04/05/14 第1回厚生科学審議会感染症分科会結核部会結核医療に関する検討小委員会議事録           第1回厚生科学審議会感染症分科会結核部会              結核医療に関する検討小委員会                    議事録              厚生労働省健康局結核感染症課  第1回厚生科学審議会感染症分科会結核部会 結核医療に関する検討小委員会議事録  日時:平成16年5月14日(金)13:30〜15:30  場所:経済産業省別館825号会議室(8階)  出席者:        (委員)青木節子、阿彦忠之、坂谷光則、重藤えり子、森亨、山川洋一郎            雪下國雄  (敬称略)     (厚生労働省)田中健康局長、藤崎参事官、牛尾結核感染症課長            滝本感染症情報管理室長、塚本課長補佐、神ノ田課長補佐            新課長補佐、石川課長補佐ほか  議題:1 結核医療に関する現状について     2 その他  内容:次葉以下に記載 1 開会  牛尾課長  それでは定刻になりましたので、ただ今から第1回厚生科学審議会感染症分科会結核 部会の下に設置しています「結核医療に関する検討小委員会」を開催させていただきま す。委員の皆様方には、大変お忙しいなかをお集まりいただきましてありがとうござい ます。まず第1回ということもございますので、田中健康局長からご挨拶を申し上げま す。  田中局長  厚生労働省健康局長の田中でございます。大変お忙しいなか、ご参集いただきまして ありがとうございました。いま課長のほうからご説明ありましたように、非常に長い小 委員会でございますけれども、この小委員会は平成14年3月の結核対策の包括的見直し に関します提言というものがございまして、この提言でご指摘いただいている内容の他 にも、治療中断者とか、あるいは治療に非協力的な者に対しての医療提供のあり方、あ るいは多剤耐性の結核患者の増加への対応等の観点を含めまして、より一層の検討が必 要であるというようなご指摘をいろいろいただいております。特に昨年12月に、厚生科 学審議会の感染症分科会の結核部会で検討するようにというようなご指示もいただきま した。これを踏まえましてこの小委員会を開きまして、患者さんに提供します医療のあ り方について、より一層ご理解を深めていただきたいというふうに考えているところで ございます。  ちょうどいま結核予防法の改正案が、包括的な見直しに関します提言を受けまして、 結核予防法の改正案をいま国会でご審議いただいておりますけれども、それに乗り遅れ たというか、検討がまだ十分されていない部分について、特に医療に関しての検討をい ただくということで、きょうの会は開かれたということでございます。いろいろ難しい 問題がたくさん中に入っていると思いますけれども、よろしくご検討いただきたいとい うふうに思っております。  牛尾課長  ありがとうございました。それではこれから本題に入りたいと思いますが、私からの 提案をひとつと事務局からの提案をひとつさせていただきます。私からの提案は暑うご ざいますので、上着を脱いでいただきまして、リラックスしていただきましてと思いま す。それから事務局からの提案でございますが、第1回の会議でございますので、進行 役をどなたかにお願いしたいと思います。もし皆様方のご賛同をいただければ、ぜひ結 核部会長の森先生にこの小委員会の座長というものも、引き続き務めていただければと 思っておりますが、よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。(拍手 )それでは以後の進行は森先生にお願いいたします。  森座長  ご指名いただきました森でございます。***ませんが、務めさせていただきますの で、どうぞよろしくお願いいたします。着席で失礼します。まず委員長代理を選出する 必要がありますが、私のほうから阿彦委員をお願いしたいと思いますが、いかがでしょ うか。(拍手)よろしいですか。ありがとうございます。それでは阿彦委員に委員長代理 をお願いしたいと思います。本題に入らせていただきます。まずお手元の2枚目に議事 次第がありますが、これに従って進めさせていただきますが、資料の説明を事務局から お願いしたいと思います。  事務局(石川)  それでは事務局から説明させていただきます。健康局結核感染症課の石川と申しま す。よろしくお願いいたします。資料のご説明の前に、まず資料の確認をさせていただ きたいと思います。本日お配りしておりますのは、まず座席表でございまして、次に議 事概要。それから資料1といたしまして、「結核対策の包括的見直しに関する提言」 (概要)。こちらが2枚となっております。資料2といたしまして、今国会に提出をし ております「結核予防法の一部を改正する法律案について」。次に資料3といたしまし て、本日のこの小委員会「結核医療に関する小委員会」の設置について。こちらが2 枚。資料4でございますが、こちらは本日簡単なプレゼンテーションをお願いしており ます、山形県村山保健所長の阿彦先生からご提供いただいた資料になっております。最 後に参考資料といたしまして、平成14年3月20日に結核部会よりご報告いただきました 「結核対策の包括的見直しに関する提言」の前文を付けてございます。配付資料は以上 でございます。  森座長  うっかりしましたが、きょうの委員の皆さん方、お互い顔見知りの方が多いと思いま すが、念のため自己紹介をお願いしたいと思います。青木委員のほうからお願いしま す。  青木委員  慶應義塾大学総合政策学部の国際部で教えております青木と申します。よろしくお願 いいたします。  阿彦委員  山形県村山保健所長の阿彦忠之と申します。  坂谷委員  国立病院機構近畿中央胸部疾患センターと、4月にそういう名称に変わりました。旧 の国立療養所近畿中央病院と申しておりましたが、まだ手元の字面を見ないとよく分か らない、言いにくいような名称になりましたけれども、そこの院長でございます坂谷と 申します。どうぞよろしくお願いいたします。  重藤委員  同じく独立行政法人国立病院機構の元広島病院で、東広島医療センターと名前が変わ りました呼吸器科部長、重藤です。よろしくお願いいたします。  雪下委員  日本医師会の雪下でございます。感染症とそれから学校保健の危機管理、救急医療を 担当しております。またよろしくお願いいたします。  山川委員  弁護士の山川洋一郎と申します。よろしくお願いいたします。私は普段の仕事で医療 や結核のことなど考えたことはないわけでございますけれども、委員の先生方のご議論 を伺いながら、法律家としてもし何かお役に立てることがあれば、意見を申し上げさせ ていただきたいなと思っております。よろしくお願いいたします。  森座長  ありがとうございました。  牛尾課長  結核感染症課長の牛尾でございます。どうぞよろしくお願いします。  藤崎参事官  大臣官房参事官で健康担当をしております藤崎と申します。どうぞよろしくお願い申 し上げます。  森座長  私は結核研究所の所長をしております森でございます。よろしくお願いいたします。 さて、それでは資料の説明に戻らせていただきます。よろしくお願いいたします。 議題 2  (1)結核医療に関する現状について  事務局(石川)  それではまず資料1からご説明をさせていただきます。こちらは平成14年3月20日 に、厚生科学審議会感染症分科会結核部会におきましてとりまとめていただきました、 「結核対策の包括的見直しに関する提言」の概要でございます。これまでも何度か部会 等でご説明はさせていただいたところですが、本日、この検討委員会の第1回目という こともありまして、また新たにお集まりいただきました先生方もおられますので、簡単 にこちらの概要を説明させていただきます。  まず1ページ目でございますが、<基本理念>といたしまして、こちらに6点ほど書 いてございますが、今回こちらの説明は省略させていただきまして、<主な具体的な対 策の見直し>というところから、詳しく説明をさせていただきます。  まず結核の早期発見・予防ということで、内容といたしましては、健康診断のあり 方、それからBCG接種に関しましてのご提言をいただいております。こちらの指摘事 項につきましては、これまで政令改正ですとか、今回の法律、結核予防法の改正案に盛 り込むなどいたしまして対応してきておりますところですが、簡単にご説明させていた だきます。  まず(1)定期健診の見直しについてでございます。これはこれまで一律に対象者を 捉えて実施をしてまいりました定期の健康診断の方法を、見直しをしてはどうかという ことでございます。まず第1番目に、小学校・中学校の定期健康診断について。こちら は小学校・中学校での健康診断において、結核患者さんの発見される率というのも非常 に低くなっておりまして、特に小学校1年生の健診については、廃止をしてはどうか と。さらに中学校1年次のツ反を用いた健診についても廃止をしてはどうか。また、当 初は継続をしてはどうかという両論が記載をされておりましたが、最終的には、その後 検討を重ねた結果、小学校・中学校について共に健康診断は廃止ということになってお ります。なおこちらにつきましては、カッコ内の矢印以下に書いてございますとおり、 平成14年11月に結核予防法施行令の改正を行いまして、昨年の4月より小学校及び中学 校の健康診断を廃止をしております。  続きまして15歳以上、40歳未満のローリスク層。非常に結核患者の発生するリスクが 低い層についてでございますが、現行では高校1年次及びいま大学生から、それ以降、 働き始めて以後は基本的に毎年、胸部X線による健診を行うということになっておりま す。ただしこの年代は非常にリスクが低い層と考えられておりまして、今後は毎年X線 を撮る必要はないのではないかと。入学の時ですとか転任をしてきた時、就職の時、転 勤の時、ある一定の年齢のそういった節目の時のみX線を実施をしてはどうかと。こち らについては今後はより効率化を図って、めり張りをつけた健診にしてはどうかという ことの提言をいただいております。  それから40歳以上の層につきましては、現行の年1回の健診を維持すべき。またハイ リスク層、デンジャー層と書いておりますけれども、こちらのハイリスク層といいます のは、過去に結核の感染を受けておりまして、加齢ですとか糖尿病といった合併症等を 持っていらっしゃる方で、非常に結核を発病するリスクの高い方、高齢者の方、あるい はホームレス等あると特定の結核発病リスクの高い層のそういったグループですとか、 こちらのデンジャー層といいますのは、小児ですとか若年者等の結核に対する免疫のな い集団と毎日接触するなどしており、いまその方が結核を発病した場合には、そういっ た免疫のない層に感染を広げてしまうような、そういった危険性のある職業として、学 校の先生であるとか医療従事者、特に小児科でとか、そういうところの医療従事者の 方。そういった方には確実に、今後も年に1回のX線写真による健診を受けていただく べきではないかとの提言をいただいております。  また(1)で定期健診の見直しと書いておりますが、いちばん最後に定期外健診の記 載がございまして、こちらの健康で定期外健康診断として実施をされております業態者 健診といって、不特定多数の方に接触をするような業種の方は、定期外健康診断として 現在位置付けられておりますけれども、そういった方につきましてもデンジャー層と同 様の扱いにいたしまして、今後は定期健康診断として、年2回の健診を行ってはどうか という提言をいただいております。  それから(2)でございますが、有症状受診対応の強化ということで、また受診の遅れ ですとか、せっかく病院で受診をしましても、診断の遅れがありますと、またその後の 感染の拡大につながるおそれがありますので、そういった有症状受診への対応の強化 と、また(3)の接触者健診の強化。これはこれまで定期外健康診断として、患者さんが 発症した際に、その周囲の方、家族の方に行っております接触者健診ですが、こういっ たところの接触者の方というのは、最もリスクが高い集団ということになりますので、 その接触者健診を今後強化をすべきではないかといったご提言をいただいております。  続きまして(2)BCG接種についてでございます。まずこちらの1点目といたしま して、こちらも先ほど上の小中学生の定期健診のところで申しましたとおり、平成14年 11月に結核予防法施行令を改正いたしまして、こちらBCGの再接種を廃止しておりま す。(2)初回接種。乳幼児への接種の徹底ということでございます。こちらの(1)で小中 におけますBCG再接種を廃止いたしましたので、その代わりに乳幼児期におけます初 回接種をきちんと徹底をする必要があるのではないか。  またそもそもBCG接種の効果は、より小さい乳児期のお子さんの重症結核の予防と いう観点から、より早期に、できれば6ヶ月まで、1歳までの間に打っていただく必要 があるという観点から、BCG接種前のツベルクリン反応検査というものを行わずに、 直接BCG接種を行ってはどうかという案がございました。ただし、一方でやはりツベ ルクリン反応検査をすることによって、早期に患者さんが発見されているというような こともありまして、やはり現行のままツ反を続けてはどうかという、そういった両案が 当初ございました。こちらにつきましても、その後、検討を重ねていただいた結果、今 回、乳幼児期のBCG接種前においては、ツベルクリン反応検査を行わず、直接BCG 接種を導入するということで、今回の結核予防法の改正案の中に盛り込んでおります。  続きまして2ページ目でございますが、こちらはこれからご検討いただきたい課題で ございまして、結核の医療対策に関する提言をいただいているところでございます。ま ず(1)で、治療成功率向上のための措置ということで、3点ほどご指摘をいただいて おります。まず(1)でございますが、標準治療法の普及と徹底ということでございまし て、結核の医療の特徴といたしましては、国際的に見ても標準的治療法というものがあ る程度定まっております。ですから今後、そういったきちんとした標準的治療方法をま ず定めて、それを実際に臨床の場で治療を行う医師等に、その徹底を図ることが必要で はないかと。また治療期間が非常に長く、その症状が消失した後も、患者さんが内服を 6ヶ月程度続けなければならないということが指摘をされておりまして、そういった観 点からも、この提言がなされております。  次に直接服薬確認療法の積極的位置付けでございますが、こちらも今回の法改正案に 盛り込んでおりまして、また21世紀型日本版GOTSというものをお示しをしておりま して対応をしております。  次に今回ご検討いただきたいこの(3)番の発病前治療の導入でございます。こちらは 現行では結核の感染が疑われる29歳以下の方について、予防内服をしていただくという 位置付けでございますけれども、こちらは今後、結核の感染率の高い高齢者の方等に対 して、発病前の治療という観点から位置付けを検討してはどうかという提言をいただい ております。  続きまして(2)の医療の受け皿の整備でございます。こちらの(1)(2)は結核病床の ことについての提言でございます。まず(1)結核病床の機能分化の促進ということで、 近年、結核患者さんの病態といいますのは、非常に多様化をしております。そういった 様々な病態に応じた結核治療の対応をする病床の整備、機能分化を促進してはどうか と。(2)番といたしましては、また、結核病床というのは非常に現在地理的に偏在化を しておりまして、減少しているような状況がございます。その中で今後どういったとこ ろに病床を確保すべきであるか。また結核の施設につきましては、明確な施設基準とい うのが、これまで定まっておりませんので、そういった院内感染の予防の観点等から も、そういった施設基準を明確に示すべきではないかといった提言をいただいておりま す。  続きまして(3)人権を尊重した確実な医療の提供ということでございますが、こちら は冒頭に局長からの挨拶にもございましたが、この人権といいますのは、1つは患者さ ん、またその患者さんの家族ですとか周囲の方が差別を受けない。あるいは確実に治療 を受けることができるといったような、患者さんの保護をするという観点からの人権へ の配慮と、一方で、患者さんの周囲におります健康な方に対して、結核の感染を広げな い。公衆衛生上、患者さんの周囲の方に結核を感染させない、蔓延させないという観点 からの対策の強化も考えるべきではないかと。そういった観点の下に、ではどういった 行政的な適正な手続きが必要であるか。また最新の知見に基づく医療の基準を提示すべ きではないか。  また、先ほどの上の結核病床のこととも関連をいたしますが、どういった病床を確保 すべきであるか。またきちんとした治療をするには、医薬品の確保、研究開発等、国の 努力義務が必要なのではないかといった提言をいただいております。また、結核ではご ざいませんが、現在、非結核性抗酸菌症についても、治療の対象としておりまして、こ の非結核性抗酸菌症の扱いについても検討すべきではないかという提言をいただいてお ります。  最後に結核対策を進めるインフラの強化。こちらは国、都道府県の機能の明確化、あ るいは事前対応型行政という観点からの、国の基本指針の策定でありますとか、都道府 県の予防計画の策定といったことを今後強化し、取り組んでいくべきではないかとの提 言をいただいて、今回の法律改正に盛り込んでおりまして、対応をしていきたいとと考 えております。提言についての説明は以上でございます。  森座長  ありがとうございました。今の説明についてのご質問あるいはコメント等がございま したら、どうぞ。よろしいですか。それではまた後で出ましたらということにしまし て、次の資料の説明に移らせていただきます。資料2をお願いします。  事務局(石川)  それでは資料の2をごらんください。こちらのただいま説明をさせていただきました 主な具体的対策の見直しの、1.結核の早期発見予防、及び3.インフラの充実強化と いう点を中心といたしまして、本年3月8日に今国会に法律の改正案を提出いたしてお ります。改正の目的といたしましては皆様ご承知のとおり、結核予防法が制定後約50年 以上が経過をする中で、結核を取り巻く状況の変化というものがございました。そうい った変化を踏まえまして、今後、結核対策の効率化、重点化を図るべく、以下の内容に ついての改正案を提出しております。改正案の内容につきましては、ただ今の提言の内 容と重複いたしますので、簡単にご説明させていただきます。  まず1でございますが、こちらは定期健康診断及び定期外健康診断の対象者、方法の 見直しを行う。リスクの少ない方については若干緩くして、リスクの高い方については きめ細やかな健診をしていくということでございます。次に(2)は、BCG接種につき まして、早期の接種の徹底を図るため、BCG接種前のツベルクリン反応検査の廃止を しております。  2でございますけれども、こちらは直接服薬確認療法(DOTS)の推進ということ で、保健所の保健指導あるいは主治医におきまして、その患者さんに対して処方された 薬剤を確実に服用するなど、そういったことの指導するものとすると。  3でございますが、こちらは結核に関する正しい知識の普及啓発・情報収集といっ た、国及び地方公共団体の責務を規定をしております。  4番。こちらは国及び都道府県の基本指針、あるいは予防計画の策定。  5番の結核審査協議会といいますのは、現行医員が5名で、医師等に規定をされてお りますので、今後、そういった委員の資格また構成要件についての見直しを行うと。具 体的には3人以上で、医療以外の学識経験者も入れるべきであると。こちらは結核予防 法改正法案が成立しました場合には、施行日としましては平成17年4月1日を予定をし ております。法律の改正につきましては、以上でございます。  森座長  ありがとうございました。これにつきましてはいかがでしょうか。ご意見等がありま したら。よろしいでしょうか。それでは資料3のほうに進ませていただきます。お願い いたします。  事務局(石井)  それでは資料の3をごらんください。こちらは本日の委員会、結核医療に関する検討 小委員会の設置についてでございます。まず設置の背景でございますが、先ほどからご 説明いたしておりますとおり、平成14年の提言を踏まえまして、これまで政令の改正で ありますとか、今回の法律改正等の対応をしてまいりましたところでございますが、そ の一方で平成15年12月には、結核部会のほうからこちらの提言で指摘されております、 結核患者さんに対する医療の提供のあり方については、結核部会の下にさらにそういっ た臨床現場の専門家の先生でありますとか、法律分野の専門家の先生を交えました検討 の場を設けて、より詳細な検討を行うべきであるとの意見をいただいたところでござい ます。この意見を踏まえまして、この度「結核医療に関する検討小委員会」を設置する ことといたしました。  具体的な検討事項といたしましては、先ほどの提言の中にございました、(1)結核患 者に対する適切な医療提供のあり方。これにつきましては、治療を中断する方、または 治療に残念ながら協力をしていただけないような方に対して、どういった適切な医療を 提供すればいいのか。また、非常に日本では入院期間が欧米諸国に比べまして長いとい うふうに言われておりますので、そういった適当な入院期間というのはどういったもの かという、入院期間の考え方について。またどうしても入院をしていただかないといけ ない方について、その場合の適正な手続きの整備についてはどうすればよいか。こうい ったことを検討していただきたいと思っております。  次に結核病床についてでございます。こちらのいま申し上げたことにも関連がありま すけれども、結核病床の機能分化の促進。また結核病床が減少することに伴って、入院 治療というのは今後どうあるべきか。またどういった病床を整備していくべきかという ことをご検討いただきたいと思います。  最後に、こちらは発病前治療についてということで、現行は25歳以上の方について、 発病予防の観点から行われております予防内服、こちらの高齢化に伴いまして、免疫が 低下している方等の発病予防の観点からの位置づけを見直してはどうか。そういった既 感染者の発病予防の必要性はどうかといったことについてのご検討をお願いしたいと思 います。  次に1枚おめくりいただきまして、こちらに本日お越しいただいております委員の方 々の名簿をつけております。事務局からの説明は以上でございます。  森座長  ありがとうございました。資料3について、いかがでしょうか。ご意見等がありまし たら。これにつきましては、またこの次の議題が済みましたら返ってくると思いますか ら、それではさしあたり先に進みます。資料4。これは阿彦委員のほうから予め用意し ていただいた、現場のほうからの問題提起といいますか、話題提供でございます。お願 いします。  阿彦委員  事務局からご連絡いただきまして、保健所の立場からでいいのでということで、結核 医療の最近の課題や展望について、私なりの思っていること、感じていることをまとめ てまみしたので報告します。資料3でいいますと、検討事項(案)の1つ目の○の結核 患者に対する適切な医療提供のあり方についてに関連する、ここだけに絞ってまとめて みました。話をするつもりでまとめたので、冗長になってしまったので、頭のほうに要 点を書きましたので、この要点のほうはあとで見ていただくとして、この番号とメモ以 下の番号は一致していますので、このメモと書いてあるところに沿ってご説明します。  最初にこの結核の入所命令制度は強制力がない制度だということですが、(1)とい うことで予防法29条では、結核患者の家族などに結核菌を感染させるおそれがある場 合、知事は患者に対して療養所への入所を命ずることができるということで、この命令 に対する代償措置のようなかたちで、公費負担医療が第35条で、自己負担分を公費負担 するというかたちで設けられていると認識しています。これを「入所命令」と呼ぶので 「強制力」があるように私も保健所に入った時に思いましたが、まったくそうではなく て、2ページ目の冒頭にありますように、手続き的にも感染症予防のような配慮がな く、それ故に罰則もなく、強制的な執行はされておりません。ただ、28条の「従業禁止 」については罰則規定があって、間接的な強制力をもって接客業や保健医療従事者に は、こういう「従業禁止」というのは強制力を持たせて行うことはできるとなっていま す。  2つ目について、この入所命令の適否の審査について、保健所のほうで現実的には理 想どおりになっていないということなのですが、この入所命令の権限を行使するに当た って、29条の法律上は「あらかじめ」結核診査協議会の意見を聞かなければならないと いうふうに規定されておりますが、保健所が結核療養所等の医療機関から届出を受理し た段階で、もうすでに入院しているという場合が多々あります。それから全国の保健所 の診査協議会の頻度は大体平均して月2回の開催ですが、結核患者さんは他の感染症に 比べれば、私のところでも菌陽性患者は年間50人ちょっとですので、毎週1人くらいの 平均で、全国でいちばん罹患率の低い県ですけれども、そのくらいあります。  そうすると感染症法の場合ですと、命令による強制力ある入院についての診査をする 前に、72時間の応急入院の制度があって、とりあえず入院をしてもらって、人権上のい ろいろな手続きを診査ということでするわけですけれども、結核予防法上は応急入院の 制度はありませんので、入所前に結核患者の届出を受理した場合でも、入所の必要性を 個別に事前診査するのは、月2回の平均の審査の頻度では実際は難しいという状況で、 では全部事後承認でいいのかというと、それでも困りますので、どういうことをしてい るかといいますと、都道府県の結核担当部局や保健所のほうから地域の結核療養所に対 して、入所命令の対象基準というものをある程度明示しております。  山形でいいますと、うちの県は療養所が県内に1ヶ所しかありませんので、全県から 来るわけですけれども、全部で50床しかありませんが、そうすると塗抹陽性患者にまず 限定しようということで、培養のみ陽性の患者さんは入所命令の対象に原則としてしな いようにということで、基準を示してお願いしております。つまり、「こういう患者さ んを入院の対象にしてほしい」という基準を、包括的な指示のようなかたちで行って、 必要性を療養所の主治医に判断してもらっているというのが実情だと思います。  3番目は、高い入院率と長い入院期間。これらがまた地域格差があるということです が、先ほどから出ていますように、入院率が高い。2002年の統計によれば、菌陽性とし てこれは塗抹陽性も培養だけ陽性のものも含まれます。この菌陽性肺結核の登録時入院 率は全国で77.5%。塗抹陽性に限ると、結核緊急実態調査の成績がありますが、95%は 塗抹陽性だったら全国で入院しています。都道府県別には最高が福井県の97%、最低は 富山県の58%台ということです。山形も60%台ですけれども、富山の場合もおそらく塗 抹陽性に限定して入院になっているのじゃないかと推定されます。また、高齢の結核患 者、あるいは他にがん等の合併症を有する結核患者の増加が高まったことを反映して、 菌陰性であっても登録時に入院している人の割合も、全国で3割を超えています。都道 府県格差が大きくて、奈良の70%以上から、最低は11%までということになっていま す。  一方、入院期間については全国値が5.2ヶ月。ですから平均で180日に近い入院期間に なっています。国内でも地域格差が大きくて、都道府県別にはいちばん短い富山県・奈 良県で4ヶ月をちょっと切るくらい。最長が青森県の6.8ヶ月で、3ヶ月の格差があると いうのが実情です。これは命令による入院期間プラス、命令による入院を解除されたあ とも、こういう身体合併症等があるのでということで、34条の公費負担を受けながら入 院を延長している人が、結核病棟ではなくて一般病棟のほうに移って、入院を継続して いる人がいるので、こういう長い入院になっていると思います。  この入院期間についての地域格差は、入所命令期間については特に保健所の診査協議 会の機能のバラツキが1つの原因だと思います。それから入所命令の期間については、 最近の検査技術の進歩を踏まえた見直しが必要だと思います。最近目立つのは、下から 3行目のところに書いていますが、一般医療機関で塗抹陽性と分かって結核療養所に紹 介があって入所して、そこで3日間喀痰検査をするのですけれども、結核療養所の多く はもう自前でPCR等ができる状況になっていますので、入所直後の喀痰検査の核酸増 幅法による迅速検査で、結核菌ではなくて「非結核性抗酸菌」と判明して、2〜3日の 入命ですぐ解除になるという例が珍しくありません。これを結核診査協議会のほうで同 定検査の結果がすぐ分かったらば、すぐ報告しなさいとか、いろいろなシステムをきち んとやっているところは、分かった時点ですぐ解除するということを徹底していると思 いますが、そのへんが徹底していない地域もあるのではないかと思います。  それで入院後の感染性の有無について、早期評価システムということで、本当に菌が 結核菌かどうかという同定を迅速に行うことや、それから喀痰塗抹検査の実施間隔の標 準化。これは何を意味しているかというと、いま退院の基準を考えた時に、最近の多く は塗抹が連続3回陰性になったらば退院で、「入命解除してもいいですよ」というのが あるわけですけれども、そういう事情ですと、従来ですと月1回の塗抹検査ということ をしますと、連続3回となりますと、3ヶ月は入院しなければいけないと。そうではな くて、やっぱり治療開始後の喀痰塗抹検査の間隔は月1回ではなくて、2週間に1回と か週1回とか、そのへんの標準化を今よりも短くすれば、入院の短縮に向けた解決が図 れるのではないかということを書いたつもりです。  4つ目は、入所命令患者の公費負担医療と診査会の役割ですが、保健所の診査協議会 の役割というのは、28条・29条のこの人権を制限するようなところの命令入所や従業禁 止の必要性の審議が1つ。それから適正医療の普及を目的として、結核の一般医療(第 34条)の公費負担の適否を審査する。この2つになっています。問題なのは、入所命令 となった結核患者の公費負担医療(第35条)については、医療の内容について審議し、 答申する権限が法的にはありません。入所命令の適否だけを審議すればいいことになっ ております。そうなりますと、PZAを使っていない場合に、薬剤をこの薬剤ではダメ なので、35条だけれども、もっと薬剤をきちんと別の方式にしなさいとかいうことを本 来は言いたいのですけれども、法律の条文上はそういう指導をする権限はありません。 でも実際は意見として申し上げておりますが、参考意見ということで申し上げておりま すが、法律上はこうだと思います。  それから5番目は、強制力のある入院制度は、29条関連の35条とは別枠でという提案 を書きましたが、強制力のある入院制度は事例としてここに書いてあるように、多剤耐 性結核菌を大量排菌しているにも関わらず、入院を頑なに拒否して、公共の場に頻繁に 出入りするというような対応困難例というのが最近も報告されております。しかし、こ の間の日本結核病学会のシンポジウムの演者の先生方の話を聞いても、こういった事例 はあるけれども、全入院患者の1%くらいしか実際はないと。  私の保健所でも年1人か2人ですので、本当にこの人はということで入院させるの に、大変苦労するのが年間1人か2人の頻度で、決して多くはないということです。そ れでこういう人権制限的制度を創設するに当たっては、対象基準の明確化が前提になる というのが1つ。それから精神保健福祉法の入院制度等に照らしてみた場合は、強制力 のある「措置入院」相当の対象患者は、結核ではもうごくわずかだということ。精神も 非常に少なくなっていますが、わずかであるということ。大部分は「任意入院」とか「 医療保護入院」相当の感じであって、入院の必要性は、ここはちょっと舌足らずですけ れども、医療機関に先ほどの包括指示下のように、包括的にこういった患者に限定して ほしいというような指示をきちんとしていれば、医療機関の判断に任せていいのではな いかというふうに思っております。ですから今の29条の中でとなると、大部分がいま強 制力を行使しなくても、勧告に基づいて入院してくれていますので、これとごちゃ交ぜ にしてやってしまうと、かえって混乱があるのかなと思ったもので、こういう表現にし ました。  それから6番は手続上の問題ですが、ここは下から3行目のところで、その際にはと いうことで、強制力のある入院をする際には、感染症法に準じた文書による理由の提示 の手続きを準備すること。それから先ほど申しました「応急入院」の制度を付加するこ と。それから強制入院となりますと、やっぱり精神保健法や感染症法と同様に、公的関 与による患者の移送制度として、強制力を行使する場合に限ってこの移送制度というも のを付加しなければいけないだろうということ。それから勧告を前に置いた上での命令 制度にすること。こういったことが必要だというふうに思います。  7番目は、強制力のある入院の一方で公的関与に基づく治療支援ということで、治療 中断防止を目的とした公費負担制度も堅持すべきだというふうに思います。これについ てはちょっと長くなった状況ですので、4ページ目の上から7行目くらいの、結核の治 療ではというところをごらんいただきたいと思いますが、結核の治療では、他の感染症 に比べて期間が非常に長い。最低でも6ヶ月に亘る規則的服薬を必要とするということ ですが、しかし最近は患者の社会的・経済的要因(ホームレス、アルコール依存、不況 に伴う生活困窮)を背景とした治療中断が目立っております。  この治療中断に伴って、薬剤耐性結核の増加が懸念されているということがありま す。薬剤耐性例等の増加は将来の社会防衛上の脅威になりますので、本人への福祉的な 支援という意味ではなくて、将来のこの社会的な脅威を抑止するという、そういう意味 の社会防衛上の目的も含んでおりますので、いわゆる生活困窮者でも治療は完遂できる ように、治療に専念できるような公的な治療支援制度を維持すべきであると思います。 単なる福祉的な公費負担ではなくて、社会防衛目的を含んだ福祉的な支援策という位置 付けで、治療中断の防止を主目的とした公費負担医療として、通院を含めて制度を検討 すべきではないかと思います。  最後に結核診査協議会はということで、今の29条の中でやるのではなくて、強制力を 持たせた入院制度を創設した場合は別枠でと言ったのと関連ですけれども、入院治療を 大きく分けて、「感染拡大防止」を目的とした強制力のある入院と、多剤耐性菌の増加 等の将来的な脅威を抑止するための治療中断防止を主目的とした入院の2つに区分でき ると思われます。目的が異なるので、1つの診査協議会でこれを審議するのは、なかな か効率的ではないのではないかということで、目的別の部会制を敷きまして、例えばで すけれども、(1)ということで感染危険度が高いにもかかわらず、入院の勧告に応じな いような対応困難例。これは通報制のようなかたちにして、通報が合った場合、随時緊 急に審査会を開催し命令の要否を審議する。これはやっぱり事前審議を行うまでの応急 入院(72時間以内など)を前置し、その時間内に緊急な診査を行うということになり ますが、こういったことを行う部会と、もう一つは従来の診査会と同様に定期的な開催 でいい方法で、適正医療の普及の観点から公費負担医療の内容を審査する部会といった ことで、委員のメンバーもそういう意味では、こういう適正医療の普及目的の部分の審 査と、そういう人権に関わるようなところを強く審議する部分では、部会のメンバー構 成も違っていいのではないかなと思ったものですから、こういう提案を例えばでさせて もらいました。私からは以上です。  森座長  どうもありがとうございました。それでは資料はこれだけでございますが、さっきの 3番を含めまして、3番、4番はこの小委員会の主たる目的に戻りまして、フリーにデ ィスカッションを進めてまいりたいと思います。誰かご意見を話の糸口として出してい ただければと。はい、どうぞ。  坂谷委員  最後の阿彦先生のご説明された資料4は、誠にもっともだと総論的には考えました。 各論的にもまさしくこのとおりだと思います。それで法的な基準があるわけですけれど も、それを現場での判断がというか、慣用している保健所のフレキシビリティーが自治 体によって違うのだと思うのですね。それで1つご質問なのですけれども、2)の適否 の審査と役割のところで、先生のところでは「塗抹マイナス・培養プラスの場合はとり あえず命令入所にはしない」というふうなお扱いであるということをお伺いしまして、 それはそれでいいのですが、それがあとで自動的に公費負担の場合に、そのような例で は命令入所でないから、公費負担の場合には34条が相当であるというふうなことに落ち 着いておりますかということですね。たぶん結核の症例が少なくて、しかも十分きちっ と収容なさることができるという場合には、そうなろうと思います。  ところが私ども大阪のように、感染性の患者さんがたくさんいて、なかなか命令入所 的なことにも反応していただけない。入院の指示を出すのは実際は知事ですけれども、 保健所あるいは医者が命令とは何事かと、こういうふうなクレームというのはよくある 話なのですね。訴えるぞというような話があるのですね。というようなところでは、適 切に入っていただいて、確実な治療をしていただくためには、塗抹マイナス・培養プラ スでも最終的には命令入所の対象にし、その代わり35条相当の公費全額負担をして差し 上げるというふうなことをとっているという現状があります。そういうふうに現行でも ずいぶん地域によって温度差があるということは、その予防法の適応においてもあると いうことを、ご承知おきいただきたいと思います。これは委員の中でも、医者にとって は常識的なことなのですけれども、医師や以外の委員の方には、ちょっとへえーと思わ れることかもしれません。  それから3)のところの入院率と入院期間ですが、まさしくそのとおりだと思いま す。これが実例を挙げて%を出していただいているのですが、このバックに何があるか ということを考えました時に、1つは今のような判断の基準、それから患者の比率の高 い・低い、それからもう1つは病床があるから、それを埋めなければならないという状 況というのは、間違いなくあるというふうにご理解をいただきたいと思うのです。それ を埋めるためには、本来は入院不適正かもしれませんが、菌陰性の結核の患者でも結核 であって、通院治療よりは入院治療のほうが間違いなく適切といいますか、それから治 療期間も短く、治癒率がよくいけるのじゃなかろうかというふうなことも入れて、医学 的な判断も入れて、病床があるから菌陰性の結核の患者も入れるというふうな状況があ る。逆に富山県さんでは、もしかしたら病床をフルに使っても、菌陽性の患者を埋める のでいっぱいであって、菌陰性の結核の患者を入れる余裕がないというふうな状況の下 に、こんな低い数値になっているのかもしれません。  そうしますと、それがまた治療入院期間にも響いてまいりまして、あとの患者が待っ ているような、あるいはいくらでもあとを埋めることのできる患者がいるところでは、 入院期間を短くしてやっていくというのは、通常考えられることではなかろうかと思い ます。逆に言いますと、菌陰性の患者を入れざるをえないような病床のたくさんあると ころでは、入院期間も逆に長くなるというようなことがあっても、しかるべきかと思う のです。というようなことを含めて、やはり適正な地域差を勘案した適正な結核病床の 数の設定というのは、早く結論を出されるべきであろうと思われますし、バックにある 入院基準の問題及び、もちろん退院基準の問題というのは、これまた重大な問題であり ますし、適正にしかるべく早く結論が出されるべきであろうと、こういうふうに考える 次第です。  それから最後の1点は、強制力のある入院制度云々のことで、対応困難例と多剤耐性 結核になりつつある例、あるいはまさしく多剤耐性結核例ということに対する問題点 を、阿彦先生は分けて書いていただいておりまして、適切だと思うのですけれども、実 はこの間の区別がなかなかつけにくいというようなこともあろうかと思います。それで 1つの方法として、予防法外の措置入院に相当するその人たちに対する別の法的縛り で、強制的な入院というのをとるというのは一法でありますが、実はそれをするには 「どこへ入院させるか」、それからそういう症例に限ってといいますか、だからこそ入 院期間が相当長くなるわけでありまして、年余に亘る、あるいは永続排菌例では一生の 入院ということがあり得るわけですけれども、そういう人たちはどこで面倒をみるか と。それを考えた上で、この措置をとらないといけないというふうなことになろうかと 思います。でありますから、適切な場所でありましたら、実はそういうふうな強制力の ない方法でありましても、本人たちがここで暮らすのは我慢ができるというふうな状況 になりましたら、強制力がなくても入っていただけることはありうると。こういうふう にも考えられるというふうに、その種の症例の多い大阪あたりでは考えているのです。 以上です。  森座長  ありがとうございます。これについてどうぞ。  山川委員  非常に基本的なことで教えていただきたいのですけれども、入所命令あるいは従業禁 止命令は、年間どれくらい発布されているのでしょうか。それから入所命令あるいは従 業禁止命令が発布されて、それに従わない例がどれぐらいあるのか。従わないというの は、対応困難例ということのように思われますけれども、そこの数字をお教えいただけ ればと思います。それからついでに、入所命令を数日間で解除される例が珍しくないと いうのですけれども、命令において入所した中で、こういうふうに解除されるのはどれ くらいあるのか。  事務局  平成13年で命令入所の実施数ですけれども5,785件であります。従業禁止の実施につ いては、近年ございません。以上です。  山川委員  解除については。  森座長  山川先生のお尋ねは、数日間で解除されたということですか。  山川委員  はい。それから命令に従わない例はどうなのか。  事務局  その内容については、調査の状況で把握しておらないです。従業禁止はございませ ん。元々命令がされていないということです。  森座長  従わないというのは阿彦先生がおっしゃったように、もう1%以下という。  事務局  そうですね。  阿彦委員  この間の結核医療学会シンポジウムで質問が出ていましたけれども、東京病院の先生 でも大体1〜2%ぐらいではないかとか、うちの保健所で年間100〜130人くらいの登録 で、塗抹陽性患者、菌陽性で入命の対象かなと思うのは、年間50人くらいですけれど も、それで年間1人いればよいくらいです。大体そのくらいです。  森座長  それは最初から入院しない人ですか。途中でおん出てきちゃうという人もいますね。  阿彦委員  そうですね。最初に入院したけれども、中でアルコール飲んでだめだとか、何かいろ いろなことで出て行く人も含めれば、もっといるのはちょっと先生方に聞いたほうがい いのですけれども、強制力はないので逃げ出す人もいるし、うちのほうではどうしても 入院したくない人に対しては、入院するかしないかよりも、薬を飲むか飲まないかのほ うが重要なので、入院以外の薬を飲んでもらう方法を考えることにしています。  事務局  昨年、自治体の調査をしておりまして、全部で124の自治体から回答がございまして、 その中で「過去1年間、こういう命令入所に従わないで困ったような事例を経験したか どうか」ということからいいますと、「そういう経験があった」というところが47自治 体であったという回答が寄せられております。124のうち47自治体です。その際の事例 の人数が1年間で87人。そのうち多剤耐性結核が27人だったという結果です。ただこれ は気を付けなければいけないのは、各自治体を渡り歩いているような人もいますので、 1人の人が複数の自治体において命令入所に従わなかたというようなことも、おそらく 入っているだろうと思われますので、参考程度のデータかなと思いますが、そういうよ うな調査結果がございます。  森座長  何か先生方のほうから実情は?  坂谷委員  事務局からの報告に、追加ではなくて感覚的な問題ですけれども、結核医療学会のシ ンポジウムを踏まえても、例えば私どもの国立病院機構に所属する結核療養所を持つ病 院群というのは54ほどあるのですけれど、そこで1年間に各療養所で病院の規模にもよ りますけれども、1〜2例ずつ持っているというふうに考えていただいたらいいかと思 います。それから最初から患者さんとの話し合いで、もう外来の時点から「入らない、 しない」というようなことで、最初からエイヤッということで30、40扱いにしているの もありますから、そういうのも入れると、やはりいま事務局からご報告のあった数字程 度か、あるいはもしかしたら実際は2倍程度の数が上がってくるのではなかろうかと思 います。そのうちの半分か3分の1は、これも事務局からございましたように、本当に 困った多剤耐性結核患者さんが入っていると、こういうふうにお考えいただくのがいい かと思います。そんなところですけれども。  重藤委員  いわゆる困難例というのは大阪に本当に多いと思うのですけれども、少し田舎という か地方の状況でいきますと、やはり2〜3年に1人か2人という感じで通過される方で すね。行き倒れで入ってこられて、ごはんを食べて元気になったらさっさと出て行くと いう方々が、例えばリピーターもあるのですけれども、私も3〜4人を経験しておりま す。そういう方がいちばん問題だと思います。そういう方は入院されても、そのあと病 院のほうでコントロールできません。普通の病院でどう説得しても、どうやっても出て いかれますので、どうにもなりません。警察からも相談を受けて、「法的拘束力はない のですか」と聞かれたことがあるのですが、「ないのです」とお答えして、警察も 「あ、そうですか」でそれで終わりでした。ですから結局公共の乗り物に乗って行かれ るとか、そういう行動をとられています。  それからもう1つ。多剤耐性の方々ですけれども、これは説得によって入られる方も ありますけれども、長期の排菌者の方の中には、ちゃんと説明をして感染に対しての注 意を守っていただいて、ご家族と一緒に過ごされるという条件で、かなりの大量排菌を していても、家庭で過ごしていただいている方を私たちは持っています。そういう方々 はまたちゃんと別に考えるべきだと思うのです。以上です。  坂谷委員  もう1点、山川委員のほうからご質問があって、ご回答がまだない部分がございまし て、命令入所的に入院させたけれども、「あ、これは対象でない」ということで、すぐ もう帰っていただくというのが、非結核性抗酸菌症の一部にあるのですけれど、この 頃、第一線の病院さんで診断力が向上しておりますので、だんだんそういうのは減って いって、最初からそういうのは療養施設には来ないということが多くなっております。 ですけれど中にやはり菌が出ているからということだけで送られてきて、入院をするこ とになりまして、専門施設で「ああ、結核ではない」ということで帰っていかれる方も ままあるのです。ですけれど、その方の比率というのは、非常に低いというふうに考え ていただいていいと思いますし、医学的に考えて、確かに間違いをしたわけですけれど も、そんなに問題視することでは、現場では僕らはないというふうには考えています。 数字的にはいま問題になりました、困った症例相当か、それより少し多いでしょうか ね。重藤先生、どうでしょうかね。率としては非常に低いものだとお考えください。  雪下委員  ゛チェックされても、どこが引き受けてどこが責任もって管理できるかと言われた ら、いま結核の医療機関でそういうところはないのじゃないかと思います。  森座長  その他、ございますか。青木先生、いかがですか。  青木委員  直接には関係ないのですけれども、日本は結核患者が非常に多い国だということを読 んだことがありますけれども、それはどういう理由によるものなのでしょうかという質 問で、結核に関しては他の感染症とは違って中心国でというのは、なぜそうなっている のかということをちょっと教えていただきたいのですけれども。  森座長  私の専門分野ということなので。基本的には歴史的な理由だというふうに考えていま す。実は今でこそ日本とアメリカの結核の罹患率の流行の程度の比率は、大体5:1な のですけれども、アメリカでも19世紀には結核は大流行で、日本より多かった時代があ るのですね。日本がいちばん多かった時代よりまだ多かった。ところが産業革命が進ん で、世の中の生活水準が向上してきますと、結核はだんだん減ってくるのですね。それ でもう20世紀に入った時は、アメリカはもうどんどん結核が減っていた。  ところが日本はその頃産業革命ですから、明治から大正にかけて結核がどんどん増え たのですね。1918年にいちばん死亡率が高くなるのですけれども、そのあと少し減り出 すのですが、日本は戦争に入ります。それでまた増え出すのですね。それで戦争が終わ るとガタンと減るのですが、その時にアメリカと日本の結核の死亡率の開きが5:1か ら6:1なのですね。そのままアメリカも日本も近代的な結核対策を推進して、ほとん ど平行して結核が減ってきている。ただ、残念ながらそれがアメリカにキャッチアップ しない。そのまま平行状態が今まで続いているということなのですね。ですから基本的 には日本の結核は、歴史的に流行がずれているという、そういうことだと思うのです。  ただ、今の日本の問題は、戦後急速に結核を減らしましたけれども、結核が大流行し ていた時代に生まれ育った人たちが、70、80で生き残っているわけですね。その人たち が高齢化して、しかもその人たちの人口比率が増えたということがありまして、そうい う人たちの影響、過去の60年、70年前の影響が、いま高齢化社会に伴って繰り返してい るというか、しつこく残っているというか、そういう状態になっていて、今の日本の結 核が減りにくいという原因になっているのですね。  あともう1つは、都市のそういう病理といいますか、これはアメリカが70年代、80年 代に経験して、これは今でもそうなのですけれども、そういった都市の不健康者階層 が、日本でも目立つようになってきたということで、そういうのが諸々なって今の状態 になっているということです。  青木委員  ということは、ホームレスが多いとなると、やはり結核が…。  森座長  アメリカなんかに比べて、日本のホームレスが多いかどうか知りませんけれども、ホ ームレスの人たちの中に結核が多いのは、アメリカも日本もまったく同じです。  青木委員  何らかの健康問題が起きて、行き倒れになんてならない限りは、ホームレスであった り日雇い労働でということがあっても、何もできないわけですね。健康診断を定期的に というわけにもいきませんし。  森座長  アメリカなんかでやられていることは、ホームレスであろうとなかろうと、なった結 核は必ず治す、確実に直すという。それがいちばん大事なことだということで、どこの 国もやっていると思います。  青木委員  でもそれは強制力は。  森座長  必要に応じては強制力ということも言われていると思います。アメリカの場合、ニュ ーヨークでは結核患者の3割ぐらいがホームレスなのですけれども、全部の患者のうち で、強制的な入院を経験した人は4%ぐらいと言われています。ですからホームレスが 7割もいるというにしては、それほど多いわけではないですよね。ホームレスが3割、 薬物常習者が7割、外国人が4割というような大変な状況なのですけれども、その割に は強制的に治療されられるという人は4%というのは、あまり多くないのじゃないかな と思うのですけれども。  山川委員  先生、いまおっしゃったのは、例えばEU、ヨーロッパではどうですか。  森座長  ヨーロッパもホームレスの問題と外国人の問題は、まったく同様です。国によって少 し違いはありますけれども、やっぱり受けた問題はホームレスに集中しています。やっ ぱり日本より半分から5分の1ぐらいに少なくなっていますけれども、その中ですね。 その他、ございませんか。  坂谷委員  非常にマイナーな話ですけれども、資料1で、他の資料にも出ていますが、(2)ペー ジの上段に結核の医療対策で(1)(3)の発病前治療の導入で、これはこのとおりなの ですが、言葉の問題です。どうしようもないのですが、発病前治療というのは私ども 「予防内服」と言っているのですね。これが一般の方とマスコミの一部には、本当の治 療と予防的治療との混乱が見られるといいますか、集団感染事例がよくこの頃あるので すが、その中の一部の人が感染を受けて保菌者になったかもしれない。そういう判断を ツベルクリンでやりまして、発病前治療をやります。そうしますと、「あ、治療か」と いうことで、予防内服の対象者でありまして、今の青木委員からの質問ともちょっと関 係あると思うのですけれども、いわゆる他の病気の保菌者とは違うのですけれども、日 本名人の中にはいわゆる保菌者状態の人がたくさんいるから、発病者がたくさん出ると いうことだというふうに言い直すことが、森先生の話もできると思うのです。  それに対する予防内服と本当の治療とは区別しないといけないのに、集団感染事例が 出ました時には、その予防内服の対象者を全部発病者のように間違ってマスコミで喧 伝、報道されるというような事例が、今まであったように思うのですね。これは我々と いうか、発表者のほうの説明の不足もありますけれども、発病前治療と本当の治療とい うのは、全然違うものであるということを、もう少しはっきりくっきり何とかしない と、世の中に混乱を起こすような気もするのです。マイナーな話ですけれど。  森座長  ちょっと私からコメントさせていただきますと、ちょっと痛し痒しなのですね。この 発病前治療という言葉を導入した時は、アメリカがちょうど「潜在結核感染症の治療」 というので、予防内服ではないと。予防というような生ぬるい考え方ではなくて、もう すでに病気がある。その病気を治療するのだという考え方を強く押し出しましたよね。 実を言いますと日本はこの予防内服ができた時から、初感染結核の治療という口実でこ の制度を運営したわけですね。34条の適用をしたわけですね。日本とアメリカは同じに なったというようなちょっと皮肉っぽい印象を持ったのですけれども、そのあと日本は マルショというのは初感染結核と紛らわしいから切り離すということで、マルハツとい う屋号みたいなカテゴリーを作って予防という色彩を強く出したのですけれども、もう 1回ここで今度発病と言わずに治療という、治療に戻ったようなことになっているので す。健康保険とか結核予防法の建て前からは、予防的に薬を飲ませることはできないと いうことがあったので、無理やりに治療にしたということもあるのですけれども、ここ で書いているのはちょっとそれと違うニュアンスがある。もっとしっかりやりましょう ということ。  阿彦医員  私は先ほど話した例えば退院を、もっと入院期間を短くするために、アメリカのCD Cなどで出している退院基準というのは、連続塗抹3回陰性とかそういうのが前回も出 ていますけれども、塗抹検査の間隔というのは今どうなっているのでしょうか。例えば うちの山形病院ですと、月に1回しかしていなかったのが3回連続ということで、では 月2回にしましょうかといった時に、それが保険の審査で月2回やっても認められるか というか、診断のためだと連続3回・3日連続でやっても、健康保険で請求できるので すけれども、治療が始まってからというのは連続3回は認められないので、今までは月 1回が標準のように言われていたので、月一遍以上やると保険で請求できなくなるのじ ゃないかという、そういう心配があってということだったのですけれども、県内のそう いう審査の先生に聞いたらば、「2回でもそういう基準があるのならば、大丈夫ですよ 」という返事をもらって、「月2回やりましょうか」みたいなことを、山形では、最近 やっているようなのですけれども、先生方のところはどうなのでしょうか。  坂谷委員  公的な制度では阿彦先生のおっしゃるとおりですけれど、当院ではあとでまた重藤先 生がおっしゃいますでしょうけれど、近畿中央病院では2週に一遍ずつもうやっていま す。それで堂々とお金をもらっていますということですね。それからもう1つ、阿彦先 生のお話で言わないといけないと思うのは、「感染性がなくなったら退院させなさい。 排菌が陰性であることを確認させたら、退院させてもいいですよ」になっていますね。 日本人の性格として100%を求めるのですよね。だから僕らのところでも患者を説得し、 周りを納得させて退院させているのですけれども、果たして塗抹が陰性だけで本当に周 りに影響がないかということを100%保証できるかという質問が出た時には、答えよう がないのですね。  この間の結核病学会でも、アメリカのデータとして、塗抹陰性者でも周りに感染させ た事例があるとか、それからやっぱり退院を早くさせすぎてというか、向こうの基準で 退院させても、やはりその後の感染者は発生は0%ではないというのは、これは当然の ことです。それを日本人の市民が受入れ可能かと。それでいいのだと。経済的にも医学 的にも社会防衛上もそれでいいのだと。天秤をとって、0ではないけれども、それを容 認するというふうにおっしゃっていただかなければ、なかなかこれを実行には移しにく いなあという感じもあるのです。後半のことはともかく、前半のことを。  重藤委員  私の広島病院でも去年かもうちょっと前からですか、月2回の2週毎の検査です。長 期入院の方は月1回にしていますが、退院を控えている方というのは2週に1回ずつし ています。場合によって非常に退院をいろいろな事情で急がれる方は、もう追加追加で どんどんやっています。それで全員にはしていませんので、今のところ保険請求上、問 題は出てきていません。退院の基準につきましては、いま学会の治療委員会のほうで作 ろうということで、私も原案のたたき台を作りまして、委員のほうにもう投げかけたと ころなのですけれども、実は3分の1ぐらいの委員からしか意見が返ってきていません けれども、大体これでいいのじゃないかという感じで返事が来ています。  私の考えた原則というのを申し上げますと、まず条件として大きく分けて2つ作りま した。まず前提が、退院する前に適切な医療が提供し続けられること。治療が終わると ころまで行けるという見通しが立っていることと、それからもう1つ、感染性の観点か ら退院していいのじゃないかという、両方の基準を作っています。まず適切な医療の提 供と治療を終われるようにということで、医学的に治療が継続できるだろうと。それか ら全身状態が良好で、入院していなくてもいいとか一般病棟に移れるとかそういう状況 であると。それから退院後も患者さんが治療を続けるであろうという見通しがたってい る。ですからもうこれは退院したら、必ずお酒を飲んで、薬を飲まなくなるだろう、通 院しなくなるだろうという方は、今までの経験として私たちは退院させません。みすみ すもう治療脱落が分かっているのに退院させられないということで、なだめなだめ居て いただいています。  それから感染性の観点としては、先ほど坂谷先生が言われましたように、やはり社会 の要求する基準、それから他の病院に移す時の基準、特に法の施設とか病院に移ってい ただきたいと思う時に要求される基準ってすごく厳しいといいますか、滅多に受けてい ただけないという感じです。望ましい達成基準として、かなりきつい基準を1つ作りま して、これが塗抹3回連続陰性とかいろいろ条件を付けています。その条件が達成でき ない場合には、例えば感染性について患者さんが理解して、そのように行動できると か、化学療法がちゃんと入っているとか、そういう条件を入れて、これが満たせればオ ーケーと。それも満たさないけれども、どうしてもという場合でも、こうこうこういう 条件が整えばいいでしょうというふうに、3段構えで基準を作って、さあどうしましょ うかねと、相談をする前の段階なのですけれども。  森座長  ありがとうございます。ここらへんの議論は新しい結核治療の考え方の一部分ですよ ね。これを学会が出す。それを行政が制度に取り入れるわけですけれども、それをもっ とフレキシブルに。もう今の入院の基準というのは、確か10年以上前にできたものです ね。その間、ずいぶん状況が変わっているわけですから。今のは半年でしょう。4回連 続培養で陰性を確認してという。そうするとちょうど6ヶ月になることになっているの ですよ。そうやって作った制度ですからね。今から見れば話にならないので、それをま だ引きずっているというところがあるのです。それをいかにフレキシブルに行政が対応 できるかという問題があると思うのですね。あとは阿彦先生が言われたように、それを 審査会がそういう指導性を持って、現場に還元できるかという問題だと思うのですね。 さて、その他どうぞ。  雪下委員  先生、教えていただきたいのですが、3ページの5)のところですけれども、頻繁に あるわけではないけれども、対応困難な例があるとして、それを押さえるには、やはり 「感染症法」に準じたいろいろ人権上の問題を考慮したものを結核予防法の改正で作る ということを言われているのだと思いますが、その4〜5行あとのところに「強制力の ある入院制度を創設するのなら」という、この強制力というのは、感染症法における応 急入院のことをいうわけではないのでしょうか。  阿彦委員  いや、今の感染症法を1類2類感染症の入院と同様のことを言っているのですが。  雪下委員  ならば、そうするとこの現行制度と別枠の制度ということになると、結核予防法以外 の法律でということになるのでしょうか。  阿彦委員  いや、通常いま入院治療が必要だという結核患者の大部分は、主治医からの説明で、 治療を受けてきちんと治す目的で納得して入院をしていただけるものですから、そうす ると、それに従わないであるいは逃げてしまったとかそういった場合に、例えば精神保 健福祉法だとかそういう場合に、元々治療中の人が治療を中断して具合が悪くなってち ょっと体調を崩してとなった時に、何か自傷他害のおそれがあるような事態になって、 通報というシステムがありますね。この方は本当は入院しなければいけないのだけれど も、社会防衛上、もう放置してはいけないのだけれど、どうしても病院の力では入院治 療に持っていけないというあたりの人を、いま結核予防法上はそういう患者さんを入院 させるための通報制度みたいなものはありませんので、それに応じてくれない人につい ては、そういう通報をもらって、臨時的・緊急的な審査会を開いてやるような、そうい うニュアンスを私は持ったものですから、今のシステムとはちょっと違うなということ で、ここに例えばで書いてみたところです。  雪下委員  分かりました。ありがとうございました。  森座長  その他、どうでしょうか。まだ病床についてはまだ話が出ておりません。結核病床の 機能分化の促進。入院については少し話が出ていましたね。  坂谷委員  その点について坂谷のほうから申し上げますけれど、先ほどらい話が出ておりますよ うに、諸外国に比べても日本での結核患者の、任意が適切であろうと思われる患者の任 意期間も非常に長うございます。率も高いし長うございます。これを世界的なトレンド に合わせて短くしていこうというのは、正しい方向だと思われます。そうしますと、一 方ではちょろっと話が出ましたように、特に地域差がございます。大阪とか関西地区で は結核病床を持っている公的な病院、私的な病院でも、大体今のところ8割方は埋まっ ております。それでも2割は空いていると。それは患者がいないからなのですね。  ところが山形さんのように全県で1つの療養所で50床しか結核病床がないというよう なところでも、空きがあろうと思いますね。その他の東北地方の各県の結核病棟、それ から北海道の結核病棟はガラガラであります。これは社会防衛上、必要な空きというこ ともできようかと思いますけれども、医療経済的には非常に無駄な話でありますし、も う一度前半の話に戻りますが、入院基準をきちっとし、退院基準をきちっとし、入れる べき患者を入れ、入れなくてもよい患者は入れない。しかも適切な入院期間で早く帰ら せていくということになれば、さらに病床が空いてくるというのは自明の事実でありま す。  さらに諸外国に比べると、患者は多いというものの次第に減りつつありまして、大阪 府下でも、昨年は一昨年に比べると新規の発生患者数が8.8%減少しております。この 傾向でいきますと、非常な患者の減少というのはもう目に見えているわけで、残りまし た結核病床をいかにするか。これは問題なことだと思われます。でありますから、最初 の発言を許された時に申し上げましたように、結核病床の適正な配置と数を考えるとい うことは至急の課題であろうと思う次第です。以上です。  重藤委員  非常に空いている地方の病院の立場からいきますと、昨年、まだ広島病院の頃、結核 病床が100床あるのですけれども、45ぐらいまで減りました。2戸病棟がありますので、 感染性の方と非感染性の方、特にその方には非結核性抗酸菌のための入院とか、後遺症 の入院の方を集めて、感染性の方は一戸病棟で足りているのですね。その感染性の病床 が19まで減ったことがあります。管理者というか経営面から見れば非常に苦しいので、 どうしようかなと思いつつ、医療のほうの良心に従いまして、バッサバッサと退院でき る人は退院していただいたということでです。だけどそこまで減りますと、やはりちょ っと居たいのなら居ていただきましょうかねという、そういう延長がもうどんどん出て きます。当然だと思います。地方ではかなりのところがそういう状況であって、ある程 度は病床利用率を保たなければいけないから、もうちょっと居ていただきましょうかと いうのは確かに多いです。病床を集約しようとしても、県のほうがいい顔をしないとい うので、なかなかうまく集約できない。効率よく病床が運営できないと。  それから陰圧室とか部屋の状況でいきますと、陰圧室を20床作っていただいています けれども、私が陰圧室をつくりますよという時に、何か案を出してくれと言われまし て、私は大体計算して、「個室は全部で8床あればぎりぎり足ります。余裕を持っても 10床あればいいのじゃないですか」と言ったのですが20床いただきました。よその施設 に聞くと、どこも一律20床で、なんという無駄だろうと実は思ったのですけれども。実 際に陰圧室でなくてもいい方も利用していただいて、かなり埋まっていると。今月にな りましてかなり入院患者さんが多くなって、波がありまして、かなり変動があるので、 もちろん余裕は要ると思うのですけれども、それでも50床のうち30人台です。こういう 状況です。ですから非常に非効率的で、基本点数も低いわ、利用率も低いわで、病院と して医療機関としては非常なお荷物になっています。  山川委員  森先生、もう1つ。基本的なデータで、日本に結核病床というのはいくつあって、い ま全国でその何割が占められているのですか。  事務局(石川)  平成13年10月1日現在の数字なのですけれども、こちらは結核病床が総数で200,847 床となっております。それから平成14年10月1日現在の厚生労働省管轄の結核病床数が 8,216床となっております。13年度の利用率が45.3%でございます。あ、43.7%です。  事務局  若干補足させていただきますと、先ほど厚生労働省所管というお話で説明させていた だきましたが、かなり病床数を絞ってきているようでして、13年の10月1日現在が 10,387であったものが、16年の4月1日現在のもので約5,000ちょいぐらいまで減って きていると。これはちょっとデータの収集が違うのであれなのですが、半分ぐらいまで 減ってきているという状況がございます。  森座長  その他、いかがでしょうか。検討案事項に書かれている項目は、大体少しずつカバー されているかなと思いますが、もちろん何回かこの回を開いて、議論を深めさせていた だきたいと思います。一応さしあたりきょうはこれ以上ないということであれば、次の 予定をお願いします。 3 閉会  牛尾課長  ありがとうございました。次回の日程につきまして、また座長の森先生ともご相談さ せていただきながら、設定させていただきたいと思います。我々としましては、資料3 の2の検討事項(案)として、きょうは医療について、全体が医療でございますけれど も、結核患者に対する適切な医療提供のあり方について、フリーディスカッションとい うかたちにさせていただいたわけでございますけれども、この検討事項の○が3つ書い てございますが、こういった事項について順次資料等をお示ししながら、さらに議論を 深めさせていただきたいというふうに思っております。日程等につきましてはまたご案 内させていただきますので、なにとぞよろしくお願いします。本日はありがとうござい ました。                                     <了> 照会先:厚生労働省健康局結核感染症課結核対策係 電話 :03-5253-1111(内線2380,2387)