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第16回「食品の表示に関する共同会議」の議事概要
(平成16年5月31日(月))


1.委員の出欠
全委員出席

2.概要
(1)アレルギー物質を含む食品の表示について
 ア.アレルギー物質を含む食品表示制度に関して
独立行政法人国立病院機構相模原病院海老澤元宏先生より、資料1について説明。

委員: 患者の年齢分布の箇所で、0歳児に多く、原因物質を除去すれば再発がなくなるという説明があったが、除去するとはどういうことか。
説明者: 除去するということは、食物アレルギーという診断がついているお子さんの日常の食生活から、その原因を取り除くことをいう。それだけで、症状が出るのを防ぐことができる。また、0歳で発症する食物アレルギーは、学童期や成人期に発症するアレルギーと異なり、一定期間後食べられるようになるという現象がある。従って食物除去は、対策でもあり治療でもある。
委員: 何が原因であるか特定しやすいのか。
説明者: 特定するのは難しい。例えば、血液検査で反応があるとき、それだけで原因であると診断ができるわけではない。さらに、医療の問題であるが、食物アレルギーの診断自体が、医師のレベル、医療機関のレベルによってかなり違う。現在、診断を統一していこうと私の研究班が行っている。また、患者さんを対象にした調査と医師を対象にした調査を比べると、前者で頻度が高くなる。これは前者では診断が過剰になっているケースがあるためである。今回、医師を対象にした調査を行ったのは、そこをクリアにしたかったからである。
座長: 除去というのは患者さんの生活に入ってこないようにするのが目的であり、原因がわかっている上で、食品を分別ができるようにするという意味ということのようである。調査については、医療側からみたものと患者側からみたものとあるようだが、後者はこれから事務局より説明があると思われる。また、アレルギー制度について役に立っている制度であると医療側からも評価をいただいたと思う。
委員: 前回調査ではコメがあがっていたのが印象深かったが、今回はあがっていないが。
説明者: 即時型アレルギーに限定すれば、コメのアレルギーは今回のように大変少なくなる。患者さんを対象にした調査では食べて数時間以上たったような即時型でない食物アレルギーを、コメのアレルギーとしている方もいる。それが本当にコメのアレルギーかどうかを証明するのは難しい。一定期間食べないようにし、少しずつ食べて症状がでるかを見なくてはならない。即時型アレルギーという観点では小麦などと同じ穀物でありながらコメは非常にアレルギーを起こしにくい食品であるといえる。
委員: アレルギーでも即時型ではない遅延型があるようだが、その比率は。
説明者: 即時型は実際によくわかっている食物アレルギーのメカニズムである。しかし、遅延型は未解明な部分が多い。従って比率は、医師によって異なってしまう。私の施設では、遅延型はかなり少ない。
座長: アレルギーの診断は難しいようだ。医療側では即時型のみを、患者側から見ると遅延型を含めており、認識のずれがあるかもしれない。
委員: レトロスペクティブな調査とプロスペクティブな調査の定義を教えて欲しい。
説明者: レトロスペクティブな調査とは、例えば食物アレルギーについて調査しようとするとき、過去にどれだけ症例がありましたかと医師に依頼し、その医師の記憶を頼りに外来診療録などを基に報告してもらう調査である。従って膨大な外来診療録に埋もれてしまった中から情報を正確に引き出す際には、医師の記憶にかなり依存してしまう。一方、プロスペクティブな調査とは、今日から2年間にわたって、アレルギー症例があったら報告をあげてもらう、例えば3ヶ月ごとにはがきを送って患者さんがいたら送り返してもらう、これを繰り返す調査である。これは、記憶のバイアスを少なくし、症例の漏れを減らすことができる。
 前回はレトロスペクティブな調査であったが、今回はプロスペクティブな調査であり、今回の方が精度の面ではかなり良いと思われる。しかし、結果に差がなく前回の調査の正しさを今回の調査で明らかにすることができた。
委員: 資料1の11ページにカカオが載っているのに17ページの表には載っていないが。
説明者: ご指摘の通りであり、17ページの表のゼラチンとヤマイモの間にカカオが入る。
委員: アレルギー患者の数と症例数は一対一対応しているのか。それとも一人の患者に複数の原因が重なっていることはないのか。
説明者: ご指摘の通りであり、同一の患者で違うアレルゲンを持っていることはある。
委員: それでは原因物質は単独ではなく、かなり重なっている可能性があるのか。
説明者: 調査は患者さんごとではなく、ケースごとにまとめている。例えば、鶏卵に対するアレルギー反応、乳製品に対するアレルギー反応それぞれを1として集積している。
委員: 患者さんの総数を100とすると違ったパーセントになるのか。
説明者: 若干のずれはあると思うが、アレルゲンを複数持つ患者さんや繰り返し発症する患者さんは少ないので、それほど大きなずれにはならないと思う。
委員: 5ページに勤務医と開業医のグラフがあるが、調査結果で差が出たか。また、17ページの説明の際にエビの話があったが、種類による違いのデータは持っているか。
説明者: まず勤務医と開業医では、抗原の分布についてはほぼ差がなかった。ただし、症状の重篤さが勤務医の方が優位であるようだ。また、勤務医のみを対象にした前回調査と比較してもあまり差がなかったことからも勤務医と開業医に大きな差はないと思われる。
 次にエビについてのアレルゲンの解析は、以前より進んでいる。医療現場で使っているアレルゲンの検査セットでは、交差抗原性という面でエビとザリガニ、ロブスターはかなり近い印象がある。また、エビはカニと問題になることもある。甲殻類としてまとめると簡単だが、生物学的な種別に基づいて調べるのと、アレルギーの反応に基づいて調べるのと必ずしも一致しない。この傾向は魚にもある。ちなみに魚の場合はもっと複雑である。例えば、サケとマスの関係のこともあるし、青身の魚、赤身の魚、白身の魚という分け方とアレルギーの関係を調べると、関係がないということもある。今後も抗原解析の研究をしていかなくてはならない。
座長: アレルギーは物と人の関係である。人が運動するか、しないかでも変わるという体の問題がある。また物の側として生物学的な種の問題とその分類、商品としての分類、それが実際アレルゲンとして働くのかという、いくつかの段階がある。このため様々な場面で表示の問題は関係してくるが、次の議題に引き継いでこの話を進めていきたい。

 イ.食物アレルギー発症回避のための患者実態調査及びアレルギー物質を含む食品の原材料表示に関する調査研究
事務局より資料2、資料3について説明

 委員より特に発言無し。

 ウ.アレルギー物質を含む食品に関する表示について(検討骨子)
事務局より資料4について説明。

座長: 3つのテーマに分けて説明があった。1つは制度導入後に行われた調査・研究結果に基づいた表示対象品目の見直し、2つめがコンタミネーションと推奨表示のあり方、3つめがJAS法と関連するが、表示方法の見直しであった。これからの議論ではそれぞれに分けて進めていきたい。

(表示対象品目の見直し)
座長: 以前の調査では、乳製品を牛乳とヨーグルトで別品目にしていたが、これをまとめたところアレルギーの件数が増えた。また、表示という面でも個々の品目でまとめるのか、グループとしてまとめるのかで、様々な違いが出てくる。豆類という表示では、たくさんの品目が含まれるが、鶏卵という表示では単一品目になる。従って分類、品目をどう考えるのかを検討する必要がある。さらに、品目の見直しの際には、実際の食品の中にアレルギーを引き起こす蛋白が含まれているのかということを検知する方法についても問題になる。
委員: エビ、カニの問題を積極的に研究していきたいという厚生労働省の考えに賛成である。調査でもエビ、カニは高い順位に入ってきている。しかし、青魚、白魚について差がないという話があったので、しっかりとした基礎研究の上で、エビ、カニの追加をして欲しい。
委員: 表示対象について義務表示(5品目)と推奨表示(19品目)を分けたままで議論し、その上でそれぞれ品目を加除するのが良いと思う。エビは具体的に義務表示の話が今あがっているが、今回の調査であがってきたバナナや現在19品目に入っているが症例数が少ないマツタケをどうするのか、そういった問題も整理しないといけない。
委員: 説明者に質問がある。乳製品では具体的にどういうものでショック例があるか。
説明者: 資料1の16ページの表についてお尋ねかと思うが、資料2の12ページ図5でも乳があり、様々な食品で使われており、避けにくい食品である。例えば、ジュースの脱脂粉乳や薬剤のカゼインナトリウムでショックになった例もある。かなり微量な混入でも乳製品はほぼ全てでアレルギーが起こると思われる。
委員: 国民生活センターにて2003年11月にソバについて調査し、その際行政へいくつか要望を出した。この会議に関係することとして、1つが欄外の注意喚起表示の徹底、もう1つが患者さんにとっては混入であろうと、原材料で使おうと含まれていること自体が問題であるから、食品衛生法に違反しているのかという点を含めて、技術的な対応の問題はあるだろうが、アレルギー物質の含有量を判断できるようにして欲しい、という2点があった。
委員: 実際のところ、加工品は表示できるが、生鮮品は表示しにくい。原因としてあげられている物で症例の少ない物には加工品として使われにくい物も入っているが、それは生鮮品で発生したのか加工品で発生したのかが、わかりにくい。原因となる物が、加工品にそもそもつかわれるのような物なのか、調査したことはあるか。
説明者: 確かに加工せずそのままの食品として多く見られる原因と加工食品で多く見られる乳製品のような原因がある。このことについて前回調査では考慮している。しかし、弁当などにはそのままの食品として入っていることがあり、その場合存在するだけで発症することがある。表示について純粋に加工食品のみを対象にして良いのか、という問題は確かにある。ただし加工食品でも、チョコレートのような食品では乳かカカオかピーナッツなのかなど、原因物質の特定はかなり難しい。
座長: 原因物質の特定が難しい中、品目を確定していくのは難しい課題である。また製造過程だけではなく、弁当のような加工食品では消費過程でもコンタミの可能性があるという指摘をいただいた。
委員: 表示の基準が、10ppmで線引きされているのはわかりにくい。直接原材料を使っているなら良いが、2次、3次で入っている場合の表示は難しい。まず5品目をしっかり定着させていくのが先決ではないか。品目を増やすのは混乱を引き起こすおそれがある。19品目については10ppmをどうやって調べるのか難しい。現在、検知についての公定法もなく判断できない。従って19品目も変更は望ましくない。
委員: 保育の現場で給食でのアレルギーについて難しい問題となっている。品目などを追加する際は、食品の提供する側にアレルギーに関しての情報提供をしっかりとして欲しい。
委員: 全体的な話になるが、3年前に義務(5品目)、推奨表示(19品目)を決めた際は、義務表示については検知法がない状態であわてて作ったという事情があったようだ。今後、義務表示へ品目の追加する際は各委員から提案にのっとってからすべきであると思う。また、推奨表示(19品目)については、症例が多いという面で表示するのはいいことだろうが、推奨する担保をはっきりとさせる必要があるのではないか。今の根拠は単に順列ではないかと思う。
委員: 委員の意見に賛成である。消費者の立場からはショック例が多い物は表示を望む声が多い。しかし、科学的根拠をもとに進めて欲しいと思うので、そのための研究も進めて欲しい。
座長: 資料4の7ページに、エビの生物学的な面、食品分類としての面、アレルゲンとしての面についての詳細な研究を開始していく、バナナ、ごまなどアナフィラキシーを起こしやすい物についても検討していくと示されているが、今回の議論をふまえて、事務局の方で改めて内容を詰めた上で次回提案していただきたい。

(コンタミネーションと推奨表示)
委員: 特定原材料を使用していない旨の表示は、食品の選択がしやすくなる。また、注意喚起について、別ライン、別容器でなければ注意喚起をするという通知があると話があったがその効果についてお聞きしたい。
事務局: 昨年11月の国民生活センターの調査でコンタミの注意喚起がされていない食品でコンタミが見られたという報告に基づき通知を出した。まだその周知より時間が経っていないためその効果は調べていない。また、推奨表示に特定原材料を使用していない旨の表示を追加することであるが、今の表示制度は、使ったことを表示、コンタミの可能性を表示するという、後ろ向きな表示になっている。19品目の表示を行っている企業は多いということだが、問題点として、表示がない場合、入っていないのか、入っているのか分からないということがある。今回の使っていないという表示、ある意味前向きな表示は、それを解決する1つの方法である。
座長: 可能性表示の禁止を補う提案といえる。コンタミの場合、結果として入っているのものを原材料とするという視点で考えると、使っていないということを任意表示とすることは有用ではないか。
委員: コンタミ表示をしたがる企業が多くなっており、通知の影響かもしれない。しかし、企業防衛の観点からコンタミ表示をする企業が増えている。コンタミ防止の科学的データ、例えばどういう洗浄をすればどれぐらい減るかなどを示し、その上で進めないと企業防衛が強まるという危惧がある。また、特定原材料を使用していない旨の表示であるが、制度導入以前に入っていないことを表示していた食品があったが減ってきている。使用していない旨の表示は、ゼロの保証をしているように取られると感じている。実際ゼロの保証は不可能と思われ、こういう事情からも入っていないという表示していた食品が減っているという印象を受けている。
座長: 最終的な製品として表示する際、様々な製造過程を明示化し、材料についての情報を把握するということを製造、加工者が認識する必要があると思われる。
委員: 資料4の5ページ下段の食品衛生監視員の役割が強調されている中、制度への理解度に問題があるとある。監視員とはどういう人なのか。また、8ページに制度を浸透させる必要があるとされているが、このことについて見える形で説明をしてもらいたい。
事務局: 食品衛生監視員については、前回の会議で発表された資料をそのまま今回の資料に持ってきた形になっているため理解に問題があるとなっている。食品衛生監視員は、医師、薬剤師、獣医師など一定の資格を持つなど、そういった勉強をされた上で、食品衛生上の監視をするための資格を持っている人である。制度を浸透させていくに当たっては、最終的に、資料4の10ページにあるように研修で補っていくことになると思う。
委員: 食品衛生監視員は科学的根拠に基づいて活動しており、根拠のないものは監視できない。従って検知法がないということは、コンタミの判断をするなどの監視自体が難しくなる。まだアレルギーは患者さんとの関係もあり、調査途上の部分があるようだが、こういったことを含め研究を続けていって欲しい。

(表示方法)
座長: 文字の大きさ、色の自由度を増すということだが、JAS法と重なる部分である。
委員: 色を変える、文字を大きくするのは企業としてのコスト負担が大きい。半義務では中小企業が困る。任意表示で、やっても良いということであれば、あえて導入するというところもでてくるだろう。任意表示である分には特に意見はない。
委員: 委員の意見に基本的に賛成である。ただ、加工に関してたまたま最終食品に義務表示漏れがあった際、1次、2次食品に義務表示漏れがあって、それが原因の時に、最終食品製造者が責任をとることになっているのか、それとも中間製造者が責任を取ることになっているのか。アレルギー表示の理解が完全とはいえない段階で、最終製造者だけが責任を取るということを、もっと啓発をしていかないといけない。そういったことも報告書に盛り込んで欲しい。
委員: 資料3の調査でも消費者から色やマークやアンダーライン、大きさを変えるという意見があがっており、他の表示との関係もあるが、1つの考え方として良いのではないか。
委員: わかりやすいという点では、表示方法だけではなく、情報提供という形でまとめても良いのではないか。材料やコンタミの詳細を知りたいニーズを全て表示に含めるのは難しい。流通業者には一括表示外でまとめて表示するところもあるようであり、こういった表示やホームページや問い合わせによる対応も任意として推奨としてはどうか。

座長: 今日の会議のまとめになるが、表示品目の見直しについては、制度が始まって数年経った現在の表示の形を評価した上で、もし小さい手直しが必要であれば新しい調査、研究に基づいて具体的に提案していただきたい。コンタミと推奨表示のあり方と表示方法は、会議としてもわりあいに支持できる内容だという意見もあった。いくつかの提案、意見を元にして、最終的に共同会議として提案を作る際の原案を次回事務局から提案して欲しい。

(事務局より、次回以降の日程について、第17回を6月23日(水)10時から開催する予定である旨、説明があった。)

以上


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