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【岡部委員提出資料】
社会保障審議会−福祉部会
生活保護制度の在り方に関する専門委員会
第12回(平成16年6月8日) 資料3−(2)

 他法他施策の活用・国籍要件・世帯認定に関するメモ

岡部 卓

 前回委員会において、次のような発言をしました。一つには、国民皆年金保険下において社会保険と生活保護制度の関係をどのように考えるかです。この点、他法他施策を優先を考え方の柱にしている生活保護制度において、制度的整合性がとれない構造となっている箇所があります。医療扶助と国民健康保険との関係です。二つには、国際化の進展により、今日、多数の外国人が日本で生活しております。そのなかには生活困窮の事態に陥る方々もおります。この場合、どのように考えるかです。以下では、これら二点の前回発言に加え、世帯認定と実施責任についてグループホームを例にし要望事項を述べます。

1 他法他施策の活用ー医療扶助について
 生活保護法の4条2項において、生活保護法に先立ち他法他施策を優先して活用することが定められています。そのなかで医療保険の一つである国民健康保険と医療扶助の関係だけが、この考え方に沿っていません。現行では生活保護を開始しますと国民健康保険は脱退となります(他医療保険は生活保護と併用になります)。これは、生活保護法の考え方に反しております。また、被保護者にとってはステイグマの喚起や制度利用の不便さを生じることにつながります。
 そのため原則通り他法他施策優先の考えのもと、生活保護を開始した場合、国民健康保険を継続適用できるよう改める必要があります。なお、介護保険は第1号被保険者(65歳以上)の場合、生活保護受給者も被保険者であり、介護保険が適用されています。保険料は介護保険料加算により、給付の1割自己負担分は介護扶助によってそれぞれ生活保護で給付されます。
 課題として、国民健康保険の財政負担、生活保護開始・廃止時の適正な事務手続きの確保、生活保護の医要否意見書の取扱い等があげられます。これら課題の方途を見出し、ノーマライゼーションの理念のもと、生活保護の場合、国民健康保険の加入とすべきです。

2 外国人の生活保護適用について
 生活保護法は第一条において「すべての国民」を対象とすると規定しています。このことは、同法において日本国籍を有さない外国人に対し保護を適用しないことを意味しています。そこで厚生省(現厚生労働省)は、昭和29年に通知を出し、「一般国民に準じて」保護の適用を行なうことを定めました(昭和29年5月8日付、社発第382号厚生省社会局通知「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」)。
 同通知では、一定の外国人について生活保護に準じた取扱いをする際の手続を定めたものであり、原則として外国人登録証明書の呈示を求めています。また、例外的に「急迫な状況」にある場合その呈示がなくても、保護の適用を認めています(生活保護手帳問答p468)
 しかし、「急迫な状況」にある場合であっても、観光ビザや就労ビザで入国した外国人、さらにはオーバースティの外国人には、保護の適用は認められていません。
 人道的見地から「急迫な状況」にある場合は、こうした者に保護を適用すべきであると考えます。

3 世帯認定と実施責任ーグループホームを例にー
 グループホームは、住民票を移すかどうかは別として生活保護は「居住地」として扱われます。にもかかわらず一部の自治体では、夫婦の一方がグループホームに入所した場合でも「夫婦なのだから同一世帯」と認定する場合があります。世帯の認定について、グループホームを利用している場合には、配偶者がいたとしても単身世帯として取り扱うべきです。

4 要望
 以上のことから、下記の諸点を要望事項と致します。
(1)  生活保護を開始した場合、国民健康保険を継続適用できるよう改めること。
(2)  外国人が「急迫な状況」にある場合、オーバースティの外国人等についても生活保護を適用すべきこと。
(3)  生活実態に即して世帯認定と実施責任の確定を行うこと。例えば、グループホームの場合。


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