2 社会情勢の変化に応じた従業員への考慮 |
従業員等に対し、企業がどういう事項について責任ある行動をとらなければならないかについては、労働をとりまく社会情勢の変化によって異なってくる。ここでは、従業員、求職者というステークホルダーとの関わりにおいて、企業が考慮することが望まれる事項について概観する(注5)。
(1) | 「人」の能力発揮のための取組み
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(2) | 海外展開の進展に対応した取組み 事業の海外展開が進む中で、海外において労働問題が頻発している。海外進出先においても現地従業員等に対し、企業は責任ある行動をとっていく必要がある。 また、海外を含めたサプライチェーンの事業所においても、労働等のCSRに配慮しているか否かが商取引上の要件となってきており、こうした点についても考慮する必要性は増大している。 | ||||||
(3) | 人権への配慮 今日においても、社会的身分、門地、人種、民族、信条、性別、障害等による不当な差別その他の人権侵害はなお存在している。企業においても、差別の禁止やセクシュアルハラスメントの防止等について、社内研修など従業員の人権に配慮するような取組みをしていくことが重要である。 | ||||||
(4) | 企業からみたメリット
企業の側からみても、労働に関してCSRを踏まえた活動を行うことは、例えば以下のような利点があるものと考えられる。
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(注5) | 企業が従業員に対して考慮すべき事項としては、賃金、労働時間に関することをはじめとした基本的な法定労働条件を遵守すること(コンプライアンス)が、まず前提として必要になる。ここでは、そのことを前提とした上で、労働に関するCSRについて企業が考慮することが望まれる事項について概観する。 | |||||||||||||||
(注6) | 日本労働研究機構「能力開発基本調査」によると、OFF-JTの実施率は2002年度は48.7%と前年度に比べ11.5ポイント低下している。計画的OJTも2002年度は実施率が減少しており、企業における人材育成の取組みの減少が懸念される。
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(注7) | 例えば、厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(2002年度)をみると、小学校就学の始期までの勤務時間短縮等の措置の普及率は9.6%という状況にある。 | |||||||||||||||
(注8) | (財)勤労者リフレッシュ事業振興財団勤労者ボランティアセンター「企業の社会貢献活動および従業員のボランティア活動支援に関する調査」(2001年)によると、ボランティア休暇を制度化している企業の割合は6.8%となっている。 | |||||||||||||||
(注9) | なお、従業員の能力開発の積極性と企業の売上高の関係をみてみると、「非常に積極的」と回答した企業において、「増収」となった割合が高く、「消極的である」と回答した企業においては、「減収」となった割合が高くなっている。
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