戻る

付表


付表1
CSR・SRIの進展の経緯

(1) アメリカ
1960年代 → ベトナム反戦運動の中、軍需産業には投資せず
70年代 → 人権問題や環境保護に理解のある企業に投資
90年代 → SRIが急激に拡大(←401kの導入により株式投資に個人が参加)

[ 特徴 ]
 市民団体など民間が主力となって、企業にCSRの取組みを働きかけ

(2) 欧州
1970年代以前〜 → イギリスの教会においては、アルコール・たばこ・ギャンブルに関わる企業を投資対象から除外
80年代 → 環境運動の高まり等を背景として、SRIファンドが登場
90年代後半 → SRIが急激に拡大

[ 特徴 ]
 政府がイニシアティブをとり、法律の整備を含めSRIについて制度化
 (雇用対策に充てる費用の拠出が困難→雇用の不安定問題を除去する取組みを行っている企業に対する投資を促進)
(例)イギリスにおいては、年金運用受託者がSRIに関する方針を公表することを義務付け(2000年)

(3) 日本
90年代後半 → グローバリゼーションの加速化(欧米と取引する際、その条件に社会的・環境的な項目が組み込まれる)
1990年代末 → 環境問題への関心の高まりを受け、環境関連ファンドが登場
2000年〜 → 企業不祥事の多発を契機として、CSRの議論が盛んに

[ 特徴 ]
 CSRへの本格的な取組みを始めたばかり SRIも萌芽期の段階


付表2
SRIファンド一覧

ファンド名 投資会社名 調査機関 投資対象 販売会社 設定月 純資産総額(2004年5月末)(百万円)
朝日ライフSRI社会貢献ファンド 朝日ライフアセットマネジメント ストックアットステイス社(ベルギー)/パブリックリソースセンター 国内の50社〜100社 みずほインベスターズ証券、カブドットコム証券など 2000年9月 4,451
日興グローバル・サスティナビリティ・ファンドA(ヘッジなし)(愛称:globe) 日興アセットマネジメント SAMサスティナビリティー・グループ(スイス) 日米欧の250社〜300社 日興コーディアル証券、中央三井信託銀行など 2000年11月 1,201
日興グローバル・サスティナビリティ・ファンドB(ヘッジあり)(愛称:globe) 日興アセットマネジメント SAMサスティナビリティー・グループ(スイス) 日米欧の250社〜300社 日興コーディアル証券、中央三井信託銀行など 2000年11月 775
UBSグローバル株式 40 UBSグローバル・アセットメント・マネジメント UBS AG
(スイス)
日米欧の40社 大和証券 2003年11月 10,241
住信SRI・ジャパン・オープン(愛称:グッドカンパニー) 住信アセットメントマネジメント 日本総合研究所 国内の50社〜100社 住友信託銀行 2003年12月 16,230
ダイワSRIファンド 大和投信信託 インテグレックス社 国内の50社〜100社 大和証券、大和証券SMBC 2004年5月 25,642
野村グローバルSRI100 野村アセットマネジメント FTSE(英国) 日米欧の約100社 三井アセット信託銀行 2004年5月 4,462

資料出所:モーニングスター社会的責任投資株価指数から厚生労働省労働政策担当参事官室作成


付表3
CSRに関する提言における「労働」事項

OECD 多国籍企業の行動基準
 ・ 多国籍企業に対する勧告。1976年策定、2000年改定。
 ・ 「環境」「消費者利益」等からなる8項目の中に「雇用及び労使関係」が含まれる。
 ・ 「雇用及び労使関係」については、従業員代表との交渉、進出先の労働者の訓練等を規定。

コー円卓会議 企業行動原則
 ・ コー円卓会議とは、スイスに本部を置くビジネスリーダーによるグローバルネットワーク(1986年発足)。企業行動の是非を判断する基準として、企業の行動指針を94年に策定。
 ・ ステークホルダーの一つとして、「顧客」や「地域社会」等と並び「従業員」があげられる。
 ・ 「従業員」については、待遇と機会の均等、誠実な交渉等を規定。

国連 「グローバル・コンタクト」の9原則
 ・ 1999年の世界経済フォーラムにおいてアナン国連事務総長が提唱。
 ・ 人権、労働基準、環境に関する9つの原則から構成。
 ・ 労働基準については、団体交渉の権利確保、雇用差別の撤廃等を規定。

経済同友会 企業評価基準
 ・ 第15回「企業白書」(2003年)において、企業の社会的責任に関する「企業評価基準」を提唱。
 ・ 「評価の視線」として、「顧客」や「地域社会」等と並び「従業員」があげられる。
 ・ 「従業員」が関与する評価軸は、「優れた人材の登用と活用」「従業員の能力の向上」「ファミリー・フレンドリーな職場環境の実現」「働きやすい職場環境の実現」。



【 参考 】

OECD 多国籍企業行動指針

 多国籍企業に対する勧告。1976年策定、2000年改定。

IV 雇用及び労使関係
 企業は、適用可能な法律、規則並びに一般的な労使関係及び雇用慣行の枠内において、次の行動をとるべきである。
1a) 労働組合及び他の誠実な従業員の代表によって代表される従業員の権利を尊重し、また雇用条件に関する協約を締結することを目的として、当該従業員の代表と個別的に又は使用者の団体を通じ、建設的な交渉を行う。
b) 児童労働の実効的な廃止に貢献する。
c) あらゆる形式の強制労働の撤廃に貢献する。
d) 従業員をその特質に従って選別的に取り扱うことが特に雇用機会の一層の均等化を推進しようとする政府の確立した政策を更に促進することとなる場合又は職業に固有の要件に関連している場合を除き、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身又は社会的出身などに基づき従業員を雇用または職業において差別しない。
2a) 従業員の代表に対し、有効な労働協約の作成を助けるために必要な便宜を提供する。
b) 従業員の代表に対し、雇用条件に関する有意義な交渉のために必要な情報を提供する。
c)労使の相互の関心事項について、使用者と従業員及び従業員の代表との間の協議及び協力を促進する。
 従業員及び従業員の代表に対し、これらの者が構成体の、又は適当な場合には企業全体の業績に関する真正かつ公正な見解の獲得を容易ならしめる情報を提供する。
4a) 受入国の類似の使用者が遵守している雇用及び労使関係の基準よりも低くない基準を遵守する。
b) 事業活動において、職業上の健康及び安全を確保するため、適切な措置を実施する。
 事業活動において、従業員の代表及び適当な場合には関係の政府当局と協力しつつ、最大限実行可能な限度において、技術水準の向上を目的として、現地の人間を雇用し、訓練を提供する。
 従業員の生活の重大な影響を及ぼすような事業活動の変更、特に、一時的なレイオフ及び解雇も含め、集団解雇を伴う構成体の閉鎖を検討するに当たっては、従業員の代表及び適当な場合には関係の政府当局に対し、かかる変更に関する合理的な予告を行い、また最大限実行可能な限度において、悪影響を緩和するため従業員の代表及び所管の政府当局と協力する。各事例の特殊な状況を考慮して、経営者側が最終的な決定を下す前にそのような予告を行うことが望まれる。そのような決定の効果を緩和する上で意義のある協力を提供するために、その他の手段も採用することができる。
 雇用条件に関して従業員の代表との誠実な交渉を行うに当たり、又は従業員が団結権を行使している間は、交渉に不当な影響を与え又は団結権の行使を妨げるために、事業活動の単位の全部又は一部を当該国から移転するとの威嚇は行わず、また、他国内にある企業の構成体からの従業員移転は行わない。
 従業員の正当な代表者が、交渉中の事項につき決定する権限を有する経営者側の代表と団体交渉又は労使関係の問題についての交渉を行い、労使相互の関心事項について協議することを可能にする。

 他に「環境」「消費者利益」「科学及び技術」「競争」等について規定。


コー円卓会議 企業の行動指針

 コー円卓会議とは、スイスに本部を置く、ビジネスリーダーによるグローバルネットワーク(1986年発足)。「企業行動の是非を判断する世界的な基準」として、企業の行動指針を94年に策定。

 第3章 ステークホルダーズ(企業をとりまく利害関係者)に関する原則
 (2) 従業員
 私たちは従業員一人ひとりの尊厳と、従業員の利害を真剣に考慮することの重要性を確信する。そのために、私たちは以下の責任を有する。
 仕事と報酬を提供し、働く人々の生活条件の改善に資する。
 一人ひとりの従業員の健康と品格を保つことのできる職場環境を提供する。
 従業員とのコミュニケーションにおいては誠実を旨とし、法的及び競争上の制約を受けないかぎり情報を公開してそれを共有するよう努める。
 従業員の提案やアイディア、要請、不満に耳を傾け、可能な限りそれらを採用する。
 対立が生じた際には誠実に交渉を行う。
 性別、年齢、人種、宗教などに関する差別的な行為を防止し、待遇と機会の均等を保証する。
 能力差のある人々を、それらの人々が真に役立つことのできる職場で雇用するよう努める。
 従業員を職場において防ぎうる障害や病気から守る。
 適切で他所でも使用できる技術や知識を、従業員が修得するよう奨励し支援する。
 企業の決定によってしばしば生じる深刻な失業問題に注意を払い、政府並びに被雇用者団体、その他関連機関並びに他の企業と協力して混乱を避けるよう対処する。

 ステークホルダーとして、他に「顧客」「オーナー、投資家」「仕入先」「競争相手」「地域社会(環境含む)」を掲げている。


国連 「グローバル・コンパクト」の9原則

 「グローバル・コンパクト」とは、グローバリゼーションに起因する様々な課題に対処するための意見交換と実践の場。1999年にアナン国連事務総長が提唱。参加企業に対しては、人権、労働基準、環境の3分野の合わせて9つの普遍的な原則を支持し、実践するよう要請。

 人権
  1 国際的に宣言されている人権の擁護を支持し、尊重する。
  2 人権侵害に加担しない。
 労働基準
  3 組合結成の自由と団体交渉の権利を実効あるものにする。
  4 あらゆる形態の強制労働を排除する。
  5 児童労働を実効的に廃止する。
  6 雇用と職業に関する差別を撤廃する。
 環境
  7 環境問題の予防的なアプローチを支持する。
  8 環境に対して一層の責任を担うためのイニシアチブをとる。
  9 環境にやさしい技術の開発と普及を促進する。


経済同友会 企業評価基準

 第15回「企業白書」(2003年)において、企業の社会的責任に関する「企業評価基準」を提唱。

 第3章 めざすべき企業像と新しい企業評価基準の提唱
  2 評価軸I:企業の社会的責任(CSR)
(3) 人間
 「人間」のフィールドにおいて、主なステークホルダーは従業員と(人材としての)経営者である。企業にとって優秀な人材を確保することは、持続的な発展のために必要な投資である。個人が持つ多様な能力を十分発揮し、自己実現を図ることのできる多様な機会を提供し、それを企業のダイナミズムにつなげていく必要がある。また、企業は人々の価値観や生き方に大きな影響を与えている社会的存在である。企業と個人、企業人と家庭の関係を考えながら、生活の質(QOL)を高め、より働きやすい環境を提供することが必要である。
優れた人材の登用と活用
 (性別・年齢・学歴・国籍・雇用形態などにかかわらず)優れた人材を登用・活用することによって、企業のダイナミズムを生み出し、従業員の能力や実績を公正に評価することによって、その意欲や能力を一層高める。
従業員の能力(エンプロイアビリティ)の向上
 従業員の能力(エンプロイアビリティ)や次代のトップ・マネジメントの資質を高めることによって、人的資源の持つ潜在的な可能性を十分に引き出す。
ファミリー・フレンドリーな職場環境の実現
 育児・教育・介護など、従業員の家庭人としての責任を考慮し、ファミリー・フレンドリーな職場環境を実現する。
働きやすい職場環境の実現
 多様で柔軟な勤務時間・形態、従業員の安全・衛生や人権への配慮などによって、働きやすい職場環境を実現し、従業員満足度を高める。

(4)社会(社会貢献)
社会貢献活動の推進
 従業員のボランティア活動の支援、従業員の社会貢献活動への参加奨励を支援している。
ディスクロージャーとパートナーシップ
 社会報告書の作成やNPOとの対話・協働を通じ、地元等とのコミニュケーション及び社会貢献を行う。

 他に「市場(顧客・株主・競争等)」「環境」「社会(国際社会協調等)」を評価軸として掲げている。


付表4
各企業の社会報告書における情報開示項目一覧表

社名 安全衛生 健康 障害者・高齢者 人材育成 両立支援 女性 社会福祉活動
  講習会及び研修 社内における安全衛生指針等の作成の有無 第三者(外部)による安全衛生の監査の有無 メンタルヘルス研修会、相談所等の創設 社内健康教育の取り組み(健診や生活習慣病の防止) 障害者雇用 職場環境のバリアフリー体制 高年齢者の雇用等の措置 研修制度の有無 自己啓発支援 ボランティア休暇有無 介護・育児休暇の有無 託児施設の設置 女性の管理職登用の整備体制 ボランティア(社員の派遣・情報提供) ボランティア(資金の提供) 技術支援(専門家の派遣・研修生の受け入れ) 地域との交流活動の有無
A社 × × × × × × × × × × × ×
B社 × ×
C社 × × × × × × × ×
D社 × × ×
E社 × × × × × × ×
F社 × × × × × × × × × ×
G社 × × × ×
H社 × × × ×
I社 × × × × × × ×
J社 × × × × × × × × × ×
K社 × × × × × × × ×
L社 × × × × × × × × × × × × × ×
M社 × × × ×
N社 × × × × × × × × × × × × × × ×
O社 × × × × ×
P社 × × × × × × ×
Q社 × × × × × × × × × × × × × × ×
R社 × × × × × × ×
S社 × × × ×
T社 × × × × × × × × × × × × × ×
U社 × × × × × ×
V社 × × × × × × × × × × × × × × × ×
W社 × × × × × × × × ×
X社 × × × × × × × ×
Y社 × × × × × ×
Z社 × × × × × × ×
α社 × × × × ×
β社 × × × × × × × × × ×
γ社 × × × × × × × × × × × × × ×
σ社 × × × × × × × × × × × × ×
合計企業数 10 23 6 20 15 15 13 7 23 21 8 15 5 16 21 24 11 27
注:厚生労働省労働政策担当参事官室作成


付表5

欧州のCSRに関する取組み


 欧州における産業界のCSRに関する自発的なネットワークであるCSR Europe等は、欧州各国におけるCSRの取組みの現状について発表している(Campaign Reporton European CSR Excellence 2003-2004)。
 以下の表は、同レポート中のEuropean CSR Matrixをまとめたものである。

  (1)ラベル/認証 (2)表彰制度 (3)行動規範/倫理指針 (4)社会報告書ガイドライン (5)SRI関連団体、インデックス、法制度 (6)マルチステークホルダーによる組織 (7)CSRツールキット
オーストリア              
ベルギー        
デンマーク        
フィンランド            
フランス          
ドイツ            
ギリシャ              
アイルランド            
イタリア            
ルクセンブルク            
オランダ              
ノルウェー            
ポルトガル              
スペイン            
スウェーデン          
スイス              
イギリス            
ヨーロッパ              

 (注) 網掛け部分は、何らかの取組みが行われていることを示す。
 ○は、政府が関与していることが明らかな取組みが行われていることを示す。

 各項目ごとの大まかな特徴は以下のとおりである。

(1) ラベル/認証
 17か国中13か国で取組みが行われているが、政府が関与するものは少ない。
 ラベルについては、フェアトレードをしていることを示すもの(国際的)と、各企業が労働等に関してCSR的な要素を考慮しているかを示すものとに大別される。
(2) 表彰制度
 一国で数個の表彰制度を有しているところもあり、取組数としては7項目中最も多い。
 表彰項目も制度によってマイノリティの統合〔デンマーク〕、仕事における男女平等〔ルクセンブルク〕など多岐にわたっている。環境・社会報告書〔フィンランド〕について表彰しているものもある。
(3) 行動規範/倫理指針
 多くの国で取組みが行われているものの、直接国がイニシアティブをとるものは見あたらない。
 国際的な基準も存在する(衣料品業界における労働環境の向上を目指す団体によって策定されたClean Clothes Campaignは、9か国で採用されている。)。
(4) 社会報告書ガイドライン
 取組数としては7項目中最も少ない。
 中小企業を念頭に置いてつくられたもの〔デンマーク〕など、それぞれ特色を有している。この他、社会・環境に係る取組み成果の年次報告書への記述を、上場企業に法律で義務付けたケース〔フランス〕もある。
(5) SRI関連団体、(SRI)インデックス、法制度
 年金基金等に対し、投資に当たり社会・環境要素を考慮することや、どのように考慮したか明らかにすることを、法律で義務付けるケースがみられる。
(6) マルチステークホルダーによる組織
 政府が構成員の一翼を成している組織が4か国で存在する。
(7) CSRツールキット
 会社がCSRに関する取組み状況を自分でチェックするものが多い〔ベルギー等〕。
 中小企業向けのガイドやツールもみられ、CSR Europe等により作成されたSME KEYは、5か国で採用されている。


トップへ
戻る