04/05/28 過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会第2回議事録        第2回過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会                        日時 平成16年5月28日(金)                           10:00〜12:00                        場所 厚生労働省専用第15会議室                    (照会先)厚生労働省労働基準局安全衛生部                                労働衛生課健康班                         TEL03−5253−1111                                 (内5492) ○主任中央労働衛生専門官  では始めさせていただきます。座長、よろしくお願いいたします。 ○座長  本日は、ご多忙中お集まりくださいましてありがとうございました。第2回の「過重 労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会」を開催させていただきます。本日 は、対策の在り方に関する議論をより一層深めていただき、後半は、前回お話いたしま したように担当者からのヒアリングを実施したいと考えております。また、前回お休み されていた馬杉委員、保原委員にもお見えいただいています。どうもありがとうござい ます。よろしくお願いいたします。  前半の議論ですが、主な内容が2つあります。1つは、前回委員の先生方からお願い したいろいろな資料、あるいはその他の参考資料、調査資料を事務局から説明し、それ について議論をいただくということ。もう1つは、前回の検討会の議論を、一応事務局 のほうで「視点」という形でまとめましたので、それについてご議論いただくというこ とになると思います。早速ですが、事務局から資料の確認と説明をお願いいたします。 ○主任中央労働衛生専門官  お手元にお配りした資料は、No.1からNo.13までの13点です。それでは順にご説明申 し上げたいと思います。  資料No.1は、第1回目の検討会の議事概要です。これについて、もし不十分な点等 がございましたら、後ほどご指摘いただければと思います。内容については省略させて いただきます。  No.2、No.3は、前回にこのような資料はないかというお話があり、それを用意いた しました。資料No.2は「定期健康診断項目ごとの年齢別有所見率」ということで、産 業医科大学でまとめたものをベースにグラフ化したものです。全般的に年齢が上がると ともに有所見率が上がる傾向があるようですが、項目によってはそうでないものもあり ます。血糖値や収縮期血圧などというのは、年齢とともに上がっています。  資料No.3は、メンタルヘルス対策として好事例がないかというお話がありました。 私どもの事業として、中央労働災害防止協会に委託して行っているモデル事業の中で、 取組みの活発だった事例等をいくつか抜き出して、4例ほどまとめました。内容の説明 は省略させていただきます。  資料No.4は、平成15年度の「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」に ついて、労災担当で取りまとめ、5月25日に発表したものです。脳・心臓疾患について は、請求件数が114件の減少、認定件数は5件の減少、精神障害等に関しては、請求件 数が97件の増加、認定件数は8件の増加ということで、脳・心臓疾患については横這 い、微減という状況に対して、精神障害に関しては増えている状況があります。詳細に ついては省略させていただきます。  資料No.5は「企業における『過重労働による健康障害防止のための総合対策』の効 果に関する研究」というもので、厚生労働科学研究費により、この検討会の委員でもあ る西村委員が研究されたものです。この資料は、西村委員の研究結果をベースに、事務 局で一部抜粋する形でとりまとめたものです。本来であれば西村委員にご説明いただく のが筋かと思いますが、とりあえず事務局からご説明をし、西村委員から補足、訂正い ただければと思います。  概要ですが、IIに、調査対象と調査方法が書いてあります。小規模事業場の産業保健 活動の支援のために、全国に地域産業保健センターを設置していますが、ここに登録さ れている相談員の方と、日本産業衛生学会の産業医部会員の方を対象に、郵送でアンケ ートをとったものです。231名から回答が得られています。  調査結果で、回答者の背景を見ると、専属産業医が51%となっていますので、産業医 全体から見れば、専属産業医の割合が全体に比べれば高くなっているかと思います。対 象となる事業場等も含めて、レベルが高いというか、全体的には衛生水準の高い所から の回答と捉えていただいたほうがいいかと思います。  その結果ですが、2頁目の4「過重労働の把握方法等」で、「過重労働対策の対象者 の選定基準に使用する指標」によると、企業によっていくつか、その取組み方が異なっ ている、違った要素を考慮している所もあるということです。1カ月の時間外労働時間 を目安にしている所が、割合としては最も多くなっていますが、複数月や健診結果を考 慮したり、これはマルチアンサーですので、両方重ねてという所もあろうかと思いま す。  4頁、9「衛生委員会での報告・審議」ですが、こういった衛生委員会で報告あるい は審議されている所が61%あり、労使の取組みの場の中ても、検討がある程度されてい ることが分かるかと思います。11、12、総合対策の発出前と発出後の過重労働に係る対 策では、発出後のほうが取り組んでいる所が増加しています。前が56%に対して62%と いうことです。  5頁、14に「総合対策に基づく対策を実施していない理由」とあり、「実施していな い」と回答した所が52です。そもそも過重労働はないというものは除外していますの で、この52を対象としてパーセントを出していますが、「実態を把握できない」「産業 医と過重労働者の面会が困難である」「事業者が非積極的である」といったことが、実 施していない理由として挙げられています。  6頁、19「過重労働者との個別面談」とあり、この実施頻度が平均で月2.3回、面談 時間は15分ないし20分ぐらいの所が多い。健診という形ではなく、面接という形でやっ ている所が多いということです。  7頁、20「総合対策を実施した効果」として、総合対策を実施した事業場で、実施後 に何らかの変化があったという所が9割近くあります。「産業医から過重労働者への個 別指導がしやすくなった」「産業医が労働者の労働時間を把握しやすくなった」「極端 な過重労働が減った」と、このような変化が現れているということで、一定の成果が出 ているかと思います。(8頁以降のグラフは省略)  資料No.6は「脳・心臓疾患労災認定事案の分析」としてまとめています。これは、 過重労働による健康障害防止のための総合対策が発出された後に、5労働局で認定され た労災認定事案40事案を行政のほうで分析したものです。II「結果」ですが、40事案の 中で男性が36名、女性が4名、平均年齢は49.3歳でした。40歳未満、20代、30代の方も 6例ほどありました。  2頁の4は、認定された事例について、リスクファクターがあったかどうかを調べた ものです。約半数、40例中21例で、明らかなリスクファクターを有していたということ です。ただ、残り19例の中には「不明」が入っていますので、実際にはもっと高いので はないかと考えています。  5は、何らかの形で健康診断を実施していたかどうかということで、健康診断のあっ たものが25例、健診の実施率に比べると低くなっています。そのうち13例で健診結果異 常を認めていた。その中で2例のみ、事後措置が行われていたということで、十分では ないという状況がうかがえるわけです。  先ほどの2つは過重労働関係のものですが、資料No.7とNo.8は、メンタルヘルスと いいますか、自殺関係の資料です。資料No.7は、「自殺企図の要因の解析に関する研 究」で、これも厚生労働科学研究費により、この検討会のメンバーでもある黒木委員が 実施されたものです。これも事務局から説明させていただきます。  「調査対象と調査方法」ですが、大学病院等の施設で救急医療等のある所に、自殺を 企図したという形で入院した患者について、その対応に当たった医師からアンケートを とり、情報を集めたものです。今年1月から2月中旬の間において、そういった事例が あった場合に情報提供いただいたものです。調査結果としては、労働者と非労働者が、 たまたま半分ずつになっています。性別は、労働者については男性6割、女性4割、平 均年例は46歳です。  2頁の7は、自殺の動機がある者について調べたものです。労働者に関しては、経済 問題、健康問題等いろいろありますが、職場問題も約半分で、これは重複回答になって いますので、どちらが中心かということまでは分かりませんが、職場の問題が絡んでい たケースが少なからずあるということです。  3頁は、「職場問題と回答された場合」の、そのストレスの状況を示しています。軽 度、中等、強度となっており、これは労災認定に当たっての目安となったものを対応さ せています。軽度が46%、中等が43%で、軽度あるいは中等のものでも、本人にとって はストレスになっているということがうかがえます。ただ、これが主要因であったかど うかについては、先ほど申し上げたように判然としないところがあります。  4頁の12「自殺企図前に本人が精神的に不調を感じた時期」ですが、数週間前が2 割、数カ月前が2割で、半分ぐらいは自殺を企図する前に、何らかの不調を感じている ということで、この辺りで対応が、介入ができるのではないか、ということが考えられ るところです。  5頁の15「自殺企図の兆候」ですが、自殺の兆候に誰かが気づいていたか否かで、こ れについては13例で気づいていたという回答があったということです。その内容は、家 族が10例、上司が1例、残り2例は不明ということです。このことから、家庭で把握さ れるケースが多いことが分かります。  資料No.8は、「自殺労災認定事案の分析」で、これも黒木委員が労災認定事案につ いて検討されたものの中から抜粋したものです。調査されたのは51例です。1は「認定 された事案の精神障害部会診断」で、どのような診断がされたかということです。うつ 病に係るものが圧倒的な割合を占めています。横軸に「44時間以内」とか書いてありま すが、これは1カ月の時間外労働時間がどの程度だったかをまとめたものです。「100 時間以上」が27件で、半分以上を占めています。これは労災として認定されたものです ので、長時間労働も負荷の要素として考慮されるわけで、割合も高まっているわけです が、「100時間以上」が相当な割合を占めているということです。  2頁「業務上の出来事の評価」は、自殺の要因となった仕事上の出来事ということで すが、「ノルマ未達成」といった区分のものが大きな割合を占めています。その他、転 勤や昇格といったことがきっかけとなってということがあるようです。  4頁、6は「発病から死亡までの期間」をまとめたものです。発病から死亡までの期 間が2カ月〜3カ月が約半分、それ以上のものが8割ぐらいを占めています。一定の期 間がありますので、その間に何らかの介入というか、対処ができたのではないかと考え られるわけです。研究等、資料としてご説明申し上げるものは以上です。  資料No.9「過重労働・メンタルヘルス対策に係る検討の視点(案)」ですが、論点 というほどにまだ十分絞り込まれていないということで、このような言葉を使いまし た。前回、検討のポイントということで、このようなことを検討すべきではないかとい う大ざっぱなものを出していましたが、前回のご議論の結果と、私どもでメンタルヘル スの指針や総合対策の中で出ているものを参照し、こういったことが必要ではなかろう かということで、とりあえずまとめたものです。こういうことは必要だ、この他にもっ とこういうところが重要だという形で、ご検討いただく上での足掛かりとしてまとめさ せていただきました。  メンタルヘルス対策については、職場のストレスの把握、、個人による対処、不全者 の早期発見と対処、職場復帰といった辺りがポイントになるのではないか。  (1)職場のストレスの把握という意味では、個人レベルでの対応、また集団という か、職場単位での対応もあるのではないか。(2)個人のストレス対処力を補助すべき ではないか。(3)メンタルヘルス不全の早期発見と対処という意味では、セルフチェ ックや相談・面接体制、あるいは周囲の気づき、管理・監督者に知識を付与するといっ たことがあるのではないか。また、(4)職場復帰と(5)留意事項、という形で書い ております。  3頁、長時間過重労働による健康障害防止については、疲労の蓄積の原因となる負荷 要因の把握と改善、疲労のチェックとその結果に基づく措置、健診とその事後措置の充 実、労働者自身による取組みといったことがあるのではないか。疲労の蓄積のチェック 等については、衛生委員会を活用することも考えられるのではないか。疲労蓄積のチェ ックと対処ということでは、月100時間というのが1つの目安として出ていますが、こ ういったリスクが高まったときのチェックが重要ではないかということです。あるいは 周囲の人間、本人が気づいた場合の対処もあるのではないか。健診の事後措置について は、すでに法例で制度ができていますが、その充実が必要ではないか。労働者自身の取 組みについても、促すことが必要ではないか。  「事業場の体制その他について」は、産業医の役割、小規模事業場での対応といった ことについて、こういったことがあるのではないかということでまとめています。  資料No.10以降は、参考資料としてお配りしています。資料No.10は「仕事のストレス 判定図マニュアル」で、これは前の研究でまとめられたもので、職場のストレスの度合 いを集団的な形で評価する手法としてまとめたものです。調査表を労働者に配付し、採 点を行って、表の中にプロットする形で、どういうところに問題があるかということを 把握していただくというものです。詳細については省略させていただきます。  資料No.11、No.12ですが、これは省内の障害保健福祉部という別の部署で「地域にお けるうつ対策検討会」を設置し、都道府県又は市町村の職員向け、関係機関等で従事す る保健医療従事者の方向けに、このようなマニュアルが策定されています。これも参考 にしていただければと思いお配りいたしました。  資料No.13「自殺予防マニュアル」は、日本医師会のほうでとりまとめられたもので す。一般医療機関におけるうつ病等の早期発見とその対応ということで、精神科医でな い医師の方でも、適切な対応ができるようにという趣旨かと存じますが、そういう方の 手引として作成されたものです。資料の説明は以上です。 ○座長  いまの説明について、ご意見あるいはご質問を受けたいと思います。まず、過重労働 対策について、西村委員、何か追加することはございませんでしょうか。 ○西村委員  2点追加したいと思います。方法論がアンケートですので、ある程度バイヤスがかか っていますが、総合対策は、それなりに現場での対策がとられつつある。さらに、その アウトカムとして結果がどうなるかということを知りたいわけですが、それには時間的 な経過を要するかもしれません。とられた対策と、それによって見えてきた課題をピッ クアップするという目的で実施したもので、それがここにお示ししたような結果です。  やはり、産保センターと専属の産業医と、取組みのレベルが違うという印象を強く持 ちました。事業場の規模に応じたキメ細かな対策が必要かと思っています。 ○座長  いずれにしても、全体として約過半数で教育・総合対策、あるいは衛生委員会の取上 げが進んでいるというデータだと思うのですが、これはきちんと対策を立てれば、そん なに妨げにはならないわけですね。きちんとやれば、もっと効果がある可能性があると いうことでしょうか。2頁の真ん中辺りに「過重労働者の場合平均6.2%」と書いてあ りますが、これは80時間、あるいは100時間以上という意味ですか。 ○西村委員  そうです。 ○座長  両方含めた数ですね。100時間以上のデータではどうでしょうか。 ○西村委員  細かい数字は忘れました。 ○座長  資料No.6について、何かございませんか。 ○黒木委員  資料No.5、3頁の「過重労働に関連した医療機関への紹介」が、38%に経験があっ たということで、この値が出ているのですが、抑うつ・心身症が多いのですが、精神科 医へ紹介されたのが多いのでしょうか。 ○西村委員  医療機関にかかられたかどうかというだけです。おそらく産業医の判断によって、然 るべき所に紹介されたということだと理解しています。 ○東委員  アンケート対象が日本産業衛生学会産業医部会員487名と、保健センターの相談医220 人で、231例の回答があったということですが、属性の中で専属産業医51%とあります が、これぐらいが部会員と考えていいのでしょうか。 ○西村委員  ほとんどそうです。 ○東委員  半数近くは、地域センターの、産業保健センターのほうからの回答なのでしょうか。 ○西村委員  回答率が平均30%ぐらいですので、専属産業医以外の所、産保センターの先生方は半 分はいっていなかったと思います。 ○東委員  産業医部会員の中には、専属産業医以外の者も入っているわけですが、それでも4割 ぐらいの方たちが、地域センターとしてこの回答であれば、私が予想したよりもずっ と、実際にある程度のアクションを起こしていらっしゃるということになりますね。 ○保原委員  資料No.3についてお聞きします。過重労働でストレスを感じる場合に、2つ要因が あると思います。1つはストレスをかける側、企業の働かせ方に問題がある。もう1つ はストレスを感じる側に問題があるということで、それに対応するには医療の面と、同 僚や上司など、いわば人間関係の面、経済的な面、あるいは家庭の問題等があると思い ますが、対策の事例をお調べになったときに、企業で上手にチームワークを作ってやっ ているというような所が、もしあれば教えていただきたいのですが。あるいはこれに書 いてあるのかもしれませんが。 ○主任中央労働衛生専門官  例えば資料No.3の最初のところ、1「体制づくり」ということで書いてありますが、 まず経営者が方針を明確にした、安全衛生委員会の活動が、衛生のほうがあまり力が入 っていなかったということで、メンタルヘルスを加えて審議をするようにした、健康管 理スタッフと人事勤労スタッフとミーティングを行ったなど、こういう形での取組みの 変化があるようです。また、最後の「・」にありますように、安全衛生委員や事業部、 人事勤労担当者からなるメンタルヘルスワーキンググループを編成して対応に当たった というようなことが書かれています。これはこの企業の例ですが、いろいろな取組みが あろうかと思います。 ○保原委員  私が関心を持っているのは、現行法でこういうことをやるのは、一般的に期待できる のか、あるいは何か法的な措置が必要か、ということなのです。個別対応も、月に1回 から2回に増やして保健師による相談も開始したということ、あるいは産業医による相 談受付の機会を1回から2回に増やしたということですが、問題がある人については個 別対応ができている、そのような時間が産業医や保健師にあると考えていいのでしょう か。 ○主任中央労働衛生専門官  そこは、なかなか難しい面もあるかもしれないかと思いますが。 ○座長  産業医をされている先生方は、感じとしてはいかがですか。かなり時間的には難しい のでしょうか。 ○東委員  この資料にあります回答の中で、5番の回答は、おそらく専属とかそれに近いマイン ドを持ってやっている所が主体になっている回数だと思うのです。法定の最低限をこな しているだけでは、多分捕捉していることはないのではないかという実感はあります。 ○座長  それについては、「視点」のところでご議論いただければと思います。資料No.6に 関しては、要するに過重労働者、特にハイリスク者をきちんとフォローしたり治療すれ ばいい、ということが示されているのではないかと思います。 ○大野委員  メンタルヘルスの関係ですが、資料No.5で、過重労働者が持っている問題の結果、 身体的、精神的な問題がどのぐらいの方にあるというデータはあるのでしょうか。つま り、先ほど黒木委員がおっしゃいましたが、抑うつや心身症は他に紹介されているわけ で、産業医の方が持っている力として、例えば身体的な問題は対応できるのだが、こう いうものは外に紹介しなければいけない、という形としてこれを理解するということで よろしいのでしょうか。 ○西村委員  そこまで細かく調べてないのですが、思った以上に抑うつ状態について、現実の産業 医が困っている、直面しているという部分が浮き上がってきたのです。それがどのくら い把握されているのか、どれぐらいがそこで管理できるのか、あるいは紹介、マネージ メントできるかというのは、このアンケートからは調べておりませんので分かりませ ん。 ○座長  資料No.7、No.8が中心になると思うのですが、メンタルヘルス対策に対して、何か ご質問、ご意見はございませんか。黒木委員、この件に関して何か追加することはござ いますか。 ○黒木委員  今回、かなり迫っていたということもあり、基本的には救命センターに入院した患 者、しかも、3日以内の入院ですぐ退院した者は外して3日以上、また精神科へ入院し た者ということで、救命センターと精神科へ入った患者が対象です。労働者と非労働者 では、先ほどご説明がありましたように、かなりの有意差が出たということです。 ○座長  資料No.7に関しては、1つは介入が非常に少ないという印象がありますね。もっと 介入を増やすべきで、それにはやはり産業医の教育が必要ではないかということと、専 門家、精神科の先生方との連携が必要ではないかという感じがいたします。特に、多く の情報を得られる可能性があるのは家庭との連携ではないかという感じがしますから、 4つのケア以外に、家族によるケアを1つ加えてもいいのではないかという感じがしま す。資料No.8は、介入は可能であるということを示しているデータであろうと思うの ですが、何かご意見はありますか。 ○大野委員  資料No.7の2頁の「自殺の動機がある場合」ですが、前回、藤村委員からもご指摘 があったと思うのですが、問題が起きた場合に必ずしも職場だけとは言えないのではな いか。つまり、ここでも労働者の場合、半数近くが家庭の問題を持っているわけで、こ の辺りの重複の度合いや割合は分かるのでしょうか。 ○黒木委員  細かいデータはないのですが、回答された数としては、それほど多い数ではなかった と思います。かなり重複していると思うのですが、その度合いということについては、 確定的なことは言えないと思います。 ○東委員  資料No.8にあるのは認定事例の分析ですので、一定時間以上になっているのは当然 だと思うのですが、いつも疑問に思うのは、いわゆる長時間残業が原因となって、うつ 状態が発症したものなのか、うつ状態等のそういう状態があるから、はかどりが悪くな って長時間残業に入っていって、さらに悪化するということなのか。この因果関係は横 断研究では難しいのですが、いずれにしても防止については時間管理が有効であるとい うことは分かるのですが、これはどちらのほうが本体なのでしょうか。 ○黒木委員  これは事例事例でかなり違います。やはり、うつ病が発症して、それに出来事が加わ って過重労働になっていく、あるいは本人がこなせないためにノルマが達成できないと いう状況が起きてきたのか、あるいは過重労働があって、それからうつが出てきたの か、これは1例1例違います。認定事例は、ほとんどがやはり過重労働との因果関係が あるということで考えていいと思います。その中には、確かに委員がおっしゃったよう に、疾病が発症して、出来事が加わってノルマが達成できないという状況が付いた、と いう事例もかなりあると思います。発症して、その後の増悪因子として、こういった過 重労働なり、いろいろな出来事が関係していると考えてもいいのではないかと思いま す。 ○大野委員  資料No.8の3頁「出来事から発病までの期間」で、7カ月以上もしくは1年以上と いう方が8例あります。指針では、6カ月がある種の目安になっていたと思うのです が、それが7カ月以上でもこれだけ認定されているというのは、何か特徴があるので しょうか。 ○黒木委員  おそらく、この認定事例に関しては、6割か7割ぐらいは医療機関にかかっていな い。発病しているが、例えば一旦勤務に復帰して、増悪因子としてこの過重負荷が関係 したという事例が入っているのだと思うのです。 ○座長  この件に関しては、また後でいろいろご意見をいただきたいと思います。資料No.9 「過重労働・メンタルヘルス対策に係る検討の視点」ですが、これは前回の先生方のご 意見、あるいは事務局意見をまとめたものですが、これについてご議論をお願いしたい と思います。まず、3頁の「過重労働による健康障害防止対策について」についてご意 見をいただければと思います。初めの段の過重労働による健康障害防止対策は強化すべ きではないかということに関してですが、まだ過半数であって、もっと強化できる可能 性は十分あるということが、先ほどの資料で示されていますから、これは皆様賛成いた だけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○保原委員  対策に加わる人間は2種類あると思います。1つは医療関係者で、産業医や保健師で す。もう1つは、医療関係者ではない労働者を取り巻く人たちで、これは管理職や同僚 等いろいろあると思いますが、その組合せをどうするのか。例えば、産業医がいない企 業についてはどうするのか。あるいは、いるとしても嘱託産業医の場合に、そういう機 能は期待できるのかという問題、また保健師というのは、現行法では企業に専任義務は ないわけですが、それでいいかという問題、また、衛生管理者の役割はどうか、そうい う医療関係者の一群と、医療関係者でない人たちの協力を、どのように求めることがで きるか。法律でガチガチ縛らないほうがいいのか、ある程度目安のような形ででも立法 措置があったほうがいいのか、基本的にはそういう問題かと思うのです。長時間労働を 減らすなどという問題は別にありますが。 ○座長  委員のお立場からは、それに関してご意見はございますか。 ○保原委員  産業医の数が限定されていますから、例えば、専属産業医を労働者500人以上にする というのは、なかなか難しいという気はしています。ただ、考え方としては専属だがパ ートでという考え方もあり得ると思います。もう1つは、健康相談などで働いている保 健師の設置を、今は企業で任意にやっているわけですが、それを法的に義務づけるのは 大変だと思いますが、そろそろ何か措置を考える時期かと思っています。もっと大切な のは、医療従事者でない人たちの連携をどう図るかということで、これは法律で決める といっても決めようがないと思いますので、行政としてどういう指導の仕方があり得る か、あるいは、企業が各団体などで、自主的にどういうやり方があるか、難しいことで すが、目安が考えられればいいと思います。私が考えているのはそういうことです。 ○座長  時間の関係が入ってきますから、労務や人事担当者の協力が非常に重要になってくる のではないかと思います。 ○保原委員  企業というのは、働かせるほうにウエートを置きますから。 ○座長  どうぞ。 ○黒木委員  教えていただきたいのですが、一応産業医の規定は1,000人となっていますが、例え ば大企業でも500人ずつバラけている所があります。そういう場合に、全体としては数 万人の従業員がいても、専属の産業医は置かなくてもいいということなのでしょうか。 ○主任中央労働衛生専門官  労働基準法労働安全衛生法は、事業場という単位でとらえていますので、例えば○○ 株式会社としては何千人もいる、しかし例えば北海道支店では100人ということになる と、その100人という単位をとらえて、産業医の専属性は求めることになります。 ○黒木委員  例えば、全体では1,000人以上でも、産業医の規定にはならないということですね。 ○主任中央労働衛生専門官  はい。 ○黒木委員  やはり、企業として見ていく場合に、全体が見えないということが結構あるのではな いかという気がするのですが。 ○主任中央労働衛生専門官  全国展開をしている企業で、小さな規模の店舗を並べているような所では、そういう 問題はあるかとも思います。基本的には、事業場という単位で管理をするという前提と なっていますが、おっしゃるように企業の規模として大きいのであるから、それはそれ として何か考えるべきではないかというご意見はあろうかと思いますが、現行制度で は、そうはなっていないということです。 ○労働衛生課長  若干補足しますと、安全衛生法上は、いまご説明したとおりですが、現実の企業をそ れぞれ見てみますと、例えば全社、産業医のような形で、何かそうしたポジションに産 業医を置いている企業も、必ずしも少なくないという実状になっています。 ○藤村委員  過重労働が健康に非常に悪いというのは明らかなことなのですが、ただそれがどの程 度発病に影響したかどうかというデータはないと思います。例えば、資料No.6を見る と、「原因疾患とその転帰」という表があり、いちばん多いのが脳内出血、次が心筋梗 塞という順になっています。過重労働、時間外労働がどの程度あったかということを検 討する以前に、健康診断が非常に大切になってくる。健康診断でかなりの部分をチェッ クすることができると思うのです。つまり、過重労働をどの程度重視するか、健康診断 をどこまで重視するかということになってきます。脳・心臓疾患をなるべく防ごうとす れば、もう少し詳しい健康診断をしたほうが、効果は上がると思います。  例えば、この中にくも膜下出血、解離性大動脈瘤などの例がありますが、これは当 然、血管奇形が前にあるわけです。そこまで調べるとなると脳あるいは大動脈のMRI などをチェックしなければならないということになってきます。しかし、一般健康診断 でも、例えば血球増多症など、その程度のものはチェックできますし、高血圧・高脂血 症はきちんとできますので、過重労働に先立って重視すべきは健康診断だと思います。 ○座長  それに関して、ご専門の西村委員、馬杉委員、何かご意見はございますでしょうか。 ○馬杉委員  おっしゃるとおりですが、ただ健康診断はこのごろでは、きちんとした事業場ではき ちんとやられているので、どっちが先ということは、両々相俟ってやればよろしいと思 います。ただ、視点を変えて考えてみると、私は、横浜市港北区の医師会で産業医部会 をやっていますが、地域産業保健センターは、地域でそんなに活動していないと思うの です。こういう議論は、大企業では非常に通りがいいですが、私の周りは中小企業が非 常に多いのですが、末端にいくと、こういうディスカッションをしていても、うすら寒 いような気がしてならないのです。いまのお答えは、健康診断と両々相俟ってやるべき であって、どっちが大事ということはないと思います。最近では、中小の所でも健康診 断は結構やっていると思っています。くも膜下出血などは、本当に調べようとすれば脳 ドックということになると思うのですが、そこまで一般的にはやらなくてもよろしいの ではないかと思います。 ○西村委員  いまの我々のアプローチでは、脳・心臓疾患のピンポイントのリスクの予想はできま せん。2割ぐらいのハイリスク群を同定して、その人たちに有効な社会資源を投入して 効果を上げる、というやり方がいちばん良いのではないかと思っています。そのとき に、やはり高血圧・高脂血症という人たちは、明らかにハイリスク群ですから、その人 たちをどうするかという議論をするほうが効果が大きいと思います。 ○座長  健康診断ではハイリスク者をきちんと同定する。時間関係でも同定して、両方でやっ ていくことが合理的ということですね。 ○東委員  過重労働の課題も、比較的最近導入され始めたマネージメント・システムにのってき やすい部分でもあると思うのです。基本的には、和田先生がまとめられたような基礎事 実に基づいて、こういう過重時間労働があった場合については、措置をとりなさい、も しくは制限しなさいということについて、安衛法が予防的に組んでいる精神に則って、 そういう外形内基準で規制をある程度かけてもいいのではないか。次の段階は、基本的 に働く人たちにそれぞれの意思もありますし、事業主の意思もありますし、現実に生産 の中で生きていく必要性もあるわけですから、適応性を高めるために自主的に改善をし ていくという、そういう指針の体制ですね。しかし、その中でもどうしても対応できな い、負担として自分が健康の状況に対して影響を及ぼしてしまった人間については、リ スクグループとして、面接指導を行っていくような産業医、もしくは保健スタッフの介 入、そういうレベルに入っていく。この論点にも書いてありますが、大体その流れに乗 っていくと思うのです。  健康診断は有力な、一方では健康・保健のほうの指標でもありますが、中小企業など の場合については、どのくらいの時間働いているかという背景状況を把握するチャンス は他にないかもしれませんので、1つのチャンスとして、有効な手段として活きている と思うのです。これも段階としては、リスクの高いグループをどう把握していくかとい う手段の1つだという気がいたします。大事なのは、高いリスクを負ってしまった、影 響があった人間に対して、どう介入していくかというところ、それを予防的な法規の中 で捉えていくのかどうかということだと思うのです。そして、それを誰がするのか。外 形的な基準として、時間の制限をするのは事業主の問題かもしれませんが、個としてそ の方たちに対して適正配置などについて介入していくのは、おそらく産業・保健等の医 療職に特化された仕事だと思います。 ○安福委員  介入する集団を選択する話はいろいろ出ていますが、過重労働というのは、時間因子 と病的な因子があると思うのです。病的因子、質の問題が見えるのは、産業医、あるい は保健職、医療職しかないわけです。そういう情報は誰のところに集まっていくか。会 社の組織で言えば人事・労務だろうと思うのですが、そういう人との連携がどうできる か。そういう意味で、報告義務云々よりも、誰のところに情報が集まっているかとい う、もうちょっと現実的な選択を入口で作らないと、産業医の問題、規模の大きい小さ いの問題も含めて、現実的仕組みにならないのではないかという気がしているのです が。 ○座長  やはり、産業医のところに情報が集まるのが、いちばんいいのでしょうか。 ○安福委員  産業医のところに情報を集めるのは誰なのかということですね。 ○座長  衛生委員会とかそういうのを活用してやることは不可能でしょうか。 ○安福委員  衛生委員会に情報が集まるでしょうか。 ○座長  そこに人事・労務の方の関与を求めてですね。 ○安福委員  衛生委員会というのは、労使が集まって、労働環境をどう改善するかということをや る場であるわけで、就労の問題を議論するのは、会社のそういう情報を持った人と、例 えば産業医とのやりとりになるのではないか、ちょっと衛生委員会とは質が違うような 気がします。 ○座長  確かに労務・人事との連携ということで、かなり進めている所があるとは聞いていま すが、ただ時間がかかると言うのです。早く情報がもらえない、1カ月後、2カ月後に 情報が入ってくるので非常に困るということを言っています。それをもうちょっと迅速 化して、産業医辺りに早く情報が入って、すぐ対策が立てられるというシステムができ れば非常にいいのではないかと思うのですが。 ○安福委員  もう1点、規模が大きな所と、産業医の専任義務がない所との問題ですが、やはり社 員の数と産業医が対応できる数を考えた場合、物理的な問題を取り上げれば、そこに何 かの選択肢を設けないといけないのではないか。産業医から指示を受けて、こういう人 がいたら産業医に回してくださいということをやる、そういうところに誰が絡んでいく かという仕組みを持たないと。むしろ規模の小さな所では、産保センターなどに直接相 談に行くということでも対応できる。そういう意味で、現実的な選択がもう少しあって もいい。大きな企業で産業医がいるから機能できているかというと、必ずしもそうは思 えないような気がします。 ○座長  全体としては、産業医、産業保健スタッフの労力の増加は免れない感じがするわけで すね。それを今の法律的な中でやっていこうとすると、外的な援助を求めないとできな いという感じですか。 ○安福委員  その意味での体制を、もう一度きちんと考えたほうがいいという気がします。 ○西村委員  アンケートの結果では、衛生委員会に対する期待が、産業医の方には結構多い。新し く今度対策が出てから、中身が変わってきて、そこで議論できるようになってきたとい う。労務の方、人事の方、保健師もいるということで、そこで議論をする機会が増えた という声が、フリーハンドで書いてありました。 ○座長  そこで、基本的な対策をきちんと立てていくということでしょうね。 ○西村委員  そこで衛生委員会が、どういう役割をするかが重要ではないかと思います。 ○座長  時間の関係上、次にメンタルヘルス対策について、ご意見を伺いたいと思います。1 頁からですが、これに関してはいかがでしょうか。対策を強化したほうがいいというこ とは、ご賛成いただけるのではないかと思うのですが、具体的にどのようにしていくか ということです。 ○黒木委員  労災認定事例の分析の中で、やはり労働者が医療機関にかかっていないで自殺をして いるということは、非常に大きな問題ですし、なおかつ会社があまり気がついていな い。本人は非常に頑張って、もう疲弊消耗しているが、仕事は何とかやれているし会社 に出て来ている。しかし、家族から見ると、夜も寝ないで仕事をしているとか、あるい は病状らしきものに家族は気がついているという状況が見受けられるのです。その辺の 対策を今後検討する必要があるでしょうし、また長時間残業、100時間以上の残業とそ れ以外の残業との比較をしてみると、やはり100時間以上の残業をされた方というのは 発病してから3カ月以内にかなりのパーセンテージの人が亡くなってしまう。それも、 助けを求めないで亡くなってしまうという点が大きな問題だろうと思います。そこに介 入できないかと思います。 ○座長  過重労働に戻ります。過重労働による最近の睡眠時間と脳・心臓疾患の発生を見る と、大体睡眠時間は5時間未満というデータがいくつか出てきています。最近の疫学調 査だと1日の睡眠は大体5時間未満、すなわち月の残業が100時間以上という点をかな り重視しているわけです。そのようなデータが出てくるものですから、100時間という のはきちんと守ってもらわないと困る数字ではないかと考えてはいます。 ○大野委員  また事例などで出てくるのかもしれないのですが、ケアをしていくときに例えばセル フケアがあって、ラインによるケアがあって、産業保健スタッフによるケアがある。そ の中間的なものが何かあってもいいのかなと思います。つまりラインで見切れない、で も産業保健まで行かないという、相談室的なものが存在する。そこに例えば先ほどの過 重労働にしても、精神的に悩みがある場合でも相談できるようなシステムも1つあり得 るのかなと思います。 ○座長  早期発見というか、早く相談してもらうのがいちばん基本的かと思います。それに対 して専門的な対応をしてもらう。そのようなところがポイントではないかと思います。 先ほどちょっと出ましたが、家庭・家族による情報提供というのは非常に重要になって くるのではないかと思います。その辺についていかがでしょうか。 ○東委員  過重労働の外的なものと違い、こちらについては負担系を見ていきますので、あれば 気づきになるわけです。しかもリアルタイムに気づいていかなければ、健康診断のたび ではとても間に合わない。それをどうやって、地域でも出来ることを前提として実現す るかというのは大変大きな課題です。  大きな企業の場合については、ある程度そのような相談ができる形、駆け込み寺を設 けてやっていると思います。やはり、中小の場合を含めて地域保健センター、もしくは 地域の中の健診センターでもかまいません、こうした機関を外に置く以外になく、中で はまた難しい点が大きいと思います。隘路の中に入るかどうかというのは難しい部分も あるかもしれませんが、そうしたものに対してアクセスすることを進める、もしくは義 務づける方法ができないかと考えています。  気づきの段階でいちばん怖いのは、いわゆる第三者にとってある種の利益を生むこと で、ある意味の処遇の差を生じさせることもあるので、この部分については非常に難し いけれども交通整理が必要かなと考えます。何かアイデアはないものかと思います。特 に小さな企業の場合ほど、そのような事例があった場合大変難しいと思っています。  例えば似たものとして、健康診断のとき、大手企業の場合には自主的にどんどん進め ていけると思いますので、例えばメンタルヘルススクリーニングテストのようなものを 行う。疲労度、負担度でもいい、カラースティックでも何でもいいのですが、そういう ものを使ってやっていく。もしくは、生化学検査を実施することがあるかもしれませ ん。これも取りようによっては、それをもってある種の適性配置という名目のもと、不 利益が生じることはありうる。そこで誰が使うのかという責任の問題を明確にしておか ないと、大変危険な道具になってしまう可能性もある。特に広く実施する場合には難し い問題があると思います。 ○黒木委員  確かに、どういう形で、例えば健康相談室、あるいは精神保健相談室に入るかという ことは非常に難しいと思います。某企業だったと思うのですが、例えば異動、自分たち の仕事が合わないといった点、人事、総務の相談から、これはメンタルではないかとい うことで健康管理室に入ってくるケースもあります。本人がどの程度気づいているかと いうのは、この認定事例を見ると、意外と本人は一生懸命やっているので、例えばうつ 状態にいることすらもあまりわかっていない、ということもあるのではないかという気 がします。そのうちにうつが発症して、状況がどんどん悪い方向に行って、希死念慮が 早いうちに出てくる。いわゆる、会社に行けないという状況を通り越して自殺が起こっ ているのではないかという気がします。 ○座長  前段階については、本人は気がつかなくても、第三者から見れば判断できる可能性は あるわけですか。 ○黒木委員  その辺はわかりません。しかし、本人にしてみれば仕事が第一前提にあるので、かな りそれに一生懸命になっています。 ○中嶋委員  まず、資料3について高橋専門官にお伺いします。メンタルヘルス対策の事例とし て、「業種」は製造業ですが、「規模」というのは先ほどご指摘のように事業場500人 という意味ですか。全従業員数ではなくて事業場500人、次も事業場1,100人ということ ですか。 ○主任中央労働衛生専門官  はい。その意味では規模の大きいところです。 ○中嶋委員  先ほど馬杉先生がおっしゃったように、つまりある点を出してきて「こういう事例が あります」と言われても困ってしまう。私もないところを探してきて出すのは難しい、 ということはよくわかるのですが、メンタルヘルスワーキンググループなどというのは 安全衛生委員、事業部代表、人事勤労担当者からなる機関がある。これは多分産業医と のつながりを作る、先ほどの中間的な連結、仲介をする機関だと思います。これはよほ どしっかりした大きな企業でないと、日本は98%ぐらい中小企業ですが、これをどのよ うにしていくかというのはいつも考えています。ただ、行政の資料というのは大体大企 業の良いところが出てくるという印象を受けます。  第2は資料7について、黒木委員に初歩的ですがご質問します。3頁、9「精神科診 断」の労働者側、「気分障害」というのはどういうものなのでしょうか。 ○黒木委員  これは大学病院、救命センターがあるところと精神科に調査をし、主治医が事例に対 して回答し、出てきた内容を集計したものです。やはり、ほとんどはうつ病見だと思い ます。 ○中嶋委員  気分障害とうつ病エピソードというのは、大体引っくるめて考えたほうがいいのでし ょうか。 ○黒木委員  気分障害の中にいわゆる持続性気分障害とか、軽度のものも入っています。従来の抑 うつ神経症と言われるものも入っていますので、うつ病エピソードと若干違うところも あるのですが、大きく括ると気分障害ということになります。多少、大きな枠の中では 気分障害、その中にうつ病エピソードなどいろいろなものが入っていると考えればいい と思います。 ○中嶋委員  私どもは法律ですが、素人が認識していたのは神経障害とうつ病がいちばん大きいと いうように認識していたのですが、そのようなことでよろしいですか。 ○黒木委員  はい。多分うつ病が多いと思います。中には双極性障害もあるかもしれません。 ○中嶋委員  それから黒木委員の研究の2頁、先ほど座長もおっしゃいましたように、自殺の動機 が家庭問題と職場問題がほぼ同率を占めるということで驚いていました。裁判所などで 遺族が訴えて争われた場合は、もちろん仕事を中心に見ますけれども、家族がどのよう に対応したかというものによって、家族の対応が足りなかった場合は家族側の落ち度と して、損害賠償の額を減らすという手法を取っている裁判所がいくつかあります。そう いう意味では、うつ病による自殺については例えば家庭も、奥さんも無関係とは言えな い。事後的にはそうなるのですが、行政として、予め、家庭問題のことを想定して対策 を立てていくというのは、やはり相当困難なのでしょうか。 ○主任中央労働衛生専門官  安全衛生行政ということですので、そのようなものを入れるというのは、おそらく難 しい話にはなると思います。ただ、私的な見解ですが、相談体制、あるいは個人に対す るセルフケアのための教育というものをする中で、家庭問題であっても、職場の問題と 同じようにストレスの対処ができたり、あるいはちょっと乱暴かもしれませんが、職場 に行って家庭の問題について専門の方に相談する中で、職場の問題ではないのですが、 解決の方向が見えてくるということはあり得るのかなと思います。  前回、安福委員から、昔は経済問題や家庭問題も含めて職場のベテランの人が対応で きるような体制も以前はあったとお話しておられました。安衛法とはちょっと離れるの だろうと思いますが、そういうことはあるのかなと思います。 ○中嶋委員  広く企業の法律顧問をなさっている弁護士にお聞きしたのですが、家族も気がついて いるのでしょうが、職場が変だなと思って奥さんに相談しようとすると、本人は非常に 嫌がる。むしろ、そちらの事例のほうが多いのだそうです。「女房には関係のないこと 」というようなことを言う、日本の労働者というのは頑張り屋なのです。会社にはもち ろん、妻にも悟られたくないという人が多いという話を聞くと、なかなか難しいなとい う感じがします。しかし、どうすればいいのかというのはわかりません。以上です。 ○大野委員  これは誰が担当するか、ということによっても違うと思います。つまり、いまのよう な過労死、過労自殺の裁判例とは別に、現場で診療をする場合があります。やはり、産 業医や職場の関係者だと企業のことが中心になると思います。ただ、例えば私たち精神 科医としてお話を伺ったり、治療をしたりする場合には、いろいろな面からお話を伺う わけです。ですから企業も目配りもしますし、ご家庭のお話も伺う。  例えば企業内診療所で診療をしている場合でも、必要があったらご家族に来ていただ くということをします。その上で病気についてご理解いただいたり、協力をしていただ く。ですから、診療の面ということになると、またちょっと違ってくるように思いま す。そのような人材をどのように活用していくか、という指針を出すことは可能だろう と思います。 ○座長  ただ、一般の産業医にとって専門的な指導は非常に難しいのではないかと思います。 これだけの能力が普通の産業医にあるかというと、ないものですから、ついついおざな りにしてしまう面があるのではないかと思います。いずれにしても、専門の精神科医の 協力というのは不可欠だと思います。この場合、例えば産業精神科医という資格を作っ て、是非関与を深めていただきたい、と思うのですがどうでしょうか。 ○東委員  どちらからのアプローチ、精神科医からでも、産業医の側からでもかまわないと思い ます。それは別として、私どもの大学の高次教育の中においてもメンタルヘルス系の教 育は必須になっていますし、そのウエイトも高くなっています。どこまで専門性がある かどうかについての疑問はあるかもしれませんが、そちらにだいぶシフトしてきている のは事実だと思います。  いま、そちらのセーフティネットに近くなっているのですが、1つこの中で発言しま す。メンタルヘルスでも過重でもないと思うのですが、先ほどの気づく問題、入口の問 題ですが、個人の段階で「これは自分がおかしい」という気づきを自分ですること、現 実にどうしたらいいのかという方法を知っておくことがあります。これは特定業務では ないかもしれませんが、一般に就業したときに、いわゆる労働安全衛生教育というもの をかなり積極的に、いかなる業種においても進めていく対策が必要かもしれません。そ れから、社会保険労務士が努力しているのは就業規則、どうしても小さな企業ですが、 就業規則の中にもそのようなものの折込み方が必要なのかなという気がします。そのこ とがないと、つかまった人たちはいいけれども、つかまる前の人たちはどうするのかと いうことにならないかなと思います。 ○座長  教育ということですね。 ○東委員  はい。視点の中で言うと、2頁の(2)と(3)のアの部分は大事なところかなと思 います。 ○座長  ただ単に労働者本人だけではなくて、家族の教育も非常に重要ではないかと思いま す。 ○東委員  家族がいる場合はそうです。そのようなことができるという仕組みです。 ○大野委員  自殺者に関して言えばやはり繰返しが必要だと思います。1回講座をやって終わりで はなく、例えばポスターを貼るとか、いろいろな形の繰返しの情報提供ができる必要が あると思います。 ○座長  ほかに何かご意見はありますか。 ○藤村委員  自殺者の約半数が1カ月以内に、一般の医療機関を受診しているということがありま した。各種の身体症状を訴えて受診している。そのとき、例えば医療機関受診のために 欠勤した人たちに、診断書の提出を義務づけているのかどうか不明ですが、診断書の発 行を要請して来院する患者がおります。その診断書が提出されたときに産業医に直結す るかどうか。つまり、産業医に情報が伝わっていくのかどうか。診断書はどこで処理さ れるかという問題があると思います。そのようなことは非常に大切だと思います。診断 書をなるべく出すようにしたほうが情報としては価値があるように思いますが、うつ状 態、うつ病など守秘義務の点で難しい問題があると思います。 ○座長  正しい診断書が出るかということがあると思います。プライバシーの問題もあります から。 ○藤村委員  非常に難しい問題だと思います。 ○安福委員  いまの問題で申し上げますと、企業などでよく話に出るのは、いわゆる個人に与えら れる有給休暇の問題との兼ね合いがあります。そういったものを意外と会社に知られた くないので、自分の休暇を使って行かれる方がたくさんいる。そういうものを逆に言う と診断書を出せ、という、まさにプライバシーの侵害になってしまう。  最近は診断書を出すことを義務づけている企業は相当減ってきていると聞いていま す。やはり自分に与えられたものを使って、自分の生活および健康管理を含めて上手に 自分の生活をコントロールしている。そういったものをなぜ会社に出さなければいけな いのか、という話はよく議論になっています。 ○黒木委員  「これぐらいの期間、休まなければいけない」という診断書の場合には提出しなけれ ばいけないということですか。 ○安福委員  そこは会社の論として休職期間に入ります。いわゆる、給与との兼ね合いの期間に入 るタイミングではそこの手続をしておられますが、通常であれば。 ○黒木委員  企業によってかなり違うのではないのですか。 ○安福委員  労働基準法の範疇である枠は決まっています。ただ、そうは言っても、企業の場合は 相当有給休暇の持越しができるなど、いろいろな仕組みを持っている企業が増えていま す。その間で対応できている企業が相当あると思っています。 ○座長  まだまだ伺うことがあると思いますが、時間の都合がありますので本日の議論はこれ で終わらせていただきたいと思います。もちろん、今日の議論をまた事務局にまとめて いただき、それを叩き台にしてまた議論をいただくことになると思います。次にヒアリ ングに移りますが、その前に次回の日程について事務局からお願いします。 ○主任中央労働衛生専門官  6月21日(月)夕刻から予定したいと思っております。次回は3名の方にヒアリング をお願いしておりますので、次回はヒアリングだけを実施するという形で進めたいと思 っています。そのため、非公開で進めたいと思っています。 ○座長  お話のように次回はヒアリングだけをしたいということで、非公開としたいと思いま す。準備の都合上、少し休憩したいと思います。11時半からヒアリングを始めたいと思 います。よろしくお願いします。