04/05/26 労働におけるCSRのあり方に関する研究会第4回議事録         第4回 労働におけるCSRのあり方に関する研究会                        日時 平成16年5月26日(水)                           10:00〜12:00                        場所 厚生労働省共用第8会議室 議題 ・ヒアリング(日本経済団体連合会) ・論点について 出席者   委員    足達 英一郎 日本総合研究所創発戦略センター           上席主任研究員    阿部 正浩  獨協大学経済学部助教授    安生 徹   経済同友会常務理事    佐藤 博樹  東京大学社会科学研究所教授    谷本 寛治  一橋大学大学院商学研究科教授  ヒアリング    中村 典夫  日本経済団体連合会社会本部長    讃井 暢子  日本経済団体連合会国際労働政策本部長   厚生労働省    青木政策統括官    草野労働政策担当参事官    及川労働基準局監督課長    中沖労働基準局安全衛生部計画課長    勝田職業安定局雇用政策課長    妹尾職業能力開発局総務課長    石井雇用均等・児童家庭局均等政策課長    堀江労働政策担当参事官室政策企画官    千葉労働政策担当参事官室室長補佐    川野環境省総合環境政策局環境経済課課長補佐    矢野経済産業省産業技術環境局標準課課長補佐 ○谷本座長  ただいまから、第4回労働におけるCSRのあり方に関する検討会を開催いたしま す。本日は、最初に使用者側を代表する団体からヒアリングを実施いたします。前回第 3回はヒアリングということで予定しておりましたけれども、スケジュールの関係上本 日お願いいたします。その後、研究会での論点について事務局にまとめていただきまし たので、それを説明していただき、皆様にご議論いただければと思います。本日は、小 畑委員は欠席です。  それでは、使用者を代表する団体として、日本経済団体連合会社会本部長の中村典夫 様、国際労働政策本部長の讃井暢子様においでいただいておりますのでお話をいただき ます。 ○中村社会本部長(日本経済団体連合会)  資料に沿ってご説明させていただきます。私どもが、CSRをどう受け止めているか でありますが、率直に言いまして最近のCSRに関する報道等を見ると、内容が曖昧な ままにブームになって独り歩きしています。そういう面で、いささか危惧をしている状 況にあります。  日本規格協会が、2月にCSRワーキンググループの中間報告を出しましたが、その 中においてもCSRについては国際的な定義はないと言っております。そういう定義、 内容を明確にしないままに、CSRを水戸黄門の印籠ではありませんけれどもそのよう に扱って、企業に対して何か要求をされると大変困るというのが率直なところです。  資料をめくると、「CBCC対話ミッションの概要」があります。アメリカ、ヨーロ ッパにおけるCSRの現状を、実際に自らの目で確かめて議論してくるべきだというこ とで、昨年12月にこのミッションを派遣しました。そのミッションの結論として、アメ リカについていえることですが、エンロンの事件などがありましたが、コンプライアン スがベースになっていて、それについては法律で手当てをしている。それを超えるCS R、企業が社会の発展に貢献していくという面は、その企業が独自に考えてその結果を 公表し、ステークホルダー、あるいは市場の評価を得ればいいのだという考え方なわけ です。そういう意味で、アメリカでは企業があくまで自主的に活動をする状況にありま す。  ヨーロッパについては、企業も積極的でありますけれども、行政主導です。これには いくつかの背景があり、ヨーロッパにおいてはNGOをはじめとするステークホルダー の圧力が強く、そういったステークホルダーからのプレッシャーによって行政が動いて いるということです。  2点目は、EUが拡大して、経済統合から社会的な統合を目指す中で、行政が企業の レベルを揃えるといいますか、引き上げるためにCSRをツールとして使おうとしてい るということがあります。これについては、欧州委員会の担当者からも、EUの中小企 業の8割は法律違反をしているという調査もある。したがって、そのレベルを引き上げ ることは切実な課題なのだという説明がありました。そのことと日本の中小企業の状況 は、同一には議論できないのだろうと思います。  特に、ヨーロッパで主張されていた点は、グローバル企業がインドや中国に進出して きている。それら企業が現地で問題を起こさないように、現地が国際ルールに沿ったよ うな取組みをするようにということで、CSRの考え方を徹底させていくのだと言って いました。  雇用・労働関係については、アメリカもヨーロッパも共通しておりますけれども、特 にそれらの地域では流動性が高いということで、その企業がCSRに積極的に取り組ん でいるかどうか、特に優秀な人材ほど敏感である、したがって優秀な人材を引き止めて おくためには、企業としても積極的に取り組まなければいけないということを、異口同 音に語っておりました。  アメリカとヨーロッパに共通した2点目として、いずれの企業もCSR報告書を出し ています。GRIの基準に基づいて、女性の管理職率や役員の出身地域別の比率といっ たものを掲載しているのが一般的です。ただし、GRIについては、完全に準拠してい る企業もあるけれども、モトローラなどでは、参考にはするけれども準拠はしないとい うスタンスをとっています。したがって、レポーティングの基準自身も企業が独自に判 断するのだ、という考え方が特にアメリカでは強いと思います。アメリカとヨーロッパ を回って、そういう印象を受けました。  これは、私どもの調査だけではなくて、CBCCのミッションの報告書の次に、2月 に欧州委員会のカンタン・雇用・社会問題総局長が来日したときの、経団連でのスピー チの議事録があります。そこで書かれていることは、3段目の真ん中辺りに、「CSR の推進が、社会の継続的発展や環境保全などに極めて重要な役割を果たす。欧州委員会 でCSRの枠組みづくりに取り組んでいるし、さらに外交、通商を進めるに当たって も、それらの政策にCSRを盛り込んでいく動きがある」とあります。  特に労働に関しては、横に線を引いておきましたが、「欧州の企業がCSRを果たす 行動を取ることが、児童などに劣悪な条件の労働を強いている他の地域の政府や企業に 対する警告のシグナルになる」と言っています。あとは、中小企業の問題等に触れてお ります。  こうした海外の状況を踏まえ、経団連では2月に、企業の社会的責任、CSR推進に 当たっての基本的考え方を発表いたしました。論点が3点あり、1番目は企業の社会的 責任については、日本の企業もこれまでも取り組んできており、今後も新たな意味合い のCSRについても積極的に取り組んでいくのだということです。  2番目は、先ほどのCBCCの調査などを踏まえ、社会的責任に配慮した経営、さら にその情報発信、コミュニケーション手法等は企業の自主性・主体性が最大限に発揮さ れる分野である。したがって、民間の自主的、多種多様な取組みによって進められるべ きものである。よって、CSRの規格化や法制化には反対するということを表明しまし た。  3番目は、そうした企業の自主的な取組みを推進するために、経団連においては1991 年に企業行動憲章を作っております。その憲章をCSRの視点から見直すことを表明し ました。  2枚めくりますと、今月18日に発表した企業行動憲章の改定版です。表紙の次に「序 文」があります。これまで、この序文はなかったのですが、憲章は十カ条の簡単なもの ですので、そこでCSRについて述べることは難しいということで、新たにCSRをど う受け止めているかということで序文を加えました。第2段落にありますが、「グロー バル化の進展に伴い、児童労働・強制労働を含む人権問題や貧困問題などに対して世界 的に関心が高まっており、企業に対しても一層の取組みが期待されている」ということ です。さらに、情報化社会への対応、少子高齢化に伴う多様な働き手の確保といった新 たな課題も生まれており、企業としてはこうした変化を先取りして、ステークホルダー との対話を重ねつつ社会的責任を果たすことによって、社会における存在意義を高めて いくのだ、ということを表明しました。  第3パラグラフにおいては、こうした面で日本企業も労使協調をはじめ、地域社会へ の貢献、社会貢献活動、環境保全への取組みといった面でこれまでも努力してきてい る。今後は、さらに法令遵守、コンプライアンスが基本であることを再認識した上で、 これまで以上に幅広い分野において自主的取組みを進めていくのだ、そのために企業行 動憲章を改定することを表明しています。  次頁は憲章本体ですが、今回の修正部には下線を引いてあります。前文の3行目で、 関係法令、国際ルールの前に「人権を尊重し」と加えております。これは、法律を守る 前に、人権尊重ということがあるだろうということで入れました。その次の行で、「持 続可能な社会の創造に向けて、企業も自主的に行動していくのだ」ということを表明し ました。  第4条のところで従業員の問題がありますが、これは従来第6条にあったものを、従 業員の問題はCSRの視点から重要だということで、株主の次の第4条に場所を上げま した。さらに、従業員の「多様性」を尊重するということを加えております。  9のところで、CSRに関してサプライチェーン・マネジメントということが言われ ておりますので、社内への徹底だけではなく、今後はグループ企業や取引先にも周知さ せていくのだということを加えました。  次の頁からは、「実行の手引きの要点」があります。これまで憲章は、憲章本体と、 60頁ぐらいの実行の手引きの2部構成になっていました。特に、海外などで憲章を説明 する際に、それではわかりにくいという批判があり、今回からは憲章にプラスして実行 の手引きの要点を付けて説明していこうではないかということでこれを作っておりま す。なお、手引き本体も、6月22日の理事会の後に発表する予定です。  ここでは、企業がそれぞれの条文に対して、どういうことをやっていくかを示してい ます。次の頁の4「従業員」のところでは、4−1として「多様な人材が個々の能力を 十分に発揮できる人事処遇制度を構築する」、4−2として「差別を行わず、機会の均 等を図る」、4−5として「従業員と直接あるいは従業員の代表と誠実に対話、協議す る」、4−6として「児童労働、強制労働は認めない」と言っています。  特に、4−6で「認めない」というのは、自社だけではなくて、海外に出ている現地 法人、あるいはその取引先に対しても、こういうことは行わせないのだということで 「認めない」という言葉を使っています。経団連としては、今後この憲章を会員の間に 徹底させるということです。  以上、いろいろご説明させていただきましたが、私どもとしては、CSRについては 企業の自主的な活動に任せていただきたいということです。これは、経団連だけではな くて、経済同友会も取り組んでおられますし、大企業だけではなくて、今後は商工会議 所も交じえ、経済界挙げて取り組んでいきたいと思っております。最近、政府でもいく つかの省庁でCSRという切り口から懇談会や研究会を設けているわけですが、経済界 としては、いろいろな省庁から違った切り口で要求されるというのは、正直言ってあま り好ましくないと考えておりますので、ご配慮をお願いできればと思います。私からは 以上です。 ○讃井国際労働政策本部長(日本経済団体連合会)  時間もないようですので、労働というところで簡単に付け加えさせていただきます。 基本的に日本の企業というのは、もともと社会の公器であるという発想があったわけで す。従来から、経済と社会のバランスをとった経営を心がける、というのがDNAのよ うになっているのだと思うのです。  ただし、それをCSRという名前では呼んでこなかったわけです。現代の局面に合わ せてそれをフィットさせていく必要があろうかと思います。特に労働の分野において は、人間尊重の経営、人を大切にする経営というのが日本的な経営の根幹にありまし た。ただ、人間尊重というのがどのような形をとれば、みんなが幸せになれるのかにつ いては、時代によっていろいろ変わってくることがあると思います。そういう意味で経 済社会の変化に適切に対応していかなければいけない。  1つはいまご説明いたしましたように、少子高齢化ということがありますので、優秀 な人材をどうやって集め、どうやってそれを維持していくか。労働市場の流動性も高ま ってまいりましたので、1回入ればずっと企業にいてくれるということもなくなりまし た。どうやって離転移していくかということが大きな課題になっています。  また、グローバル化ということがあり、海外事業やサプライチェーンのことを考えな ければいけない。もとより児童労働や強制労働ということを日本の企業がやっているわ けではないわけですが、そういうことが問題になっていて、例えばGRIなどで、そん な項目に答えてくださいと言われたときに、初めてこれは何だと気がつくわけです。そ ういった発想が必要になってきているのかと思います。  さらに、働く人の価値観の多様化ということもあり、その多様な価値観にどうやって 答えていったらいいかということがあります。マスで従業員を考えるということではな く、個別のニーズや期待といったことにきめ細かく対応していく多様な選択肢を提供し ていくことが、いまの従業員との関係では問題になっているのかと思います。働きがい や仕事満足度が、法令を超えた括りの基準になってくるかと思いますが、その辺につい ては非常に多様なアプローチがあります。1つのことで、すべての人が満足するわけで はありませんから、それは企業が従業員とのコミュニケーションの中で、どういうもの が重視されているのかを考えて対応していく必要があるのではないかと思います。  繰り返しになりますけれども、CSRというのは非常に幅広い分野です。企業の活動 そのものが、それぞれのステークホルダーにどういう影響を与え、またその期待にどう やって応えていくのか大変幅広い問題だと思います。それを個別に取り上げて扱ってい くことは難しいと思いますし、企業によって、業種によって、どこに重点を置くかとい うことも変わってくるかと思います。政府で、この問題についていろいろ考えていただ くときには、省庁間の連携をとっていただき、政府として企業の取組みをどうやって支 援するかという形で考えていただいたらありがたいと思います。以上です。 ○谷本座長  どうも、ありがとうございました。最初に私から、中村様が最後に、細かい説明の後 に2つほど触れられましたし、いま讃井様も触れられましたが、1つは自主的なものな のだという理解の仕方と、会員に徹底させるのですよ、という話がありました。それ と、省庁に跨がる問題の話がありました。  最初の自主的ということに関してはいろいろ議論があって、経団連の企業行動憲章 は、ご承知のとおりこれまで不祥事があると出ていって、不祥事が頻発すると改定し て、今回はCSRブームだというのでCSRで色付けをされた。会員に徹底するという のは、具体的にどうするのかという話なのです。自主的なものなのだというのは、我々 もみんなそうだと理解して、CSRという法律を作ろうなどということは、ここの委員 の皆さんが考えているわけではなく、何らかの枠組みなり支援の方策はないのだろうか ということを議論しているわけです。  当然自主的なのだけれども、これまでの10年間、もっと長くいえば20年、30年と不祥 事は連綿としてあったわけですが、そういうことについて自主的にやることをどう徹底 させるのかについて何らかのものがないと、ただ書いて、皆さんお守りくださいという だけではなかなか厳しい状況が国内外にあるのではないかということです。  省庁間の連携については、今回の論点の中のいちばん最後に我々も考えております。 労働におけるCSRという中身についての細かいところについては、我々でまた考えて いかなければいけないのですが、そういったものをどう進めていくかということになる と、厚生労働省だけで済む問題ではない部分がいろいろ出てきます。ただ、この委員会 の中でどこまで議論するかというのは、これから考えていかなければいけないことだと 思います。実際問題として、経済産業省、環境省、中小企業庁、金融庁の多様な領域で かかわってきます。その辺りのことを論点として出しています。いろいろな切り口で言 われた緩和というのは当然あることだと思います。  最初に、会員に徹底させるというところは、どのように議論されたかをお話いただけ ますか。 ○中村社会本部長  いま、谷本座長からお話がありましたように、企業行動憲章というのは、そもそもは 企業の不祥事が発端でできたものです。当初の不祥事というのは総会屋をはじめとす る、反社会的勢力との癒着という形で始まりました。最近もポツポツありますけれど も、この面では成果を上げたと考えております。2000年以降、安全の問題をはじめとし て、消費者と直接かかわる形に不祥事の形が変わってきていて、いまそれにどう対応す るかということで私どもは検討してきました。  2002年に、そういう類型の変化に対応してどうすればいいかということで、私どもが 1つ考えたのは、継続的な取組みが重要だということです。企業は組織をつくって終わ りになってはいないだろうかということです。それで、トップ向けのセミナーあるいは 役員向け・担当者向けの泊まりがけの研修会を開催しております。昨年10月から、毎年 10月を企業倫理月間ということで、集中的に企業への働きかけをしていこうということ でやっております。  今後の検討課題ですが、CSRについては、企業の取組みを推進するためのお手伝い をする組織が必要なのかと考えております。これは、今後の検討課題ということです。 そういうことで、経済界としても少しずつ取り組んでいるということをご理解いただき たいと思います。 ○谷本座長  憲章を出すだけではなくて、そういう取組みの組織もいま検討しているということで すか。 ○中村社会本部長  そうです。 ○谷本座長  それを推進していくような本部みたいなものですか。 ○中村社会本部長  どういう組織になるかはわかりませんけれども、今後の検討課題として用意されてお ります。 ○谷本座長  委員の方々からご質問がありましたらお願いいたします。 ○佐藤委員  今回、企業行動憲章の手引きを作られたということでした。手引きは、海外での説明 の際にもう少し具体的なものとか、企業が取り組みやすいようにということで、あくま でも例示だということでした。この例示を取り上げたときの考え方ですが、これを見る と法遵守的なものも一部ありますけれども、基本的に法律については徹底させるみたい なことが書かれていて、あとはそれを上回って、プラスと思うことをやりましょうとい うことだと思うのです。そうすると、いろいろな項目があり得ます。  そうしたときに、例示するときの考え方があったのか。例示しようと思ったものがた くさんあったときに、例えばどのようにして5、6個にしたのかということ。具体的に は、4の労働にかかわる部分は6個ありますけれども、これ以上はどうしようかという のがいくつかあったのかどうか。何か基準があったのか、例えば挙げてみて、10個は多 いとか、でも7つのもあったりする。その辺をざっくばらんに教えていただけますか。 ○中村社会本部長  現時点で、企業に対して取組みが求められるものとしては、この程度をカバーすれば いいのかということで挙げております。 ○佐藤委員  この程度というのは何かあるのですか。 ○讃井国際労働政策本部長  先ほどご説明しましたように、新しい角度で見ることが必要になり、その要素でいく つか挙げました。そういったものに対応できるように必要なものを盛り込んだつもりで す。これは、あくまでも手引きの要点と書いておりまして、これに基づいていま本物の 手引きを作っています。そちらのほうは、もう少し紙幅に余裕がありますから、ある程 度幅広く扱えると思います。 ○中村社会本部長  これを全部できれば、企業としてはかなり褒められていいのではないか。そこまで行 かない所も結構あるかという感じで作ったものです。手引き本体については、各中項目 に対応して、心構え、姿勢はこうあるべきであるということ。それから、具体的なアク ションプランということで事例を示す、という形を考えております。 ○足達委員  日本経団連さんが、CSRを前提に憲章を変えたというのは、世界的にも経済団体が そういうことを率先してやったというのは初めてだろうと思います。メールでいろいろ な所にも伝えているところです。  1つお伺いしたいことは、先ほど中村本部長が、明確な定義のないままに独り歩きし ていることに若干危惧しているという部分です。CSRに積極的な考え方を持つ企業 は、まさにCSRに取り組むことにより、企業の競争力がつくれるのだ。日本的な脈絡 でいえば非価格競争力とかデフレ対策ということが言えると思うのです。これは、1つ の経営モデルだと思うのです。経団連さんは奥田ビジョンをはじめ、日本経済を再生す るためにということで、積極的なビジョンも出されているわけです。   そういうCSRの経営モデルとしての意味を、コンセンサスを取って経団連のビジ ョンに挙げていくというようなところまではなかなか行けないのかどうか。日本国内に も勝ち組、負け組の産業セクターがあり、同じセクターの中にも負け組と勝ち組の企業 があると最近は言われます。そういう中で、CSRというのは本当に競争力になるのか という意見があるのかどうか、その辺りの感覚、感触をこの取りまとめの中の議論で感 じたことがあればお話いただきたいと思います。 ○中村社会本部長  その点については、2月の基本的考え方という見解の中でも、競争力の源泉とし、企 業価値の向上につなげることとしているわけです。さらに、会長・副会長会議の議論の 中で出ている、これまでの品質や環境といった特定の分野とCSRは意味合いが全然違 う。CSRというのは、まさに経営そのものである。これについて規格化には反対であ るけれども、CSRそのものは企業として積極的に推進していくことは不可欠であると いう認識です。  今朝の新聞に、経団連は明日総会がありまして、奥田会長が2期目に入るということ でインタビュー記事が出ています。2期目の大きな課題の1つとして、企業の社会的責 任、CSRに取り組んでいくのだということを明言されておられますので、今後2期目 において組織的な取組みを強化されると考えております。 ○足達委員  先ほど、危惧とおっしゃった部分は、企業批判を惹起する云々という危惧ではなく て、むしろ政府による規制なりそういうものがあるのではないかという危惧だというこ とですか。 ○中村社会本部長  規制とか規格という動きにムード的に行ってしまうのは困るという意味です。 ○足達委員  そういう危惧だというふうに理解させていただけばいいですね。 ○中村社会本部長  はい。 ○阿部委員  しばしば不祥事が起こると、経営者層の中には、積極的かどうかは別にして、加担し ているケースと、そうではなくて知らなかった、下の人間がやりましたというケースが あります。CSRというのは企業の経営、あるいはビジョンを示すというものですか ら、それが組織の末端まで行かないと、CSRというのは動いていかない。  こういう点に関して、企業憲章を作成される際に、企業が実際に運用することになっ たときに、どのようにしていけばいいのかというのは念頭に置かれているのでしょう か。私は、CSRの研究会で、いろいろ議論するポイントがあると思うのです。実際に CSRをやったときに、果たしてこれは動くのかどうかというところに関して興味を持 っていますので、お聞かせ願えればと思います。 ○中村社会本部長  アメリカの調査を通じて、私が非常に印象的だったのは、アメリカの先駆的な企業の 場合はCEOがコミットする。あとはアンブレラ(傘)と言っていますが、CEOのコ ミットを踏まえて各部門が、傘の筋のように連携をもって実際の活動を行っていくのだ という話でした。  そういう意味で、日本企業のこれまでの取組みの弱いところがあるとすれば、それぞ れの部署では非常に良いことをやってきていると思うのです。かつては家訓なり社訓と いうのがあってやっていたのでしょうが、組織が大きくなるに連れて、だんだん現場対 応になってきた。ここでもう一度トップがちゃんとコミットする形に持っていかなけれ ばいけないのではないかと思います。  今後具体的にどうやっていくかですが、それは、いま手引きで企業が具体的にやるべ きことを検討していますので、それができた段階で企業に示していきたいと思っており ます。 ○阿部委員  手引きでは、そういうこともお考えになりながら作成されているということですか。 ○中村社会本部長  そうです。 ○讃井国際労働政策本部長  企業トップが、本当に熱心に取り組まなければいけないというのは、まさしくそうい うことだと思います。従業員という観点から考えると、従業員は重要なステークホルダ ーであることは間違いないわけです。CSRの客体であるだけでなく、現場でCSRを 進めていく主体でもあると思います。細かい例を言えば、パワーハラスメントとかセク シュアルハラスメントというのは、号令をかけて一生懸命旗を振っても、実際に一人ひ とりがそれを自分の倫理観として受け止めてやっていくことが必要なわけです。  やはり、企業のトップが全社的にどのように導入していくか、ということが非常に重 要だと思います。それは、従業員だけでなくて、消費者だって、株主だってということ もあると思いますが、どういう価値観を持っているかということが問われているのでは ないかと思います。 ○谷本座長  最初に申し上げましたように、CSRは確かに自主的なものなのだけれども、ただ手 引きを作って、どうぞと言うだけでは徹底するわけがないので、どう徹底させるのかと いうことについて、もう一歩踏み込んだ議論が必要だと思います。例えば、労働組合や ステークホルダーとのかかわりの中で、経済団体がどんな場をもちながら議論するか。 行政府にも、いろいろ言うなというだけではなくて、やはりコミュニケーションを取り ながら基本的な産業政策の中でどう結び付けていくのか、ということを考える必要があ ります。自主的なものだから規格反対、行政は変えるなというだけでは、これまでの議 論がまた繰り返されるだけだと思います。いま、いろいろな議論が出てきて、確かに百 花繚乱的な面があるかもしれないけれども、新しいものが出てきたときにはいろいろな 議論が出てくると思いますので、こういう部分はいいチャンスだと思います。議論を進 めていける場が広がっていけばいいと思っています。  本日はお忙しい中を、中村様、讃井様にはヒアリングに参加していただきましてあり がとうございました。  次の議題に移ります。「労働におけるCSRのあり方に関する研究会(5/26)論点 について」事務局から説明をお願いいたします。 ○労働政策担当参事官室室長補佐(千葉)  「労働におけるCSRのあり方に関する研究会(5/26)論点」及び、資料1から資 料10を適宜参照しながらご説明申し上げます。1番は、「労働に関してCSRを検討す る意義」は一体何なのかということです。豊かな社会の下で、画一的な生産の重要性が 薄れておりますが、その一方でサービス化が進行している。こうした中で、さまざまな 資質と才能を持った個人が、その能力を十分に発揮することが、経済活動の源となって きている。  そのためには、企業が積極的に人材育成をする、あるいは、個人がそれぞれの生き方 や働き方を持っているわけですので、それらに応じて働ける環境を整備し、多様な選択 肢を提供していく。または、全ての個人について能力発揮の機会を与える。さらに言え ば、安心して働く環境を整備する、といったことが重要になってくるのではないかと考 えています。まさに、人を大事にしなければならないような状況、というのはますます 強まってきているのではないかということです。  いま申し上げた(1)から(4)に対応し、もうちょっと具体的に申しますと、これから申 し上げるような事項について、企業においては考慮することがますます重要となってき ているのではないでしょうか。(1)「積極的に人材の育成を図る」ということについて は、今後の我が国の経済社会において、高い付加価値を生む上で、個人の知恵や発想は ますます重要になってきております。企業が人材を育成したり、個人の自発的な能力開 発を支援していく必要があります。  (2)「個人それぞれの生き方・働き方に応じて」という部分ですが、従業員の中には 育児や介護というふうに、家庭生活と両立しながら仕事を行うことを望む方も多くいま す。また、地域社会貢献の意欲も高いというところも見られます。これが叶えられてい るようなことであればいいのですが、しかしながらグローバル化等による競争の激化な どを背景として、一部の勤労者に仕事が集中するような傾向もみられます。家庭生活・ 地域生活との調和を図っていくことは重要な課題です。  2頁の(3)「全ての個人について能力発揮の機会を与える」のところですが、女性が 職場で能力を発揮しようと思っても、我が国においては管理職への登用等は進んでおり ません。女性がその能力を十分に発揮できる環境を整備していく必要があります。ま た、高齢者の就労を通じた社会参加の意欲に応えていったり、その意欲と能力に応じて 障害者に対して雇用が確保されるようにしていくことも必要です。こういった取組みに よって、人権配慮が重要になってくるのではないかということです。  (4)「安心して働く環境を整備すること」のところですが、先ほど申し上げましたよ うな競争の激化を背景とはし、勤労者の健康や安全の確保が懸念されるところです。心 身両面からの対応等安心して働けるような環境をつくっていく必要があるのではないか と考えております。  「なお」のところですが、企業がこうした取組みを行っていくに当たり、働く個人は それぞれ多様な能力や考え方を持っています。先ほどの経団連さんからのヒアリングに おいても、多様な人材が個々の能力を十分に発揮できる人事処遇制度を構築するといっ たことが書かれてありました。こうした多様な能力を発揮していく環境をつくっていく ことは大事であります。このために、一律に最低限決められている法令上の義務を果た すだけではなかなか難しい、ということも留意する必要があるのではないか。そういう 観点から言えば、法令遵守を超えた取組みを行うとするCSRの発想を企業においては 持つことが望まれるのではないかということを申し上げております。  「また」のところですが、事業の海外展開が進んで、海外において労働問題が頻発し ている中において、進出先においても現地従業員に対して十分な配慮をする必要性が増 大している。海外を含め、サプライチェーンの事業所においての、労働を含めたCSR に配慮しているか否かということが商取引上の要件になってきているということなどを 踏まえると、労働に関してCSRを検討する意義は高まってきていると言えるのではな いかと考えております。  企業の立場から見たら一体どうなのかということですが、企業の側から見て、労働に 関してCSRを踏まえた活動を行うことは、これから申し上げるようなメリットがある のではないかと考えています。具体的には3頁で、人材を重視して育成の取組みを行っ ていくということは、優れた人材を集めるとともに、優秀な人材の定着にも資するので はないかということ。人材の多様性を拡げていくことが、新しい発想を生んで、高い付 加価値につながるといったこと。  それとオーバーラップする話でありますが、勤労者の地域生活との交流を支援してい くということは、企業と地域が社会的な課題について、例えば企業とNPOが協働する といったケースも多々見られるわけですが、こうしたことに資することはもとより、勤 労者が企業社会と異質な体験をすることにより、企業において従来にないアイディアが 発想されて高い業績につながる。  働く人を大切にしている企業というプラスのイメージが形成され、消費の増加、投資 の増加につながるといったことなどが見込まれるのではないかと考えております。  3頁の2「労働におけるCSRの推進のための課題」のところに3つ掲げておりま す。1番目は、これまで我が国企業がCSRを推進しようという場合に、駆動力は一体 何だったのかを考えてみると、法令遵守であったり、環境に関する問題であったりとい うことではないかと思います。労働についてCSRを推進する大きな力やきっかけとい うのはあまり強くなかった、ということではないかと解釈しております。こうした中、 企業における労働CSRの取組みをどうやって推進していくのか、ということが1番目 のポイントです。  2番目は、CSRに関する取組状況などを積極的に企業が発信していくことは、いろ いろなステークホルダーにとって非常に有意義なことであるわけです。特に我が国にお いては、前回のヒアリングでもこうした話はありましたけれども、「環境」などと比較 して、「労働」については情報がなかなか外部に開かれない傾向が強いように思いま す。こうした状況を打開するためにどうしていけばいいのかということです。  3番目は、企業において労働などCSRの取組みを進めていくためには、企業自らの 取組みを推進するといったことのほかに、投資市場においてSRIの要素を強めていく といったことも考えられるところです。しかしながら、ここで資料1の「SRI市場の 国際比較」でアメリカ、ヨーロッパ、日本を比較してみると、まだ桁が違うような状況 にあります。こうした中で、SRI市場が発展していくために、日本の場合は何か隘路 になっているのかということです。  4頁の論点に戻りまして、3「労働に関するCSR推進における国の役割」のところ です。CSRを推進する主体は企業であり、企業が自主的に社会的責任を果たすべく取 組みを行うものであります。したがって、労働におけるCSR規格みたいなものを国が 策定したり、認証したりするような施策を講じることは、現状では困難ではないかと考 えております。  そうとはいえ、企業が何らの情報・材料もなしにCSRの取組みを進めていくことに ついては、難しい面もあります。社会の動向の先取りという情報を提供していくことな ど、いろいろなことが考えられるところであります。こうしたことをやるプレーヤー等 の1つとして、行政も考えられるのではないかと思います。企業に対して、行政が何ら かの支援策を講じていくことも、一方においては望まれているのではないかということ です。  4「労働のCSRを推進するための環境整備の方策」のところは、企業がCSRにつ いて自主的な取組みを推進していくに当たり、行政の支援策としては、例えばこれから 申し上げるような施策が想定され得るのではないかということです。「情報開示項目の 提示」ですが、労働に関する情報開示については残念ながら十分進んでいるとはいえま せんので、こうした情報開示を促していくために、多様なステークホルダーの便宜に資 するような項目について、こういう情報を出したらいかがですか、ということを行政に おいて検討し、それを提示・公開してみてはいかがかと考えております。  5頁の「企業による自主点検用チェック指標の作成」のところですが、企業が労働に 関してCSRの取組みを行おうと思っても、何をどこまでやればよいのか明確にわから ない場合も多いものと考えられます。このため、労働のCSRの事項として考えられる ものを挙げた上で、それぞれについて業界平均等と比べて、どこまで自社の取組みが進 んでいるか客観的に把握できるよう、企業の自主点検用チェック指標を作ることについ てどのように考えるでしょうか、というのが次のポイントです。  「表彰基準や好事例の情報提供」のところですが、労働環境については、労働安全衛 生、障害者雇用、ポジティブアクション、さらには職場と家庭の両立推進などさまざま な表彰制度があります。これらの表彰について横断的に整理し、ホームページなどに公 開し、企業の取組みに役立ててみてはどうかと考えております。  以上の事項については、資料としていろいろ付けております。「情報開示」について は、例えば企業が社会報告書としてどんなものを作っているのかというイメージをつか んでいただくには、資料2でトヨタさんの例を出しております。抜粋ですが、労働に関 してどのような書き込みがなされているかを見るに当たり、1つの参考になるかと思い ます。  資料3は、Webで公開している社会報告書について、資本金の多い所を30社ほど選び、 労働に関してどういう事項を公開しているのかを○×でまとめてみたものです。これを 見ますと、各社によって提供されている情報はいろいろで、まさにまちまちというのが 現状ではないかと思っています。  資料4は、企業による自主点検用チェック指標の作成のところで、これに関連しての 資料です。既に行政においては、分野ごとに一部において自主点検的な取組みを行いつ つあります。例えば、ポジティブ・アクションのためのワークシート、あるいは両立支 援の指標です。ポジティブ・アクションのためのワークシートは、これを記載すること により、企業にどういうところがまだ足らないか、という気づきの機会を与えることに なっているかと思います。また、両立支援指標については、Webでこれが既に公開され ている状況になっています。  論点の5頁に戻りまして、「公的年金等のSRI運用」と書いてあります。「労働」 や働く人が重視される社会が形成されるためには、投資市場においてSRI的な要素を 強化していくことが効果的ではないかと考えられます。そのためには、公的年金等の積 立金をSRI運用することも考えられるところではあります。ただ、一方において受託 者責任があります。そうなると、SRIをして損になるようなことは当然問題になるわ けです。SRIの投資効果というのは、現時点においてあまり明確にはされておりませ ん。今後、SRIの投資効果の検証を深めるといったこととともに、公的な保険等の積 立金をSRI運用することの是非について、受託者責任との関連で検討を進めることが 期待されるのではないかということです。  「株主議決権の行使」のところですが、企業におけるSRIを進める手法として、C SRを進める手法としてステークホルダーの関心に即した経営を行っている企業に対し て投資するといったことのほかに、株主議決権を行使しながら、各々の企業の望ましい 方向に向けての経営を促していく。そして、企業の潜在的な課題や問題点を未然に解決 する、といった手法も考えられるところです。こうした手法についてどう考えるかとい うことです。  以上の点に関連して資料を準備させていただきました。資料5は、現在各種制度にお いてどういう運用がなされているか、その仕組みを中心に述べさせていただいておりま す。「公的年金」については、年金資金運用基金に資金を寄託することによって運用し ており、法律上、「専ら被保険者の利益のために、安全かつ効率的に運用すること」に なっております。  「厚生年金基金」については、中途脱退者や解散基金加入員に係る年金資産につい て、自家運用ないしは民間運用機関に運用を委託してやっております。  厚生年金基金連合会においては、加入者や受給者の利益の向上を目的として、株主議 決権を行使し、企業におけるコーポレートガバナンスが十分に機能するような経営を求 めているといったことについては、新聞等でよく報道されているところであります。  2頁の「中小企業退職金共済」については、自家運用のほかに民間運用機関に運用を 委託しております。安全かつ効率を基本として運用を実施しているところです。委託機 関における株主議決権の行使については、運用の基本方針において必要に応じて行使し ていくといったことなどが規定されている状況です。  資料6は、「各国の年金とSRI」と書いてあります。諸外国ではどういう実情にあ るのかということです。アメリカでは、ERISA(従業員引退所得保障法)を所管す る労働省が、Calverから、SRIと受託者責任との関連について見解を求められたのに 応じ、1998年に「Advisory Opinion」を発行しております。その内容を見ると、「SR I投資リターンが同等のリスクを有する他の投資のリターンを下回らない限り、SRI 投資信託を年金プランの選択肢として加えることは、受託者責任に反するものではない 」。要は、損をするものではない限りにおいて、SRIが即そのものだけで受託者責任 に反することにはならないということを言っているのではないかと考えております。  イギリスについては、1995年の年金法改正により、2000年7月から年金基金に対し て、「投資銘柄の選定に当たり、環境・社会・倫理面での考慮を行っているか」「議決 権行使に関する基本方針があるか」といったことについて情報開示を行うことが義務づ けられております。これに応じ、イギリスの保険協会がガイドラインを作成するなどと いった動きが起きているところです。  ドイツについても、イギリスと同じような年金法改正が行われております。フランス においても、2002年に会社改正法が成立し、一部上場企業については財務・環境・社会 面の方針と実績を年次報告書に盛り込んで、公開することが義務づけられております。 こうした資料を参考までに付けております。  資料7のSRIはペイするのか否かということは大きな課題であります。現段階にお いては、明確な回答が出ていないものと私どもは認識しております。その中で、多種多 様なSRIはペイするか否かの調査の中で、2つほど掲げさせていただいております。  インテグレックスとモーニングスターのそれぞれについて、CSRを評価している会 社と、東証トピックスを比べてみたらどうかを挙げています。これを見る限りにおい て、CSRの関係評価が高い企業の株価はトピックスを上回っている、ということは言 えるようでありますけれども、ただ、これだけでもってすべてを判断できるということ ではないかと思っております。  論点の6頁に戻りまして、「発注等におけるCSRの考慮」です。「さらに」と書い てあるところで、国や地方自治体が事業を発注したり物資を調達したりする際に、労働 などの事項についてCSRに配慮している企業を優先することについてどのように考え られるか。  資料8で、「CSRを加味した発注基準の例について」ということで、千代田区と大 阪市の例を掲げております。建設の工事などの入札に参加できる資格については、入札 に当たり点数化しております。例えば、高齢者あるいは障害者を雇用しているような企 業については加算する取組みなどがなされております。  論点の6頁「ソーシャル・ラベルの作成」のところです。このほかにも、社会的責任 を果たしている商品であることを表示する方法として、ソーシャル・ラベルがありま す。欧州の取組みを参考にすると、このソーシャル・ラベルの作成を政府が行うという ことも選択肢としてあり得るわけです。ただ、CSRについて企業の関心も高まり自主 的な取組みが進んでいる現在において、こうした動きを尊重する意味において、国がイ ニシアティブを取る形でのソーシャル・ラベルというのは、現時点では適当ではないの ではないかと考えております。  なお、資料9は、欧州においてCSRの取組みはどのようなことがなされているかと いうことについて「Campaign Report on European CSR Excellence 2003-2004」 でまとまって出ていますので、そのペーパーを若干まとめました。これは、もちろん、 政府に限るのではなくて、いろいろな組織がやっているのですが、墨が付けてある部分 は何らかの取組みを行っていることを表わしています。○が付いている所は政府が関与 していることが文面上明らかであるものです。ラベル/認証、表彰制度など、7つの項 目について、それぞれの国の取組み状況をマトリックスで表わしています。  これの特徴を見ると、「ラベル/認証」については、多くの国で取組みが行われてい ますが、政府が関与するものはそれほど多くありません。表彰制度については、取組み 自体は非常に多くの国で行われています。中には、環境社会報告書そのものについて表 彰をしているような所もあります。  「行動規範/倫理指針」の所ですが、これについては多くの国で取組みが行われてい ますが、国がイニシアティブを直接取っていることは、我々が見る限り見あたらなかっ たのですが、そこら辺りで何かありましたらご示唆を賜れば幸いです。  (4)「社会報告書ガイドライン」の所ですが、取組数は少ないように見えるのですが、 例えば、デンマークにおいて中小企業を念頭に置いてつくっているとか、それぞれ、特 色を有していると言えると思います。  (5)、(6)は飛ばしまして、(7)「CSRツールキット」を見てみると、例えばベルギ ーなどにおいて、CSRに関する取組状況を会社が自分でチェックするものが多くなっ ています。ほかにも、中小企業向けのガイドやツールが見られます。その後に、CSR Matrixそのものを英文で付けておりますので、お時間があるときにご参照いただければ と思います。  論点に戻りまして、6頁です。5「CSRを推進するに当たっての留意点」として何 が考えられるのかです。1つ目は、CSR推進に当たって労働組合の役割は何なのかと いうことです。会社がCSRに関する取組みを行う場合に、積極的に参画していくとい うことも1つあり得るかと思うのですが、こうしたことを含めて、どういう役割が考え られるのかということです。  2つ目は、中小企業についてです。資料10ですが、経済同友会の資料を見させていた だくと、企業規模別に見て機会均等、社内公募、従業員教育など、労働に関係が深い事 項を取り上げていますが、規模が小さい所ほど得点が芳しくない傾向が見られるかと思 います。中小企業において、労働のCSRを推進していく方策は何なのかということで す。  論点のほうですが、3つ目は、社会的な責任を果たしている企業の製品を購入したり 株を買うようにするためには、消費者教育・投資家教育も重要になるのではないか。ま た、4つ目は、前半のヒアリングのときにも議論になりましたが、これらの施策を講じ ていくとすれば省庁間の連携が重要になってくることが考えられるのですが、こうした 点についてどのように考えるかということです。以上につきまして、ご討議いただけれ ばありがたいと思っております。 ○谷本座長  論点、資料を説明していただきました。たたき台ですので、細かな文言等は全体の構 成を考えていく中で詰めていけばいいと思いますので、私も細かいところまでのチェッ クはしておりません。問題は、構成として、CSRを検討することの意義、CSRをど うとらえるのかということも含めて、最初に意義を考える。それから、どう進めていけ ばいいかという課題、その中での政府の役割はどういうことなのかを考える。労働にお けるCSRを進めていく中で、例えばどんな方策が考えられるのかという中でチェック シートを考える。そこには、資料にもありましたが、多様な項目がいろいろな所で議論 されているけれども、これまでに違う分野でチェックシートをつくった経験もあるけれ ども、そういうものができるのかということです。労働におけるCSRの中身です。そ れから、労働だけに限定するのではなくて、CSRを進めていくのであれば国の政策は どんなものが考え得るのかということが前々回の議論に出ましたので、その辺りも議題 の中に入れていただきました。  今回、この研究会の趣旨としては、細かな方策まで詰めて出すよりは、今後どう考え ていくのかという方向性を示せればいいのではないかと理解しております。具体的にど うするのかという細かい作業を今回や次回の中で詰めるよりも、中間とりまとめとして どんな方向性を示すのか、大きな枠組みとしてどう示すのか、ということを主に考えて いただければと思います。  最後にもありましたが、先ほどの経団連さんのお話の中でも私が申し上げましたが、 これは各省庁にかかわってくる問題です。ご承知のとおり、CSRは幅が広いですか ら、多様な問題を含んでいるとすると、当然、各省庁の中にまたがってくる問題です。 経済産業省、環境省もそうですし、中小企業庁に関すること、あるいはSRI、投資家 ということを広めていくのであれば金融庁にもかかわってくるであろうし、多様な領域 にかかわっていく。この研究会として、その呼びかけがどこまでできるかは別にして、 そういう問題ですから、きちんと考えておく必要があるのではないかと思います。  先ほど、いみじくも言われましたように、各省庁にそれぞれの思いでいろいろなこと を言われてはかなわない、ということがあるのかもしれない。しかし、それぞれの問題 の中で、CSRという切り口で限定した領域の中で物を申すこと自体が駄目だというこ とはないと思います。大きくCSRとしてとらえる場合には、そういう連携も1つの課 題になってくるのではないかと思っております。委員の方々には事前に少し見ていただ いていると思いますが、それぞれの意義、課題、方策等について、どこからでも構いま せんので、いろいろな意見を出していただいて、方向性を考えていければと思っており ます。 ○佐藤委員  私だけかもわからないのですが、入り口の所でこだわっているのです。労働分野にお ける社会的責任という、そういう議論に展開していくところがしっくりいかないので す。もう少し説明させていただくと、例えば、「労働に関してCSRを検討する意義」 ということで、1頁から3頁の真ん中まで書いてあります。これを労働に関してCSR を検討する意義というタイトルを取ってしまうとどのように読めるかというと、私が企 業の人事担当者向けにこれからの人事管理の課題ということで話すことと変わりませ ん。これからの企業経営を考えていくときに、人的資源が競争力を支える源泉である。 これは、アメリカでもそういう議論が非常に強いのですが、そうしたときに、人事管理 としてどういうことを考えていかなければいけないかというときに言うことと全く同じ です。それは、これからの企業経営、経営戦略を考えたときに人事戦略として考えなけ ればいけないことなのです。  それを社会的責任に転換するロジックは何なのだろうか、というところがしっくりい かないのです。それがなければ、別に、社会的責任と言う必要もないのです。企業がこ れからやるべきことなのです。ただ、それは何のためにやるかというと、基本的には企 業経営のためにやるのです。そのために社員のことを考えるわけですが、企業がこれか ら競争を維持、高め、存続していくために人事管理上何をやるべきかということだとす れば、そのとおりだと思うのです。それを社会的責任だと括るところは何なのだろう か。それがきちんと説明できないと、2以降の議論につながらないのではないか。  私は1で書いてあることが間違いだと言うのではないのです。例えば、厚生労働省の 安定局が雇用政策研究会を立ち上げて、何年かに一度、雇用政策の基本方針を書く。そ れを抜粋すると、多分このとおりになる。このぐらいのことは書いてある。ですから、 政策としてもこういうことを言っているわけです。それをCSRというように括るとこ ろは何なのか。  確かに、これから企業が人事管理を進めていくのにこういうことが大事なのだけれど も、政府がこれを進める上の手法として、例えば消費者に情報を出させる、これから働 く人に情報を出させる、ということを通じてこういうことを進めるのだと、あるいはS RIという手法を使うのだと、それはあり得るだろう。でも、それをCSRと言う必要 もないのです。厚生労働省が施策を進める上で、いろいろな手法の一つとしてCSRを 使いましょう、というだけの話なのです。ですから、CSRと括って全体の施策を整理 するのはしっくりいかないところがあって、もしかすると、1の前に0が必要で、そう いう議論があった上で1が来る。あるいは、1は、これからの人事管理としてこれが大 事です、と書いてあるだけなので、それをなぜCSRという枠組みの中でやる必要があ るか、ということが1の次に必要なのかもしれない。それがないから、何でCSRな の、という気がするのです。  私は、こういう人事管理が大事ですよと企業に言っているのです。厚生労働省も、こ ういう議論は雇用政策の中で議論をしています。それをCSRと言うのは、先ほどのよ うに、流行だからという議論になりかねないのです。そうではなくて、今まで1は大事 だと言っていたことをCSRという新しい器に盛って、2以降で展開するのはなぜかと いうことが、1と2の間にないと「流行なので役所が取り上げた」という議論になりか ねないかというのが私の印象です。私は良い答えがあるわけではないのですが、それが ないと、そう批判をされたときに私としても説明しにくい、居心地が悪い。そういう感 じです。 ○谷本座長  そういう議論はヨーロッパにもありました。 ○足達委員  今の佐藤先生の話に自分なりに答えるとすればなのですが、また若干過激な発言をお 許しいただくことを前提に申し上げると、第1回のときにも少し申し上げたと思うので すが、ある意味で、お役所がCSRを情報発信する1つの本質には、政府の役割と民間 の役割をどう考えるのだという視点があると思うのです。欧州で話を聞いてくると、E U統合の赤字財政のシーリングの問題もあって、社会的な問題が非常に深刻になってい くのだけれども政府はこれ以上は財政出動できない、企業にもう少し頑張ってもらお う、という発想があるわけです。  したがって、1の前に0が必要だとすれば、非常に大きな話になって恐縮ですが、こ れまでは政府としてこういう政策を進めていくべしということを決めて、予算も人も制 度もつくって進めていくというパラダイムだったが、それを少し考え直して、企業に任 せるべきところは任せる。そして、ここの多様性にかかわってくると思うのですが、さ まざまな多様な人たちに適用していくためには企業それぞれにやり方の違いがあっても いいわけです。広く押し並べて、こうやるべしというものを強いる法律に対して、企業 それぞれに任せた上で、それぞれの創意工夫といいますか、経営者の考え方でもいいで すし、どういう人材が必要だ、どういう働き方をする従業員を集めるかという問題でも いいと思うのです。過激な意見かもしれませんが、労働時間は何時間でもいいという従 業員だけを集めた会社があってもいいかもしれません。そういうものをつくることによ って、生じているさまざまな問題を解決するのだという1つの宣言というか、これまで のやり方を変えますという。少し踏み込んで言うと、小さな政府にしますという。そう いう宣言とCSRが連関を持っているのだろうと思うのです。 ○谷本座長  そのことは、EUの中でもソーシャル・エコノミーとか共同組合とか、日本で言うN POのようなものを積極的に進めようということが同時に進んでいるのです。ソーシア ル・エンタープライズという言葉もあります。それと全く同じ文脈ですが、ただ小さな 政府化だけではなくて、地域における課題においては地域の中で解決していくような手 法を支援する、そこに企業の社会貢献もかかわる、ということがイギリスでも積極的に いろいろと取り組まれています。ただ小さな政府化だけではなくて、地域の中での市民 の活動を支援する。それが、NPO的なチャリティのものもあれば事業として行ってい るものもあるということだと思うのです。 ○安生委員  これをサッと読んだときはそういう感じを持たなかったのですが、佐藤委員の話を伺 って、まさにそのとおりだなと思ったのです。CSRは特別なことではなくて、経営そ のものだと言っているわけです。そういう観点からすると、佐藤委員は0か1と2の間 にとおっしゃいましたが、最初にCSRそのものについてどのようにとらえているの か、ということがあったほうがいいと感じました。確かに、労働のところに限定してい くと、日本の企業はこれまでも人を大切にしてきたと思うのです。その大切にする仕方 は時代によって当然違ってくるのだと思うのですが、だからこそ、トヨタさんの格付け の問題みたいなことが起こるのだと思うのです。ですから、最初に、CSRそのものは 本質的にどういうものなのかということを整理しておく。  その上で、労働についてなのですが、印象としては、企業はこうすべきだという、全 体的に企業がやや受け身になる印象が強いような感じがするのです。それを避けるため にも、最初に、CSRは経営そのものであるということをきちんと置いておく。企業 は、何も、施しをあれするためにいろいろなことをやるわけではなくて、最初の○に書 いてあるように、人の大切さが増している、一方で働く人も変わってきている、という 中では、企業はそういう変化に対応して人を育て、その力を生かすことをやらなければ 経営にならないわけですから、全体のトーンは企業にとってある意味で能動的なニュア ンスが強いほうがいいような感じがしました。それは、多分、その0の所がないからか もしれないという、佐藤委員のご意見を伺ってそう思ったわけです。 ○佐藤委員  0みたいな、CSRはどういうものかを説明して、1のタイトルはCSRを検討する 意義をやめて、これからの企業経営と人材活用の課題としたほうがスッキリする。これ はもともとあった課題なのです。CSRが出てきてからの新しい課題ではない、という ことをはっきり言っていいのではないか。何か特別なことをやれということではないこ とがわかって、それはそれでいいと思うのです。  これは、企業がこれまでも大事だと思ってそれぞれ取り組んできた。役所も大事だと 思っていた。それを確認した上で、これを進める上で新しい手法を使うと言ったほうが 正直ではないか。CSRという議論が環境などのいろいろなところで出てきているわけ です。1つは、情報公開を積極的に消費者や投資家に出していこうということです。  これは今まで言ってきたことで、企業が大事だと思っていることではないですか、役 所も進めてきたことですよと。その進め方として、行政が取り締まるということではあ りません、情報を公開する形で広い意味でのマーケットが選択する。投資市場や消費市 場、労働市場で、消費者や投資家が選択する中で、企業も望ましいと思っていたし役所 もこうしてほしいと思っていたことを進めるような仕組みを新しくつくります、それは CSRという仕組みがあるのだから、SRI等を使いましょう、というように1の後で 素直に書いたほうがわかりやすいような気がしているのです。ですから、1がすごく頑 張りすぎてしまったのではないか。新しいことをやろうというのはあまり言わないほう がいいような気がします。 ○安生委員  CSRは経営そのものだということですが、そうすると、CSRとは何だという話に なってしまうと思うのです。1つだけ言えることは、企業を見るステークホルダーの見 方、評価とか、そういうものが厳しくもなり多様にもなりというところがありますよ、 というのがCSRという名の下に新しい意味合いではないかという感じがしますので、 その辺は0の所に入れる話ではないかと思います。 ○谷本座長  佐藤委員の議論は、CSRの議論の流れを正確につかんでおられない部分がかなりあ ると思うのです。労働に関する部分だけで言っても、人材活用の効率的な活用の部分だ けではないのです。それだったらCSRで議論する必要はないのです。労働の分野もそ うですし、環境の分野もそうですし、他の分野もそうなのですが、皆さんが言われてい るように、全く新しい手法では確かにないのです。例えば、ヨーロッパでは、労働問題 まで引っくるめることに労働組合がものすごく反対した。そんなことは労使交渉でやっ てきたことなのだと。しかし、それだけの問題ではないのです。労働条件、賃金の交 渉、経営参加のあり方を問うということだけではない。  人材活用、人的資源の問題も入ってきますし、実際にそういうことしか書かれていな かったことは少し問題があったのかもしれないのですが、ある意味では、有能な人がい いのです。そういう方をコアの労働者として企業が有効に活用していくにはどうしたら いいのか、有能な女性をどう止どめていけばいいのか。それをCSRと言おうが言わま いが、人的資源は中心課題であるし、それも入ってくる。しかし、こういうものは労働 省ばかりではないわけです。広い意味では社会的配慮の問題もある。  法的に対処しているといっても、先ほどから、法律を超える、法令を超えると言うけ れども、それは領域によってかなり濃淡があるわけです。法律で非常に厳しく規制し て、ペナルティまではっきりと与えている領域もあれば、国際的に見てもかなり緩く て、最低ラインを示しているものがある。あるいは、人権に関するもので、国際的なも のについて批准すらしていないものもある。その濃淡はかなりあります。  全部について厳しく規制すればいいという考え方はかなり無理な部分があるというの は、大きな政府を目指せばいいのかという議論も1つだし、あらゆる問題を法律で縛る ことが本当に良いのかという問題もあります。それから、国のそれぞれの働き方、労働 の慣行も、歴史的にかなり違うものがあって、押し並べて同じ法律でバシッとやれとい うのは無理な話ではある。だから、対応しきれていない部分もあることについては、国 としてはもっと厳しく縛らないと駄目な部分もあるだろう。足達委員も言われたよう に、法律は広く押し並べて決めているのですから、それをどう具体的に取り組んでいく のかということは企業が考えなければいけないことなのです。法律を超えたというの は、余裕があればやればいいという意味ではなくて、最低限決められた法律があったと しても、それをどうやるのかということも出てきます。  そういうこともありますが、社会的に配慮された人たち、公正に評価されなかった人 たちの問題、あるいは途上国においてこれまであまり議論にならなかったところもある のです。例えば、現地化や現地の人材の活用などは1990年代の中でいろいろ言われるよ うになってきたわけです。しかし、スウェット・ショップの問題とか、そういうことは ほとんど議論にもならなかった。グローバルソーシングというときには、光の当たる部 分についてはグローバル経営ということで非常に言われたけれども、ネガティブな部分 について、その部分で1990年代にサステイナビリティを議論するときに光が当てられ て、これはどうするのだ、こういう形でいくと非常に不安定な社会になっていくのでは ないか、ということが非常に危惧されて、企業がその中心の主体として具体的にかかわ っていかなければいけない部分が出てきたわけです。ただ批判されて、しょうがないか らやるだけではなくて、企業側もグローバリゼーションのネガティブな部分について、 このままでいいのだとは思わなくなって、いろいろな議論が出るようになってきた。  環境なら環境においてもそうですし、労働の分野においてもそうですし、人的資源管 理や人事管理の領域で議論されてきた光の当たる部分もあるだろうけれども、そうでは ない部分とか、法的にかなり緩かった部分とか、そういう部分まで引っくるめた社会的 公正性、人権、そういうところに必ずしも光が当たってきたとは思わないのです。  もう一度言いますが、これまでかなり取り組んできて、既存の学問、政策においても 扱ってきた領域も当然入ってくる。その部分で言えば、CSRはなくてもいいのだとい うことになるのだけれども、それだけではない、いま申し上げたようないくつかの問題 についても同じように議論していかなければいけないということが、CSRの議論の1 つのポイントだと思っているのです。ただし、この論点の1の部分でそれが明確に出て いるとは思わないので、1の前に、CSRをどのように理解するのか。今はどういう潮 流があって、その中でこれまで議論されていることで非常に手薄であった部分を簡単に 整理して謳っておく必要はあるのではないか。そうしないと、人事管理に関する問題 も、労働問題は広いですから。 ○佐藤委員  社会的責任というように触れるところなのです。つまり、人事管理のときに法遵守は 当然ある。ですから、徹底しなければいけない。もちろん、守っていない企業があるの だけれども、基本的には守れという前提です。そのときに、社会的公正も当然あります し、能力がある人だけではなくて、ダイバーシティと言ったときはそれぞれの意欲や能 力に応じて適切に評価しろということですから、人事管理の中でも議論できると思うの です。そのときに、社会的責任として取り上げるときは何なのだろうか。一歩超えて、 企業経営をやる上で必要だからやるのではなくて、社会的責任を一歩超えるところのロ ジックが何なのだろうか。それは、別に、法遵守といっても守っていないことはある。 でも、それはそういうことだけなのか。その社会的責任は何なのかというところは少し 議論をしたほうがいいということなのです。 ○谷本座長  それは最初にきちんと謳うべきだと思うのです。ですから、最初に申し上げたよう に、ここに出ている文言そのものが、あるいは構成上においても、完成しているという ことではなくて、今のような議論をいただいて全体の枠を叩いていかなければいけない ということなのです。 ○佐藤委員  そこを社会的責任と言わないでCSRのツールを使うという、そういう逃げ方もあ る。でも、それでは嫌だということなのかもしれない。だから、ツールだけ使うという 議論もあるのです。社会的責任と言わないで、今までCSRを議論された中でのツール を使うのだというやり方もある。だけど、そこを社会的責任と言うところがどういう組 み立てでいくのかよくわからないのです。 ○足達委員  私が小さな政府と言うのも、どちらかというとツールの話なのです。谷本座長がおっ しゃっている、陰の部分とか社会的配慮がなかった部分は何なのだという議論はしなけ ればいけないし、これも非常に必要性があると思うのです。ヨーロッパで取材した感覚 ですが、わかりやすいのは失業なのです。彼らはコヒーレンスという言い方を使って、 社会の結束を高めなければいけないと言います。日本では、キーワードとして出てきて いない言葉で言うと、この労働の問題に関連して学歴格差なのか。少なくとも、女性の 問題、障害者の問題、高齢者の問題、海外の問題は触れていますね。ほかには何がある と直感的に思われますか。 ○谷本座長  括り方の問題もあるかもしれないけれども、人権の問題などは大きいです。ただし、 人権というのはかなり広く理解すべきだと思うのです。被差別部落の問題だけではなく て、セクハラの問題も入ってくるだろうし、高齢者の問題もあるし、かなり広い視点で 人権という括りで見るのも1つだと思うのです。それは、ただサプライチェーンだと言 うだけではなくて、途上国の中での人権の問題はあまりにもセンシビリティが低すぎた ということはあると思います。 ○佐藤委員  議論を混乱させるけれども、CSRは全部取ってしまって、こういう大事なものをど う進めるかというときに、例えば「いろいろな形で情報交換をします」と書いても、報 告書が書ける。CSRという言葉を除いて「こういうことは人材活用が大事ですよ」と 書いて、これをどうやって進めますかと。企業がさまざまな労働情報の公開をしていな いのが問題だから、情報公開しましょう。そういう議論でも書けてしまうのです。です から、そうではないというところが何かないと、私は自分が説明できないと納得しない から、なかなか説明しにくいなと思うのです。  ○政策統括官(青木)  佐藤委員にお尋ねしたいのですが、人事管理上の問題などのときに、CSRのような 考え方が人事管理に入ってしまっているということではないかと思うのです。従来言っ ていた経営、人事管理、企業管理というときに、CSRで言われている人権とか、そう いうものまで入っていたのかしらと思う人たちがいる。しかし、それはそこまでやらな ければいけないのですよと訴えてきたけれども、そこはコンセンサスが得られていない 部分がある。そういうものをどういうことでやるかというとCSRがある。そういう感 じなのでしょうか。  例えば、人事管理上の問題といっても、企業経営は利益を追求してやっていくのだ と。そのためにいろいろなものを使いながら、生産活動をしたりサービスの提供をした りするわけですから、それではギリギリ品格のある企業でなくても法律さえ守ればいい ではないか、ということも人事管理上必要だという人があれば、それはあり得る話です が、それでいいのかと。そういう品格ある企業というか、そういうものを目指すとき に、そこで世界観が違う人同士の話になってしまい、それを乗り越えるためにはCSR なのだと。そういう話になるのではないかと思うのです。 ○佐藤委員  基本的には、1の○の最初の所で、従業員一人ひとりが能力を高め、その人が意欲を 持ってその能力を100%発揮することが大事だと。そういう前提に立ったときの人事管理 として必要なことなのです。そうではなくて、そんなことは期待しない人事管理もある のです。でも、私が言ったのは、こういう人事管理を前提にすれば、CSRという議論 がなくても独りでに出てくることだということなのです。つまり、社員一人ひとりが能 力を高め、意欲を持って働くことが企業経営にプラスになるようなビジネスモデルを選 択すれば当然出てくる人事管理の考え方です。もちろん、ミニマムには法律遵守とか、 社会的公正はあります。その上もあり得るだろう。でも、それは役所の政策文書で言っ ているようなことでもあるし、日本経団連でもこういうことを書いている。ですから、 先ほど言ったように、1のタイトルを外して渡したら、これは何のことと言ったら、別 に、違和感なく読んでくれる。でも、これはCSRですと言うところは、かなり真面目 に議論をしないと納得しない人がたくさんいるのではないか。CSRの専門家はすぐわ かるのですが、読者はCSRの専門家ではないわけです。私は、そういうことがあるの で言ったということだけの話です。 ○谷本座長  わかります。ただ、この文言だけで言われてしまうと非常にまずいので、少し揚げ足 取りになってしまう。ですから、先ほどから言うように、労働にかかわる問題は非常に 幅が広い。人的資源の有効活用という面だけを見れば、それは人事管理でやっていまし たと言うのもそのとおりなのです。そういうことも全部引っくるめるのです。もちろ ん、CSRは労働だけの問題ではなくて、環境であったり、地域社会との関係とか顧客 の問題とか、多様であって、実は、それぞれ、いろいろなベクトルを向いて、各企業の 中ではいろいろな歴史的経緯の中で各部署ができたりいろいろな制度がつくられてき た。いろいろやっているよと言うのだけれども、並べてみると、必ずしも企業としての 1つの筋が通っているとは言いがたいところがある。これは経営理念とどう結びつくの かと聞くと、一貫して説明できないことがあったりするのです。だから、どんな企業を 目指すのだということの中で、それぞれ、これまで対応してきた領域もあれば、国際的 に見たら、かなり手遅れになっていた部分もある、対応しきれていない部分もあった。 その社会的責任ある企業という1つの括り方なのであって、CSRという何か理想のモ デルがあるわけではない。ある意味、日本でもかなり対応している部分があったし、国 際的に見たら相当問題だというものもあった。途上国で表に出てこないだけで、問題が 相当起こっていることも日本企業にあって、人権の問題で明確にNGOがたたかれてい るようなこともある。そういうことをトータルに見ることが必要なのです。  ですから、先ほどから言うように、ポジティブな部分もあるけれども、かなりネガ ティブな部分で、政策としてはやっていないわけではないのですが、企業の中でも行政 の中でも縦割にそれぞれが対応しているのですが、CSR全体として、あるいは労働全 体として、問題を考えようとしたときに、かなり違う問題として出ている。女性は女 性、部落問題は部落問題、障害者は障害者という形で、それぞれに対応してきたので す。それぞれの問題があるから、当然省庁にはそれぞれの部局があるわけです。それは 企業も全く一緒で、それぞれに権限と責任が与えられてきちんとした仕事をしている。 しかし、企業で言えば、トータルな問題としてどう理解をするかというときの視点がC SRだろうと。それで取り組んでいく中で、あえてCSRと言わなくてもいいような状 況になれば、それが1つの理想ではあるのです。ですから、書き出しの部分や全体の部 分が、特に書き出しの部分が有効利用や人材をかなり前面に出しているから、正直、気 になってはいたのです。 ○佐藤委員  私が言っているのは2以降の内容がおかしいということではなくて、CSR、企業の 社会的責任は何かということが0であって、1が来て、1と後ろのつながりがあればい いと思うのです。少し欠けているというだけの話です。 ○谷本座長  そう思います。ですから、最初に申し上げたように、細かい文言や構成に関しては、 これはまだたたき台なのでということです。 ○労働政策担当参事官室政策企画官(堀江)  海外の関係の皆さんと情報交換をしていくと、例えば、企業の透明性、それに対する 説明責任、そういうことを会社全体として束ねていくところに人材を育成するとか、先 ほどからいろいろと議論が出ているようなことがすべてやられてきているのですが、そ れを全体として眺めて、経営者としてきちんと開示し説明する責任を負うところを海外 の皆さんは強調されていて、それがCSRではないかと。佐藤委員の話の答えになるか ならないかわかりませんが、今回のペーパーはそこが欠けていたなという気もしていま すが、そういうところはいかがでしょうか。 ○谷本座長  そういう大きな視点は最初に書かないと、いきなりこの最初の○だけが来ると、これ だけではちょっとなと思う。そういう意味では、たたき台ではあるのですけれども。 ○経済産業省 私は、0を入れたら読み手にとってはわかりやすいと思います。佐藤委 員が言われるように、CSRは昔から私たちが大事にしてきているオールドソングだと 思うのです。ただ、谷本座長のような見方をすると、それはニューソングです。ヨーロ ッパやアメリカと話をする中で、この5月の連休も、ドイツとイギリスとフランスと、 バイで今後どういうように進めるかという話をしたときに、特に、ドイツは法規制でか なりガッチリやっていて、彼らは、こういうCSRというような言葉はのし紙を付けて アングロサクソンの方にお返ししたいと。私たちは、総括官が言われたように、世界観 みたいなことを0で書く。その中から日本が大事にしてきたことをニューソングとして 見て書くと、非常にわかりやすくなるのではないかと感じました。 ○環境省 佐藤委員がおっしゃった人事管理を環境管理に当てはめてみても全く同じこ とが言えると思うのです。確かに、環境管理は昔からやっていて、以前は規制的とか経 済的措置でやってきたのですが、最近は自主的取組み、ボランタリーアプローチにシフ トしてきて、温暖化対策や地球環境問題に対して対応してきています。まさに、企画官 が言われたように、アカウンタビリティという論点、説明責任です。また、その説明に よって、意思決定有用性理論といいますか、市場である投資家や消費者が意思を決定す るのだと。それによって、企業はそのプレッジ・アンド・レビューでやっていく。今、 そこがCSRではないかという括りで整理をしているのです。 ○谷本座長  そういうこともありますよね。もちろん、位置づけの所で今のような意見を出しても らったほうが議論をしていく上で非常に助かると思います。中身のコアの部分だけにつ いて、これまでの議論や私が言ってきたことをたたき台としてまとめてもらったわけで す。あえてCSRと言うのであれば、どこがどう違うのだということと、今はどんな潮 流の中でこういう問題が議論されていて、日本の中ではどうするのかということを0番 というか1番として書く。その次に、労働に関してこの研究会の中で次に提言をするの に向かって何を、ということが2になる形で考えていく必要があると思います。  時間も限られていますが、それ以降の国の役割とか方策について、この辺りのご意見 をお伺いしておきたいのです。例えば、方策の中で、5頁ですが、どういうことが問題 になるのかということについて、男女雇用の問題もあり、障害者雇用の問題もある。あ るいは、福利厚生の問題があり、途上国の問題がある。評価機関なども、労働というと ころを1つとっても、どういうところにウェイトを置いているか、かなり個性が出てい る。私はそれはそれで全然構わないと思っているのですが、国内外のいろいろな評価機 関を見ても個性があるわけです。その個性の背後には国の違いがあったり、国の違いを 退けても、どういうところに力点を置くかということがあって、まばらであることは事 実なのです。いま申し上げたように、かなり幅の広い問題点についてきちんと整理をし て、それがチェックシート的なものとして出れば1つの方策になるかもしれません。  別に、その項目を今回できちんと網羅してしまおうと言っているわけではなくて、こ ういうことを次のステップの中で考えていく必要があるのではないか。具体的に進めて いく方策として、ここにある公的年金ないしSRI運用、発注と書いてありますが調達 ですよね、そういうことへの配慮などもここの中で触れることについてはどうですか。 ○足達委員  先ほどの手法論としてのCSRに戻ってしまうかもしれませんが、政府から企業へと いう考え方が前提にあるとして、よく言われるのが、ハードレギュレーションからソフ トレギュレーションへということです。このイギリスの年金法の改正も、政府はSRI をやれとは言っていない。やっているかどうかを情報開示しなさいという考え方です。 これが、1つ大きな骨子になってくるのだろうと思います。  2つ目には、予算の使い方になるのですが、これも、民間のイニシアティブに積極的 に予算を出すということで、政府が新しい事業を始めるのではないというのが向こうの 考え方だと思います。私は、これは支持したいと思っています。例えば、今回の中にチ ェックシートの話がありますが、安生委員がいらっしゃるのでご感想があるかもしれま せんが、同友会が110項目の自己評価フォーマットをつくられて、また厚生労働省が別な ものをつくる。そういう非生産的な部分があるわけです。ヨーロッパなどでは、民間の 団体でもイニシアティブを持っている所にEUがどんどんお金を出しています。その採 用を企業に広めていきなさい、ということで積極的にやっている。こういう考え方が2 つ目にあると思うのです。  3つ目ですが、政府の役割として彼らがよく言うのは人の育成です。人の育成という 意味は、CSRのことを理解するとか、シンパになるような考え方を持つ人をつくりま しょうと。こういうことで、EUは、ヨーロッパのビジネススクールにお金を随分投げ て、ビジネススクールの中にCSR関係の講座をつくってください、というキャンペー ンを大々的にやっています。これが政府の役割の3番目です。そういう何かのタイポロ ジーで「こういう考え方でやります」ということが、4の環境整備の方策の個別の事項 に入る前に、1つ宣言文としてあってもよろしいのではないかと思います。 ○谷本座長  それは必要だと思います。個別の問題が4番で挙げられているわけですが、3の所 で、今のような個別の方策を出す前にどんな姿勢、アティテュードでいるのだというこ とを書く。確かに、イギリスなどのDTIの姿勢はかなり参考になる部分があると思い ます。例えば、少し前に出たDTIの国際的なフレームワークの中でも、アカデミーみ たいなことに対していろいろと委ねることも触れていました。既にやっているのは、D TIだけではないけれども、いくつかの省庁がお金を出して、CSRのマネージメント システムについて、枠組みづくりを標準化の機構やNGOに委ねている。こういうもの をつくれと言っているのではないのです。ですから、これまであるものを全くチャラに して一からやる必要は必ずしもないかもしれない。既にある遺産、資産を利用してやっ ていくという、2番目で言われたことは確かにそうだと思います。4の前に、そういう 姿勢なり、どういう方針で行くのだという大きな所を示すことは必要だと思います。 ○安生委員  4頁の「CSR推進における国の役割」という所で、労働に限らない話になるかと思 うのですが、ここに書いてあることは基本的によろしいと思うのです。ただ、「現状で は困難であり」というのは、将来的にならあるのかと思わせる。  この前で、CSRと法令できちんと決まっていることとの違いを書く。要するに、法 令で決まっていることは、ある意味では、社会的なコンセンサスとしてきちんとできて いることが法令に反映されているわけです。一方で、CSRは、まだそこまでは行って いないけれども、企業としては、サステイナビリティやアカウンタビリティ、あるいは それぞれの企業の置かれた状況を考えれば、自主的に取り組んでいくところにこそCS Rの本質があると思うのです。ですから、法令とCSRとの関係について、少しきちん と整理しておいたほうがいいような感じがします。  その上で、CSRにおける政府の役割は何なのかということを展開していったほう が、より明確になるような感じがします。法令とCSRは本質的に違う、CSRの本質 は法令を超えた部分にある、という考え方からすると、何か、CSRの名の下に何でも かんでも入ってくるのは少し違うのではないかと思うのです。そこは、企業の自主性だ し、判断だし、ステークホルダーとの関係もすべての企業で一律ではないわけで、濃い 所もあれば薄い所もある。自分にとってどこがいちばん大切かということは、それぞれ の企業の判断でやるべきことですから、CSRの名の下に何でも入ってくるような印象 になるのは少し違うのではないかという感じがいたします。 ○谷本座長  その部分はそうだと思うのですが、前段の部分で私は少し違う意見を持っているので す。例えば、今ある法令で決まっているものはそれで守ればいい、社会的コンセンサス があるのだから、という話ですが、そこ自体が問われている問題がいくつもあると思う のです。かつての日本の社会の中でのコンセンサスで決まった法律はそうなのかもしれ ないけれども、今、そのコンセンサスのベースになるところ自体が大きく変わってき て、こういう問題についてはきちんとした規制がなかった、そういう決め方ではまずか ったのではないか、という問題もあると思うのです。  ですから、今ある法律は守って、そこから先だと言うよりも、こういう場であればな おかつ、今ある法律といっても、非常に緩すぎるとか、かなり抜けている部分があった りとか、ほかの国と比べても全く遜色のない、きちんと対応しているものもあるので、 ただ法令を超えたとだけ言ってしまうことの問題もあると思うのです。中には、対応を もう一度考え直さなければいけないこともあるかもしれない。 ○佐藤委員  ただ、そこはCSRの考え方で、多分、両論あり得る。私は安生委員に近くて、法令 に問題があるとすれば、それはそれとして議論をすべきだ、CSRとして議論をすべき ではない、という整理の仕方があると思うのです。私も、現状がすべてが良いとは全然 思っていなくて、いくつも問題があると思うのですが、法律として取り組む必要がある とすれば、それはそれとして議論をすべきである。だから、CSRとして議論をすると きに、安生委員がおっしゃった議論の整理の仕方があり得る。そのときに、今の法令で すべて良いというつもりでそうしろと言うわけではないのです。そこまで含めてCSR という議論もあると思うのですが、そこは整理をする。 ○谷本座長  いや、CSRと法令という理解ではなくて、問題は課題なのです。それぞれの課題に ついてどう対応するかというときに、既存の法令をきちんと守れば十分だというものも あれば、この課題に関しては日本はセンシビリティが低すぎたという問題もある。そう いうことを考えないといけないと思うのです。 ○佐藤委員  それは、各企業なりが、それが重要と思って取り上げるのはいいわけです。それは、 安生委員も私も、いけないと言っているわけではなくて、そういう整理をした上で、例 えば日本で遅れているからうちがやらなければということで取り上げるのは駄目だと言 っているわけではない。あるいは、業界団体が傘下の企業に向けてつくることを駄目だ と言っているわけではない。ただ、これは、厚生労働省が言うときに、厚生労働省が法 制度をやればいいのではないか、ということになりかねない話だと思うのです。 ○労働政策担当参事官室政策企画官(堀江)  大きな問題はあれとして、安生委員の話で「現状では困難であり」という所ですが、 4頁では、国が企業の自主性に任せるのが良くて、言ってみれば、国が施策を認証する ようなことは現状では困難でありと。そこは、当然、本来は望ましくないというところ が書いてあります。少し不整合があるのですが、後ろのほうのソーシャル・レベルの所 で「CSRについて企業の関心も高まり、自主的な取組みが進んでいる現在」というこ とも本当は入れておいたほうがよかったのだと思うのですが、そういうこともあって、 現状では必要もないし、本来的には望ましくない。ただ、企業のほうにも少しエールを 送るということではありませんが、本当に企業の感度が落ちてしまったらば、それはそ のときにいろいろな議論が出てくるのではないでしょうか、という意味合いで書かせて いただいて、「じゃあ、次は何ですか」ということではないということです。 ○谷本座長  こういう形で労働におけるCSRのあり方に関する研究会が中間取りまとめを出すに あたって、基本的な構え、施策として結び付けていく方向性を示すにあたっても、それ についての理解の仕方、姿勢をこの文書の中できちんと明確に謳う。そういうことがな ければ、多様な理解の中で多様に理解されてしまって「何だ、これはこれでいいのでは ないか」「いや、こっちでいいのではないか」ということになってしまうといけないと 思うのです。もちろん、1つの施策や方向性を示して、100人が100人ともそうだと言う というのは逆に気持が悪い次第でありまして、いろいろな視点があって当然だし、その ほうが健全だと思うのです。ただ、いろいろ言われても、これはこうなのだということ の一貫性を中間取りまとめの中で示せないと、ただ「いろいろなものがあります」と並 べたものがいちばん良くない方向だと思います。もちろん、我々としては、そういうこ とがないように、次回に向けてきちんと取りまとめをしていかなければいけないと思っ ておりますので、よろしくお願いいたします。  本日は、お忙しい中、貴重なご意見をありがとうございました。時間がまいりました ので、本日の研究会はこれで終了させていただきたいと思いますが、次回の日程などに ついて事務局からお願いします。 ○労働政策担当参事官室室長補佐  次回の研究会につきましては6月25日金曜日午前中に開催させていただきたく存じま す。今日いただいたご意見を十分踏まえて、取りまとめに向けて文書を作成いたしたい と考えております。その過程におきましては座長はじめ皆様方に十分ご相談させていた だきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。詳細につきましては、後日ま た連絡を差し上げますので、お待ちいただければと思います。 ○谷本座長  それでは、これで終了いたします。どうもありがとうございました。 照会先:  政策統括官付労働政策担当参事官室調整第二係  電話 03−5253−1111(内線7719)