのですが、みんな安心・安全と言っていますが、 安全というのは、ある程度メジャラブルなものではない。年間10万人が自動車事故で 死ぬのはどうするか。それはいいのですが、これを減らそうとして安心するかという と、そんなことはありません。  この間、原子力安全委員会で基調講演をしましたが、「原子力をもっと安全にしろ」 などと言っても、日本の電力の30%は原子力で、東電みたいなことがすぐ起こるわけで す。いくらやっても人間がどのように責任を持てるかというほうが大事で、安心の対極 にあるのは安全ではなく、信頼です。いまいろいろな所で監視カメラを付けて、「もっ とハイテクになりましたよ」などと言うのですが、それは地域の信頼がなくなっている だけの話です。そういうごまかしで、「だから、安全に投資しましょう、予算を付けて くれ」などというのは大きなごまかしで、みんな信用しなくなってしまったのです。銀 行だって来年ペイオフだとか言いますが、皆さんの口座は大丈夫ですか、たぶんかなり なくなってしまいます。そういう信頼がなくなっている。県警も巡査を見れば賄賂を使 っている人だと思うのが常識になってきてしまったのです。そういう話が対極にあるの が安心なのです。  みんながいちばん心配したのは健康、老後の不安などです。そこに予算を付けるよう にする戦略は何かというのが大事で、こういう研究をすれば大丈夫などというわけには いかないのです。信頼される行政というのは、ものすごく大事です。これからどうアウ トカムを出していくかという信頼を築くのが安心のいちばんの基です。ですから、いろ いろなモニターを付けて、Aさんだったら、タバコがどうなどと言われましたが、タバ コの自動販売機をまずやめてくれというのが先ではありませんか。そういう話もしない で、何かそこで研究すれば安心になるようなガセネタはまずいですね。それをこの委員 会でしっかり考えたらと思っています。  本当に不安に思っているということを中谷課長もよく知っていると思います。介護の 話などはすごく大事ですが、どういうプロセスで透明性があって、ファンディング・エ ージェンシーやそのポリシーをどのようにやっていくかという透明性と、外部からしょ っちゅういろいろなことをインタクトしているというプロセスを見せておくことが大事 だと思います。 ○矢崎部会長  そのほかご意見ございますか。この専門委員会で、いまご議論いただいた視点を踏ま えて幅広い議論で在り方に関する方向性を出していただくということで、設置について 認めていただけますでしょうか。                   (了承) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、この部会において、この委員会の設置に ついて了承いただきました。  また委員会に所属する委員については、厚生科学審議会科学技術部会の運営細則第2 条に基づいて、部会長が指名することになっておりますので、決定次第、皆様にご連絡 することになるかと思いますので、よろしくご了承のほどをお願いいたします。  それでは、先ほど垣添委員からご質問のあった議事の2「医学研究分野の個人情報保 護の取扱について」を事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局  「医学研究分野の個人情報保護の取扱について」の資料のご説明をいたします。資料 は、資料4と参考資料2−2から2−5です。まず資料4ですが、医学研究における個 人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会の設置ということで、検討のための専門委 員会をこの部会の下に設置させていただきたいという趣旨です。  参考資料2−2です。医学研究分野においては、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関す る倫理指針や遺伝子治療、疫学研究、臨床研究の指針を作っていただいており、ほぼ医 学研究の分野はカバーしております。  参考資料2−3です。昨年、個人情報保護法が成立されております。法律において は、「国及び地方公共団体の責務等」、「個人情報の保護に関する施策等」、「個人情 報取扱事業者の義務等」を規定しております。  次の頁の第5章の「雑則」において、報道、著述、学術研究等については、法律の適 用が除外されております。「適用除外のイメージ」ということで図をお手元に配ってい るかと思います。行政機関、国及び独立行政法人に関しては、それぞれ個別法があり、 それ以外の民間機関については、個人情報保護法が適用されることになっております。 下に「適用除外規定」とありますが、右に書いてあります法第50条に、「大学、その他 の学術研究を目的とする機関、もしくは団体又はそれらに属する者が、学術研究の用に 供する目的で個人情報を取り扱う場合については、個人情報保護取扱事業者の義務等の 規定は、適用除外される」ということで、それぞれ大学、学術団体、もしくは医療機関 におけるそれぞれの個人情報の規定については、医学研究の分、学術研究の分が除かれ ています。  参考資料2−4は、「個人情報保護法に関する基本方針及び附帯決議」にまとめられ ており、1「基本方針」は、4月の閣議決定で、「個人情報の性質や利用方法から特に 適正な取扱いの厳正な実施を確保する必要がある分野については、各省庁において、個 人情報を保護するための格別な措置を、各分野(医療等)ごとに早急に検討し、法の全 面施行までに一定の結論を得るものとする」とされています。  2「附帯決議」です。昨年の個人情報保護法が制定された際に、衆議院と参議院の附 帯決議で、同じように「医療の分野について、特に適正な取扱いの厳格な実施を確保す る必要がある個人情報を保護するための個別法を早急に検討すること」とされました。  参考資料2−5は、これは前々回の科学技術部会で報告しましたが、ユネスコにおけ る生命倫理の最近の検討状況です。  資料4に戻りますが、ご説明しましたように、医学研究については、各省の指針でカ バーされていますが、ユネスコや研究がかなり進展しているということがありますの で、その観点から内容について見直しをする必要があるのではないか。  また先ほどご説明しましたが、個人情報保護法の観点で附帯決議等がありますので、 医学研究における遺伝情報を含む個人情報の取扱いに関して、その適切な取扱いを確保 すべき分野として在り方を検討する必要があり、委員会の設置をお願いするものです。  医学研究における遺伝子情報を含む個人情報の取扱いの在り方について、個別法の必 要性を含めて検討を行い、平成16年中を目途に、一定の結論をとりまとめることをお願 いしたいと考えております。  「その他」ですが、ゲノム指針等がありますが、関係の省庁がありますので、連携を とって検討を進めたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  「医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会」の設置について 簡単にご説明いたしましたが、実際の資料を参考にしていただければ有難いと思いま す。何かご意見はございますでしょうか。 ○佐藤委員  参考資料2−4の「基本方針」の線を引いた所で、「各分野(医療、金融・信用、情 報通信等)」とありますが、障害の研究をやっておりますと、医療の部分もあります し、福祉の部分もあります。福祉の部分ですと、例えば、その方の家庭状況など、いろ いろ個人情報がありますが、そういう部分は「等」の中に含めて考えてよろしいので しょうか。そういう部分は両面を持って研究しておりますので。 ○事務局  とりあえず附帯決議等でご指摘いただいているのは医療で、まず医療分野については 医政局で検討することにしており、医学教育分野については科学技術部会でご検討いた だくという整理をしたいと思っております。  いまご指摘のあった分野については、医療分野の検討状況を参考にしていただくこと になろうかと思いますが、まずは医療分野について検討させていただければと思ってお ります。 ○矢崎部会長  そのほかいかがでしょうか。 ○垣添委員  参考資料2−2にある、すでに厚生労働省で医学研究に関して作られている「ヒトゲ ノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」「遺伝子治療臨床研究に関する指針」「疫学 研究に関する倫理指針」「臨床研究に関する倫理指針」と、今回ご提案いただいた個人 情報の在り方に関する専門委員会の設置というのは、内容的にはかなりオーバーラップ するところが出てくるような感じがするのですが、その辺の整理はどうなのか。これが 最終的に認められて設置されたときに、平成16年度中に案がとりまとめられると参考資 料の2−2の最後に、「個人情報に関する取扱いに関する倫理指針」という形で追加さ れるのですか。 ○事務局  具体的な作業については、専門委員会で検討していただきたいと思っております。参 考資料2−2にいろいろな指針がありますが、現時点で個人情報保護の観点から、この 内容でいいのかどうかをご検討いただいた上で、先ほど説明させていただいた個人情報 保護法における附帯決議で個別法についても検討するようにとのことでありますので、 その必要性も踏まえて検討させていただきたいと思っております。まずは各指針につい て、現時点で個人情報保護法の観点から、内容的にどうかというご検討をいただいた上 で、法律の必要性に関しても検討していただくということかと思っております。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。垣添委員のご質問はもっともなことで、今まで厚労省を中心に臨 床研究を含めてきた指針と乖離してしまってはいけませんので、それは十分視野に入れ て、先ほどと同じように委員会に所属する委員は、厚生科学審議会の技術部会運営細則 第2条に基づいて、部会長が指名することになっておりますので、そういうことを十分 視野に入れて、委員会の構成をしていけば、そういうご心配は要らないのではないかと 思っています。とりあえずこの委員会を立ち上げることについて、ご了承いただけます でしょうか。                   (了承) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、そういうことも十分考えながら委員を決 めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、最後の議題の「機関評価について」です。事務局からお願いします。 ○事務局  機関評価については、厚生労働省の「科学研究開発評価に関する指針」において、 「研究開発機関は、各研究開発機関における科学研究開発の一層の推進を図るため、機 関活動全般を評価対象とする研究開発機関の評価を定期的に実施する」とされていま す。  順次、国立研究所関係の機関評価をお願いしておりますが、今回は、国立精神・神経 センター研究所の機関評価についてお願いしたいと思います。3年に1回を目安とし て、定期的に行うということで考えております。 ○苗村運営局長(国立精神・神経センター)  本科学技術部会の委員の皆様方には、私どものセンターが、日ごろからさまざまな面 でご指導、ご支援いただいておりますことに、心から感謝申し上げる次第でございま す。  さて、私どものセンターの2つの研究所の機関評価に関して、本日ご報告を申し上げ たいと思います。両研究所の設立経緯、あるいは設立の目標等が異なりますことから、 機関評価に関しても、評価の方法、あるいはまた評価の視点等に関して、若干の差異が 出てくることはありますので、まず最初に、私から両研究所の概要をごく簡単にご説明 申し上げ、その上で高坂神経研究所長から、機関評価の内容及び今後の方向性に関して ご報告したいと思います。  まず最初に、精神保健研究所ですが、これは昭和27年にアメリカのナショナル・イン スティテュート・オブ・メンタルヘルスをモデルにして設立されたものです。精神衛生 に関する諸問題について、学際的な立場から、さまざまな精神医学、心理学、社会学、 社会福祉学、保健医学等の専門家による総合的・包括的な研究を行うと同時に、国や地 方公共団体等の精神医療従事者に対して、技術的な研修などを行うことを目的として設 立。昭和61年10月に、この研究所と武蔵野病院と国立武蔵野療養所神経センター(神経 研究所)が統合され、精神・神経センターになったもので、さらに昭和62年に国府台病 院が加わり、センターとしては現在2病院2研究所の体制が整えられております。  また精神保健研究所は、平成14年に創立50周年を迎えております。そして、昨年10月 には司法精神学研究部が新設され、現在は11部27施設体制で運営を行っております。  この研究所の特色としては、疾病研究の分野と政策研究の両方を担うということで す。疾病研究に関しては、自殺予防を含めたさまざまな精神疾患に関して、予防から治 療、リハビリ、在宅支援などの総合的な研究を行っております。  また政策的な面での研究においては、我が国の精神保健福祉施策への貢献を果たして まいったところで、行政施策の立案、法律の改正・制定などのエビデンスを提供するこ とと同時に、行政施策の普及度合を評価することも現在行っており、主要には行政的な 面での貢献度が高いものと考えております。精神保健研究所は千葉県市川市、神経研究 所は東京都小平市にあり、かなり距離の離れた所に存在しております。  神経研究所は、精神保健研究所よりも遅くできており、昭和53年4月に国立武蔵野療 養所の神経センターとして、精神疾患、神経疾患、筋疾患、発達障害の病院や病体の研 究及び治療法の開発を目指して設立されたものです。順調に発展をしており、平成7年 より中核的なCOEの施設として指定されております。平成12年度にはゲノム解析セン ターなども設置して、分子・遺伝子治療と遺伝子解析等の分野にも進出しております。  また近年、マーモセットなどの霊長類の飼育施設も建設を行っておりますので、より 高度な研究が推進できるものと考えており、国際的にも評価を受けている研究施設と考 えております。  精神保健研究所と神経研究所が距離的に遠く離れていることもありますので、近々、 両研究所を1カ所に集めて、将来的に組織的な面でいろいろ統合を含めた検討を行うと いうところまで現在進んでおります。研究所相互間の連携、ならびに研究所と病院との 連携を促進しながら、斬新で新たな研究所への発展を目指しているところでございま す。「機関評価及び今後の方向性」に関して、高坂研究所長からご説明を申し上げま す。 ○高坂神経研究所長(国立精神・神経センター)  資料5を簡潔にご説明いたします。資料5の7頁に1年ほど前に評価をいただきまし た委員の先生の名簿があります。その先生方に平成15年1月10日にヒアリングによって 審査をいただきましたが、そのヒアリングをしていただいたときの講評というか総まと めが29頁以降に載せております。その評価の報告書に従って、それでは神経センターと して、どう対処するのかについて書いております。それを全部まとめたものを最初の3 頁に載せています。すなわち、いただいた評価に対して、今後研究所はどう対応するか というところです。  そこを少しご説明しますと、まず調査結果等々、一般的・全般的な項目にわたって評 価の方々から押し並べて「素晴らしい」という評価をいただいております。そこに書き 出したものは、少し問題点があるというご指摘に対して、我々がどう対応するかを、分 かりやすく図表にしたものです。苗村局長から申し上げましたように、神経研と精神保 健研究所は、内容が多少異なっており、同一レベルでは評価できないところもあります が、私の分かる範囲で両方のことをお話したいと思います。  まず試験研究機関の状況においては、神経研では部長の交代等があった部が中心です が、少し内容が明確ではないということで、「早くその体制を充実させなさい」という ことをいただいております。特にそれはモデル動物開発部だったのですが、その部に関 しては、昨年度新しい部長が来て、今後大事だと思われる霊長類を使った高次脳機能の 研究を推進することにしております。  精神保健研究所においては、行政的な研究が主体だったので、少し問題があります が、今後生き残りをするためには、もっと体制を見直すべきである、という少し厳しい 評価をいただいております。これに対しては、従来の行政型だけではなく、ACT等の 臨床研究に密着したものもどんどん推進すべきである、ということを考えています。  2番目の研究開発分野においては、コメントとしては疾病研究1部、2部、3部とい うナンバリングで呼んでいたのが、外部から見て非常に分かりづらい。それぞれの部が 何をやっているかという名称に改めるべきであるというご指摘をいただきました。これ はいずれ組織的にも両研究所を一元化する予定がありますので、その際に例えば疾病研 究の1部であれば、筋疾患研究部という内容がきちんと分かるような名称に改めていき たいと思います。  3番目の研究資金の配分等ですが、この場合にはもっと外部資金を導入しなさい、得 たものについて重点配分をしなさいということです。これは平成15年から各部に今まで は経常的に同じ額を配分していたのを改めて、その部のパブリケーションの数などのア クティビティに応じて配分するということです。組織等の数が少ないということはやむ を得ないことです。  施設設備ですが、これも例えば共同利用研究室の基礎をちゃんと作って、有効に機械 を利用しなさいということで、これもいまそういったことを図っております。  情報基盤としては、ネットワークをきちんとしなさいということで、これも平成16年 度の予算で、すでに病院と研究所を含めて、LANの統合が終わったところです。  知的財産については、最近できたヒューマン・サイエンス振興財団に設置されたTL Oを利用して活発に特許申請がなされています。これも改まっております。  それから共同研究についても、これまでも非常に活発にやっておりましたので、今後 もやっていきたい、特にこれからは中国、韓国との連携が非常に大切になってくるので はないかと思います。  同様に連携大学院のご指摘もいただきましたが、これもすでに進めておりました。今 年度から早稲田との連携大学院が始まっております。  それから流動制については、精神研、神経研両方とも研究員や室長レベルでも、5年 の任期付研究員を導入して、パーマネントはあり得ないということにしております。  専門的な分野としては、根本的な治療法にまだ取り組んでいない分野がたくさんある というご指摘をいただいております。これはトランスレーショなるメディカルセンター という構想を私たちは持っておりまして、例えば細胞遺伝子治療を早めに臨床応用した いということがありますので、今後トランスレーションメディカルセンターの設立に向 けて、鋭意努力をしていきたいと考えております。  43頁ですが、今後の研究所の展望というか、どのようなことを我々が考えているかを 書いています。1つは、神経研究所の小平地区に精神保健研究所が移転してまいりま す。それを機に精神科学と精神・科学、いわゆる物質指向である科学と社会精神医学を うまく融合を図っていきたい。特にストレス分野や自閉症などの問題も生物学的な解明 の場に持ってこられるような体制を是非作っていきたいと思います。  そういう精神科領域の研究にどうしても必要である高次脳機能を見ることができる霊 長類に関しても、現在研究施設の建設を開始して、平成17年度中には完成する予定で す。  3番目の最も大切なことは、基盤研究の成果を活用するためのトランスレーショナル メディシンの推進を、是非4、5年後に立ち上げて、研究所の成果を病院でうまく利用 して、活用して実際の治療に応用していきたいと考えています。こういう展望を持って います。 ○矢崎部会長  ただいまの説明について、何かご意見ございますか。以上をもちまして、今日ご議論 いただく議事はすべて終了いたしました。本日は、活発なご意見をいただき、厚労科研 究費の中長期的な展望を目指した委員会の立ち上げも認めていただきました。いただい たご意見に沿った方針で、システムを作っていくということですので、今後ともご支援 のほどをよろしくお願いしたいと思います。 ○黒川委員  私も一生懸命応援していますが、先ほど言った「健康日本21」の話で、最後は落ち てしまいましたが、タバコの話は何か考えていますか。まともに財務省へ行ったら、戦 略的にうまくいかないと思いますが、中長期的に戦略を考えないといけないと思いま す。タバコの自動販売機はものすごくまずいのではありませんか。いまアメリカやヨー ロッパへ行くと、1パック大体8ドルです。税収のことが心配ならそういうことをすれ ばいいのですが、タバコを上げれば、もちろん密輸が増える可能性が常にあるのです。 しかし、厚労省としては、これがいちばん大きな問題ではありませんか。それをよく考 えておいてほしいのです。 ○中谷厚生科学課長  右総代でいたしますが、「たばこ規制枠組条約」の批准が間もなくですので、省内体 制を整えてやっていこうと思っております。  では、具体的に何をするかについても、関係の各方面もありますが、厚生労働省の立 場は、タバコについて抑制的に積極的にやるということですので、頑張ってまいりま す。 ○矢崎部会長  タバコについては、この2、3年で大きく流れが変わってきて、国会でWHOの枠組 条約が全員一致で認められたということは、少し前では考えられないことです。その中 にはいろいろな規定があります。具体的にはすでに注意文言や広告規制は実際に実施さ れていますので、今後はいま黒川委員がご指摘のことも議論されていくのではないかと 思います。今後ともよろしくお願いいたします。 ○事務局  次回の科学技術部会は7月12日(月)を予定しております。 ○矢崎部会長  それでは、本日の部会を終了したいと思います。本当に熱心にご議論いただきまし て、ありがとうございました。                                     −了− 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:屋敷(内線3804)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171