1.報告書の対象となる療法等について
療法名 | 乳癌の溶骨性骨転移に対するパミドロネート療法 |
未承認効能・ 効果を含む医薬品名 |
パミドロネート(パミドロン酸二ナトリウム)商品名:アレディア |
未承認用法・ 用量を含む医薬品名 |
パミドロネート 1回 90 mg 4時間以上かけて点滴 4週間隔投与 |
予定効能・効果 | 乳癌の溶骨性骨転移(化学療法、内分泌療法、あるいは放射線療法と併用すること) |
予定用法・用量 | パミドロネート 1回 90 mg 4時間以上かけて点滴 4週間隔投与 |
2.公知の取扱いについて
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3.裏付けとなるデータについて
臨床試験の試験成績に関する資料 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Ciba-Geigy Pharmaceuticals Division(現Novartis)によりgrant supportを受けた米国、カナダ、オーストラリア、およびニュージーランドが参加する多施設共同研究グループ(Aredia Breast Cancer Study Group)により、遠隔転移を有し、化学療法を受けている乳癌の女性症例で、直径が1cm以上の溶骨性骨転移を1つ以上有する症例、performance status (PS) 0〜3、3ヶ月以上の予後が期待できる症例を対象として、パミドロネートとプラセボの無作為化比較試験が行われた。本試験の主要評価項目は各治療群への割付から最初に骨合併症を発症するまでの期間であった。なお、骨合併症を有する症例(病的骨折、骨への放射線照射や外科的手術が必要、あるいは椎体の圧迫骨折による脊髄の圧迫)、登録前から試験登録までの2週間に血清カルシウム値(アルブミン補正)が12mg/dLを超える、腹水貯留、血清クレアチニンが2.5mg/dLを超える、総ビリルビンが2.5mg/dLを超える、NYHA(New York Heart Association)分類でIII、あるいはIVの心不全症状を有する症例、試験登録60日以内にビスフォスフォネート製剤の投与を受けた症例は試験の対象より除外された。さらに、骨痛に対する放射線治療、副腎皮質ホルモン、カルシトニン、あるいはplicamycinの投与を試験登録より2週間以上前に受けた症例は試験に適格とされた。試験登録より3ヶ月以内に放射線治療を受けた骨病巣は治療効果の評価の対象から除かれた。また、試験期間中の化学療法について、レジメンの変更や中止は可能と設定されていた。 治療の内容について、パミドロネート群は、パミドロネート1回を5%ブドウ糖250mLに溶解し、2時間かけて点滴静脈投与、4週間隔、24コース投与した。一方、プラセボ群は、5%ブドウ糖250mL、2時間かけて点滴静脈投与、4週間隔、24コース投与した。それぞれの治療群において、3週間隔の化学療法が行われる場合には、それに合わせて3週間隔投与も可能であった。月1回の経過観察を行い、骨合併症(病的骨折、椎体の圧迫骨折による脊髄圧迫、病的骨折の治療あるいは予防のための手術の必要性、骨への放射線照射の必要性)を観察した。また、高カルシウム血症(アルブミン補正で12mg/dLを超える、あるいは正常値以上で治療を必要とするもの)についても評価された。治療開始より3、4、6、9、10、12、15、18、21、24ヶ月目に骨痛、鎮痛剤の使用量、PSを検討した。骨病変に対するレントゲン検査は、治療開始前、治療開始3、6、12、18、24ヶ月目に施行された。 1991年1月から94年3月までに382例が試験に登録され、185例がパミドロネート群へ、197例がプラセボ群へ割り付けられた。プラセボ群のうち2例は評価可能な骨転移がなかったため、有効性の評価のみ除外された。
パミドロネート群はプラセボ群と比較して、骨合併症の頻度、椎体以外の骨折、骨への放射線治療や外科的切除の頻度、および高カルシウム血症の発症を有意に抑制していた。疼痛について、pain scoreの増悪を認めた症例の割合は、パミドロネート群41%、およびプラセボ群55%であり、パミドロネート群の方が有意に少なかった(p=0.015)。また、鎮痛剤の増量を必要とした症例の割合は、パミドロネート群26%、およびプラセボ群40%であった(p=0.011)。 レントゲン上、骨病巣に治療効果が認められた症例の割合は、パミドロネート群34%、およびプラセボ群19%であり(p=0.002)、またレントゲン上変化が認められなかったものは、それぞれ、26%、および31%であった。 有害事象、および死亡のために治療を中止した割合は、それぞれ、パミドロネート群35%、および20%で、またプラセボ群では、23%、および16%であった。両治療群の大半の有害事象の頻度、および重篤度に相違は認められなかったが、貧血、血小板減少、高リン血症、筋肉痛、関節痛、およびインフルエンザ様症状の頻度がパミドロネート群で少し高かった。さらに、パミドロネート群2例でパミドロネートに起因すると考えられる有害事象にて治療を中止した(糸球体腎炎の既往を有する症例が腎不全を発症1例、持続する低カルシウム血症1例)。なお、プラセボ群の1例で高カルシウム血症により治療を中止した。 生存期間について、中央値は、パミドロネート群14.8ヶ月、およびプラセボ群14ヶ月(p=0.820)であり、両治療群の生存期間に有意な差は認められなかった。
Aredia Breast Study Groupにより、2個以上の溶骨性骨転移を有する18歳以上の女性の乳癌症例で、安定した内分泌療法を受けている症例を対象として、パミドロネートとプラセボの無作為化比較試験が行われた。大きさが直径1cmを越える溶骨性病巣を少なくとも1個以上有し、試験登録前3ヶ月以内に放射線治療を受けていない症例は適格であった。また、溶骨性病巣を1個のみ有する場合は、少なくとも直径1cm以上の放射線治療歴のない病巣を有するか、骨以外の転移病巣を有する場合を適格とした。その他の適格条件は、PS 0〜3、試験登録3ヶ月以内に化学療法を受けていない症例、試験登録の2週間以内に骨合併症を発症していない症例、9ヶ月以上の予後が見込める症例、腎臓、肝臓、および心臓に著しい機能障害がない症例、であった。 慢性的に副腎皮質ホルモンの投与を受けている症例は除外されたが、脊髄圧迫の急性、あるいは亜急性期に副腎皮質ホルモンを投与されている症例は適格とされた。試験登録前2週間以内にカルシトニン、またはmithramycinを投与された症例は除外されたが、試験中に高カルシウム血症を発症した際にこれらの薬剤を投与することは許されていた。また、試験登録60日以内にビスフォスフォネート製剤の投与を受けた症例は除外され、試験中は試験治療以外のビスフォスフォネート製剤の投与を禁止していた。試験期間中に内分泌療法の治療レジメンを変更することは許されており、また試験期間中に化学療法を開始することも許されていた。 治療の内容について、パミドロネート群は、パミドロネート1回を5%ブドウ糖250mLに溶解し、2時間かけて点滴静脈投与、4週間隔、24コース投与した。一方、プラセボ群は、5%ブドウ糖250mL、2時間かけて点滴静脈投与、4週間隔、24コース投与した。盲検性を保持するためにそれぞれの薬剤は試験専属の薬剤師によって調合された。 本試験は、II相に分かれており、1から12コースを評価した第I相では有効性と安全性を検討し、13から24コースを評価した第II相では安全性を検討し、24コースまで盲検化したまま薬剤投与は継続された。本試験の主要評価項目は、I相における各群の骨合併症の頻度であり、パミドロネートによる骨合併症の予防効果を検証することを目的としていた。 本試験では、骨合併症を、高カルシウム血症(アルブミン補正で12mg/dLを超える)、病的骨折、骨への放射線照射や外科的手術が必要、あるいは椎体の圧迫骨折による脊髄の圧迫と定義としていた。 治療開始より、骨痛、鎮痛剤の使用量、PSを毎月評価し、骨病変に対するレントゲン検査は、治療開始前、治療開始3、6、12、18、24ヶ月目に施行した。 1990年12月から95年6月までに372例が試験に登録された(パミドロネート群182例、プラセボ群190例)。プラセボ群のうち1例は、骨転移を有しないため、治療を受けず、また有効性の評価から除外されたが、生存期間の評価は行われた。12、および24コースの治療を完了した症例の割合は、それぞれ、パミドロネート群(182例中)62%、および32%、プラセボ群(189例中)52%、および34%であった。
有害事象、および死亡のために治療を中止した割合は、それぞれ、パミドロネート群20%、および19%で、またプラセボ群では、16%、および11%であった。パミドロネート群でプラセボ群より少なくとも10%以上高い頻度で認められた有害事象は嘔吐と倦怠感であり、また注射部位の皮膚反応がパミドロネート群で多く認められた(6% vs 0.5%)。さらに、パミドロネート群で重篤な有害事象が2例に認められた(初回治療より数日して発症した間質性肺炎1例、左眼に認められたアレルギー反応1例)。プラセボ群の1例でプラセボを投与後24時間以内に蜂窩織炎を発症し試験治療を中止した。 生存期間中央値は、パミドロネート群23.2ヶ月、プラセボ群23.5ヶ月で両群の生存期間に有意な差は認められなかった(p=0.685)。 |
4.本療法の位置づけについて
転移性乳癌において、骨転移は肺、肝臓と並んで多く認められ(Cancer Res 33: 179, 1973)、骨盤、椎体、長管骨などの加重骨に転移が認められる(Br J Cancer 55:61, 1987)。骨転移を来した乳癌に対しては、全身治療として内分泌療法や化学療法が行われ、また転移部位に対する局所療法として放射線治療や病的骨折に対する整形外科的手術が行われる。しかし、転移性乳癌は治癒不可能な疾患であるため、治療経過中に骨転移が進行し、転移部位の疼痛、病的骨折、椎体の圧迫骨折による脊髄圧迫症状、高カルシウム血症を来すため、転移性乳癌患者のQOL(Quality of life)を著しく損なう(Br J Cancer 77: 336, 1998)。 パミドロネートは骨吸収抑制作用をもつビスフォスフォネート製剤で悪性腫瘍による高カルシウム血症に対して用いられており、国内では悪性腫瘍による高カルシウム血症の効能、1回30〜45mgを4時間以上かけて単回点滴静脈投与の用法・用量で1994年8月に承認されている薬剤である。 ビスフォスフォネート製剤の骨吸収抑制作用より、悪性腫瘍の骨転移による疼痛の軽減や骨折などの合併症の頻度の軽減が期待され、悪性腫瘍の骨転移に対してビスフォスフォネート製剤とプラセボの無作為化比較試験が行われ、18試験のメタナリシスでは、6ヶ月以上投与されたビスフォスフォネート製剤はプラセボと比較して、病的骨折の頻度の減少(オッズ比(95%信頼区間):椎体0.69(0.57-0.84)、椎体以外0.65(0.54-0.79))、放射線治療の必要性の減少(0.67(0.57-0.79))、および高カルシウム血症の頻度の減少(0.54(0.36-0.81))が認められた。整形外科的手術の必要性の減少(0.70(0.46-1.05))、および骨折による脊髄圧迫(0.71(0.47-1.08))は認められなかったが、1年以上治療が継続された試験では整形外科的手術の必要性の減少(0.59(0.39-0.88)が認められた(BMJ 327:469, 2003)。今まで行われた臨床試験結果より、ビスフォスフォネート製剤は悪性腫瘍の骨転移による骨合併症(骨折による脊髄圧迫)の頻度を減少させ、またそれらの合併症が最初に起きるまでの期間を延長する効果を持つ薬剤として位置づけられている。なお、悪性腫瘍の骨転移に対してビスフォスフォネート製剤の生存期間延長の寄与は認められていない。 パミドロネートでは、乳癌の骨転移に対する単剤の臨床試験が行われ、有用性が示唆された(Cancer 74: 2949, 1994)。さらに、乳癌の骨転移に対するパミドロネートの有用性を検証するために、少なくとも1つ以上の溶骨性骨転移を有する症例に対して、化学療法、あるいはホルモン療法併用下では、パミドロネートとプラセボの無作為化比較試験が行われた。それらの試験結果では、化学療法との併用下で、パミドロネート群はプラセボ群と比較して治療開始より最初の骨合併症の発症までの期間を延長し(13.9 vs 7ヶ月、p < 0.001)、骨合併症を抑制した(50 vs 70%、p<0.001、N Engl J Med 335:1785, 1996、J Clin Oncol 16:2038, 1998)、またホルモン療法との併用下では、最初の骨合併症の発症までの期間の延長(10.4 vs 6.9ヶ月、p=0.049)、および骨合併症の抑制(56 vs 67%、p=0.027、J Clin Oncol 17:846, 1999)が認められた。これらの臨床試験結果より乳癌の溶骨性骨転移に対するパミドロネートの有用性が示された。現時点では、単純レントゲン写真にて溶骨性変化、CTあるいはMRIにて骨破壊像を伴う乳癌の骨転移に対してパミドロネート1回90mg、4週間隔投与は骨合併症の予防に有用な薬剤であると位置づけられている(J Clin Oncol 18:1378, 2000、J Clin Oncol 21:4042, 2003)。 |
5.国内における本剤の使用状況について
公表論文等 |
現在までに、国内において乳癌の骨転移に対するパミドロネート1回90mg、4週間隔投与に関する論文は公表されていない。 悪性腫瘍による高カルシウム血症に対するパミドロネート単回投与における用量検討試験が行われており、1回投与量15mg(14例)、30mg(36例)、45mg(32例)、60mg(21例)で認められた有害事象の件数は、それぞれ、発熱:0/4/4/2、血圧低下:0/1/0/0、不整脈:0/0/1/0、低カルシウム血症:1/3/7/4、腎機能低下:0/1/0/0、GOT/GPT上昇:0/0/1/1、クレアチニン上昇:0/0/0/1、血糖上昇:0/0/0/1、高カリウム血症:0/0/1/0、低リン血症:0/0/1/0、蛋白尿:0/0/1/0、および好酸球増多:0/0/2/0であり、有害事象と用量の間に明らかな相関は認められなかった(臨床医薬8:605, 1992)。 |
6.本剤の安全性に関する評価
溶骨性骨転移を有する乳癌に対するパミドロネート 1回90mg、4週間隔投与の安全性について、化学療法併用下の症例を対象としたパミドロネート(185例)とプラセボ(195例)を12コース投与した比較試験(N Engl J Med 335:1785, 1996)では、パミドロネート群3例でパミドロネートに起因すると考えられる有害事象にて治療を中止した(低カルシウム血症1例、脱力、倦怠感、および呼吸困難1例、投与後の骨痛の増悪1例)。なお、この試験ではプラセボ群の有害事象による治療中止例は認められなかった。さらに、この試験で治療を24コースまで行った検討では、有害事象、および死亡のために治療を中止した割合は、それぞれ、パミドロネート群35%、および20%で、またプラセボ群では、23%、および16%であった。貧血、血小板減少、高リン血症、筋肉痛、関節痛、およびインフルエンザ様症状の頻度がパミドロネート群で少し高かった(J Clin Oncol 16:2038, 1998)。さらに、パミドロネート群2例でパミドロネートに起因すると考えられる有害事象にて治療を中止した(糸球体腎炎の既往を有する症例が腎不全を発症1例、持続する低カルシウム血症1例)。なお、プラセボ群の1例で高カルシウム血症により治療を中止した。 また、ホルモン療法併用下の症例を対象としたパミドロネート(182例)とプラセボ(189例)を24コース投与した比較試験(J Clin Oncol 17:846, 1999)では、有害事象、および死亡のために治療を中止した割合は、それぞれ、パミドロネート群20%、および19%で、またプラセボ群では、16%、および11%であった。この試験ではパミドロネート群でプラセボ群より少なくとも10%以上高い頻度で認められた有害事象は嘔吐と倦怠感であり、また注射部位の皮膚反応がパミドロネート群で多く認められた(6% vs 0.5%)。さらに、パミドロネート群で重篤な有害事象が2例に認められた(初回治療より数日して発症した間質性肺炎1例、左眼に認められたアレルギー反応1例)。 骨転移を有する乳癌に対して、パミドロネート 1回30mg 2週間隔投与(14例)、1回60mg 4週間隔投与(17例)、1回60mg 2週間隔投与(14例)、および1回90mg 4週間隔投与(15例)を12週間投与した用量検討試験で最も多く認められた有害事象は、発熱(11.5%)、骨痛(9.8%)、および筋肉痛(6.6%)であった(Cancer 74:2949, 1994)。パミドロネート投与後に10例で1℃以上の体温上昇、および1例に悪寒を伴う2.5℃の体温上昇を認めた。発熱、および骨痛と用量に相関は認められなかった。また、この試験治療中に4例が原病の悪化のため死亡し、有害事象による治療の中止例は認められなかった。 パミドロネートの長期投与の安全性について、化学療法あるいはホルモン療法を受けている悪性腫瘍の骨転移に対してビスフォスフォネート製剤を2年以上投与した22例(疾患は、多発性骨髄腫5例、および乳癌17例、薬剤は、ゾレドロネート4例、およびパミドロネート(1回90mg、4週間隔投与)17例、観察期間平均値3.6年)の検討では、ビスフォスフォネート製剤による治療開始時と平均観察期間が3.5年の時点の白血球数、ヘマトクリット、血小板数、血清カルシウム、および血清リンの平均値に有意な差は認められなかった(J Clin Oncol 19:3434, 2001)。しかし、血清クレアチニン値は、治療前と比較して有意に高かった(0.9 (0.5-1.3) vs 1.1 mg/dL (0.5-2)、p=0.01)。また、ビスフォスフォネート製剤の治療を中止した理由は、ホスピスへの転院3例、死亡あるいは原病の増悪5例、患者の希望2例、不明2例であり、10例は薬剤投与を継続していた。この検討より症例数は少ないが、ビスフォスフォネート製剤の長期投与の認容性は良好であることが示唆される。パミドロネートの投与の継続について、治療中に1、ないし2件の骨合併症を発症した際に投与を中止するのが適切かどうか、現在までのところ不明であり、アメリカ臨床腫瘍学会のガイドラインでは患者の全身状態に応じて投与の継続を検討する方針が示されている(J Clin Oncol 21:4042, 2003)。 今まで報告された臨床試験の結果より、乳癌の骨転移に対するパミドロネート90mg、4週間隔投与で認められる主な有害事象は、発熱、骨痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛、悪心、貧血、血小板減少、腎障害、および低カルシウム血症であり、薬剤投与中の腎機能、血清カルシウム、および末梢血球数の変動に十分に留意すれば、安全性は担保できると考えられる。また、2年を超える長期投与の安全性について、長期投与に起因すると考えられる重篤な有害事象は今まで報告されていないが、腎機能の変動等に十分に注意し、長期投与の安全性についての情報を収集する必要があると考えられる。 |
7.本剤の投与量の妥当性について
乳癌の溶骨性骨転移に対するパミドロネートの用法・用量について、同一の化学療法あるいはホルモン療法を60日以上継続している症例に対して、1回30mg 2週間隔投与(14例)、1回60mg 4週間隔投与(17例)、1回60mg 2週間隔投与(14例)、および1回90mg 4週間隔投与(15例)を12週間投与した用量検討試験(各用量へは無作為に割付)では、1回90mg、4週間隔投与で治療開始2週より骨痛の軽減効果が認められ、また他の用量群と比べて治療開始12週の時点での骨痛の軽減効果は高かった(Cancer 74:2949, 1994)。 溶骨性あるいは混合性骨転移を有する乳癌に対して、化学療法/ビスフォスフォネート1回45mg、3週間隔投与(143例)と化学療法単独(152例)の比較試験では、併用群が骨転移の増悪までの期間を有意に延長したが(249 vs 168日、p=0.02)、骨合併症を抑制しなかった(21.7 vs 16.4%、J Clin Oncol 14:2552, 1996)。また、単純レントゲンにて骨転移が認められた乳癌に対して、ビスフォスフォネート1回60mg、3あるいは4週間隔投与(201例)とプラセボ (203例)の比較試験では、ビスフォスフォネート群は治療開始より最初の骨合併症の発症までの期間を有意に延長し(11.8 vs 8.4ヶ月、p=0.0058)、骨合併症を抑制したが(100 vs 140例、p=0.0042)、長管骨や骨盤の骨折(30 vs 31例)、および放射線治療の頻度(54 vs 65例)は抑制されなかった(Anticancer Res 19:3383, 1999)。なお、本試験では化学療法あるいは内分泌療法の併用が行われている。パミドロネートの1回投与量90mg、4週間隔投与はプラセボと比較して椎体以外の骨折の頻度、および放射線治療の頻度を有意に抑制していた(23 vs 38%、p=0.001、および28 vs 45%、p<0.001、J Clin Oncol 16:2038, 1998)。 今まで行われた試験結果より、乳癌の骨転移に対するパミドロネートは、用量依存性に骨痛の軽減効果の向上が認められたこと、1回投与量90mg、4週間隔投与はプラセボと比較して、骨合併症の発症までの期間を延長や骨合併症を抑制するだけでなく、椎体以外の骨折頻度や放射線治療の必要性を抑制する効果が認められていること、および1回投与量が45、および60mgと比べて明らかな有害事象の増強は認められないため、現時点では乳癌の骨転移に対するパミドロネート1回90mg、4週間隔投与の用法・用量は妥当であると考えられる。 |