◆ | CSRを推進する主体は企業であり、企業が自主的に社会的責任を果たすべく取組みを行うものである。また、CSRを構成する諸要素のうち、どれを重点的に実行するかは、社会で求められているものを勘案しながら、企業が決定していく。
したがって、国が施策を講じるに当たっては、企業の自発性や多様性を尊重する必要がある。こうした観点からすると、例えば労働におけるCSR規格を国が策定・認証するような施策を講じることは困難であり、CSRについて企業の関心が高まり、自主的な取組みが進んでいる現在、望ましくないものと考えられる。
なお、CSRの推進主体は企業であるといっても、中小企業については必ずしもCSRの取組みが進んでいるものではない。サプライチェーンや取引先企業にCSRの配慮を求めることを通じ、中小企業を含めて労働に関するCSRの取組みが行き届くことが期待される。
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◆ | CSRを企業が主体的に推進しようと思っても、単独では困難な点もある。企業は社会全体で何が求められているか鋭敏に察知し、対応策を実施していく必要があることから、社会の変化の方向性や、社会から必要とされているものについて、国が情報や判断材料を提供することは、CSRを推進しようとする個別の企業にとって大きな利点があるものと考えられる。
国においては、CSRを推進する主体である企業を、側面から支援していくことが求められよう。
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◆ | また、SRIに関する取組みが積極的に行われる環境を整備していくことも、国の役割としてあげることができよう。1で述べたように、多様性に富む「人」を重視する社会を形成していくためには、企業の自主的な取組みを支援することはもとより、CSRを果たしている企業に対して投資をしていく機運が高まることが有益である。投資家啓発の実施など、SRIが積極的に行われる環境を整備することにより、従業員をはじめとした「人」を重視する社会への変革が進むことが期待される。 |