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4 検討事項

(1)公益性の追求

 
 社会福祉法人が、行政からの委託等により実施する事業はもとより、
 地域において様々な福祉課題の発見・解決や、
 利用者が身近な地域で人としての尊厳を持って自立した生活を送ることができるよう支援する活動に、
積極的に、かつ創意工夫をもって取り組むよう支援するための措置としてどのようなものが考えられるか。

【検討の背景】

 福祉サービス提供への多様な主体の参入
 福祉需要の多様化の進展
→ 社会福祉法人が果たすべき役割やその存在意義が問われている。

【社会福祉法人の在り方に関する主な意見】

 社会福祉法人などが創設の趣旨に立ち返り、地域の福祉問題を発見・対応する取組を強化すべき。
 民間事業者として本来期待されていた自主的かつ先駆的な福祉サービスへの取組や、地域に根ざした社会福祉法人として多様な活動を行うことが重要。
 個人の尊厳の保持が求められる中で、家庭においても施設にいるときと同様のサービスが受けられるようにするような事業展開が、今後の社会福祉法人のとるべき方向性である。
 地域の福祉需要に弾力的に応えることができるよう、経営能力の向上が求められている。
 地域への貢献、低所得者対策等は、社会福祉法人が果たすべき役割として改めて打ち出すまでもなく当然である。
 社会福祉法人が行う事業には、本来事業に付随して一体的に行う公益的なものもあり、定款に記載のない事業を認めない画一的な指導監査は不適切。

【施策の方向性】

 従来のような「1法人1施設(事業)」という事業展開から脱却して、例えば、小規模多機能サービスを展開するなど、地域の福祉需要に対応した多様な活動を行っていくべきではないか。
 社会福祉法人によるこうした取組を推進するために、どのような措置を講ずるべきと考えられるか。
 例えば、社会福祉法人の努力義務として社会福祉法に明記するのはどうか。

(参考) 社会福祉法(昭和26年法律第45号)

 (地域福祉の推進)
四条 地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように、地域福祉の推進に努めなければならない。

 (福祉サービスの提供の原則)
五条 社会福祉を目的とする事業を経営する者は、その提供する多様な福祉サービスについて、利用者の意向を十分に尊重し、かつ、保健医療サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図るよう創意工夫を行いつつ、これを総合的に提供することができるようにその事業の実施に努めなければならない。

 (公益事業及び収益事業)
二十六条 社会福祉法人は、その経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益を目的とする事業(以下「公益事業」という。)又はその収益を社会福祉事業若しくは公益事業(第二条第四項第四号に掲げる事業その他の政令で定めるものに限る。第五十七条第二号において同じ。)の経営に充てることを目的とする事業(以下「収益事業」という。)を行うことができる。
 公益事業又は収益事業に関する会計は、それぞれ当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。


(2)管理運営体制の充実

  (1) 理事・理事会

 法人の業務執行機関としての機能を強化し、多様な事業展開に対応する観点から、理事定数を見直すべきではないか。

【現行制度の内容】

(理事定数)
 社会福祉法  3人以上  (法第36条第1項)
 通知  6人以上  (「社会福祉法人審査基準」)
 【参考】第8回資料1-p.7・資料2-p.10, p.25

【これまでに提出された主な意見】

 執行機関としての理事会機能強化の観点から、最低必要人数(6名)を法定し、通知による規定を廃止すべき。
【参考】第8回資料5-p.3

【学校法人における制度及び見直しの内容】

(理事定数)
 私立学校法  5人以上  (法第35条第1項)
【参考】第8回資料2-p.3


 理事の構成はどうあるべきか。

【現行制度の内容】

(理事構成に関する規制(「社会福祉法人審査基準))
 各理事と親族等特殊の関係のある者が一定数を超えないこと。
 施設の整備又は運営に関連する業務を行う者が3分の1を超えないこと。
 社会福祉事業についての学識経験者又は地域の福祉関係者が含まれること。
 施設を経営する法人にあっては、1人以上の施設長が理事として参加すること。ただし、施設職員たる理事が3分の1を超えることは適当でないこと。
【参考】第8回資料1-p.7・資料2-p.21

【これまでに提出された主な意見】

 (役員体制とチェック機能との分離を図り、理事会機能の強化・法人の自律性の確保を図る観点から、)評議員会による理事の選任、1人以上の外部の識者が含まれることを条件に、施設職員である理事が3分の1を超えることは適当でない旨の規定等を廃止すべき。
【参考】第8回資料5-p.3

【学校法人における制度及び見直しの内容】

 直近の法改正(注)により、理事に外部の人材(現に当該学校法人の教職員でない者)が含まれるようにしなければならない旨私立学校法に明記されたところ。

 (注) 「私立学校法の一部を改正する法律」(平成16年法律第42号)
 公布  平成16年5月12日
 施行  平成17年4月1日


 理事会が法人の最終的な意思決定機関であり、各理事は法人の業務の執行機関という位置付けを明確にする観点から、理事会を社会福祉法上に位置付けるべきではないか。また、理事の代表権についてどのように考えるか。

【現行制度の内容】

(理事会の設置・理事の代表権)
 理事会の設置については、社会福祉法には規定はないが、通知(「社会福祉法人定款準則」)の規定に基づき、法人の業務を決定する機関として設置。
 理事は、それぞれ社会福祉法人の業務についての代表権を有するが、定款の定めをもって代表権を制限できる。(社会福祉法第38条)
【参考】第8回資料2-p.21, p.25

【これまでに提出された主な意見】

 実際の施設運営において施設長等の果たす役割が大きい一方で、理事長や理事会の果たす役割・機能の形骸化が見られる。
 法人経営の責任主体である理事会・理事の責任と権限を明確にすべき。
 重い経営責任が求められる理事長の権限と責任を明確にすべき。
【参考】第8回資料5-pp.7-8


【学校法人における制度及び見直しの内容】

 理事会については、私立学校法においてこれまで規定はなかったが、直近の法改正により、
 学校法人に理事をもって組織する理事会を置く
 理事会は、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する
旨の規定が私立学校法に設けられたところ。
 理事の代表権に関する規定は、
 理事長は、学校法人を代表し、その業務を総理する
 理事長を除く理事は、寄附行為の定めるところにより学校法人を代表し、理事長を補佐して学校法人の業務を掌理する
旨に改められたところ。

 法人の機動的な運営を可能にする観点から、理事会において議決すべき事項や、理事長の役割をどのように考えるか。

【現行制度の内容】

(理事会・理事長の権限(「社会福祉法人定款準則))
 理事会: 法人の業務の決定
※理事会の具体的な議決事項の例:
 ・ 評議員会の同意を要する事項(予算・決算、定款変更等)  
 ・ 所轄庁の許認可を受ける事項  
 ・ 定款細則、経理規程等規則の制定・変更  
 ・ 役員報酬に関する事項
 理事長: 日常の軽易な業務について専決・理事会への報告
※「日常の軽易な業務」の例:
 ・ 職員の日常の労務管理・福利厚生に関すること  
 ・ 予算上の予備費の支出  
 ・ 入所者・利用者の日常の処遇に関すること
【参考】第8回資料2-p.26

【これまでに提出された主な意見】

 迅速な意思決定を確保する観点から、理事会の議決を要する事項を明確にし、これを除いては理事長による決定を可能とすべき。
 重い経営責任が求められる理事長の権限と責任を明確にすべき。
【参考】第8回資料5-p.3, p.8

【学校法人における制度及び見直しの内容】

 機動的な法人運営を行うため、以下のような見直しの方向性が示されている。
「 一方,機動的な学校法人の運営を行うためには,速やかに意思決定が行えることが重要であり,法人の業務のすべてを理事会において決定しなければならないとすることは現実的ではない。最低限理事会として決定しなければならない事項とそれ以外の事項を整理し,明確にすることが必要である。
 具体的には,理事会は学校法人の基本的な運営方針や事業計画について決定するとともに,現在評議員会に諮問しなければならない事項とされている(1)予算,借入金及び重要な資産の処分,(2)決算,(3)寄附行為の変更,(4)合併・解散,(5)収益事業に関する重要事項,(6)その他学校法人の業務に関する重要事項で寄附行為で定めるものについては理事会において決定することとすることが必要である。(6)について寄附行為で何を定めるかは各学校法人の判断によるが,一般的には学則の制定,就業規則の決定,資産の運用,工事の契約,重要な設備の購入等が考えられる。ただし,あらかじめすべてのことを想定して寄附行為に定めておくことは不可能であり,そのようなことが発生した場合には理事長において理事会決定に係らしめるか否か適切な判断がなされるべきと考える。」



「学校法人制度の改善方策について」(平成15年10月10日文部科学省
大学設置・学校法人審議会学校法人分科会学校法人制度改善検討小委員会報告書)




(2) 監事

 監事機能の強化を図るために講ずべき措置はないか。あるとすれば、どのようなものが考えられるか。

【現行制度の内容】

(監事定数)
 社会福祉法  1人以上  (法第36条第1項)
 通知  2人以上  (「社会福祉法人定款準則」)
【参考】第8回資料1-p.7・資料2-p.10, p.25

(監事の権限)
 理事の業務執行の状況及び社会福祉法人の財産の状況の監査  
 監査報告書の作成及び理事会・評議員会への報告
 監査の結果不整の点を発見した場合の評議員会への報告
 理事会に出席しての意見陳述
【参考】第8回資料2-p.10, p.26

(外部監査)
 法人運営の透明性確保の観点から、公認会計士、税理士等による外部監査の活用を推進(事業規模に応じて2年又は5年に1回程度)。
【参考】第8回資料2-p.22

【学校法人における制度及び見直しの内容】

 直近の法改正により、
 監査報告書の作成及び理事会・評議員会への提出
 理事会に出席しての意見陳述
が監事の権限として私立学校法に明記され、社会福祉法人の監事の権限と同様となったところ

(3) 評議員・評議員会

 理事会機能のチェックや、地域関係者や利用者家族の意見の法人運営への反映など、第三者機関としての評議員会の役割の重要性を踏まえ、評議員会の設置の義務付けについてどのように考えるか。

【現行制度の内容】

(評議員会の設置)
 社会福祉法  任意設置 (法第42条第1項)
 通知  措置事業又は保育所経営のみを行う法人を除き、必置
(「社会福祉法人審査基準」)
【参考】第8回資料1-p.7・資料2-p.10, p.21, p.27
 措置事業又は保育所経営のみを行う法人については、行政からの委託事業を行っており、行政の監督によって適正が確保されることから、必ずしも設置を要しない。

【これまでに提出された主な意見】

 評議員会制度の趣旨や実態にかんがみ、評議員会の設置を社会福祉法上明確にし、別途、設置義務の適用除外となる法人の範囲を定めるべき。
【参考】第8回資料5-p.3

【学校法人における制度及び見直しの内容】

(評議員会の設置)
 私立学校法  必置 (法第41条第1項)

 評議員会は、法人の業務の決定に際し理事会に対し意見を述べる諮問機関としての位置付けであることをより明確にすべきでないか。また、その際、評議員会の役割(評議員会において意見を述べるべき事項)をどのように考えるか。

【現行制度の内容】

(評議員会の位置付け)
 社会福祉基礎構造改革によって、それまでの議決機関ではなく諮問機関であると位置付けられたところ(「社会福祉法人審査基準」)。
 一方、法人の業務の決定に当たり重要な事項については、原則として評議員会の同意を得なければならないとされている(「社会福祉法人定款準則」)。
業務決定に係る重要事項の例:
予算、決算、基本財産の処分、事業計画及び事業報告
定款の変更
合併・解散
その他理事会において必要と認める事項
【参考】第8回資料2-p.22, p.27

【これまでに提出された主な意見】

 評議員会については、実質的に議決機関としての性格を残しており、諮問機関としての位置付けをより明確にすべき。
【参考】第8回資料5-p.3, p.8

【学校法人における制度及び見直しの内容】

(評議員会の位置付け)
 私立学校法:  業務に関する重要事項について、あらかじめ、評議員会の意見を聞かなければならない(法第42条第1項)。
 評議員会の諮問機関としての位置付けを踏まえ、直近の法改正により、学校法人としての最終的な責任と権限を有する機関としての理事会の位置付けを法律上明らかにしたところ。


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