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支援費制度と介護保険制度の統合に関する見解


平成16年5月21日
財団法人日本知的障害者福祉協会
会長 加藤 正仁

 新しい「障害者基本計画」では、障害者が構成員として参加、参画し、共に支え合う「共生社会」の実現を目指すとしており、社会全体としてその具体化を着実に推進していくことの重要性を指摘している。当協会においてもサービス提供者として役割を自覚した積極的な取組みが求められていると考える。支援費制度はその具現化のひとつであり、現在生じている様々な課題を克服するなかで、支援費制度の掲げる理念の実現に努めたいところである。
 支援費制度への移行により、特に居宅支援に係るニーズが掘り起こされ、サービス量が飛躍的に伸びたことは評価できるものと考えるが、一方では、財源不足と地域間格差という問題を際立たせたことも周知の事実である。そのような中で障害者福祉と介護保険との関係について本格的な議論が交わされつつあり、当協会にも厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課より、介護保険制度との統合について、協会としての意見を求められているところである。よって、本会の見解を次のとおり示すものである。

〇基本的な考え方
高齢者又は身体障害者に対する「介護」と知的障害者に対する「支援」は、歴史的背景や理念とともに実践の場面においても異なった部分が多い。
国の財政が逼迫するとともに、「三位一体」の改革が推し進められるなか、特に、今後一層需要の増大が予想される居宅支援サービスの財源確保は緊急の課題と考える。現状の税負担が限界にきており、何らかの手立てを講じる必要がある。
地方分権化が推進されることは、地域福祉の進展にとって重要な要素といえるが、一方では、地域間格差を助長しており、障害者福祉サービスの一定水準の確保のための仕組みが必要である。
現在の支援費制度は税負担による公助であり、憲法上の国の責任を具現化したものといえる。公的介護保険も税負担があり、公助的性格をもってはいるが、基本的には共助としての社会保険の性格を有している。障害者福祉を地域に共助というかたちで浸透させていく利点はあるものの、特に、少数派である知的障害者が埋没していく懸念もあるところから、国としての責任による支援体制は引き続き重要であるとともに、公助としての税負担という考えも排除できない。
仮に介護保険の知的障害者福祉への拡大が行われるとしても、知的障害者福祉の全てが介護保険の枠の中に包括されるものではなく、一部の支援がその仕組みに統合されると理解する。よって、引き続き様々な知的障害者福祉施策が重要である。
以上のとおり、現在、知的障害者福祉の推進にあたって財源が大きな問題であり、その解消について積極的に検討する必要がある。その現実的な対応として介護保険との統合があり、現段階でその方向を否定するものではないが、次の条件が前提である。

〇介護保険との統合における主たる前提条件
1.障害者基本計画や支援費制度の理念、方向性の具体化を図るなかで、その有効な仕組みとしての介護保険制度との統合を検討する。
2.現行の支援費制度において行われている支援サービスについて、そのサービスを確保すること。介護保険制度において必要な支援が受けられない場合は、介護保険制度以外のサービスとして支援費制度によるサービスを確保すること。
3.介護保険制度の要介護認定基準と支援費制度の障害程度区分には、当然、制度的な相違があるとともに、知的障害者の支援サービスと現状の介護保険サービスは必ずしも一致しないことから、支援費制度の障害程度判断基準による要支援度に基づいたサービスを確保すること。
4.介護施設の定員規模は、特別養護老人ホームの最低基準が50名(離島等は30名)である。定員規模という制度がないが、知的障害者施設は、地域密着型として小規模施設(入所は30名、通所は20名)も多く、この小規模施設の運営を考慮すること。
5.知的障害者の多くは障害基礎年金をその所得として生活していることから、介護保険制度の本人負担(応益負担としての原則1割負担)は、特に通所施設や居宅支援サービス利用者にとっては過重な負担となるため、現状の応能負担による費用徴収制度を踏襲すること。困難な場合は必要な所得保障を行うこと。
6.低所得者である知的障害者にかかる保険料の減免制度を設けること。
7.知的障害者に対する要支援度認定について、公平な認定システムを設けること。
8.ケアマネジメント体制として、同従事者の国家資格化、費用の保険給付、機関の独立性を確保すること。
9.介護保険制度との統合にあたっては、知的障害福祉サービスの利用者の意見を尊重すること。
10.今後次のような点についても協会と十分な協議を行うこと。
介護保険制度にない施設種別等の取り扱いについて
介護保険制度の対象を20歳以上とした場合、18〜19歳の知的障害者の取扱いについて
知的障害者のグループホームと介護保険制度のグループホームの取扱いについて
成人の知的障害者の扶養義務について(利用者負担基準)
費用負担のあり方等について(食費等ホテルコストと所得保障など)


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