戻る

e−文書通則法案への対応(案)

1 e-文書通則法案
 (1)通則法の趣旨
 民間主体の書面保存義務に伴うコストをITの活用により軽減し、経営や業務の効率化を図る。
〔参考〕e-Japan戦略II加速化パッケージ(H16.2.6IT戦略本部決定)
1)eー文書イニシアティブ
 法令により民間に保存が義務付けられている財務関係書類、税務関係書類等の文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、文書・帳票の内容、性格に応じた真実性・可視性等を確保しつつ、原則としてこれらの文書・帳票の電子保存が可能となるようにすることを、統一的な法律(通称「e-文書法」)の制定等により行うこととする。このため、電子保存の容認の要件、対象範囲等について早急にとりまとめ、2004年6月頃を目途にIT戦略本部に報告を行い、法案を早期に国会に提出する。(内閣官房及び関係府省)

 (2)スケジュール
 秋の臨時国会に法案提出予定
 平成17年4月施行予定

 (3)法案の概要
個別法で電子保存を容認していない場合に、原則として全て容認することとする(紙による保存は不要)。
 ※電子保存:次の2つを予定
 (1)当初から電子的に作成された書類を電子的に保存すること
 (2)書面で作成された書類をスキャナで読み取り、電子的に保存すること
 ※通則法とすることで関係法律の個別改正は不要
電子保存が政策的に適当でない場合には、通則法の別表に個別列挙して適用を除外。
電子保存の際に必要な条件などは主務省令で具体的に規定。
法律上の手当が必要な場合には同時に制定する整備法で所要の規定を整備。


2 検討対象
 診療録等関係法令上保存が義務づけられている書類について対応方針を整理する必要がある。

〔現行の取扱い〕
 (1) 診療録等については、平成11年通知で一定の条件の下電子的保存を容認。
 (2) 処方せん等については現在電子的保存は不可。
 (3) (1)(2)いずれにしてもスキャナによる読み取りについては対応方針未定。
  作成 保存 電子保存の可否
診療録等
電子
(スキャンによる読取り)
未定
電子
電子
*2
処方せん等
*1
電子
(スキャンによる読取り)
未定
電子
電子
×*3
 *1 処方せん、臨床修練外国医師が作成する診療録及び診療放射線技師の作成する照射録
 *2 平成11年通知(「診療録等の電子媒体による保存について」)において虚偽入力、書き換え、消去等の防止、肉眼による情報内容の見読可能な状態の確保などを条件とする。
 *3 医師法、薬剤師法等により、医師、薬剤師等の記名押印又は署名が必要なため


3 対応方針(案)
(1)基本的な対応方針(案)
      電子保存の可否 〔参考〕e-文書法の適用
診療録等
(1)紙作成 →電子保存
(2)電子作成 →電子保存


処方せん
(1)紙作成 →電子保存
(2)電子作成 →電子保存

×

*1
照射録等
(1)紙作成 →電子保存
(2)電子作成 →電子保存


注1) ○はいずれも一定の条件を満たすことが前提
注2) e-文書法の適用関係は内閣官房と要調整
*1 法令上電子作成を前提とした保存が想定されないため

(2)スキャナによる読み取り保存【A(1)・B(1)・C(1)】
 医療機関における紙による保存の負担軽減を図り、患者サービスの向上を図る観点から、A〜C共通で、一定の条件を満たす場合に限りスキャナ読み込みによる電子保存を認める。

1)共通する条件
診療に支障が生じることのないよう、スキャンによる情報量の低下を防ぎ、原本として必要な情報量を確保するため、光学解像度、センサなどの一定の規格・基準を満たすスキャナを用いること
改ざんを防止するため、医療機関の管理者は以下の措置を講じること
 ・スキャナによる読み取りに係る運用管理規程を定めること
 ・スキャナにより読み取った電子情報と原本との同一性を担保する情報作成管理者を配置すること
 ・スキャナで読み取った際は、作業責任者(実施者または管理者)が電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)に適合した電子署名等を行い、責任を明確にすること
 ・スキャナで読み取る際は、タイムスタンプの利用又はシステムの時刻の正確性を確保するための一定の手順に従った運用により、信頼性のある読み取り時刻を明示すること
診療上緊急に閲覧が必要になったときに迅速に対応できるよう、停電時の補助電源の確保、システムトラブルに備えたミラーサーバーの確保などの必要な体制を構築すること
個人情報の保護のため個人情報保護法を踏まえた所要の取り扱いを講じること
医療機関外部での電子的保存については今後の必要な条件の整理を待って対応すること

2)診療等の都度電子保存する場合の条件
改ざんを防止するため情報が作成されてから一定期間以内にスキャンを行うこと
情報作成管理者は、上記1)の技術的な基準及び個人情報保護に係る要件に基づき実施すること

3)過去に蓄積された紙媒体等を電子保存する場合の条件
個人情報を保護する観点から、スキャナによる読み取りを実施する前にあらかじめ対象となる患者等に院内掲示等による情報提供を行うこと。患者等から異議の申し出があった場合は、スキャナによる読み取りを行わないなど必要な配慮を行うこと
作業における個人情報の適切な保護を図るため、所要の実施計画及び上記運用管理規程の事前作成、スキャナによる読み取り作業終了後の監査などを確保すること。
 *行政機関又は第三者による関与も含めて必要な体制を今後検討する
外部事業者に委託する場合には、安全管理上、スキャナによる読み取りを医療機関が自ら実施する際に必要な上記1)の技術的な基準及び個人情報保護に係る要件を満たす事業者を選定し、契約上も安全管理等に必要なこれらの要件を明記すること

(3)診療録等の電子的な作成・保存【A(2)】
現在の技術状況や今後の医療分野における個人情報保護ガイドラインの検討状況等を踏まえつつ、必要な運用指針を検討する。

(4)処方せんの電子的な作成・保存【B(2)】
処方せんの電子的な作成は、現在、医師法上認められていない。一方、通則法第4条では同一主体が保存義務者と作成者である場合、電子保存のみならず電子作成も可能とされるが、処方せんについては、作成者(医師又は歯科医師)と保存義務者(薬局又は病院)が異なることから、同条の適用対象とはならない。このため、今後処方せんの電子作成を認めないとした場合においても、第6条の別表で適用除外を規定する必要はない。
なお、電子的に作成された処方せんの電子的な保存については、以下の課題をすべてクリアする必要があるが、患者の利便性の向上や技術的実現可能性などの観点からなお慎重に検討を進める必要がある。
 ・患者による薬局の自由な選択(フリーアクセス)を保証する必要があること(医療機関、薬局、患者等の全てが電子的な対応の体制が整わない現状で処方せんの電子的な作成・保存を認めた場合、事実上患者の選択が保証されないおそれがある)。
 ・医師による無診察診療を防止する必要があること
 ・対面による薬剤師の服薬指導・情報提供を確保する必要があること
 ・処方せんの偽造や再利用を防止する必要があること
 ・患者による処方内容の確認を可能とする必要があること
 ・処方せんの期限内に病状が変化し当初の処方に従った調剤では不適切な場合があること

(5)照射録及び臨床修練外国医師の診療録の電子的な作成・保存【C(2)】
現行法では電子保存が禁止されているため、e-文書通則法の適用対象となる。
電子署名法に適合した電子署名等を行うことにより、現行法上必要な記名押印等がなされたものとみなす。


トップへ
戻る