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2004年6月18日

社会保障審議会
障害者部会長 京極 高宣 様

財団法人 全国精神障害者家族会連合会
理事長 小松 正泰

精神障害者保健福祉施策と介護保険制度のあり方に関する意見


 「障害者基本法」の制定以降、精神障害者に対する福祉サービスも、手帳制度の創設、在宅福祉サービスの実施と、徐々にその厚みを増してきた。また、精神科医療においても、入院の短期化が進み、通院医療中心となる傾向にある。このような状況の中、家庭や地域社会における医療および福祉両面から、精神障害者の地域生活を支える仕組みが強く求められている。特に、障害者の自立と社会参加を支援することの重要性は、精神障害者においても同様である。しかし、残念ながら精神障害者福祉施策は、他の障害者や高齢者の福祉施策に比べ、その質・量ともに大きな隔りがあり、また社会的入院者の問題も残されたままである。当会では、今後もさらに精神障害者とその家族が安心して暮らせる地域社会の実現のために、努力するところである。
 こうした中で、国家財政の逼迫を背景に、障害者福祉施策と介護保険制度の統合という課題が提示され検討を重ねてきたところであるが、安定的な財源確保という極めて現実的なことから検討するならば、介護保険制度との統合は一つの選択肢として、前向きに考える必要がある。
 しかし、そのためには今後十分な議論を尽くし、克服しなければならない課題があることも認識しなければならない。当会の基本的姿勢と検討課題を、以下に提起する。

当会の基本的考え方

1. 現在、多くの精神障害者が家族と同居し、家族の世話のもとに生活をしている。高齢の家族に扶養され、しばしば引きこもったままの状態にある精神障害者の存在は、福祉サービスの対象として重視されるべき課題である。また、家族扶養に依存する体質は、過去においても社会的入院者を生み出す要因となってきた。在宅の精神障害者の生活を家族が背負う限り、今後もこの問題は解消されない。所得保障を含め、精神障害者の介護と自立の実現を、社会による支援システムの構築によって実施されることが急務である。

2. 福祉サービスは個々の障害者の実状と必要に応じて提供され、かつ、3障害共通であり平等でなければならない。前文のとおり、精神障害者が利用できる福祉サービスは、他障害者に比べて極めて不足しており、迅速に充実させる必要がある。また、当事者やボランティアの活動、家族相談などの、インフォーマル(非公式)なサービスの整備も遅れており、これらを広く育成整備する必要がある。
3. 精神障害者福祉が市町村業務となった歴史は浅く、専任の職員もいないことから、市町村の精神障害者に対する理解は極めて低く、関心も低いのが多くの現状である。市町村に、精神障害者に関する相談援助、連絡調整、財政的指導協力等にたずさわる、専任職員を置く必要があることを強く主張する。

介護保険制度との統合に関して前提となる検討課題

1. 統合が行われる場合は、介護保険制度における「居宅高齢者サービス」、あるいは支援費制度における「身体または知的障害者サービス」のうち、精神障害者に適用できるものについては、全て同等に制度化する。
2. 不就労、無年金、親の高齢化などで、最も経済的に不利な状況にある精神障害者が、福祉制度の利用を控えなくてもよいような、新たな減額免除措置(保険料および自己負担金について)を含め、低所得者対策を確実に行うこと。また、減額の基準を世帯ではなく、本人の所得とすること。
3. 「重度の障害がある精神障害者」の居宅生活について、介護保険制度の限度額を超える場合などの特例制度を設けること。
4. 精神障害者は、日常生活面、対人関係面、就労作業面などにおいて、固有の障害を有している。基本調査の項目の設定や認定において、精神障害者の独自の認定基準を作成し、障害が正当に評価され不利益とならないように、その内容について多角的かつ十分なる検討を行うこと。また検討にあたっては、地域で実際に支援を行っている関係者、当事者本人、家族が参加し、十分に意見が述べられるようにすること。
5. 精神障害独自のケアマネジメント体制を確立すること。現行のケアマネージャーでは、対応困難である。地域において豊富な経験があり、かつ修練を積んだ者によって行われる必要がある。
6. 高齢者介護においては、「生活技能」の向上が重視されるが、精神障害者へのホームヘルプサービスにおいては、生活全体への支援による「生活の質」の向上を目指すものであることを、現場に浸透させること。
7. 介護保険指定施設との関係について、精神保健福祉法内施設および法外施設の取り扱いについては、当会および関係者と十分協議を行うこと。
8. 国、都道府県、市町村等の制度による介護保険外のサービスが維持、継続できる措置をとるとともに、その充実を図ること。
9. 地域によって提供されるサービスの、質・量等に格差が生じないようにすること。


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