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平成16年4月21日

社会福祉法人 全国社会福祉協議会
全国身体障害者施設協議会
 会長 徳川 輝尚


「障害者施策と介護保険制度との統合にあたって」
− 全国身体障害者施設協議会からの提言(第1回提言)−


提言の背景
 支援費制度が施行されて1年を経ようとしている今日、障害者施策を取り巻く情勢は大きく変化しており、社会保障審議会介護保険部会、障害者部会等で障害者施策を巻き込んだ論議がなされている。
 さらに、厚生労働省では介護保険法附則第2条に基づき平成17年に予定されている介護制度改革について、福祉・医療・年金など制度横断的な関連諸施策の総合的な調整を行う事を目的として、「介護制度改革本部」(1月8日付)が設置され、その主な検討項目は、「介護保険と障害保健福祉施策との関係」、「介護保険と年金の関係」、「介護保険と医療との関係」、「介護予防と各種ヘルス事業との関係」、「介護事業計画と各種地域計画との関係」と急速な展開を見せている。
 全国身体障害者施設協議会(身体障害者療護施設・身体障害者更生施設により構成、以下「協議会」という)でも昨年、「社会保障に関する研究委員会」を立ち上げ、「介護保険制度との統合に向けて」(中間報告)を報告し、「障害者施策と介護保険制度との整理・統合に向けた身障協の取組み方針」(12月22日)を提言し、協議会としての共通認識を表したところである。
 しかし厚生労働省をはじめとする制度改革の進捗は非常に早く、平成17年度通常国会法案提出に向けて初夏までに一定の方向性を示す事を明言している。

全国身体障害者施設協議会の決意
 このような流れの中で、協議会では新たに拡大正副・制度・予算対策委員会を設け、利用者の意見も取りつつ、協議会の立場を明確にした「介護保険制度との統合に向けて」(社会保障に関する研究委員会・最終報告)を受けて検討した。
 高齢者施策の分野では「2015年の高齢者介護」報告において新たな視点から具体的な提案がなされている。さらに障害者施策には、それ以外の社会参加や自立支援などの機能も重要であり、協議会ではこれまでもその取り組みを積極的に行ってきた。
 協議会を構成する施設は、障害者施策の拠点として、介護のみならず自立支援・生活支援の拠点として重要な役割を果たしているが、今後さらに機能を充実させる決意である。
 すなわち、協議会を構成する施設の持つ諸機能の中には、現行の介護保険ではカバーできないさまざまな機能をもち、「介護」保険という範疇では収まらないものもあり、協議会を構成する施設が新たな保険の拠点機能を担い、制度発展の牽引役を果たしうると考える。
 また、施設対在宅という枠組ではなく、協議会を構成する施設は入所による利用者のみでなく、地域の障害者を支援することが求められている。
 すでに協議会においては、「重度障害者の地域移行プログラム検討委員会」、「療護施設の小規模化に関する調査研究委員会」、「在宅サービス委員会」の「在宅サービス推進アクションプラン」などの取り組みを中心に、入所による利用者の地域生活移行のプログラム化や在宅サービスの推進にも全力を傾注すべく準備しているところである。

新たな保険制度への提言
 こうした基本的な協議会が明らかにした機能と役割を踏まえ、介護保険統合に向けた議論では、協議会を構成する施設の位置づけとあるべき姿をより鮮明にし、介護保険に新たな機能とその拠点施設として、積極的に役割を果たす決意である。
 その上で、介護保険制度全体の見直しに積極的にアプローチする必要があると考える。
 こうした理念のもと、本提言を作成したところであり、制度改革において障害者福祉施策が介護保険制度と統合の際には、基本方針にそって対応し、新たな保険制度への提言内容の実現に向けた取り組みをすすめることを内外ともに明らかにするものである。
 今後は施設利用者、在宅サービス利用障害者にとっての課題は何なのか、利用者のニーズを把握するとともに、身体障害者更生施設の現状と課題、重度重複障害者の生活支援の実態と課題などを様々な調査・検討により検証し、その結果に基づいた提言を時宜を得て連続的に行うものである。
 今回は、第一回目の提言である。

1.基本方針
(1)  利用者の主体性と自立生活支援の理念をより明確にし、利用者の自立と社会参加の実現を可能とする安定的な新しい保険制度の創設を目指すこと
(2)  高齢者支援と障害者支援の特性の相違を明確にするとともに理念にふさわしい支援認定項目及び認定手法、必要とするサービスメニュー、負担のあり方、給付基準及び指定基準を確保すること
(3)  協議会を構成する施設を新しい保険制度の対象施設として位置づけること

2.支援認定について
   認定については、障害における特性に鑑み、(1)社会参加への視点、(2)多様な障害・重複障害等の視点、(3)一連の生活行為に関する支援・自立支援の視点、などを加味した介護の必要量と時間を評価に盛り込むこと

3.サービスメニューについて
(1)  支援費サービスと介護保険サービスとの整合性を図り、障害者の自立支援に向けた取り組みが確保できるように、リハビリテーションおよびエンパワメントを重視したサービスを取り入れた、サービスメニューを構築すること
(2)  現在使われているサービスは、新しい保険制度でも引き続き利用できるように確保すること
(3)  高齢者支援と障害者支援の量的・質的相違を踏まえたサービスの提供システムおよびサービス基盤を整備すること

4.ケアマネジメント体制について
   障害者に対するケアマネジメントがニーズに対応できるよう、介護支援専門員と障害者ケアマネジメント従事者の整合性を図るとともに、介護保険の理念と支援費の理念にふさわしいケアマネジメント体制の確立を図ること

5.費用負担について
(1)  障害者の収入の現状実態を把握し、保険料及び利用料負担の水準を設定すること
(2)  支援費等で網羅されたサービスについては、利用者の負担能力を考慮した費用負担とすること

6.他施策との連携について
   社会保障全体における所得保障、就労保障等との関連を整理し、新しい保険制度の利用と所得保障全体のバランスを図ること


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