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今後の精神保健福祉対策の基本的考え方(将来ビジョンの枠組み)

 昨年9月以降、「精神病床等に関する検討会」及び「精神障害者の地域生活支援の在り方に関する検討会」において、今後の精神保健福祉対策の在り方に関し検討が進められてきたが、各検討会で主たる関心事項として意見交換がなされた点を対策の基本的考え方(将来ビジョンの枠組み)として整理すると、大きく次の3点に集約される。

1. 良質な医療を効率的に提供し退院を促進する体制づくり(主に精神病床検討会での議論)
 (1)患者の病態に応じた病院・病床の機能分化
  ○  入院患者の早期退院を促進するため、精神病床の機能分化を促進し、患者の病状等に応じた適切な医療を提供できる体制を整備することが必要である。
  ○  急性期においては、医師、看護師等の人員体制を充実させ医療密度の濃い仕組みを作ることにより、質の高い医療を確保し、入院の長期化を防ぐことを目的とすべきである。
  ○  退院に向けたサポートが必要な患者に対しては、在院の長期化を防ぎ、地域ケアへの円滑な移行を図るための集中的な社会復帰リハビリの提供体制の構築を図るべきである。
  ○  重度精神障害者や日常生活能力の低い長期入院の高齢者群に対しては、それぞれ専門的な入院医療を行える体制や必要に応じた新たな施設類型等が必要である。
  ○  痴呆疾患の患者については、適切な治療と介護を含め、患者の状態に応じた処遇の在り方を検討することが必要である。

 (2)入院形態ごとの入院期間短縮
  ○  措置入院や医療保護入院等で入院した患者については、適切な医療を提供し、早期に退院や任意入院の形態に移行していく地域的な取組も重要である。
  ○  任意入院で入院している患者についても、適切に病状を確認し、早期の退院を促すような仕組みが重要である。
  ○  現在の長期入院患者に対しては、病院との連携のもと、患者に対し地域生活に関する適切な情報を提供しつつ、段階的に地域生活に移行させる枠組みを都道府県単位で整備する必要がある。

 (3)処遇内容の改善
  ○  身体的拘束や隔離などの患者に対する行動制限については、病状等に応じて必要最小限の範囲内で適正に行われることが必要である。
  ○  任意入院患者については、原則として開放処遇を受けることが必要であり、制度の適切な運用を確認できるようにすることが必要である。


2. 退院後等における地域生活を継続する体制づくり(主に地域生活支援検討会での議論)
 (1)ライフステージに応じた住・生活・活動等の支援体系の再編
  ○  現行の支援体系について、障害者の状態等と社会資源とをどのように結びつけるのか、自立に向けて必要な能力を向上するためにはどのような機能が必要なのかといった視点から再検討し、システムの再編を図ることが必要である。
  ○  地域での支援体制を確立することにより、精神障害者が施設やグループホーム等を経て自宅又はアパートで生活できるような取組を進めるべきである。
  ○  特に現役層においては、社会の中で役割を持ってもらうための就労支援の方策が重要であり、本人の状態、職業能力に応じて授産や福祉的就労から一般就労へと結びつけるための多様な雇用・就業機会の確保を含めた施策の展開が必要である。
  ○  訪問サービスやショートステイなどの居宅生活支援を充実させ、使い勝手を良くすることや、非公的サービスの活用を通じて、在宅中心の地域生活を支援していくべきである。
  ○  精神症状が持続的に不安定な障害者においても、地域における安定した生活という選択肢を確保することができるよう、総合的な支援を包括的に提供できるような基盤整備を進めていく必要がある。

 (2)ケアマネジメント体制の確立
  ○  地域生活を総合的に支援するケアマネジメント体制を制度化することが必要ではないか。その際、ケアマネジメントの範囲としては、重点的に介護を必要とする高齢者と異なり、公的サービスのみならず、就労や教育等の広い分野を対象とする必要がある。
  ○  ケアマネジメント体制については、市町村や地域生活支援センター等相談機能を有する既存の社会資源を活用しつつ、地域性や専門性の高い案件等についても調整機能が発揮されるよう、重層的なものとすべきである。

 (3)国・都道府県・市町村の役割分担
  ○  国は、地域生活支援を軸に、既存の医療対策、社会復帰対策、地域福祉対策の再編を進めていくべきである。
  ○  都道府県は、地域の実態を十分に分析した上で、良質かつ効率的な医療の提供、退院促進方策、救急、通院等の地域医療などを含め、地域支援体制の整備を計画的に押し進める体制を整備する必要がある。
  ○  市町村は、ライフステージに応じた住・生活・活動等の支援体系を考えていく上で、身体障害者や知的障害者と同様、地域に最も身近な存在としての役割を果たしていくべきである。


3. 新たな仕組みを支える基盤づくり(両検討会での議論)
 (1)評価・チェック体制
  ○  精神医療審査会の機能の充実と適正化を図るとともに、第三者評価の仕組みや指導監督等により、精神医療の質を評価する体制を強化すべきである。
  ○  地域の福祉サービスについて、その機能を評価する仕組みが検討されるべきである。

 (2)新たな仕組みを支える人材の育成・確保
  ○  精神医療の質の向上を目指して、医師、看護師、精神保健福祉士等の教育・育成を図ることが必要である。
  ○  ケアマネジメント体制等の確立に際して、資質の高い人材の育成方策を検討すべきである。

 (3)財源配分の在り方
  ○  精神医療に係る良質な医療の効率的な提供に向け、病床等の機能、患者の病状に応じた診療報酬体系の見直しが必要である。
  ○  精神障害者施策における財源については、今後、地域生活を軸として考える上において、福祉への配分の重点化を図るべきである。



精神病床等に関する検討会における中間まとめ

精神病床等に関する検討会においては、
  精神医療に係る将来ビジョンと、現行制度下での当面必要な措置としての「精神病床の基準病床数の算定式」について中心的な議論がなされたが、その概要は次の通り。

将来ビジョン関係

1.良質な医療を効率的に提供し退院を促進する体制づくり
(1)患者の病態に応じた病院・病床の機能分化
  (1)基本的考え方
 ○ 現在、新規入院患者の約7割が入院して3ヵ月以内に、8割強が1年以内に退院している。持続的に精神状態が不安定であり医療の必要が高い者を除き、入院患者は長くとも1年以内で退院できるように急性期医療体制の整備確保や、在院長期化を防ぐような体制の整備が必要である。
 ・ 高齢化している現在の長期入院者に対しては、患者の病態や意向を踏まえ、地域支援体制の充実に応じた退院に向けた対応や介護等の整った入院環境の確保が必要ではないか。
 ・ 7万2千人の中には、長期入院の方もいれば、比較的入院期間の短い人もいる。また、病態も重い方から軽い方まで様々であり、いわば精神障害者全体の問題の一部であり、全体的な見直しが必要。

(2)急性期の患者に対する適切な医療を行える体制の確保
 ○ 入院期間が短い方ほど、社会的機能を保ったまま退院でき、社会適応しやすいことから、急性期の患者に対しては、医療密度の濃い適切な医療を行うことができる体制を確保することが重要である。
 ・ どのような地域でも、だれもが安心して精神科救急医療にかかることができるような体制を確保する必要があるのではないか。
 ・ 急性期の患者に対する適切な医療を行える体制を確保するためには、各病院の病棟・病室・病床単位で実施を選択できる柔軟な仕組みの導入や質・量の双方の面で充足した医師・看護師の体制整備を行うことが必要ではないか。

(3)在院長期化の防止
 ○ 入院患者のうち、医療ニーズが減るにもかかわらずそのままでは在院長期化の可能性の高い者に対しては、医療サポートに限らず地域生活を送るための総合的なサポートを提供することで、在院長期化を防ぎ、退院を促進させることが可能である。
 ・ 退院に向けたサポートが必要な患者に対しては、在院の長期化を防ぎ、地域ケアに円滑に移行できるように、病院外の地域資源を活用した社会復帰リハビリテーションが専門的、集中的に行えるような体制の構築を図るべきではないか。

(4)重度精神障害者の病状に応じた医療環境の確保
 ○ 医療の必要が高い重度精神障害者群は、持続的に精神状態が不安定である場合が多いことから、専門的な入院医療を行える体制を確保することが重要である。
 ・ 重度精神障害者に対する適切な医療を行える体制を確保するためには、適切な人員配置の確保など、入院医療の質の向上が必要ではないか。
 ・ 重度精神障害者が地域での生活が選択肢となるよう、医療も含めた生活支援を包括的に支援する枠組みが必要ではないか。そのためには、患者の入院中から病院と地域の各種サービスとの連携を図れるような仕組みが重要ではないか。

(5)長期入院の高齢者のニーズに応じた支援環境の確保
 ○ 長期入院の高齢者群については、精神症状に対する医療ニーズよりもむしろ日常生活動作能力や社会適応能力の低下に対する支援が必要である。
 ・ 長期入院の高齢者群に対しては、退院に向けた生活面でのリハビリテーションの実施の他、本人の療養生活の質が担保できるように、既存の社会資源を活用しつつ、必要に応じて新たな施設類型等も考慮する必要があるのではないか。また、その際、対象者の年齢から介護保険制度も充分考慮する必要があるのではないか。

(6)痴呆患者に対する処遇
 ○ 痴呆患者については、精神科病院入院患者のうち約1.7割が痴呆等(症状性を含む器質性精神障害)の患者であり、ここ数年来、老人性痴呆疾患専門病床数が急増しているなどの現状がある。痴呆患者については、適切な治療と介護を含め、患者の状態に応じた処遇の在り方を検討することが必要である。
 ・ 痴呆に係る専門病床の在り方や介護保険制度との関係も考慮する必要があるのではないか。

(2)入院形態ごとの入院期間短縮
 
 ○ 現在、入院患者に占める任意入院患者の割合に地域差があったり、措置入院患者のうち措置入院期間が1年以上である者の割合に地域差があったりするなど、入院制度の運用が必ずしも全国的に適切になされている状況にはない。早期退院を目指していくためには、適切な医療を提供し、措置入院や医療保護入院等で入院した者を早期に任意入院の形態に移行していく地域的な取組も重要である。
 ・ 任意入院への早期移行を目指すためには、措置入院制度の現状を十分に分析しつつ、措置入院を受け入れる病院や病棟の医療体制を改善したり、措置入院患者や医療保護入院患者の病状を適切に確認するなどして、適切な医療提供が促進される必要があるのではないか。
 ・ 任意入院患者に対しても適切に病状を確認し、早期に退院への移行を促すような仕組みが必要ではないか。
 ・ 長期入院患者も含め入院患者の退院促進、円滑な地域への移行を図るためには、病院との連携のもと、地域から病院に出かけていき入院患者に対して地域生活を踏まえた支援を実施するなどの枠組みを都道府県単位で整備する必要があるのではないか。


(3)処遇内容の改善
  (1)必要最低限の行動制限の実施
 ○ 患者の保護室の利用や身体的拘束の実施については、病状等に応じて必要最小限の範囲内で適正に行われることが必要である。
 ・ 担当する指定医だけでなく他のスタッフを含め病院・病棟が継続的に把握する工夫を行うなど、患者の行動制限については、病状等に応じて必要最小限の範囲内で適正に行われていることを常に確認していくことが必要ではないか。

(2)任意入院患者の適正な処遇
 ○ 任意入院患者の約7割が開放処遇(本人の求めに応じ、夜間を除いて病院の出入りが自由に可能な処遇)にある(そのうち約1.3割が閉鎖した病棟で処遇)。他方、任意入院患者の約1.6割が開放処遇の制限を受け、約1.4割が患者の意思による開放以外の処遇にあるが、任意入院患者は、原則として、開放的な環境での処遇を受けることが必要である。
 ・ 開放処遇が徹底され、開放処遇の制限や本人の意思による開放処遇の制限が適正に運用されていることを確認できるようにすることが必要ではないか。

(3)インフォームド・コンセントに基づいた医療提供の推進
 ○ 入院患者は、病気や治療方針等について十分に理解し、病識を持つことができるように医師から十分に説明を受けた上で、同意のもと、病状の回復のために積極的に治療に参加することが重要である。
 ・ インフォームド・コンセントに基づいた適正な医療提供により、病状の早期回復を期待できることから、処遇内容が改善され、退院が促進されるのではないか。
 ・ インフォームド・コンセントに基づいた医療提供の推進できる体制をどのように確保するかを具体的に検討すべきではないか。

(4)都道府県を中心とした良質かつ効率的なサービス提供体制の確保
 
 ○ 都道府県単位で、地域の実態を十分に分析した上で、良質かつ効率的な医療の提供、退院促進方策、救急、通院等の地域医療などについて、計画的に推し進める体制を整備する必要がある。
 ・ 現在の救急医療体制において、二次救急までは対応可能であるが、三次救急の対応が困難であるというような精神科病院もあり、このような場合は、特に後送システムとの連携が重要ではないか。そのため、都道府県ごとの体制整備の充実が必要ではないか。
 ・ 医療的デイケアの利用者と福祉サービス等の利用者との間で、病状や必要な支援等の違いの有無について十分な分析を行った上で、限られた資源を活用した良質で効率的な通院医療体制のあるべき姿について検討する必要があるのではないか。


2.新たな仕組みを支える基盤づくり

(1)精神医療の評価・チェック体制の充実・強化
  (1)精神医療審査会の機能の充実と適正化
 ○ 入院患者に充分周知されるように、病院等から患者への十分な説明が担保される必要がある。
 ・ 患者の人権に十分に配慮した精神医療審査会の運営のため、当事者等の意見がより反映できるような仕組みを検討すべきではないか。
 具体的な方策として、合議体の委員構成に医療委員の定員を減らして、当事者・家族の意見を代表すると認められる代表者を加える等の意見があった。

(2)第三者評価のしくみ
 ○ 精神医療の透明性の確保、医療の質の向上のためには、第三者評価の仕組みが必要である。
 ・ 日本医療機能評価機構やISO、精神科病院協会のピアレビュー、オンブズマン制度等、第三者による評価を積極的に推進する必要があるのではないか。
※ 具体的な方策として、当事者・家族の参加も考えるべきとの意見があった。

(3)指導監督等の徹底
 ○ 人権に配慮した適正な精神医療の確保等の観点から、都道府県が主体となって精神科病院に入院中の者の症状又は処遇に関しての報告徴収、立入検査等を行っている。改善が認められない等の問題を有する精神科病院に対して、国の立入検査が行われた場合は、原則公表することとしている。
 ・ 都道府県等の立入検査の結果等についても、精神医療に関する情報として有益であり、これらの情報提供の推進により、人権に配慮した適正な精神医療の確保に効果があるのではないか。

(2)新たな仕組みを支える人材の育成・確保
 
 ・ 精神医療の質の向上を目指して、医師、看護師、精神保健福祉士等の教育・育成を図ることが必要ではないか。その際、医療スタッフにとって魅力ある精神医療体制の確立という考え方も必要ではないか。

(3)良質な医療の効率的な提供に向けたサービス報酬体系の見直し
 
 ・ 精神医療に係る良質な医療の効率的な提供に向け、病床等の機能、患者の病状に応じた診療報酬体系の見直しが必要なのではないか。


精神病床の基準病床数の算定式


1.入院患者の動態に応じた精神病床の基準病床数の算定式の見直し
(1)入院患者の動態に応じた見直し
 
 ・ 現行の精神病床に係る基準病床算定式については、短期で退院する患者群と、歴史的長期在院患者が併存するという精神病床の患者動態の実態を踏まえていないこと、平均在院日数等は徐々に短縮の傾向にあることが反映されていないこと、基準病床数の地域格差があることなどの問題がある。
 ・ 現行制度下での見直しとしては、現在の入退院の動態を基礎に、地域格差是正を考慮しつつ、将来の人口変動や政策的要素を加味した新たな算定式を導入することが必要である。
 ・ 基準病床数の見直しに際しては、精神保健福祉医療対策の中で、昨今の精神医療の動向を踏まえ、将来を見据えた算定式の見直しが必要である。
 ・ 少なくとも10年で7万床相当の病床数の減少を促すこととするものの、
   ※ 今後新規に入院する者が、どのようなペースで退院させていくか
 ※ 既に在院長期化した者のうち、どのような対象者をどのようなペースで退院させていくか
等の両面について、地域間の格差も踏まえつつ患者の病態に応じた検討が必要である。
 ・ 都道府県によって、現行の基準病床数に差があったり、そのため、人口万対病床数で見た場合の患者特性(年齢層、疾患分類、入院期間等)が異なったりしているため、都道府県を単位として、入院患者の動態に応じた基準病床数の見直しのための検討を深める必要がある。


(2)入院期間で患者群を区分し、それぞれの必要数を算定
 
 ・ 比較的一般病床等の利用実態に近い1年未満の患者群(病床群)と固定的な利用実態の1年以上の患者群(病床群)では入退院の動態が異なることから、それぞれ別々に基準となる病床数を考えることが妥当ではないか。
 ・ 患者の入退院の動態をより反映した基準病床数の算定式に見直すためには、期間設定の検証とともに、それぞれの期間によって新規入院患者率、残存率、退院率などといった新たな尺度も考慮していく必要があるのではないか。



病床の機能分化のイメージ
病床の機能分化のイメージの図



現在の長期入院群の将来イメージ

現在の長期入院群の将来イメージの図



包括的地域生活支援事業
包括的地域生活支援事業の図



各種メニューのイメージ
 ◎  障害者の状態等とサービスメニューをどのように結びつけるか?
 ◎  どのように段階的に自立(支援の少ない状態)に促していくのか?
各種メニューのイメージの図



精神障害者の地域生活支援の在り方に関する検討会
中間まとめ


地域生活検討会においては、
 将来ビジョンとしての「退院後等における地域生活を継続する体制づくり」、「新たな体制を支える基盤」について中心的な議論がなされたが、その概要は次の通り。

1.退院後等における地域生活を継続する体制づくり

(1)ライフステージに応じた住・生活・活動等の支援体系の再編
  (1) 基本的な考え方
 ○  現行の支援体系について、障害者の状態等と社会資源とをどのように結びつけるのか、自立に向けて必要な能力を向上するためにはどのような機能が必要なのかといった視点から再検討し、システムの再編を図ることが必要である。
 ・  再編に当たっては、障害者の自立に向けて必要となる機能を明らかにしつつ、既存の施設やサービスを、その機能面から再整理すべきではないか。
 ・  入院期間の違いやライフステージの違いなどに応じて必要な支援は異なるが、そのような違いに応じたサービスの在り方を検討する必要があるのではないか。
 ・  身体、知的、精神の3障害それぞれの特性を踏まえつつも、3障害に共通した問題については障害の枠を超えた支援を行っていくべきではないか。

(2) 住居支援
 ○  地域での支援体制を確立することにより、精神障害者が施設やグループホーム等を経て自宅又はアパートで生活できるような取組を進めるべきである。
 ・  貸し主等からは緊急時の連絡先等を求める声が強く、当事者の単身入居を推進していくためには、こうした支援体制を構築することが必要ではないか。併せて、公営住宅への精神障害者の単身入居を進めることはできないか。
 ・  地域生活により近い住まいの場であるグループホームについて、重度の精神障害者にも対応できるよう、その機能を強化することが必要ではないか。併せて、公営住宅のグループホームとしての活用を進められないか。
 ・  入所型の社会復帰施設については、利用者を地域での生活に送り出す機能の強化が必要ではないか。

(3) 就労支援・活動支援
 ○  特に現役層においては、社会の中で役割を持ってもらうための就労支援の方策が重要であり、本人の状態、職業能力に応じて授産や福祉的就労から一般就労へと結びつけるための多様な雇用・就業機会の確保を含めた施策の展開が必要である。
 ・  精神障害者の雇用を促進するに当たっては、雇用を確保するための法的な手当を行うとともに、例えば、精神障害者3人で1人分の業務を行うなどの多様な就労形態が可能となるようにしていくべきではないか。
 ・  現在、就業・生活支援センターが担っている活動支援に関する機能を、精神障害者が積極的に活用できるような取組が必要ではないか。また、施設外授産をうまく活用することで、一般雇用への移行を図るべきではないか。
 ・  現在の「福祉的就労」を、就労なのか、訓練なのか、生活支援なのか明らかにし、より一般雇用に結びつけていくという観点から、それぞれの機能を明確に区分していくべきではないか。
 ・  精神障害者に対する生活支援や憩える場の在り方を検討していくべきではないか。併せて、医療としてのデイケアの機能を患者の症状やニーズに応じて分化していく必要があるのではないか。

(4) 居宅生活支援
 ○  訪問サービスやショートステイなどの居宅生活支援を充実させ、使い勝手を良くすることや、非公的なサービスを活用することを通じて、在宅中心の地域生活を支援していくべきである。
 ・  地域生活支援という観点から、各種医療やサービスを自宅等で受けられる仕組みを重視する必要があるのではないか。特に、ADLの低下している中高年の場合はこのような視点が重要ではないか。
 ・  現行のショートステイは、あくまでも介護者の都合によってしか利用できないが、本人の心身の状況等に応じ、多様な利用形態を認めていくべきではないか。
 ・  精神障害者の活動の場を広げるために、精神障害者保健福祉手帳に係るサービスの充実を図っていくべきであり、そのためには、手帳の信頼性向上の観点から、現行の様式を見直し、写真を貼付する必要があるのではないか。

(5) 重度精神障害者を包括的に地域で支える仕組み
 ○  精神症状が持続的に不安定な障害者においても、地域における安定した生活という選択肢を確保することができるよう、総合的な支援を包括的に提供できるような基盤整備を進めていく必要がある。
 ・  重度の精神障害者に対しては、医療と福祉を合わせた総合的・包括的な支援を提供する仕組みが必要ではないか。
 ・  夜間の連絡体制等、状態に応じた適切なケアを利用できれば、重度の精神障害者であってもグループホーム等において、地域での生活が可能ではないか。
 ・  現在の精神科救急システムに加え、必要に応じ、短期間家庭から離れてケアを受けられるようなシステムが必要ではないか。

(2)ケアマネジメント体制の確立
  (1) 基本的な考え方
 ○  地域生活を総合的に支援するケアマネジメント体制を制度化することが必要である。この際、ケアマネジメントの範囲としては、重点的に介護を必要とする高齢者と異なり、公的サービスのみならず、就労や教育等の広い分野を対象とする必要がある。
 ・  障害者の地域生活支援を進める上においては、状態や必要性に応じ、最も適切なサービスを総合的かつ効率的に提供することが一番重要であり、それが退院の促進にもつながるのではないか。
 ・  ケアマネジメント体制の制度化に当たっては、障害程度に応じた標準的なケアモデルの開発が必要ではないか。
 ・  危機介入的な相談支援体制の在り方についても検討すべきではないか。

(2) ケアマネジメント体制
 ○  ケアマネジメント体制については、市町村や地域生活支援センター等相談機能を有する既存の社会資源を活用しつつ、地域性や専門性の高い案件等についても調整機能が発揮されるよう、重層的なものとすべきである。
 ・  ケアマネジメントを実施するに当たっては、その中立性や公平性を確保するための質の担保が重要ではないか。
 ・  都道府県、市町村という行政区域や障害福祉圏域など、それぞれの圏域において、専門性の確保といった点から具体的にどのような体制を整備するか検討が必要ではないか。
 ・  ケアマネジメント体制を確立するに際しては、効果的、効率的な仕組みとなるような工夫をしつつ、必要な財源確保を進めるべきではないか。

(3)国・都道府県・市町村の役割分担
  (1) 国の役割
 ○  国は、地域生活支援を軸に、既存の医療対策、社会復帰対策、地域福祉対策の再編を進めていくべきである。
 ・  国としては、国民に対し、明確なビジョンや精神障害者の保健医療福祉に関する基本的な計画を示し、当事者・家族に勇気を与えることが必要ではないか。
 ・  国の役割としては、地域の状況も踏まえつつ各地で行われているモデル的な取組を「点」から「線」に、さらに全国的な「面」とするような仕組みを構築することではないか。

(2) 都道府県の役割
 ○  都道府県は、地域の実態を十分に分析した上で、良質かつ効率的な医療の提供、退院促進方策、救急、通院等の地域医療などを含め、地域支援体制の整備を計画的に押し進める体制を整備する必要がある。
 ・  都道府県が地域医療計画、地域障害者計画等の各種計画を策定するに際し、それぞれの計画が相互に連携することを可能とするような仕組みが必要ではないか。

(3) 市町村の役割
 ○  市町村は、ライフステージに応じた住・生活・活動等の支援体系を考えていく上で、身体障害者や知的障害者と同様、地域に最も身近な存在としての役割を果たしていくべきである。
 ・  精神保健福祉に関し、現在、ノウハウが乏しい市町村では、国や都道府県のバックアップにより、知識の蓄積やアウトソーシングの推進などの環境を整えていくことが重要ではないか。
 ・  市町村においては、市町村が策定する障害者計画の中に精神保健福祉施策を明示するとともに、実態を把握した上で、目標を立てて計画的に進めていくことが必要ではないか。
 ・  精神障害者保健福祉施策を地方自治体に任せても、地方交付税も含めた現在の財政状況では十分な施策が展開できないのではないか。


2.新たな仕組みを支える基盤づくり

(1)評価・チェック体制
 
 ○  地域の福祉サービスについて、その機能を評価する仕組みが検討されるべきである。
 ・  運営主体に関わらず、提供されるサービスを評価し、福祉サービスの質を担保していく仕組みが必要ではないか。

(2)新たな仕組みを支える人材の育成・確保
 
 ○  ケアマネジメント体制等の確立に際して、資質の高い人材の育成方策を検討すべきである。
 ・  専門職においては、当事者が必要となる支援の内容を正しく認識するとともに、当事者と協調しながらケアマネジメントを行えるような人間関係を築けるなどの資質が求められるのではないか。
 ・  当事者同士の共通の経験を基盤とする対等な関係において、情報提供と傾聴を中心的に行うことも、当事者のエンパワメントにつながっていくのではないか。

(3)財源配分の在り方
 
 ○  精神障害者施策における財源については、今後、地域生活を軸として考える上において、福祉への配分の重点化を図るべきである。
 ・  現在の財政状況において、どのような形で今後増大する支援のための財源を確保するのか検討する必要があるのではないか。



精神障害者の居住サポート体制の整備

精神障害者の居住サポート体制の整備の図
・家主・精神障害者とも安心して入居できる環境→地域生活の場(住まい)の確保
・重度精神障害者の地域生活の支援→入院から在宅への流れの促進

精神障害者相談支援事業のオプション事業((1)のみ又は(1)+(2))と位置づけ、体制を整えた事業者に加算を適用する。



新たな障害者の就労支援策の流れ

新たな障害者の就労支援策の流れの図



<法律等に定める目的の整理表>

施設種別 施設の概要
精神障害者生活訓練施設 精神障害者福祉ホーム 精神障害者授産施設 精神障害者福祉工場 精神障害者地域生活支援
センター
A型 B型 通所授産施設 入所授産施設 小規模通所授産施設
施設概要 精神障害者のため家庭において日常生活を営むのに支障がある精神障害者が日常生活に適応することができるように、低額な料金で、居室その他の設備を利用させ、必要な訓練及び指導を行うことにより、その者の社会復帰の促進を図る施設 現に住居を求めている精神障害者に対し、低額な料金で、居室その他の設備を利用させるとともに、日常生活に必要な便宜を供与することにより、その物の社会復帰の促進及び自立の促進を図る施設 現に住居を求めている精神障害者に対し、低額な料金で、居室その他の設備を利用させるとともに、日常生活に必要な便宜を供与することにより、その物の社会復帰の促進及び自立の促進を図る施設 雇用されることが困難な精神障害者が自活することができるように、低額な料金で、必要な訓練を行い、及び職業を与えることにより、その者の社会復帰の促進を図る施設 雇用されること及び住居の確保が困難なものを一定期間入所させて、精神障害者が自活することができるように、低額な料金で、必要な訓練を行い、及び職業を与えることにより、その者の社会復帰の促進を図る施設 雇用されることが困難な精神障害者が自活することができるように、低額な料金で、必要な訓練を行い、及び職業を与えることにより、その者の社会復帰の促進を図る施設 通常の事業所に雇用されることが困難な精神障害者を雇用し、及び社会生活への適応のために必要な指導を行うことにより、その者の社会復帰の促進及び社会経済活動への参加の促進を図る施設 地域の精神保健及び精神障害者の福祉に関する各般の問題につき、精神障害者からの相談に応じ、必要な指導及び助言を行うとともに、併せて保健所、福祉事務所、精神障害者社会復帰施設等との連絡調整、その他の援助を総合的に行う施設
対象者 入院の必要はないが、精神障害のため独立して日常生活を営むことが困難と見込まれる者であって、かつ、社会復帰を希望する者のうち次の各号に該当する者
(1)共同生活を営める程度の者
(2)精神科デイ・ケア施設、精神障害者小規模作業所等に通える程度の者
家庭環境、住宅事情等の理由により、住宅確保が困難であるため、現に住居を求めている精神障害者であって、次の各号に該当する者
(1)日常生活において介護を必要としない程度に生活習慣が確立している者
(2)継続して就労ができる見込みがある者 
病状は安定していて必ずしも入院治療を必要としないが、意欲面の障害若しくは逸脱行動の症状を有する、又は、高齢化による一定程度の介助を必要とする状態にある精神障害者で、一定程度の介助があれば、日常生活を営むことができる者 雇用されることが困難な精神障害者であって、かつ、将来就労を希望する者 家庭環境、住宅事情等の理由により、住宅確保が困難であるため、現に住居を求めている精神障害者であって、次の各号に該当する者
(1)共同生活を営める程度の
(2)雇用されることが困難な精神障害者であって、かつ将来就労を希望する者
雇用されることが困難な精神障害者であって、かつ、将来就労を希望する者 精神障害者授産施設等において指導訓練を受け、一般企業に就労できる程度の作業能力を有しているが、対人関係、健康管理等の事由により、一般企業に就労できないでいる精神障害者 地域で生活している精神障害者
定員 20名以上 10名以上 おおむね20名 20名以上 20名以上30人以下 10名以上20名未満 20名以上
利用期間 原則2年以内、ただし、真にやむを得ない場合は1年を超えない範囲内で、1回に限り延長することができる。 原則2年以内、ただし必要な場合は、延長することができる。 原則5年以内、ただし必要な場合は、延長することができる。 利用者各人の作業能力等により当該施設において適宜決定する。 利用者各人の作業能力等により当該施設において適宜決定する。 利用者各人の作業能力等により当該施設において適宜決定する。
住まい        
マネジメント            
生活訓練              
機能訓練      
職業訓練          
雇用              
溜まり場              


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