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実質的違法論について


1.基本的な考え方
 ある行為が処罰に値するだけの法益侵害がある(構成要件に該当する)場合に、その行為が正当化されるだけの事情が存在するか否かの判断を実質的に行い、正当化されるときには、違法性が阻却されるという考え方
 形式的に法律に定められている違法性阻却事由を超えて、条文の直接の根拠なしに実質的違法性阻却を認める
 具体的には、生じた法益侵害を上回るだけの利益を当該行為が担っているか否かを判別する作業を行うこととなる
 「当該行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否か」(最判昭50・8・27 刑集29・7・442他)

2.正当化されるための要件
(1)目的の正当性
 行為者の心情・動機そのものを問題にするのではなく、「行為が客観的な価値を担っている」という意味で解すべき
(2)手段の相当性
 最も重要な要件
 具体的事情を基に「どの程度の行為まで許容されるか」を検討
 犯罪類型ごと、事案の類型ごとに、「このような目的のためには、この程度の行為まで正当化される」という類型的基準を設定すること
(3)法益衡量
 特定の行為による法益侵害と、その行為を行うことにより達成されることとなる法益(その行為を行わないことによる法益侵害)とを、比較衡量
 「手段の相当性」の判断の過程で、合わせて行われることとなる
(4)法益侵害の相対的軽微性
 特定の行為による法益侵害が相対的に軽微であること
 その行為による法益侵害の程度が大きければ、正当防衛や緊急避難といった違法性阻却事由に該当することが求められる
(=補充性など、さらに要件が付加される)
(5)必要性・緊急性
 法益侵害の程度に応じた必要性・緊急性が存在するか否かを検討


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