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第II章 主要な論点に対する東京都の見解

 被保険者の範囲拡大及び障害者福祉との統合について

【論点の概要】
 今後の高齢化の進展や介護費用の増加傾向を踏まえ、将来にわたり介護保険財政の安定化を図るため、保険料を負担する者の範囲を、現行の40歳以上から、20歳以上など若年世代に拡大すべきとの意見がある。 併せて、平成15年度から支援費制度が導入された障害者福祉について、安定的な財源を確保する観点や、障害者の自立生活を実現するための施策を充実していく観点などから、介護保険と統合すべきとの意見がある。

【東京都の見解】
介護保険制度及び支援費制度の理念を発展させる観点から、被保険者の 範囲拡大及び障害者福祉との統合について、広く国民の理解を得るための十分な議論が必要。
被保険者の範囲拡大及び障害者福祉との統合の実現には、困難な課題が山積しており、これらを実施する場合には、十分な準備期間を確保すべき。

(基本的な方向性)
 平成27年(2015年)には、いわゆる「団塊の世代」が高齢期を迎える中にあって、介護保険制度によって確立された社会保険方式による介護のしくみを、将来にわたり安定的に持続していくためには、被保険者の範囲を若年世代にまで拡大することが、近い将来において避けて通れない課題である。
 一方、障害者福祉においては、平成15年度から支援費制度が導入され、それを契機としてサービス利用が大幅に拡大している。しかしながら、支援費制度は、初年度において早くも国庫補助金に大幅な不足が生じるなど、財政面の脆弱性・不安定性が明らかになっている。そこで、障害者福祉を今後とも充実させていくためには、将来にわたる安定的な制度設計が課題となっており、その解決策として、介護保険と統合する案が浮上している。
 こうした状況を踏まえると、東京都としては、制度見直しの基本的な方向性として、高齢者や障害者をはじめとして介護を必要とするすべての方々に、そのニーズに応じた介護サービスを提供できる体制を整備するとともに、その実現のため、将来にわたる安定的な財政基盤を確立することが必要であると考える。
 そのため、今回の見直しにおいては、介護保険制度及び支援費制度が目指す自立支援・自己決定の理念を一層発展させる観点から、被保険者の範囲拡大及び障害者福祉との統合について検討を行い、広く国民の理解を得るための十分な議論を行う必要がある。

(検討すべき課題)
 被保険者の範囲拡大及び障害者福祉との統合を実施する場合においては、次のような困難な課題が山積しており、これらを確実に解決することが不可欠である。

 被保険者の範囲拡大について
  ◇新たに保険料を負担する若年世代の納得が得られるような給付内容・水準を確保する必要があること。(例えば、若年性痴呆症や高次脳機能障害、末期癌患者の在宅療養に伴う介護など、これまで障害者福祉及び介護保険のいずれの対象にもなっていない介護ニーズへの対応など)
  ◇被用者である被保険者とともに保険料を負担することとなる事業主側の理解を得ていく必要があること。

 障害者福祉との統合について
  ◇サービス給付量に関して、支援費制度における区市町村による障害程度等に応じた個別的な支給決定と、介護保険制度における全国一律の要介護認定基準に基づく支給限度額の適用との違いについて、調整を図る必要があること。(特に、東京都内の区市町村においては、支援費制度の下で障害者に必要なサービスを全国レベルよりも極めて高い水準で提供してきたこととの整合性)
  ◇障害者についても介護保険の要介護認定のしくみを活用する場合にあっては、寝たきりや痴呆の高齢者を念頭に設計されている現行の要介護認定基準に代えて、さまざまな障害者の状況に基づく介護の必要度について、支援費制度の支給決定における勘案事項も踏まえ、それを客観的に把握できる調査項目と、その評価のためのしくみを整えていく必要があること。
  ◇利用者負担に関して、支援費制度における応能負担と介護保険制度における応益負担との考え方の違いについて、調整を図る必要があること。
  ◇障害者福祉において、利用者のニーズを踏まえた適切な調整に基づくサービス提供を実現するため、障害者のケアマネジメントのしくみを確立していく必要があること。
  ◇社会参加支援など介護保険制度にはない障害者福祉に固有のサービスについて、どのように取り扱うのかを明らかにする必要があること。
  ◇精神障害者福祉など支援費制度の対象になっていない分野について、どのように取り扱うのかを明らかにする必要があること。

 (実施する場合のプロセス)
 以上の状況を踏まえると、仮に被保険者の範囲拡大及び障害者福祉との統合を実施する場合にあっても、課題の解決に向けて相当の準備期間を要することから、第3期事業運営期間の始期である平成18年度からの実施は困難といわざるを得ず、次の第4期事業運営期間の始期である平成21年度からを目途とするなど、具体的なプロセスを国民に明示すべきである。


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